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シナリオ詳細

<フィンブルの春>山賊に喧嘩売りし奴隷商の命運

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●奴隷商人の懊悩
「ああ~、何ちゅうこっちゃ……!」
 虎の尾を踏んだ。そう知った奴隷商人ザイードは頭を抱え、怯えた。
 ザイードは元は傭兵で活動していたが、ファルベライズを巡る騒乱によって商売が難しくなったため幻想に流入してきた奴隷商人の一人だった。幻想に流れてきてからのザイードは、途中まで、即ち手持ちの『在庫』を売り切るまでは成功していた。
 だが、『在庫』の補充をしようとして、ザイードは致命的な失敗を犯した。使用人のアイデアに乗って、グドルフ・ボイデル(p3p000694)が縄張りとする山賊峠で山賊を『仕入れ』ようとしたのだ。
 山賊峠がグドルフの縄張りと知っていれば、ザイードも使用人もおそらくその無謀な企みを中止――否、そもそも企むこと自体しなかっただろう。だが、彼らは知らないが故に決行し、そして失敗した。
 実行役の使用人はグドルフの交渉によって雇った盗賊達に裏切られ、捕縛され主人の情報を吐かされたが、その事実をザイードは知らない。だが、帰還する予定の時間を大幅に過ぎ、さらに一日経っても使用人が戻ってこない時点で、ザイードは企みが失敗したと判断せざるを得なかった。
 そして別の使用人を使って情報を集めさせた結果、よりにもよってグドルフの縄張りに手を出してしまったことを知り、報復に怯えたと言うわけである。

●非道なる守り
 ザイードの前には、別の奴隷商から新たに買い集めた奴隷達がいる。老人、男性、女性、少年少女とその構成は様々だが、短時間で数を集めるためには屈強な男ばかりを選んでいるというわけにもいかなかった。
「さ、これを飲むんや」
 奴隷達は使用人達によって無理矢理口を開かされると、ザイードによって杯に入った液体を飲まされる。
 嫌々ながらもどうしようもなく、ゴクリ、と奴隷達が液体を飲み込むと、その様子が一変した。液体を飲まされる前は怯えや諦めが漂っていたのに、今ではまるで忠誠を誓うかのようにジッとザイードを見つめている。ザイードはその様子に満悦しながら笑顔を浮かべると、使用人達に命じて奴隷達の拘束を解かせた。
「わいが、主人のザイードや。あんさんらの仕事は、わいを襲う悪い奴からわいを守ることや。
 あんじょう、よろしくやったってな」
「ハイ……カシコマリマシタ、ザイードサマ」
 ザイードの言葉に応える奴隷達は、ただ命令に従うだけの機械を思わせた。
 ――新たに奴隷を買い集めて、薬で意識を支配しかつ能力を強化し、グドルフやイレギュラーズ達に対する戦力とする。それが、ザイードが講じた対策だった。
 そうして使用人達と共に守りを固め、ザイードはグドルフからの報復に備えるのだった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回はグドルフさんから送られたアフターアクションを元に、全体依頼<フィンブルの春>の内の1本をお送りします。グドルフさんの縄張り『山賊峠』への襲撃を企てた黒幕、奴隷商人ザイードを「ぶちのめ」して下さい。

●成功条件
 奴隷商人ザイードを「ぶちのめ」す(生死不問)

●失敗条件
 奴隷商人ザイードを取り逃がす

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ザイードの幻想での屋敷です。二階建ての広めの洋館。廊下で戦闘となる場合、前に立てるのは一人程度です。前と後ろを入れ替える程度は出来ます。
 仕掛けるタイミングはお任せしますが、ザイード側は交代で警戒しているため、夜だからと言って有利になることはありません。
 入口は玄関と裏門。それ以外からの屋敷への出入りは、少なくともザイード側は不可能です。
 屋内が戦場となるため、様々なパターンからの奇襲が想定されます。注意して下さい。

●使用人 ✕10
 ザイードの使用人達です。能力傾向は高命中高回避、高機動力高EXAです。

・攻撃手段など
 スローイングダガー 物至(遠)単 【変幻】【多重影】【流血】【麻痺】【致死毒】
  投擲が可能な短剣です。投擲する場合は射程が括弧内になります。
  予備が複数あるため、投擲しても無くなったりはしません。

●奴隷 ✕20
 新たに買い集められ、薬で支配され強化された奴隷達です。
 能力が強制的に引き上げられており、命中回避はそこそこですが、一撃の威力は使用人より大きくなっています(強化された力で力任せにしているためです)。
 あと、EXFも強制的に引き上げられているため、中々倒れにくくなっています。
 戦闘不能に陥った場合はその攻撃が【不殺】でない限り高確率で死亡しますが、後述する「手加減」を用いた場合は【不殺】がなくても死亡させずに昏倒させることが可能です。
 薬自体や能力強化による悪影響については、しっかり治療すれば完全に除去できるものとします。

・攻撃手段など
 スローイングダガー 物至(遠)単 【変幻】【流血】【麻痺】【致死毒】
  投擲が可能な短剣です。投擲する場合は射程が括弧内になります。
  予備が複数あるため、投擲しても無くなったりはしません。
 ステルス(薬の影響によるものです)

●ザイード
 今回の標的である奴隷商人です。戦闘能力はありません。

●手加減
 このシナリオでは、手加減することで【不殺】がない攻撃でも相手を死亡させずに戦闘不能にすることが可能です。
 ただし、その加減を上手く見極める必要があるため、命中と攻撃力が半減された状態で判定されます。

●関連シナリオ(経緯を詳しく知りたい方向けです。基本的に読む必要はありません)
 『<ヴァーリの裁決>狙われた山賊峠』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5440

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <フィンブルの春>山賊に喧嘩売りし奴隷商の命運完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月29日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
ジェック・アーロン(p3p004755)
天空の勇者
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
アルヤン 不連続面(p3p009220)
未来を結ぶ

リプレイ

●奴隷商人の屋敷を前に
「──いやあ、随分いい屋敷だね。たんまり稼いでるようだ、さぞかし奪い甲斐があるだろうよ!」
 奴隷商人ザイードが篭もる屋敷を前にして、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は快哉を叫んだ。グドルフは、以前縄張りにしている山賊峠に『山賊狩り』を送り込まれた件の落とし前を付けに来ていた。
「あーあ、無駄な欲なんて出すから。グドルフの縄張りに手を出すなんて……ご愁傷様」
 そのグドルフの様子に、『黒の猛禽』ジェック・アーロン(p3p004755)は同情したように漏らした。あくまで同情したよう、であって、本当に同情しているわけではない。何しろ、ザイードは奴隷の売買を生業としているのだから、同情に相応しかろうはずもなかった。
「……酷いっきゅ。奴隷を使い捨てるなんて、酷いっきゅ。家族や故郷から無理やり連れてこられて、肉盾兼戦闘員なんて酷いっきゅ。
 そんなブラック商人はぺしぺしするっきゅ」
 『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は、目を涙で潤ませながら憤っていた。先の『山賊狩り』において、ザイードの部下が飲用した者の精神を支配する薬を所持していることが確認されいる。その上でザイードが質を問わず新たな奴隷を買い漁っているともなれば、レーゲンの言うように肉盾兼戦闘員として使い潰すつもりであろう事は簡単に予想出来た。
「――少々、嫌悪感が酷いですね、今回は。お仕事ということで割り切ってはいるつもりですが、今後活動できないようにはさせて頂きたいな、と」
 『山賊狩り』からの一連の流れを聞いていた『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)は、うんざりしたようにつぶやいた。言動こそひねているが、元来善良な性質である瑠璃にとって、ザイードの所業は聞くに堪えない。それだけに、ザイードはここで確実に潰しておきたかった。
「ええ、人身売買に手を出したのが運の尽きというもの。その身で罪を償って頂きましょう。
 ――犠牲になってきた人達の為にも」
 瑠璃のつぶやきに、『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が深く頷いて応じる。沙月とて、ザイードの所業を許しておくことは出来ない。これまでザイードに売られてきた奴隷達を救うことは出来ないが、ザイードを断罪することが、そうした人達へのせめてもの手向けになるだろうと沙月は思う。
(全く、どうしてこうも人間は奴隷というものが好きなのだろうね。ペットのように愛玩するか、或いは喰う喰われるの単純な関係で良いだろうに。
 愛のない事だ)
 今回に限らず、ファルベライズの件で傭兵から奴隷商人が流入して以来の『大奴隷市』を端緒とする奴隷がらみの事件続きに、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は内心で呆れ、嘆息していた。悪魔であるマルベートには奴隷を従えたがる人間は理解出来ないようだったが、一方で人間の方も、マルベートのこの思考は理解し得ないだろう。
「山賊って、私も苦手なのよね……モンスター以上に執念深いし、こういうのも居るわけで」
 グドルフが快哉を叫ぶのに、聞こえよがしにぼやいてみせたのは、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)だ。だが、グドルフの方は気に留めた様子もない。イーリンはさらにわざと大きく、はぁ、と溜息をついてみせた。
「山賊……のほうが悪いんじゃないんすかー?ㅤでも、今回は商人の方が悪いってことっすよねー」
 商人の屋敷を襲撃する山賊、と言う図についそんなことを漏らしたのは、『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)だ。アルヤンは、扇風機の父と旅人の母との間に生まれた、紛う事なき扇風機だった。扇風機と人間との間に生まれた紛う事なき扇風機とはなどと考え始めると哲学を越えた何かの深淵を覗きかねないので、アルヤンの父が元いた世界は奇妙なのだ、で流しておくこととする。
「奴隷を弄ぶだなんて許せないっすー。とっちめてやるっすよー」
 つい先程のようなことを漏らしてしまったが、アルヤンも経緯はわかっている。その緩い口調からはわかりずらいものの、ザイードを許さないと言う義憤は抱いていた。

●玄関と裏門より
 イレギュラーズ達は、玄関と裏門との二手に分かれてザイードの屋敷に乗り込むことにした。玄関からはマルベート、レーゲン、ジェック、沙月。裏門からはグドルフ、瑠璃、イーリン、アルヤンと言うメンバーだ。

「チワーッ! 大将、やってるかい!」
 ドガッ!! 派手な音を立て、大声で叫びながらグドルフはドアを蹴破った。そのまま、裏門から四人が雪崩れ込む。
「自分は、ここで待ち伏せしとくっすー」
「ええ。何かあったら、知らせるわ」
 アルヤンはイーリンに何かあったら連絡出来るよう使い魔を渡し、裏門から脱出しようとする者を逃がさないよう待機することにした。イーリンは頷いて、使い魔を預かる。そして三人は、一つ一つ部屋を捜索しながら、玄関から乗り込んだメンバーとの合流を図った。
 グドルフ達の部屋の捜索は安全に進んだ。壁を透過して部屋の中を確認出来る、瑠璃がいたからだ。薬に支配された奴隷やザイードの使用人が奇襲を狙って潜んでいる部屋もあったが、待ち受けているのを見透かされては、どうしようもなかった。
「ハッ、商品である奴隷を戦いに使うたあねェ。よおし、まずはこの奴隷どもを、クソ商人から根こそぎ奪ってやるぜえ!」
 予想は出来ていたとは言え、奴隷を戦力にしてくるザイードのやり方を、グドルフは呆れ混じりに嘲笑い、改めて奴隷達をザイードから解放すると決めた。
 ともあれ、グドルフ達と奴隷・使用人との間では、実力に天地の開きがある。奴隷はグドルフにぶっ飛ばされるかイーリンの魔眼、瑠璃の虹色の雲で無力化させられたが、使用人は容赦なく止めを刺された。死体の記憶を探る瑠璃のギフトによって、屋敷の内部やザイード達の情報を集めるためだ。
 そうして、屋敷の構造とザイード達の内情は、グドルフ達に筒抜けとなった。

 屋敷の裏側でグドルフの大声が響くと同時に、屋敷の表側では音も無く銃弾が放たれた。二階の窓から玄関を見張っていた使用人が、ぐらり、と崩れ落ちる。突入前にザイードに逃げられてはたまらないと、ジェックが見張りを狙撃したのだ。
 そして沙月、マルベート、レーゲン、ジェックは、玄関の扉を叩き壊して、屋敷の中に突入していった。
 玄関から入ってすぐは大きなホールになっていて、数人の奴隷と使用人が待ち構えていた。だが、イレギュラーズ四人を相手にするには力不足でしかなかった。奴隷は命までは殺めないよう留意した沙月の拳やジェックの銃撃、レーゲンの慈悲の一撃で昏倒させられた一方、使用人は生死は問わないとばかりに倒されていった。
「うん、丁度良いおやつだ」
 そして使用人は倒れたが最後、マルベートに食われた。
 沙月とマルベートは玄関からザイードが逃げたりしないようホールに残り、沙月から使い魔を預かったジェックとレーゲンが先へと進んだ。ジェックもレーゲンも当然奇襲には十分警戒していたのだが、裏門から進むグドルフ達ほど安全に、とはいかなかった。何度か、奇襲を受けてしまう。
 しかも悪いことに、このペアは後衛同士であった。前に立ち攻撃を受け止める前衛の不在は、二人に少しずつではあるが傷を負わせることとなった。それでも、最終的にジェック達は、グドルフ達との合流を果たした。

●最後の部屋にて
 裏門から突入したグドルフと玄関から突入したジェック達が合流してからは、屋敷の捜索はスムーズに進んだ。瑠璃によって壁を透過して部屋の中を突入前に確認出来ることと、屋敷の大凡の構造が判明したことが大きかった。
 一階を全て捜索し終えたグドルフ達は、二階の捜索を始める。その捜索も、いよいよ最後。中央の大部屋を残すのみとなった。
「けっきょく、ここか……いよいよ、クライマックスだぜ。待っててやるから、早く合流しな」
 大部屋には他に扉がなく、グドルフ達がここに陣取っている限り、中にいるであろうザイードは逃げようがない。ならばと、グドルフは使い魔を通じて、ホールに陣取る沙月とマルベート、裏門前で待機しているアルヤンを呼ぶ。全員が合流すると、グドルフ達は扉を叩き壊すと、回避の技量に優れ、時間予測で微かながら予知能力を得られるイーリンを先頭に、中に突入した。

 十五本のスローイングダガーが、大部屋に突入したイーリンを襲った。だが、その程度は想定してイーリンは戦旗『紅い依代の剣・果薙』の帆でその身を隠している。それに加え、元来高い回避の技量を時間予測で強化しているとなれば、スローイングダガーは三本ほどしか当たらず、その傷はどれも掠り傷程度でしかなかった。
「いいね、そうでなくちゃ面白くないよ。たっぷりと、食わせてもらうよ」
 イーリンに遅れて大部屋に突入したマルベートは、大部屋の壁沿いに並ぶ十五人の使用人と奴隷を見て、舌なめずりする。薬臭い奴隷十人は食う気が起こらないとしても、五人の使用人は腹を満たしてくれそうだった。
 マルベートは、部屋の奥にいる使用人三人を、紅く燃える悪魔の瞳で見据えた。獣の如き視線を受けた三人達は、ギロリ、と険しい表情でマルベートに目を剥いた。
「絶望の青の歌を聴いて、同士討ちするっすー」
 そこに重ねるように、アルヤンが使用人達に仕掛ける。緩いアルヤンの雰囲気とは裏腹の、踏み入る者を絶望と死に叩き落としてきた海を歌う、呪いのような冷たい歌声が使用人達の間に響く。使用人達の目は、何かに魅入られたかのように正気を失っていた。
(ザイードは何処だろ? 何処かに、隠れてるのかな?)
 ザイードの姿が見当たらないことを怪訝に思ったジェックだったが、今は目の前の敵を倒すのが先と、同じく使用人達に向けて『Greed』と『Gluttony』の二挺の狙撃銃で乱射する。その乱射は出鱈目に放たれたように見えて、全てを見通す視座の元に計算されており、無数の銃弾は嵐のように跳弾して使用人達の身体を貫いた。
「もう戦わなくていいっきゅ! 休むっきゅ!」
 悲痛な声で訴えながら、レーゲンは左側手前の壁際にいる奴隷三人を、真夜中のような闇で包む。その闇に包まれた三人は戦う力を失い倒れるかと思われたが、薬の効果だろうか、気力を振り絞るかのように倒れるのを堪える。そんな力はもう残ってないはずなのに、薬のせいでまだ戦わされるのかと哀しくなったレーゲンだったが、イーリンが慰めるように声をかけた。
「大丈夫よ、よくやってくれたわ。あとは、任せて頂戴――さぁ、お休みなさい」
 紅と蒼の螺旋が浮かび上がった魔眼を、イーリンは倒れまいと堪える三人に向ける。魔眼を目にした三人は、気を失ったようにどさりとその場に倒れ伏した。
「そうですね。これ以上、あなた達を戦わせるにはいきません。どうか、休んで下さい」
 左側の壁際にいる奴隷は、奥側の残り二人。瑠璃は願うように告げながら、その二人を虹の如く煌く雲で包んでいく。二人はまだ倒れこそしないものの、戦う力を奪われ、動きを鈍らせていった。
(自らの意志で従っている使用人はともかく、薬で無理やり支配されている人達を殺すわけにはいきませんからね……)
 沙月は、右側の壁際にいる奴隷達五人を殺めないように注意しつつ、いつ果てるともない連撃を繰り出した。五人は何度攻撃を受けてもしぶとく立ち続けたが、一人、また一人と力尽き、遂には全員が昏倒して倒れ伏した。
「おう、クソ商人は何処にいやがる! 死にたくなければとっとと吐きやがれ!」
 いるはずだと思ったザイードが見当たらないことに苛立ったグドルフは、その苛立ちをぶつけるかのように使用人に『山賊刀』で斬りつけた。盟友達と自身とを表わすような、軽やかで、豪快で、荒々しい斬撃の連続が、使用人を襲った。使用人は怯え斬撃に傷つきつつも、ザイードの所在は吐かなかった。

●ザイード発見
 大部屋にいた使用人や奴隷はイレギュラーズ達の倍近くはいたが、イレギュラーズ達の敵ではなかった。ローレットでも実力上位のイレギュラーズ達を相手にするのに、所詮倍に満たない数では不足だった。
 奴隷は皆死なせずに昏倒させ、使用人も残らず倒したが、肝心のザイードが見つからない。まさか取り逃がしたのでは、と言う不安が過ぎる一方で、屋敷の中で戦った三十のうち十五がここにいたのだから、ここで間違いないと言う確信もあった。
 ザイードは必ずこの部屋の何処かにいる、と捜索を行うイレギュラーズだったが、その最中、マルベートがふとした違和感を感じる。
「……うん? 何か、この部屋の奥の壁、変だよねえ……」
 マルベートの感じた違和感は、何かの根拠があるわけではなく、あくまで直感に基づくものでしかなかった。だが、その違和感を伝えられたイレギュラーズ達は、瑠璃に壁の向こうを見てもらうことにした。瑠璃が奥の壁を透過してみると、奥は狭い隠し部屋になっており、その隅でガタガタ恐怖に震えている男がいた。瑠璃の姿に見つかったと悟った男は、隠し扉を開けて外に逃れようとする。
「ひっ、ひいいいっ!」
「おや、ホストがどちらへ行こうというのです?」
 逃がすまいと奥の壁から戻ってきた瑠璃だったが、その時にはほぼザイードは詰んでいた。
「――それで?」
 逃げようとするザイードの前に、イーリンが立ちはだかって行く手を阻んだ。同時に、ジェックがすかさず『Greed』と『Gluttony』でザイードの左右の太股を撃ち抜き、動けなくさせる。
「よお、遊びに来たぜ──オイオイつれねえなあ、どこ行くんだよ?」
 苦痛に悶え、ゴロゴロと床を転がるザイードを、グドルフが上から鬼のような形相で覗き込んだ。
「もう二度とこんな商売なんて出来ねえようにしてやるよ。覚悟はいいか? てめえも奴隷同然にまで落ちぶれる覚悟はよ!」
「ひいいっ、知らへんかったんや! 金なら出しますさかい、堪忍しとくんなはれ!」
 怒気を込めて吼えるグドルフに、ザイードは懇願した。だが、グドルフがそんなものを聞き入れるはずがない。ザイードはグドルフに、存分にぶちのめされた。――その後のザイードの運命は、想像にお任せしたい。

「おめえらも土産くれえ欲しいだろ。好きなの持って行けよ」
 屋敷内の財物は全て収奪され、レーゲンとイーリンの癒やしによって回復した奴隷達に余さず分け与えられた。人身売買のような非道で為した財など価値は無く、これで奴隷達の喪われた時間や尊厳は戻らないものの、せめてもの手向けとしたいと言うグドルフの意向によるものだった。
 自由と幾ばくかの財を得た元奴隷達は、イレギュラーズ達にぺこぺこと深く頭を下げながら、屋敷の前から辞した。その後ろ姿を見送るイレギュラーズ達は、彼らのこれからが今までの分を取り戻せるほど幸せなものであらんことをと、願わずにはいられないのだった。

成否

成功

MVP

志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業

状態異常

レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)[重傷]
希うアザラシ
ジェック・アーロン(p3p004755)[重傷]
天空の勇者

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。山賊峠に手を出したザイードはしっかりと「ぶちのめ」され、奴隷達は一人として命を落とすことなく、解放されました。
 MVPは迷いましたが、使用人の死体から引き出した記憶による、屋敷の構造の把握がその後の捜索に貢献したとして、瑠璃さんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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