PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海の殺し屋

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●凶暴な海獣
 波の緩い静かな海面がどんよりと濁った赤色に染まった。
 ぷかり、と浮かぶのは多くの肉片。
 嬲られるだけ嬲られて、捨て置かれた残骸だった。
 一カ所だけではない。
 ソレの通る道に居る海獣は、すべてソレによって淘汰される。

 ――キシャアアアア

 耳障りな金属の様な音が辺りへと響き渡る。
 8メートルの巨体が海上へと踊りでて、獲物を屠り、海の底へと消えていった。


●ネオ・フロンティア海洋王国近海にて
「ぐももも」
 愛らしい鳴き声が海に響き渡っている。
 船に乗っていた幼い少女が、餌を辺りへと蒔くと、鳴き声の主である海獣が嬉しそうにぱっくりと食した。
 海獣ザブーン。
 体長2メートルほどの小さな海獣だ。
 黒い毛並みのつるつるとした身体と円らな瞳が愛らしい、極めて温厚な彼らは、愛玩用として可愛がられていた。
 愛玩用とは言っても、サイズがサイズなため一般市民がペットに出来るわけではないが、こうして海上で触れ合えるようなイベントが人気を博している。
 幼い子供やカップルに大人気スポットとなっている。
「可愛い!」
 幼い少女が楽しそうに、自身を抱え上げる父親に満面の笑みで言うと、父親も嬉しそうに少女を撫でる。
 平和な日常だ。

 けれど、最近、その平和が少しだけ崩れている。

 ザブーンを含めた海獣を執拗に狙う、凶暴な海獣が現れたのだ。
 勿論、生態系の問題もあるので、弱肉強食を攻めるわけではない。
 しかしながら、その海獣は度が過ぎていた。

 必要以上の捕食、そして捕食しないのにも関わらず、ただ他の海獣を嬲り殺めてしまうのだ。

 いつ、人にその興味が移ってもおかしくはない。

 海洋の海上警備隊で警戒はしていたものの、大規模召喚の影響なのか、現在は海域が大荒れとなっていて、完全対処が難しい状態だった。

 そこで出番なのがローレットだった。


●依頼内容
「って事で、依頼だ。あ、我にしては珍しく普通の依頼だから安心しろ」
 そう言って笑うのは、『蛍火』ソルト・ラブクラフト(p3n000022)だ。
 機嫌よさげにニコニコと笑う胡散臭い端整な顔に、少しの苛立ちを君たちは覚えたかもしれない。
「ソルベ・ジェラート・コンテュール卿からの依頼だ。この時期、どうやらあの国は観光客が多くなるらしくてな。海上警備隊が居るのである程度は対応できるらしいのだが、大規模召還の影響なのか海域が荒れていて、彼らだけでは手が回らないらしい。頼みたいのは、首都リッツパーク付近だそうだ」
 現在、ローレットの拠点は幻想中心ではあるが、有力者であるソルベ卿と繋がっておけば、今後の依頼にも幅が出る。
 ローレットとしては大歓迎なのだろう。
「で、今回の依頼の詳細だが、今海を荒らしている大型鮫の海獣の討伐だ。海の殺し屋って言われているのだよ。普通、生態系の弱肉強食だけなら口は出せないんだが、どうも暴れ方が問題とのことなのだよ。食べるだけならば問題ないのだろうが、生態系を崩す勢いで捕食している上、最近は喰らうわけでもないのにただ殺めているらしい。……懸念として、いつ人にその興味が移ってもおかしくはないからな。今の所、人は死んでいないが、最悪な結果となる可能性もあるからな。ま、そういうわけだ。こっちに怪物詳細が描いてあるから、あとで詳しく見てくれ。ちなみに今回は海の上の戦いだから、準備は万端にしたほうがいいと思うのだよ。では、よろしく頼む!」

 あ、今回はついてこないんだ?

 そう君が尋ねた所、ソルトは満面の笑みで親指を立てた。
「我は泳げないのだよ」

GMコメント

海獣依頼です。
純粋な戦闘依頼となり、海の上での戦いとなります。
大きめな船を一艘貸して貰えるため、移動手段には事欠きませんが、戦闘は海の上でとなります。
船の上からでも攻撃や補助は一応可能ですが、不十分となります。
なお、罠の設置は有効です。

●海獣(海の殺し屋)
8メートルほどの巨大鮫の海獣です。
手当たり次第に辺りの海獣を殺害しています。
今の所人間は殺していませんが、このままだと人間を狙うようになります。
身体は大きいですが、素早く、海の中での機動力は高いです。
しかしながら、小回りは効かないですし、視界も狭いです。
血の匂いに敏感で、傷ついた物を優先的に狙います。

攻撃は近接のみ。
・体当たり
・尾の一撃
・噛みつき
の3つです。
体当たりと尾の一撃には吹き飛ばし効果があります。

  • 海の殺し屋完了
  • GM名ましゅまろさん
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月06日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール

リプレイ

●海の上での戦いの心構え
「こんなおだやかな海だってのに、殺し屋、とは物騒だねぇ」
 煙管を燻らせながら、『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)が呟く。
 同じ海で生まれ育った存在を殺すのは気分のいいものではないが、その凶暴性と海洋への客足に影響があるとすれば、仕方ない事として受け入れるつもりだ。
「生きるためなら仕方ないけどあきらかにやりすぎだよね生態系が狂っちゃう。直接人的被害が出なくても食料だとかで打撃を受けるからね。はい、僕のご飯が残念になる可能性があるので許しておけないよ!」
 『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は、そう気合を入れた。
 美味しいお魚を食べるためにも、今回の戦いは譲れないのだ。
 緑は、そんなムスティスラーフに苦く笑った。
「はぁ〜。ったく、海洋での初仕事が8mの化け物ザメの討伐とは……。 剣振り回すしか出来ねぇ俺に何しろってんだよ」
 その隣でため息をつきながら、頭を抱えたのは『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)だ。
 普段近接で戦うアランにとっては、海の上は不得意であった。
 戦えない事はないものの、地上戦ほど上手く立ち回るのは難しいだろう。
 今は、まだ。
「私はサメ殺しの英雄じゃないけれど、これだけ人数いれば一人ぐらいはそういうの得意な人もいるからきっと大丈夫だよ!」
アランの様子を楽しそうに見ていたのは『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)だ。
「もし誰か食われたら……供養は任せろ、バリバリー!」
 バリバリは鮫に食べられる音らしい。
「クソが、あー! クソが! やってやるやってやる! 海で炎が使えなかろうが俺は勇者だ!」
 リンネの言葉に顔をしかめたアランがそう叫んだのを見て、『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)が落ち着いて、と宥める。
「確かに海の戦いってあまりなかったからね」
 呼吸不要を持ってきてはいる悠ではあったが、やはり海での経験には乏しい。
「しかし、警備隊でも対応しきれないほどの大荒れ、ですか」
 穏やかな水面を見下ろしながら、考える様子で眉に皺を寄せたのは、『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)だ。
「海洋の現状は少々気が滅入ります。今回の件が悪化した場合も含めて笑い話にもならないですしね」
 幻想での依頼がメインのため、海洋の実情には皆疎いものの、今回のような ケースは未来視しやすい事もあり、問題点も分かりやすかった。
 海の殺し屋の出没地域へと船を止めながら、快晴となった空を見上げる。

●海の殺し屋
 今回の作戦だが、海の上の戦いがメインとなる。
 海の殺し屋は海の中でしか活動をしないため、いくら挑発をしても、船の上に乗り上げる事はないが、しかしながらそれでも、集まったメンバーは海の中で行う戦いを警戒している者が多かった。
「ミアより泳ぎ得意なディープシーもいる……のに、海に入る子少ない……の。まぁ……怖い……にゃよね」
 8mのサメサメにゃし、と続けるのは『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)。
「うん、僕もさ、海っていういつもと違う、しかも相手の縄張りに行くわけだから、実はちょっと怖いんだけど……。これから海洋から依頼が来たら、そういうことも多いだろうから、頑張って慣れていかないとね!」
 愛らしい翼をぴるぴると震わせた『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)が自身を鼓舞する様に明るく言った。
 実際の所、陸地以外の戦闘経験はこれから積んでいくしかないのだ。
 ミアは、そうにゃよね、と笑いながら罠を設置するために荷物を広げた。
 持ってきているのは海獣の死肉に、干し肉を吊るした仕掛けだ。
 アランも罠の設置を手伝う。
 今回は、出没海域内で、隠れられる岩場の多い場所にサメ海獣を誘き寄せる作戦だ。
 網は事前に用意していたが、強度に不安を感じたアランはロープで器用に網を作っていく。
「お前さん、器用だね、意外と」
 縁が、その様子をおかしそうに見て言った。
「意外とってなんだ、意外と」
 少しだけ膨れたようにアランが縁を睨むように見た。
 と言っても、別に本気で怒っているわけではない。
「しかし、雑な作りだが本当に上手くいくのかこれ……不安だぜクソが」
 自身で作成しておいてアレだが、アランは勇者であって決して罠師や漁師ではないため、若干の不安を抱えていた。
 ロープで船から転落しないように体を縛りながら、リンネが快活に笑った。
「ま、メインは捕獲じゃなくて討伐だからさ。一時的に動きが止まればOKだって」
「鮫って聞くと、なんか霊体になったり首が増えたり、トルネードしたりとかありそうなんだけど。ないよね……ないよね?」
 動きが止まれば、とのリンネの言葉に悠がずっと考えていた事を呟くと、メンバーが顔を見合わせた。
「さすがに、それはない、と私は思いたい、ですね。それにさすがにそんな目立った能力があれば教えてくれるのではないか、と思います、が……」
 フロウが安心させる様にそう言ったが、依頼を持ってきたのがソルトであったため、皆の中に若干の不安が生まれた。
「……信じたいけど、あの人だとちょっと不安だよね」
 用意した空の樽を、戦闘になる区域にいくつか投げ込みつつ、ムスティスラーフが顔を引きつらせた。
 普段の行いは大分大事である。
「こほん! ムスティスラーフ君の、その樽は何をするの?」
 場を漂う微妙な空気をニーニアが、破る。
 ムスティスラーフが用意した樽の使い道に興味があったらしい。
「ああ、これは、水中での行動が難しくなった人や戦闘不能者の退避場所として使えるようにするためだよ」
「なるほど。確かに海の上だと、陸地みたいには行かないもんね」
 賢い戦法と言えるだろう。
 ニーニアは感心した様子で海へと視線をやった。
 そして、メンバーたちで協力し合いながら、作成した罠を海の中へとゆっくりと入れていく。
 この設置の間に殺し屋は現れなかった。
 そして、幸運にも殺し屋が現れたのは、すべての準備が終わったそのすぐ後だった。

●その海獣凶暴につき
 穏やかだった海の水面が、ゆっくりと脈動を始めた。
 ぴりり、とした空気が辺りへと浸透する。
「殺気、ですね」
 悠が、苦く低い声で言った。
 獣らしい、隠れない殺意の波動だ。
 狩りをする鮫であれば、そういったものはコントロールする筈なのだろう  が、どうやら海の殺し屋は、すでにそういった行動を取る気はないのだろう。
 真正面から周囲の生き物を屠るだけの存在だ。
「船の上からサポートするぜ」
 ディープシーである縁だったが、基本的には海の中に入るつもりはなかった。
 彼にも色々と事情があるのだ。
 だが、周囲のメンバーが彼を咎める事はない。
 各々に事情がある事を、皆分かっていた。
 リンネもまた、戦場でのサポートメインの活動をするつもりだ。
 エネミースキャンの力ある眼で、海面へと現れた鮫を捉える。
「うっわ、さすが大きいね……!」
 怯えではなく、感嘆の声をリンネは上げた。

 殺し屋がその巨体を大きく揺らし、海へと勢い良く潜った後、船へと身体を叩きつけたのは、そのすぐ後だった。

「おっと……!」
 リンネが僅かに衝撃でよろけたのを、縁が支える。
「気をつけな」
「ありがと!」
 殺し屋は血の餌である死肉に惹かれながらも、船に乗っているメンバーが自身にとって敵である事は理解していたようだ。
「では、私は海の中へと行きます」
 船上で青いランタンに点火したフロウは、人魚形態へとその姿を変え、海中に降下した。
 それに頷きながらニーニアが低空飛行で海面をすべるように飛んだ。
 ムスティスラーフもまた、自身で設置した樽の近くを陣取りながら、不思議な力によって海面をすべるように切っていく。
(ミアも怖くないって言ったら……嘘になる……の。でも、お友だちがくれた……このレールガンが、ミアを守ってくれる……の)
 用意していたゴム手袋を身に着けながら、ミアもまた海の中へと飛び込んだ。
「初使用……ちょっとドキドキ……にゃ」
 レールガンを撫でながら、きりりとした眼差しで殺し屋を見つめる。

 ――絆が自身に力を与えてくれる、そう信じて。


●海という舞台
 海底に設置された罠に、殺し屋は確かにかかっていた。
 死肉を貪り、その巨体を揺らしている。
 しかし、かかっているとはいえ、それはあくまで行動の妨げにはなっているだけであり、殺し屋の動きをすべて封じているわけではない。
(さすがにあの巨体を完全に鎮静化はできない、ですね)
 距離を開けながら、フロウがマジックミサイルの詠唱を始める。
 海中の岩陰に身を潜めたミアもまた、フリーオフェンスを使い、遠方からオーラキャノンを放った。
 気配を遮断した上で死角から放ったその一撃は、鮫の巨体へと直撃する。
 最初から海の中に入るのはこの二人しかいない。
 近距離への対応が的確にできる準備をしているのはミアだけだ。

 ――負けないにゃ!

 鮫の肌を傷つけた一撃により流れた血が辺りへと漂う。
 鋭い鮫の目が、ミアを捉える。
 水面の中、聞こえないはず殺し屋の咆哮が、水面を大きく揺らす。

 フロウのマジックミサイルが、ミアだけではない、と主張する様に鮫へと遅いかかる。
 小回りの利かない身体は避けることはしなかった。
 しかし、その動きを止めることはなく、身体を邪魔する罠のロープを忌々しそうにしながらも、二人へと襲い掛かった。

 その巨体に見合った尾が、鋭くフロウへと放たれる。
 十分に開けていた距離は一瞬にして詰められ、フロウの身体は後ろへと弾き飛ばされた。
 当たる寸前に流した一撃は、致命傷とはなり得なかったが、ミアを孤立させる程度の働きはしたようだった。

●会場の戦い
 船は無事だった。
 揺れはしたものの、その船体には傷はないらしい。
 水面の中は、海の上からははっきりとは見えないが、味方が使用するスキルの光が海面へと反射しており、味方がまだ無事である事は分かる。
「やっぱり二人で海の中はきつかった、かな」
 悠が、SPOを手にしながら、海の中を見つめる。
 縁が事前に分けておいた死肉を手にしながら、眉を寄せる。
「とはいえ、無暗にスキルがない奴が入るのも危険だろうから、な」
 そうは言っても、最悪の場合は中に入ることも辞さない構えではある。
 事情があるにしろ、水中親和を所持している上、海では有利の種であるのだから。
 罠の管理をしているアランも同じ心構えだった。
 ただ、彼は海の中で有利になる種ではないため、本当に苦しい時、という前提ではあったが。
「それにしても、海の上からだと、下手に攻撃できないね」
 リンネが困った様子で、乾いた笑いを浮かべた。
 大まかな位置は分かるものの、さすがに巻き込むわけにもいかない。
 海の上にいる以上は、本当にサポートに徹するしかない様子だった。

 海面すれすれを飛んでいたニーニアは、ヴェノムクラウドを海の中に発生させた。
 直撃させるのではなく、罠のような形に使用するつもりでの使用だった。
 海の底で戦っている二人が有効活用してくれれば、とそう願って。
 ムスティスラーフは、名乗り口上を使用し、自身の血によっておびき出そうと考えていたが、海の中で明確な戦闘を行っている現状では、その誘いには鮫は誘導されない。
 さすがに目前の敵意を無視してまで、僅かな血液に突進する程にははいかなかった。
 殺し屋は海面にその姿を決して現さない。
「海面に上がってこない、ね」
 ニーニアは難しい顔で海の底へと視線を送った。
 
 だが、この作戦に従事しているメンバーは皆、あえて陸地や水面上での戦闘も作戦に含めた理由を、ちゃんと認識している。
 いくら水の中で動けるとはいえ、相手は海の魔物だ。
 そう、完全に同一の条件で戦えないのなら、こちら側が有利になるような陣地を作れば良い。

●海面への誘い
 水中から、海の殺し屋が視覚できるようになったのは、それから15分程経過した後だった。
 フロウの合図が海中から上がったすぐ後、傷ついたミアが、海面に設置された樽を足掛かりに船へと着地する。
「だ、大丈夫?」
 リンネが慌ててミアの傷を癒す。
 ミアの後を追うようにフロウも海上に顔を出す。
 ミアほどではないが、やはり傷は深かった。
 悠のSPDを受け、その傷を癒すと、フロウもミアも再び海の中へと入っていった。
 水中に入った二人によって受けた傷で激高した鮫が、苛立たし気に船へと体当たりを繰り返す。
 それを見ながらニーニアが素早く、用意していた網を船体付近に設置した。
 低空飛行でその付近へと移動したムスティスラーフは、鮫の意識が乱れているのを確認し、背後から狙いを定め強襲をかける。
 告死による一撃に、鮫が空気を震わせるように金切り声をあげた。
 ニーニアの網に引っかかった鮫が、もがくように身体を船体へと叩きつけるが、そう簡単に絡まった網はほどけないようだ。
 それならば、と再び水中へと逃げようとするのを、リンネが素早く察知した。
「そいつ逃げようとしてる!」
 拮抗している現状を打破するため、その言葉にアランが海へと飛び込んだ。
 水面に近い所での戦いならば、呼吸が続く。
 じっくりと時間をかける事は間違いではないが、戦いは海の中だ。
 万が一日が沈んでしまった場合、有効な光源はない。
(クソッ……思ったより速ぇな……!)
 身体に絡みついた網があり、なおかつ水中でミアとフロウが牽制しているとはいえ、さすがに海の中が生活の場である鮫は素早かった。
(でもここいらで仕留めねぇと、勇者の名前に傷が付くんでねェ!!)
 そして、海の中には、先ほどまで船上にいた縁も居た。
 船が揺れた際に、落ちた、というような苦々しい表情を浮かべた縁は、落ちたのならば仕方ない、と武器を構える。
 仲間の一人に鮫の攻撃が集中しないよう、キャラタクトBSで一撃を加えては、距離を取る。
「こんなおっさん食ったら腹壊すぜ、でっかいの!」
 鮫の一撃を柳風崩しでかしつつ、鮫を翻弄すると、鮫がその牙を軋ませる。
 船上からの悠とリンネの援護を受けながら、確実に仲間たちは鮫を追い込んだ。
 劣勢を悟った鮫が逃げようと回転するが、ムスティスラーフがそれを阻んだ。
「魔王からは逃げられないんだって、知ってた?」
 冗談めかしたその言葉が鮫へと通じたかは不明だが、進路に放たれた遠術に その動きは一瞬だが停止し、追い打ちをかけるようにニーニアの遠術が、鮫の横っ腹に直撃する。
 悠のSPDもそれを逃すまいと炸裂した。
 そして、海の底深くへと逃げられなかった鮫は、その動きを次第に遅くしていった。
 海の中の仲間も傷ついてはいる。
 だが、イレギュラーズにはリンネと悠の2枚の回復があるのだから、ここまでくればあとは時間の問題だった。
 そうして数刻の間、戦った後。
「これでラストだ!」
 弱々しくなった鮫の体を、アランのクラッシュホーンが押しつぶし、鮫の体はその鼓動を永久に止めた。

●平和になった海
 海の殺し屋の体を、仲間で協力して船体へと引き上げる。
「重いね、さすがに!」
 リンネが疲れた、といった風に肩を落とした。
「……今日は釣りをする気力もありません」
 フロウが苦く笑い、腰を下ろした。
(折角の首都近海を楽しみたい所ですが、心身ともに余裕がないです)
 前半のミアとの二人での海中戦は中々にハードだった。
 ミアもまた、疲れた様子で船で休んでいる。
「そういえば海に毒薬ぽいぽい投げたわけだけど、汚染とか大丈夫だよね?  なんか嫌な予感がしたし、調合はちょっと気を付けておいたけど」
「大丈夫だろ」
 船の上で濡れた服や帽子の水を絞って乾かしながら、アランが言った。
「ったく、こういう時に替えの服を持ってこなかったのが辛い……。しかもやけに疲れたな……サメはもう勘弁だ 」
「服を瞬時に乾かすスキルがあれば良かったね」
 ニーニアが、はは、と笑いながら言うと、水中に入ったメンバーが「違いない」と同意した。
「ああ、そうだ。こいつのヒレを貰ってもいいかい?」
 縁が、鮫の近くに座りながらそう言うと、ムスティスラーフが不思議そうに首を傾げた。
「何に使うの?」
「いやなに、おっさんは食わねぇが、丁度うち(ギルド)の店主がスープの材料が切れたってぼやいてたんでな」
「うわ、何それおいしそう」
 リンネが瞳を輝かせた。
 鮫のヒレを使ったスープは中々の珍味なのは広く知られている。
「ああ、なんかその話聞いてるとお腹すくにゃ~」
 長時間の戦闘でくたくたなメンバーは、確かに、と笑う。
「せっかくだから、この辺りで夜ご飯なんてどう?せっかく、普段来ないところだし」
 悠が提案すると、メンバー全員が頷いた。
 断る理由もないし、せっかく仕事を一緒になった縁なのだから、と8人は帰路へとついた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
長期入院してしまい、リプレイが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
体調管理に気を付けたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。

海の中の戦いはいかがでしたか?
いつもと違った戦いが、私はとても新鮮でした。

ありがとうございました!

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