PandoraPartyProject

シナリオ詳細

たとえ世界を敵に回しても、ロリは正義

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

「諸君にお集まりいただいたのは、他でもない」
 眼鏡にバンダナに『I Love 幼女』Tシャツの男はテーブルに両肘を突いたまま、深刻そうに語りはじめた。
「今、ひとりの世界の至宝──幼女が、笑顔を奪われる危機に瀕している」
 ……練達製の幻影魔法式アニメーションの話だろうか?
 いや違う。紛うことなき現実の話だ。
 依頼人はこう続ける。
「ドン・ブッソーニ……知る者もいるかもしれないが、黒い噂の数知れない強欲商人のひとりだ。それが先日、とある男に金を貸して焦げついた」
 それだけなら、いくら相手が強欲商人だったとしても、返せなかった男が悪いとしか言いようがない。だが……自分が憤っているのはその後のことだと、依頼人は努めて感情をおし殺しながら特異運命座標らへと語る。
「ブッソーニは……あろうことか借金のカタとして、男の8才になる娘、フローラちゃんを連れ去ろうとしているのだ……」
 フローラは、依頼人によれば、聡明で花のように可憐な少女であるという。その向日葵のような笑顔の少女はしかし、もしもブッソーニの手に落ちれば、奴隷としてどこかに売りとばされたり、そうでなくとも『奉公』の名のもとに様々な形で穢されてしまうかもしれない。いや実際にそうなるであろうことは、『幻想』の裏事情に詳しい者であれば容易く想像がつくだろう。

「そこで……だ」
 依頼人の眼鏡が妖しく光った。
「諸君には、男との契約を済ませて『幻想』首都メフ・メフィートに戻ってくる馬車隊の中から、愛すべきフローラちゃんを救出して貰いたい。場所は街道の、森と岩山に挟まれた見晴らしの悪い辺りがいいだろう」
 無論、馬車の周囲には腕のいい護衛が10人雇われており、さしもの特異運命座標といえども正面きって戦えば返り討ちに遭うだろう。だが……護衛を金品を積んだ別の馬車に引きつけておいて、その間に別働隊がフローラを助けて逃げてくるだけなら別だ。
 その後フローラを両親の元に返すことは、ブッソーニに襲撃の首謀者が両親だと思わせてしまう危険があり、できない。だが自分の伝手を使ったならば、フローラにはブッソーニに売られるよりもずっと幸せな生活をさせてやれると依頼人は語る。
「私は、諸君に名も明かしていない。そのような人物の言葉がどれほどの信頼に足るものか、諸君が疑うのも無理はないだろう」
 だが……彼は唐突に立ちあがる!
「私の幼女愛は本物であり、幼女を愛でるためならいかなる汚名も被る覚悟があることを、我ら『紳士協定』の名の下に誓ってみせよう! ユリーカちゃんぺろぺろ!!」
「ひゃぁぁっ!? この人はなんなのですか、なのです!!!」
 ……唐突にユリーカ・ユリカ(p3n000003)をぺろぺろしはじめた依頼人の言葉に、裏なんて複雑なものがあるようには見えなかった。

GMコメント

 いや、ユリーカさんこう見えて15歳だから……。
 どうも皆様、るうでございます。そんなわけで皆様、ひとりの少女を救うための義賊として力をお貸しください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度は(これでも)Aです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●襲撃現場
 右を切りたった岩山、左を視界の悪い森に挟まれた一帯です。ブッソーニの馬車隊は3台の幌馬車から成り、御者を除けば、一番前の馬車にフローラ・ブッソーニ配下の商人・付与と回復専門の神官、真ん中に売上の金貨と見張り用の丁稚、後ろに攻撃魔術師が2人、神官が1人が乗っています。馬車は右に寄り、残る6人の壁役のうち2人ずつがそれぞれの馬車と森の間を歩いています。
 なんで依頼人がこんな情報を情報精度Aで仕入れてこれたのかは謎ですが……。

●フローラ
 ゆるく内側にカールしたブロンドの髪とえくぼが可愛いらしい少女です。ただ、今はブッソーニに引きとられるのを怖がって、商人とは少し離れた位置で大人しくしています。
 とはいえ、盗賊が馬車に乗りこんできたら、流石に商人の傍にゆくでしょう。

●注意事項
 この依頼は、形式上は正当な契約に基づいた取引を妨害することになるので、『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。また、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
 ……ただ、「人助けして悪名がつくのは納得いかん!」って方がもしいれば、プレイングに【悪名回避】と明記しておいてください。その上で、正体が判らないように十分に変装して行動していた場合は、成功しても名声が下がらないように特別に計らいます(この依頼だけの特殊ルールです)。

  • たとえ世界を敵に回しても、ロリは正義完了
  • GM名るう
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月18日 20時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
銀城 黒羽(p3p000505)
シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)
花に集う
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
ヒグマゴーグ(p3p001987)
クマ怪人
ライネル・ゼメキス(p3p002044)
風来の博徒
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered

リプレイ

●襲撃
 まばゆい雷の奔流が、馬車列を真横から貫いた。
 驚き暴れる馬たちを、御者が必死に宥めようとする。何者かの襲撃が発生したことは確か、可能なら速やかにこの場から逃げねばならぬ。にもかかわらず馬たちの暴走を防ぐため馬車を止めねばならぬ一行に対し、襲撃者、ルア=フォス=ニア(p3p004868)の動きは早い。
「ヒャッハー! 金目の物をまるっと寄越すのじゃぁ!」
 再び始まる意識集中。護衛らがその様子にいち早く気づき、こちらへと駆けよってこようとした……が、しかし襲撃者らの動きも負けじと素早い!
「来るぞ……気をつけろ!」
 護衛たちが跳びすさると同時、何かが目と鼻の先で爆ぜた。
 『風来の博徒』ライネル・ゼメキス(p3p002044)の賽の目の結果だ。こっちの動きはバレバレか、と言いたげに舌打ちする、顔を布と伊達眼鏡で隠したライネル。彼は頭の片隅で、これだけいかがわしい奴に見せかけとけば正体もバレんだろうと算段しているが……元から胡散臭いのではと問われれば、彼は肯定も否定もしない。
 だが折角だ。もうちょいと怪しい人物を装ってやることにしよう。
「……今だ。好きに暴れろ」
 ライネルが指示を出すのと同時、さらに2つの影が森から現れた。
「えへ、アバれてもいいんだね? じゃあナーちゃん、いっぱいアイしあっちゃうぞー!」
「グマハハハ! 命が惜しければ出すものを出すんだな!」
 血と墓土の匂いが色濃くこびりついたシャベルをふり回す蛇子の少女は『アイのミカエラ』ナーガ(p3p000225)。そして、鎧を纏い、凶暴な爪と牙をむき出しにして威嚇するのは『クマ怪人』ヒグマゴーグ(p3p001987)! ヒグマゴーグのベルトのバックルには、邪悪なる秘密結社ジャークデスの証が燦然と輝いている! ……その意味を知る者がこの世界にいないのは、彼にとっては嘆くべき事実だが。
 その『怪人たち』の凶暴な肉体を、飛来した衝撃波が打ちすえた。後ろの馬車からの援護魔法だ。
「馬車を守れ! それさえできれば我々の勝ちだ!」
「援護はするわ! 1人ずつ確実に倒していって!」
 男女が魔術書を片手に次の詠唱を始めるが、男のほうはローブが焦げている。『花に集う』シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)の投げかけた、炎の花に焼かれたのだろう。
 そんな状況にもかかわらず、自らを傷つけた犯人を捜すよりも先に中央の馬車を襲う相手を狙ってくるあたり、護衛たちの練度の高さが伺えた。厄介な連携だ……だが、そいつを少しでも崩してやったならどうだ?
「どうした? マトモにやり合う自信はねぇのか?」
 『Quell the Storm』銀城 黒羽(p3p000505)の嘲笑が戦場に響き、護衛たちの神経を逆撫でた。
「盗賊風情が馬鹿にするな!」
 憎々しげに返しはするが……かろうじて彼らは踏みとどまる。彼らの目的は馬車を守ること。盗賊と正々堂々と決闘することじゃない。護衛たちは数の上では優位なのだから、相手が巨大な化け物でもない限り、防戦していれば十分なのだ!

 ……そんなことを彼らが思っているだろうことは、森の少し前方に潜む『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)からもよく見てとれた。あとは、先頭の馬車が再び走りだし、後方と上手く分断されたところを狙って……馬車に乗りこんでやろう。
(フローラちゃんを強欲商人に渡すわけにも、いくら強欲商人のせいだとはいっても、大事な娘を借金のかたに渡してしまう親の許に返すわけにもいきません。依頼主さんにも不安がないわけじゃないですけど……今のところ、それが一番いいのです)
 隣には、仏頂面をした『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の姿。弱いと何にも決めさせてもらえない、本当に人間ってどうしようもないよ、と独りごちる彼が何を思っているのかは、ルルリアにもいまだによくわからなかった。
 でも、そんな彼にわだかまる心の闇が、同時に彼の力でもある。その力がフローラを救ってくれるのなら十分だ……ルルリアが今考えるのは、いかにフローラを商人の手から救いだすかだけでいい。
 もっとも……その瞬間が訪れるには、もうしばらく護衛たちを足止めした上でなければならないようだった。

●陽動
「そーらそら、気をつけんと丸焦げじゃぞー?」
 左右に小刻みに位置を変えつつ、ニアが護衛らに両手の金銀の『ガンウォンド』を向ける。ほとばしるサイキック。雷撃が敵を次々と襲って……しかし、綺麗に当たったのは1人だけ。
「……ほう。よう気をつけた」
 慎重に敵を狙わねばすぐにガス欠だ。なにせ、敵の数が多すぎる。
 もっとも、だとしても問題は何もなかった。彼女が強烈な撃破役であればあるほど、護衛たちは警戒して彼女を抑えにかかるはず!
「くそ……そいつが一番ヤバい奴か!」
 後方の馬車の護衛2人が、ニアを抑えようと中央馬車のところへ駆けだそうとした。だが――。
「あれ? ナーちゃんのアイじゃモノタりない?」
 ゴキッ。
 うち1人が体を『く』の字に曲げて、真横に数歩よろめいてた。哀れな護衛の腹部には、ナーガの巨大シャベルの先がめり込んでいる。
 妄執のアイ。死こそ真なる生だと信じる彼女の、母の慈愛にして少女の祈りだ。古傷まみれの筋肉質な巨体。鋭い歯を覗かせる裂けた口。それらがけれども自身の意に反し、人々の目に残虐性と暴力性の象徴として映ることを彼女はよく知っている。ああ、世界がアイに満ちればいいのに。
「化け物め!」
 真に危険なのは彼女だと知った後方馬車の護衛たちは、これで彼女に釘付けになるだろう。中央馬車からも1人くらいは出す必要があるかもしれない。
 だから、代わりにニアを抑えられる前衛がいたとすれば……前方の馬車を守っていた2人。
 彼らがちらと目をニアへと遣ったのを、ヒグマゴーグは見のがさなかった。
「グマッハッハ! どうやら、相当向こうが気になるようだな!」
 鎧をも易々とひき裂く凶暴な爪をこれ見よがしにふり回しつつ、悠然と彼らの前に立つ羆。思ったとおり、彼らは思いきり攻めてくる……あとはその圧力に競り負けたのを装い、自らもじりじりと後退すれば先頭馬車はがら空きだ! ……ここで実際に人間風情2人に圧されているというのが、ジャークデス怪人としては忸怩たる思いだが。
「賊は大した統制が取れてないぞ。このまま守りきれ!」
「決して馬車に近づかせるな……突破力の強い敵さえ撃破すればいい!」
 ヒグマゴーグを圧し返した護衛たちが声を上げた。それに呼応するかのように、膂力では優れたナーガの体を、魔法が次々と打ち据える。守りを捨てた彼女の巨体は、攻撃魔術師たちにとっては格好の的!
 数で不利な戦いの中で前衛を張らねばならぬのが、彼女の不幸、あるいは真なる幸福への第一歩であった。
 無理は承知だ。かといってナーガはまだ引くわけにはゆかぬはずだ。だから、それを助けることができるのは、それぞれがそれぞれの戦いをくり広げている今、きっと自分だけなのだとシルフィは知る。
 でも……もし、自分が前衛に出れば、集中攻撃を受けてしまうかもしれない。そのことを想像するだけで、彼女は思わず身震いした。
 今の彼女の原点は、圧倒的な悪意に翻弄されていたあの時だ。その後は幸いにも出会いに恵まれはしたが、だからか彼女は3年経った今も、自分に向く悪意にはいまだ敏感だ。だから。
(少なくとも人間として扱われているのなら、まだマシなほうです……)
 人間の悪意の底知れなさを知らない彼女の脳裏に、運命に任せればいいという考えもよぎる。
 でも……。
(……いえ。本当に少しでも良い方向に向かうのなら、それが一番ですよね)
 召喚され、島の外を見て回れることに張りきる義姉の顔を思いだしたなら、自分だけが諦めるわけにはいかない!
「えーと……命が惜ければ逃げたほうが身のためなのですよー」
 意を決してとび出して、小声で悪党っぽい台詞を言ってみたならば……護衛たちは、思わず互いに顔を見合わせた。
「なんだこの子? 訳ありか?」
「とりあえず保護だ保護」
 シルフィ、思わぬ形で護衛たちの戦力を奪う。思わぬ光景にライネルも手を叩きたくなるところだが、今はそれより自分の仕事をしてみせる番だ。
 はったりとポーカーフェイスは博徒の嗜み。奪われたシルフィをとり戻そう……としたフリをして、一気に中央馬車へと方向転換してみせる。あっと驚いた敵が間に割りこんでくれるなら、ライネル自身をチップとした賭けは、見事、特異運命座標の勝ちだ。
「そいつを止めろ!」
 護衛たち全員の意識がライネルへと向いた、その瞬間……ニアのテレパシーがもう1つの戦場と繋がった!
(今じゃ……あの娘のこと、汝らに任せたぞ!)
 同時、黒羽の声が戦場に響き、救助班の行動の物音を隠す!
「がっかりだ、このモヤシどもが! そろそろ、俺にもかかって来いよ」

●救出
 黒羽の顔が不敵に歪んだその瞬間……ルルリアとルフナが森からとび出した。
「敵襲か!? ……いや、子供!?」
 御者が一瞬の油断をした次の瞬間には、2人は馬車の中へと身を躍らせて……そこに、少女フローラはいた。

 じっとこちらを見つめるくりくりとした瞳。溜め息が出るほどさらさらとした髪は、父が没落して売られた今も、金色の輝きを失っていない。
 けれども、依頼人が語ったような向日葵の笑顔だけは、そこには存在しなかった。
 拘束されているわけじゃない。しかし彼女はこれからの自分の行く末を怖がって、そして後方に見える戦いに怯え、馬車の隅の旅の荷物を、小さな手でぎゅっと握りしめている。護衛の神官はそれを哀れんで、せめて戦いだけは速やかに終わらせてやろうと仲間たちに支援の術を飛ばすが、少女はその姿も見ようとしない。
「な、何だねキミたちは!?」
 馬車のいちばん奥で震える商人が2人を誰何したけれど、2人は何も答えなかった。
 代わりに神官が彼へと返す。
「先ほども、盗賊たちと一緒にいた子供が保護されました。この子供と女性も盗賊に囚われていたのでは?」
 2人にとっては実に都合のいい誤解だ。
 ぐいと、ルフナが商人に顔を近づける。その瞳の奥に何かひねくれたものが映ることに困惑しながらも、商人は彼に言葉をかける。
「キ……キミたち、私たちといればもう安心だ。一緒に来れば今後の仕事の斡旋もしてあげよう……」
 ……が、ルフナはさらに顔を近づける。
「さぞや大事なもの積んでると思いきや、阿漕商人の走狗とちっぽけなガキんちょじゃんか。……選びなよ、荷物を捨てるか、命を捨てるか」
「……こ、こいつらも盗賊の一味だ……!」
 商人が気づいた時にはもう遅く、ルフナは手近な宝石袋をかっぱらい、再び森へと身を躍らせる。その頃にはルルリアもフローラの耳元で何かを囁いた後、その手を取って馬車をとび降りている!
「やめろ! その子を返せ!!」
 商人が悲痛な叫びを上げたのは、それを許せば彼の商会での出世ルートが、永遠に閉ざされるからに違いなかった。残念ながらルルリアに、それを気にしてやる余裕なんてないけれど。
「価値のありそうなこの子は貰っていきます! 抵抗するなら容赦はしません! 後ろの護衛たちが来るまでには、貴方たちを殺害するくらいはできますから」
 商人が思わず身を退いた瞬間……彼女はフローラを抱えて跳んだ。その際、不安げに「本当に助けてくれるの?」と訊く少女に対し、これがほんとうに良いことなのか、自分でも判らぬ気持ちを抑えて頷きながら――。

●撤退
 ニアの声なき声が戦場に響き、任務の終了を特異運命座標らへと告げた。これ以上の戦いを続ける意味は、襲撃側、護衛側、双方にとってない。
 直後……ナーガの巨体がもんどりうって、頭からその場に倒れこんだ。
「とどめだ!」
 けれども敵の剣が届く寸前、彼女は最後の力をふり絞り、脱兎のごとく逃げだしてゆく。
「これイジョウ、アイせなくてゴメンねぇ!」
「あっ、おい!?」
 彼女の逃走があたかも予定外だったような顔をして、ライネルもその後を追いかけ森へ分け入った。先ほど金貨の馬車に向かおうとした時、護衛たちの腕にベットしておいて正解だった……彼らがライネルを止めるのに失敗していたら、彼は今頃金貨の袋を持ったまま、逃げ道だけ塞がれてお手上げだ。
「グマーッ! これだけやって、小娘1人さらうのがやっととは……その上、別の1人を奪われてしまうなど!」
 地団駄を踏んでみせたヒグマゴーグの任務も、これで一旦は完了だった。『保護』されてしまったシルフィは気になるが……さすがに、タイミングを見計らって逃げてくれるだろう。
「ええい、今日はこのくらいで勘弁してやろう! 覚えていろ!!」
 何故だかやけにサマになる捨て台詞を吐いた後、彼も一目散に馬車列を後にした。
「1人くらいは捕まえろ! 正体や、別の場所での襲撃を企てていないかが判るかもしれない!」
 護衛たちが追いかけてこようとする……が、その鼻先をかすめるかのように、ニアの最後のサイキックが飛来する。雷撃はちょうど今ので打ち止め。けれどもそうと知らない護衛らは、視界の悪い森の中で強烈な一撃を食らうのを警戒し、予想どおり追うのを諦めてくれる。
「さーて。これであの娘の未来が、ちっとはマシになると良いのじゃがな」
 後は、なるようになるだろう。悪名を糧に守った少女の未来に満足の笑みを浮かべつつ、ニアも集合場所へと足を向ける……。

●約束
「……彼女を引き渡すのに条件がある、とは、どういうことかね?」
 依頼人と落ちあう場所として指定された闇の中。依頼人の眼鏡は怪しく光り、黒羽をじっと凝視した。
「どうもこうもねぇ。こんなことをしてあの子は本当に幸せになれるのか、って話だ」
 睨み返す黒羽。まるで刺すような沈黙が、2人の間にわだかまる。

 外では自由をとり戻したフローラが、ぎこちない、けれども最初よりは幾分かうち解けた様子の笑い声を上げている。彼女が先ほどまでありえた運命とこれから起こりうる運命の違いを、どれだけ理解していたかは知らないけれど。

 ――再び、口を開く黒羽。
「……ま、今は仕方ねぇ。だが――5年後、10年後の話だ」
「我々のモットーは、『YESロリータ、NOタッチ』だ。我々に、幼女を籠の中に閉じこめる趣味はない。ましてやそれが淑女となった後など」
 ならいい。依頼人の言葉は意味がよくわからなかったが、黒羽は体を椅子に投げだした。どうにも好かない依頼人だが、今は、彼らがフローラを害するつもりがないことだけは信じてやろう。
 彼は立ち、ルフナが面倒を見ている(あるいは一方的に構われている)フローラに近づいた。
「いいか……不安になった時はパパとママを思いだしな。そして、『大丈夫、大好きだよ』って心の中でゆっくり何度も唱えるんだ」
 選別のリボンを渡してたち去る黒羽。フローラを払いのけ、自らも彼についてゆくルフナが、一度ふとフローラをふり返る。
「強くおなり。次はちゃんと、自分で選べるように」
 けれども、それは孤独になれという意味じゃない。選ぶのに力が足りなかった時には、この依頼人のように誰かを雇ったっていい。
 それだけを彼女に伝えた後で、ルフナは再び背を向けた。

 彼女がか弱い少女かどうか、これから幸せになれるかどうかだなんて、彼にはどうだっていいことだ。
 だって……それを決められるのは、彼女自身しかいないのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 皆様、ご参加ありがとうございました。
 えー……恐らくは今回、一部皆様の想定外の展開が発生しているものと思われます。というか、戦闘から“敵に保護されて”脱落する方が出るなどとは、私自身も全く予想しておりませんでした……でもこれ保護するよね? せざるを得ないよね?
 ともあれ、これにてフローラはブッソーニの魔の手から逃れることができました。彼女がこの先どうなるのかまでは、今は誰にも判りません。彼女に幸があるように、皆様、どうかお祈りください。

 ……あ、盗ってった商人の宝石は皆様に報酬Gとして少しずつ配分しておきますね。

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