PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<フィンブルの春>三魔必滅

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……おのれ、忌々しい……」
 どことなく貴族然とした独特の雰囲気を纏う男は苛立ちを露わに、その報告書を見ていた。
 ぐしゃぐしゃに報告書を丸め、怒りに任せて投げつける。
 投げつけられた召使らしき女性がそれを静かに拾って片付けるのを見て舌打ちし、ひったくる。
「おい! 奴を呼べ!」
 怒鳴り散らすように女性に命じて、男は再び椅子に座りこんだ。
「全く、公はなぜあのような雑草の如き者を重用するのか。
 下賤で汚らしいただの孤児であるというのに」
 ぐしゃぐしゃになった報告書の中には、数人の人物の肖像画が描かれている。
 男が特に嫌悪感を見せるのは、中でも上に見える顔だ。
「許されてはならぬ……許されてなるものではない。
 我が国は勇者たる貴き血の美しき結晶である。
 それなのに、あのような小魚が混じるなど許されぬ……!」
 血走った眼は烈火の如き憎悪に満ちていた。

 コン、コン、と小さく音が鳴る。
「入れ!」
 苛立ちを隠さず、男は扉を睨んで怒鳴り散らす。
 少ししてから、ひとりの青年が入ってきた。
 年の頃は高く見積もっても20代後半であろうか。
 髪の色こそ男と瓜二つだが、その表情は精悍で勇ましく、涼とした佇まいには騎士としての誇りさえ見受けられた。
「お呼びですか、父上」
「よいか、貴様を我が一族より擁立する勇者とする!
 武技の鍛錬は忘れておらぬな!」
「……お――僕が勇者、いえ勇者候補ですか?」
「その通りだ! 貴様の腕を見込んでのことだ! 分かっておるだろうな!?」
「――感謝いたします、父上。
 父上と、このザヴァリシュ家の家名にかけて。
 恥ずかしくない戦いを為してまいります」
 親子というにはあまりにも畏まった礼を示した青年を蔑むように睨めつけ、男は鼻で笑う。
「今すぐ準備をせよ、弟たちに恥じぬ戦をするのだ!
 まずは――クリーズリンダーフェルト付近に現れた魔獣を討伐せよ!」
 言い切るやいなや、手で払うように退出を命じて視線を外す。
 青年はそれを見て、くるりと踵を返してその場を後にした。


「魔獣の報告? いえ、そのような話は聞きませぬが……」
 クリーズリンダーフェルトの町長に声を掛ければ、彼は驚いた様子を見せる。
「なに? いや、そんなはずは……」
 青年が訝しむ様子を示したその直後――背後の扉が荒々しく叩きつけるように開かれた。
「町長! 大変です! 町の外にある山から、今まで見たこともない魔物が姿を現しました!
 町の自警団が出撃したところ、数人が石化されかけたとのことです!」
「なに!?」
 驚愕する町長の顔が、青年と扉の方を行き来して、怪しむようなソレに変わる。
 そしてそれは、青年の方も同じだった。


 シラス(p3p004421)はここ数日、自身の領地で行なわれた暗殺の裏にいる首謀者を探すべく調査を続けていた。
 その戦果は、あまり芳しくはない。なにせ、物的証拠がまるで見当たらない。
 首謀者の隠蔽が上手いというわけではない気はしていた。
(あいつ、腕が良かったんだな。得られた証拠がほとんどない。
 あいつが俺の領地に入ったルートは何となくわかったけど……)
 それ以上の情報がない。よほど警戒されていたのか、そのルートさえかなり大回りだった。
「こんばんは、シラスさん、少しよろしいですか?」
 声を掛けられて、顔を上げる。
 そこには情報屋のアナイスが立っていた。
「もし、お時間があれば、こちらのお仕事をお願いしたいのですが」
 そう言って、アナイスが提示してきた依頼を眺めて――『そこ』がどこか見て顔を上げた。
「出現した魔物の討伐と、『魔物の出現より先に到着して魔物を討伐しに来たと言った人物の捕縛』か」
「ええ、普段であれば偶然、あるいはそういう事がないか聞いただけ、とも取れます。
 しかし、今は件の勇者選挙に沸いております。
 中には『不正により自分達の擁立した者を勇者にしようとする』貴族も出てきているとか。
 念のため、捕縛もお願いします」
 事件自体もそうだが、シラスの意識は舞台となる町にある。
 ――クリーズリンダーフェルト。
 そこは、シラスが探し当てた暗殺者ジェドの最後――或いは最初の足取りがあった場所だった。

GMコメント

 さてそんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 <フィンブル>2本目、シラスさんのアフターアクションでもあります。
 シラスさんに暗殺者を送り込んだのは誰なのか、そしてなぜなのか――その野心と憎しみの一端が見えるかもしれませんね。

●オーダー
【1】カトブレパス、バジリスク、亜種スキュラの討伐

【2】『隻腕の廃嫡子』ヘルフリート・フォン・ザヴァリシュの捕縛

●フィールド
 クリーズリンダ―フェルト郊外にある山間部。
 正確には山麓に広がる森の中です。
 遮蔽物は多く、スキルによっては通りが悪くなるかもしれません。

●エネミーデータ
・亜種スキュラ
 下半身が蛇、腹部に3つの狼の顔を生やした片手剣を握る女性体の怪物。
 怨嗟に満ちた風貌で誰彼構わず殺しにかかります。
 物攻、反応、EXAが高く、命中、HP、抵抗は並、それ以外はやや低め。
 また、【怒り】が入りやすい弱点があります。

<スキル>
怨嗟狼撃(A):対象に向かって突撃し、腹部にある3つの狼の首を伸ばして攻撃を加え身動きを封じます。
物中単 威力中 【移】【スプラッシュ3】【足止め】【泥沼】【停滞】【必殺】

蛇身円環(A):周囲の対象を下半身で薙ぎ払って吹き飛ばすと共に体勢を崩させます。
物自域 威力中 【飛】【乱れ】【崩れ】【体勢不利】

怨讐阿修羅(A):それはまるで修羅の如き猛撃を加えます。
物至単 威力大 【背水】【復讐:小】【邪道:小】【必殺】【戦闘中1度のみ】【自身に無策を付与(解除不可、デメリット)】

・カトブレパス
 やたら大きく重たい角を持つウシ型の怪物です。
 非常に鈍重ですが、それを体力で補っています。
 HP、神攻、命中、防技が高く、その他の能力値は低め。

<スキル>
邪視(A):瞳の邪眼を開放し、辺り一帯をその邪眼で映し出します。
神遠扇 威力中 【万能】【麻痺】【呪縛】【石化】【必殺】

怪牛暴動(A):その巨体、その威容はただ暴れるだけで脅威となるのです。
神至単 威力中 【ショック】【痺れ】【必殺】


・バジリスク
 尾びれ付近が蛇の下半身になった2~3m級の雄鶏です。
 動きが素早く、カトブレパスと連携を取ります。
 神攻、反応、回避が高く、それ以外の能力値は低め。

<スキル>
蛇毒(A):その身に流れる猛毒はあらゆるものを痛めつけます。
神自範 威力中 【猛毒】【致死毒】【致命】【麻痺】

毒炎(A):その口から紅蓮の炎をあふれ出し、対象へ吐きつけます。
神遠単 威力中 【業炎】【炎獄】【麻痺】

●NPCデータ
・『隻腕の廃嫡子』ヘルフリート・フォン・ザヴァリシュ
 近隣に領地を持つザヴァリシュ家の長男。
 不慮の事故により片腕を失い廃嫡された後、義手を嵌めてハンデを乗り越えた努力の人です。
 本人は『勇者候補生』だと思っているようですが……。
 父を当主とする実家は血統主義であり、派閥はミーミルンド派に属しますが、本人はその事情から実力主義です。
 貴族的立場上はともかく個人としては強者ぞろいのイレギュラーズに好意的となるでしょう。
 戦闘面では卓越した防御技術と抵抗力を攻撃に転換するカウンタータイプです。

<スキル>
専守先攻(A):護りを固め、後の先を撃つ凄絶なる斬撃です。
物至単 威力中 【自カ至】【攻勢BS回復:小】【怒り】

先見迅剣(A):千里を見据え、渾身の力で斬り伏せることで対象の抵抗力を奪います。
物至単 威力大 【渾身】【多重影:小】【邪道:中】【ショック】【感電】

尽忠報主(A):主君を傷つけることなく、それ以外を斬り伏せる熟練の妙技です。
物近域 威力中 【識別】【苦鳴】【停滞】【自カ近】

護剣之構え(P):この剣はただ主を守るために
自付与 【反】【覇道の精神】

・ザヴァリシュ兵×7
 近隣に領地を持つザヴァリシュ家の兵士達です。
 ヘルフリート自ら鍛え上げた精鋭です。
 イレギュラーズよりは若干ながら劣りますが、魔物退治ならば可能です。
 近接アタッカー×3、ディフェンダー×1、バッファー×2、ヒーラー×2。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <フィンブルの春>三魔必滅完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月28日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
聖女頌歌
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
シラス(p3p004421)
竜剣
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
水月・鏡禍(p3p008354)
守護者
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)
深き森の冒険者

リプレイ


「暗殺者を使ってみたり、勇者選挙の影で行われる不正行為。どこにでも悪い人はいるんだね……
 正々堂々と挑もうとは思わないのかな?」
 現場へ向かう『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は思わずつぶやいていた。
「街の人たちがピンチなのは間違いないから、みんなで助けないと!」
 裏があるような気がするとは思いつつ、『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)はそれはそれとして優先することがある。
 3体の魔物がもしも町の中へと向かってしまえば、その被害はどうなるか分からない。
「魔物が出現する前に、まるでそれを知っていたかのように討伐しにきた者がいる……
 魔物を人間が操る話を最近よく聞くし、倒させるために放つのは十二分にあり得る話ね」
 走る『月花銀閃』久住・舞花(p3p005056)は呟いた。
「あえて魔物を放ち、それを討って名を上げる。
 そういう企ては他でも耳にしました」
 駆ける『深き森の冒険者』ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)は、舞花の言葉に頷いてみせる。
「流行りのマッチポンプというわけだ」
 走る『双竜の猟犬』シラス(p3p004421)は脳裏にある男の顔を思い浮かべた。
(それにジェドが行き来した町と今回の事件が偶然の一致とは思えない。
 これだけの真似をする人間があちこちにいてたまるか)
「まぁでも、なりふりを構わないのは上等だが焦って尻尾を出したようだな。あるいは……」
 現状、『勇者選挙』の上位を駆け抜けていることそのものがそれだけ気に食わないのか。
 考えることは色々ある。なんにせよ、被害自体は実際の事だ。
「貴族とは権謀術数を駆使するものだ。それは兄さんを傍で見てきたから当然理解している。
 けれどこれはあまりにも杜撰な策だ」
 貴族を出身とする『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は中々に辛辣な感想を得ていた。
「焦って血が昇り順序を誤る。その上自国民を無為に危険に晒すときた。とてもじゃないが謀とは呼べない」
「はぁ、貴族の立場の大変なんですね」
 感心したように息を漏らす『鏡越しの世界』水月・鏡禍(p3p008354)がリウィルディアの言葉にそんな感想を漏らす。
「単純にこういう小細工は僕の好みじゃあ無いんだよね」
 空に疾駆する『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)は森を見据えて速度を上げる。


 走り続けたイレギュラーズが森の中へと入っていくと直ぐにそれを確認できた。
「何者だ!」
 そう声をかけてきたのは、振り返らず女性体の怪物――スキュラと刃を構える男だった。
 その風貌は恐らく、彼らのリーダーだろう。
 分散している8人の勇者候補生たち。
「ローレットのイレギュラーズだ。依頼を受けてきた」
 シラスはリーダーらしい男――ヘルフリートの横へ姿を見せると同時に自分たちの身分を示す。
「横入りしてすみません。少し手伝わせていただきたいのですが」
 続けるように鏡禍はヘルフリートへそう提案を示す。
「ローレットか……!」
 2人の言葉を聞きながらもヘルフリートはまだスキュラを見て構え続けている。
「色々想うことはあるかもしれませんが、先ずは力を合わせて目の前の魔獣を討伐しましょう!」
 ルカはそんなヘルフリートの背中にそう声をかけた。
「あんたらだけじゃあの3体の相手は骨だろ」
 自らにルーン魔術に由来する障壁を張り巡らせれば、ちらりとこっちをヘルフリートが見たのを感じた。
「あぁ、そうだな。どれからやる」
「サヴァリシュ卿。貴方の隊はあの大きな牛からお願いします。私達は鶏からやりましょう。
 その女はこちらが足止めします」
 代わって答えたのは舞花だった。
「分かった! それで行こう」
 跳躍したヘルフリートが間合いを開けて、牛――カトブレパスの方へ向かっていき、部下らしい者達が続いていく。
 スティアはそんなヘルフリートたちと入れ替わるようにスキュラの方へ。
 セラフィムを起動させ、天使の羽根が舞い散る。
 魔力が福音となって旋律を奏でていく。
 羽が舞い、鳴り響く旋律はさながら教会のように。
 あるいは終焉の花のように咲き乱れ、スキュラの注意を引きつける。
『ィィィィァァァァアアアア!!!!』
 引っかかったらしいスキュラの叫び声が耳を打った。
 疾走する蛇の身体がスティアの眼前へ獣の牙を剥く。
「さて、我らが勇者の梅雨払いと行きましょうか
 ――今日という日の花を摘め」
 全てを置いていくかのような圧倒的速度を以って、ハンスは奔る。
 それはまるで戦場に敷かれた道のように真っすぐに駆ける花の道。
 青から黒へ羽が舞い散りながら鶏――バジリスクへ駆け抜けた。
『クゥゥアアアア』
 威嚇するようにバジリスクが叫び、跳躍してイレギュラーズへ。
 着地と同時、全身から猛毒があふれ出した。
 魔力をポーションに込め、セリカはそれをスティアの方へ放り投げた。
 振りまかれたポーションが光の帳と化してスティアの身体を包み込んでいく。
 帳は結界へと変じて形成される。
 それが終わるよりも前にセリカはもう一本、ポーションを取り出し、シラスへと放り投げる。
 淡い帳が森の中に輝いていく。
(事が終わったら、どうなってしまうだろうね、彼等は)
 既に若干の疲労を見せるサヴァリシュ隊を見てリウィルディアはふと思う。
「もう少し頑張ってもらわないとね」
 剣に魔力を籠め、指揮棒のように振るえば、自らの調和が傷を受けた彼らの傷を癒していく。
 それが終わったあたりで、リウィルディアは魔力を集中させる。
 生み出されたのは二頭の蛇。悪性が音を立てる。
「いけ、Aksara」
 顕現したそれらをカトブレパス目掛けてけしかけた。
 己が身を蝕む悪性が巨牛に牙を突き立てる。
 呼吸を整え、舞花は静かに剣を向けた。
 距離を詰め、剣を振るう。銀閃は美しく冴え冴えとした迅速なる剣技が紡がれる。
 それはまるで内側の存在を凍てつかせ縛り付けるかのごとき変幻の刃。
 熟練の刃に縫い付けられたバジリスクの身体が微かにその動きを止める。
「落ち着いて……」
 ルカは呼吸を整える。
 一つ、二つ、呼吸と共に魔力を整えて、握りしめた神託の杖を媒介する。
 放たれた魔力術式は仲間達が浴びた毒性を解析し、治癒していく。
 僅かながら魔力が呼吸と共に戻ってくるのを感じた。
 鏡禍は握りしめた手鏡をバジリスクに向けて構えた。
 反射した魔力の光がバジリスクの眼を中てる。
 突如の輝きにバジリスクが微かに声を上げる。


 バジリスクが断末魔の悲鳴を上げる。
 身を震わせながら空へ向けて叫んだ魔物は、そのまま頭の方へと落ちていく。
 それと数秒の差で、もう一つ、何かが倒れる音がした。
 そちらに向けば、カトブレパスが横たわっている。
 極限の集中に身を置くシラスは、その音が耳に入っていない。
「――」
 小さな呼吸、同時に爆ぜるように前へ。
 苛烈なる身体強化魔術を糧に、踏み込みと同時にスキュラの狼の顔へと拳を叩き込んでいく。
 最後の跳び蹴りを女の腹部へ突き刺して、跳躍。
 地面を削りながら降りれば、女の剣があった。
 その軌跡をまるで見えているが如くすらりと躱して、身を起こした。
 スティアは敵の様子をじっと見ていた。
 少しずつだが、敵の動きは鈍ってきている。
 その一方で、荒い息をするスキュラの視線にはより一層と殺気が滲んでいる気がした。
 穏やかな調子で紡がれる旋律が響き、スティアの傷を癒していく。
 怒りと怨嗟に満ちた彼の魔獣の猛攻撃の殆どを、スティアはその身で受けている。
 堅牢な防御術式と持ち前の抵抗力をもってしても、受ける傷は多かった。
 ハンスは一気にスキュラの前へと進み出ると共に、確かに空を踏む。
 虚光の軌跡は槍のように鋭く、まるで槍のように真っすぐに駆け抜ける。
 迸る青き閃光は業を連れて瞬き、羽ばたきの音がスキュラの耳を確かに撃っただろう。
『ォォォォ――キャァァァァァアアアアァァァ!!!!』
 スキュラの身体が黒い魔力に包み込まれ、近くにいたスティアを始まりとして、修羅の如く切り刻んでいく。
 それが多くのイレギュラーズの体力を大きく削り、ザヴァリシュ兵を吹き飛ばした。
 動きが停まる頃、スキュラの身体がふらつき始めた。
 パンドラが輝いていく。
「皆大丈夫!?」
 セリカは声をかけながら錬金魔術を起こす。
 集中力と魔力をかき集め、その場で高速で回復薬を作り出すと、最も傷の多いスティアへその薬を差し出した。
 それに続けるようにリウィルディアは剣に魔力を注ぎ込んでいく。
 淡い輝きを持つ美しき魔力が傷を受けた仲間へ賦活力となって降り注ぐ。
 疲労感を払拭し、体力を取り戻させる光が傷を塞ぐ。
 舞花は少しだけ息を入れて前へと走り抜けた。
 慣性を利用するように走り抜けたまま、隙だらけのスキュラへ剣を振るう。
 高い集中力を用いて振るわれた剣撃は鮮やかな軌跡を描き、冷たい銀の閃きを齎す。
 それが終わる頃、舞花は再び踏み込んだ。
 それはまるで鏡に映る花の幻の如く、鮮やかにスキュラの胴部を深く刻む。
 鏡禍は自らの魔力を振り絞った。
 バジリスクとの戦いで受けた多くの傷が、まるで元から無かったかの如く瞬く間に癒えていく。
 不滅を体現するが如き再生力により体を起こす。
「よく狙って……」
 杖を真っすぐに構えて集中する。
 淡い輝きが強く瞬き、隙だらけのスキュラの身体を締めあげていく。


 3体の魔物を討伐し終えたイレギュラーズは、ヘルフリートへと質問すべきことがあった。
「私達より先にここに来ていたみたいだけど誰の依頼でここに来たの?」
「僕達か? 僕達を後見している方の依頼だった。
 そちらは……ローレットのイレギュラーズの方々、ということは町の方々だろうか?」
 スティアの問いかけにヘルフリートが穏やかなまま答える。
「なんか不正行為で自分達の擁立した人を勇者にしようと考えている人がいるみたいなの」
「そうなのか……いや、たしかに勇者というのは我々――幻想貴族にとっては魅力的だ。
 不正してでもその後見を為したいという者がいてもおかしくないな」
 少しばかり考えてすぐに頷いて答えてくれた。
「貴方は魔物の事を誰に聞いたのですか。まだ発見されていない魔物の事を、一体誰に?」
 舞花の問いにヘルフリートは押し黙る。
「それは……僕の父だ。だが……いや。まさか」
 信じられぬと言わんばかりに首を振る。
 疑念は過っているようだった。
「魔物の出現は君達が到着した後だと聞いている。
 それ自体はそちらも違和感があるんじゃないかい?」
 リウィルディアが続ければ、ヘルフリートは再び押し黙ってしまう。
「勇者候補は誰でも名乗り出る権利があるからそれは良いとして、
 その為の魔物退治……その話の出所が卿のお父君、あまりにも分かり易いことがあるとは思いませんか?」
「あぁ、言いたいことは分かる。
 だが、父がまさか……そこまでするような人では……」
(個人的には誠実そうな人なので捕まえたりというのは少々気が引けますが……)
 鏡禍は少しだけ思案する。
(……マッチポンプ? にしても彼が関わってなければ放免でしょう)
 それが結局の結論だった。
 裏で何が行なわれているにしろ、彼自身が知らないのであれば、どうこうしようがない。
 依頼人だという町長とて、ヘルフリート自身、驚いていたと言っていた。
 であれば、彼はどちらかというと利用されているだけ、なのだろうと。
「僕たちを信じてもらえませんか?」
 ルカはじっとヘルフリートを見つめた。
 実際に会ってみて彼らから受けた印象は、マッチポンプを利用するような浅ましい者には思えなかった。
 だからきっと、彼らも利用されているのだろう。そう思ってやまない。
(何とかしたいです……)
「サヴァリシュ卿……ヘルフリートさん。どうか、私達に同行願えませんか」
 疑念を強めるヘルフリートに畳みかけるように、舞花は次の言葉につなげていく。
「あの、きっとヘルフリートさんも幻想や、そこに暮らすみんなの平和のために頑張りたい気持ちは本当だと思います。
 だから、その為に少しでも協力してもらいたいから、一緒に来てもらえないでしょうか……?
 お互いに知ってる事を伝えあって、一緒に頑張りたいですから……!」
 セリカは真っすぐにヘルフリートを見て説得を試みる。
「この次は領民に死人が出るかも知れません」
 続けるように言葉にしたのはルカである。
 今回はイレギュラーズが来た。
 なんならヘルフリートたち自身も先に来れていた。
 だから、怪我人ですんだのだ。次は分からない。
 その言葉に、ぴくりとヘルフリートが強張ったように見える。
「……民をわざと危険にさらす企てに騎士たる勇者たる誇り等無いでしょう。
 実際に被害すら出てしまった。そのようなものに加担する事を、貴方の誇りは肯定するのですか?」
 舞花が続け。
「例え親だとしても間違ってることには間違ってるって言わなきゃ。
 それが家族としての責任だと思う」
 同じようにスティアが言えば、ヘルフリートは静かにうなずいた。
「そうだな。たしかに、その通りだ。同行したいと思う……が」
 ヘルフリートはこちらを見てから、後ろにいる疲弊している兵士達を見た。
「彼らを休ませてやりたい」
 疲労感を滲ませる兵士達から改めてイレギュラーズへ視線を戻し、彼は言った。
 それに反応を示したのはハンスだった。
「近くに馬車を手配しておいたから、それでいこう」
 元より、『罪を犯して連行される貴族』という外聞が広まったりすることをヘルフリートが望まなかった時のために用意しておいたものだ。
「そうか。それがあるなら、ちょうど良かった」
 ヘルフリートは別段気にする様子も見せず、そんなハンスに頷いた。


 馬車に乗ったヘルフリートを連れて、動き出してから少し。
 シラスはヘルフリートの前へ腰を掛けていた。
「聞きたいことがある」
 そう言ってシラスが取り出したのは、2枚の絵だった。
 その上でその2人の特徴を詳しく教えていく。
「それで、この2人のことを見たことないか?」
 じっと見た後、ヘルフリートは小さく首を振って否定を示す。
「ないな。こちらの男に関しては、一度でも見れば忘れたりはしないだろうから」
 真偽を見抜くようにじっと見据えるシラスは、ヘルフリートの表情が少しだけ変わったのを見た。
「……ただ、父はこの数ヶ月ほど、誰かと連絡を取っているようだった。
 使用人や家臣たちが声を聞いて入室の許可を得てから入っても、父の書斎には誰もいない、ということも数度あったと聞いている」
 シラスはひとまずの礼を言ってから黙考する。
(得たかった情報には少し及ばないけど、それもそうか。
 俺を狙うまでの足取りぐらいしか追えないほど用心してたのに、依頼人の家に出入りするようなことはしない、か)
 先程の話を考えれば遠隔で連絡は取っていたのは確実だろう。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
聖女頌歌

状態異常

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)[重傷]
聖女頌歌

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
戦いはひとまず終わり、ヘルフリートがイレギュラーズ側になりました。
MVPは強敵を抑えた貴方へ。

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