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シナリオ詳細

<フィンブルの春>殺戮の雷撃巨熊と偽勇者達

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪徳貴族達の企み
 よく言えば豪奢で華美、悪く言えばケバケバしくどぎつい、だが金銀や宝石などを至る所にあしらった贅沢な作りであることは間違いない服を着た男達が、これまた同じような趣味の調度で飾られた部屋に集まっていた。
「勇者総選挙とは……陛下も変わったことを考えなさる」
「だが、我らがイレギュラーズども以外を勇者候補として擁立出来るようになったのは、よかったですなぁ」
「左様左様、イレギュラーズなどを勇者にはさせておけませんからなぁ」
 彼らの話題は、幻想国王フォルデルマンによって始められたブレイブメダリオンランキング、通称、『勇者総選挙』のことだった。この『勇者総選挙』によって次世代の勇者が決まるわけだが、イレギュラーズ達の活躍によって痛い目を見る事の多い彼ら悪徳貴族からすれば、イレギュラーズを勇者にさせることは避けたかった。
「卿も、勇者を擁立なさっているので?」
「もちろん、偽造のメダリオンをたっぷりと与えましてねえ」
「悪(わる)ですなあ、ハハハ……」
「何を仰る。卿こそ、領地にわざと魔物を放って自分の勇者に倒させているとか」
「いやあ、『たまたま』魔物が我が領地に来たまでのことですよ。ハッハッハ」
 有力な貴族が擁立すれば、イレギュラーズ以外でも『勇者総選挙』に参入出来るとフォルデルマンが決めたため、彼ら悪徳貴族はこぞって勇者候補生を擁立した。そのほとんどは、不正によってメダルを集めている偽勇者だったが。

「ところでですな。我らが勇者に面白い使い道があるのですが……」
「ほう、何でしょう?」
 面白い使い道とは、目障りなイレギュラーズの領地に魔物を誘引し、散々暴れさせた上で自分達の勇者に退治させるというものだった。折しも、『神翼庭園ウィツィロ』や『古廟スラン・ロウ』から現れた魔物がイレギュラーズや三大貴族派の貴族の領地を襲撃するという事件が、多発している。
 つまり、それらの魔物によってイレギュラーズの領地に打撃を与えた上で、自分達の勇者はメダリオンを稼げると言う、彼らからすれば一石二鳥の案であった。
「それはよいですな、ぜひやりましょう。では、誰を狙うかですが……」
「もちろん、『雨宿り』めで決まりでしょう」
 『雨宿り』とは雨宮 利香(p3p001254)のことだ。腐敗した貴族を嫌い、悪徳貴族狩りを趣味とする利香によって、彼らの知己やあるいは自身が実害を被っており、普段から彼らはイレギュラーズの中でもとりわけ利香に反感や怨恨を抱いていた。
 ――故に、彼らの標的はすぐに利香と決まった。

●雷撃巨熊の進行を止めろ!
 全身にバチバチとスパークする雷を帯びた巨大な金色の熊――怪王種、『雷撃巨熊』サンダーブレーカー――が、目の前で必死に逃げる冒険者らしき人間達を追いながらのそのそと街道を進んでいる。
「もう少しだ! もう少しで『雨宿り』の町だ! がんばれ!」
「ああ! せっかくここまで来たんだ、死んでなんかいられねえ!」
 冒険者らしき者達は、悪徳貴族達が擁立した不正な勇者候補生、いわゆる偽勇者であった。彼らは悪徳貴族達の指示に従い、利香の領内に引き入れるに相応しい魔物を探してサンダーブレーカーを発見すると、逃げる振りをしながら誘導していた。
 だが、そのための犠牲は大きかった。彼らの半数が、既にサンダーブレーカーの牙や爪、雷によって死んでいる。しかし、もう少しでその苦労が報われるほどの大金が手に入るはずだった。
(さて……奴らの目的地は近そうだが……)
 実のところ、サンダーブレーカーは偽勇者達に目的があって自分を何処かに誘導しているのは見抜いていた。ただ、面白そうだから連中のスピードに合わせてその後を追っているだけである。もしそれがつまらないようだったら、本気を出して殺すだけの話だ。

 そしてあと少しで偽勇者が利香の領地の入口に至ろうと言うところで、十人ほどの影が偽勇者達の前に立ちはだかった。利香をはじめとする、イレギュラーズ達だ。
「……そんなのを、私の町に連れて来られると困るんですけどね」
 苦笑いを浮かべながら、利香が偽勇者達に告げる。だが、偽勇者達は利香達が姿を現すと、何故ここにと驚くよりも先に、これ幸いと左右に散らばった。
(私の町、と言ったな。と言うことは、この先が奴らが連れて来ようとした地か。面白い。
 おそらく、たくさんの人間を殺せるのであろうな)
 サンダーブレーカーは、己の中に湧き起こる昏い殺意を感じて、心の中で笑った。さて、先に此奴らを殺してじっくりと町の人間共を殺してやろうか、それとも先に町の人間を殺して此奴らを悔しがらせてやろうか――。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は全体依頼<フィンブルの春>の内の1本をお送りします。偽勇者達のやってる事って、もしかしてMPK(モンスタープレイヤーキラー)じゃね? ってOP書いてて思いました。
 それはさておきまして、今回、敵の強さとしては『雷撃巨熊』サンダーブレーカーがHard寄りNormal相当、偽勇者がNormal相当なのですが、両方と連戦もしくは三つ巴となるために難易度はHardとしております。
 では、『雷撃巨熊』サンダーブレーカー、偽勇者達、両方を討伐して利香さんの領地が被害に遭うのを防いで下さるよう、お願いします。

●成功条件
 『雷撃巨熊』サンダーブレーカー、偽勇者達の両方を討伐する(偽勇者達は生死不問)

●失敗条件
 『雷撃巨熊』サンダーブレーカーが利香さんの領内に進入する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 利香さんの領地から少し離れた真っ直ぐな街道です。時間は昼、天候は晴天。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●初期配置
 イレギュラーズの最前衛を基準として、『雷撃巨熊』サンダーブレーカーが正面40メートルほどの距離にいます。
 偽勇者は、イレギュラーズの最前衛から前衛後衛バランス良く左右に、30メートルほど離れています。
 最前衛以外のイレギュラーズの配置については、基本的には街道の上で最前衛と同じくらいかその後ろで固まっているとしますが、街道上であれば最前衛からの距離は自由です。

●『雷撃巨熊』サンダーブレーカー
 雷の力を宿した熊の怪王種です。立ち上がったときの全高は10メートル程度。
 獰猛な性質ですが、知能は下手な人間よりも高くなっています。会話も可能ですが、人間に対しては獲物としか見なしておらず敵対的であり、わかりあったり共存したりすることは絶対に不可能です。
 能力としては、高攻撃力高HPのパワー&タフネス型。一方で、身体が大きいため回避は極めて低くなっています。その他の能力は、そこそこ高い水準にあります。

・攻撃手段など
 牙 物至単 【弱点】【災厄】【出血】【流血】【失血】
 爪 物至単 【出血】【追撃】
 体当たり 物遠単 【移】【弱点】【飛】【体勢不利】
 雷撃 神/至~超/単~域 【必殺】【災厄】【痺れ】【ショック※】【感電※】
  射程、範囲を使い分けて撃ってきます。
  ※:感電は範囲単のみ、ショックは範囲域以外で適用されます。
 嵐 神自域 【乱れ】【崩れ】【足止め】
 バリア 神自単 【付与】 HPをもつバリアを展開します。
  バリアは回避0、防御技術0として扱われ、回避や防御技術の判定を一切行いません。
  その代わり、デバフなどで回避、防御技術をマイナスに持っていくことも出来ません。
  一定以上のダメージが蓄積されたら割れます(必要ダメージは高くはありません)。
 【痺れ】系列BS無効
 精神系BS耐性

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●偽勇者 ✕10
 悪徳貴族に金で雇われて勇者候補生となった偽勇者達です。元は傭兵とかならず者とか身を持ち崩した魔術師や僧侶などですが、勇者候補生として擁立されただけあって、一国の標準的な騎士程度の実力はあります。
 基本的にはイレギュラーズとサンダーブレーカーとの戦闘への介入は避け、勝者と戦って漁夫の利を得ようとしますが、あまりにも戦況が一方的になると有利な方に妨害を行う可能性があります。

・ブレイド
 男、剣装備。オーソドックス前衛。至近範囲攻撃、遠距離攻撃技あり。

・アックス
 男、斧装備。パワー型前衛。至近範囲攻撃、【弱点】付き攻撃あり。

・スーピア
 女、槍装備。スピード型前衛。至近範囲攻撃、超遠距離攻撃技あり。

・シャム
 女、曲刀装備。スピード型前衛。至近範囲攻撃、遠距離攻撃技あり。

・シルド
 男、大盾装備。タンク型前衛。【怒り】付与手段あり。

・アーマン
 女、全身鎧装備。タンク型前衛。【怒り】付与手段あり。

・ロザリー
 女、司祭風。後衛ヒーラー。範囲回復、支援あり。

・クルス
 男、司祭風。後衛ヒーラー。範囲回復、支援あり。

・スターフ
 男、杖装備。後衛魔術師。範囲攻撃魔法、BS付与あり。

・リヴル
 女、魔術書装備。後衛魔術師。範囲攻撃魔法、BS付与あり。


●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <フィンブルの春>殺戮の雷撃巨熊と偽勇者達Lv:20以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年04月29日 22時45分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
リカ・サキュバス(p3p001254)
雨宿りの雨宮利香
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
威風戦柱
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
プリン・ガーディアン
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

リプレイ

●雷撃巨熊を止めるべく
「……全く、私は勇者総選挙なるおままごとに興味はないのです。が、来てしまったからには仕方ないですね。
 傭兵を呼ぶ余裕もないとなるとこういうのも癪ですが、皆様、報酬は弾みますので、どうか思う存分暴れてくださいな?」
 悪徳貴族に擁立された偽勇者達が、怪王種である『雷撃巨熊』サンダーブレーカーを雨宿りの町に誘引しようとしている。その報を聞いた『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は深く溜息をついてから、目の前の仲間達にぺこりと頭を下げた。
「報酬、ね……そういえば、ここのチーズ食べたことなかったのよね。未知のものが消えるのは惜しいわ」
 だから、サンダーブレーカーと偽勇者を撃退出来たらこの町のチーズを食べさせて欲しい、と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は利香に答えた。
「助ける理由はそれで十分よね、利香?」
「ええ。ありがとうございます、イーリンさん」
 首を傾げて尋ねるイーリンに、利香は微笑みながら返した。
「そんな熊を連れて来るとはのう……まあいい。雨宮殿には世話になってるしのう……熊狩りと行こうかね」
 はぁ、とこちらも深く溜息をついたのは、『英雄的振る舞い』オウェード=ランドマスター(p3p009184)だ。だが、利香の領地の危機と言うことを差し置いても、怪王種が町に誘引されているとなれば放っておくわけにはいかない。やれやれ、とオウェードは愛用の『ノルダイン風アックス』を肩に担いだ。
「……はぁ、まぁじで貴族が関わると面倒なことこの上なし、だから幻想は……はぁ」
 『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は、利香やオウェードよりも多く溜息をついた。心底面倒くさそうなのを、隠そうとする様子もない。そんなマニエラを、師匠であるイーリンがジッと見つめる。
「いやいや、仕事はやるよ、師匠様々……さぁて、やるかね」
 イーリンからの圧に耐えかねたマニエラは、イーリンにそう応えると、気だるさを振り払うかのように肩をぐるんぐるんと回した。
「偽勇者を生き餌にした怪王種釣りですか……なるほど、貴族らしい趣味の悪さだ」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は、呆れたように吐き捨てた。立場としては敵であるが、生き餌にされた偽勇者達には憐憫すら感じる。とは言っても、無条件で偽勇者達を許してやるほど、寛治は甘くはないのだが。
「上位の足を引っ張るよりメダルを集めるよう努力した方がより勇者的だろうに……まぁ、勇者としての名誉ではなく、即物的な目的なのか。
 それならそれでリスク管理が出来てない連中だ、全く」
 悪徳貴族達の悪辣さに呆れた寛治と違い、偽勇者達の愚かさに呆れたのは『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)だ。実際の所、偽勇者達は本気で勇者になろうと言うつもりはなく、金を目当てに勇者候補生に仕立て上げられたに過ぎなかった。それで怪王種を釣る生き餌にされ、既に半数が死んでいるのだから、確かに錬の言うとおりリスク管理と言う点では失格であろう。
「……偽勇者の方々の命も、雨宮さんの領民の命も、等しいもの。ですが、刃を向けて害成す以上、仕方ありません」
 瞑目しながら、『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)が独り言ちる。偽勇者も死なせたくはないとグリーフは考えるが、放っておけば利香の町に住む九千もの命が危険に曝される以上、その命を奪うことになろうとも偽勇者達の企みは止めねばならなかった。

 利香達が町を出てしばらくすると、程なくして街道を逃げる偽勇者達とそれを追うサンダーブレーカーと遭遇した。
「魔物を町に誘き寄せようなんて、勇者の風上にも置けないよね!」
「まったくなのだわ。勇者を名乗るつもりなら、最低限のプライドは持って欲しい所ね」
 偽勇者達の姿を見た『魔法騎士』セララ(p3p000273)は、ぷんぷんと怒った。勇者を目指している一人として、偽勇者達の行動はとても許しておけるものではない。『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はセララに同調し、うんうんと深く頷いた。
 そんなサンダーブレーカーと偽勇者達、そして利香達の姿を遠目に眺めていた者がいる。頭部に巨大プリンを模した兜を被り、筋肉を模したシャツを着た全身鎧の秘宝種、『金色マチョマチョ☆プリリ』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)だ。
 プリンを探すため雨宿りの町に入ろうとしていたプリンは、その光景を目にしてこう考えた。
(この町には、極上のプリンがある──そして今はそれを狙うあの熊と集団から護るべく、立ち向かうべき時なのだ!)
 何を如何解釈すればそのような判断に至るのか理解出来ないが、ともあれプリンは若干どころではない誤解をしつつも、利香達と共に雨宿りの町を守らんと、誓いを立てた。
「ココカラ先ハ、絶対二通サンゾ!」
 サンダーブレーカーと偽勇者達に対して、そう見得を切るプリンだった。
 偽勇者達は、イレギュラーズ達の姿を認めると、大きく左右に分かれていった。前には迫り来るサンダーブレーカー、左右には偽勇者達と、イレギュラーズは三方向から包囲された形となる。もっとも、偽勇者達の方は今はイレギュラーズ達に仕掛けるつもりはないのだが。
「――と、囲まれましたね、いやはやぞろぞろと。腐れ貴族の手のものですか?それとも人の権利を横取りする人ですか?
 まあどっちでも私の大嫌いな存在です。どうも運が悪いですねえ?
 あの熊もバチバチいって、正直腹立つんですよ? 私にもライバル心っていうのがありますからね!」
 そう言い放つ利香の手にある魔剣『グラム』の刀身には、所有者の激情に応じるかのように、雷が纏わり付いていた。

●前に、左に、右に
 三方向に敵を抱えたイレギュラーズ達は、三方向に分かれた。これはサンダーブレーカーも偽勇者達も予想外だったようで、サンダーブレーカーは興味深そうに目を見張り、偽勇者達はそんな馬鹿なと言わんばかりに動揺した。
 まずサンダーブレーカーの前に立ったのは、イーリンだった。
「踊りましょう、熊さん?」
(ふん、小癪な――!)
 イーリンはサンダーブレーカーを事も無げに魔眼で見やると、一言そう告げた。サンダーブレーカーはその視線に捨て置けないものを感じ、あからさまにイーリンに敵意を向けた。
「さてさて、私は火力にならないから頑張ってくれ給え。特に師匠とここの領主のサキュバスさんよ」
 そう告げると、マニエラは自身に英霊の鎧を降ろし、纏わせる。これで、状態異常を受けることは無い。後は戦闘を最適化する支援を自らに施せば、大技を使おうと気力を費やすことはなくなる。そうすれば、マニエラを中心として味方を強化し、負傷と状態異常を癒やし、気力を補充し続ける領域の出来上がりだ。
「ウオオオオ! クマァ! オレガ相手ダァ!」
(何だ、この程度……うぬっ!?)
 プリンは吼えながら、悪意からなる魔弾を放つ。魔弾自体はサンダーブレーカーに掠り傷程度しか与えられず、サンダーブレーカーもその威力を侮った。だが、遅れて身体にのしかかる重苦しさに、苦しげに身体を震わせる。プリンの魔弾の本命は、サンダーブレーカーを種々の状態異常で苛むことにあったのだ。
「怪王種と言ったかしら? 大きいわね……図体がでかい敵は、毒がよく効くのでなくて?」
(くっ……今度は、毒だと!?)
 サンダーブレーカーの巨体を見上げながら、レジーナが暗器を放った。暗器は命中したものの、サンダーブレーカーに負わせた傷は軽い。だが、やはりこの攻撃の本命もサンダーブレーカーを毒で蝕むことにあった。傷口から暗器に塗られていた毒がサンダーブレーカーの体内に侵入し、その命を蝕んでいく。
(おのれ……人間共が! 許さんぞ!)
 怒りに震えたサンダーブレーカーは、ガバッ! と後ろ脚だけで立ち上がり、片方の前脚を天に向けて高く掲げる。天からその前脚の先へと雷が堕ちてくると、サンダーブレーカーはイーリンに向けて前脚を振り下ろした。その前脚の先から雷撃が伸び、イーリンに直撃するかと思われたが――。
「ぐうっ……! これは、厳しいですね……ですが、こんなものでは私は倒れはしませんよ!」
 グリーフがイーリンの前に立ちはだかって盾となり、サンダーブレーカーの雷撃を身体で受け止める。グリーフは苦悶の表情を浮かべつつも、不屈の意志を込めてサンダーブレーカーに言い放った。

「――では、プランBです」
 イレギュラーズ達の左にいる偽勇者達には、寛治と利香が向かっていった。
 寛治は偽勇者達まで残り十メートルほどの所で足を止めると、無防備な姿で立ち尽くしたまま、眼鏡の奥から冷たい視線だけを偽勇者達に向けている。その様に、いくらイレギュラーズとは言え呆気なく倒せるのではないかと、偽勇者達はゴクリと唾を飲んだ。手を出さずにイレギュラーズとサンダーブレーカーの共倒れを狙うべき、と言う偽勇者達の計算は、まさに『棒立ち』と言える姿の前に軽く吹き飛んだ。
 もちろん、これは寛治の誘いである。その誘いに乗せられて、偽勇者達が前衛も後衛も関係なくただ寛治に接近して攻撃しようとした瞬間――。
「よく遊びに来てくれましたね、たんと歓迎してやりますよ!」
 利香が寛治の前に割って入り、盾として寛治を守った。防御の技量に長けた利香を相手にしては、偽勇者達は掠り傷以上の傷を負わせることが出来なかった。

 一方、イレギュラーズ達の右にいる偽勇者達にはセララとオウェード、錬が向かっていた。
「君達の顔は覚えたよ。悪事を働けば、勇者の器に無いって噂をボク達が広めちゃうかも。逆にあの熊をボク達と共闘して退治するなら、本当に勇者の器かもしれないね」
 セララは斧を持った偽勇者の前に立ちはだかると、脅しを交えつつ共闘を持ちかけた。
「イレギュラーズの人気と信用、そしてしぶとさと死亡率の低さは知ってるよね? 仮にボク達が敗走しても、絶対に数人は生き残る。幻想で君達のどんな評判が人々に広まるかは、この戦闘次第だよ」
 偽勇者達はセララの言葉に、互いに顔を見合わせる。沈黙と静寂が、偽勇者達の間を支配した。だが、最終的に、偽勇者達は首を横に振った。偽勇者達は勇者になりたいだとか名誉を得たいだとかのために行動してるのではなく、生活に行き詰まり金が必要だったから悪徳貴族達に使われていたに過ぎない。評判を盾に取られたところで、自分達で報酬を台無しにするような真似はさすがに出来なかった。
 しかし、共闘の誘いが不首尾に終わることはセララも織り込み済みである。あとは、オウェードと錬の仕事だ。
「ガハハハ! お前さんらは協調性が無いのう」
 セララよりも少し離れた位置で、オウェードは高笑いしながら、掌を上に向けて突き出し、くい、くいと自分の方に向けて指を曲げて挑発した。全身鎧と司祭風、槍装備、曲刀装備の偽勇者が挑発に乗ってオウェードを攻撃したが、オウェードは大して傷を負う事はなかった。
「漁夫の利を狙おうだなんて随分甘い考えだな?」
 錬は、残る魔術書装備の偽勇者リヴルを式符から創造した無数の樹の槍で貫かんとする。貫くとまではいかずとも樹の槍によって傷つけられたリヴルは、錬に接近して攻撃を仕掛けたが、守りに長けた錬には掠り傷を負わせたのみだった。

●偽勇者達を巻き込んで
 サンダーブレーカーと対峙しているイーリン、グリーフが後退すれば、マニエラ、プリンもサンダーブレーカーとの距離を維持するべく後退する。その間に、サンダーブレーカーの敵意を煽る役はイーリンからグリーフに、左側の偽勇者達の敵意を煽る役は寛治から利香に代わっていた。
 そして、利香、オウェード、セララがサンダーブレーカーの前に移動すると、リヴル以外の偽勇者達も釣られてサンダーブレーカーの前に飛び出すことになった。即ち、偽勇者達はイレギュラーズ達によってサンダーブレーカーの前に引きずり出されたのだ。
 そうと気が付いた偽勇者達は慌てたが、時既に遅し。何とかしてサンダーブレーカーの前から離脱を図ろうとするが、グリーフによって敵意を煽られ、その場に釘付けとさせられた。
 結果、位置関係としては、サンダーブレーカーの前にグリーフ、利香、オウェード、レジーナ、セララ、魔術書装備以外の偽勇者達。そのやや斜め後方にイーリン。そしてサンダーブレーカーから十メートル弱距離を置いてマニエラとプリン。マニエラ達から十メートル弱後方に寛治と錬、リヴルと言う形となった。

「どうしました? 大きいのは図体だけで、私を壊すことは出来ないではないですか」
(ええい、おのれおのれおのれえっ!)
 グリーフはサンダーブレーカーの前に立ちはだかりつつ、サンダーブレーカーを挑発する。元々グリーフに敵意を煽られているサンダーブレーカーだったが、この挑発に乗せられてさらに頭に血を上らせ、ギロリとグリーフを睨んだ。
 しかし、グリーフは怯まない。グリーフは物理的な力を遮る魔力の障壁、魔術的な力を遮る破邪の結界の双方に守られており、最初の雷撃以降サンダーブレーカーはグリーフを壊すどころか、傷つけることさえ出来ていないのだ。それで、グリーフにサンダーブレーカーの攻撃を恐れる理由などあろうはずがなかった。
「――ああ、お待たせしました。私がこの町の、九千の命を預かる長の雨宮利香と申します。
 さて、楽しみましょうか、バチバチ熊さん?」
(うぬうっ、何だこの影は!?)
 利香がそう告げると同時に、サンダーブレーカーの周囲に黒い影が広がっていく。影からは無数の手が伸び、サンダーブレーカーと偽勇者達に纏わり付くと、その身を切り裂き血をだらだらと流させた。サンダーブレーカーは手を振り払おうとするかのように身をよじり、偽勇者達は悲鳴をあげる。
「言っておこうッ! 殺されるのはお前さんの方じゃよッ!」
(何を!? 小癪なあっ!)
 そう叫んだオウェードは、渾身の力を込めて『ノルダイン風アックス』をサンダーブレーカーに叩き付ける。アックスの刃が、ザシュッ! とサンダーブレーカーの肩に深く食い込んだ。サンダーブレーカーの前脚が、ガクリと崩れ落ちかける。
「街を蹂躙なんてさせない。人々の平和はボク達が守ってみせる! ――全力全壊! ギガセララブレイク!」
(ぐおおおおおっ!?)
 『セラフィム』のカードにより周囲に燐光を舞わせる白い『スーパーセララ』となったセララが、『聖剣ラグナロク』の剣先を天に向ける。天からの雷が『聖剣ラグナロク』に落ちると、セララはサンダーブレーカーに斬りつけた。オウェードが傷つけたのとは逆の、サンダーブレーカーの肩を『聖剣ラグナロク』の刀身がザックリと斬り裂いていく。そして、セララの攻撃はまだ終わらない。
「まらまらひふりょぉ~(まだまだ行くよー)」
(なっ!? さらにもう一撃、だと!?)
 いつの間にか口にドーナツをくわえたセララが、再び『聖剣ラグナロク』に雷を纏わせ、先のギガセララブレイクで斬った肩にもう一度ギガセララブレイクを放つ。同じ場所に二度目の斬撃を受けたサンダーブレーカーの肩は、さらに深く斬り裂かれていった。
「こいつが怪王種か、資料は見ていたが実際に戦うのは初めてだな。動植物からの転化ということは、元の性質も残しているのかね!」
(ぐあああっ!)
 錬は式符から炎の大砲を創り出し、味方を巻き込まないようサンダーブレーカーの後方に狙いを定め、炎の砲弾を発射した。仲間達やサンダーブレーカーを放物線のように飛び越えた砲弾は、サンダーブレーカーの後方で色鮮やかに大爆発すると、サンダーブレーカーの下半身を炎で包んだ。
「おまけだ! もう一発くれてやる!」
(ぐぬっ、こいつもか!)
 さらにもう一門炎の大砲を創り出した錬は、同じように炎の砲弾を発射し、サンダーブレーカーの後方で爆発させてさらに下半身を炎に包む。毛皮と肉を焼かれる苦痛に、サンダーブレーカーは身をよじらせた。
「出し惜しみは無し! フルスロットルで行くわ!」
(ぬおおおおっ!)
 マニエラの支援による気力の充填を頼りにしながら、イーリンは掌にあらん限りの魔力を集める。それを剣へと象らせ大上段に振り上げたイーリンは、全力で振り下ろした。剣閃から放たれた魔力の奔流は、未だ炎の燻るサンダーブレーカーの胴体に直撃し、その身を大きく抉っていった。
 サンダーブレーカーは立ち上がり、雷を召ぼうとしたが、寛治の方がわずかに速かった。
「させませんよ――これで、止まってもらいます」
(うがああああっ!)
 仕込み銃であるステッキ傘から、一発、そして間を置かず一発と銃弾が放たれる。死神が生命を嘲笑するかのような二発の狙撃は両方ともサンダーブレーカーの胴体に命中し、銃弾は深々とその体内に潜り込んだ。あまりの苦痛にサンダーブレーカーは雷を召べず、ズン! と前脚を地に着けて四つん這いに戻ることを強いられた。
「我が名は、レジーナ・カームバンクル。この青薔薇のタナトスの紋章を、よく目に焼き付けておくことだわ。
 もしかしたら、それが今生の見納めになるかもしれないのだからねぇ?」
 レジーナは周囲にいる偽勇者達に、高らかに、そして圧を込めて語りかける。
「こういう時、町の人を守るのが勇者じゃないのかしらねぇ? 後が、怖いと思うわよ。
 具体的にはそうね……頭と胴体のお別れは済ませておいたかしら?」
 さらに続けたレジーナは、サンダーブレーカーもろとも、偽勇者達を何発も拳で殴りつけた。叩き付けられる拳の乱舞に、偽勇者達は苦悶の声を漏らした。
「領主は言わずもがな。弟子が火力出ないんだから、かわりに師匠が二倍出してくれるよなぁ?」
「オレガ、皆ヲ支エル。ダカラ、安心シテ戦エ」
 マニエラは軽口を叩きながら、プリンは味方を励ましながら、味方を奮い立たせる号令を放つ。最早言霊と言える二人の号令は、仲間達の消耗した気力を大いに回復させた。
 偽勇者達はグリーフに寄ってたかって攻撃したが、魔力障壁と破邪の結界に阻まれて傷一つ負わせることは出来なかった。

●雷撃巨熊は斃れた
 サンダーブレーカーの雷撃はさすがに毎回は止まらず、偽勇者達もろとも前衛のイレギュラーズにダメージを与えていった。だが、イレギュラーズ達の攻撃も熾烈であり、潤沢であったサンダーブレーカーの生命力をその身体を蝕む毒と共に、速いペースで削り取っていく。結果、先に偽勇者達が全滅し、遅れてサンダーブレーカーも斃れた。
 サンダーブレーカーの生命力をハイペースで削り取れたのは、マニエラとプリンによる支援があってこそだった。二人の支援により消費した気力が大幅に補充されるからこそ、イレギュラーズ達は消耗を気にせず大技を繰り出し続けることが出来たのだ。特に気力を著しく消耗する、一度に二度の狙撃を行う寛治と魔力の奔流を放つイーリン、連続でギガセララブレイクを使い続けるセララには、その恩恵は大きかった。

 倒れはしたものの辛うじて生き存えていた偽勇者達は、オウェードやグリーフらによる応急手当を受けた後、イレギュラーズ達による尋問を受けた。偽勇者達にこんなことをやらせた黒幕について、聞き出さないわけにはいかない。
「おめでたい人達ですね。戻ったら待っているのは報酬ではなく口封じですよ」
 偽勇者達はだんまりを決め込もうとしたが、あらん限りの人脈を使い今回の黒幕を探っていた寛治にかまをかけられ諭されると、観念して口を割った。

成否

成功

MVP

グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

状態異常

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)[重傷]
レジーナ・カームバンクル
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)[重傷]
威風戦柱
グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
紅矢の守護者
オウェード=ランドマスター(p3p009184)[重傷]
黒鉄守護

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。まさか偽勇者達をサンダーブレーカーの前に誘引して乱戦に巻き込んでしまおうとは、この雄山の目をもってしても読めませんでした。ともあれ、サンダーブレーカー、偽勇者は共に討伐完了され、利香さんの領地は守られました。
 MVPは、サンダーブレーカーの攻撃に耐えながらその足を止め続けて、利香さんの領地への進行を阻止し続けたグリーフさんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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