シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>危機に現る魔法の馬
オープニング
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オランジュベネ。幻想南部にあった領地の名である。かつての領地を治めていた貴族は反転し、それからここは統治者のいない空白地帯として存在していた。その一部をイレギュラーズが領地を治めるにあたって渡されており、数十人のイレギュラーズによって発展しようとしている真っ最中である。
そのうちの1箇所――まだまだこれからというステップ地帯で、男はその日も労働にいそしんでいた。まだまだ小規模ではあるものの、商人ギルドや取引場、酒場などもあり徐々に活気づこうとしている土地である。物資を余所から運び、また余所へ運んでいくことが男の仕事であった。
故に。馬車へ荷物を積んで出たばかりのことであったのだ。乾燥した空気の中、ずっと向こう側に黒い影を視認したのは。
「なんだあ、ありゃあ……」
御者台にいた男は目を細めた。ゆらゆら、ゆらゆらと揺れているようなそれは、どうやら徐々にこちらへ近づいてきているようだ。もしかして行き倒れ寸前の旅人であろうか?
その正体を見定めんと近づいていた馬車であったが、とある地点で馬たちが怯えて進まなくなった。怪訝な表情を馬へ向けた男は、それから影の方向を見て息を呑む。
「なんだあ、ありゃあ……!?」
さきほどと同じ言葉。されどそこに込められた感情は全くと言っていい程異なる。その黒い影は旅人でも、いや人ですらなく――スケルトン。ゴースト。そんなアンデッドモンスターが近づいてきているのだった。
「ヒッ……!」
彼らはもう目前、怯えた馬たちで、しかも積み荷がある状態で果たして逃げ切れるのか。男が顔色を失くした、その時。
――ヒヒィーーーーーーン! ヒィィン! ブルルルルルッ……。
いななきと共に1頭の馬が颯爽と駆け参じる。アンデッドの1体へ強烈な体当たりをかましたシフカ・ブールカ(p3p002890)は馬車へと首を巡らせた。
「無事かい? それなら今すぐに、街へ戻ってこの事を知らせるんだ。私はローレットへ応援を呼ぼう」
「へ、へい!」
かくかくと頷き、未だ怯える馬を操り領地内へと戻り始めた男。その背を見送ってシフカはアンデッドたちを見やる。
(この数を相手取るのは難しい)
1体ならばシフカだけでもどうにかなるか。しかしこれだけの数が向かってきているとなれば、1人――いや、1頭で抑え込むのは難しいだろう。そして1体のみ、どうやら他とは異なる個体がいるようだ。その只者ならざる気配は警戒に値するもの。
だが同時に、これだけの速度であればシフカがローレットへ応援を呼びに行っても十分間に合う。シフカはそう判断すると、ローレットへ向かって走り出した。
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「……という経緯なのだそうです。今から急ぎで向かって、シフカさんの領地内で暴れだす前に倒さないといけないのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はイレギュラーズたちへそう語りかける。なにぶん、ここだけではないのだ。幻想各地にある三大貴族の領地やイレギュラーズのそれが沢山狙われている。どれもローレットに所属する仲間たちの大切な土地と思えば、ひとつとして手抜きはできない。
「向かってきているのはいずれもアンデッドモンスターだそうなのです。スケルトンとゴーストがゆらゆら~って迫ってくるのです」
「まだ夏じゃないんだけど、肝試しでもしにいくの……?」
数が多いからと連れてこられた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が酷く怪訝な顔をして呟く。肝試しではない――のだが、状況は夜だったら確実に肝試しだしそうでなくてもホラーゲーム的だろう。
スケルトンは何処から拾ってきたのか武器を所持しており、ゴーストは精神的に悪影響を与えてくると言う。いずれも1体であればさほどの強敵でないが、シフカが視認したという数を思うと油断ならない。しかし、シフカの領地からも10名程度ではあるが兵士が派遣できるとのことであった。
「皆さんならきっと返り討ちにしてやれるのです! どうぞよろしくお願いします!」
「はぁ。……まあ、そういうことで」
よろしくね、と。シャルルはユリーカの言葉を受け、イレギュラーズたちへ視線を移したのだった。
- <ヴァーリの裁決>危機に現る魔法の馬完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月08日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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草原、というには乾燥した空気が満ちており。砂漠、というには緑が見える。
シフカ・ブールカ領ステップ地帯に踏み込んだイレギュラーズたちは町の方向へと向かいながら敵影を探した。今のところはまだ見えないか。だが、見えたならばあっという間に詰められてしまうかもしれない。
町のすぐ外で待機していた兵士たちと合流し、『物語のかたち』シフカ・ブールカ(p3p002890)や助けた男がモンスターを目撃した方向へと急ぐ。その中にいるという怪王種はどれだけ強いのだろうかと『期待の新人』オラン・ジェット(p3p009057)は心を沸き立たせた。
(だがその前に有象無象の退治だな。楽しみを取って置くのも悪くねぇ)
此度戦うのは『戦うため』ではなく『護るため』だ。戦いに生きる彼であっても、ハイ・ルールに背くことはしないしあってはならない。
「それにしても、此処は骨やら黒い霧やら亡者の群れかぁ……」
『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)はどうなっているのだろうかと首を傾げる。幻想王国各所で最近きな臭い雰囲気になっているのは知っていたが、何かが起こっているのだろうか。いや、起こってはいるのだろう。自身らが未だ認識していない、何かが。
「お。あれがボスかな?」
不意に『鳶指』シラス(p3p004421)が目を細める。シラスたちが来るのとは反対側から、何やら黒っぽいモノが見える。そしてその周囲にもちらほらと影が――あるような。ないような。
しかし徐々に近づいてくれば動く人骨や怨霊の靄、そして圧倒的な存在感を放つ怪王種も認識できるようになる。
スペイクタから怪王種になる前の事を想像することはできず。けれどもその佇まいも、オーラも周囲のモンスターとは比べ物にならないことは察せられた。
(これも信託の滅びが迫ってる証なんだろうね)
負けるわけにはいかない、とシラスは小さく拳を握りしめる。
イレギュラーズになった頃。魔種たちは認知していたが、本当にその程度で。世界がいつか滅亡するなんてざんげから言われても実感など湧かなかった。
けれども今は滅びのアークが高まってきていることにより怪王種や肉腫と言った存在が生み落とされている。確実な変化を目で、耳で、肌で感じ取っているのだ。
「下手な戦争よりは小規模、とはいえゲリラ戦は心身を消耗させる……厄介ね」
敵の群れを見た『オトモダチ』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)はそっと視線を兵士たちへ向ける。イレギュラーズよりは戦闘経験も少ないだろう。ここに出てきた以上闘志は十分と見ているが、さてどうなるか。
突発的、予測不可能。稀な事態。そう告げるのは簡単だが、それも乗り越えなければならないとは領主の仕事も楽じゃない。
「猫の手も借りたいところでしょう。私の手は上手く動かないのだけれどね!」
『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)はくすくす笑みを浮かべ、くるりと回る。手で繊細な作業は出来ないけれど、剣と一体化できる足をその分めいっぱい動かしましょう。楽しく、愉しく、踊ってみせましょう!
「背負うは我が領、我らが家だ。決して通しはしないとも」
「ボクもできる限り、頑張らせてもらうよ」
シフカの言葉に『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が肩越しの視線を向ける。その先にあるのは町――ここにいる兵士たちの居場所であり、シフカの居場所である。そしてあそこにはここにいるよりもっと多くの人間がいるのだ。容易に抜けられるわけにはいかない。
「シャルルと兵士共はスケルトンとゴーレムの相手を頼むぜ。死ぬ前に逃げてんだぞ? こんなつまんねえとこで死ぬくらいなら、自分で死に方くらい決めてやれ!」
「ああ。守りたいものがここにある。それは君たちの帰りを待つ者でもあるのだ。
――生きて帰ろう、皆の者!」
領主の言葉に兵士たちの士気が上がる。それを見たヴィリスは小さく微笑んで、そして敵の方へと向いた。もうじき接敵だ。
「開幕のベルを鳴らしましょうか!」
瞬発力を味方に飛び出し、射程内に敵が入るとヴィリスはすぅと息を吸う。その唇から歌われるのは冷たく暗い、海の呪い。幾重にも響き渡るそれにいくらかの敵がおかしな動きを始める。
(そのまま同士討ちしてくれたらラッキーね)
足並みの乱れたそこへ次いで飛び込んでいくのはシラスだ。彼はスケルトンやゴーレムの有象無象――ではなく、その先にいる怪王種スペイクタの方へ。
(俺の役割は定石通りの盾役。皆がこっちに来られるようになるまで凌ぐこと)
そのためには絶対にスペイクタの攻撃をあちらへ向けてはならない。真っ先に危険へ陥るのは兵士たちだろう。
だが、とシラスは遠目に見えるスペイクタを睨みつける。あの姿、能力の詳細はさほどわからないが容易に引き付けられてはくれないだろう。
「なら――こいつはどうだ!」
独特な術式がシラスの前で浮かび上がり、構築された魔光がスペイクタへ飛んでいく。見切ることが困難な、ほぼ必中の一撃だ。
人骨という装甲と黒の靄をつっきって、確実に入る一撃。始まった戦いに『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)はシラスを追いながら小さくため息をついた。
(全く、一体誰がどんなことをして恨みを買ったんでしょうねえ)
怨念を抱かずにはいられないほどのことだったのだろう。これだけの数が居るとなると、逆に何があったのか気になってくるというものだ。
だがそれを解明するために手が疎かになってはいけない。四音は射程に入ったスペイクタへ神気閃光を撃ち放った。
一方、スケルトンやゴーレムたちと戦う仲間たちは。
「死霊野郎ども! 生きのいい魂はここだ!」
オランの声にモンスターたちがそちらを向き、戦闘に滾る魂でも見えたのかオランへと向かっていく。うちの1体へシフカは加速しながら敵を攪乱せんと攻撃を加えていく。
「なるべくなら短期決戦でいきたいわね」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)の頭上、いや天上には黒い太陽が浮かび上がる。桜吹雪にも見える火の粉が周囲を舞い、炎と熱砂の幻影がレジーナの前方にいたモンスターたちを取り巻いた。
(これが効果的……なんて、都合の良い話はないかしらね?)
それは魔力無き者を対象とした無差別殺戮兵装。別名、選別の権能。
幻影から解き放たれたモンスターたちはすぐさまアイリスの術式に迫られることとなる。常闇と不吉の月。対群精神感応術式『狂月』を展開したアイリスは目を細める。嗚呼、まだか。
「まとめて釘付けにしないとねぇ」
町はさほど遠くない。最初で抜けられてしまえばこちらは劣勢となるだろう。そうなる前にとアイリスは手数の許す限り術式を執拗に展開し続ける。
「まずは敵を減らしましょうか」
数が多くては友軍が戦いにくい。乱戦になってしまえば四方八方を気にしなくてはならないのだから。シャルロットは二振りの妖刀を構え、度重なる攻撃に追い詰められていくスケルトンたちへ鋭い乱撃を放った。
オランが敵を引き付け続けながら敵を薙ぎ、仲間たちがそこへ加勢していく。しかしそう一筋縄で敵も倒されてくれないらしい。
「まったく、数が多いのだわ」
乱撃を放ったレジーナが思わずそう零す。視線は周囲を巡って友軍たちへ。あちらはシャルルも一緒にどうにかやってくれているようだ。オランが粘ってくれているおかげもあり、今のところ突破されたりということもない。
「おいおい、どこ行く気だぁ!? こっちの魂はまだ欠片も食われてねえぞ!」
視線が離れたと見るやオランはすぐさま声を上げて主張する。その体はボロボロだが、それでもまだ終われない。ここで倒れたならばモンスターたちが町に行きかねないし、なによりスペイクタとの戦いが待っているのだから!
そのスペイクタはと言えば、シラスのフィンガースナップに精神を揺さぶられ正常な判断力を失っている。あとはいかにこれを引き付け続けられるかが勝負だ。
「必ずもたせてみせますよ。お任せを」
シラスが受ける神秘攻撃のタイミングに合わせ、スペイクタの射程から離れた四音がシラスを癒す。単身挑んでいるのだ、絶対に彼を倒れさせるわけにはいかない。
「ふふ、ふふふ」
ヴィリスは華麗なステップを踏みながら敵と敵の間を縫うように進んでいく。その口元には美しい笑みを浮かべ、足先の剣はモンスターたちの余裕を削いでいく。
「この戦場もいい音ね。さぁ踊りましょう?」
一緒に、ずぅっと、死んでしまうまで。
少しずつ減っていく敵に、しかしシフカは目ざとく町の方へ抜けようとしたモノたちを見つける。咄嗟に駆け出したシフカは彼らの前へ回り込んだ。
「よそ見をするなよ。災厄たろうとするのならば、まずはこの私を倒してみるがいい!」
ここで止められずしてなにが領主か。
ここで守れずしてなにが領主か。
立ちはだかったシフカにモンスターたちが群がっていく。一同はその頭数を減らしていくべく武器を向けた。
(ドリームシアターで……)
「おっと」
半ば乱戦のような様相を呈してきたこの状況。そんな暇はないかとアイリスはすぐさま切り替える。そこへオランの挑発もシフカのそれも抜け、されど確かにイレギュラーズたちを排除すべき敵と認知したか――ゴーレムが靄をまき散らしながらアイリスの方へ向かってくる。そちらへ向かってアイリスはすぐさま武器を構えた。
「無念無想、無我の境地に至りし刃は空をも断つ必殺の刃と成れり……故に惑いなし……」
まだ距離はある。されどアイリスはゴーレムを見て小さく笑った。
「ボクの間合いは言ってくけど、ちょ~っと広いんだよねこれが」
何処までも届くそれは、ラムダのメモリーに組み込まれた名もなき戦士が持つ技の再現。同種個体を攻めながらシャルロットは友軍たちへ視線を飛ばした。
「油断大敵よ。攻撃の手を緩めないで」
数は確かに減ってきている。それでも、何があるかわからないのが戦闘だ。
(私たちだけで全部平らげてしまっても問題ないでしょうけれど……それでは立つ瀬がないのだろうし)
出てきたということは、町の為に何かしたいと言うことなのだ。実際、その想いは何となく見て取れる。
「皆、あとは我らに任せてくれ」
シフカが残党を引き付け、シャルルと兵士たちがそちらへ向かっていく。ここまでくればあとは何とかなるだろう。そろそろシラスたちの方が限界かもしれない、と。
一同は頷き、スペイクタを相手取る2人の元へ急ぐ。オランは飛び込むなりクラッシュホーンをぶちかました。
「四音、シラス、待たせたな!」
「遅くなってごめんなさいね」
スペイクタを黒いキューブに包み込んだヴィリスが続く。シラスは援軍ににっと笑みを浮かべた。
今回の彼はそのほとんどを防御に注いでいる。故に攻撃らしいことは四音が手すきで放つ神気閃光くらいしかないが、その分こうして皆が来るまで持たせられたというものだ。
「皆さんの命を癒し、守るのが私の使命。安心して戦ってください」
そう告げる四音も若干の傷を負っていたものの、先に治療すべきとオランへ回復をかける。その間にアイリスは超遠距離からスペイクタへ必殺の刃を次々と飛ばしていく。重なるその攻撃を見計らい、レジーナは享楽のボルジアを怪王種へ向けた。
(手ごたえは……まあまあかしら)
全くというほどでもないが、流石にそう易々とくらってもくれない。攻撃自体は当たっているが、もう少し攻撃を重ねれば享楽の悪夢も染み渡るだろうか?
「死してなお怨霊、おまけに怪王種……滅びのアークの現象っていうのは厄介ね」
磨き続けた紅き流れの剣筋をうちこみながらシャルロットは呟く。これが生前の魂があったものなのか、そもそもこういったモンスターであるのかは定かでないが。
(魂があったのなら、生前は反転する程でもなかったでしょうに、未練を残したばかりに怪王種化……とも取れるわね……)
どんな人だったのだろう。そんなことを考え始めてしまいそうで、シャルロットは小さく首を振った。
「せめて、この戦いにて、その魂に安らぎを」
紅の剣筋が、またひとつ。
未だその視線はシラスが受けているが、怪王種の攻撃は時に範囲が広い。意識的に離れていなければ巻き込まれてしまうこともある。それによってかかった状態異常を四音が治しているのを横目に、シラスはひたすら耐え続けていた。
「やがて仲間の攻撃がお前を貫くんだ。その時までこの俺と踊ってもらうぜ」
「あら、私とも踊ってもらいたいのだけれど」
シラスの言葉にヴィリスが周囲を舞いながらくすりと笑う。ああ、けれども――そろそろ幕引きの時間。大団円を迎える為に、退場願わなくては。
「答えてくれるかは分かりませんが、折角ここまで来たんです。倒される前に、恨み言のひとつでも言ってみてはいかがですか?」
四音の言葉に怨霊の視線が向いた、ような気がした。頭蓋骨の下から小さく呻き声のようなものも聞こえたけれど、それは音にならず。その合間にもイレギュラーズたちによる必死の猛攻が続く。
敵との距離を見ながら、攻撃に巻き込まれないように立ち回るアイリス。彼女とは対照的に肉薄して攻め立て、その首を取らんとするレジーナ。嬉々とした表情のオランが全力で攻撃をぶつけていく。
やがて武器であった杖もヒビが入り――最後の一撃を受けたスペイクタは、砂のよう散って消えてしまった。
戦いという幕が下り、ヴィリスは草原へとすんと腰を下ろす。
「今日もいっぱい入ったから疲れたわ」
普段は車いすだから、尚更かもしれないけれど。帰ったら義足の手入れが必要だろう。
(でも、ちゃんと領地も守れてよかったわ)
「――やるなお前ら!」
視線を向けた先ではオランが兵士たちの背中を叩いている。イレギュラーズがスペイクタへ向かった後、シフカとシャルル、兵士たちでほとんどのモンスターを倒したのだ。
「手当てが必要な人はいるかな?」
アイリスは被害状況の確認や治療を手伝う。四音のような回復はできないが、乗った船なのだから最後まで付き合おう。
「あ、それが終わった後ちょっと付き合ってくれよ」
そう告げたオランがやろうとしたのは敵の墓を作る事。怪王種こそ原型を留めず消えてしまったが、スケルトンなどは簡素に埋葬してやる。
「楽しかったぜ。俺があの世に行ったらまた戦ってくれよ」
一方、敵からはぎ取った武具を眺めたシャルロットは小さく唸った。スペイクタの杖も怪王種が消えてしまった時に同じ末路を辿ってしまったが、スケルトンたちの装備には裏がないかと考えていたのだ。
(あまりにも充実しすぎていないかしら……?)
考えすぎ、くらいがちょうどよい。少しでも情報を集めておく必要があるだろう。
「イレギュラーズの皆は駆けつけてくれて本当にありがとう」
簡素に作られた墓へ魂の安らぎを祈ったシフカは首を向ける。これで領地と皆の生活は明日も、明後日も続くことだろう。
「さぁ、帰ろう、わが家へ」
シフカの言葉に一同は支度を整え、町へと歩き始める。四音は後ろをついていきながらくすりと笑みを浮かべた。
(さて、こんな事件が続くなら。何か根本的な解決策が必要になるんでしょうね)
それがどんなものかはわからない。のちのお楽しみだ。
一方のレジーナは考え事をしながら皆の後をついていく。先ほど現れたモンスターはスケルトンなど『アンデッド』の類。領地を襲う魔物の傾向はまちまちのように思える。
(共通していることとしては、何かの衝動に苛まれている事。でも……魔物に幻想の街を見分けるなんてできるのかしら?)
もしも、何者かが誘導しているのなら。もしその原因が町にあるのなら排除すれば良いのだが、あるのだろうか。
レジーナはギフトで執事の使い魔を呼び出し、ひとつ言いつける。不自然な何かがないか探しなさいと。そしてレジーナもまた、町へ到着したら人物やモノの出入りについて調べてみようと心に決めたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
無事に領地と皆の生活が守られることとなりました。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
●成功条件
モンスターの討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。
●エネミー
・『人骨怨霊』スペイクタ
黒い靄が人の姿を取り、防具のように人骨を身に着けています。恐らくは怨霊の類ですが、怪王種の一種と考えられます。黒い靄は揺らめいており、頭に身に着けた頭蓋骨の眼窩は怪しく光っています。
長い杖のような武器を所持しており、神秘攻撃で広範囲を攻撃することに長けているようです。
反応はやや緩めですが、他ステータスは総じて高いものと想定されます。
・スケルトン×10
動く人骨。魔物の類です。人語は解さないようです。
成人男性ほどの体躯であり、その手にはどこかで拾ってきたのか剣や盾、槍、斧などを持っています。飛び道具はないようです。
機動力は低いですが、動き自体は俊敏であるようです。
・ゴーレム×10
怨霊の類で在り、黒い靄がふよふよと浮遊しています。人語を解している……のかは不明ですが、近づくと何等かぶつぶつ呟いているような気がします。良く聞こえません。
核のようなものがあるのかはわかりませんが、炎のように靄は揺らめいています。
物理攻撃がない代わりに神秘適性が強く、多彩なBSをまき散らすようです。
●フィールド
シフカ・ブールカ領のステップになります。乾燥した土地であり、発展途上。地面には短い草が生えているような場所で、見晴らしよく隠れる場所も特にありません。
イレギュラーズ到着時、人々のいる街とエネミーたちは若干の距離がある程度です。
●友軍
・『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
旅人の少女。神秘攻撃を主としており、レンジは中~遠距離程度。回復はできません。
仲間であるイレギュラーズの領地ということもあって、抜けて行こうとするモンスターには積極的に攻撃を浴びせます。
イレギュラーズ側から指示があれば無理ない範囲で従います。
・シフカ・ブールカ領兵士×10
シフカさんの領地から出されている兵士です。いずれも片手剣・片手盾を持っており、『普通の人』並に戦えます。イレギュラーズ側からの指示があれば従います。
自領地のこととあって士気は十分。ですがイレギュラーズほど強くありませんので注意してください。
●怪王種(アロンゲノム)とは
進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。
●ご挨拶
愁と申します。
シフカさん、いい鳴き声してますね。颯爽と現れて頂きたかったのでOPで書かせて頂きました。
それではシフカさんの領地の為に、よろしくお願い致します。
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