PandoraPartyProject

シナリオ詳細

桜の節句

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●人形師の家にて
 畳の上で少女人形が踊っている。
 軽やかなステップ、右手を泳がせてポーズ。ボックスを踏んだらターン。
 パンと乾いた音が立った。時塚・揚羽が手を叩いたのだ。
「文殊四郎、一拍遅れた。こっちにおいで」
 呼ばれた少女人形は揚羽の前へやってくると背を向けて大人しく座り込んだ。揚羽は人形の背中を開け、真鍮の芯をいじる。
「今回のメンテナンスも長引きそうですね」
「そうね珠緒さん。揚羽さんたらこっちのことを忘れてるんじゃないかしら」
 縁側で談笑する藤野 蛍 (p3p003861)と桜咲 珠緒 (p3p004426)は薄茶を口に含んだあと、桜のねりきりを一口いただいた。
 口の中で飽和していく甘味と苦み。ふたりで「ん~」と目を閉じてそれを楽しむ。
 その時だった。
「人形師、時塚・揚羽様の御宅はこちらで御座いやすか!」
「ああ、そうだよ。そう大声で呼ばわるもんじゃない。こちとらメンテ中だ、用があるならさっさと済ませとくれ」
 すると引き戸を開かれた。包帯まみれのこわもての男が姿を現し、ぐっと腰を落として利き手を突き出した。
「失礼いたしやす、おひけえなすって!」
「は?」
「ほえ?」
 蛍と珠緒はびっくりして目を丸くした。今時こんな時代がかった仁義を切る輩が居ようとは。揚羽はめんどくさそうに手を止め、あがりかまちの隅まで移るとその男と対峙した。
「へえへえ、お控えなすって。口上ならとっとと述べな。こっちは忙しいんだ」
「早速のお控え有難う存じやす。手前生国と発するは豊穣、北は小倉の村、しがねえ寒村でごぜえやす。姓名声高に発しまするは失礼さんにございやす。姓は浜田、名は権三郎。農作業の傍ら用心棒の二足の草鞋を履いておりやす」
「なるほどなるほど、その用心棒が豊穣くんだりからなしてまたオレのところまでやってきた」
「小倉の家業はそろって農業、無一文から叩き上げ。新春、春はひな祭り、村をあげての大賑わい、そいつが唯一楽しみの村でございやす。しかし今年は勝手が違った」
 何事だい? と揚羽は話題を振った。浜田と名乗った男は大きな体を縮こまらせる。よほど口に出したくないらしい。
「祭りの目玉のひな人形、小倉の村の守り神たる御本尊、その女雛の白粉がはがれちまいやした」
「女雛の顔に傷がいったんだね。それで?」
「あれかわいそうと女衆が言うには、咲いた桜で御心も持ち直すと……ところがどっこい、日に日に広場は薄暗く、夜ともなればうめき声。先日はとうとうひな人形が動き出し、退治に向かうもこのありさま」
 浜田は痛そうに顔をしかめた。改めてみると全身に打ち身があるのが見て取れる。命に別状はないだろうが、これはきつかろう。
「人形たちから袋叩きにあったんだね。そりゃ道理も道理だ。ひな人形ってのは節句が過ぎたらさっさと片付けて眠らせてやるのが礼儀だし、肝心の女雛にしてみれば、化粧のはげた顔を衆目にさらし続けるなんざ屈辱でしかなかろうよ。そりゃ恨みに思っても仕方がない。対応を間違えたね」
「よって人形師は時塚のおあねえさんなら、この事態、丸く収めてくれるものと……」
「魂が入るほどの傑作は見ちゃみたいが、荒事は門外漢だよ。帰りな」
「そこをなんとか! おあねえさんだけが頼りでここまでやってまいりやしたのに」
「だから荒事はよそをあたってくれと……」
 そこまで言いかけた揚羽の視線が、蛍と珠緒のあたりでぴたりと止まった。
「いるじゃないか、本職が」

●ローレットにて
「お集まりいただきありがとうございます」
 珠緒はぺこりと頭を下げた。
 続けて蛍が資料をあなたの前に広げる。
「状況を説明するわね。豊穣は小倉の村の広場、そこに飾られていた7段飾りのひな人形が呪いの人形となって広場を占領してるらしいの」
 一般にひな人形と言えば男雛と女雛だけであるが、7段ともなると家来たちも勢ぞろいしていることになる。
 三人官女、五人囃子はもちろん、右大臣に左大臣、三人上戸、これに呪いの源である男雛と女雛をいれると総勢15の大所帯になる。
「珠緒たちが依頼人から聞いたところによれば、個々の人形は強くないのですが、集団で襲い掛かってくるとのこと。今のところ被害は用心棒の浜田さん一人きりですが、放っておけば見境なく人を襲い始めるでしょう」
 珠緒がかすかに眉を曇らせる。そんな珠緒を元気づけるように蛍は珠緒を後ろから抱きしめ、心持ち明るい声を上げた。
「今回は人形がためこんだ邪気を祓うのが目的だから、不殺でとどめを刺せば壊れることはないのよ。だからそのへんは気にせず攻撃してね」
 こくりと珠緒がうなずいた。
「これは村の人からのお願いなのですが」
 いったん言葉を切る。
「小倉の村にとって、ひな祭りはもっとも大事な行事だそうです。ですので、戦いが終わったら祭りを楽しみましょう」
 桃の節句ならぬ桜の節句になりますねと珠緒は微笑んだ。

GMコメント

せっかくの春だもの、ちょっと遅いひな祭りを楽しもう。
ご指名ありがとうございました。

やること
1)人形たちの討伐
2)ひな祭りへ参加する

ひな祭りでは祭りにちなんだ飲食のほか、コスプレもできます。
プレは半々くらいがちょうどいい感じです。

●エネミー
一体一体はそんなに強くありませんが各個撃破してくる傾向にあります

三人官女・五人囃子
近接アタッカー

右大臣・左大臣
後衛・超遠~中が得意

三人上戸
万能 BS【魅了】【怒り】【泥沼】

男雛
両面アタッカー EXA高 近扇 【魔凶】【追撃大】

女雛
自域 【呪縛】【懊悩】【感電】【必中】

●戦場
小倉の村広場
うららかな昼下がりです
桜の花が舞っています
特にペナルティはありません

  • 桜の節句完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月31日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ジル・チタニイット(p3p000943)
薬の魔女の後継者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
※参加確定済み※
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
※参加確定済み※
秋月 誠吾(p3p007127)
Mors certa
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
ファニアス(p3p009405)
洋服屋

リプレイ


 桜が舞っている。春うらら、のんびりとした田園風景に、『Mors certa』秋月 誠吾(p3p007127)は感慨深いものを覚えた。
「豊穣ってところは、本当に俺の居た国と文化が似てやがる」
 誠吾はもう戻れないかもしれないかつての暮らしへ思いを馳せた。切なさが募ってくるのは寂しさ故か。彼は頭を振り、かすかな靄を振り払った。幸いにも、混沌にも彼は居場所を掴み取った。ならば。
「せいぜいこの世界のために足掻くとしますかね」
 軽口とともに決意を込め、前髪をかきあげる。
 軽い足取りで進む一行。戦場が近づいてくる。
 七段飾りの最上階で、扇で顔を隠す女雛を守るように、男雛と家来が布陣しているのが見て取れた。これだけ離れていても殺気がビンビン伝わってくる。どことなくまわりも薄暗くなってきたような。右大臣と左大臣が弓をかまえる。
 その精巧な仕草に『薬の魔女の後継者』ジル・チタニイット(p3p000943)は場違いなほど感動した。
「動いちゃうほど見事な人形って、凄いっすね。まさに魂を込めた逸品って感じっす」
 小さな矢がひょうと頬の脇をかすめていった。ぎょっとして脇へそれると、ジルは取り繕うように言い足した。
「……いや、実際に動いて暴れるのは無しっすけど!」
 薄青の狩衣に緑がかった袴をあわせ、高下駄を履いたジルは手元の黒い本で顔を守るように覆い隠した。快癒識者の心得は付箋だらけだ。彼女が重ねてきた研鑽と軌跡がそこには記されている。
「そうよねぇ、お人形ちゃん達もちょーっぴりかげきだわね★ でもそのくらい女雛ちゃんを大切に思ってるのね♭、あ~ん、ファニーもそんな風に扱われてみたいかも!」
 シトリンの瞳をパチパチさせ、『洋服屋』ファニアス(p3p009405)は手で日差しを作って人形たちの様子を観察した。女雛が肩を震わせて泣いているのがわかる。険しい表情の男雛が守るように傍らへ立ち、三人官女が憐れむように慰めの言葉をかけているようだった。
「ぶはははっ、女の顔に傷が入るたぁ不憫な話だねぇ! さっさと直してやりてえもんだ!」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が豪快に腹をゆすり立てて笑った。ファニアスもうんうんと首を振る。
「きれいなお人形なんだから、お願いは聞いてあげたいところよね☆」
「不殺でしとめてやらんとなあ! 蛍と珠緒が時塚の姐さんを呼んでくれたおかげで、修理がすぐにできるのはありがてえこった!」
「本人も興味があるって言ってたからね。気分屋なところがあるから来てくれるかすこし不安だったけれど、よかったわ」
『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)が後ろを振り向き、村長宅をのぞく。そこには長椅子に腰掛けた揚羽の姿があった。おもしろそうにこちらを眺めている。高みの見物を決め込むつもりのようだ。どうやらそれは村人たちも同じようで、男衆も女衆も子どもたちまで出揃って、そわそわと心配そうにイレギュラーズを見守っている。
「大丈夫です、皆さんの大切なお雛様は、絶対壊したりしません!」
 蛍は両手でメガホンを作り声を上げ、村人たちの不安を取り除いてやる。そして隣の『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)へ視線を移す。
「人の似姿を持ってると、やっぱり人と同じような感情が──心が宿りやすいのかしらね。同じ女の子としては女雛の恨みもわかるような気もするかな……」
「そうかもしれませんね。女雛さんにもし気持ちがあるとしたら、容易に想像がついてしまいます」
 そんなふたりのやりとりに、『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)も加わってきた。
「お雛様のためにって思った行動が、逆にお雛様を怒らせてしまったのは……悲しい事件なのです……」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)もゆったりと歩きながら歌うように言葉を受ける。
「雛人形は厄災を受け止めるための器だから、出したままにしておいてよくないモノを入れちゃったのもあるだろうねぇ。顔を気にする女性は多いのだし、さくっと終わらせて修理に出してあげたいねぇ」
「そうです! お雛様の怒りを収めつつ、悪気があってしたことじゃないと伝えるのですよ!」
 むんと両の拳を握り気合を入れるソフィリア。七段飾りが近づいてきた。人形たちの気迫がオーラとなって目に見えるようだ。珠緒が静かに宣言する。
「ムラ社会では、お祭りとは言われる以上に重要なのです。生活の区切り、日々の互いへの感謝、気持ちの発散……大切なハレの日を取り戻せるよう、努めましょう」
 いざ尋常に、勝負。


「さあ、みんながんばっていこうね☆」
 ファニアスが両手を掲げてくるくるまわる。まわるたびに波打つ黄金の波動がファニアスから放たれ、それに呼応してコアから静かなバラードが流れ始める。全員へ支援をかけ終えたファニアスはちょこんと飛んで道を開けた。
「皆さん、何が来ても大丈夫っす、僕が支えるっすよ!」
 ジルが素早く二回手を叩き、眉間をなぞって集中する。ソリッドシナジーの効果が早くもその身に現れ始めた。雲が晴れていくように意識が急激にクリアになり、五感が澄み渡っていく。
「うおおおお!」
 ゴリョウが大地を蹴立てて戦場を移動する。その姿、まるで雄牛のごとく。七段飾りを通り過ぎ、味方と敵を挟み込む位置まで移動すると、その瞳に強い意志を込め、女雛を見つめた。炯眼が光る。女雛はきっと顔を上げ、不愉快げに眉を寄せたまま空を飛び、ゴリョウを扇ではたいた。ぐわんと脳を揺らすような感触が一瞬したが、それで屈するゴリョウではない。
「ぶはははっ! さぁその嘆き、この俺に存分にぶつけるがいいさ!」
 ゴリョウが女雛を抑えている間に動きがあった。
「珠緒さん!」
「はい、蛍さん。おねがいします」
 息のあったふたりが戦場へ飛び出す。蛍が先陣を切り、大きく手を広げた。紅蓮の桜と業火が舞い踊る。男雛と三人官女が空を貫き、蛍へ襲いかかる。けれどもそれも計算のうち、蛍は両腕で顔をガードしながら不敵に笑った。
「人を殴っちゃダメって教わらなかったの?」
『人の子らよ、なんの恨みがあって雛を屈辱へ晒す?』
「しゃべった!?」
 驚いたスキに蛍は男雛から連撃を食らった。一撃一撃は浅いが重なると痛みを感じる。ズキズキする両腕をさらに三人官女がぶったたいていく。
「はーい、うちの出番ですね!」
 ソフィリアが片腕で大きく円を描く。その中心を指でつまむと、弓を引き絞るように手前へ引っ張る。空間が歪み、キリキリと練り上げられていく癒やしの力。
「ほいっとなーです!」
 つまんでいたそれを手放すと、白い弾丸が蛍へ向けて飛んでいく。着弾したそれは爽やかな音を奏で、白い光がぱっと咲いた。蛍の腕の傷が浅くなっていく。
「ありがとうございますソフィリアさん」
 珠緒の方から礼を言われ、ソフィリアはちょっとはわわってなった。
「傷ついた女雛を守ろうとしているのですね……その思いの丈、理解できます。しかし。このままでは女雛ばかりでなく他の人形まで巻き込んで傷つくばかりです」
 だからこそ。珠緒はしゃらりと片手を上げた。もう片方の手は地をするように下へ。円を描くようにゆっくりと回していくうちに、珠緒の胸のあたりに神々しい光の玉が生まれる。珠緒はそれを押し出すように放った。膨れ上がりながら加速していく神気の光弾はある一点でガラスのように割れ、さらに加速しながら無数の矢となって男雛と三人官女へ降り注ぐ。
 五人囃子と三人上戸が助けに入ろうと動き出した。ひな壇を蹴り、いままさに向かわんとしたその時、横合いから声がかかる。
「キミたちの相手は我(アタシ)だよ」
 人形たちは振り向いた。いや、振り向かされてしまった。そちらを向いてはいけなかったのに。そこに立っていたのは武器商人。上から下へゆるりと手を動かすと金の惑星環が、下から上へ切り裂くように動かすと銀の惑星環が、二重の環に囲まれてソレは口元だけ微笑んだ。人形の顔に焦燥が浮かぶ。
「おや、キミたちもそんな顔ができるんだねぇ。いいことだよ。ヒヒ、刻みつけられた四角四面だけではキミらも息苦しかろ?」
『だまれぇ!』
 怒り上戸が筆頭になり、他の人形が続いた。一刻も早くあの恐るべきモノを雛さまより退けねばならぬ。そんな使命感にかられながら。それが武器商人の魔力によって引き起こされたいびつな感情だとも気づかずに。
「おー、だいたい抑えが決まったようだな。男雛から殴ればいいんだっけ、まーやるだけやってみるか」
 誠吾はレヴィアン・セイバーを肩に担ぎ上げた。そのままダッシュし、蛍への攻撃に夢中な男雛めがけて振り抜く。一撃目は男雛の袖を断ち、二撃目は地へ叩き落とした。
「痛いのは嫌だからな。適当に傷癒やしてくれや」
「もちろんだよ♪」
「はいっす!」
「任せてです、誠吾さん!」
 手厚い回復が誠吾たちの動きを支援する。
『ぬう、ただの人の子ではないな貴様ら』
 宙へ浮き上がった男雛が怪訝な顔をする。
「今頃気づいたか、イレギュラーズって言うんだ。覚えとけ」
 誠吾はさらに剣を振るった。銀の軌跡が男雛へ向かい、男雛はそれを己の剣を横に持ちガードした。
「へえ、地頭はあるようだな」
『バカにするでない小僧、この村が興ったときより我等は見守ってきたのだ』
「そんじゃあ、なおさら、ここの人たちを恨むのは筋違いだって気づけよ」
『……!』
 男雛が大きく後退する。人形たちに動揺が走った。蛍が割って入る。
「そうよ、小倉の村の人は、この満開の桜を女雛さんに捧げて少しでも心を慰めたかったのよ!」
「誰も悪意を持って接したわけではないのです。そこのところを履き違えてはなりません」
 珠緒も神気閃光を連射しながら言葉を連ねる。
『しかし我が最愛の雛へ屈辱を与えたのは事実!』
「そうだろうなあ! こんなに泣いてるんだ、オメェさんらが女雛の味方をしたくなるのも無理はねえ!」
 ゴリョウはその身に突き刺さるダメージをあえて無視して、女雛を抱擁していた。ゴリョウの太い腕に抱かれ、女雛は袖を濡らしている。ひっしにこらえる嗚咽が、聞いているこちらの胸までかきむしってくる。発される負の思念がゴリョウを蝕んでいたが……。
「ゴリョウさん、なんて無茶をするっすか!」
「ぶははっ! なんせ俺は耐久力には自信があるからな! それに泣いてる女を殴るのも気が引けるしよお!」
 あわててブレイクフィアーを打つジルの言葉にゴリョウはしれっと笑顔で答える。
「んー、でもちょっと不安だからファニーも回復しとこっと□」
 ファニアスがキラッ☆とポーズをつけてウインクした。その動きで生まれた金平糖のような星々がそのままゴリョウのところまで流れていき、彼の頼もしい体へ吸い込まれていく。
「今回のこれは、ほんとに、ほんとに、ただのすれ違いなのです!」
 ソフィリアが両手を広げた。休戦を呼びかけるように。
「お願いなのです! 武器を収めて浄化を受けてくださいなのです! 今のままじゃうちらも人形さんたちも、それに村人も! お互いに傷つくだけで見てて苦しいのです!」
「我(アタシ)たちはただキミらから悪いものを追い出したいだけなのさ。大丈夫、凄腕の人形師が修復してくれるよ」
 ちりんちりんと惑星環が鳴る。武器商人は自分へ襲いかかっていた三人上戸と五人囃子を眺めた。あきらかに攻撃が鈍っている。
『雛や』
 おいおいと泣く女雛の元へ、男雛がついと飛んでいった。
『我はこのものらの提案を受けてみんとす』
 女雛が鼻をすすって泣き止んだ。武器にしていた扇でそっと傷のいった顔を隠しながらうなずく。
 人形たちが次々と武器を収め、7段飾りの所定の位置へ戻っていく。イレギュラーズたちの肩の力が抜けた。女雛もまたふわりと浮き上がり、男雛へ手を引かれて最上段の自分の席へ座った。
「それでは参ります」
 珠緒が手を差し出した。神気閃光の光が七段飾りを中心に弾け、視界を真っ白に染めた。


「こりゃ見事だねえ、いやはや、魂も宿ろうってもんさ」
 揚羽は七段雛を前に感嘆の声を上げた。いまやただの人形に戻った女雛は、傷がいってもなお美しかった。
「彫りも仕上げも装飾品も一級品だ。ふふ、腕がなるよ。この人形師時塚・揚羽がより磨きをかけて生まれ変わらせてやる」
 さっそく人形を抱いて村長宅で仕事道具を広げはじめた揚羽に珠緒と蛍も微笑む。
「揚羽さん、やる気ね」
「この調子ですとおまかせしたままがいいでしょうね。お邪魔になってはいけませんし」
「そうね、珠緒さん」
「化粧直ししたら、ゆっくり眠りなお雛様。さーて、俺らも打ち上げと行くか! 女衆、厨を貸してくれ!」
 ゴリョウが食材を抱えてのしのしと家に入っていく。誠吾もまた皿やら猪口やらを腕に抱き、そのあとについていく。
(はあ、すっかりこういうのが板についちまったなぁ……。えーと何が要るんだっけ。まず菓子だろ? それから飲み物、ゴリョウとかぶらないような料理っと)
 つんつん。
「ん?」
 ふと横を見ると、見るも鮮やかな女房装束のソフィリアがいた。ほんのり頬を染め、何かを待っている。期待している。そのことがよくわかる。
「……」
「せ、誠吾さん?」
「……」
「お、お雛様の衣装を着てみたのです、です……」
 わかるだけに誠吾は素直になれなかった。
「へいへい可愛い可愛い」
 それだけ言ってそっぽを向く。
「むぅ……あ、お菓子作ってるのです?」
 厨で和菓子を袋から出した誠吾の姿にソフィリアは重い衣装を引きずり近づいた。
「うちも手伝……お、重いのです……」
「既に作ってあるものを配るだけだからおまえは座っとけ」
「……」
 思ったより反応が薄かった上にあっちへいけと言われた気分だ。ソフィリアはしょんぼりと下を向いた。
「しかたねーな。……口あけてみ?」
「?」
 ぽんと口の中へ放り込まれたひなあられ。
「ん……美味しいのです! ありがとうなのですよ!」
「ぶはははっ! いいねえいいねえ、仲良きことは美しきかな! ほいよ! ひな祭りの定番、しあがったぜ!」
「うわあああ、すごいっす! さすがゴリョウさんっすねえ!」
 まずはきらびやかな三段の押し寿司。菱餅をイメージして作られたそれは、白ごまを混ぜた白、大葉を混ぜた緑、鮭を混ぜた赤。さらに錦糸卵にしいたけの含めに、さやインゲン、イクラとジルでなくとも顔が明るくなる特製ちらし寿司。そして火加減命の蛤の潮汁。シンプルな品だが、旨味と身のほぐれを重視したゴリョウほどの料理の腕でなくては出せない味だ。さらにさらに心憎いことにほろ苦さと食感を両立させた菜花のおひたしまである。
 さっそく広場に設けられた宴会場。そこへ配膳を終えたジルはさっそく自分の分を取皿へよそった。
「うんまーい! お外で食べるご飯って、どうしてこんなに美味しいか僕は不思議に思うっすよ。というわけでおかわり、遠慮なくいただくっす!」
「ぶはははははっ! どんどん食ってくれ、量が多いのもゴリョウ飯のウリ文句よ! 村の衆も食べとくれ!」
「あ、ちゃんとお花も愛でるっすよ? ほんとっすよ? ちらし寿司もう一杯!」
 にぎやかな一角から少しそれ、武器商人は白酒を楽しんでいた。盃へ注いだ酒をうまそうに飲み干すと、ほうとためいきをつく。
「祭りといえば白酒だね」
「商人ちゃん、ちょっとお膝貸して¶」
「あァ、いいともさ」
「この甘酒って優しい味ね、そっちの白酒も美味しい?」
「飲んでみるかぃ、白酒」
 番用の菓子を誠吾から包んでもらった武器商人の膝に、ファニアスがよじよじと登っていく。
「そうだ、この後に人形師さんのところに行く予定だけど、商人ちゃんも付き合ってくれるかしらん?」
「付き合うよ、素敵なコがいるかもしれないしね。ヒヒヒ!」
 その隣をかけていくこじまさん、すずきさん、まひろさん、ひいろさん、ゆりかさん。揚羽自慢の少女人形たち。人形たちは宮中の装束で彩られ、見た人は思わず目を細める。
 その後ろからしずしずと歩いてくる男雛の格好の蛍。それから女雛姿の珠緒。
「こ、こういうの夫婦雛っていうんだっけ?」
「そうですね。こうして蛍さんとふたりで居ると本当に夫婦雛になったかのような心地です」
「夫婦……そ、そうね。ええ、今日は、そのつもりで、過ごしましょう」
 あがる心拍、熱くなる頬。蛍は珠緒に気づかれないよう胸のあたりを押さえた。うっすらと化粧を施した珠緒のなんと愛らしいことか。色香のようなものまで匂い立つ。蛍は胸の中で思いっきり叫んだ。
(珠緒さんが今日いちばんの花よ!)
「? 蛍さん、どうぞ座ってください」
「あ、うん」
 いそいそと珠緒の隣に座ると、村人たちの声が聞こえてきた。あんれまあめんこい夫婦雛。お似合いじゃねぇ。それを聞いてますます蛍の頬が赤くなる。周りを少女人形たちが舞い踊っている。極楽とはきっとこのようなところを言うのだと蛍は思った。
 のだが。
「では、蛍さん、あーん」
「ってたたた珠緒さん!?!??!?」
「どうしたのですか。今日の蛍さんは旦那様ですから、食べる側多めなのですよ」
「そそそっそうよね今日は珠緒さんが、お、お、奥さんなんだもん、あーんだって普通よね!!」
「はい、そうですとも」
「……あ、あーん」
 幸せ、ただもうその一言だけで、蛍はいっぱいだった。

成否

成功

MVP

ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!

討伐も円満に終わり、人形たちは装いも新たに村の名物として来年も再来年も末永く村を見守るでしょう。
ひなまつり、楽しんでいただけましたか?
MVPは悪気がないことを訴えに来た貴方に。
称号「夫婦雛」を付与しています。ご査収ください。

またのご利用をお待ちしています。

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