シナリオ詳細
君が世界の推しとなれ
オープニング
●ワンナイトのライブバトル。乙女よ歌え、踊れ、ただ一本のサイリウムを灯さんがため、世界の推しに今こそ成るのだ!
世界に、暗闇があった。
音も光も、誰もない、星すら見えぬ闇があった。
そこひとたび、音がした。
巨大なスピーカーから鳴り響く、それはミュージックイントロだった。
押さえていた誰かの叫びが、歓声となって大気へ湧き上がる。
押さえていた光が、スポットライトとなってステージを照らす。
そこに立っていた彼女に、彼女たちに、世界は――ギャラリーは狂喜した。
「みんな行くよ!」
マイクを手にした、炎堂 焔 (p3p004727)のポージングである。
時を遡ること一日前。
希望ヶ浜学園体育館でのこと。
練達のいち区域にして、2010年代の東京を忘れがたき者たちの隠れ家。
体育館の様相は令和の世からは忘れられた2010年のそれがたしかに香っていた。
違和感があるとすれば。
「やあ皆、来てくれてありがとう☆」
バリバリの昭和アイドルコスチュームでステージ上のスポットライトを浴びた校長、無名偲・無意式(p3n000170)の存在である。
華麗なムーンウォークからシャカシャカとキレのいいダンスを披露した後、バンダナをなびかせパープルカラーのタオルを頭上で振り回しながら情熱的に歌い出す。
曲後半からは素早くはきかえたローラーシューズで体育館へと躍り出ると客席の間を軽やかに滑り抜け、アクロバティックなアクションを交えて爽やかに汗を散らした。
……そんな様子を、タイム (p3p007854)とリア・クォーツ (p3p004937)はパープルサイリウムを無心に振りながら眺めていた。
無心すぎて二人の姿がなんかぽわーんってゆるキャラみたいになっていた。
「わたしたち……何をしてるんだっけ」
「『見本を見せてやる』の所までは覚えてる……」
――もうちょっと、時を遡ったほうがいいかもしれない。
更に遡って希望ヶ浜学園校長室の夕暮れ。
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル (p3p008017)と白薊 小夜 (p3p006668)は校長室に一番乗りしていた。
厳密には、既にソファで寝そべってワインのグラスを半分以上あけている校長がいて、そこへブレンダと小夜の二人が同時に入ってきた形である。
二人は、互いの顔とうっすらとギザ歯で笑う校長にかかる夕暮れの陰影を見(看)て、目の奥でぼうっと色の異なる炎をたてた。燃えさかる赤い炎のブレンダと、光なきつめたい深海の炎をたてる小夜。
「私達を呼んだということは……」
「ああ……十中八九……」
誰かを斬って欲しい。誰かを破壊してほしい。
そんな言葉が引きつるように不気味に笑う校長の口から漏れる……そう構えた、瞬間。
「みんなーーーーー☆ おまたせーーー☆ マジカルアイドル、あるてみにゃんだにゃん☆」
ふりっふりの衣装に猫耳くっつけてマイクを握ったアルテミア・フィルティス (p3p001981)が扉をバーンとあけて現れた。
振り返るブレンダ。振り返る小夜。
固まるアルテミア。
「嘘吐きいいいいいいいいい! 全員このテンションで待ってるって言ったじゃない!!!」
「言いましたし嘘でした」
クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)が後ろからひょっこりと顔をだした。
眼鏡をちゃきっとやるクラリーチェ。
「お似合いですよあるてみにゃん」
「おだまりっ! そいつは死んだわ!」
ぬいだ猫耳を床にべしーんと叩きつけるあるてみにゃん(故)。
と同時に、ブレンダたちもこれ思ってた依頼と違うなって察し始めていた。
そんな彼女たちにもう話を始める校長。
「今回祓うべき夜妖は、剣で斬ろうが銃で撃とうが倒せない。それだけ強力な固体というわけだ。
そして放置しておけば次々と……」
ぱさ、とテーブルに投げられた数枚の写真。
しれっと混ざっていたエルス・ティーネ (p3p007325)が写真をひとつつまみあげると、数日前の新聞記事を思い出した。
「これ……行方不明になったって噂の」
「ああ。この希望ヶ浜を出て行ったのだといわれ既に忘れられつつある……『行方不明者』、だ」
よもやと思い他の写真を見てみれば、どれもこれも行方不明行方不明。テーブルに散った十を超える写真すべてが行方不明者のものだった。
しかも、驚くべき事に。
全員がアイドルコスチュームを着て自撮りをし、SNSには『アイドルになります☆』と書いてあった。
「夜妖は時として夢と欲望を喰う。夢と欲望を手放した人間は、現実の操り人形となる――のみ」
続いてスッと差し出された写真には、先ほど提示された十数名が全員揃って全く同じ衣装をきてライブステージで歌う姿がうつっていた。
どの女性も笑顔を作ってはいるが、目に生気はなく、夢や欲望を失った操り人形とよぶに相応しい有様である。
よくみれば観客席のギャラリーたちも、サイリウムをふってはいるがその色は暗く、まるで操られているかのように生気が抜けている。
「夜妖『アライブライブ』――人間の夢と欲望を喰い、傀儡とするもの也」
●説明しよう
夜妖『アライブライブ』は捕らえた人々の夢と欲望を奪い、毎夜形ばかりのアヤツリライブを繰り返している。
彼らを救う方法はただ一つ。
夜妖の結成した傀儡たちのアイドルグループYOR12とライブバトルを繰り広げ、ギャラリーたちのサイリウムを灯すのだ。
「灯す方法はシンプル!」
マイクを手にした焔がアイドル衣装でビッと指を指した。
「この人達に、夢と欲望を思い出させるキラキラなライブを見せるの――だっ!」
曲が始まる。
夢と欲望の舞台が、幕を開ける。
糧となるのは、君自身だ。
- 君が世界の推しとなれ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年04月19日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費200RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ふりっふりにしてやんよ
「最近こういう仕事が増えてるのどうしてかな?」
ふりっふりのミニスカワンピースを着た『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)が、スポドリのボトル片手に振り返った。
オレンジと白のバイカラーで整えられたワンピースには、これでもかとフリルがフリフリしまくっている。
「衣装だけなら嫌いじゃないんだけどなあ~!」
そんな様子を見(?)ていた『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)が、とりあえず回れ右して楽屋から出ようとしたのを……タイムは逃さなかった。
がしっと腰のあたりを掴んで引き戻す。
「小夜にゃんも着るの手伝いましょうか? ううんだいじょうぶ遠慮しないで」
「まだ何も言ってないけど……」
ほっぺにぐいぐい猫耳カチューシャをおしつけてくるタイム。
が、小夜は早くも抵抗を諦めたようで、ふうと息をついて猫耳を頭に装着した。
「踊りは時々転んじゃうけれど唄なら任せて頂戴。
何せ私の表向きの職は瞽女、昔はこれだけで食べてた時期もあるもの」
って言いながら、タイムの頭にも装着。
「あの、わたし一応心優しく可憐でちょっぴりお茶目な女性をコンセプトでやらせて貰ってるのであって決して香草焼きとか可燃性物質とかそういうのじゃなくて……あのおっ!?」
「香草? なんのはなしでしょう……」
おさよにゃんわかんない、という顔(?)で首を振る。
そして元凶もとい火種もとい『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)へ振り返った。
「どうしてこうなっちゃったんだろう……このままにしておくわけにはいかないけど、夜妖って変なのが多いよね。
……ね、リアちゃん!!!!!!!」
背後から殺気をめらめらしていた『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)がガシイッと焔の肩を掴み。振り返る焔のほっぺに人差し指を立てた。
↓ここにボイスを差し込もうね↓
「焔ぁ!!!!」
↑ここだよ↑
「うわあああキレてる! すっごいキレてるよ!」
「当然では」
「たすけてエルスにゃん!」
背後に怨霊をひきつれた焔が『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)の肩にがしいって掴まると、エルスはどこか遠くをながめながらぶつぶつつぶやいていた。
「なんで私しれっとここに居るのかしら。ほんと、なんでしれっと居るのかしらね……。
逃げてもいい? ダメよね、知ってるわ……」
「エルスちゃん!? いやエルスにゃん!」
「誰がエルスにゃんよ」
慌てて振り返るエルスに、『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)が扉に寄りかかり腕組みをして声をかけた。
「諦めろ。はじめにアルテミにゃんが現れた瞬間に運命は決まったようなものだ」
なんかすげーデキるお助けキャラみたいな登場のしかたをしたが、イエローベースでフリッフリのアイドルコスチュームに身を包んでの登場である。
JKだろうが魔法少女だろうが猫耳メイドだろうがやってきたブレンダの新機軸であった。
「私なんかがふりふりの衣装を着るよりももっと似合う者がいるだろう……。
こんな姿、全身図に名をつけるならそう……アイドルゴリラ」
「そこは譲らないのね……」
そしてよく見たら入り口をバッチリ出口を塞いでいたので逃げるに逃げれなかった。
ビッて二本指を立ててくるブレンダ。あれだよねなんとか星の王子が未来からきた息子が帰るときにやるあれだよ。
と、ここまでアイドルたちの有様をご覧戴いたところで。
満を持しての。
「みんなーーー☆ おまたせーーー☆ ねこみみアイドル、アルテミにゃんだにゃん☆」
たぶん今日一番燃やされたであろう『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)がにゃんこポーズで着替え用カーテンのむこうから現れた。
そしてそのまま両目かっぴらいた。
「皆あのテンションで待ってるって言っていたのに、嘘吐いたクラリーチェさん絶許」
「ちがうんです。あれは完全台本だったんです。『アルテミアさんにねこみみをつけて貰い、あるてみにゃんだにゃん☆』とノリノリで登場してもらう……って」
『だいほん』て書かれたかみっぺらを手に『めそめそ』って口で言いながら顔を隠す『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)。
「ってことで許されませんかね」
「絶許!」
本日二度目の絶許であった。雑誌の表紙にされる日も近い。
とかやっていたら、アルテミアもといアルテミにゃんは猫耳を頭にがしょーんと装着した。
いいですよここまで来たからにはやってやりますよッ」
「さすがアリテミにゃん!」
「アルテミにゃん!」
「さ、先頭に立ってアルテミにゃん!」
「リーダー!」
「ちょっとまって私!? 私がリーダーなの!? うそでしょ!? お、押さないで!」
●オンステージ
終わらない地下ライブ。目の死んだアイドル達が歌って踊り、目の死んだ観客たちが黒く光るサイリウムを振っている。
そんなステージの一角……つまり対バン用セカンドステージにスポットライトがおりた。
ハッとして振り返る観客たちに、ステージ床下の仕掛けをつかって大ジャンプで飛び出したアルテミアの姿がきらめいた。
「みんなーーー☆ おまたせーーー☆ 今日は私たち『ASH8』のライブに来てくれてありがとーーー☆」
「「『ASH8』!?」」
突如現れたアイドルに、観客達がざわめく。
「ASH……一体何の略なんだ」
「『アルテミにゃんスーパーえっち』かもしれん」
「ちがうしころすわよ☆」
キラキラ笑顔のまま手近な油性ペンをビュッて投げるアルテミシア。
「マジカルアイドル、あるてみにゃんだにゃん☆ 私の歌声で皆のハートをばきゅん♡っと撃ち抜いてやるにゃ☆」
「いま物理的に撃たれましたけど」
「身体が火照って震えるけれどこれは羞恥心じゃなくて、私の内なるアイドルパワーが抑えきれずに武者震いしているだけにゃん☆」
もういっぽん握ったペンをベキィてやりながらスマイルするアルテミにゃん。
「クラリーチェだにゃん☆ 今日はよろしくにゃー!」
その後ろから眼鏡を外したクラリーチェがひょこっと現れて手を振った。
クラリーチェはエロいことするときだけ眼鏡を外すというピン博士の言葉を信じ我々はジャングルのお口へと向かった。
まって地の文どっかいかないで。
「ボクはほむにゃん、皆を笑顔に出来るパルスちゃんみたいなアイドルに憧れる、明るさと元気が取り柄のアイドル!」
とかやってると炎と共に現れた焔が横ピースでステージインした。
さすがアイドル系の依頼はやり慣れてる焔だけあってキレッキレである。
「お揃いの猫耳を付けた皆と一緒に、今日も得意なダンスで皆を元気にするにゃんっ☆ ねっ、エルスにゃん!!!!!!!!!!!!」
ギャアンと効果音と集中線つきで振り返ると、端っこに逃げようとしていたエルスにゃんをひっつかんで中央にもってきた。
こっちもこっちでアイドル系の依頼を(しかたなく)やりなれているエルスである。
いつもラサで『あの方』を餌にフィーッシュされてるエルスの、ある意味貴重な国外アイドル活動であった。
「わ、わたしはべつに……」
逃れようとするエルスの肩を、反対側からリアがガシィって掴んだ、爪めっちゃ食い込んだ。
「皆ー! こーんばーんはー!
おはようからおやすみまで、皆の性癖に寄り添う『ASH8』!
貴方の性癖ぶれいく☆ぶれいく! リアにゃんだにゃんっ☆
えっ?口から何か出ているって?
これは、ただの吐血だよっ☆」
「ひいっ」
リアは本気だった。『逃げればヤる』ということが、パトカーのサイレンが近づくとその意図がわかるようにありありと認識できた。
「あなたの心を鷲掴み(物理)☆ ぱわふるアイドルのブレにゃんだぞ☆」
そこへスッと入ってくるブレンダ。
手にしたペンとパイナップルを両手に持ち、リズミカルにステップを踏んだあと『にゃん☆』て言いながら両方片手で粉砕した。ぺんぱいなぽーってこんなのだっけ?
そんな様子に、観客たちが少しずつ目に光を取り戻し始めた。
眼鏡観客がキリッと眼鏡の位置を直す。
「アイドルをやりなれない初々しさと人前にでる恥ずかしさ。アイドルは遠いものという概念を無意識にとりはらい、まるで親戚や幼なじみの舞台に来ているかのような親近感を与えてくれる」
「いきなりどうした」
「このアイドル……推せる!」
ビッとサイリウムを三本、焔、リア、エルスそれぞれのテーマカラーのものを両手の指の間にはさんで握ると振り回し始めた。
そんな舞台上に突然のおさよ。
「みんなの心(ハート)をズンバラリン☆ ちょっぴり危険なアイドルのおさよにゃんだにゃん☆」
ステージの天井を五右衛門斬り(よく巨大金庫の扉とかをまあるく斬るやつ)して天井板と共に落ちてきた小夜が刀を収めてきゃぴーんと横ピースした。目ぇつぶったまま。
「うおー! おさよにゃーん!」
「ピンでくれー!」
「ボイスもくれー!」
小夜カラーのサイリウムが乱れ飛ぶなか、同じく空いた天井からよいしょよいしょって下りてきたタイム。
脚がつかなくてしばらくバタバタしたのちぴゃーといって転落した。
仰向け姿勢から起き上がって横ピース。
「ジェネリックハーモニア☆ タイムにゃんだにゃん☆」
「うおー! タイムにゃーん!」
「ピンでくれー!」
「ボイスもくれー!」
「同じ反応!?」
が、ギャラリーはあったまったようだ。
踊るなら、今だ!
「みんなーーー☆ 今日はさいっこーのライブにするよーーーーー☆」
「それでは聞いてください、『トキメキ!ケイオス☆ハイスクール!』」
こうして八人のアイドルたちは、世界で唯一PPPでまるごと歌詞書いても権利問題でもめない歌をうたいはじめたのだった。
●アイドルは光
YOR12の死んだライブから客をもぎ取るまでそう時間はかからなかった。
ステージを駆け下り観客たちの間を走り、ずきゅんばきゅんしながらウィンクや手振りを欠かさない彼女たち。観客達が夢中にならぬはずがなかった。
走り抜けたアルテミアがクラリーチェとハイタッチして交差し、その瞬間を目撃した観客がアルテミにゃんとクラリーチェカラーのサイリウムをうりゃほいダンスしながら振り回す。
一方で小夜はダンスにもつれて転ぶもてへぺろすることで観客達のうりゃほいを誘発していた。
そんな彼女を引き起こすリア。
ぎゅっと抱きついて頬にくちづけする小夜。
その瞬間咲き乱れたリリィオーラに、観客たちが目を輝かせて二人のカラーを振り回した。
「えっなんで」
「百合営業は受けるからやるように、って」
「あの校長ォ」
リアは吐きそうな血(既にちょっと吐いた)をおさえて跳躍。魔法の光でふわりと飛ぶと、スカートを押さえて観客達の頭上をすり抜けた。
突然のサービスらしき何かにハッとした観客達。
一方でスカートを押さえるのが忙しく誰かが『黒ォ!』て叫んだせいで飛ぶのを忘れたリアがタイムめがけて転落した。
「わぷっ」
タイムを押し倒したリア。観客達が『ピンでください』のうちわを振り回す。その状況からそーっとのがれようとしたエルスとブレンダ――の足首をタイムはガッと掴んだ。
当然二人は顔から倒れる。
「なにをする!?」
タイムは顔をあげ、目を潤ませて微笑んだ。
「地獄へ落ちるときは……いっしょですよ……」
「それ道連れにする側がいう台詞じゃないわ!」
「えるふは寂しいと(お前を道連れにして)死んじゃうんですよ」
おまえもピンになれ! といって何かの谷に引きずっていくタイム。
エルスとブレンダはタッグを組んでタイムを何かの谷に突き落とすと『私は何度でも蘇るー!』て叫んで笑いながら落ちていくタイムを背に立ち上がった。
「さあ、そろそろシメよ!」
二人はシンメトリーなポーズをとると、しかし対照的な表情を作ってマイクを握った。
派手なダンススタイルで観客を魅了し、要所要所で見せつける投げキスやウィンクでハートを打ち抜いていく。
曲の終わりと共に吹き上がる七色の紙吹雪。八人はポーズをとり、観客のサイリウムは彼女たちの色で振り回されていた。
ふと見ると、これまでめっきり描写のなかったYOR12たちがぐったりと脱力しその場に倒れていく。
彼女たちから抜け出た黒い霧のような怪物がひとつに合わさり、人の形をとった。
「永遠のライブを妨げるか。本当の幸せが貴様などにわか――」
「そぉい!」
ブレンダジャンピングドロップキックが炸裂。
霧だつってんのに物理攻撃で吹っ飛ばすと、手をかざしてエルスとタッチした。
「こんなライブいつまでも続けられないのよ! 『あの方』にまた見られたら……!」
氷の鎌をまるごと生成し、さっきの霧みたいなやつにぶん投げるエルス。
と同時にリアが(シ)スタードロップ(キック)をたたき込んでいく。
「オラぁ! 香草女の釣り餌として燃やされた気持ちがお前にわかるか!」
「そうだったっけ!?」
タイムがわたわたしながらもマイクをとり、『うたいます!』といってラジカセの再生スイッチをおした。
昭和アイドルソングをゆらゆらしながら歌うタイム。
小夜はここぞとばかりに刀を抜くと、夜妖の背後へいつのまにか現れてズバァと背を切り裂きさらなる連続斬撃によって夜妖をものっすげー浮かせた。
そこへジャンプしてバーニングほむらぱんちを繰り出す焔。
まだ名前をいってもらってない夜妖の頬にめきいってパンチをめり込ませると、続くクラリーチェとアルテミアへ呼びかけた。
「クラにゃん、アルテミにゃん! トドメだよ!」
「恋焔の炎氷でフィナーレを飾るにゃん!」
「はいっ」
クラリーチェはアルテミアカラーのサイリウムを四本ずつ両手の指の間にグッと握ると、とんでもねーキレのダンスを炸裂させた。
こちら神気閃光の使用シーンとなっております。
そして光のレールを駆け抜けたアルテミにゃんはどこからともなく取り出した剣でまだ名前の出てない夜妖を切り裂き、そして『まだ喋ってる途中でしょうが!』て言いながら消滅していくのを背に着地した。
静寂。
そして拍手。
そして響くアンコール。
アルテミアは、クラリーチェは、焔は、リアは、小夜は、エルスは、タイムは、ブレンダは――顔をあわせて頷いた。
「それじゃあアンコールいくわよ! ――『12時過ぎのにゃんデレラ』!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ライブ風景はちゃっかりビデオ撮影され、後に関係各所に送られたという。
GMコメント
アイドルってなんだろう
世間がつらいとき。人生が苦しいとき。現実の奴隷になって起きて働いて寝るを繰り返す時。同じ世界に存在する同じ人間が見せるキラキラに、救われるときがある。
夢をもって生まれ、欲望をもって生きて、けれどどこかでどちらも誰かに奪われ手放してしまった誰かに……再びそれらを与える存在。
もしかしたらそれが、アイドルなのかもしれない。
彼女たちが笑うなら、なんだか生きていける気がするから。
■オーダーとシチュエーション
あなたは校長の依頼と策略によりアイドルユニットを結成することになりました。
目的は夜妖のアイドルライブに乱入し、観客達のハートに火をつけること。
さあ、ユニット名を決めましょう。
可愛い衣装を纏いましょう。
パフォーマンスを考えましょう。
あなたの個性を見せつけましょう。
今宵あなたはアイドル。
渇いた現世の奴隷と化した人々に、生きる光を与える者。
■ライブバトル
YOR12のライブが始まると同時に、逆側のステージが現れ皆さんのライブが始まります。要するに対バン形式です。
観客達のハートをがっちりとつかみ、夢いっぱい欲望いっぱいのステージに仕上げれば皆さんの勝ちとなります。
ここは簡単なようでいて実はなかなかムズカシイところですので、相談しながらプレイングを練っていきましょう。
お勧めな方法としては『他メンバーの魅力や個性を教えあう』『それを引き出せるパフォーマンスを提案する』『個性のかぶりがあるならそれを利用してコンビネーションパフォーマンスを繰り出す』といった具合です。
マジで一人では完成できないユニットならではの技ですので、この機会におなかいっぱいオーダーして楽しんでください。
■〆バトル
ライブバトルに勝利できたなら、傀儡となった人々は解放されます。
一方で傀儡を失った夜妖『アライブライブ』はその姿を現し、直接バトル可能な状態となるでしょう。
こいつが倒せなかったのは傀儡たちの中に閉じこもっていたからにすぎないので、もはや敵ではありません。
皆さんの攻撃スキルをばかすかたたき込んで倒してください。
困ったら一行『これでフィナーレよ、〇〇をたたき込むわ!』て書けば上手くいく気がしませんか? わたしはします。
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