PandoraPartyProject

シナリオ詳細

山中の脅威

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それは何気ない仕事の一幕
 人里離れた山奥に向かう4人の武装した集団。
 山の中の小さな洞窟に住みついたゴブリンの一団が、山を下りて直ぐの村に被害を出しているという話を聞き、依頼を受けてやってきた冒険者達だ。
「うん、やっぱりここにいる。情報通りだよ」
 近くの藪に身を隠し、洞窟の入り口を見てみれば見張りをするゴブリンの姿が見て取れるが、 ボケっとしていて油断もしている様子を見れば、いくら自分達がまだ新米だからと言って負ける事すらないほどの自信が出てくるほどだった。
「じゃ、手筈通りに」
 仲間の一人が藪を揺らして物音を立てれば、ゴブリンはそれに気づき、のんきにこちらへ向かってくる。
 話通り、仲間の一人が剣を振るえば、ゴブリンはあっけなく崩れ落ちた。
「よし、このまま依頼を……ん?」
 見張りを仕留めて、洞窟に乗り込もうとした瞬間、突然辺りが大きく揺れ出した。
「なんだ!?」
「じ、地震!?」
 突然の事に慌てふためくが、揺れは次第に落ち着いていく。
「び、びっくりした……でも、大丈夫そう、行こうか」
 しばらく様子を見ても揺れる様子はない。
 冒険者達は互いに顔を見合わせ、洞窟の中へと向かっていった。
 ここで戻っていればと、後悔することになるのは未だに彼らは知らない。

●ローレットにて
「大変、大変なのですよー!」
 いつものローレットの空気を破る様に、飛び込んできた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の声が響き渡った。
「でっかいミミズ……じゃなくてワーム、ワームが現れたらしいんですよ!」
 わーっと、手を広げて大きさをアピールするユーリカを見ているとつい和んでしまうが、慌てた様子からそれどころではないだろう。
「おとと、そうでした、急いでいるのは理由があるんです。 そのワームが出たっていう場所なのですけどー……実は、ちょっと前にゴブリン退治の依頼を受けた人達が向かってる場所なのです」
 話を聞けば郊外の山間に住みついたゴブリンの一団の退治という依頼が出ており、最近になってようやく依頼を受けられた新米の冒険者達が居たが、あろうことか出発後にその地で突然巨大ワームの姿が発見されたという。
 どこから流れて来たのかはわからないが、非常に飢えていて周囲を食い荒らしまわっており、このままでは近くの村にも被害が出る為対処しなければならないというわけだ。
 本来ならば、しっかりと準備をしてから討伐に出る流れになるのだろうが、今回については如何せんそんな余裕もない。
「……というわけで、急ぎ向かってもらいたいんです」
 準備も最低限で山中でのワーム退治。
「出来る事なら、新人の人達の自信の為にも……ぱぱっと、こう……人知れず、華麗に退治を!」
 無茶を言う。ともあれ依頼はワーム退治と先に向かった新人たちの安全確保が最優先になるだろう。
 急ぎ話をまとめ、行動に移すべきだろうと、君達は話し合いを始めた。

GMコメント

 GMとして初めてシナリオを用意させていただきました、トビネコと申します。
ただのワーム退治……というわけではなく、出現地点で巻き込まれてしまう事になりそうな冒険者達に対する対処も皆様に任せられる形の依頼となりました。
 依頼の成功条件はワームの退治、その上で新人冒険者達については皆さんに一任されています。

●依頼先の山
 極々普通のよくある山で、動物や山菜と言ったものも豊富な場所です。
 新人冒険者達が向かったゴブリンの巣穴は山の中腹ぐらいにあり、迷うような場所にはありません。
 山の奥地へ進めば、ワームが動いた痕跡がいくつもあり、中腹以上の場所に住みついているようです。

●巨大ワームについて
 全量10m以上はあろうかと言われる巨大なワームです。巨大なミミズに大きな口が付いたような存在で、非常に気味は悪いですし、ぬるぬるしています。
 大きな口は牙などはないようですが、人や家畜ぐらいならばあっさりと丸呑みできるほどの大きさを持っており、非常に危険です。食べられないように気を付けてください。
 地中を移動することができるようで、不意に地中から襲撃してくることがあるようです。
 攻撃手段は丸のみを行ってくるか、巨大な胴体での体当たりに限られますが、大きな胴体は非常に長い射程を持っている為、距離にはお気を付けください。

 どうやらワームはお腹が空いているようで、ゴブリン達が住み着いている洞窟近辺で行動しているようです。
 なんでも食べる雑食な存在ではありますが、巣穴に固執する理由があるのでしょうか。

●新人たちとゴブリンたち
 新人冒険者たちは、今回初めて依頼を受けることが出来た冒険者達です。
 しっかり情報を集め、準備をしてきた彼らならば、ゴブリン相手には苦戦することもなく、無事に依頼を解決して自信を付ければ今後も大いに活躍してくれるだろうと話されています。
 
 ゴブリン達はここ最近山の洞窟に住みついた一団で、数は5匹程度で他に目立った存在もいない小さな一団です。
 既に一匹新人冒険者に倒されている為残りは4体ですが、新人たちが戦っても、皆さんが戦っても苦戦する要因は一切ないでしょう。


 依頼の説明は以上となります。
 皆さまの冒険が良いものとなるよう、無事にお帰りをお待ちしております。

  • 山中の脅威完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月07日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
アト・サイン(p3p001394)
観光客
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
グリムペイン・ダカタール(p3p002887)
わるいおおかみさん
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)
TS [the Seeker]

リプレイ


「ううーん……」
 目的地の山へたどり着き、ゴブリンの巣穴を通り過ぎてさらに山奥へ進む途中、『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は苦手な虫と、これから戦うことになるミミズ…もといワームを比べて唸った。
サイズは違えど、見た目はミミズに近いのもあり、中々嫌悪感は拭えない。
「所で、ワームはどんな相手なのかしら?」
 『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)は山道を歩きながら、『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)に問いかけた。
「そうだね、話によれば大きなミミズ、一般的なワームとそう大差はないと思う」
 モンスター知識を持つダカタールは自分の知識を手繰りながら、それでいて移動中に周囲の状況を確認しながら情報とすり合わせて習性を照らし合わせる。
 最もまだこの地点では明確な状況がわからないが、雨や水分などによって地上に出てくるミミズとは異なる、というのだけは乾いた土や地面が証明してくれていた。
「確かワームは人ぐらいなら丸のみに出来るんだったな。敢えて食われて中から戦う、っていうのはどうだ?」
 『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)が自身の戦術をダカタールに聞くが、彼は「あー……」と唸り声をあげる。
「ふふ、案としては良いと思うんだけど。タイミングだけは見計らわないといけない、かな」
「タイミング……?」
「そうそう、この手のワームは食欲に忠実で、お腹さえ満たせたらもう戦う理由はなくなるんだ」
 謎かけをするようにダカタールが説明すれば、『観光客』アト・サイン(p3p001394)が「あ」と、気づいたように反応した。
「パクリと行かれたら、相手は満足して地面にまた潜って……出てこなくなる、ってことだね?」
「そうなるね」
 だから、わざと食べられて仕掛けるのなら一気に勝負を決めに行く時がいい、とダカタールは結論を出す。
 会議を進めながら山を登っていれば、次第に小さな洞窟が見えてくる。中からは戦闘の音と冒険者達の声、あそこが話に合った新人たちの仕事場なのだろう。
「あ、それじゃあ僕達は行ってきますね」
 『驟猫』ヨハン=レーム(p3p001117)が、洞窟を見つけると手早く駆けだして洞窟へ向かっていく。
 グリムペインも同じように、当初に決めた通り新人たちの安全確保のために洞窟へと向かう。
 新人たちには申し訳ないが、一旦これで安全を確保してもらい、その上で確実に成すべきことを成してからでもまだまだ余裕はあるのだ。


「……よしっ!」
 洞窟に入ってすぐ、まだ入り口からの光が見える場所でゴブリンを1体切り伏せた新人冒険者達は勝利に喜んだ。
 まだまだ奥にゴブリンはいるが、この調子ならきっと何の問題もなくゴブリンを一掃できるだろう。
「あ、居ました。待ってください」
 そんな彼らに追いついたヨハンは彼らが洞窟の先は進む前にと、声をかけた。
「え?」
 突然声をかけられて振り向いた彼らは、足を止めて振り向く。
 ヨハンやグリムペインの事を知っている者もいるようで、何かあったのかと不安になる面々もいるようだ。
「ふふ、ごめんね。少し話を聞いてもらいたいんだ」
 じゃ、ヨハン君お願いね、と続けながらグリムペインは暗い洞窟の中でカンテラに火を付け灯りを付ける。
 合わせて周囲を確認してみるが、洞窟自体はしっかりしているがワームが土や岩盤を食い破って突撃してくれば生き埋めになる可能性もありうると、判断できた。
「はい、実はここより少し上でワームが出現してしまいまして、このままここで依頼を続けていると危険なんです」
「わ、ワーム?」
 ゴブリンだけではなかったのか、とどよめく彼ら。
「うん、全く予想もできていないところだったからね。君達のせいじゃあないよ」
 補足するグリムペインの言葉で、少しばかり安堵する彼らだが、責任感や正義感は強いのか、だからと言ってここで引くわけには……と相談し始める。
「いえ、一度避難してもらいたいんです。初めての依頼を先輩たちに手柄を取られるようで申し訳ないですけど」
 真摯に心を向けてヨハンは彼らに事態を説明していく。ワームの危険性、依頼自体の放棄ではなく一時的な中断であること。
「華々しい初陣も苦々しい経験も等しくローレットのお仕事です。もっと言えば臨機応変な対応こそ大事なのですけど今回は僕らも苦戦するかもしれない大型モンスターが相手でして、共闘も提案したんですがダメでした。ごめんなさいです!」
 自分達も、手柄を全部奪いたいわけではなく、共に戦いたかったという話も添えながら説得を続けていく。
 気が付けば、彼らはヨハンの言葉をしっかりと聞いていた。
「ここはぐっと我慢して、事が終わるまで避難していてもらえないでしょうか。本当は貴方たちの知らない所でワームを倒す暗躍じみたお仕事でしたが、僕は不測の事態で新人さんの命を散らせたくないんです。忍耐力を培う試練と思って…しばらくの間よろしくお願いします!」
 ヨハンがしっかりと言いきれば、彼らはそれぞれ納得したように彼の言葉に従う。
 最も、完全に納得出来はしなかったようで、不満はあるようだがヨハンの言葉が理解できないものはいないようだった。
「ふふ、ありがとう。後、完全に避難じゃなくて外でゴブリンの監視もお願いできるかな?」
 完全に避難ではなく、監視という役割を提示すると、彼らはそれぞれに頷いた。
「そのあと予定通りにゴブリンやっつけちゃいましょう!」
 ヨハンが言えば皆一斉に頷き、洞窟の外へと移動を開始した。



「おお、待っていたでござるよ」
 ゴブリンの巣穴から徐々に増えてきた痕跡を追い、山を登って行けば先んじて向かっていた『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が地面に耳を当てている姿があった。
「……たぶん、この辺にいるとは思うんだが」
「なかなか聞き取れないでござる」
 一緒に周囲の調査をしていた『TS [the Seeker]』タツミ・サイトウ・フォルトナー(p3p004688)も周囲の痕跡を調べており、大体の居場所を推測し、遅れてやってきたメンバーにその地点を共有する。
「それじゃあ、6人集まったしそろそろ行動しましょうか」
 新人たちの説得に向かっているグリムペインとヨハン以外のメンバーが揃った。
 万全ではないとは言えども、これだけ集まっていれば十分戦えるとみて竜胆が言えば、揃った面々はそれぞれ頷いた。
「それじゃあ早速やってみようか」
 相手をおびき出す為に、アトは連れてきた乗用馬を走らせた。
 自分が乗るわけではなく、やや開けたこの地点をぐるぐると走らせれば、ドタドタという振動が周囲に響く。
「お……?」
 同時に、振動が強くなり始める。
「さっそくきたか!」
 ハロルドが意気揚々と剣を構えれば、他の面々も戦闘準備を整える。
「振動か……音か。このまま被害を抑える為にもしっかり退治してやろうぜ」
 ナイフを構えたタツミが周囲を見回すと、先ほどから走り回っていた馬の足元の土が崩れ出す。
「やべぇ、馬が喰われるぞ!」
「おっと」
 アトが急ぎ馬に走り抜けるように指示を出し、共に駆けだすと同時にワームが地中から飛び出し空を喰らう。
 勢いよく飛び出してきたワームに向けて、まずは開幕一射と銃弾を放つ。
 放たれた弾丸はワームの胴へと突き刺さり、相手は雄たけびを上げる。
「うわ、うわぁ……」
 滑付いた皮膚と、ミミズを彷彿とさせる肉体。だが、その頭部の部分には大きく開いた口。
 うねうねと動くその姿は、やはり虫が苦手なチャロロにはなかなかくるものがある。
 とはいえ引くわけにもいかないため、その気味悪さはぐっと抑えてほら貝を咥える。
 それを見て竜胆も同時にほら貝を勢いよく鳴らせば、周囲に戦闘開始の合図と言わんばかりに音が鳴り響く、これで説得に向かっていた二人も状況と場所をわかってくれるだろう。
「さっさと片を付けるわよ」
 会敵と同時に最も早く反応した竜胆が獲物を構え、振り上げると同時に剣圧が飛ぶ斬撃となりワームの巨体を抉る。
 一撃でその肉に斬撃は届き、体液が飛び散るもワームの動きは鈍らない。
「うむむ、随分とこれは体力のある相手でござるな」
 新人たちの為にもここで負けるわけにはいかぬと下呂左衛門が自身の気持ちを奮い立たせれば、相手はこちらに真っ直ぐ突撃してくる。
「喰らいやがれ!」
 斬撃に次いで、飛び出したタツミがワームに肉薄すると、両手に構えたナイフを思い切りその皮膚に突き立て、引き裂く。
「チッ……あんまり効いてるような気がしないが……」
 返り血ならぬ返り体液を拭いながら、ワームが暴れる様子をみてタツミはごちる。
「おっと、やばいんじゃないか?」
 Model 1873をくるくると回しながら再装填をしながら、アトは動きを鈍らせないワームを見て攻撃に集中していたタツミに危険が迫っていることを察知してポーションの準備に切り替える。
「折角実戦で使えると思ったが…もうちょい後か!」
「させないよ!!」
 だが、タツミに迫ったワームの体当たりによる攻撃は間に割り込んだチャロロが両手で持った大盾で受け止めた。
「人呼んで炎の勇者、邪悪な魔獣を打ち倒す! ……って、やば」
 名乗り口上をあげて、ワームの注意を引きをせるが、その巨体の一撃を受け止めたことで体勢が崩れる。
「わーっ!?」
 ばくり。
 獲物は逃がさないと言わんばかりに、体勢を崩したチャロロの姿がワームの口の中に消えた。
「おい、あいつ!」
 食べられた。これは不味いと言わんばかりに仕掛ける準備をしていたハロルドが叫ぶ。
「おい、この虫ケラ野郎、こっちを向きやがれってんだ!」
 先の話によれば、このまま相手が満足したら逃がしてしまう可能性も高い。
 そうはさせんとばかりに、肉薄したタツミが叫びに近い勢いで挑発すると、相手はさらに獲物が寄ってきたと攻撃的な姿勢を見せる。
「助けないと……あら?」
 距離を詰めた竜胆が一刀両断の構えを取ると、どうにもワームの動きが鈍い。
 よくよく見れば、身体の一部が内側からもり上がる様に歪んでいる。
「うむ、暴れてるでござるな……竜胆殿、一気にあそこに仕掛けるでござるよ」
「もちろん」
 飲み込まれたチャロロが暴れているであろう地点。
 チャロロごと切り捨てないように二人は接近すると、獲物を勢いよく叩き付ける。
 完全に両断とまではいかなかったものの、強烈な斬撃がワームの胴を深く抉り、そこへ真っ直ぐと突撃したハロルドが聖剣叩きつければワームが身を震わせ、口からチャロロが転がり出てきた。
「うえ……」
「大丈夫?」
 胃液と粘液で身体も服もべとべとになっており、目も当てられない状態のチャロロを準備していたポーションでアトが癒す。
 幸い致命傷を負ってはいないため、直ぐに戦線には復帰できそうだが、機械部分が少し融解しかけているのは問題かな、と思いつつもライフルを構えなおす。
「お待たせしました!」
 そんな折に、ヨハンが剣と盾を構えて治療を受けるチャロロと入れ替わる様に前に飛び出す。
「おっと、君が来たってことは……」
「はい、もう少しだそうです。あの手合いは弱れば弱るほど暴れるもの、とグリムペインさんが!」
 なるほど、と話を聞いて納得する。
 攻撃が苛烈になればなるほど生存本能が刺激されているのだ。
 グリムペインの姿は見えないが、作戦通りこの周囲のどこかに隠れて機を伺っているのだろう。
「んじゃあやるとするかぁ!」
「何してるでござるかぁ!?」
 ハロルドが剣を構え、ワームの前に立つと同時に勢いよくその口にめがけて跳躍していく。
 無論、獲物が自分から飛び込んできた以上逃がすわけもなく、ワームはその口の中にハロルドを飲み込んでしまう。
 話自体はあったとしても、やはり自分から飛び込んでしまうのは突っ込むしかないというか、お人よしの下呂左衛門はついつい不安になり叫んでしまっていた。
「うーん、やっぱり食事の隙というのは狙いやすいね」
 そんな声が聞こえると共にワームの足元から、幻で作られた茨が延び動きを阻害する。
「グリムペインさんですね。一気に行きましょう!」
 相手の動きはこれで大きく止まった。逃げようとしても、逃げるより早くこちらの攻撃が届く。
「なら、これでどうかしら」
 竜胆が真っ直ぐワームへ突撃すると、構えた二刀を深く突き刺し、下呂座衛門も同じように獲物を突き刺す。
 深く刺さった刃を思い切り薙ぎ払うようにして二人が振り払えば、その動が大きく抉れ、体内の一部まで見える程に切り裂けた。
「食べられ多分は返す……返す!!」
 もはやヤケクソ気味であるが、盾を思い切り叩きつければ、ワームは大きく怯む。
「いい感じだね。でも狙うならあそこがいいかな」
 霧を立ち込めさせながら姿を現したグリムペインが、ワームの首よりもやや下の一点を示す。
 少しだけ肉質が厚くなっている部分、そこを指さした。
「……なるほど、心臓みたいなもんか!」
 察したタツミが駆けだし、アトが銃口を向ける。
「おらぁっ!」
 荒々しく肉薄したタツミが両手のナイフを突き刺せば、ワームはすさまじくのたうち始める。
 遠慮などしないと言わんばかりに、何度も何度もナイフを突き刺す。
「よし、タツミ。飛び降りて」
「任せた!」
 タツミの攻撃でずたずたになった部分に、アトはゆっくりと距離を詰めながら銃弾を放つ。
 くるりと、ライフルを回して再装填。放つ。
 くるりと、ライフルを回して再装填。放つ。
 無慈悲に続くその行為がワームを撃ち抜き続けていけば、動きはどんどん鈍くなる。
 同時に、ワームの体内から、1本の剣が突き出された。
「おや」
 その剣は内側からワームを輪切りにするようにして振るわれ、その剣が切り拓いた内側から体液と粘液塗れのハロルドがゆっくりと腕を突き出し、這い出して来る。
「はははっ! 先にくたばったのはテメェだったなぁ!」
 楽しそうに笑いながら、ワームを足蹴にするハロルドだったが、やっぱり無茶だったと他の面子から色々と言われるのはこの後の話。



「はー……もうべっとべとだな。どこかで水浴びできないか?」
「オイラも洗いたい……この辺川とかないの?」
 倒れたワームの前には新人冒険者と息をつく8人の姿があった。
 ワームと戦った彼らはくたくたの様子で、飛び散った粘液や汗を洗い流したいという意見が上がっていた。
「ほんと? じゃあさっそく……あ、でも、とんだハプニングに巻き込んじゃって悪いね。でも、ちゃんと準備してきた皆ならきっと楽勝だよ。力を合わせればきっとできるよ!」
 我先にと、体を洗いに行こうとしたチャロロだったが、新人の彼らに伝えたい言葉を思い出し気持ち悪さを我慢しながら言葉を伝えた。
「……力を合わせて……はい、頑張ります」
 まだ彼らの仕事は終わっていない。
 いや、これからが始まりだと、わかっているように彼らは頷く。
「貴方達の最初の仕事に水を差してしまって御免なさいね。でも、私達の仕事はこれで終わり。ここから先は貴方達の仕事よ」
「はい、ちゃんとやり遂げます」
 竜胆に言われ、彼らははっきりと応えた。
「仕事を果たし一皮むけて来なさいな。幸運を祈っているわよ、冒険者」
 はい、と元気のいい返事が返ってきた。
 きっとこの中からローレットの中でも有数の冒険者になるものが出てくるのだろうと思いながら、竜胆は倒したワームの方へと目を向ける
 そこではワームの肉を切り取り、口に運ぼうとするアトの姿と困惑する下呂座衛門とタツミの姿があった。
 彼曰く、鶏肉みたいで案外おいしいという事だったが、流石に食べようとは思えないのが現状だ。
「ああ、君達も要る? ミミズの肉」
「え、いや、それは」
「やめてやれよ……困ってるだろ?」
 タツミに制止されると、グリムペインはふふ、と笑う。
「ごめんごめん、雛にあげるのが話筋だったから」
「何のでござるか……」
 突っ込み切れないと言わんばかりに下呂座衛門はその場で座り込んだ。
 視線は新人たち。あれだけしっかり準備をして、取り組んでいる彼らを見ていると、まだまだ精進しなければという気持ちが浮かんでくる。
 最も、今は精進するよりも布団でぐっすりと休みたい。いろいろと疲れは溜まっている。
「しかしまぁ、もう何も言わなくて良さそうだな」
 新人たちを見て、ハロルドはそう言った。
 戦いが終わった後、説得してフォローするつもりだったが、あれだけやる気がまだ残っているのならば特に必要はないだろうと思ったからだ。
「ですね。皆さーん! 応援してます! いつか一緒に依頼行きましょう!」
 そんな彼らを見送る様に、ヨハンが声を張り上げて手を振る。
 ミミズの肉を押しのけ、ゴブリンの巣穴へ向かいながらも、こちらに手を振り返す新人たちの顔が眩しく、輝かしく見えたのは、きっとこれから新しい物語が紡がれるからだろう。


成否

成功

MVP

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました。GMのトビネコです。
依頼は無事完了、新人たちも最初は少し不満を覚えましたが、皆様のおかげで無事に依頼を完遂し、今後も冒険者として活躍してくれるでしょう。
彼らが無事に山を下り、安全に戻ってこれたのもひとえに皆様のお陰です。
今は汗と体液と粘液と……色々と体にまとわりついたものを落としてしっかりと休んでください。
それでは皆様、ご参加ありがとうございました!

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