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シナリオ詳細

<Rw Nw Prt M Hrw>狂人と敗者はワルツを踊る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●敗者は語る口を持たず
 ファルベライズ中核部で起きた戦闘に於いて、ハンス・キングスレー(p3p008418)は大鴉盗賊団の一人である“絶音”リッドの捕縛に成功していた。と言っても、彼が期待していた程の情報は持ち合わせておらず、かと言って彼らに反抗的な態度をとってあわよくば脱獄しようとする――という空気でもない。つまりは、「切り捨てられた敗残兵」にすぎないのだ、彼は。
「とりあえず、知ってる事は吐いて下さいな」
「……手前ェ等の方が詳しいんじゃねえか。俺はあの奥になにがあるか知らされちゃいねえ。けど、まあ噂は聞いてる。俺の部下もどうせ『死に損なって』るだろうよ。それにヴィヒトの馬鹿が馬鹿やったんだろ? アイツは後先考えねえ類の馬鹿だ。ほっときゃ出てくるだろ。……で、だ。ハンス、俺を遺跡に連れて行け」
 知らない、とは言えどそれなりに話を耳に入れている様子のリッドはハンスに視線を向けると、冗談の色が一切見えない表情でそう提案する。周囲は当然動揺を隠さない。いくらなんでも、大鴉盗賊団の元団員を仲間に引き合わせるなど愚策も愚策。下手すれば仲間を扇動して反旗を翻すことだって考えられた。
 が、ハンスはそんな奇想天外な提案に首を縦に振る。
「首輪つきでいいなら。どうせ逃げる気も無いでしょう?」
「色宝の効果は知ってるし、ほしいのは真実(マジ)だぜ。だがな、死に損なった馬鹿を殴り倒すのは引っ張り回したやつの責任なんだよ。お前ェだってお師匠? あのガキが死んで紛い物が出てきたら殺すだろ」
 死にそうにねえけどな、と肩をすくめた彼を見るハンスの表情が険しいのは、そんな想像をさせようとしたリッドに対する明確な敵意だ。
 ともあれ、彼の言葉には一定の説得力がある。少なくとも敵としてハンスやイレギュラーズと対峙する気はなく、動く理由も我欲ながらに信頼できるといえるもの……斯くして、イレギュラーズ達はリッドを同行させる形でクリスタル遺跡、その最奥へと足を向けることとなる。

●彼らは死してなお、我等は生きながら
「リッドの兄貴ィ、やっぱアンタは『そっち側』だったんだな」
「下らねえ二元論で人を分けるのは辞めろっていっつも教えただろうがレゼル。ロゼはどうした」
 そして、クリスタル遺跡最奥部。嘗てのリッドの部下達の姿をとった『ホルスの子供達』がこちらを照準した先で、彼の部下だった男――レゼルと呼ばれた男は長大な鉄棒を振り上げた。それは先端部が開き、大鎌の形を成して持ち上げられる。
 そして、リッドが『ロゼ』の名を呼んだ瞬間、周囲から複数の『ホルスの子供達』が新たに出現した。それらは全て『ロゼ』の顔をしている、とリッドはぼやいた。ハンスは、レゼルの足元に転がった亡骸と、その身を裂いたであろう得物を持つ狂人然とした大鴉盗賊団の面々を見た。
「味方とか敵とかかじゃなくてさ。この人はもう僕の玩具だから、僕抜きで話さないでくれるかな?」
「そうかよクソガキ。じゃあお前も兄貴もロゼと同じになりな。俺達も後を追ってやるよ」
「そこらで歩いてる連中を殺して色宝を回収しねえのは何でだ、レゼル。手前が死んでも誰も呼ばねえぞ」
 鼻を鳴らして前に出たハンスを殺しかねない眼光で射抜いたレゼルの言葉は、常軌を逸したそれである。
 リッドの問いに、レゼルは答えなかった。なぜなら、周囲のタイプ『ロゼ』ごと、彼らを殺すべく襲いかかってきたのだから。

GMコメント

●達成条件
・ホルスの子供達「タイプ・ロゼ」の殲滅
・『鳴り物入りの』レゼル及び大鴉盗賊団員(狂気)の撃破
・(オプションA)ロゼの亡骸の確保
・(オプションB)レゼルの不殺フィニッシュ

●『鳴り物入りの』レゼル
 大鴉盗賊団の一員で、リッドの元部下。
 他者を善悪・敵味方・その他大雑把な二元論で分けがちな若い男。
 自らも大鎌で他者を真っ二つにすることを信条としている。
 HPはそれなり高く、命中と防技高め。
・両断(物至扇・流血・必殺)
・刃飛(物遠範・喪失・攻勢BS回復)
・クレセントダンス(物近域・魅了・致命・封印)

●大鴉盗賊団員×10
 レゼルの部下。リッドとは多少面識がある。
 狂気状態に陥っており、前後不覚(目についた相手に積極的に攻撃する)に陥っている。麻痺などの行動阻害系BSの付与された近接攻撃をメインとする。
 所持武器は大体がナイフ。一部ウォーハンマー(物攻CT高め)持ちがいる。

●ホルスの子供達「タイプ・ロゼ」×20
 レゼルの同行者であった女性「ロゼ」の姿に似通ったホルスの子供達。
 特殊なBS付与のスキルは持たぬが通常攻撃に虚無1を有します。
 基本的に話しかけても記憶を持ち合わせていないので意味のある返答をしません。

●“絶音”リッド
 友軍。元大鴉盗賊団幹部。
 登場シナリオ:『<Raven Battlecry>音もなく、現実があるのみ』など。
 現在はハンスさんが身元引受人として一時的に(協力前提で)外に出てきています。
 それなり高い反応、相手の反応速度に依存したダメージを与えるカウンター技、反応型なら持っていそうなアクティブスキルは一通り揃えています。得物はなし(素手)。

●戦場
 クリスタル遺跡最奥部。
 そこそこ広く、戦闘に不利になる要素はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Rw Nw Prt M Hrw>狂人と敗者はワルツを踊る完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

リプレイ

●彼女と謂う花は咲かずに散った
「まぁ? 別に良いんだけど? 依頼でもあるんだし。飼い犬の初めてのお願いな訳だから……応えてあげるよ」
 『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)はリッドとレゼルのやり取りを聞いて肩を竦めた。どちらもいい大人であろうに、どちらも現実と理想の擦り合せができずにいる。自分が『調教』したリッドの方が幾分かマシ、というのは笑えない冗談だ。
「つまりあの曖昧さとか余白とか、そういう情緒もへったくれも無いような男を止めれば良いんでしょう?」
「……ん? 今ハンス変なこと言わなかった?」
 『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は、ギルドの仲間が何かと因縁深い相手と轡を並べて戦うという展開そのものには異論なかった。寧ろ、悪くない、とさえ思っていた。……のだが、ハンスの口ぶりがなんだか可笑しい。変な単語が聞こえた気がするが、仲間の名誉のために利かなかったことにした。
「ふむふむ、若者同士のぶつかり合い……燃えるな。心は二十代だが、身体は四十路な俺にとっては眩しく見えるぞ」
「嘗ての敵と共に戦うなんて大胆な事するよね。僕はそういうの嫌いじゃないけども!」
 『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)と『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)の2人からすれば、現状の複雑な(それでいて単純な)相関関係は童心を擽るものなのだろう。こと、トウカのような趣味人には眩しいものに映るのも無理からぬことだ。……多分、ことは単純なものなのだろうから。
「リッドに何があったかは知らないし興味もないけど、ハンスが良いなら好きにすれば良いんじゃない?」
「ふむ、何やら複雑ですが、目的は敵の全打倒、であればやることはシンプル極まりない。思惑までは分かりませんけど、お手伝いさせていただきますか」
 『黒の猛禽』ジェック・アーロン(p3p004755)と『地上の流れ星』小金井・正純(p3p008000)の2人にとって、リッドはそもそも『敵組織の元幹部』、要は信用ならない隣人でしかない。それでもハンスが手綱を握り、協力姿勢を崩さぬのなら利用価値がある、という程度の。
 然るに、利用価値があるなら利用する。彼の持つ因縁さえも、賭け代にすぎないといえよう。
「さて…気色悪ぃ大量の同じ顔。顔。顔。たっく、何を拗らせたらコイツが平気になるんだ、童貞か?」
「童貞じゃねぇよ。ロゼ(こいつ)がヘタこいてやらかしやがったんなら殺すしかなかったって話だ。死んでも利用価値ぐらいはあるからな、そいつらの暴力のはけ口ぐらいにはな」
「俺ぁお前らがどんな関係でどんな風に過ごしてきたのか知らねえが……あぁ、くそ…何もかも気に食わねえな!」
 『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)は居並ぶ『タイプ・ロゼ』の有様に心底不快そうな顔を見せた。こんなものを前に平気で居られるなら、成程女というものを知らぬのだろうという言葉も一理ある。
 が、レゼルはすげなくそれを否定し、野卑たなりの部下達に目配せした。殺すも壊すも、実力が伴う限りは自由にすればいい。その思想すら狂気の一端を担いでいることに、当のレゼルすらも気付いていない。
 『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)はその愚かさに、その狂気に言いしれぬ怒りを覚えた。
 『ホルスの子供達』がどれほどのものかは、他ならぬ彼が一番良く知っている。そして、そんなものを前に本物を見ようともしないレゼルの有様が、どうしようもなく濁っている、歪んでいるようにみえた。
「あの馬鹿野郎にどこまで言葉が聞こえてんのかは知らねえが、殺さなくても話が通じるならそれに越したこた無えよ。一発ブン殴りてえから手ェ貸してくれや」
「全く……仕方ないなぁ」
「事情をよく知らないおっさんとしては邪魔をしないようにしたいけど……尚更、周りの雑音は引き受けないといけなさそうだな」
 リッドが拳を握ったり開いたりを繰り返しつつ身構えると、ハンスとトウカはそれぞれ仕方ない、といった様子で応じた。こと、ハンスはリッドを引っ張り出した身として彼を死なせるわけにはいかない。正気を失ったレゼルの実力は未知数。さっさと倒してしまったほうが、きっと全てにとっていいはずだ。
「さあ――しっかり着いてきなよっ! リッド!!」
「精々俺のケツを追っかける情けない真似はすんなよ、『ご主人サマ』?」
 ハンスの意気込んだ声に、リッドは鼻を鳴らしながらそう応じた。彼の言葉にどれほどの『威力』があったかは定かではないが、ハンスは明確な不快感を眉根に刻んだ。

●花咲く時は
 リッドはその場の仲間を後ろに置き、レゼルへと向かう経路上、そのうちの『ロゼ』1体へと苛烈な蹴りを叩き込む。ピンボールさながら弾き飛ばされた相手を顧みず、背後に向けて指先で指示を飛ばす。先に行け、と。
「気に食わないな、本当……!」
 ハンスはプラック、そして錬と視線を交わして一斉に動き出す。錬はリッドが拓いた道を、ハンスとプラックは中空を一直線に駆けると、レゼルが鎌を振り上げるより早くプラックが立ちはだかり、ハンスを庇う。
 ハンスは素早くロゼの遺体を抱えあげると、錬へ向けて投げ飛ばす。落下地点ドンピシャに待ち構えた錬はさらに先んじて生み出した式神へと投げ渡し、指先で出口を指差して脱出を促した。
「悪いが、俺はピンチの時ほど燃える性質(タチ)でね」
「なら、直ぐにでも死なせてやるよッ!」
 防御姿勢のプラックめがけ振り下ろされたレゼルの鎌は、しかしプラックのガントレットに阻まれ、鈍い音を立てた。かなりの威力があったのは確からしく、受け止めたプラックも渋い顔をする。だがそれでも浅い。ハンスを庇うには十分。
「"それ"があるならもういらないんだろう? こっちは必要なんだから乱暴な男の元には置いておけないな!」
 錬は式符により生み出された炎の大砲を『ロゼ』らに向けると、一気に炎弾で一掃せんとする。『ロゼ』達は錬目掛け襲いかかる者もいるが、軽々にその肉体を傷つけられはしない。
「八つ当たりで悪いがよ……叩き潰すぜ!!」
 ルカは『黒犬』に破壊の言霊を乗せ、当たるを幸いに乱撃を叩き込んでいく。錬によって燃え盛る炎を薙ぎ払うようなその動きは、彼が持つ暴力性の発露としてこれ以上なく、的確。
「……ああも不調法に偽の死者を乱造するのは気に食わないからね。少しお灸を据えさせてもらうよ!」
 カインは錬の手で傷つけられた『ロゼ』達目掛け神気閃光を放ちつつ、盗賊たちの動きに目をやった。初速の速さに目が追いついていないようだが、それでも手近に居る相手へと群がり、一気に押しつぶしてしまおうという雰囲気は感じられた。それは『ロゼ』も例外ではなく、『ロゼ』にとってもそれは同じだ。
 つまりそれは付け入る隙があり、同時に乱戦となる状況……と、いうこと。
「この状況だと彼にはなかなか近づけないね……仕方ない、近くの相手から倒していこうか!」
 トウカの目的は単純に、レゼルを挑発しその行動を阻害することにあった。リッドやハンスは敵が動き出すより早く接近できたが、乱戦と化した現状ではそうもいかない。大上段に振り上げられた盗賊のハンマーを桜の木刀で受け止めると、彼は鬼血により生み出した蛇腹剣で相手を打ち据えた。仲間達が隙を生むまででいい。今は先ず、目の前のことへと意識を割くように。
「皆が大分痛めつけてくれたけど、ほっといたらこっちに来るよね……厄介……」
 ジェックは『ブラック・ラプター』を構えると、ゴーグル越しに演算を開始する。遺跡の奥地に風は無い。仲間の位置も想定通り。レゼルから遠ざかった現状、一番厄介なのは……こちらを狙おうとする『ロゼ』達だ。
 銃口(かなづち)から放たれた弾丸(くぎ)はロゼ達の持つ土塊の肉体も、盗賊達のなけなしの防具も無視して貫き突き進む。カランと音を立てて転がった弾頭は、傷つき倒れた『ロゼ』の残骸に圧し潰された。
「この祈り 偉大なる狩人、星を撃ち落とせし英雄に奉る――」
 正純は天狼の星に祈りを捧げ、『天星弓・星火燎原』を媒介として地の底に神威を顕現させる。
 広範をカバーする能力でありながら、その精度と威力は凡百の術式とは明らかに格が違う。
 畢竟、それは傷ついた多くの『ロゼ』と盗賊達を地に伏せさせるに足るということ。それでありながら『殺さぬ』技術であるところに、彼女の慈悲が見えようか。
「ハンス!」
「承知したよ、プラックさん! ……ほら、後は殴り倒してやるだけだよ兄貴?」
 プラックとハンスは呼びかけと目配せだけで次の動きを示し合わせ、互いに数歩、レゼルから引き下がった。それに合わせて呼びつけられたリッドは苛立たしげな表情で2人に並び立ち、浅く呼吸を吐いて身構えた。
「手前等も好き放題ブン殴りゃいいじねえか。どうせ、考えあってのことなんだろ?」
 レゼルは最早、怒りが先行しまともな言葉を吐き出す余裕がないように見えた。3人をまとめて薙ぎ払うかのように鎌を振り上げ、叩きつけてくる所作を受け、プラックはハンスを庇い、リッドは鎌の先端に身を晒した。
 巻き込まれた『ロゼ』の胴、腕などが抉られる。未だ五体満足だった盗賊の何人かが深々と傷を負い、欠損せぬまでも激しい出血を強いられた。
 ……出血したのは、それらばかりではなく。
 一瞬の隙をついて放たれたハンスの『空踏』が深々とレゼルの胴に突き刺さり、同時に顔面にリッドのカウンターが打ち込まれたのだ。
 意識が乱れたレゼルの窮地は、それで終わらず。
『いやー、大鎌とはかっこいい武器を選んだな若人よ!
 俺が全ての悪を断つ! とかの中二病なセリフが似合いそうだよな大鎌!
 うんうん、分かるぞ。おっさんも昔はノリノリで技名を、断! 罪! 叫んだりしてたな。
 ……成長すると黒歴史になるけど強く生きてお前さんが信じた道を切り開け。
 何だったらいい包帯や眼帯の店を教えるぞ……ただ、反抗期だからって兄貴をぶった切るのは止めような』
 先程までレゼルへの接敵が叶わなかったトウカが、ここにきて相手の前進と敵の減少でレゼルを間合いに収めたのだ。
 獄相として浮かび上がった文様が魔力を通じ形を成し、彼の感情ごとレゼルへと届けるに至る。……それは、音に出さずとも苛烈にすぎる『煽り』である。
「…………ク、ソ、野郎がァ!」
「感情的になったら負けるって習わなかったか?」
 激情を吐き出したレゼルに呆れたように返した錬は、生み出した氷の薙刀で盗賊共々『ロゼ』を薙ぎ払う。破れかぶれにも思える土塊人形と盗賊の動きは、だが軽々には止まらぬ凄味があった。
「頑丈なのが取り柄みたいだけど、数が多いことが災いしたね。これじゃ鴨打ちみたいなものだよ」
「できれば無駄に殺したくはないけど……その辺りは皆に任せるよ」
 ジェックも潤沢な精神力を駆使して居並ぶ敵を纏めて撃ち抜いていく。20を数える『ロゼ』達は、それに続けてカインの放った神気閃光でかなりの数、動きを止めた。
「深追いしてくるようなら容赦はしませんよ。『ホルスの子供達』もあなた達も、生かしておく理由を持ちませんから」
 正純は、動きを止めた者達で息がある者は容赦なく射っていく。さりとて盗賊達を無為に殺す腹積もりではなく、飽く迄『ロゼ』を完全停止に追い込まんが為ではあるが……乱戦のなかでどうこう言えた話でもなく。
「殺す……!」
「ハハハッ、若いな、若い! その殺意、図星だったらしいな!」
 大鎌を手に一気に間合いを詰めてくるレゼルを、トウカは迎え入れるように目の前の『ロゼ』を殴り倒す。
 胴を横薙ぎにした一閃は、しかしトウカへと与えた傷は望外に少ない。続けざまに振り上げられた斬撃も、精度は高いが彼を退けるほどではない。……そして、その位置は。
「オイオイ、そりゃあ俺の得意距離だぜ?」
 誰あろう、ルカの間合いだ。栄光の一手を介し、続く直死の一撃を辛うじて鎌を掲げて受け止めたレゼルはしかし、それでも立つ気力は十分といった風情だ。トウカの2度目の挑発に耳を貸さず、構え直した鎌の動きは鮮やかな三日月の乱舞を描いて2人のイレギュラーズを攻め立てる。
「リッドは今もテメェの味方だっつーのによ!」
「……ったく」
 ルカの言葉に、リッドは頭を振った。そんなつもりはない。そんな事を言えた義理ではない。だから、口にする気はなかったのに。それでも、多分、もう遅い。
「この、クソ馬鹿野郎がぁぁぁ!!」
 振り上げられた鎌が降りるより早く、ハンスの一撃が背後から胸部目掛け打ち込まれる。身を挺して鎌を受け止めたプラックにあわせるように、ルカの強撃がレゼルの顎を撃ち抜いた。
「悪ぃな、手前等。でも、これでいい」
 リッドは戦闘不能となったレゼルと間合いを詰めていく。狙いは首筋。これ以上、見苦しい真似はさせまいと。
 彼は弟分の命さえ、禊と贖罪に費やそうとし――。

●今日という日の花を摘め
「……ガンビーノつったか。何の真似だ」
「さぁな。何の真似なんだろうな」
 リッドの手首を掴み取ったルカは、苛立ち混じりに問いかけるリッドにため息まじりにそう返した。
「お前がやったことの責任、ケリつけるのは間違っちゃいねえよ。
 ただ何となく、お前がそいつを殺して終わりっつーのは……気分よくねえなって思っちまったんだよ」
「死なせちゃくれねえのかよ。負けた奴は死ぬべきじゃねえのか」
 ルカは何をいうべきか、を只管に迷っていた。軽々に言語化できるものではない。自分で幕を引くのはいいだろう。間違っちゃいない。だが、命を落としたら、『答え合わせ』も出来やしない。レゼルは、そんなやり取りに失望したように吐き捨てた。ルカをひと睨みしてから手をおろしたリッドは、しかしその態度に激昂する。
「手前ェはまだそんなことを――!」
「拗らせすぎなんだよ、アンタは」
 プラックは、そんなレゼルの顔に己の顔を近づけ、噛みつかんばかりの距離で威圧した。立ち上がる気力も、反撃の力も残っていないことは、正純がすでに把握している。そうでなければ近づかせることすらしなかっただろう。
「そこの女が何したのか知らねえけど、殺しちまったら終わりだろうが。アンタだってそうだ。だったら死なせていいワケがねえ」
「これから沢山叱られて悔い改めなきゃいけないんだから、まだ死ねないよね」
 プラックの言葉に継ぐようにしてカインが告げると、レゼルは呆然とした顔でうつむき、それきり声を発することはなかった。嘆き悲しむことも、きっとこの男には出来まい。
「……嫉妬って言うのかな、ああいうの」
「ああいうのは『素直じゃない』っていうんですよ、きっと」
 遠巻きに眺めていたジェックは男達の道理というものが皆目理解できなかったが、正純は――遠く海の向こうの彼の抱えた葛藤を近くでみた者として――少しだけ、その道理がわかる気がした。

成否

成功

MVP

プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。盗賊の全生存こそ叶いませんでしたが、ほぼほぼ全てのオプション達成となります。
 敵が多く乱戦基調だった為、射程がかなり長くないか超速攻、撃破が進んだ中盤移行じゃないとレゼルに辿り着けないのはよくある話なのですが、それらの対策をだいたい全部打たれた(超速攻の連鎖行動、充実した範囲攻撃、超貫大火力)のでかなり早めに戦闘の展開が進んでいます。
 無罪放免とはなりませんが、ちょっとはリッドの対外的心象も良くなった……かもしれません。
 ご参加、ありがとうございました。

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