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シナリオ詳細

<フィンブルの春>ブラウン・クラウン、陰謀を盗む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●積み重ねたのは数多の偶然
 エマ(p3p000257)の領地――どう取り繕ってもスラム街であるそこは、しかし相応の繁栄の途にあった。
 人数もそこそこ上り調子、並び立つ宿はそれなりの繁盛を見せており収益も安定している方。この先、彼女がうまいこと手を加えればさらなる繁栄もそう遠い話ではないだろう――そんな感じの場所。
 エマ本人が『奢る』という感情から程遠いので、そのような称賛を本人に浴びせても不器用な笑いを返すだけなのかもしれないが……まあ、成功している類の領地経営ではある。
 そんな場所に訪れた大道芸人がいる。些か以上に刺激的な格好はこの場にあってウケがよく、それなりに人は集まっているようだ。
「アンタ達、ちょっと見てってよ。暇なんだろ?」
「随分な言いようじゃねえか、つまらなかったらわかってんだろうなぁ……?」
 些か柄の悪い連中に声をかけたその大道芸人は、帰ってきた言葉に「見てなよ」と小さく返すと、後ろ手に持っていたバトンを投げると落下までの短時間で流麗なダンスを見せ、そのままバトンを見ずにキャッチする。続けて放たれる芸の数々はバトンのみならず様々な道具、手法、その他あらん限りの手練手管を余すところなく見せていく。つまらなかったら、なんてとんでもない。いつしか彼女の周囲は人が集まり、割れんばかりの拍手喝采が広がっていた。
「はいはい、ありがとうね。どうだい、捨てたもんじゃないだろう?」
 喝采の輪のなかで自慢気に胸をそらした彼女――ブラウン・クラウンはちらりと周囲に視線を巡らせる。
 彼女はエマの存在を(半ば一方的に)知りつつ、さりとてなにかしてやろうとか、コンタクトを取ろうとか、そういうつもりはなかった。当然、領地を得たという情報があったからじゃあ盗もう、とはならない。
 少なくとも領地の様子を見る限り、そこそこ裕福でそこそこ幸福度が高そうなこの土地は、彼女が狙う場所ではない。
 彼女が狙うタイプは――。
「……やく! アレをこっちに呼び込むんだよ!」
「こ……は……の連中の……」
「そこを……がやってきてひと稼ぎ……」
 ああいうタイプなのだろうな、と。ブラウンは人混みより離れた場所でコソコソとやっている(だが外見の華美さで台無しだ)ステレオタイプの『勇者様御一行』を見送って溜息をつくのだった。

●出会いの糸は絡まず、されど運命は折り重なる
「……っていうわけで、私の領地の執政官宛に予告状が届いていたんですよ」
 エマはそういうと、『怪盗ブラウン・クラウンの予告状』をイレギュラーズの前に差し出した。
 そこには「この領地に現れた偽の勇者、彼等が為す禍と栄誉を奪いに参ります」と記されていた。
 偽勇者――というのは、『勇者選挙』と呼ばれるフォルデルマン三世の思いつきから始まった、幻想王国内の混乱を平定すべく始まった催しの徒花たる存在だ。
 『古廟スラン・ロウ』と『神翼庭園ウィツィロ』から現れた『古代獣』と称される新たな敵を討つことが『選挙』でのし上がる条件なのだが、偽勇者達はマッチポンプや詐称、癒着など様々な手段を以て上に這い上がろうとする連中を指す。
「獣達……つまりは古代獣が私の領地に誘い込まれようとしているんじゃないか、と執政官さんは言うんですよ。それを偽の人達がマッチポンプで退治しようと。でも、『名誉を奪う』っていっても代わりに倒すって話じゃないでしょうし、下手に邪魔して双方……と、私の領地を選んで住んでいる人達を危険に晒したくはなくて」
 成程、額面通り読み解くと「うまく立ち回らないと犠牲だけが増える」と取れる。
 だが、エマ以外の、集まった中でも一部の面々は、この予告状は非常に丁寧な情報提供であることが分かるだろう。
 ……だって、予告状の裏の模様がよく見るとびっしりと情報を書き綴った文面、っぽいのだから。

GMコメント

 全体依頼で関係者依頼です。
 ここまでまどろっこしいことをこのひとがするのかはさておき。

●成功条件
・『手伸の霊長』の全討伐
・『偽勇者一行』の捕縛or討伐
・(オプション)ブラウン・クラウンに余計なことをさせない

●『手伸の霊長』×10
 『古廟スラン・ロウ』から放たれた古代獣の一種。
 非常に遠く迄手を伸ばせ、神秘による見えざる手も操ってきます。
 抵抗がやや高め、攻撃は『レンジ3・万能』なものが多く、物理神秘両面をまんべんなく使ってきます。
 よく発動しがちなBSは足止系、出血系。ソレ以外は発動率低いだけで結構バリエーションあります。

●偽勇者一行×5
 どこかの貴族子飼いの「自称・勇者様」。エマの領地に霊長達を誘い込み、自分達の手柄として倒そうとするあたり、イレギュラーズに対する悪意も感じられます。
 勇者(自称)をはじめとし僧侶や格闘家、重戦士などがバランスよく配置されていますが、霊長の群れを倒せるほど強くはありません。ですがイレギュラーズ相手となれば一致団結して古代獣そっちのけで排除に向かってくる可能性はあります。可能な限り殺さない方がいいかもしれません。

●ブラウン・クラウン
 友軍(?)で、怪盗です。
 状況が膠着すると手を出してくるかもしれませんが、よほどがなければ彼女が表だって活動するシーンはないでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <フィンブルの春>ブラウン・クラウン、陰謀を盗む完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月28日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
天之空・ミーナ(p3p005003)
紅矢の守護者
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
ガヴィ コレット(p3p006928)
旋律が覚えてる
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人

リプレイ


「こんな所でひっそり暮らしているというのに、一体どうしたっていうんですかね。困りました、困りました。ひひひ……」
 『こそどろ』エマ(p3p000257)は突然降って湧いたように訪れた領地への危機に、何時にもまして自信なさげな表情で左右を見回した。
 だって突然だったのだ。怪盗からの予告状も、特に興味があるわけでなかった『勇者選挙』絡みの事態も、まして自分の領地が俎上に乗る事態もなにもかも。
「倒せないくせに誘い込んだってことは、領地のイレギュラーズが討伐するところを横取りするつもりだったのか、
それとも誘い込むだけ誘い込んで、倒せなかったら放置するつもりだったのか……どちらにしても名声に目が眩んだ下種であることに変わりない」
 『怪盗ぱんちゅ三世』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は偽勇者達が何のためにエマの領地に古代獣を誘い込んだのか、理由を指折り数えて考えた。……が、どれをとっても出てくるのは下衆な魂胆のみ。背後に誰がいようと、ここで逃せぬ理由が増えただけである。
「偽勇者、ね。実力の伴わない名声に何の意味があるンだか」
「これも一種の自作自演かしらね」
 『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)には偽勇者達が何のためにエマの領地を狙い、更には対処するイレギュラーズを襲ってまで名声を奪おうとするのか理解が追いつかなかった。『月花銀閃』久住・舞花(p3p005056)の言葉通りだとしても、うまく行った暁に得られるのは空虚な名声ばかり。彼女には、その価値がわからない。
「先ずは古代獣を退治する他は無さそうですね。これらを放っておくわけには勿論参りません。勇者一行を問い詰めるような確たる証拠はありません。……先手を許してしまうのは複雑ですが今は仕方ありません」
「そうだね……まぁ、ひとまずあの古代獣を殺せば良いんだよねぇ? 偽物は? 殺しちゃだめ……だもんねえ」
 『旋律が覚えてる』ガヴィ コレット(p3p006928)は情報を改めて整理しつつ、状況の厄介さを再認識した。偽勇者はどう転んでもこちらに先手を打つ格好になる。古代獣は優先して倒さねばならない。そして偽勇者一行は、いかなる悪事を働いたとて同じ人間、そして貴族麾下にある可能性を考慮し生かしておく必要があった。玄丁の不満は、殺害を許されが故だ。
「怪盗が何企んでるのかは知らねぇけど。ま、こっちの邪魔をしないってんなら今はいいや」
「古代獣に搦め手は通用しなさそうだけれど、スライスして解体すれば問題ないでしょう。偽勇者とやらも、隠れるのが上手ではないようね」
 『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)を含む多くのイレギュラーズは、『怪盗ブラウン・クラウン』の意図を測りかねていた。悪意があるとは思えぬが、さりとて純粋な善意で動いているようでもない。何かウラがあるのだろうが、それが誰に利するものかも定かではない。
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は使い魔と周辺の霊魂を駆使してスラム街の周辺を調べ回った結果、今まさにイレギュラーズのいる側へと誘導されてくる古代獣達と、それを先導する偽勇者一行を視界に収めた。このままいけば、幾許の時間もおかずに接敵することになるだろう。
「獣が来ます。私達が対処しますので被害を出す気はありませんが、警戒はお願いしますよ」
 エマは駐留している兵士達にそう告げると、屋根に飛び移り軽々と駆けていく。仲間達もそれに続くように前進して防衛線を張る動きを見せる。
(偽勇者らは、私達が迎撃に出たら横に逸れるなりで私達に古代獣を押し付けてくるでしょうね。その上で、漁夫の利を狙って様子見をしたり此方の側面背面を取って仕掛けてくるという所かしら)
 イレギュラーズをあわよくば襲う、古代獣討伐の功績を労せず手中に収めようとする、その上でそれらを領地に誘い込む。全て兼ねる手段として舞花が想定した策を、偽勇者達は実行に移す。
 領地に流れ込んだ霊長は目的を見失い蹈鞴を踏むが、直後には辺り構わず破壊しようと前進し始めた。
「例の怪盗サンが手出しする前に終わらせてェな。死人――が出ルのハうんザリダ」
 レイチェルの声がじょじょにくぐもったものへと変わっていき、それに伴い姿も銀狼の形へと変貌する。一瞬のうちに爪と牙との圧倒的暴力が霊長を襲い、飛び散った血が薄暗いスラムを赤黒く染め上げた。


「まずは古代獣を仕留めます。数で攻めてくるなら、一気に切り刻むまで」
「あちらが近付いてこないなら、こちらから先に仕掛ければ……」
 舞花の斬撃に先んじて、ガヴィが近付いてきた敵目掛けて呪歌を紡ぐ。遠間から仕掛けてくる敵との戦闘なら、乱戦は回避できるか――そう考えた彼女の思考は一定の真実を伴っている。距離をとった者同士が打ち合うならば、それもありだろう。
 だが、レイチェルや舞花に限らず、ここに居並ぶ手合いはかなり前のめりだ。あちらの間合いを己の間合いで圧し潰す戦い方が主となる仲間が多い以上、やや調整に手間取るだろうが……彼女の手管でしくじることは、そうあるまい。
「さて、お前たちに恨みつらみはねぇんだが。人ん家で暴れてるのを見過ごす訳にもいかねぇんだわ」
「霊長っていうくらいだし、切り応えは人に近いんだよね? 期待してもいいかな?」
 ミーナは希望の剣を突き出し、霊長達へと挑戦的な言葉を投げかける。レイチェルの先手で既に動きを封じられた彼等は、その挑発に抗う手段を持ち得ない……無論、不可視の手など使うことも許されない。
 玄丁は中途半端に伸ばされた霊長の手を払うように刀を抜くと、影と共に素早くその身を切り刻んだ。成程、群れを成す類にしてはやや硬いか。されど、その肉の感触、骨の響きは人のそれにそこそこ近い……愉しむには遜色なさそうだ。人間(ほんもの)がいる脇で斬るには、どうにも足りないのはさておき。
「えひ、えひひ……そっちばかり見ていていいんですかねぇ? 背中がお留守ですよ?」
 ミーナに熱視線を注ぐ霊長達の中、数少ない「正気」の個体の背後に回り込んだエマはその背を短刀で貫いた。駆け足で加速した状態から突き出されたそれは、続けざまに振るわれた斬撃でしなやかに、そして確実に霊長の血を吐き出させた。出血量ほどの痛みがない。即ち『弱い』と見做した個体は、エマを御し易い相手とみて掴みかかろうと視線を巡らせる。それすらも彼女の術中であると、理解できぬままに。
(こいつらを引きつけるのはひとまず成功か。あとは偽勇者共だが……)

「随分と調子良さそうじゃねえか、あいつら。リーダー、どこで手を出す?」
「勿論、獣共が半分切った辺りからだ。アノ調子で最後まで駆け抜けられるとは思えねえ、適度に嘴を挟みに――」
「よぉ、随分楽しそうなことをやってるな、自演勇者」
 スラム街外縁部に身を隠し、乱入の機を窺っていた偽勇者一行に声をかけたのは、他ならぬアルヴァであった。仲間達が古代獣を討伐する間、彼が偽勇者一行を足止めする。そうするだけの実力を、彼は持ち合わせているのだ。
「チッ……邪魔するってんなら総掛かりだ、1人で俺達5人相手にできるなんてイキってる奴ぁ、土の下がお似合いだぜ!」
「もう少し勇者らしくしとけよ……相手するこっちが滅入るぜ」
「俺らがしおらしくしとくのは雇い主か事情を知らねえ素人共の前だけだぜ、ボウズ。……嗚呼、今はお前を殴り倒したくてウズウズしてんだ!」
 アルヴァの名乗りに感情を揺さぶられたのだろう、というのは分かる。だが、勇者一行の言葉の荒っぽさは生来のものなのだろう。そういう意味では、彼等はやはり勇者向きとは言い難い。全くもって、ロクでもない相手を選んだものだとアルヴァは嘆息した。

「動きを止め続けられれば上々だッたが、そうもいかねェか。……けど、手応え十ぶン――」
「汝(あなた)ばかりが全部持っていっちゃうのは不公平だわ。我(わたし)にも少し、分け前を頂戴な」
 レイチェルは纏めて蹴散らしたうち数体ほど、動きを止められなかったことに歯噛みする。通じている、精度は十分、されど運が僅かにあちらに傾いた、ということだろう。……それでも動くというのなら、動けなくなるまで叩き込む。右半身の制限を解き、さらなる精度で叩き込む。割れ響き、歪んだ己の声すらも快感だ。そして、そんな耳朶を打つ、すねた少女のような、それでいて自分と遜色ない暴威を繰り広げるレジーナも。
「中々やるじゃねぇか。褒美に、本気で戦ってやるよ!」
 そして、手隙の霊長たちの攻勢を受け止めていたミーナも『多少は』傷が増えたらしく、嬉しそうに笑みを零した。傷つくことにためらいはない。むしろ、彼女の卓越した守りと回避を貫いてなお傷つけるだけの実力を、相手が持ち得ているということ。……こんな戦場では味わえぬと見ていた興奮だ、喜ぶなというのが無茶であろう。
「今治療します。持たせて下さい!」
「当然! 有り難くもらっとくぜ!」
 ガヴィの治癒がミーナに施されれば、その身は常の治癒術よりも強く輝く。癒やしをより強く受けたミーナの身は、軽々と動き、猛然と次の標的へと動き出す。
「私って戦い苦手なんですよね……本当に、なんでここなんでしょう、ひひ……」
「本当にね。こんな奴等を連れてくるなら最初からあっちと戦いたいってのに……」
 エマと玄丁の不満は、全くの別ベクトルだ。されど、両者ともに「この状況が不満で、偽勇者に手を下したい」という気持ちは同一である。早く、早く、この戦いを終わらせたい。早々に、偽勇者に報いを……とまではエマは思わぬかもしれぬが、不快であることは違いない。そうでなければ、霊長についた傷がそこまで残酷なものではないはずだ。……最後の1体すらも執拗に血を奪うほどには。

「自作自演の功績作りご苦労様。
 黒き闇、蒼の蕀、葬送の詩を捧げましょう。
 我が名はレジーナ・カームバンクル。この青薔薇のタナトスの紋章を目に焼き付けなさい。
 それが汝(あなた)が最期に見るものになるのだから……なんてね?」
「こいつらが偽勇者か。……もう大分息も絶え絶えだな。死にャしねえけど」
 アルヴァが引きつけた偽勇者達のもとにレジーナ、レイチェル等が駆けつけたのはそれからまもなくのことであった。先んじて抜けた何名かが随分と手酷くやったのか、はたまたアルヴァ1人の戦果か。レイチェルの持つ知識の範疇でも、彼等が随分痛めつけられたということはすぐに理解できた。
「ふうん、この人達がねえ……随分と弱そうだけど、こんなので勇者を名乗ってたの?」
 玄丁は、そんな偽勇者達に向けてわざとらしく顔を突き出し、いたずら気味に笑ってみせた。偽勇者は剣を取ると、憤怒に燃える瞳で彼を射抜き、長剣を突き出す。当然のように身を引いて躱した玄丁は、まんまと差し出された彼の首へと抜刀しようとし……飛んできたかんしゃく玉が鍔元で爆ぜたことで、その機を削がれた。
 両者の間に割って入るようにふわりと着地したその姿は、領地の者なら誰もが知り、しかしその名を知らぬ相手――怪盗、ブラウン・クラウンであった。


「アタイが手を出すまでもなかったみたいだけど、ワザとらしすぎる殺しだけはちょっと、いただけない」
「……へえ? 僕はちょっと手が滑っただけなんだけどな」
 ブラウンの揶揄うような口調に対し、玄丁はやや頬を引きつらせ反論する。暫く人型のなにかを斬れていない、そして願ってもない機会を前に露骨な妨害を受けたとあっては、感情的になるのも否定できまい。だが、偽勇者一行は玄丁との最初の一合を以て、既に戦意を喪失している。生かしておく理由はあるが、無理に死者を増やす理由もない。……よもや人殺しを法度としているわけでもなかろうが。
「で? 一体今回、何の目的があってローレットに味方した?」
「たまたま味方側だったのがローレットだったってだけだ。そこの御一行、ご貴族の手引だろ? 邪魔して後ろにいる連中をアンタ達が引っ張り出してくれれば、アタイも狙う相手がわかりやすくなるんでね。そうする前に頭数減らされたら、こいつらも頑なになって話さなくなるかもしれない。それは困るだろう?」
 ミーナの問いかけに、ブラウンはにたにたと笑いながら応じた。姿を見られて逃げるという発想はないらしい。
 そして、その答えは道理が通ってもいた。概ね、一同が懸念していた通りともいえる。
「幻想中で流行ってるみたいだけど、やっぱり……ね。じゃあ、こんな不始末をしでかしたのだから責任をとって吐いてもらおうかしら」
「そうですね。誰の命令かは聞いておきましょうか」
 レジーナは『やっぱり』といった表情で、舞花は相手の目を見透かすように、偽勇者達に視線を向けた。観念した表情を見せた彼等は、互いに目配せした後、意を決して自称・勇者が口を開くこととなる。
「俺達を雇ったのは、お前らにしちゃあ木っ端のお貴族サマさ。名前言っても、わかりっこねえだろ? そういうヤツさ。ヤツは『イレギュラーズの邪魔をしろ、領地に古代獣をけしかけてやれ』ってうるさくてな。俺達が他の連中出し抜いてメダリオン持っていってもお構いなしさ。ありゃあ相当、お前らに入れあげてるぜ?」
 自称・勇者の言葉を聞いたエマの表情が、やや険を含んだものへと変わる。当然といえば当然か。自らに関係ない理由で、とんだ貧乏くじを押し付けられれば不満が生まれて当然だ。こんなつまらない言葉を引き出すために、欲求をセーブされた玄丁もまた、同じく。
「ひっひっひ、そんな理由で私の領地を荒らされるのはとっても困りますねえ……」
「やっぱり1人くらい斬っておいた方がよくない? ダメ?」
「然るべきところに突き出して、更生するならそっちのほうがいいだろ。……次は狡いことなんてしないでちゃんと働けよ」
「というか、こんな事に執心するくらいならもっと人心を集める努力を真っ当にしてみたらどうかしら?」
 2人の剣呑な言葉に待ったをかけたのはアルヴァ。同じ怪盗としてブラウンの姿を満たし、偽勇者の背後にいる何某かも理解できた。あとは法に任せる、という彼の思考はしごく真っ当だ。レジーナも(殺そうと一瞬だけ思ったが)同感らしく、言葉を添える。そして、よくよく周りをみるとここでブレーキ役になりそうなブラウンは、すでに姿を消している。
「……もう一ついいですか。あなた達の雇い主、最近他の貴族と懇意にされていたりは?」
 舞花は話が落ち着きそうなところで、思い出したように問いを重ねた。古代獣を利用する、という発想がそもそも普通ではなく、イレギュラーズを狙うという発想もまた然り。この事件の背景には、チャチな貴族ではなく、もう少し……何か深い根が張っているように思えたのだ。
「あ、ああ……そういや最近ミーミルンドとかいう貴族とやけに仲がいいとは、聞いたような気がするが……」
 そして、剣士の口から出た名は、『やはり』と感じざるを得ぬ内容であり。
 一同はこの一件が、広く張り巡らされた蜘蛛の巣、その一端でしかないことを否応なしに理解することとなるのだった。

成否

成功

MVP

天之空・ミーナ(p3p005003)
紅矢の守護者

状態異常

なし

あとがき

 そんなわけで、ひとまずエマさんの領地での一件はこれにて無事終わりました。
 ブラウン・クラウンは義賊ですので、何事もなければ影で情報を聞いて帰っていったと思います。
 ぶっちゃけ1人ふたり死んでもいいかもしれませんが、偶然とはいえリーダー格だったので……といった感じ。
 MVPは全体の損耗を大きく減らした貴女へ。

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