シナリオ詳細
丘の下の Evil ones
オープニング
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妖精郷アルヴィオンは一時魔種タータリクスの侵攻もあって国が凍てついたこともあったが、今は常春の陽気に包まれている。
妖精達もまったりと過ごしているかと思いきや、その侵攻の影響もあって、復興の為に日々忙しなく働いている。
こうした状況にあるのは、ローレット所属のイレギュラーズの力あってこそ。
彼らは平和になった妖精郷へと時折訪れ、復興の進捗状況や新たな異変がないかと確認を行っている。
旅人であるサイズ(p3p000319)もその1人。他の地域での依頼の合間にも妖精郷を訪れ、妖精達の住む集落の周囲を見回っていた。
しばらくは何事もなかったのだが、妖精郷の危機のタイミングに同行した妖精の少女、エーヴィと再会したサイズは気になる情報を耳にする。
「ルテニアの丘にまた邪妖精が住み着いたようなの」
ルテニアの丘は、この地は妖精郷を広く一望することができ、妖精城アヴァル=ケインを始め、湖畔の町エウィン、巨大なキノコの森、他にも多数の妖精達の集落を確認することができる。
こうした景観もあって、ルテニアの丘はピクニックの名所としても妖精達の中では知られる。
「この丘の地下は空洞になっているんだよ」
丘へと降る雨水がその空洞へと流れ込み、鍾乳洞となっている。
そのおかげもあって物陰も多く、邪妖精の住処となることも少なくないそうだ。
以前丘の上で討伐した毛むくじゃらの邪妖精バグベアや赤い帽子を被ったレッドキャップが居ついてしまっているのだという。
「バグベアは太い爪を使うパワーファイターで、レッドキャップは小さな暗殺者よ」
いずれも妖精達にとっては脅威となる存在でしかない。被害が及ぶ前に討伐しておきたい相手だ。
最近は、復興の為にあちらこちらへと資材運搬や買い出しへと出かけることも多いエーヴィだが、今回はイレギュラーズの支援をとやる気を見せる。
「一緒に行くよ。久しぶりによろしくね」
邪妖精は怖いと語りながらも、それ以上に頼もしいイレギュラーズとの依頼だと、エーヴィは楽しみにしていたのか笑顔を見せたのだった。
●
ルテニアの丘。
冬であってもポカポカとした陽気である常春の妖精郷においては、草に寝転がりながら昼寝もできるピクニックの名所である。
だが、イレギュラーズ達はその丘を登ることなく、麓を回り込みながらその内部にある空洞への入り口へと踏み込む。
僅かに漏れ出す上部の隙間から入り込む陽光を避け、そいつらは物陰に潜んでいた。
「グルルルルル……」
クマを思わせる体躯をした人喰い妖精バグベアは涎を垂らしてこちらを睨みつけてくる。
「しっかり援護するから、皆、頑張って!」
後方へと下がるエーヴィの前に立つイレギュラーズ達。
空洞に関してはそれなりの広さがあるものの、あちらこちらで鍾乳石が柱を作っている。2体いるバグベアはその陰からでも丸見えなので視認は容易だが……。
ケケケ……。
あちらこちらから向けられてくる殺意。それらがレッドキャップであるのは間違いない。
潜伏する邪妖精の奇襲を気にかけながらも、イレギュラーズ達はこの場の敵全ての討伐を開始するのである。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/30824/0a175e9ffb2cc47dffead9c1cf4eb9fe.png)
- 丘の下の Evil ones完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月28日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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深緑の地を経て、ローレットイレギュラーズ達は妖精郷アルヴィオンへと至る。
「妖精郷に来るのもなんか、久しぶりだなぁ……」
感慨深げに呟くのは、身長30cmほどの『リトルの皆は友達!』リトル・リリー(p3p000955)だ。
「妖精郷。以前、冬の王との戦いで来た事があるらしいわね、私」
背に片側のみ剣翼を生やす『トリックコントローラー』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)はその時、雪だらけだったのを思い出してから、傍らに同行する妖精の少女を見やる。
「……綺麗な所ね、エーヴィ」
「うん、だから守りたいの」
チェルシーは無理のない範囲で味方の回復補助を頼むと、出来ることをしたいという小さな少女は笑顔で頷いていた。
「ああ、あの時の丘か。一緒にピクニックに行った子達は元気かな」
一行はそのまま目的地を目指すことになるが、金髪の少年といった風体の『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は一度訪れたことがあり、その時語らった妖精達を思い返す。
「あそこにまた邪妖精が住みついたんだね……」
「邪妖精……倒さなければ、危険……?」
前回は丘の上だったが、今回は丘の下にある空洞とのこと。ウィリアムの一言に、俯きがちな飛行種少年、アムル・ウル・アラム(p3p009613)が反応し、仲間達へと問う。
「定期的にこういう敵は見つかるものね。また冬にされてもたまったものでもないし、サッサと退治しちゃわないと」
「きっと怖がっている事だろう。早く安心させてあげられるようお手伝い頑張らせて貰うよ」
応じた子供の人間種くらいの背丈をした『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)もその討伐に意欲を見せ、ウィリアムが同意する。
「……僕に出来る事が、あるなら」
すると、アムルも戦う決意を固めたようだ。
「……というよりも、ぱっぱと片づけないとサイズがまた突撃するんじゃないかしらって不安なのよね」
そこで、オデットが示した別の懸念は、ギフトによって妖精と同じくらいの大きさにまで小さくなった『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)のことである。
「今回、妖精はエーヴィさんとオデットさん2人か……守りきれるかな?」
本体が妖精鎌であるサイズにとって、妖精を護ることは宿命ですらある。オデットにとってそれだけ妖精を大切にしてくれるのはありがたい反面、彼に怪我をしてほしくないと願っていた。
「妖精のお友達もできたし、サイズさんも頑張ってるし、リリーも頑張らなきゃねっ」
リリーの所属するリトルには、妖精郷出身のリトル・スズもいる。仲間達の為にもと彼女もまた奮起するのである。
丘を登ることなく、その麓を迂回していくイレギュラーズ一行。
「先日の丘の下に、こんな空洞があったんですね」
そこに開いた空洞への道を、アルビノの女性の外観を模した秘宝種『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)が見上げる。
(……ここは彼らの眠る地ですから)
妖精郷の混乱の中で生を受けたアルベド達のことを思い出し、グリーフは小さく祈りを捧げて。
「えぇ。深緑、妖精郷の安寧のためであれば、私でできることであれば。どうぞお使いください」
グリーフもまた、仲間達が依頼への気概を強めていたのに同調する。
「それじゃあ、お仕事を始めましょうか」
前方を見やるチェルシー。その先には暗がりを歩く熊の姿をした邪妖精、バグベアの姿が。
「こういう時は、1体1体……って行きたいけど、周りからもっと出てくる可能性もあるし……」
足場はやや凸凹していて不安定と感じ、牡馬のカヤは入り口付近に置いて行くリリーだが、ファミリアーとして連れた蝙蝠を自身の少し後ろを飛ばすことで、後方の索敵も行う。
「……リリーが居る限り、出来るだけ不意打ち、させないからねっ?」
それというのは、この空洞の周囲には血に濡れた帽子を被った邪妖精レッドキャップも潜んでいるからである。
「状況的に、洞窟の外方面からのレッドキャップに気を付ければ行けるかな?」
前衛は十分。護るべき妖精は2人とも後衛という状況を踏まえ、サイズが持論を語る間、2本の角が生えた小柄な魔王、『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)がすでにレッドキャップの奇襲を警戒していた。
オデットも周辺の精霊に声をかけて索敵をしており、ウィリアムも精霊疎通と合わせて式神使役で作った式神を従え、何者かの接近を察した際に持たせた鈴を鳴らせるよう指示を出す。
「なるべく空洞入り口付近を戦場として邪妖精と戦おう」
「引っ張ってきて戦う方針、だよね」
ウィリアムにアムルが齟齬を埋めるべく確認を取ると、仲間達が頷く。
「それじゃ、魔剣の餌になって貰いましょうか」
仲間達へと示し合わせ、空洞内へと踏み込んだチェルシーが視認したバグベアに向け、剣翼から生み出す魔剣を放って引き付けを始めるのだった。
●
ゲギャアアアッ!!
毛むくじゃらの邪妖精共は牙をむき出し、縄張りに入ってきたチェルシーへと向かってくる。
近場から漂う明らかにバグベアと別の殺気を感じながらも、チェルシーは空洞内へと煙幕を投げ込んでから出口へと向かう。
ギャッギャアッギャギャッ!
チェルシーがその場から外へと逃走すれば、バグベアだけでなく、瞳をぎらつかせるレッドキャップも外へと引き付けられていたようだ。
「少しは後続の敵が来るのを遅らせられるでしょう」
一旦、バグベアのみを外へと引き付けるチェルシーは、仲間の方まで下がっていく。
後は、バグベアを捕捉したメンバーが攻撃を開始する手はずだ。
「バトンタッチよ!」
「受け取ります。……丘の上の花畑に影響のでないよう配慮したいですね」
チェルシーからバグベア対処を引き継いだグリーフは釣られた敵を引き付けるべく、タイミングを見て魔力障壁と破邪の結界を展開する。
「空腹を満たしたいのでしたらどうぞ。糧となる気はさらさらありませんが……」
グアオオオオオ!!
大声で吠え、こちらへと迫ってくる2体のバグベアどもへ、グリーフは朱い旗を携えて身構える。
片方はグリーフ目がけて身体を叩きつけ、もう片方が牙を剥いて食らいついてくる。
それでも、グリーフの身体には傷一つつかない。
「どうぞ、私ごと範囲攻撃で撃ってくださいませ」
その方が早く殲滅できるという彼女の呼びかけもあり、距離を取っていたメンバーから攻撃を開始して。
「真正面からの殴り合いはまだ僕には少し厳しいと思うから……」
まだ混沌での戦闘経験が浅いアムルはバグベアには近づかず、破壊者の名を持つ武器を振り回し、グリーフごとバグベアを薙ぎ払う。
ただ斬るだけでなく、アムルは敵の足元を狙うことでその機動力をも奪う。
「さぁ、ちゃちゃっと吹っ飛ばしちゃうわよ。気を付けてね!」
待ってましたと、無限の紋章を顕して魔力を高めたオデットも呼び寄せた熱砂の精を使役し、グリーフを巻き込みつつバグベアへと砂嵐を浴びせかけていく。
「皆、頑張って!」
傍では、エーヴィがイレギュラーズ達の支援をと魔法を使ってくれている。
妖精の彼女達を護るサイズは大鎌に取りつけた謎のユニットから魔力のビーム砲を発射してバグベアどもを撃ち貫いていく。
また、後方警戒しながら、サイズも合間に魔力障壁のみ展開してレッドキャップの奇襲に備える。
「まだレッドキャップは来ないんだね。それなら……」
戦況を確認するウィリアムはバグベアのみを捕捉し、発動させた魔法は雷の投槍の形をとる。
ウィリアムはそれを投げつけ、1体ずつ確実に貫いて毛むくじゃらの身体に強い痺れを駆け巡らせる。
ルーチェも口の中に魔力を収束させ、一気に解き放つ。
眩いばかりの光の奔流が空洞の方へと迸るのに重ね、リリーが呪いを纏った魔法の弾丸を叩き込み、バグベア達を狂気に堕とそうとする。
しばらく、バグベアの殲滅を進める一行だが、グリーフが放った煙幕が晴れてくれば、状況が大きく変わる。
グギャ、ギャギャアアッ!!
そこに現れるレッドキャップ。空洞から出てきた2体が抑えとなるグリーフへと飛び掛かり、鈍い光を煌めかせてナイフを振るってくる。
その狙いは実に的確で、こちらの命を奪わんとしてくる。防壁を張ってなければ、グリーフとてどうなっていたか分からない。
力に優れた秘宝種はそれだけで価値が高い。中に居たレッドキャップもそれを察して彼を優先的に襲う。
「……数が事前の情報より少ないですね」
「少なくとも、あと1,2体はいるはずだよ!」
グリーフの疑問に、エーヴィが応える。
ギャッハアアアアッ!!
その反応を待っていたかと言わんばかりに、外から襲い掛かってくるレッドキャップ達。
「えっ、こっち……?」
奇襲を察したオデットだったが、その数4体。一気に彼女の方へと向かえば、さすがにその対処は厳しい。
オデットは再度、熱砂の精に砂嵐を巻き起こさせるが、それでもレッドキャップは構うことなく突っ込んでくる。
「こっちだ!」
彼女の危機に、防壁が消えたサイズも態勢が整わぬままで庇いに当たるが、レッドキャップの殺傷力はすさまじい。
首と胸部、大腿と深い傷を受けたサイズは運命に抗う力を使ってまでその攻撃に耐える。回復にはエーヴィやウィリアムが当たっていた。
ギャハアアッ!!
レッドキャップの勢いは止まらない。
さらに攻め込む邪妖精達は、空洞に対して入り口側に位置取っていたルーチェを強襲する。
ルーチェも肉弾戦と偽典聖杯から溢れる魔力で応戦するが、虚をつかれたことで対処が遅れて全身を切り裂かれてしまう。
赤く染まったルーチェの身体が地に倒れ込んだ後、今度はリリーの方へと向かって。
「できれば、遠距離をキープしたかったけれどっ」
蝙蝠から邪妖精の接近を伝え聞き、覚悟を決めたリリーは得意のノーモーションから衝術で1体を吹っ飛ばす。
だが、もう1体の接近を避けられず、リリーは振り下ろされてきた刃をその身に深く食い込ませてしまう。
「こっちです。倒せるものならどうぞ」
前方でバグベアを抑えていたグリーフが後退しながらも腕に緑のレイラインが走らせ、強襲してきたレッドキャップを煽ってみせた。
なお、チェルシーがバグベアを素早く倒そうと、自身の安全装置を外してから片翼で旋回しつつ敵を切り裂く。
思った以上にタフなバグベアに、チェルシーももう一撃攻撃を加えるべく片翼を広げる。
その間、狙いから反れたリリーはパンドラを砕きながらも、この場の邪妖精から距離を取っていた。
敵が近距離にまで攻め込んでくれば、メンバー達の立ち回りも変わる。
ウィリアムは識別効果のあるうねる雷撃に切り替える。
それはまるで蛇のようにのたうち回って空洞の内部を駆け回り、この場にいる邪妖精だけを灼いていく。
ただ、レッドキャップも意外としぶといと見て、ウィリアムはもう一撃と魔力を高めていた。
強襲から逃れられたアムルは上手く入り口付近の鍾乳石を障害物とする。レッドキャップも障害物は利用しているが、この場はアムルの方が上手だったようで。
グギギギ……。
「相当イライラしていそうだね」
鍾乳石が邪魔で接近できずにいた邪妖精へと、アムルは駆逐の為の一撃を見舞っていく。
重ねるように、そのうちの1体にリリーが仕掛ける。
安全を確保できるくらいに下がったリリーは圧倒的な破壊力を持つ閃光を浴びせて。
「とにかくしっかりやる事はやる、それがリリーのやり方、だよっ!」
ギャアアアアアアアッ!
魔道銃から炎の弾丸を撃ち込み、レッドキャップの帽子をそいつの青い体液で染めていったのだった。
●
近辺に潜んでいたレッドキャップの数は6体で、すでに1体倒れている。
「今いる邪妖精で全てみたい」
精霊の知らせを聞いたオデットの呼びかけもあり、イレギュラーズ達は邪妖精の討伐を加速させる。
「童話の終わりを刻んで上げる……!」
すでに、数度攻撃していたが、バグベアの体力が限界に近いと悟れば、チェルシーは飛び上がり様に片翼で切り上げ、すぐさま落下して地面へと叩き落とすと同時に敵の身体を寸断する。
グバアアァァ……。
さすがに体を真っ二つにされて生きていようはずもなく、バグベアはすぐに事切れてしまった。
オデットもまたもう1体の討伐に全力を尽くし、無限の紋章を顕わしたままで多数の中規模魔術を連続してバグベアへと浴びせかける。
グ、グアアァァ……。
長引く戦いに加え、連続して叩きつけられた斬撃に魔術。全身から血を流すバグベアは白目を向いて地に伏していった。
「ちょっと休憩! あ、ちゃんと仕事はするわよ? ええ」
敵の討伐を確認し、息つくオデットはしばしイタズラ魔法で場を繋ぎつつ気力の充填に当たっていた。
バグベアが倒れたことで、グリーフも残りのレッドキャップの引き付けに専念する。
「鍾乳石への被害はなんとか食い止められそうですね」
多少、予期せぬ味方への被害こそあったが、グリーフが別に懸念していたのは空洞への被害。
邪妖精達が意図して空洞を破壊することはほぼないが、敢えて鍾乳石ごと仲間を攻撃する可能性は否めないとグリーフは考えていた。
「さあ、もう一息ですよ」
それでも、力任せに破壊するバグベアさえ倒せればどうにかなると、グリーフは残る気力を使って障壁と結界を張ってから名乗りを上げていた。
ギギ……ッ。
レッドキャップどもも鉄壁のグリーフになすすべなく、障壁を張り替えるタイミングを狙うが、悉く防がれてしまって決定打を与えることができずにいた。
対して、イレギュラーズはバグベアがいなくなったことで、レッドキャップに意識を集中させる。
「挟撃はさせないよ」
ウィリアムはバグベアの後方からやってきていたレッドキャップ2体を纏めて雷で撃ち抜くと、バグベアと合わせて攻撃を受けていたそいつらは揃って白目を向いて崩れ落ちた。
残る3体のレッドキャップは鍾乳洞を利用しながら奇襲しようとするが、数が減れば、イレギュラーズ達自身の視線、使役するファミリアー、精霊の存在もあって、隠れるのが難しくなる。
ギギ……!
物陰からサイズへと斬りかかるレッドキャップだが、今度はサイズも障壁を展開済み。
彼は悠然とナイフを受け止め、本体である大鎌を振るってその首を刈り取ってみせた。
「ありがとう!」
礼を告げるエーヴィに、サイズもまんざらでない表情だったようだ。
そのタイミング、同じくアムルもまた外から襲ってきた敵に対し、鍾乳石で翻弄しながら交戦を続けて。
「……そういう戦い方は、よく知っている」
嫌という程叩き込まれてきたと呟くアムルは、遮蔽に身を隠そうとする敵を見つけ出し、強く踏み込んでから音速の殺術でレッドキャップの身体を切り刻む。
………………!!
もはや声にならぬ叫びを上げ、苦しみ悶えてそのレッドキャップは絶命する。
「さあ、君も仲間の後を追わせてあげるわ」
残り1体はチェルシーが片翼から発する魔剣で引き付けていた。
半ばヤケになって無茶苦茶にナイフを振るうレッドキャップへ、気力が尽きていたチェルシーは力を振り絞る。
電流の流れる魔力動力線。それらを繋ぎ合わせた九の鋼糸の鞭でチェルシーは最後の1体の身体を強かに打ち付けた。
グギャアアアア……ッ!!
身を裂かれる一打に耐えられず、赤い帽子の邪妖精は地面を転げ回っていたが、間もなく大きく目を見開いたまま頭上を見上げて事切れたのだった。
●
丘の下の空洞を住処としていた邪妖精を討伐したイレギュラーズ一行。
念の為にと、アムルは隠れている敵がいないかと空洞の中を再確認する。
「放っておけば、またなにかが棲みつくかもしれない……」
そんなアムルと同意見だったサイズは、鉄インゴットを鉄板へと加工し、入り口に蓋をする。
「これで何かが住み着く事もなさそうだし、鉄板が破壊されてたら一目で危険な生物が入り込んだと分かるし」
何かあったら、またイレギュラーズに依頼を出してくれれば、妖精達に被害が及ぶ前に対処できるだろうとサイズは語る。
「うん、本当にありがとう」
それに、エーヴィが感謝を示すと、チェルシーがじっとサイズを見つめる。
「なんだ、チェルシーさん? こっち見て?」
「せっかく平和になった妖精郷だし、お城や街を案内してもらって、ついでに遊びに行きたいわね?」
エーヴィの案内もあってうきうきして街の方へと向かっていくメンバーに対し、オデットは丘を登っていく。
「たまには常春の妖精郷でゆったりするのもいいものね」
彼女は希望する仲間と共に、しばらく丘の上から妖精城を始め妖精郷を見下ろし、のんびりとした一時を過ごすのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは鉄壁の防壁を成して敵を引き付けた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらはサイズ(p3p000319)さんのアフターアクションによるシナリオです。
常春が訪れた妖精郷アルヴィオンで邪妖精の存在が確認されておりますので、また悪さを始める前に討伐を願います。
●目的
邪妖精の討伐
●敵……邪妖精(アンシリーコート)
アルヴィオンに生息し、妖精達に恐れられるモンスターです。
○バグベア×2体
拙作「妖精郷を見下ろす丘で」でも登場した毛むくじゃらの邪妖精。かなりの体力、攻撃力を持ち、体当たり、食らいつき、爪での引っかきを主体に攻撃してきます。
○レッドキャップ×?体
小鬼の姿をした邪妖精で、血に濡れた帽子が赤く染まったことからこの名がついています。エーヴィの事前調べでは3,4体とのことですが、もっといるかもしれません。
小柄な体を活かしてナイフを操り、相手の急所を狙って死に至らしめようとします。
●NPC
○妖精……エーヴィ
身長30センチぐらいの精霊種、12,3歳くらいで青い服を纏った金髪少女。魔法による簡単な回復支援ができます。
●状況
妖精城アヴァル=ケイン、湖畔の町エウィンなどを一望できる小高い丘……ルテニア丘の地下にある空洞に生息する邪妖精の討伐へと向かいます。
規模はさほど大きくありませんが、彼らが数を増やす前に叩く必要があります。
空洞内を進んでいくと、先に遭遇したバグベアを相手にすることになり、その少し後にレッドキャップ達が乱入してきます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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