シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>オンネリネン特別実験部隊・クリムゾンクロス
オープニング
●大いなる魔女狩り
清らな祈りの歌が、鉄の匂いと共にやってくる。
一揃いの軍靴の足音が、掲げた槍のきらめきに。
祈りは神に、届きたもう。
いざ殺せ。
いざ殺せ。
魔女はそこにいるぞ。
我らクリムゾンクロス――魔女への鉄槌なり。
歌いながら、赤髪の少年は笑った。
笑いながら、赤髪の少年は老婆の髪をつかみ。
掴みながら、赤髪の少年は金のナイフでその喉をかききった。
吹き上がる血の赤さを浴びながら、清らかに歌い、笑い、もがく老婆を放り捨てる。
そんな少年のうしろ、青髪の少年が杖を片手に苦い顔をした。
「魔女め、無害な老婆を装って世界を闇に染めようなどと……あまりに卑劣。卑劣極まる!」
「魔女が卑劣であることに、今更怒ることはないさ」
赤髪の少年が笑顔のまま振り返った。
「僕らの使命は、闇なる魔女たちから世界を救うこと。僕らが魔女を殺すたび、世界は確実に美しく、そして清らかになっていく!」
両手を広げ、踊るように回る赤髪の少年。
彼の胸のプレートには『赤壁』という称号と共に『アガフォン』という名が刻まれている。
まるでミュージカル役者のように煌びやかな、彼にぴったりの赤い衣装。
後ろに続く青い髪の少年もまた、青い衣装に『ヴァルラモヴナ』のプレート。
アガフォンの言葉に納得したのか、ヴァルラモヴナは苦笑した。
「然り。我らの使命は変わらない。魔女の廃絶。世界の平和。
それにしても魔女ともめ。国王に取り入り次代の勇者を名乗ろうなど――」
振り返り、歩いてきた風景を見やる。
彼らに続く兵隊たちが、無数の白い獅子型聖獣たちが、有象無象の区別無くあらゆる住民たちを抹殺し、道の端へと放り捨てていくさまがそこにはあった。
町を護る騎士達さえも、彼らの前では等しく死体となり果てて――。
「必ず嘘を暴き、滅ぼしてやる。――魔女(イレギュラーズ)どもめら!」
●赤い染みは広く
幻想王国の東側に位置する町ドゥダラムにおいて大虐殺が行われたというニュースは、古代獣騒ぎや闇奴隷商騒ぎにわく幻想国内において細く、そして薄く伝わった。
それが天義から離脱した独立都市アドラステイアより派遣された傭兵団であったとしても。
「幻想貴族たちにとって、アドラステイアに政治的価値はないだろうからね。手を出したところで天義の首脳陣は大して喜ばないし、閉鎖的で危ない噂まであるから出した手が火傷しかねない。まあ、こうして引きこもって国からのつながりを断とうとする集団はどこにでもいるから、珍しくないっていうのもあるよね」
ここはギルドローレットが拠点としている王都の酒場。『黒猫の』ショウ(p3n000005)が、はジョッキを片手にそう語った。
「けど――オレたちにとっては、放置するにはあまりにヤバすぎる単語だ。オレたちは、『知ってしまった』からね」
独立都市アドラステイアについて少しだけ話そう。
月光人形事件をはじめ天義における国ぐるみの不正義は、異端審問官の癒着や魔種を枢機卿としていた事実として広まり、政治不信を広めるきっかけとなった。
それをことさら煽っていたのが独立都市アドラステイアである。天義東部の海沿いの町を占拠し高い壁で囲ったその都市は、名の通り天義からの独立をかかげ、真なる神ファルマコンを崇拝する新興宗教団体となった。
国の立て直しや致命的な人手不足に今も悩まされている天義教会はこれらの対応と解決をローレット・イレギュラーズへと委託。掘れば掘るほど現れるアドラステイアの恐るべき実態を、ローレットは目の当たりにすることとなったのだった。
そんな事件の一端として語られるのが、先日ラサ・ファルベライズ遺跡群で遭遇した子供だけの傭兵部隊『オンネリネン』である。
彼らはアドラステイアに住まう下層市民たちによって構成された部隊であることが明らかとなり、遭遇した子供達は紆余曲折あり今も保護下に置かれている。
「その『オンネリネン』だけど……実験区画フォルトゥーナと協力して実験部隊を作り上げたようだ。ウォーカーの拉致や抹殺といったこれまでの活動とは大幅に異なる、対ローレット用の実験部隊さ」
その名も、と書類の一部にトンと指を立てる。
「『クリムゾンクロス』」
●ファーザー・バイラムとクリムゾンクロス
「皆さん、よく頑張りましたね。まずはこの町を拠点として、ローレットの所有領地を奪っていきましょう。大丈夫、ここまで勇敢に戦ったあなたがたなら、きっと成し遂げられるでしょう。神ファルマコンの加護は、あなたの正義に宿っています」
両手を広げ、歌うように語る男がいた。
サングラスをかけ、上半身をむき出しにした彼に、アガフォンやヴァルラモヴナたちクリムゾンクロスの小隊長たちは跪いて祈りの姿勢をとった。
「「光栄です、ファーザー・バイラム!」」
血にまみれた手で、サングラスの縁をそっと触れるようにして位置を直す。
レンズ越しの瞳が優しく細く、そして凶悪に赤く光った。
ハッとして顔をあげるクリムゾンクロスの子供達。
彼らの瞳もまた、呼応するように赤く赤く光り始める。
「それでいい。世界の幸福のため、魔女を殺しなさい」
――ローレットへ、依頼が発行されました。
――内容はドゥダラム奪還。クリムゾンクロスを排除し、町を取り戻してください。
- <ヴァーリの裁決>オンネリネン特別実験部隊・クリムゾンクロス完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年04月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●ドゥダラムの車窓より
続く街道の窓には、遠い麦畑の緑色が見えていた。
収穫の時期にはあまりに遠い、青々とした絨毯が、小春の陽気に揺れている。
そんな風景とは似つかわしくないほどにあたりが鉄臭く、そしてどこかすえた匂いがし始めたころ。
『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)は車窓の外すぐそば。道ばたへ綺麗に並べられた死体のパーツに目を細めた。
鉄の串にさした人の首や、まるで薪を積むように並んだ腕や足が、その残虐さとは裏腹にとても几帳面に、そして生真面目に並んでいるのだ。
異教の侵略とはかくなるものかと、リウィルディアは感情にフタをする。
「他国の町に大きく出たものだね。
僕は幻想貴族だ。縁はなくとも自国を踏み荒らされて黙っているわけにはいかない。だからまずは、大人しくお引き取り願うとしようか」
同じ馬車の中には『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
向かい合う座席にて、二人は互いの手元をじっと見つめていた。
ココロの両手が組まれ、人差し指をくるくると絡め続けるように回す。
「バイラムって何者なの。イコルと聖獣の関係も、分かってるようでわからない。あの施設だって、今思えば何だったのか……」
ココロの脳裏にあるのは『雷桜の聖銃士』ジェニファー・トールキンの迷いと困惑の瞳だった。彼女はいまどうしているだろう。
建物内で流れていたゆったりとしたミュージックコーラスが頭に残る。『あなただけ』と情熱的に歌い上げるあの部分が、奇妙に心を揺する気がした。
「ココロ……ちゃん……?」
アーリアに言われて、ココロはハッとした。自分で自分の人差し指を握り、逆向きに折り曲げようとしていたことに気付いた。すんでのところで留まり、ぱっと手を離す。
「疲れてるのかしら。お酒……は良くないけどぉ、気付け薬、のむ?」
ピルケースを出してくるアーリアに、ココロは苦笑して首を振った。
「話の途中で悪いんだがよ」
『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が窓辺に肘を突きながら声をかけてきた。
「バイラムってぇのは、まさかノフノでぶっ殺したあの牧師じゃねえよな」
「まさか……よねぇ」
否定したい気持ちと、それにしてはあまりに符号しすぎるという気持ちが馬車のなかで混じり合っていく。
「同姓同名の別人たあ思えねえ。おめえらがフォルトゥーナに潜入して見つけてきたアレコレだってよ……」
「分かってるわぁ。けど、考えるのは後にした方がいいわね」
聖銃士と少年兵の部隊。オンネリネン・クリムゾンクロス小隊。
ただの洗脳部隊だと考えるには、少々危険すぎる。
「私達、あまりにあっさりとこの仕事を受けてしまったけど……大事なことを忘れてるわ。だって――」
「だって――地区一つをゼンメツさせるには、それ相応の戦力がヒツヨウだよね?」
別の馬車の中で、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がまさに同じ話をしていた。
一地区の防衛がローレット8人チームより劣るとは、少し考えづらかった。そこまで防衛がザルなら今頃隣国がとっくに占領している。
「思い当たるフシは……まあ、あるかな……」
『一般人』三國・誠司(p3p008563)は過去、別の聖銃士と戦った際におきた暴走事件を思い出し、そして仲間に語っていた。
「イコルの危険性。聖銃士の危険性。これは分けて考えるものじゃないんじゃないかな。どこかで……いや、より上位層で繋がってるんじゃないか?」
「それは、さすがに検証のいるところではりますが……」
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は開いた手帳のページに指をはわせた。
「集まって来た情報の断片から、凡そ幾つかの像の形が見えてきましたね。
イコルを摂取し続ける事で聖獣化する、事もあるけれど、確実ではない。
その研究をしているバイラムという男、その特徴を額面通り受け取るなら恐らく正体は肉腫。
聖獣は、やはり複製肉腫の類型の可能性が高そうですね。
装着者を取り込もうとする聖銃士の鎧の話、或いは……それ自体も複製肉腫か……」
「ひとを取り込む肉腫、か」
これらの固体とはじめて遭遇したのはカムイグラのことであった、と記憶している。
「アーマデル君はどうおもう」
誠司は今回においての別側面での経験者、『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)に話をふった。
「ああ……」
過去、ラサでのこと。ミーサというオンネリネン所属の少年兵少女を保護したことがあった。
あの頃からだろうか。オンネリネンの子供達が『他人事』ではなくなったのは。
「ミーサ殿は……彼女たちは俺に言った。『皆を、助けてあげてください』と」
クリムゾンクロスの子供達は、同じように助けることができるのだろうか。
それとも、殺し合うことでしか関わることは出来ないのか。
それはきっと、自分たち次第なのだろう。
●この世界で僕は何が出来た。間違いばっかりの世界で君は。
数体の聖獣『ハッピーバースデー』が一斉に糸を吹き出していく中、イグナートはそれらを手刀で次々と切り払いながら突進をかけていく。
「ここでは完全勝利を頂いて行こうか! ケンカを売られた以上は敗けはない!」
少年兵の繰り出した槍がイグナートの脚をねらって払われるが、イグナートは激しい跳躍と回転。複雑なひねりをくわえた宙返りでハッピーバースデーの真上へ着地すると、肉体から闘志を波紋のように走らせビリビリと周囲の少年兵やハッピーバースデーたちへと伝播させていく。
多くの少年兵がそれにつられてイグナートへと殴りかかり、少数のハッピーバースデーが糸による支援を忘れてイグナートへと食らいつく。
イグナートの抵抗力は素で糸をすべて切り落とせるほどだが、少年兵たちによって押さえつけられた後では少々危ない。ハッピーバースデーの糸に抵抗突破系の効果がないとも言い切れない。
「しばらく引きつけておくから、センメツは頼んだよ!」
腕に食らいついてはなさないハッピーバースデーに苦労するイグナート。どう引っこ抜いたものか迷っていたところで、ハッピーバースデーの肉体が光の刃によって大きく切り裂かれた。
紫色の地が吹き上がり、ばたばたと暴れだす。
「聖獣を優先的に黙らせるヒツヨウがありそうですね」
身体を中心に槍をぐるぐると振り回していたアリシスが、華麗な連撃から光の刃を連射していく。
この刃『エンシス・フェブルアリウス』の感電性はイグナートの【怒り】付与作戦と非常に相性が良い。現状の手札ではかなりベターな連携といえるだろう。
そんなアリシスの動きを押さえ込もうと、剣を握った少年兵が殴りかかってくる。
あからさまに首を狙った打撃を、槍を斜めにかざすことで受け止めるアリシス。
平然とした様子に、少年兵はギリギリと歯を食いしばって唸った。
「魔女め!」
「神の名の元に正義を妄信する醜悪さに比べれば、成程『魔女』とは悪くない呼び名ですね」
「おらあ、ガキども! 邪魔すんじゃねえぞ!」
グドルフが斧の背をむけ少年兵をなぎ倒す。
転倒したところを蹴りつけて路肩に転がすと、山賊刀を聖獣ハッピーバースデーめがけて投擲した。
突き刺さった剣をまるで気にしないかのように身をよじり、グドルフへと意識をむけるハッピーバースデー。吹き出る血に毒の香り。
しかしグドルフは知ったことじゃねえとばかりに突進し、斧の背でもって突き刺さった剣を更に深く打ち込んだ。
「けっ……気色悪ィバケモンが、さっさとくたばりやがれ!」
「やめろ! 聖獣様に手を出すな! 魔女め!」
よろよろと起き上がろうとして失敗する少年兵。彼を庇うようにナイフを両手二刀で抜いた少女が立ち塞がり、ぼろのローブをなびかせる。
「下がってて、この『魔女』は私が倒す!」
あああ! と悲鳴のごとく叫んで無策に突撃する少女。
それを鋭く見下ろすグドルフ。
それらすべてを強引になぎ払っていくカクテルイエローの波。
訳も分からず吹き飛ばされ、ごろごろと転がる少女。近づく足音はアーリアのものだった。
立てた人差し指の爪、きらめく星のようなネイルアート。
フッと息をふきかけるとまるで煙が散るように魔法の光りが広がり、それが先ほどの波となって広がっていく。
意識を直接刈り取っていくような波に、まどろむように目を瞑る少女。
「ああもぉ、精々あの塀の中で大人しくしていてよ!」
アーリアは倒れた少女を迂回するように進むと、頭に立てた爪をがりがりとやった。
「落ち着いて。今は戦いに集中しよう」
飛来する無数の矢を剣によって切り落としていくリウィルディア。
青い軌跡が刃によって描かれ、リボン結びのようなラインができあがったところでリウィルディアは深く踏み込んだ。
来る、と察した少年弓兵たちが腰のナイフにてをかけた――が、それよりも早くリウィルディアは距離を詰めていた。
咄嗟に突き出したであろうナイフを跳ね上げ、刃を少年兵の顎につきつける。
恐怖のあまりストンとしりもちをついたところへ、誠司が山なりに砲弾を放った。
空中で弾けた弾がネットをひろげ、素早く飛び退いたリウィルディアと入れ違いに少年兵たちをネットによって無力化していく。
「これ以上はもうやめろ! 命をかけて戦うことなんでないんだよ!」
「うるさい魔女め! お前達の魔術になんて惑わされない!」
ネット越しに、転がったナイフへ必死に手を伸ばそうとする少年。
誠司は歯を食いしばり、大筒にオプションされたミニスタンロッドを抜いて少年兵へと押しつけた。
ガッと小さくうめいたきり気絶する少年。
「このまま続けても勝ち目はないよ。
自分達が何を手伝ってるかわかってるの? 少し頭冷やして考えてみたら!」
少しずつ引き下がりながらも必死に抵抗しようとする少年兵たちに、ココロは手のひらを突きつけるようにして呼びかけた。
「騙されるな、魔女は嘘吐きだ! アストリアだってそうやって天義を牛耳ったんだ!」
「魔種に侵された連中の言うことなんて聞かないから!」
意を決して剣やナイフを持って突撃してくる少年兵たち。
ココロは歯を食いしばった。
「僕らを惑わすな嘘吐きめ! 僕らは覚悟と幸福のために戦うんだ!」
「すぐ、そうやって『形のないもの』のせいにして……!」
打ち込まれた剣を魔力の波で押し返し、返す刀で繰り出した手刀は水面を斬るしぶきのように少年兵たちを振り払った。
瞬間、アーマデルがココロの上を飛び越えて少年兵たちへと急接近。
鎖剣を繰り出して彼らの武器を払い落とすと、同時に放った『英霊残響:怨嗟』の音色が少年兵たちの意識を刈り取っていく。
「…………」
アーマデルは倒れた少年達を見下ろした。
一方でイグナートたちが聖獣ハッピーバースデーを撃破し終えたようで、どこかよろめいて荒い息をするイグナートがこちらに親指を立てる。
「オンネリネンの子供達……か」
今ここで彼らを回収して撤退し、アドラステイアから隔絶した環境で保護することもできるのかもしれない。
だが、それはこの先に陣取っている聖銃士たちを野放しにすることになる。
少女からうけた願いを胸の中で再生して、アーマデルは己の胸に手を当てた。
「相手になろう。力なきもの、未来なきもの、奪われたすべてのものを代行して――俺が報いよう」
●クリムゾンクロス
演劇の舞台みたいだった。
積み上げた死体のうえにしいた板をふんで、軽やかにステップをふむ赤毛の少年。
煌びやかな古典ミュージカルにあるような美しい軽鎧衣装を纏った彼は、宝石のはまったカランビットナイフを、わっかに指をかけてくるくると回しながら。
「ようこそ魔女の諸君! 歓迎するよ、この――『赤壁の聖銃士』アガフォンが」
仰々しく礼をしてみせる。
その表情は笑顔だが、こちらを長髪する意図がよくみえた。
舞台の左右より現れる、杖をもった少年。
「『晴天の聖銃士』、ヴァルラモヴナである。下劣な魔女共よ、仲間の魔女が殺されてさぞ怒り狂っておるだろうな」
「『白磁』、イディ。興味ない。魔女、殺すから」
余った長袖の両手からパグナウをぬらりとむき出しにした大鎧の少年。希薄な表情にデスマスクめいたかぶとをガチンと下ろした。
「……」
その横で、ローブをかぶった少年が黙って立っている。少年がくいっと手をかざし指をさした瞬間、地面を割るようにしてハッピーバースデーが出現。
毒液を噴射しココロたちへと奇襲をしかけた。
「こんなので――!」
素早く聖域を展開して毒液の影響を素早く拭うココロ。イグナートは拳に闘志の電撃を流して殴りつけ、ハッピーバースデーを迎撃。
その間に誠司は大筒をガトリングモードにして射撃開始。
「戦闘をやめろ、その鎧だけは! セルゲイのように取り込まれるぞ! 本人に聞けばわかる!」
「嘘の次は仲間への侮辱かい? 君たちはつくづく卑劣だなあ」
残像を作るほどの素早さで射撃をよけながら急接近をかけてくるアガフォン。
誠司の首めがけてカランビットナイフの刃が迫る――が、数十センチの所でアリシスの槍が後方より割り込んだ。
「哀れ。『魔女が与える鉄槌』を以て、己が無知と現実を理解なさい」
「鉄槌は『魔女に与える』ものだ。愚か!」
杖から魔力を放出するヴァルラモヴナ。空中に氷の槍が無数に生まれ、アリシスへと殺到する。
誠司とアリシスは素早く飛び退きシールドを展開。
そこへ腕を手についた四足走行で突っ込んできたイディが『がう』と叫んで飛びかかった。
衝撃が外見以上に走り、破壊されるシールド。
そこへグドルフが横から割り込むようにしてショルダータックルを浴びせた。
「お待ちかねの本命ってワケだ。ガキ共ォ、てめえらの親玉の情報、たっぷり吐いてもらうぜえ!」
「無駄。お前、殺すから」
獣のように跳ね回り食らいついてくるイディに、グドルフは持ち前のタフネスで対抗する。
一方でリウィルディアはいまだ舞台の前から動かない四人目の聖銃士に目を向けた。
「一人だけそこで見学?」
剣に青いエネルギーを纏わせ、振り向くことで斬撃を飛ばすリウィルディア。
まるで防御しない少年は、ずぱんとローブを切断された。
はらはらと落ちたローブの下から。
「……エヴァ、くん」
アーリアが思わず、名を呼んだ。
少年エヴァ――否、『繭割の聖銃士』エヴァはとろんとした笑顔で言った。
「お姉ちゃんたち、ローレットのひとなんだよね。お兄ちゃんを『攫った』人達だよね? ぼく、わかってるんだ。お姉ちゃん達が仕方なくやってるって。誰かにおどされたり、ぶたれたりしたんだよね? だいじょうぶ。もう大丈夫だから、お兄ちゃんを返して? ぼくが……」
笑顔のまま、エヴァはアーリアの眼前へ超高速で迫った。
「ぼくがみんな、ひとつにしてあげるから」
突き出した腕が突如変形し、巨大な芋虫の口になった。
咄嗟に魔術を放出しながら飛び退くアーリア。咄嗟にことで転倒したが、リウィルディアが庇うように立ち塞がった。
「……この場には僕しかいないし、幻想貴族を代表して一つ問おう。
神ファルコマンは他国を侵すことを喜ぶような、蛮神なのか」
「……? ごめんね、お姉ちゃんが言ってることがわかんないや。
きっと怖い人に言わされてるんだよね? 大丈夫、もう大丈夫だよぉ」
とろんと笑うエヴァ。
……と、そこで、ヴァルラモヴナが頭に手を当てて言った。
「皆、聖獣様が復旧不能。撤退だ」
「うん、わかったぁ」
「残念。殺せなかった」
ぴょんと大きく飛び退くイディとエヴァ。
追いかけようとアーマデルが鎖剣を放つが、強引に割り込んできたハッピーバースデーがそれを受け、毒液をまき散らして爆ぜた。
「っ!」
咄嗟に防御し飛び退くアーマデル。
そんな彼らに、アガフォンが馬の上から手を振った。
「また会おう、魔女の諸君! 僕らは必ず世界の平和を取り戻す! 君たちの陰謀を打ち砕いてね!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――オンネリネン・クリムゾンクロス小隊の撤退を確認しました
――オンネリネンの子供達は全員現地から撤退した模様です
――聖獣ハッピーバースデーの死体を回収、調査が行われます
GMコメント
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
このシナリオには<ヴァーリの裁決>のほか『オンネリネンの子供達』及び『実験区画フォルトゥーナ』に関する要素が含まれます。
詳しくは『背景解説』の項目をご覧ください。
■■■オーダー■■■
・成功条件:クリムゾンクロスのドゥダラム区からの撤退
・オプションA:聖銃士アガフォンの戦闘不能
・オプションB:聖銃士イディの戦闘不能
・オプションC:聖銃士ヴァルラモヴナの戦闘不能
・オプションD:聖銃士???の戦闘不能
・オプションE:一回以上の????の発動
■■■シチュエーション■■■
ドゥダラム区を占領したオンネリネンの実験部隊クリムゾンクロスは、次なる領土への攻撃を計画しているようです。
ターゲットされているのは幻想にてローレット・イレギュラーズが管理している領地が主とされていますが、そのリストは手に入っていません。
ローレット内においてオンネリネンに詳しいアーマデル・アル・アマル(p3p008599)
、並びにアドラステイア・フォルトゥーナ区画について詳しいアーリア・スピリッツ(p3p004400)をそれぞれメンバーに加え、周辺領主連盟にてローレットへの依頼が発行されました。
計画はシンプルで、区画へ襲撃をかけ敵戦力を大幅に低下させることで撤退を余儀なくさせるというものです。
襲撃側ゆえに兵力の補給ができないオンネリネン・クリムゾンクロス小隊にとって、兵力低下はイコールで撤退理由となります。
事前の偵察調査によるとクリムゾンクロス小隊とファーザー・バイラムの接触が確認されていましたが、襲撃時にはファーザー・バイラムの姿は見えませんでした。
■■■作戦概要■■■
このシナリオは主に前半戦と後半戦のふたつのパートに分かれます。
・前半戦
ドゥダラム区へ襲撃をかけます。少年兵と数体の聖獣です。
エネミーデータについては次の項目を参照してください。
・後半戦
区の中央で次の進軍計画を練っている聖銃士四人との対決になります。
ここでの敵は護衛についている少数の聖獣と聖銃士という構成になります。
■■■エネミー■■■
●オンネリネン特別実験部隊・クリムゾンクロス
フォルトゥーナ区画の協力によって作成された小隊。
どのような手段で、どのような意図をもって、どのような変化がなされているのかは今のところ不明です。
小隊の主力として聖銃士アガフォン、イディ、ヴァルラモヴナ、???の四名がおり、それ以外の戦力はごく少数の少年兵と数体の聖獣によって構成されています。
・少年兵
オンネリネンの標準的な少年兵です。10~13歳程度のおさない子供達によって構成されており、戦闘力はあまり高いとは言えません。
剣、弓、魔術媒体などで武装しています。
・聖獣『ハッピーバースデイ』
白く巨大な芋虫のような形状をしたモンスターです。
糸を吐き相手を拘束したり、複数の効果を持つ毒液を発するなど戦闘に置いては援護攻撃を得意としています。
一方HPが高く再生能力ももつため、放っておくと戦況がみるみる悪化するので優先的に倒した方がいい相手かもしれません。
・聖銃士
今回は四名の聖銃士が確認されています。うち三名までは顔やしぐさから特定できましたが、一名だけローブで顔や体格を隠しているため判明しませんでした。
戦闘力は高く個人それぞれが危険です。
充分に注意し、最大の警戒をもってあたってください。
またファーザー・バイラムが施した『実験』がいかなるものかわかっていません。これもまた警戒が必要です。
■■■背景解説■■■
・オンネリネンの子供達
<Raven Battlecry>事件にて、『子供たちの傭兵部隊』と呼ばれ、イレギュラーズ達と戦った経緯のある、『十歳前後の少年少女で構成された傭兵部隊』です。
これまで戦った少年少女の多くは戦闘後イレギュラーズに保護されています。
以下参考シナリオ。
<Raven Battlecry>孤児たちの墓穴
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4726
<アアルの野>幸せな子供たち
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4999
・実験区画フォルトゥーナ
アドラステイア内に存在する特別な区画です。
他区画とは隔絶され、ファーザー・バイラム管理のもと特殊な環境が構築されています。
人を聖獣に変えてしまう薬物『イコル』の製造が行われていた他、ファーザー・バイラムもまた只者ではない様子です。
以下参考シナリオ。
タオルケットにさよならを
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4806
・ファーザー・バイラム
実験区画フォルトゥーナを管理するやや特殊な立ち位置の『オトナ』です。TOP画像の人物がそれです。
潜入調査時に遭遇した際の調査結果は以下の通りです
→バイラムは人間ではない。
→バイラムは魔種ではない。
→バイラムはここ数年のうちに今現在の状態で突如『発生』した。
→バイラムは人間に対して何らかの『書き換え』が可能である。
→バイラムはフォルトゥーナにて聖獣化の実験を行っており、イコルと聖獣の安定的な生産を目的としている。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
Tweet