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シナリオ詳細

ふわもこ戦闘訓練!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「――アル君。強くなるにはどうすればいいんだ?」
「……グゥ?」
 アルペストゥス (p3p000029)はソロア・ズヌシェカ (p3p008060)の問いかけにぱちり、と目を瞬かせ、それから首を傾げた。

 彼らの召喚された地、無辜なる混沌(フーリッシュ・ケイオス)は戦いが絶えない。召喚以前のことはわからないが、大規模召喚以降は魔種たちの動きも見え、滅びのアークと対抗するローレット、ひいては運命特異座標としてその目的を阻止しなければならない。
 ……の、だが。全員が全員すぐさま戦えるかと言えばそうではない。
 召喚前は戦いなど遠い世界の話だったという者もいるだろう。庇護される子供であったかもしれない。『武器など持ったこともない、持っていたとしても血生臭い命のやりとりなどしたことがない』という者は少なからずいるはずだ。
 もちろん、全てのイレギュラーズが打倒魔種という流れに乗る必要はないのだが――護身ということを考えるならば、武器を振れた方がずっと良い。
「でも、いきなりゴブリンとか怖くないか?」
「グラァウ……」
 むむん、と難しい顔をするソロアにアルペストゥスも思い浮かべる。ヒトより小さくて、ヒトとは違った肌色を持つ亜人。あるいはモンスターに分類される者たち。
 前者は意思疎通できる可能性もあるが、後者はダメだ。いきなりの殺気をぶつけて襲いかかってくる。あれでは戦ったことのない者たちは身体がすくんでしまうだろう。

「……それで、俺のところへ?」
「グゥ」
 アルペストゥスに頷かれ、そしてソロアに期待の眼差しを向けられたベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)は思案を巡らせる。確かに自分の方が戦闘経験はあるだろうし、教えられることもあるだろう――が。戦う相手となると話は別である。
(そこらにいるような低級の魔物……いや、もっと弱い存在の方が良いか? だがそうなると戦うまでもなく倒してしまうだろうし……)
 考え込むベネディクト。やっぱり難しいだろうかと不安そうな顔をするソロアを余所にアルペストゥスは何かに気付いたようでノシノシと離れて行く。

「……あれ、アルペストゥスさん? どうしました……って、えっ、ぴよっ?」

 そんな声が聞こえて。視線をやった2人は、アルペストゥスに咥えられてぷらりんとぶら下がったブラウ(p3n000090)の姿を認めたのだった。


「ええと、ご希望の内容はわかりました。そうですよね、僕もすぐ戦えって言われたら戦えませんし……」
 ブラウもソロアたちの要望を聞くとベネディクト同様考え込んだ。だが彼と異なるのは、その手に大量の紙束が握られている事である。
「ブラウ君、それは一体?」
「混沌生物の資料です」
 いっぱいありますよね、と苦笑を浮かべるブラウ。これまで混沌で確認された種を片っ端からメモした紙らしいのだが、いかんせん沢山ありすぎて全てを覚えきることはできず、調べるのも一苦労といった様である。
 どうやら彼はここからイレギュラーズたちのお眼鏡に叶う生物を探し出そうとしているらしい。ひとしきり唸ったブラウは数枚の紙を束から抜き出し、また後日ご連絡しますねと一同へ告げた。



「――それで今日、なわけだが」
「グルゥ」
「この辺りだな」
 ソロア、アルペストゥス、ベネディクトは同志たるイレギュラーズたちを交え、ブラウから指定された場所まで訪れていた。未だかのひよこらしい毛玉の姿はない。場所が幻想の開けた草原ということもあって、アルペストゥスは翼を大きく広げて伸びをした。
 春先で少し肌寒いとはいえ、良い陽気。このままではうっかり寝てしまいそうである。目をパシパシと瞬かせたアルペストゥスは――若草色広がるその先に、黄色い毛玉を見た。
 のっそり起き上がって遠くまで見通す。黄色い毛玉……と、毛玉がいっぱい?
「グ?」
「アル君?」
「あれは……なんだ?」
 アルペストゥスの動きにソロアが気づき、次いで毛玉群に気付いたベネディクトが目を凝らす。どう見ても毛玉の軍勢。いや、動物か? あんなにモフモフな動物がいるか?
「みなさーん! お待たせしました!」
 そこから聞こえてくるブラウの声。やはりあの毛玉の内1匹はブラウらしい。近づいてきたそれらは――やはり、モフモフな動物たちだった。
「お待たせしました。彼らが皆さんの練習に手伝ってくれるそうですよ!」
「ピ!」
「プゥ」
 ブラウが示したのは大きな、それこそブラウより大きな――大人くらいはありそうな――ひよこやらうさぎやらの、小動物たちであった。

GMコメント

●成功条件
 ふわもこミニマルズと戯れる(戦闘する)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。不明点はありません。

●ふわもこミニマルズ×たくさん
 小動物と呼ばれる括りの動物たちが大人程の大きさに、かつとんでもなく毛がふわっふわになっています。一見毛玉です。ちょこっと見える個性で動物が判断できる感じです。(うさぎなら耳、ひよこなら嘴と翼、など)
 彼らは非常に頑丈かつ強力なエネミーとなりますが、他種族に対し好意的です。今回もブラウからの要請により『戦闘訓練の手伝い』をしてくれます。
 そのためどんな攻撃でも柔らかく受け止めてくれますし、可愛らしくじゃれついてきます。戦闘を模していることは理解しているため、訓練中に油断するとピンチです。
 必要があればブラウが通訳してくれますが、イレギュラーズ側からの言葉は通じます。そのため何体で相手取って欲しいなどの指定もできます。戦い方については指定できませんのでご注意ください。

●フィールド
 幻想内のとある草原です。
 お天気も良く平和です。見晴らしもばっちりです。

●NPC
ブラウ(p3n000090)
 情報屋のひよこです。食材適性があります。食べないでください。
 皆さんが訓練している間応援してくれます。戦闘には参加できません。

●ご挨拶
 愁と申します。リクエストありがとうございます。
 個々に相手取っても良し、複数人での戦いを試みても良し。戦い方を見て指導する役目も良し、戦闘訓練の方法はお任せ致します。最後はまったりしても良いかもしれませんね。
 それではどうぞ、いってらっしゃい。

  • ふわもこ戦闘訓練!完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
※参加確定済み※
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空
※参加確定済み※
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
※参加確定済み※
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
エドワード・S・アリゼ(p3p009403)
太陽の少年

リプレイ


 黄色の毛玉。いつも見る、食べちゃダメな愛らしい生き物。
 沢山の毛玉。黄色の毛玉より大きくて、自分の首周りのふわもこと同じくらいふわもこしていそうな生き物。
「グァ!」
「ピィ」
 『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)が興味津々でふわもこミニマルズへ近づいていく。ミニマルズたちも大きな古代竜たる彼に怯える風なく、ぱちぱちと目を瞬かせながら観察しているようだ。互いが危ないものでなく、そして食べるものでもないことを確認した彼らは訓練前の準備運動と言わんばかりに追いかけっこを始める。
「ブラウさん、エルのおせんべい、よろしくお願いします」
「はい、大切にお預かりしますね!」
 色々と持ってきた『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はブラウ(p3n000090)へおせんべいを託す。訓練中に粉々になってしまったら悲しいから。戦わない彼なら持っていても心配するようなことはない。ない、はずだ。
「近くで見ると、なかなか迫力あるんね。遠目ならただ可愛らしい子ですむんやけれど」
 『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は戯れるアルペストゥスとミニマルズを見比べて目を瞬かせる。ブラウが遠目からやってきた時にはふわもこの可愛い生物がやってきたとしか思わなかったが、これだけ近くに来ると――なんだろう、威圧感というか、存在感というか。
 でも、抱き着いて撫でたならきっと気持ちよい事だろう。そんな願望を今ばかりは押し込めて、蜻蛉は近くに居た『豊穣の空』ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)へよろしゅうねと挨拶をした。
「今日の皆さんの訓練が、先でお役に立ちますように。うちも頑張らせてもらいますね」
「ああ! 私は集団戦がしたかったから、こうして一緒に訓練してくれるのが嬉しいぞ!」
 にっこりと笑ったソロアは、次の瞬間それをミニマルズに伝えなくてはと気づく。このままでは言うタイミングを計りかねて訓練が開始してしまうかもしれない。
「おーいアル君! ふわもこさんたちに訓練の希望を言ってもいいかい?」
「グ?」
 ミニマルズを追いかけ回していたアルペストゥスはソロアの声に首を向ける。そうだ、訓練。自分も訓練の希望があるのだった。
 ソロアがミニマルズへ向かうと同時、アルペストゥスはブラウの方へ向かってのしのし歩く。つぶらな瞳でアルペストゥスを見上げたブラウへ、アルペストゥスはばさりと翼を広げた。
「ぴ?」
「グゥ」
「「……」」
 束の間見つめ合う2人。何かを伝えるようにバサバサと翼を動かすアルペストゥス。それをしかと黒い瞳へ映すブラウ。……ややあってブラウがああ! とちっちゃく飛び跳ねた。それを見てアルペストゥスはくいっと身を翻す。
 一方のソロアはちゃんと集団戦をしたい旨をミニマルズたちへ伝えていた。沢山で来て欲しいと言う彼女の言葉にミニマルズがぴょこぴょこ跳ねて応じる。
(初めて使うスキルが多いからドキドキするな……)
 けれどそれにも慣れて行かなければ。仲間との連携、邪魔をしない動線、不得手な距離での対処。気にすることが沢山あると知ってはいれど、それを身に着けるには場数をこなさなければならないのだから。
「しかし、この混沌は不思議なことに事欠きませんね……」
 『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)は飛び跳ねるミニマルズたちを何とも言えない表情で見つめる。どんな攻撃であっても柔らかく優しく受け止めてくれるモンスター……いや、モンスターではないのか。とにかく、こんな存在には他の世界でもそうそうお目にかかれないことだろう。
 ソロアのほうへひょこひょこやってきたブラウはミニマルズたちへ空を飛べるものはいるかと問う。恐らくアルペストゥスのあのジェスチャーは『飛んで欲しい』なのだろう。ミニマルズたちの3分の1程度が実際に空を飛んで飛行能力を実証し、訓練内容は『飛行力ある敵を含んだ集団戦』となった。
「今回は宜しく頼む、来てくれて助かるよ。訓練が終わったらお礼はきちんとさせて貰う心算だ」
 『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)がミニマルズたちへそう告げると、任せろと言わんばかりのドヤ顔――毛玉に埋もれたドヤ顔である――で返される。もしかしたらこういった経験がそれなりにあるのかもしれない。
(まさか先生のような真似をすることになるとは思わなかったが……他の特異運命座標の積み重ねになるというなら悪くはない)
 訓練までもう間もなく。『ドキドキの躍動』エドワード・S・アリゼ(p3p009403)は自らを落ち着かせるように息を吸って、吐いた。
「オレがどんな力をつけて、どんな風に戦いと向き合うか……」
 彼が心に決めた戦い方と、その力の伸ばし方は。



 訓練内容の方向性も決まったところで一同は位置につく。ミニマルズたちも地上から、或いは空中からと準備は万全だ。
「俺は何時でもいけるぞ」
「プゥ!」
「ピヨッ」
 ミニマルズたちも問題ないと言うように次々と鳴き声を上げる。ちなみに一等小さな黄色い毛玉は安全圏でイレギュラーズの荷物番をしながら戦闘開始・終了の声かけと応援だ。
 この場で唯一指導する側であるベネディクトだが、ただいつも通りに戦うよりはなんらかを自らへ課した方が、己への経験にもなるだろう。
(周りの状況も見ながら戦う様に意識してみようか)
 普段であれば前に出てただ戦うだけ。しかし周囲を観察することに慣れておけば、今後戦況の変化にも気づける可能性は上がるだろう。
「それでは――はじめっ!」
 ブラウの声と共に一同が動き出す。中でも意思をバッチリ固めたエドワードが飛び出し、ミニマルズたちの前へ立ちはだかった。
「さあ来い! どんなにきつい攻撃が来たって、オレはぜってー折れねぇ!」
 防御の構えをとった彼は、ミニマルズの突進をしっかりと受け止める。けれど戦闘は攻撃1回きりではない。最後の最後まで粘って粘って粘りまくるのだ!
「エルも、頑張ります!」
 パーフェクトフォームで集中状態を作り出したエルは手にしていた本を開く。それは『冬のおとぎ話』――誰にでも等しく、分け隔てなく訪れるもの。如何様にも物語を形作るモノ。
 エルの攻撃に合わせて空へ舞いあがったアルペストゥスのナイトメアバレットが降り注ぐ。このメンバーの中ではベネディクトの次くらいには依頼に慣れていると思う。ならば不慣れな仲間たちと楽しく、あとから「あそこの連携が良かった」と言えるような戦い方をしよう。
「すごいな、もふもふの大群だ」
 迫っては壁となるエドワードや注視を集めるベネディクトへ拾われていくミニマルズにソロアは感嘆の声を漏らす。これが普通の魔物であったらどれだけ恐ろしいことだろう。しかし今の相手はふわもこミニマルズ。恐怖に足がすくんでしまう前に、戦い方に慣れなければ!
 ソロアの走らせる雷撃がふわもこたちを翻弄する。近くにいた蜻蛉は指先に深紅の蝶を留まらせ、それをエドワードの方へと向けた。
「さぁ、行って」
 淡い光を纏う深紅の蝶は、彼女の言葉のままにふわふわと飛んでいく。儚く消えて行ったその光と同時にエドワードが多少持ち直したのが見えた。
(まずは倒れさせないように、やね)
 大気中の魔力を徐々に吸収はしているものの、いつ切れてしまうとも限らない。そこも注意していく必要があるだろう。『煤闇衣』リースヒース(p3p009207)はデス・ネルを構えながら彼女を観察する。
(血に濡れたわが手も、時には癒しの技を使わねばならぬ時もある……)
 癒し手が回り切らなくなる前には補佐に行こう。そう注意しながらリースヒースは標的をミニマルズの1体へ定めた。それも、空中の敵を。その処刑刀は一見、宙など届かないようにも見えるが――それがさだめであるならば、遠くにだって届いて見せるのだ。
「近くまでくると中々……圧がありますね」
 フォークロワは仮面から零れ落ちた黒い雫をミニマルズへ飛ばしていく。先ほどソロアが放ったチェインライトニングによってうまくこちらの攻撃もハマったようだ。
(近くまで来たら躱して――)
 ベネディクトの後方に立っていたフォークロワは、向かってきたふわもこの突進を半身逸らして直撃を避け、次の瞬間エクリプスを叩き込む。ころんころん、と転がったミニマルズは、しかし復活! と言わんばかりにすぐさま飛び起きた。
 時間が経過するにつれ、ばらつく照準をベネディクトのひと言で立て直す。武具で身を護るベネディクトも、空高く飛び上がったミニマルズたちまでは引き寄せきれないものの――。
「ギャアウッ!!」
 同じように空を飛ぶアルペストゥスが畳みかけ、併せてエルのピューピルシールが飛んでいく。リースヒースのライフアクセラレーションがアルペストゥスを守るように包み込んだ。
 それを地上から視界に入れたエドワードは体当たりやつっつきからひたすら身を護る。
(戦闘訓練って意気込んでたけど、戦うってなんなのかずっと……ギリギリまで考えた)
 その結果は、その目標は――隣で敵を引き付ける、ベネディクトだ。彼のように仲間を守りたい。彼のような頼れる背中になりたいと、思ったのだ。
 ソロアの雷撃がエドワードを避け、ミニマルズだけに襲い掛かっていく。蜻蛉は少し前へ出ると味方を鼓舞して士気を上げた。もう少し後でも十分間に合っただろう、けれども『本当の』戦闘では何があるかわからない。
(余裕を持った回復が出来たら一番よね)
 今回は特に地上と空中、2手に戦場が分かれがちだ。アルペストゥスの方はリースヒースが気にしてくれているようだから、あちらも気にしつつ蜻蛉はこちらへ注力せんと魔力を練り上げる。
 その近くでフォークロワは予め使役していたファミリアーのカラスから視点の利を得られないかと集中しようとしたが、飛来する影に邪魔される。
「流石に思うようにはさせてくれませんか」
 敵のいる真っただ中、相手からすれば良い的と言った所か。空の動きを見ていたベネディクトが不意に振り返る。
「後ろに回って行ったぞ、警戒してくれ!」
「っ……、つらら、お願い、です!」
 ベネディクトを迂回したミニマルズの一団が後方へ飛んでいく。アルペストゥスも追いかけるが多勢に無勢――押しとどめるには物理的に足りない。
 咄嗟にエルは召喚獣を呼び、向かってきた1体へ突撃させる。ああ、言うのを忘れちゃいけない。
「もふもふが抜けるまで、がぶがぶは、めっですよ!」
 一方の向かってこられたソロアは咄嗟に衝術を撃ち放つ。高い命中を誇る、それでいて全く傷付けないその攻撃にミニマルズはころんころんと宙を転がった。
「グルァ!」
 全力でソロアが後退すると同時、アルペストゥスがソロアの前へ降り立ち盾となる。つんつくつっつかれるアルペストゥスと、それから一時狙われた後衛を範囲に蜻蛉はクェーサーアナライズで戦線を持たせた。その直後に背後へ気配を感じたが、リースヒースの魔砲が降り立ったミニマルズを攻撃する。
「背後はお任せを」
「ありがとさん。なら、うちは回復に専念させてもらうわ」
 リースヒースに頷いた蜻蛉は更に仲間たちへ回復を重ねて行く。前衛で体を張るタンクや攻撃手となるアタッカーたちほど派手なことはできないが、縁の下の力持ち。これも大切な役どころだから、手のひとつだって抜けない。
「最後まで耐えきってやる……! やってやるぜ、オレ!!」
 エドワードは己へ鼓舞を向ける。倒れたらそこまでだ、何が何でも食らいついてやらねばならない。そうして仲間を守って、自身も守って、叶うなら戦った相手とも絆が結べるように。誰にでも良い心と悪い心があるのならば、難しくとも不可能ではないはずだ。
(向きあって分かり合える時間が必要だ。そのために生きるんだ!)
 世界は広くて、自分のいた世界とこの世界以外もあって、種族や常識もたくさんある。けれどそうして変わる切欠ができたのなら、そこから大きく変わっていけるかもしれない。
「なぁ。オレも、みんなも、この世界に生きてるってとこだけは一緒だよな。だから……これが終わったら友達になろうぜ!」
 エドワードの言葉にミニマルズたちは攻撃しながらも鳴き声で応える。それに彼は二ッと笑って、「おっしゃあ!」とまたひとつ気合を入れた。
 ベネディクトの乱撃にソロアは歪みの呪言を重ねて行く。少しずつ、確実に動けるミニマルズたちは減っている。もっといい動き方もあるのかもしれないが、今は考えつく最善を突き進むしかない。
 蜻蛉も手すきで遠術を放ち、フォークロワもなるべく敵の攻撃を受けないようにと避けつつエクリプスで攻撃を重ねて行く。エルは技が出せなくて慌てるミニマルズへファントムチェイサーを撃ち放った。
 次第に追い詰められるミニマルズたち。アルペストゥスは静かに空気を震わせて竜の言葉を紡いだ。

「Omnia aeque――」
 あらゆるものを、等しく、
「――Quid sit――」
 在るべき形へと。

「――Et aeque!」

 ぱき、と硬質な音を立てて輝く結晶体が現れる。それは飛行能力を失くして地面へ落っこちたが、ややあってひび割れると内側からミニマルズが飛び出してきた。
「グルゥ……」
 さすが混沌生物、と言うべきか。
 しかし彼らは結晶体から出てくると、疲れたぜと言わんばかりに座り込んだ。真ん丸の毛玉状態である。
 ブラウの訓練終了宣言に武器を下ろしたイレギュラーズたちだが、エドワードはまん丸くなったミニマルズの前ですとんと座り込んだ。
「最後まで……耐えてやったぜ……」
 声はすっかり疲弊しているけれど。それでも確かに、為すべき目標を果たしたのだ。



「ほな、これで良し」
 蜻蛉は怪我人の手当てをして、ぱたんと救急箱を閉じる。ちゃんと休む必要もあるが、ひと先ずはこの応急処置で大丈夫だろう。見ればリースヒースもあらかたの治癒を終えたらしい。
 薬や魔力に頼るだけでなく、自己治癒力に任せるのも大事な事だ。
「ふわもこさんたちも、一緒に訓練してくれた人たちも……それにブラウ君もありがとう! 集団戦は1人じゃ出来ないから良かった!」
「そうだな。動物たちへ礼をするのならばやはり食べ物などが良いのだろうか?」
 ソロアに頷いたベネディクトが視線を向けると、ふわこもミニマルズたちはぴょこぴょこ飛んで跳ねての大喜び。それならばお茶会の準備をしましょうとフォークロワが準備を始める。
「そういえば、ヒトの食べ物は食べてええのかしら……?」
 小首を傾げた蜻蛉にブラウはぱちりと目を瞬かせ、聞いてきますよと駆けていく。小さな毛玉はミニマルズたちの中へあっという間に埋もれて行き――害はないという返事を携えて帰ってきた。
「紅茶のクッキーなどありますので皆さんどうぞ」
「ああ、頂こう」
 フォークロワの言うままにベネディクトはクッキーを手に取り、味を楽しみつつ近くまで寄ってきたミニマルズへクッキーを差し出す。それを啄む混沌生物に目を細め、ベネディクトは視線を巡らせた。
(他の皆も、何か掴めるような訓練だったのであれば良いのだが)
 最後まで砦たらんと踏ん張ったエドワードはミニマルズの一部とお昼寝タイムに入っている。エルはブラウへ預けていたせんべいを割って皆へあげているようだ。リースヒースは数匹のミニマルズとブラウを交えて感想戦を繰り広げているようだが――。
「ところでもふりとした者たちよ、随分と良き手触りの様子。……少々触らせては貰えぬか?」
 リースヒース曰く、自身は癒し手としての訓練中であり、先ほども蜻蛉を見習いながら集団戦に混じり、そして傷の治癒を施した。その手当てがちゃんとなされているか、つまり手当ての漏れがないか確認すべきだろうと。
「手触りもよいであろうし。ほんの少し。端っこでいいから」
 リースヒースの願いにミニマルズはどうぞどうぞと身をかがめ、もふりやすいようにしてくれる。それへ触れ、ヒースリースは思わず口元を緩めた。
「うちもええやろか? 少しだけ、撫でさせてほしいの」
「エルも、もふもふ、したいです!」
「私も混ぜて欲しいぞ!」
 リースヒースが撫でさせてもらったのを見て蜻蛉にエル、そしてソロアが反応する。訓練中だって本当は、とってもその柔らかそうな毛並みが魅力的だったのだ。
 ミニマルズたちはイレギュラーズたちの傍にころんと転がったり丸まったりと、「さあどうぞ!」と言わんばかりにふわもこを差し出す。
「ブラッシングでしたら多少は出来ますので言ってくださいね」
 フォークロワの発した言葉にミニマルズが次々と寄ってくるが、それを追いかけてイレギュラーズたちもミニマルズに寄っていく。それを見たアルペストゥスは何を思ったか、
「グゥ」
「ぴよ?」
 もふもふに呑まれてしまわないよう避難していたブラウをひょいと咥え、もふの集まる場へのしのし。そしてブラウごとミニマルズを首のふわもこに巻き込んだ。
「エルも、巻き込まれてしまいました」
「んふふ、これは……転寝してしまいそうやわ」
 蜻蛉がくすくすくす笑う。エルも同じように笑って、ふわもこへ頬ずりをした。
 訓練して、お茶をして、のんびりして。今日はとても――とっても、良い日だ。

成否

成功

MVP

ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 最後はまったりのんびりできましたね。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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