PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ストーム・スペクトル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――嵐が来る。

 鉄帝の西。小さな山村として存在するムヅリ村では皆が家に籠っていた。
 天候の悪さを感じ取り雨戸を敷き詰めている――そう、こんな折に無理に外に出るものではないのだから。やがて日が暮れる頃に、外の風が戸を揺らす程に吹き荒べば。
「……んっ、なんだ?」
 住民の一人が何かに気付いた。
 外は荒々しい音色で満ちている。雨音が窓を叩いて雷鳴も届けば、喧しい限りだ。
 ――しかし何か『ソレ』だけではない気がする。
 気配がするのだ。何か、生き物でもいるかのような……
 耳を澄ます。まさかこの嵐の夜にそんな存在がいる筈はないと――半ば疑いを持ちながら。
 直後。

「う、うわああああ!?」

 雨戸を突き破り、窓より飛来する『何か』があった。
 それは巨大な鳥……鷲にも見えようソレの体長は大人数人分はあろうか。
 ソレが突如として民家を強襲したのだ。魔物の一種かッこんな嵐の時に――!
「に、逃げろ! 外に出るんだ!!」
「だけど外に出たって嵐が危険で……」
「馬鹿! 魔物よりまだ嵐の方がマシだ――とにかく外に出るんだ!!」
 とんだタイミングだと思いはするが、家の中に侵入してきた巨大な怪鳥を相手に留まる選択肢は無しだ。奴は殺意を携えている――それならばまだ、物言わぬ自然現象である嵐の中の方がマシであると。
 そう判断したのは間違いではなかっただろう。
 ――これが『本当にただの嵐』だったなら。
「早く! 早く逃げるんだ! 隣の家の奴にも声をかけ……ぎゃッ!」
 鷲から逃げるように扉を荒々しく開けた家主――瞬間。そんな彼を雷撃が襲った。
「なんだ!? 雷が、追って来る……!?」
 妙だと気付いた時にはもう遅かったのだ。
 周辺に多くの雷が降り注いでおり……しかし、村から少し離れた所には雲すらなかった。
 局所的な嵐。スコールとも異なる、嵐の空間。それは何者かが作り出した神秘的空間であり――
「う、うわあああ来るぞ、逃げろ! とにかく嵐の外に逃げろ――!!」
 それは家から這いずり出てきている怪鳥。
 雷の鳥――サンダーバードとも言われる、嵐を操る魔物の仕業であった。


「サンダーバードっていうのを知ってるかな。旅人の世界では一部の世界で信仰対象にもなっている存在で……まぁいわゆる精霊の一種って思ってもらえると簡単かな」
 ただ、今回現れたのは魔物だけどね――と紡ぐのはギルオス・ホリス(p3n000016)である。
 異世界に伝わるその存在は、なんでも自由自在に雷を落とす事が出来る能力を宿しているらしく、今回現れサンダーバードと呼称された個体にも――似たような能力が見受けられているらしい。
 ただ少し異なるのは雷に加えて、局所的に嵐を発生させる事も出来る事か。
 奴は嵐を発生させ、それによって獲物を自らの住処に追い込んだ後――そこから追い立てる様に雷を降り注がせる。パニックに陥った者は個別に狩られていくだけであり……動物はおろか人間すら襲うのだとか。
 そして先日、鉄帝の山村たるムヅリ村が壊滅状態に陥った。
 全滅した訳ではないが多くの者が犠牲と成り……そのことを知った付近の村がローレットに依頼を持ち掛けてきたのだ。
「サンダーバードを討って欲しい、とね。奴は自らが発生させている嵐と共に行動していて……次の出現ポイントは予測できている。ムヅリ村から更に西に進んだ所にオルダバという集落があるんだけど――ここだ」
 オルダバの住民は避難を進めているらしく、ここを主戦場にしていいらしい。
 集落を襲うサンダーバードを迎撃。逃さないように――討伐する。
 当然奴が現れれば嵐が発生する。その中での戦いは、中々いつも通りとはいかないかもしれない……奴が落としてくる雷への注意は当然としても、強風や大粒の雨が吹き荒れる中ではバランスを取るのも重要だ。
 そして何より、繰り返すが逃げられてはいけない。
 追い詰められればその翼をもって空へと飛翔するだろう――翼を折るか、誰かが止めるか。
「具体的な作戦は任せるが、これ以上の犠牲者を出す訳にもいかない。
 ――頼んだよ、皆」
 ギルオスはそう言ってオルダバへの馬車を手配。
 さぁオルダバに着くまで暫く……今のうちにどう戦うか、作戦を決めておくとしよう――

GMコメント

●依頼達成条件
 雷鳥(通称:サンダーバード)の撃破

●戦場
 鉄帝国の西側にある集落、オルダバという地です。時刻は昼頃。
 雷鳥は次にここを襲うと予測されています。危険性を察知した住人は、避難を進めると同時にローレットへと依頼を持ち込みました。集落の被害に関してはあまり考えなくてもいいいから、とにかく雷鳥を必ず倒してほしいそうです。

 オルダバには家が幾つかぽつぽつと立っています。
 家などは自由に障害物として使って構いません。

●雷鳥(サンダーバード)×1
 サンダーバードとも呼ばれる嵐を操る鳥です。
 異世界では雷を操る精霊として部族の信仰対象にもなっている――のですが、ここに現れているのはただの狂暴な魔物です。奴を撃滅してください。

 巨大な鳥であり、優れた爪を持っています。またその巨躯に応じた耐久力を持っている様です。
 地上に降りてくる事もありますが、ブロックするにはおよそ三人以上必要でしょう。
 しかし奴自身の膂力よりも驚異的なのは嵐を操り、雷を落としてくる能力です。
 この雷には二種類の攻撃があります。雷鳥が直接操る雷(神秘単体攻撃。BS『痺れ』『乱れ』)と、ランダムに戦場に降り注ぐ雷(神秘・物理範囲攻撃。BS『ショック』)の二種です。
 ランダムに降り注ぐ雷は雷鳥もコントロール出来ませんが、この攻撃は雷鳥に当たってもダメージもBSもありません。またこれは雷鳥の手番とは無関係に、ターン中何度かランダムに戦場内の複数点に発動します。

●嵐
 雷鳥を中心とし半径50m内に発生している嵐です。
 嵐の範囲内では強風が吹き荒れ、大粒の雨が常に降り注ぎます。雷鳥の神秘によって作り出されている空間であり雷鳥以外にとっては動きづらい空間な事でしょう。飛行する事は不可能ではありませんが大きなデメリットを受けてしまう事でしょう。
 またR3以上の距離がある上での攻撃は若干命中にマイナスの影響がある事があります。
 なんらかの非戦スキルやギフトなどで軽減する事は可能かもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ストーム・スペクトル完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

リプレイ


 嵐が近付いている。
 情報通り『奴』が近付いてきているのだろう。
 雷鳥――異界においては相応の精霊らしい、が。
「結局人を襲う怪物の退治……って所だよな。うん、わかりやすくていい!」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)にとっては只の魔物だ。
 ぶちのめすのに何の躊躇いがあろうか――いや、無いよな? 例えば変な事情や背景……生まれたばかりの子供の為とか邪悪な魔術師の仕業、或いはおかしな宝物の影響……うっ、考え出せばキリがないぞ……!!
「さて。とにかく――来たみたいですね。
 嵐に守られている中で自由に動けるとは……なんとも厄介な魔物です」
「ああ、だけれどもこの地に暮らす人々の為……! 決して負けられないね!」
 同時。嵐と共に訪れる雷鳥に『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)と『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)は戦闘の準備を完了させる。空を飛ぶ雷鳥は厄介――だが奴とて永久に空を飛んでいるばかりではない。
 必ず降りてくる。いや『降ろして』やる。
 イレギュラーズは建物の影に身を隠し――そして。
「くっ、これが操られし雷ですか……! なるほど、中々甘くはないようですね……!」
 来た。雷鳥が振るう、雷撃だ。
 雨が強くなると共に振るわれる一撃は強力。これは当たれば戦闘の心得が無い一般人ではすぐに壊滅してしまうだろう……しかし耐えるオリーブは全力にて回避と防御に心血を注ぐ。
 ――耐えるのだ。雷鳥が降りてくるまで。
 ほんの少しでも奴がこちらの射程圏へと至れば。

「空を舞う者よ――聞けッ! 私はヴァイスドラッヘ! 雷鳥討つため只今参上!」

 宣言するは『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)だ。
 天にすら届く名乗り上げが雷鳥の耳に届く。愚かな獲物が喚きおるわと思わせて。
 咆哮。雷鳥が急速降下し、レイリーの身を食い破らんと――
「成程。ほとんど精霊みたいな――けれど化け物、ね。こんなのが一気に襲い掛かってきたら、そりゃあ村一つ簡単に踏み荒らされる訳だわ」
 した瞬間に『never miss you』ゼファー(p3p007625)が跳躍した。
 奴が近付いて来ればより嵐が強まる。雷鳴が轟き、降り注ぐ光に只人では抗えまい。
 村が滅びた事にも納得できる――だからこそここで滅ぼそう。
 地面に近付いた瞬間に一斉に。彼女もまた名乗り上げる様に飛び掛かった――再度飛び上がる暇すら与えんと、このまま引きずりおろしてやるのだ。災害気取りの害鳥の羽をもごう。
「既に失われた方々の為……そしてここに住まう、まだ失われていない人たちの為にも。
 雪村沙月参ります」
「雷を操るなんて……ね。うん、こんな存在を見過ごしてたら、やがてとんでもない事になりそうだ」
 更にレイリーやゼファーが雷鳥の注意を引いた所で『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が遂に往く。焦って跳び出せば雷鳥に警戒されるだけだと様子を伺い――神速の踏み込みから予期せぬ一撃を。
 無論、雷鳥も反射的に反撃は行ってくるものだが、そこは『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)が治癒の意志を飛ばすのだ。特に奴の放つ雷撃には面倒な負の要素も存在している……体の動きが鈍れば万一という事もあるのだから。
「まぁ色々と興味深い生物ではあるのだけれどもね。雷を操るなんて……しかも伴って嵐まで。科学的にも魔術的にも興味深い生物だけれども――」
 まずは依頼を遂行しないとね、と『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は往く。
 雷鳥――実に不思議な存在だ。天変地異を局所的とはいえ起こすとは、どうやっているのか。だが個人的な疑問はやはり後回しにして。
「さぁ――貴方は良い戦闘経験を積ませてくれるのかしら!」
 討伐しよう。この悪しき雷の者を、これ以上好き勝手させぬ為に。
 火の神の力を体に宿し――豪雨の中を突き進んだ。


 なんだこいつらは――鬱陶しい――

 雷鳥にとって突然現れたイレギュラーズ達は邪魔以外の何物でもなかった。地上に蔓延る『餌』を喰らう為にここに来ただけだというのに――我が身に取りつき、自由なる空へ飛ばさんとしてくる小賢しい者共。
 翼を振るい雷を呼んで叩き落とそう。脆弱なる人間などこの程度で……
「悪いが――私にそんなモノは効かない! 雷の名を冠するのが自分だけだと思ったかな!?」
 されど鳥が落とす雷撃に一切臆さず進むのはマリアであった。
 雷撃が直撃するもしかし、その動きに乱れはない。雷光殲姫の異名を持つ彼女にとって――雷とは恐れるものでも、畏れるものでもないのだ。屋根を伝い大きく跳躍し、降下している鳥に合わせて視線一瞥。
 その身には紅き閃光が纏われていた。瞬間的な広域放電が彼女の行く末を導き。
「驕り高ぶった者に未来はないよ! その翼――撃ち砕かせてもらうッ!」
 攻撃狙うは翼一点。手数をもってかの鳥を潰さんと。
 攻勢を受け続ければ奴の回避の注意も散漫になるものだ。少しでも奴の意を削げれば……
「雷鳥よ! サンダーバードよ! お前の爪も雷も私を倒せるものか――! 私は壊れず、崩れず、ここに在るぞ! 健在こそお前の矮小さを示すと知るならば……否定してみたいなら、いくらでも来い!」
 仲間達もまた奴の抑えを強化できる暇となるのだから。
 レイリーは引き続き雷鳥への言を飛ばしながら、近付いてきた奴を押し留める。
 巨大なる壁の如く。彼女の圧を阻むは容易くなければ、同時に。
「無害なら、別に私達が何をする事も無かったでしょうけれど……此れも運が悪かった、と割り切れる人ばかりでもないのよ。せめて始末をつけてやるとしましょうか」
 ゼファーもレイリーと連携して雷鳥の抑えへと。
 協力して前後を取り囲むようにする。とにかく上に飛ばせないようにすればこちらのものだ――速度を活かしてそのまま武器に。己がひとふりの槍を振るって奴の身を削らんッ――!
「無駄に立派な爪は飾りかしら、ええ? このトリ野郎。逃げようとしてんじゃないわよ」
 人に害を成すならば討たれるのだ。
 或いはお前が真に災害であればそうでなかったもしれないが、お前は魔物だ。
「逃がしません。貴方はこの大地で朽ちるんです……もう大空は戻れません」
 だからオリーブも最大火力を叩き込んでやる。この機に風切羽を切り取ってやりますと。
 三次元的な空間機動で嵐の中を舞い、距離を詰めれば更なる一手を。
 栄光を掴み取るが如き一撃を――奴へ。
「あ、はっは! こいつの肉って喰えるのかしらねぇ! 鳥なら食えるわよねぇ! もも肉も胸肉も……美味しかったら全身バラバラに解体してお土産にしてあげるわぁ!」
 そしてイナリもまた往く。その口から洩れるもは、まるで狂気の一端が如く。
 自身の性質を疑似的な魔種の様な状態へ移行した事による作用だ。二足歩行から四足歩行へと、己も気付かぬ程に自然に移行していたその様は、彼女に『暴力』の権化たる有り様を宿した故。
 それは持続するものでなく刹那が如き時間だが――
 狂った微笑みを携えて繰り出す一撃はより洗礼され、より死の気配を醸し出す。
 炎の神よ、この鳥を焼きたまえ。人を害す怪鳥を、人に喰らわれる存在へと。

『――! ――、――!!』

 さすれば雷鳥が声にならぬ声を挙げる。イレギュラーズ達の攻勢は溜まらぬか。
 それでも上に跳ぶのは易くない。先述の通りレイリーやゼファーが完全に抑えているし、もし隙を突けたとしても他のメンバーも警戒している。今まで通りの狩りだと思って油断して降りてきたのが間違いだったか――
 だが、だからと言って雷鳥の全てが奪われた訳ではない。
 奴の操る雷は依然強力であり、嵐と共に無作為に落ちてくる雷がイレギュラーズ達の付近に至る事があらば思わぬダメージを負う事もあるのだ。かといって雷への警戒を主軸とすれば逃げられる可能性もあるし、そうでなくても奴自身の爪がこちらを抉って来る。
 未だ倒れるイレギュラーズはいないが、やはり戦況はまだ楽観できなさそうだ。
「成程……これほど雷の力を操るなんて、ね。確かに雷は神鳴、神様の所業と見る人もいるから、異世界で信仰があるのは分かるけど……でもその力を人に向けるなら、やっぱり討伐されても仕方がないと言えるかな」
 その戦況の中において津々流の治癒術は戦線の維持に大いに影響していた。
 彼自身は雷鳥の気を引いたり、落としたりする事には優れていない。だからこそ己にしか出来ぬことを全力で果たすのだ――降り注ぐ雷撃に対して万全でいれるのはマリアぐらいであれば彼が振るう、体の痺れを祓う輝きこそ皆の力となる。
 そして傷を負った者がいれば天使が如き祝福を。
 生命の躍進たる術が尚にその効力を増幅させる――さすれば。
「おらおら! ちっと痛い目にあったらもう空に飛ぶつもりかぁ!?
 降りて来ねぇとオレを喰えねぇぞこのチキン野郎!」
 いやガチでチキンだったな……鳥だしな……と、風牙は建物の影で雷をやり過ごしながら。
 隙があらば飛翔せし斬撃にて雷鳥の身を削る。幸いというべきか、奴が意図して放つ雷に物を通過して穿つ様な性質はない――故に嫌がらせの様な形を続けて奴を苛立たせるのだ。
「さて――そんじゃそろそろ本気で狩りに行かせてもらおうかッ!」
 そして攻め時と見るや否や建物の影から出撃。
 距離を詰めて一気に攻め立てるのだ。風牙の行動を皮切りに、皆も連鎖的に行動を。
 間髪入れぬ流れで抑え続ける。雷鳥を仕留め切るまで。
「雷、そして嵐を操る事が出来る力……我欲の為に使わなければ真実、信仰対象となったのかもしれません。それでも既に多くの犠牲者を出してしまったのならば――ここで終わりを齎しましょう」
 同時。沙月もまた往く。
 その身に纏うは殺意の心得。只管、殺す事に意志を注げば道が見えるのだ。
 雷鳥の終焉への道が。
 奴めの一瞬の隙を突き、防から攻に転じる技法一閃。
 顎を撃ち抜き尚に流れゆく歩みは美しくも、三途川を連想させる情景の様で。
「三銭も不要です。御覚悟を」
 誘おう。
 嵐纏う鳥をかの地へと。


 嵐が強くなっているような気がするのは錯覚か否か。
 それは或いは雷鳥の雄叫びに呼応していたのかもしれない――
 苦悶の声。激しく瞬く雷も、より激しさを増している気がして。
「雷って地面に墜ちて消えるものでしょぉ! なにをまだ息をしてるのよ!!
 こんなに高い所を飛んでいちゃ駄目じゃない! 堕ちなさいよぉ!
 地べたを這いずってどこかに消えて行かなきゃ雷じゃないでしょぉ!!」
 しかしイナリにとっては関係ない。多くの雨粒が彼女に降り注ぐ――
 されど半ば暴走状態にあると言える彼女の今の身体能力ではその程度の妨害など些事であった。未だ空への飛翔を諦めていないであろう雷鳥へと言葉を笑みと共に吐き捨てて、幾度も幾度も叩き込む。
 水の神の権能を。氷が割れるような音と共に――奴めを逃がさない。
「あははは! 無駄よ無駄無駄! 落雷なんてしたって、こっちにも知恵があるんだから!」
 そして同時に、雷鳥が切り札としている雷を少しでも対策する為に、細い金属線を身体に結んで地面に垂らしている。これはいわゆるアースの代用品であり――完全に防ぐことは叶わずとも、体に走る電流を少しでも地に逃がせれば良しと。
「木々の方へ近寄らせないようにした方がいいでしょう。ある程度雷を誘導されるかもしれません」
「ああ――もうこれ以上飛ばせないし何処へも行かせない。地面に抑えさせてもらう」
 同時。無作為なる雷の方も警戒する様にオリーブが撃を加えつつ注意を。
 雷は天に伸びるモノに落ちる傾向があるのだからソレを利用されるやもしれぬ――だからレイリーは再び抑える力を強めるものだ。身体全体や盾で、点ではなく面できっちりと壁を作り地面に抑えるように。
 さすれば雷鳥はもがく様に暴れ始める。
 雷を落とし続け、自身もまた巨大な身を翻して『離れよ』とばかりに。
 凄まじい衝撃が生じる。雷撃の痺れと、強大なる圧が――しかし。
「残念だけどそうはいかないね。
 どれだけ力強く自然を操れるように見えても……流れには逆らえないんだ」
 やはり津々流の治癒が崩壊させない。
 彼自身の負に対する抵抗力も高ければ、その動きが妨げられる事もなく。
 追い詰めて往く。
 奴は雷を操っているように見えてその実、かなり限定的だ。この無作為に降り注ぐ雷こそその象徴――本当に操れているのならば、これも制御できている筈なのだから。
「自然を操る、ていうのはね。それぐらいじゃきっと駄目なんだ」
 かつて四季を体現し、自然を操る樹の化身として。
 終わらせよう。霊力によって生み出された、嵐の如く舞い踊る桜吹雪を。
 嵐に対抗せんが如く真っ向から激流とすれば直撃する。
 ――落とす。
 落とす。必ず落とす。その手伝いになればと、意思を持って突き進ませるのだ。
「ったく、雨と雷に撃たれて、風に弄られて……嗚呼、ロクでもない一日だこと」
 ゼファーは雨に濡れて張り付く己が髪を掻き上げて。
 見据える。ああ、こんな激しい中での戦いも――経験してきたものだ。
 とはいえ……
「……だけど。こんなもん、あの海に比べりゃ随分と優しいもんだわ!」
 かつての『激闘』を思い起こせば何のこともないが。
 絶望という程の闇はなく。微かにしか見えない程度の希望でもない。
 ――往く。雷鳥の身には幾つもの傷が残っており、流血も激しく息も荒い。
 相手の速さは既に見極め、重ねる撃を紡ぎ続ければ――
「……どうやらまだ諦めてなどいないようですね」
 沙月が気付く。奴の瞳にはまだ絶望も諦めも宿っていない、と。
 待っているのだ。己が操る以外の――雷が落ちてくる事に。
「そうは参りません。このまま仕留めさせていただきましょう」
「もうてめえが空に戻ることはねえ。このまま地上で果てろ!」
 直後。沙月の攻撃に合わせ風牙も共に。
 翼、いや狙うは足だ。速度と勢いを破壊力に転換し――体重を支えている点へと打ち込む。
 身体に流し込む不安定な気が炸裂し、しかしなお留まる。
 次なる一撃が。次なる衝撃が訪れるまで。
『ガ、ァ――!!』
 瞬間、危機を察したか雷鳥が強引にでも飛び立たんとする。
 空に。空に上がれさえすればなんとでもなるのだ。この嵐を容易く飛翔できる存在などいまい――! レイリーらを振り切って自由を謳歌せんと、翼を大きく広げて――
「逃げる気かい? 戦意を失った相手に追撃するなんて本意ではないけれど……
 それでも駄目なんだ。君は逃がせない」
 されど、マリアが待ち構えていた。
 建物を足場に。高所へと跳躍した彼女は――そのまま雷鳥を迎撃する。
 空中ならば味方の誰も巻き込まない……だから!

「君と私の雷撃……どちらが上かな! 叩き伏せろッ――!」

 蒼雷の輝き。瞬かせるはマリアの真髄。
 天候に干渉し大規模な落雷を発生させる――雷神が如き御業。
 天は轟く。雷鳥とマリアの技法によって荒れ狂う程に。
 絡み合う閃光はまるで蛇が食い合う様子……それでも。
 激突の果てに生き残るは一つで。
「――君も生きる為に必死だっただけだよね」
 良い雷撃だったよ……
 交差の直後。全身にマリアは熱を感じていた――が、しかし。
 落ちていくのは鳥の方。最早力尽き、物言わぬ骸と化したモノ。
「――ゆっくりお休み」
 天が晴れる。自らも地へと落下していく浮遊感に抱かれながら――
 マリアは微かに見えた青空を、瞳に確かに捉えていた。


「死者も雷鳥も……全てが終わった後は等しいものだ。
 鎮魂を行い、しっかりと供養したい。犠牲になった村もそのままだろう……」
「そうですね、弔ってあげましょう……もしくは辛うじて逃れた生存者の方がいるかもしれません。いずれにせよ確認の為に伺ってみましょう」
 雷鳥が完全に沈黙した事を確認し、レイリーと沙月は互いに供養のための行動を。
 全ての原因は雷鳥であるが、それはそれ。
 死した骸を辱める様な事をする必要はないだろう――等しく供養し、安らかにと。
「はぁーやっとくたばったのねコイツ……いい加減さっさと帰って暖かいシャワーでも浴びたい所だわ。天然のシャワーってのも悪くはないけど、ねぇ」
「ていうか一匹なのかコイツ? もしかしてどこかに群れとかいたりしないよな?」
 このままでは風邪を引いてしまうと、ゼファーは体に暖かさが残っている内に極楽たる湯に漬かりたい気分であった。一方で風牙は――やっぱり心のどこかに不安というか陰謀があるんじゃないかと周辺に視線を。
 まぁ少なくともこの事件で関わったのはこの一匹だけの様だ。
 余計な事情が無ければ良いと思考しながら――彼らは帰還の途へ。
 雷を操る怪鳥は滅びた。

 この周辺に再び平穏が訪れる事を――願いながら。

成否

成功

MVP

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 力を持っていようとも人に害を成すならば、それは魔物なのです……
 MVPは多くの治癒を授け、戦線を安定させ続けた貴方へと。

 それでは、ありがとうございました!

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