シナリオ詳細
僕の村を守って
オープニング
●迫りくる巨獣
ズシン、と響く音。大地を揺らす音。
ズシン、と響く音。草木を砕く音。
4つ足のその巨体は、亀にも似ているだろうか。
竜頭の亀。その巨獣……いや、モンスターは眼下のものなど気にしない。
ズシン、ズシン。何もかもを踏みつぶして。
ズシン、ズシン。何もかもを砕き固めていく。
大きい。ただそれだけで、何と恐ろしいことか。
重い。ただそれだけが、なんと強いことか。
あらゆる全てを踏み砕きながら、巨大モンスター「ドラゴタートル」は前進する。
その先にあるのは、1つの村。
まだそこに辿り着くのは時間がかかるだろうけども。
破滅の足音は、着実に迫っていた。
●僕の村を守って
「巨獣ドラゴタートルが、とある村へ向かって進んでいるらしい」
情報屋の男は、そう切り出した。
巨獣ドラゴタートル。巨大な亀のモンスターであり、ドラゴンの頭部を持つ……亀だ。
断じてドラゴンではない。念のため。
しかしドラゴンであろうとなかろうと、ちょっとした小山ほどはあろうかという巨体の脅威が消えるわけではない。
何もかもを踏みつぶさんと迫るドラゴタートルの大きさはそれだけで脅威であり、進行方向にあるものを全て踏みつぶしてしまうのだから。
そして今回、ドラゴタートルの進む先には1つの村……ブーレ村が存在していた。
農業が盛んなその村ではあるが、今は名産であり、この時期に旬を迎えるキノコ「ブーレ茸」の収穫が迫る時期であった。
「……ブーレ茸は不思議なキノコでな。このブーレ村のある場所で、しっかりと畑として人間が世話をしてやらなければ育たない、そういうキノコなんだ」
つまり、村を放棄してしまえばブーレ村の人達の収入が消えてしまい……命は助かっても、別の命の危機ということだ。
だからこそ依頼が来たのだと、情報屋はそう教えてくれる。
「ドラゴタートルがブーレ村に到着するには、まだ十分な時間がある」
ブーレ村と、その周辺に広がる広大な畑。
その更に周囲には広大な草原があり、そこを踏みつぶしながらドラゴタートルが迫りつつある……というのが今の状況である。
何処に防衛線を敷くのか、どのタイミングで仕掛けるのか……話し合うべきことは多くあるだろうし、その時間も十分にある。
「見事ドラゴタートルを倒した暁には、通常の報酬に加えブーレ茸を使ったキノコ鍋を振舞ってくれるらしい。この時期の高級品だからな……味わう価値は十分にあるだろうさ」
それと、もう1つ伝言がある……と情報屋は言う。
依頼人の村長の息子からの、一言。
「僕の村を守って……だ」
俺からも是非お願いする、と。
情報屋はそう語るのだった。
- 僕の村を守って完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年02月13日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●平和な村に迫るモノ
ブーレ村。ブーレ茸という特殊なキノコの栽培で生計をたてている、そんな小さな村だ。
村の周囲はブーレ茸専用の畑になっており、この時期は収穫を待つブーレ茸が大量に生えている姿を見ることが出来る。
出来る……のだが。そのブーレ茸に今、危機が訪れているのだ。
そしてその原因は今、ブーレ村からでもしっかりと見る事が出来ていた。
ドラゴタートル。その名を与えられた巨大なモンスターが今、ブーレ村へと迫っているのだ。
「とても巨大だとは聞いていたが、改めて実物を目にしてみると……アレは無理だな。今すぐ村は放棄してこれからどうするべきかを話し合った方がいいんじゃないか?」
ズシン、ズシン……と。村に迫るドラゴタートルの足音が響く。
その巨体は、遠くから見てもなお「大きい」と感じるほどのもので……『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)の台詞は、ある意味で妥当なものであるように感じられた。
「まあ依頼は依頼だ。受けた以上きっちりやるが……」
キノコ鍋だけでは個人的に割にあわねぇ。駄菓子でいいから甘い物も何か追加しておいて欲しいところだ……などと世界は思う。
そう思ってしまう程度には大きく……そして村に到達した時の被害が大きそうな相手だったのだ。
家から出てきてざわざわと心配そうに囁きあっている村人たちの姿も、世界に多少のやる気を出させる要因にはなっているだろうか。
「いやー、あんなデカイ魔物と戦うのは初めてだな。攻撃しがいがあるな」
「歩くだけで災害級って、とんでもないわねー。いったい今までどこにいたのかしらー?」
ズシン、ズシン、と音が響く。
まだ遠くに居るというのに、不動 狂歌(p3p008820)や『お料理しましょ』嶺渡・蘇芳(p3p000520)の身体の芯まで響くような衝撃が伝わってくる。
アレが此処まで到着したらどうなるのか。
畑が蹂躙されるのは間違いないし、村も完全に踏みつぶされるだろう。
それだけのパワーをドラゴタートルは秘めている。それを狂歌たちはその身で感じていた。
「出来るだけ村に被害は出したくないし、早い段階で攻撃を仕掛けちゃおうかしらー」
「そうだな……作戦開始時間を早めたほうがいいのかもしれない」
まだ余裕はある。あるが……ブーレ村の村人たちの不安と天秤にかける問題ではない。
それを分かっているからこそ、狂歌と蘇芳は頷きあう。
「あの……大丈夫でしょうか。私達の村は……」
依頼人である村長の不安そうな言葉も当然といえば当然だろう。
自分たちの依頼に応え来てくれた者たちにそんな事を言うのも失礼だとは分かっている。
分かってはいるが……それが不安を消す理由になりはしない。
「問題ありません。村にも畑にも、被害を出させはしません」
「お、おお! そうですか……!」
『蒼雷玉』アスル=トゥルエノ(p3p009254)の返答に村長は明らかにホッとした様子をみせ……しかし、響くズシンという衝撃に「ひえっ」という声をあげる。
ゆっくりではあるが、ドラゴタートルは確実に村に近づいてきている。
この状況に晒されているというだけで、村人たちの心労が如何程か……それをアスルはしっかりと感じる事が出来ていた。
「そこに困っている人達がいるのなら、向かわないという選択はあり得ません。行きましょう、景護!」
言いながら『曇り知らずの高気圧龍姫』八剱 真優(p3p009539)は、自分の武器を握る。
「私達で、村も村人さん達も明日への希望も、全て守るのよ!」
その叫びに応えるは、矢矧 鎮綱 景護(p3p009538)。
「ええ、必ずや。この剣の全力にて」
2人の誓いは、この場に集う全員の想いと一致している。
それが伝わっているのだろう。
真優と景護……そして、その場に集った者達に、村人たちは応援の声をあげるのだった。
●ドラゴタートル
草原に、風が吹く。ドラゴタートルとその迎撃者の戦いに影響するものは何もない快晴の空の下、大きな足音が響いている。
ズシン、ズシンと。
村の周囲の畑へと迫るドラゴタートルの姿。
そこに近づくことで、その威容は嫌でも理解できるようになってしまう。
「でっっっかーい! やっぱモンスターって大きいのばっかなんだなぁ……よーし、気合い入れてくよっ」
しかしそれでも、『幽霊少女』ホロウ・ゴースト(p3p009523)の気合の入った声には、気負いは感じられない。
村人たちの誰もが脅える巨体を前にしても脅えないのは、その経験故なのか。
分からないが……頼りになる精神状態であることは確かだった。
そして……ホロウのその余裕には、あの巨体と真正面からぶつかるだけの作戦ではないということも含まれているのかもしれなかった。
「うわぁ……おっきいなぁ……! けどこっから先へは行かせへんでっ…!」
そんな呟きを漏らすのは、『ティア大好き』月待 真那(p3p008312)だった。
自身の機動力だけではなく超視力をも駆使して偵察に走っていた真那だが、こちらを気にもしないドラゴタートルに有利と思われる位置取りをするのは容易だった。
妨害らしい妨害もなく、陣地構築で塹壕を作る余裕すらもあった。
……まあ、それもドラゴタートルが真那をなんとも思っていないのか、あるいは見えてすらいないのか……その辺りが原因であるのは間違いないだろう。
そして、潜んでいるのは真那だけではない。
アスルも草原に潜み、ドラゴタートルを待ち構えている。
此処は、村からも畑からも離れた場所。
つまり……此処で戦っても、村には何の影響も出ないということだ。
しかし逆に言えば……アスルたちの作戦が失敗すればブーレ村、ひいてはブーレ茸に深刻が被害の出るのを誰にも止められなくなるということでもある。
「村への到達がデッドラインです。最悪、畑への到達は避けなければいけません。その前に、何としても食い止め、殺します」
だからこそ、武器を握るアスルの手にも力が入る。
此処でなんとしてでも止める。
その最初の一手……長距離からの不意打ち。
「いまや!」
真耶のマーナガルム・ロアーから放たれるMGR・フルバースト。
マガジン内の弾を全弾撃ち尽くすかのような射撃は轟音を響かせて。
「……いきます」
ほぼ同時にアスルのIndradhanusからもボルトスパイクが放たれる。
電磁加速された砲弾はドラゴタートルへと向かっていき……そして、2人の強烈な攻撃がドラゴタートルに見事に叩きこまれる。
「……!?」
声すらあげずに、しかし自分が攻撃されたということにドラゴタートルが気付いた、その時。
世界の設置していた精霊爆弾が炸裂音を響かせる。
「村に被害を出す訳にはいかないからな。倒させてもらうぜ!」
「眼下の物を気にしないなら、気にされない内に叩き斬っちゃうわよー」
狂歌がドラゴタートルの右足を狙ってギガクラッシュを、蘇芳がブルーコメット・TSを放つ。
「まずは足狙い! ここで食い止めるわよー」
「ああ、しかし……思った以上にタフみたいだな!」
「なら、ここで追撃!」
ホロウのSPO……スペシャル・ポーション・オフェンスが投擲され、ドラゴタートルの表面で炸裂する。
「毒撃なのだっ」
口を開けてる時とか、体内に入るように投げ込めたら嬉しいなどと思ってはいるが、今のところそんな隙はなさそうだ。
少し残念に思いつつも、ホロウは次なる攻撃のチャンスを狙っていく。
「すまぬな! 俺はヒトなれば! 貴殿の敵である!」
景護の鬼哮が放たれ、そして真優が、世界がサポートに入っていく。
だが、ドラゴタートルとてやられるばかりではない。
自分が攻撃された。それを理解すると同時にドラゴタートルは戦闘機動に移行する。
ズン、と。自分の足元にいる狂歌を踏みつぶすべく踏みつけを行い、ギリギリで回避されたことに怒りの感情をみせる。
「くっ……!」
「薄くて柔らかくて斬り落としやすい所を狙えないかしらー」
狂歌と蘇芳がひきつけている間にも、真那とアスルの次なる射撃が放たれる。
「そんなにおなか減ったんならこれでも喰らっときぃっ!」
「狙撃を継続します」
「畑が踏み荒らされたら生活が苦しくなっちゃうもんね! そこに届く前までに倒さないとっ」
そう、ホロウの言う通り。ブーレ茸を守ることの重要性は、この場の誰もが分かっている。
「重いな……流石の巨体だ。だが、こちらの背負うものも、その甲羅には負けぬよ」
「いかな大亀とはいえ、無限の体力ということはありません。私達の後ろで怯えている村人達のためにも、成し遂げましょう!」
景護の、そして真優の声が響く。
そう、守るものがある。だからこそ、その巨体相手でも引きはしない。
響く轟音、そして連携の前に……ドラゴタートルはやがて、なすすべなく地面にその巨体を横たえたのだった。
●ブーレ茸でパーティーを
ドラゴタートルは倒れた。
その巨体をどう処理するかという問題が残ってはいるが、ドラゴタートルを食材を見る目で見ている蘇芳がいるので、然程問題はなさそうだ。
まあ、ドラゴタートルははたして食用になりうるのかという問題が残ってはいるが……今は、それはさておこう。
解体するうえで厄介そうな共生生物たちもすでに駆除済であり、「すごいデカいものが村の近くにある」という問題以外は、今のところ問題はない。
ブーレ村も、ブーレ茸も……確かに救済されたのだ。
だからこそ、響く。盛大な歓声が響く。
「うおおおおおおおおお!」
「ばんざーい! ばんざーい!」
「村が、キノコが救われたんだ!」
「ありがとうございます!」
どれだけお礼を言っても足りぬとばかりに響く、ブーレ村の住人達の歓声。
「ま、なんとかなった……か」
少しばかり疲れたな、と世界は軽く肩を鳴らす。
周囲では世界たちの勝利を祝福するためのブーレ茸鍋の準備が進められており、なんとも素晴らしい香りが漂い始めている。
「ご飯は食べなくっても平気なんだけど……キノコ鍋はやっぱり美味しそう〜!」
「ええ、美味しいですよ! それに、ただのキノコ鍋とは違いますとも!」
ホロウに言いながら、ブーレ茸を抱えた村人が走っていく。
「ブーレ茸、希少な食材との知識があります。ですが、他の茸とどのような差異があるのでしょうか?」
「そりゃ色々ありますがね……何より味ですよ、味!」
「味、ですか……」
「ええ、あとはお楽しみってね!」
「ブーレ茸のお料理、本当に楽しみー♪」
味、と呟くアスルの隣にきていた蘇芳の言葉に村人も笑顔でこたえ、バタバタと走っていく。
そうして出来上がったブーレ茸鍋は……それを前にしているだけで誘惑的な香りを放つ……そんな鍋だった。
「これが、ブーレ茸鍋……」
「ブーレのきのこ……! ん~……っ! 噂には聞いてたけどええ匂いやぁ~……っ!」
その香りを吸い込んだ狂歌が呟き、真那が喜びの声をあげる。
まだ、寒さが続く時期だ。ブーレ茸鍋のあげる湯気と香りは、これ以上ないくらいの食欲を呼び起こす。
「さあ、召し上がってください! おかわりも幾らでもご用意できます!」
「そんなら、早速……!」
一番に口をつけた真耶は、早速とばかりにブーレ茸鍋を咀嚼する。
「もきゅもきゅ……ぷぁ~~‼ 美味しいっ‼ これだけでも頑張った甲斐があるってもんやなぁ~♪」
「参考になるわー」
本当に美味しそうに食べる真耶だけではない。アスルもアホ毛を動かしながら満足げな様子をみせているし……蘇芳も、何度も頷いているのが分かる。
これが村の生命線であり、そうなるだけのポテンシャルを持っているという事実をしっかりと伝えてくる……そんな味だったのだ。
「あのあの、お土産にキノコ買って帰りたいんやけど売ってたりします!?」
「……定期的にとは言わないけど、今後何時かお取引できるように、お話もしたいわねー」
「ハハハ、皆様方であれば喜んで。割引にだって応じますとも!」
村長のそんな言葉だったが……ちょっとアスルがビックリする程度には値段が高い。
「ほら、景護も遠慮なく。村の皆様のあんなにも明るい笑顔も、貴方の献身あってこそなのだから」
「はっ。皆様との協働あればこそ、かと」
そんな主従の会話をしている真優と景護も、ブーレ茸鍋に舌鼓をうつ。
「キノコ鍋、おいしいね!」
「うむ……うまい!」
ホロウの、景護のそんな言葉が響いて。
「えっ……そんな高いん……? あぁぁぁ! もっと味わって食べるんやったぁ!」
アスルの絶叫と村人たちの笑い声が響く。
「ちゃんとあの亀ちゃん達も、解体して余さず使ってあげないとねー」
何やらちょっと怖い……いや、命に感謝する素晴らしい台詞が聞こえてきた気もするが。
こうして、ブーレ村を襲った脅威は解決されたのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
コングラチュレーション!
皆様の活躍でブーレ村とブーレ茸は無事に守られました。
村人からの惜しみない賞賛は、皆様のこれからを輝かせる一助となることでしょう。
GMコメント
■勝利条件
ドラゴタートルの撃破
■フィールド
ブーレ村とその周囲の広大なキノコ畑。
その周囲は広大な草原が広がっていますが、ゆっくりとドラゴタートルが踏みつぶしながら向かってきています。
■敵データ
・ドラゴタートル×1
すごいデカい竜頭の亀。
家一軒程度なら歩くだけで踏みつぶせます。
デカく、タフです。
戦闘モードに入った時には踏みつけによる攻撃の他に炎を吐く攻撃を使うようです。
・共生生物×3
ドラゴタートルの甲羅にくっついているヤドカリもどきみたいな生き物です。
甲羅に乗った場合に襲ってくるでしょう。攻撃方法は突進攻撃、ハサミです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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