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シナリオ詳細

鉄帝武人と恋の華

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ローレットを訪れたイレギュラーズは、すっかり顔馴染みになった情報屋の男を見つけると、「何か依頼来てる?」と尋ねた。
 「もちろん」と頷いた情報屋が複数枚重ねられた依頼書をパラパラとめくる。
 その中にあった一枚を抜き出して、イレギュラーズに差し出す。
「鉄帝の方からの依頼だね。この人、実は去年の年末にも依頼をしてるんだ」
「へぇ、その人、その時はどんな依頼をしてたの?」
「戦って厄払いをしてくれって奴でね。で、まあ、依頼のおかげなのかどうかは分からないけど、年が明けてからはすこぶる調子がいいみたいだよ」
「そうなのか。で、その人が今度は一体何の……」
 言いながら依頼書に目を通した者は、口を閉じて首を傾げた。
「降りかかる厄を払ってくれ?」
「詳細は本人に聞いてほしい。どうも、去年の厄払いとは別物らしい」
「厄を払ったのに、また厄が降りかかるってどういう事なんだろうなぁ」
「どういう事なんだろうねぇ」
 情報屋は肩をすくめてみせると、件の人物に会いに行くよう勧めた。


 デストニー・ラバーズという武人が居る。
 彼は去年、試合をしても相手に不幸が降りかかりすぎて意に沿わぬ勝利を多く勝ち取り、その厄を払う事をイレギュラーズに依頼していた。
 そんな彼に再び降りかかる厄とは一体何なのか。
「よく来てくれたイレギュラーーーーズッ!!」
 待ち合わせである彼の自宅に赴いたイレギュラーズは、彼の大声に耳を塞いだ。
 テーブルとソファのある応接間に通された後、ソファに座るよう勧められ、一部の者達が腰掛ける。
 上座にある一人用椅子に、彼の体が沈む。
 改めて、彼の容姿について言及するならば、少しばかり顔と髭の濃い男だ。顔は整っており、カッコいいともてはやされるだろう。
 鍛えた筋肉が服の上からでも分かるほどに盛り上がっており、鉄騎種となる右腕を有している。
 以前の依頼では戦う事が目的であったからか、肩当てと胸当てをつけていたが、今日は私服の為につけていない。
 以前と今で変わった事があるとしたら、頭髪だろう。
 あの時はふさふさの髪を有していたはずだが、今日は何故かスキンヘッドだ。
 言及するわけにもいかず、イレギュラーズから話を切り出す。
「それで、ご依頼にあった、降りかかる厄を払ってくれというのは……?」
「うむ! 実は、とある女性と数度デートをしているのだが、その度に何かしらのハプニングに見舞われてな」
 流石に落ち着いた声で言えるようだ。暑苦しい声を聞かずに済んで内心ホッとするイレギュラーズ。
「恋人ですか。おめでとうございます」
「ああ、いや、我が輩の完全な片想いだ。
 それは置いておいてだな、髪を剃った甲斐もあって、なんとかデートに誘うまでに至ったのだが、どうもデートの度に決まって何かが起こるのだ。それも大体似たようなパターンだ」
「はあ……」
「聞けばその女性、今までにもデートの度にハプニングが起こるので、男性からは敬遠されていたらしい。
 しかし、我が輩は、その男性達こそ軟弱であると思うのだッ! 故に、我が輩は彼女とのデートで起きるハプニングにも屈しはしなかったッ!」
「それが、何故依頼をするに至ったので?」
「うむッ! ハプニングに屈しない様は彼女に見せる事が出来たので良いのだが、肝心の彼女がひどく落ち込んでいてな。
 『ご迷惑をおかけするばかりだから申し訳ない』と言うのだ」
 だんっ!
 拳がテーブルを叩く。
「我が輩は迷惑だなどと思った事は無いッ! そんな事でこの想いを諦めるなど笑止千万ッ!
 そこでだ、イレギュラーズ! 頼みがあるッ!」
 なるほど、なんとなく展開が読めてきたぞ。
「『デートに一度もハプニングなど起きなかった』とッ! 少しでも良い、彼女の自信を取り戻すのに協力してほしいのだッ!
 そして、成功した暁には、彼女に告白したいのだッ! どうか頼むッ!」
 そう言って頭を下げるデストニー。
 勢いが付きすぎて、テーブルに頭をぶつけていたが、石頭なので問題なかったようだ。
 イレギュラーズは顔を見合わせると、「仕方ない」という顔になったのだった。
 この武人の恋の華を咲かせてやろうではないか。

GMコメント

 以前「オレの厄を払ってくれぇぇぇぇ!!!!」に出てきたデストニーさんの再登場です。該当シナリオを読まなくても問題はありません。
 どうも彼に恋が訪れているようで、デートの成功を依頼されました。
 ハプニングを起こす事なく無事にデートが終わるように手助けしてやってください。

 以下はデートのプランやデストニーや女性についての情報となります。

●デストニー・ラバーズ
 鉄帝武人。右腕は鉄騎種で、筋肉で鍛え抜かれた肢体を持っている。
 体躯の良い男性。
 以前は短く刈り上げた髪をしていたが、デートの申し込みへの気合いで髪を剃り、以降スキンヘッドになっているらしい。
 デートが成功した暁には改めて告白とお付き合いの申し込みをする予定でいる。

●女性
 武人でもなんでもない、一般人の女性。
 ボブカットで、顔と服は可愛い系。平均より少し低めの身長。
 花屋のお店を営んでいるらしい。
 今までデートの度に何かしらのハプニングを起こす為、男性とお付き合いできた事が無い。
 ハプニングに屈しなかったデストニーに対して、惹かれはしているようだが、今までの事があるからか申し訳ない気持ちが強い。

●デートプランと、起こるハプニング
・カフェ
 ハプニング:子ロリババアの乱入or店員が転倒して熱いメニューの直撃
 テラスカフェであり、デストニー達もテラスで過ごしているのですが、何故か毎回上記のいずれかが起こります。
 今のところ二ついっぺんに起こる事は無いです。
 子ロリババアについては、二人の前に現れる前に撃退する方向が望ましいでしょう。

・公園
 ハプニング:光る頭を狙ってカラスの群れに襲われる。
 カラスは一般的なカラスで、スキルなどは有していません。つつくくちばしが鋭いぐらいです。
 デストニー達に向かわないように阻止する必要があります。

・恋人の聖地と呼ばれる高台
 ハプニング:メカ子ロリババアの集団が鐘をつきに現れる。
 鐘をつく場所があり、そこで男女が鐘をつくと永遠に結ばれるという言い伝えがある。
 鐘の高さは女性の視線の高さまであり、鐘を丸太でつく形である。
 メカ子ロリババアについては、鐘へと至らせずに阻止してください。

●子ロリババア
 噛みつく(物・至・単)
 踏みつけ(物・至・単)
 上記二つの攻撃しかしない普通の動物(?)です。

●メカ子ロリババア
 体当たり(物・至・単)
 踏みつけ(物・至・単)
 上記二つの攻撃しか無いですが、違うのは体がメカなので子ロリババアに比べて体力がかなりある事だけです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。
 ハプニングの事以外には起こらないので、対策は出来ると思います。

●このシナリオはコメディ色強めのシナリオになります。

  • 鉄帝武人と恋の華完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
飛島 飛鳥(p3p002704)
鴉羽
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ

●さあ、成功の為の準備を!
 待ち合わせ場所に向かう前のデストニーと最終的な打ち合わせをすべく、イレギュラーズは集う。
 『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)の助言により、帽子を被らされる事になったデストニー。本人曰く、「折角の気合いがもったいない」らしいが、デートを成功させる為だという事で納得して貰った。
 彼が帽子を購入するのに合わせて、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)が一つ提案する。
 それは、変装をするという事。
「うん、賛成」
 真っ先に賛同するЯ・E・D。
「成功確率を上げる為ならば」
「デートを成功させる為だし、賛成だよ」
 『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)や『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)もそう口にし、他の面々も頷く。
 そして、メリルナート監修の下、Я・E・D以外のイレギュラーズの変装衣装がコーディネートされる。Я・E・D自身はギフトでどうにかするとの事で、メリルナートの補助的位置で皆のコーディネートを手伝っていた。
 その結果、大まかに書くとこのような服装になった。
 『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は、少しボーイッシュな格好に、長い髪を帽子の中に隠しての格好だ。
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は、眼鏡をかけて少しゆるふわなセーターを着用し、ちょっとインテリ系の雰囲気を醸し出す。
 マリアはタートルネックのついた白のロングワンピースに薄桃色のセミロングコートを。ワンピースの下にはくるぶしまで届くほどのスパッツを着用している。ポニーテールを下ろし、長い髪に大きめのリボンを結ぶ。
 『鴉羽』飛島 飛鳥(p3p002704)はいつものピッチリ系から離れて、フェミニン系のセーターにロングスカート。下にはマリアと同じくスパッツを着用している。髪型も三つ編みにしてもらった。
 オリーブは大柄なので、少しでも威圧感をなくそうと、柔らかめな色のセーターを着用。ズボンはゆるゆる系にする事で、ちょっと印象は和らいだ。
 『揺蕩う器』ハリエット(p3p009025)は伸びている尾を隠すかどうかで悩んだが。最終的にそういった者でも着れる用のパンツスタイルになり、上の服はポロシャツに厚めのベストに落ち着いた。尾はこの際仕方が無いという結論だ。髪型は緑髪のロングなウィッグを被る事で解消した。
 皆のコーディネートをしたメリルナートの服装はというと、胸をそこまで強調しないで済むゆるゆるのセーターに両サイドにスリット入りのタイトスカート。ロングコートにはフードがついており、いざとなればフードで顔を隠す算段だ。これならば髪型を無理に変える必要も無い。
 Я・E・Dはパンツスタイルに厚手の服を。ロングコートはまるで探偵風。髪型は帽子で隠したりして対応するらしい。
 メリルナートによる化粧などが女性陣に施された所で準備も完了し、デストニーと分かれて彼の後方をまばらになってつけていく。
 待ち合わせに居た女性は可愛らしく、服装もデートを意識した可愛い系統の服である。
 そのまま連れ添って歩く二人。
 さあ、依頼を始めよう!

●VSカフェ
 カフェのテラス席の様子がギリギリ見える程度に少し離れた建物の陰で待機している百合子は、談笑している二人を見て首を傾げる。
「しかし、恋とは一体何であろうか……。美少女(蛮族)的に考えると死亡フラグであるのだがこの場では違うことは流石にわかる」
 しかし、いくら考えてもその正体がよく分からない。
(んむむ! 悩んでも仕方がない! きっちりサポートして恋とは何か見せていただこうではないか!)
 そんな彼女の胸中など露知らぬ他の仲間達。
 客として潜入し、ハリエットと相席になっているイグナートは、デストニーと女性の様子を見ながら独り言を呟く。
「髪を剃るくらい本気なんだから何とかしてあげたいよね。それはそれとしてデート誘うために髪を剃るのはヤバイヤツだと思う」
「そう?」
「普通は引かれるんだよ。しかし、この奇行で脈アリだったんだから、カノジョはハプニング起こすノウリョクを相当気にしてるんだろうなぁ」
 思わず溜息が零れる。運ばれてきたコーヒーを少しずつ冷ましながら口に運ぶ。
 ふぅん、と呟きつつ、ハリエットは店員の動きを確認する。今のところ、新人らしき者やベテランなどの計二名が何かしらやらかす様子は見受けられない。邪魔になりそうな障害物も見えない。
 となると子ロリババアになるのだろうか。子ロリババアについては、テラス外――――店の近くで目を光らせてくれている者達が居るはず。彼らの腕に任せよう。
 そう決めると、ハリエットもまた、注文したお菓子を口に入れるのだった。
 カフェのテラスから離れた建物の影に隠れて、オリーブは子ロリババアがどこから出てくるのか、警戒していた。
 彼と同じように外からの警備をする事にしたマリアもまた、周囲をつぶさに観察する。
(聞いた不幸の数々から考えるに、あの女性のギフトだと思うのですよね。まずはあの二人が結ばれる様に頑張りましょう)
(恋か……。素敵だよね……なんとしても上手くいくようにお手伝いしてあげたい……)
 二人とも、彼の恋が上手くいくようにする為、協力を惜しまない姿勢だ。
 メリルナートもまた、二人とは離れた建物の陰に立ち、辺りを見回す。
(ええ。実るかどうかは分かりませんが、応援したくなる恋の花、ですわねー)
 出来れば成就して欲しいけれど、こればかりは相手方の気持ち次第だ。
 子ロリババア迎撃部隊としてやる気満々なのは、飛鳥やЯ・E・Dの二人。
「降りかかる厄を払ってくれというなら是非もなし。見事払ってみせましょう」
「良いよ、それが彼女さんの持つ運命なら。
 わたしは……わたし達はそのフラグを打ち破るだけ」
 決して屈しないと深く頷くのだった。
 待つ事十分。
 子ロリババアが出てくる様子は無く、それどころかカフェからデストニーと女性が出てきたではないか。
 という事は、店内で何かが……?!
 慌てて向かえば、イグナートとハリエットの二人が出てきた。一応無事らしい。
 話を聞くと、こうだ。
 慣れぬ様子の新人が居た。トレイに載せているメニューはパフェだけなのだが、割とデカかった。客の間を縫って歩いているからか、足取りも不安そうだったらしい。彼の進行方向にはデストニー達や他の客がいるテーブルが見える。
 ハリエットが目配せをし、さりげなく立ち上がったイグナート。
 ちょうどその時、店員が客の座っていた椅子の背もたれに脇腹を引っかけ、つんのめる。
 いつでも動けるように準備していたイグナートがダッシュで駆けつけ体で店員を支え、落ちそうになったデカパフェを両手で支える。一番上に乗っていたソフトクリームが少し傾いたぐらいで、欠けた様子は無い。
 平謝りする店員に「大丈夫」とだけ言って、その場を後にした。
 という事があったと説明を受け、良かったと胸をなで下ろす一同。
「しかし、油断は出来ませんね」
「はい。まだまだここからです」
 オリーブと飛鳥の言葉に、イレギュラーズも「そうだった」と思い直すと、慌てて二人の後を追ったのだった。
 
●VSカラス
 予定にあった公園に着く。そこは広く、家族連れやカップルなどの姿が多く見られた。
 遊びに興じる者達も居れば、昼寝をしたり、ピクニックをしたりと様々だ。
 デストニー達の姿も把握している。彼らは食後の運動としてか、散歩をしていた。
 一行は、件のカラスの集団が居ないかと探し始める。すると、見えてくるカラスの集団。その数は十羽ほど。多過ぎでは?
 Я・E・Dがビー玉や手鏡を荷物から取り出すと、辺りに転がし始める。なお、手鏡はイグナートへと渡された。「え、オレ、囮?」という彼の声に「頑張って」とだけ返し、彼女は仲間に声をかける。
「あれくらいならこちらに集中させやすいかも」
「そうだな。では、私は空き瓶でも割って囮としよう」
 百合子は適当に拾ってきた空き瓶を布に巻き付けてそれを叩き割る。何この人怖い。
 音が響く事は無く、空き瓶は少しずつ砕けていく。
 手鏡を用意しているのはハリエットもだが、彼女は近くで光る物を用意したオリーブを見て凝視する。鎧というか手甲を取り出していたのだ。しっかり磨かれており、太陽の光に反射して光っている。
「光る物と聞いてこれが浮かびましたので……」
「うん、まあ、アリだと思う」
 似たような事を飛鳥がしていた。彼女は抜き身の刀身を太陽の光に反射させて注意を引く算段のようだ。
 マリアは幻影を用意すると告げ、メリルナートは少し離れた場所に待機して討ち漏らしを精算すると語った。
 出来るだけ散会する一行。先程のカフェと同じ組で分かたれた。
 光る物に反応してやってきたカラス達。
 手鏡を掲げながら、イグナートが「ガァガアガァァァ! ガァ! ガァガァ!」と言う。しかし、返ってきたのは「ガァーー!」という返事だけ。
「何て?」
「さっぱりわからん。こんなことならカラス語も勉強しておけばよかったなぁ。ゴリラ語なら話せるんだけれどね」
 ゴリラ語が話せるだけでも凄いのでは?
 そう返そうにも、カラス達がこちらに向かってやってきたので応戦せざるを得なく。
 飛鳥の暗器にて飛ぶ斬撃で先制をし、それでもなお向かってくるカラス達に向けて、ハリエットが持参したレールガンと光柱の組み合わせによる攻撃を当てに行く。
 今ならば味方に当たる事も無いだろうと思ったマリアが雷を落とした。カラスが二、三羽落ちていく。ある程度は手加減したはずだから大丈夫だと思いたい。
 それでも怯まずに向かってくるカラス達を見てオリーブの疑問が出る。
「普通のカラスでしょうか、これ……?」
 残念ながら普通のカラスです。ただ、光る物が大好きすぎるだけの。
 範囲内に入ってきたカラスの内二羽ほどを長剣による攻撃で仕留める。血が飛び散ってしまったが仕方が無い。
 落ちたカラスはЯ・E・Dが回収していく。
「これ食べる」
「食べるんですか?!」
 発言に驚く飛鳥。彼女の食いしん坊は飽く事を知らないのだ。
 デストニーを覚えているのか、方向を変えて向かおうとするカラス達を発見する百合子とメリルナート。
 メリルナートは氷の鎖を生み出し、カラスを縛り付けた。理不尽な暴力に怒ったカラスが向かってくるが、それを百合子が美少女力を打ち出した光線にて撃ち抜いた。……美少女力って何?
「後で焼鳥にして供養する故許せよ……」
 あ、やっぱり食べるんですね。
 カラスも無事に撃ち落とし、デストニー達も良い雰囲気を維持したまま公園で数時間ほど遊んで過ごしていた。なんとほのぼのする光景か。彼女の方も笑顔が曇る様子は無い。
 日も暮れてきた所で、二人が移動する。最後の場所はどこなのか分かっている一行は、すぐに準備に取り掛かる。
 次の場所は高台。待ち受けるのはメカ子ロリババアだ!

●VS高台とその結果
 高台の鐘を確認し、そこからメカ子ロリババアがやってくるであろうコースを逆算。二人に見えないポイントにて待ち受ける事にした。イグナートにの提案によるバリケードで陣地を構築しておく。陣地の前にて集まり、現れるのを待つ。
 準備を終えてから百合子が現れた。彼女の隣にはちょこんと立つモノがある。仲間達は「どういう事?」という視線を投げかけた。
 彼女が連れてきたのはメカ子ロリババア。おそらくは自前の。
「話が通じそうなメカ子ロリババアを持ってきたのである!」
 通じるかなぁ……。
 不安を残しつつ、見えてきたメカ子ロリババアの集団。軽快な音とけたたましい鳴声を立てて向かってくる。
 彼らに向けて、百合子はメカ子ロリババアをけしかける。
「行け!デストニー殿達をカップル成立させるために仲間たちを説得するのだ!」
「NOJAAAAAAAAAA!」
 命令に従い、メカ子ロリババアの集団へと単身突撃するメカ子ロリババア(自前)。めんどくさいなこの表記!
 だが、悲しいかな。メカ子ロリババア(自前)は、集団に向けて鳴くも、一蹴の下、そのボディも集団攻撃によってボロボロにされてしまった。
 腕を組み、仁王立ちという格好良いポーズをして、百合子は一度頷く。
「……うむ、なんとなくうまくゆかぬ気はしてた」
「じゃあなんで連れてきたの?!」
 イグナートのツッコミなどどこ吹く風。
 しかし、バリケードを作ったとはいえ、メカ子ロリババアの集団の数が多い。あまり数えたくはないが、十数体は確実だろう。
「メカ子ロリババア、恨みはありませんがー。
 人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて地獄行き、ですわー」
 自身の血を使った氷の槍を成形し、投擲する。ボディへと深く突き刺さり、動きが止まる。
 Я・E・Dが全身の力を砲撃に変えて撃つ。その威力たるやすさまじく、縦一列分のメカ子ロリババアを貫いた。
 不敵に笑うマリアが、手をかざす。
「ふぅ! 生き物でないなら加減は必要ないね!
 焼き尽くす! 天槌裁華!!」
 天候が変わり、雷が落ちる。広い範囲に落ちたそれはメカ子ロリババアの体を容赦なく止めた。黒い煙を吐き出して倒れていくメカ子ロリババア。
 レールガンを構え、ハリエットは一体を狙う。
 光の柱がレールガンより発射され、一体を沈めた。
 敵はまだ残っており、バリケードを突破される前にと飛鳥とオリーブが前進する。
 先に飛鳥が前に立ち、暗器にて一閃。足を狙ったその攻撃は、体勢を崩すに十分。
 オリーブがもう一撃の準備をする。
「妙に固いですがとにかく叩くしかありません」
 そう言って乱撃を繰り出し、メカ子ロリババアの命を刈り取った。
 次々と倒されていくというのに、メカ子ロリババアの進撃は止まらない。
 イグナートが名乗りを上げ、挑発する。
「このイグナートを倒せるもんならやってみろ!」
 鼻息荒く突っ込んできたメカ子ロリババアへと鉄騎の拳が炸裂する。同じ鉄だが、威力はこちらが上。勢いもあり、吹っ飛んだメカ子ロリババアの体は残るメカ子ロリババアへと激突した。
「負けていられぬな!」
 百合子の拳による猛スピードの連打がメカ子ロリババアを捉える。
「NOJAAAAAA!!」
 断末魔の悲鳴を上げて絶命するメカ子ロリババア。
 全て倒せたはずのメカ子ロリババアを見て、イグナートはつい独り言を零す。
「カノジョは絶対に何か変なギフト持ってるから診察を受けた方がイイよねコレ!?」
 その言葉に対し、「うーん」と難色を示したのはЯ・E・Dだ。
「でも、一度フラグを打ち破れば効果が無くなる可能性もあるし」
 ギフトかどうかはまだ不明だが、その辺りは今後判明するだろう。
「ところで、デストニーさん達の様子を見に行きませんか?」
 飛鳥の提案に、急いで二人のもとへと向かうのだった。

 鐘のある場所に居る二人を発見し、すぐに物陰に隠れる。
 高台から見える夕暮れを前にして、二人は見つめ合っていた。
 帽子を取ったデストニーがそれを胸に置き、跪く。
 見上げるデストニー。見下ろす女性。
「我が輩は貴女をお慕いしておる。デートの度にハプニングがあろうと、それで疲れる事は無いし、貴女への想いが揺らぐ事など皆無ッ!
 改めて、もう一度言わせてほしい。
 どうか、我が輩とお付き合いしていただけないだろうかッ!」
 差し出される右手。武人が利き手を差し出すその意味を彼女が知っているかは分からないが。
 手を出そうとしては引っ込ませる所作を二度ほどしたところで、彼の手をおずおずと取った。
「こんな私でも、良ければ……」
 微笑む彼女の顔を見て、デストニーの顔が輝く。溢れんばかりの笑顔を見せて、立ち上がる。
「武人としての、いや、我が輩の誇りに懸けて、誓おう。何があろうと貴女を守るとッ!」
「デストニーさん……」
 俯いて顔を覆う女性。肩が震えている事や聞こえてくる嗚咽からして泣いているようだった。
 オロオロするデストニーとイレギュラーズの目が合った。
「抱きしめて!」
「いけ、デストニー!」
 メリルナート、イグナートによる小声とジェスチャーを受けて、彼はしばし迷った後、そっと女性を抱きしめた。それにガッツポーズをする数名。
「上手くいったようだな」
「そうですね」
「良かったです」
 百合子の呟きに、オリーブと飛鳥も同意する。上手くいったのならば何より。協力した甲斐があるというものだ。
 Я・E・Dが皆に帰るよう促す。
「さ、これ以上は無粋だから帰ろうか」
 同意し、帰路につく事にするイレギュラーズ。
 去る間際に、ハリエットが振り返る。二人は笑っているように見えた。
(ああ、なるほどね。二人とも幸せそうな顔してる。あんな顔ができる相手がいるって素敵だね)
 道を歩きながら、マリアは思い出す事があった。脳裏に浮かぶ、恋人の姿。
(早く会いたいなぁ)
 自然と早くなる足。気付けば仲間達を置いて行きそうになっていたので慌ててスピードを落とす。
 足並みを合わせて、イレギュラーズは帰路につく。
 夜空がとても綺麗だった。

 後日、デストニーから無事に交際できたと報告があった。それ以降あのような事は起きないそうだ。
 彼からお礼があったが、それはまた別の話で。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
デストニーの恋も無事に実ったようです。
余談ですが、二人はイレギュラーズが居なくなった後に鐘をついています。幸せになるといいですね。

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