PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>地を均し、誇りを潰す

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●餓える者、踏破する者
 遠雷のような爆音と、激しい地鳴り。
 それが、井水 戸子(p3p005696)の治める領地を襲った最初の異変だった。
 ゆっくりと……だが次第に速度を増す地鳴りのインターバルは、やがて大気を揺らす咆哮を伴って襲いかかる。地震により湖の水が波打って家屋を襲う音か? 否、方角が違う。
 地震にしたって、ここまで長い揺れはないだろう……人々がそう思った時、『それ』は現れた。
 一言で言えば、それは『巨人』、否、頭の角を見るに『鬼』か。天を衝く威容、地面を薙ぎ払うが如き長い腕、全身から立ち上る紫の炎は、彼方の森林を燃やすでもなくたちまちのうちに立ち枯れにした。生命への敵意、悪意といったものをありありと感じさせるそれだ。
 そして、その鬼に付き従うように現れたのは小柄な子鬼達だ。腹が不自然に膨れ上がり、全身が痩せこけたそれは異世界における『餓鬼』をおもわせる。……領地の者のなかに貧しい時代、激しい貧困を経験したものがいれば、それが酷い飢えと乾きから生まれたものだと直感的にわかるだろう。
 鬼が、吼える。
 進行方向にあった銀行をひと蹴りで破壊すると、中から溢れ出した人々と混じって垣間見えた金貨……その中に混じった記念硬貨らしきコインに目をやった。
「ア……アイオン……」
 そう、その硬貨に、そして銀行の随所に。
 『勇者王アイオンとその偉業を讃える意匠』が、複数見受けられたのだ。
「アイオオオオオォォォン!!」
 鬼の咆哮は半壊した建物ごと、中の人々を灰燼と帰した。そして、周囲の餓鬼達は辺り構わず人に、そして多くのものに手当たりしだいに食らいつきはじめた。

●電撃的反抗戦線
「既にご存知の方も多いと思われますが、『古廟スラン・ロウ』の結界に何者かが侵入し、レガリアが奪われ。更には伝説の神鳥が眠る『神翼庭園ウィツィロ』の封印が暴かれた……この出来事と連動して、幻想王国内に多数のモンスターが出現し暴れまわっています」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は資料を手に、確認するように一同に告げた。既に多くの者達は『内緒話』として共有した話であり、恐らく自分の所領が襲われている者もいるはずだ。
「それで、現在。井水さんの領地の北東から猛進する巨大な影がある、と情報が入りました。今から向かえば、被害こそ防げませんが領地の壊滅は免れるはずです」
 事態は急を要する。巨大な影――鬼を倒さねば領地が荒野と化しかねず、小型の影を放置すれば必ずや人的被害が出るだろうと三弦は続けた。
「敵の能力の詳細はわかっていません。ですが、鬼のサイズと強度からして怪王種(アロンゲノム)とみて間違いないでしょう。相応の準備と覚悟がいる相手です」
 それと、と三弦は続ける。どうやら、『古廟スラン・ロウ』に関連すると思われるこれらのモンスターは、何故か勇者王アイオンとそれに由来するものにひどく敵意を抱いている、と。
「井水さんの領地は確か、銀行が多数あったはずです。でしたら、勇者王の意匠が刻まれた記念硬貨の1つや2つ、あるはず……事態を悪化させないためにも、緊急度は高くなりますね」

GMコメント

 鬼ってこわいなー。とづまりすとこ(そして潰される)。

●達成条件
・『大鬼』および『餓鬼』の撃破
・(オプション)施設被害を最小限に食い止める

●大鬼
 『古廟スラン・ロウ』から現れたと思しきモンスター。出現後巨大化、特殊な能力を得ているので怪王種(アロンゲノム)と化していると推察されます。
 HPと抵抗、物攻が高いですが、防技はそこそこ。ブロックには2人もしくは『ハイ・ウォール』持ちが必須です。
・退廃の炎(P):【反】、至近距離にいる敵対者は常に【不吉】【致命】相当の不利を被る(これは【呪殺】の判定に含めない)。
・業咆(A):物遠扇、【狂気】【痺れ】【必殺】
・地均し(A):物近ラ、【飛】、【呪殺】、高CT、高威力。
・長腕薙ぎ払い(A):物遠単、【火炎】【業炎】

●餓鬼×20
 手当たりしだいに口に入るものを襲って喰らう、餓えの象徴のような敵。
・基本攻撃【不運】【喪失】【Mアタック小】

●領地
 井水さんの領地です。湖に面しており、銀行街を有します。
 銀行外から襲撃してきており、ここの被害が大きくなるとアイオン関連の意匠が敵に暴露する確率が上がり、事態はどんどん悪化していきます。

●怪王種(アロンゲノム)とは
進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ヴァーリの裁決>地を均し、誇りを潰す完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月26日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
すずな(p3p005307)
信ず刄
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
日高 天(p3p009659)
特異運命座標

リプレイ

●一秒は砂金にも替え難く
「ベネディクト! まず建物が壊れないように……それと、頑丈な建物にみんなを避難させよう!」
「そうだな、逃げ遅れを出すのだけは避けたい」
 倒壊した銀行に身を預けた大鬼を眺め、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)と声を掛け合い、破壊を阻止する結界を形成する。少なくともこれで、戦闘の余波による破壊は大幅に減るはずだ。大鬼達が狙って施設を破壊しに来るならば、その前に倒せばいい。単純な理屈だ。
「飢えに……怨みかな? 何れにせよ素晴らしい感情だよ。うん、実に結構。けれど残念ながら優雅さにはかけるね。重ねて言えば見た目もあまり美しくはない」
 『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は、路地を抜けて現れた餓鬼達めがけ鋭い眼光を放ち、自らへと引きつけんとする。飢えと本能に縛られたそれらに、果たして彼女の持つ誘惑に抗う術などあっただろうか。
「怪王種(アロンゲノム)、もしくは、アークモンスター、か。次から次へと、タネが尽きない、な」
 『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)はマルベートと餓鬼達が駆けていく脇を抜ける形で、大鬼へと徐々に間合いを詰めていく。遠近感の狂いそうな巨体、恨みつらみに血走った、されど一片の理性を有すその眼光が彼女を捉えると、振り上げられた足がまっすぐ地面に突き刺さり、地を揺らす。……だが遅い。エクスマリアは既に、至近距離まで詰め寄っている。
「最近の古墳騒ぎにしろなんにしろ……うーん……全く何が起こるのかわかりゃしないねっ!」
「何やら勇者王に纏わるものを敵視しているようですね。過去に退治された恨みとか、そんな感じでしょうか……?」
 『闘技戦姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)はマルベートが引きつけたのとは別の餓鬼の集団に突っ込んでいくと、袋の中から取り出した保存食を投げつけて自らへ惹きつける。欲求に素直な餓鬼達にその魅力は抗い難く、すぐさまそちらへ向けて飛び込んでいく。
 流石に道具袋を漁ってみても勇者王に由来するメダリオンは引っ張り出せなかったが、まあ餓鬼にはあったとて価値などわかるまい。ミルヴィは即座に思考を切り替えると、大鬼の前に立つエクスマリアと合流する。
 『竜断ち(偽)』すずな(p3p005307)はその餓鬼達を迎え撃つ形で素早く切り刻むと、再びの一撃を見舞うべく身構えた。そして、再び地を蹴り彼らを切り刻む。足が動く限り、傷を無視できる限り、その手と足は止まることはないだろう。
「この僕がついている。安心しろ、君たちの町にこれ以上傷を増やさせやしない」
「ああ、この街は俺達が守ってやる」
 『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)と『特異運命座標』日高 天(p3p009659)もまた、避難する人々を先導する形で動き、迫る餓鬼達から身を挺して人々を守ろうとする。
 シューヴェルトの声は、そしてその素振りは貴族としてのカリスマ性を遺憾なく発揮し、人々にいっときながらも安心感と信頼感をもたらした。それは同時に、人の上に立つ者、即ちより優秀な……『食べ甲斐』のある者として餓鬼の目にうつったとておかしくない。迎え撃つのは、魔銃の銃口。
 天はシューヴェルトの前に立つ形で向かってくる餓鬼達を挑発し、その身で堂々と攻撃を受け止める。その身を襲うのはほんの僅かな虚脱感と、なにか重石を嵌められたような違和感。されど、今の彼が警戒する程とも言い難く。
「俺達を倒さん限り、貴様らの思い通りにはさせん──よほどアイオンに恨みがあるか、化け物共」
 天に向かってさらに襲いかかろうとした餓鬼達は、しかし直前でマナガルムの声に向き直り、歯をむき出しにして突っ込んでいく。大鬼は兎も角、餓鬼達は勇者王に関わるものには今の所見向きもしない。物忘れが激しいのか、はたまた食欲が怒りに勝っているのか。
「アイオンへの、恨み、か。マリアには分からないが、余程のことが、あった、のだろうな」
「勇者王がそんなに許せないなら、アタシ達が相手になってあげるよっ!」
 大鬼の前に立ちはだかり娃染暁神狩銀を構えたエクスマリアは、髪に蓄えた雷光を以て大鬼に強烈な一撃を叩き込む。次いで、彼女とやや距離をとった位置に陣取るミルヴィは2本の曲刀を構え、舞うように振るいながら大鬼へと迫る。
 大鬼にとって、両者の攻撃はなるほど、悪くない精度であったことだろう。相応の手傷を与えただろうということもわかる。だが、本来ならば足を止めて相対する程の強敵ではない。なら、なぜ。
 答えは両者の手にしたものと、背後に投影されたものにこそあった。
「アイオンンン……!!」
 そう、両者が手にしているのは損壊した銀行から拾い上げた勇者王記念メダル、そしてその背後に投影されたのは、その意匠を大写しにした……セララがドリームシアターを駆使したもの。
 幻影が保つのは1分、即ち60秒。その間に残り6名で餓鬼を殺し尽くすか、はたまた大鬼が2人を圧し潰すか。
 少なくとも、彼女らは微塵も負ける気ではいないようだったが。

●躊躇は欲の前に無力で
 ギィ、ギィ、ギィと餓鬼達の声がする。
 酷く痩せ細り、しかし腹部だけが異様に盛り上がったその姿で、しかし眼光ばかりは爛々と輝き逃げ遅れた少女へと注がれる。首、いや腹、はたまた未発達の乳房か。どこを食み、どこを味わうべきかという欲求は、口から溢れた涎の質で明らかだ。
「弱い者いじめは許さないよ、セララストラッシュ!」
「この貴族騎士の前で新たな犠牲を出させるものか!」
 が、餓鬼の爪が少女に伸びるより早く、セララの聖剣から伸びた光とシューヴェルトの蹴りとが次々と餓鬼達を蹴散らし、吹き飛ばす。かろうじて命を繋いだ餓鬼は、セララを新たな『食事』と見做し襲いかかる。
 セララはといえば、最後のドーナツの欠片を飲み込むと、そのまま2度目のセララストラッシュの態勢を取った。自らへ向かって考えなしに突っ込んでくるのなら、それ以上に御しやすい相手はいない。
「いくら貪欲に飢えていても、より強き者に喰われるのが獣の世界というものだ」
 2度目のセララストラッシュを受け、なおも前に進もうとした1体の餓鬼はしかし、その背後から食らいついたグランフルシェットとグランクトー、2本の槍に貫かれて『捕食』された。その槍……というかナイフとフォークにしか見えぬそれを打ち合わせると、マルベートは満足げに舌なめずりをひとつ。
「数が多い、早々に数を減らさなければ時間経過ごとに被害は増す一方だ……それに、微量とはいえ魔力を奪い取られるのは気分がよくないな」
「貪欲な部下が混乱を助長して、ボスが右から左に街を横断か。本当に、元の世界を思い出してしまうな……!」
 マナガルムと天は残った餓鬼の大多数を引き受け、片っ端から切り込んでいた。流れ出る血の量は明らかに彼らより餓鬼の方が激しいが、しかし波状攻撃による運命の汚染と魔力の簒奪は、こと天にとっては無視できぬレベルに至りつつあった。
「なによりもまず、守り切ること。そして、あなた達をすべて倒すこと! それこそが今の私達の使命です! 気になることは、後で考えます!」
 すずなは仲間達が引きつけた餓鬼達を斬って回る、謂わば遊撃の立場にある。分水剣は彼女の剣気を受けて唸りをあげ、餓鬼達を繰り返し切り刻む。一度本領に至った彼女の暴威は、餓鬼にとってみれば刃舞う竜巻に巻き込まれたようなもの。原型をとどめ生きて居られるはずもない。
 餓鬼達の掃討は想定以上のペースで進んでいる、といっていい。だが、それに比例してイレギュラーズの消耗……こと、シューヴェルトと天のそれが激しい。それでも戦えるのは、両者の気力あってこそ。
「ヤツに軽々しく近づくわけにも行かない。できるだけ距離をとってこの銃で――」
「ユルサン、アイオン、オレヲ……オオオオオオッ!!」
 シューヴェルトが魔銃を構え、大鬼へ向け構えたのと、彼ら目掛けて業咆が鳴り響いたのとはほぼ同時。
 地面を薙ぎ払うように響き渡る音の波は複数のイレギュラーズを巻き込み、正気の在り処を不安定にさせる。既に間合いに駆け出していたセララとすずなは音の波を凌ぎ、マルベートとマナガルムは持ち前の抵抗力で正気を保ってみせた。……そして、今の咆哮で銀行の一角に明確なヒビが入る。
「ちょっとぉ、こっち無視するなんてひどくない?!」
「マリア達を、狙えぬなら、そちらか。勇者王、に、ご執心な、割に、随分と、手慣れている」
 ……そう、エクスマリアとミルヴィとて餓鬼掃討をサポートする形で大鬼を十分に足止めしていたのだ。
 そも、ミルヴィが初手に於いて大鬼の気を引いていなければ。エクスマリアの雷撃の威力が不十分だったならば。餓鬼掃討班は、壊滅といかずともジリ貧の戦いを強いられていた筈だ。
 故に今、値千金の数十秒、その魔法が切れた一瞬だったというだけ。
 餓鬼達がいなくなった今、総力を以て大鬼を撃破する。それ以外、イレギュラーズに求められることはない。

●勇者の証と共に万雷の喝采を
「よく頑張ってくれたね。これは感謝の気持ちだよ」
 マルベートはエクスマリアとミルヴィへ魔雷纏繞を付与し、2人が猛攻の代償に負った傷の代替とする。自らの攻撃が炎と共に自身を傷つける、など酷いジョークだ、とマルベートは肩を竦めた。
「あの炎……私とは相性が悪そうですね。迂闊に近寄らない方が懸命でしょうか」
 すずなは直感的に、接近戦を仕掛けるリスクを感じ取ると遠間からの斬撃で大鬼を切り刻む、握った手に返った衝撃は軽くはないが、さりとて踏み込んだときよりは万倍、ましなリスクだ。
「状況に合わせて、だな。なに、全方位から打ち掛かれば足止めを意識せずとも戦える」
「全方位からの一斉攻撃! これでどこにも進ませない、暴れさせない……!」
 マナガルムとセララの本領発揮は、至近距離での戦闘によるところが大きい。銀の腕で牽制し、蒼銀月をありったけの力で振るうマナガルム。聖剣に宿った雷光の迸りをそのままに、大上段から叩きつけるように振り下ろされるセララの一撃。それらは研ぎ澄まされた戦闘センスとともに、着実に大鬼の力を削ぎにいく。
「皆が攻撃に専念できるよう、こいつを止めるのが俺の役目だ。……街にも、手は出させない!」
 天は、残された体力を振り絞って大鬼の前に立ちはだかると、高らかに名乗り、守りを固める。ファルカウの加護は彼の決意と信念に強く呼応し、その声を響かせる。それは、大鬼の固く閉ざされた『異常を来さぬ』特性をも打ち破るほどの気迫。彼こそが敵であると感じさせる、大器の片鱗たるもの。
 たとえそれが一瞬後に崩れ落ちるとも、その一瞬を稼いだ事実をこそ彼は誇るべきだ。
「何者なのさあんた達! アイオンになんの恨みがあるってのよ!?」
「グググ……コノ怒リ、コノ猛リ、詮無キ小虫ニ語ル口ヲ持タズ! ヤツガ居ヌナラ、現レルマデ殺ス!」
「全く、勇者王というのは肖像だけでここまで鬼を狂わせるものなのかい。ある意味幸せ者だね」
 ミルヴィは流麗な動きから曲刀を振るい、その耳目を己へ向けようと死力を尽くす。先程の、カタコトであったばかりの状況とは異なり、大鬼は徐々に(本当に徐々に)言葉を増やして語っていた。だが恨みつらみの比率が多く、とてもじゃないが理解しきれない。マルベートの呆れたような感心も、尤もだ。
「貴様達はなんだ、何故急に現れた」
「俺達ハ解キ放タレタ。ソレダケダ」
 マナガルムは猛攻の合間を縫うようにして、絞り出すような声で大鬼に問いかける。だがその返答は簡潔で的を射ず、とても問答ができるようなものではない。
「つまり、話す口を持たぬと」
「それじゃあ、あとはここまで好き放題した分のツケを支払ってもらおうかな?」
 すずなとセララは、大鬼の回答に不満そうに――あるいは『十分に』満足したように笑みを浮かべた。
 もはや語る口なくば、吐く息すらもこの地には無駄だ。
「何時まで我が刃に耐えられるか、勝負……! ――鬼退治と洒落込みましょう!」
「魔法騎士セララの、全力全壊! ――ギガセララブレイク!」
 炎へと飛び込み、舞うが如くに切り裂くすずなの分水剣。
 相手が立つ限り、何度だって雷撃を、そしてセララの猛攻を支える聖剣ラグナロク。
 そして、エクスマリアの髪が纏った雷光が、髪に結いつけたアイオンの意匠とともに大鬼へと襲いかかる。
「大きければ、それだけで強い、など。技も武器もない、獣までの理論。思い知らせて、やろう」
 バチン、と弾けたそれは、溶けた金貨で鬼の目を塞ぐ。意識を刈り取られた大鬼の胴は銀行の残骸におりかさなり、それきり動かなくなった。
 ……アイオンを恨み、その意匠に吠えたそれが、銀行の記念硬貨の山で眠る。
 まったくもって皮肉な結末に、シューヴェルトは呆れたようにため息をついた。

成否

成功

MVP

セララ(p3p000273)
魔法騎士

状態異常

シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)[重傷]
天下無双の貴族騎士
日高 天(p3p009659)[重傷]
特異運命座標

あとがき

 お疲れ様でした。
 餓鬼に対して怒りとか、そういうステータスに因らないところで引きつける手段を持ってきたのは悪くなかったと思います。
 スキルの拡大解釈その他と是々非々といったところですがそれなりに良い結果となりました。
 銀行の被害は故意に壊されたのが3棟(OP時点1棟)、被害者数もだいぶ想定よりは少ないです。
 今はひとまず体を休め、次の戦いに備えてください。

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