シナリオ詳細
【頽廃世界グノーシス】とある男
完了
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オープニング
●【頽廃世界グノーシス】
そこは既に滅んだ世界だった。生物がいないわけではない。そして人間は存在していたし、なんなら今も『いるにはいる』。
なら何が滅んだのか。それは簡単である。人間が長い時間をかけて築き上げてきた文明が滅んだのだ。その原因ははっきりとわかってはいない。
廃墟。人間がいなくなった事によりあらゆるものに手を付けられるはずもなく。そのあらゆるものが劣化し、崩壊する。そして蔦や樹木といった植物がそこらにはびこり、動物達もかつての人間の住処に立ち入り、自らの住処とした。
更には異常気象でもあったのだろうか、冬でもないのに雪が積もっていたり、道路が水浸しになっていたり。地面が崩壊した場所――地下街や地下鉄があった場所も水が溜まっている。
まさしく頽廃世界。文明が滅んだ場所。だが、その光景は幻想的というには充分な場所だった。
●ある一人の男
そんな世界に人間の男がいた。他に人間はいないようだ。
「やあ、やっと見つけたよ」
不意に誰かに呼びかけられたその男は驚きつつも振り返る。
境界案内人のミヤコだ。
「ああ、急に呼び掛けてすまない。驚かせるつもりはなかったんだ」
聞けば境界図書館という、こことは違う世界から来たらしい。彼女が何を言っているのかよくわからないが、そんな事はどうでもいい。
「で、君の名前は?」
――名前。この世界にたった一人しかいないというのに、そんなものにどれほどの意味があるというのか。
肩をすくめるミヤコ。
「一人ぼっちで寂しくないかい?」
寂しいも何もそんな事を思ったところでどうしようもない。
「そうか……。ふむ、ならば他に人を呼ぼう」
……人?胡乱げに返す男だったが
「私と同じように『外』から来た者達だよ」
一人でいても退屈なだけだろう?と言われたが男は余計なお世話だ、と言わんばかりだ。
だが、ミヤコはそんな男の様子におかまいなしにその場を離れていった。
――特異運命座標。彼らならこの男になんらかの変化を与えられるかもしれない。この男の言う通り余計なお世話だろう。確かにただのお節介だ。だがそれでも。自分はこの男を放っておく事ができなかったのだ。
- 【頽廃世界グノーシス】とある男完了
- NM名アルク
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年02月08日 17時00分
- 章数1章
- 総採用数12人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
頽廃世界グノーシス。グノーシスとは元いた世界では確か宗教思想の一つではなかっただろうかと首をひねる『期怠の新人』灰羽 裕里(p3p009520)。それに倣うとしたらこの男ーージョン=ドゥの名前は。
「君はヤルオバオト、或いはデミアルゴス、なのか、な」
かたや偽の神、かたや世界の創造者とされている者達の名前である。所詮は異世界の神話の話だが、とは裕里の弁ではあるが……
俺に聞かれてもね、と男は肩をすくめる。そして自分の名前の候補として聞いておく、とも。
それに動物とか植物とか調べるのは面倒だからやりはしないが、見て回るだけなら気楽にできそうだ。もしかしたら自分が知ってるものもあるかもしれない。そしてこの男に興味があるのもまた事実。だから共に行こうとのお誘い。
「君、は、どうする?」
男としても断る理由はない。もちろん男の答えは
ーーいいよ。
成否
成功
第1章 第2節
滅びた世界。その荒れ方を見れば第三次世界大戦でも起きたのかと疑いたくもなる。それに情報にはあったとはいえ、本当に人っ子ひとりいない。静寂の世界。いや、いるにはいるのだが。とある男――ジョン=ドゥが。
「ねえジョン=ドゥさん、これどうしちゃったの?」
あー、言いたくないんだっけ、あっはっは!と豪快に笑う郷田 京(p3p009529)。
そんな京に男は若干うっとうしそうだが京は気にした様子はない。
「まあしょげないでよ、ラストヒューマン?探してみよーぜ、もう一人くらい居るかもじゃん?」
さあ、ほらほら、レッツゴー!とえらく積極的に背中を押そうとする京には男も戸惑いの声を上げるばかりである。
「なんにも見つからないかもしれないけどさ、止まってたって意味なくない?」
人間なのに進まないと生きながら死んでるのと同じではないか。
その言葉に男はただただ無言で返すしかなかった。
成否
成功
第1章 第3節
文明が滅んだとしても残るものがある。いずれ朽ちゆく運命だとしてもそれまでに保護すればいい。本を集めるのが趣味だという『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)はジョン=ドゥの今後になにか役立つはずだから共に探しに行かないか、と誘いをかけた。
本を?と男ーージョン=ドゥは首を傾げる。
「ファッション誌なんかは流石に直ぐに役に立つ訳じゃないけどレシピ本は君の食卓に彩りを与えるし物語は心を豊かにしてくれるから集めて損はないと思うんだ」
それに異 世 界 の 本 を 無 駄 に す る な ん て と ん で も ん な い!
目を丸くしている男を見て我にかえるルネ。こほん、と咳払いをひとつ。
「失礼、つい声を荒げてしまった」
それで。本がある場所に何処か心当たりはないかな?
成否
成功
第1章 第4節
「なるほど。崩壊した世界、ね」
世界を渡り歩いた経験のある『蒼穹の戦神』天之空・ミーナ(p3p005003)は似たような世界を別の場所で見ている。
「……で、えーと。名前がないんだっけかあんた。」
そうだ、と返す男。それゆえのジョン=ドゥ。名無しの権兵衛。
名無しの権兵衛、と呼ぶのも人の名前としてどうなのか。だからといって自分にネーミングセンスがあるわけでもない。とはいえ呼びにくい。
「ん、んー……とりあえず、海(カイ)って呼ぶぞ。いいな?」
巨大な水たまりである海と書いて『カイ』と読む。
なぜその名前に?と問われれば。
「なんでって、海は命の源だっていうんだ。自分が生きてる、命あるって自覚するならそれがいいだろ」
母なる海。すべての生物はここから始まったとされる場所。ならばこその海(カイ)、だ。
そして散策でも、と男――海を誘うミーナ。
「ああ、何かあっても心配すんな。大抵の事は私がなんとかしてやるよ」
実際周りには野生動物はいてもそんなに危険な生物はいない。それにミーナ自身も強いのだ。その辺の動物相手に後れを取るようなことはないだろう。
それに他に何かあったとしてもなんとかなるような。そんな空気を纏うミーナに海は頷いた。
成否
成功
第1章 第5節
「崩壊?…ここ明るい!緑もたくさんあるし」
『癒やしの魔法人形』シェリオ・アデラ(p3p007986)が元々住んでいた場所は今いる世界、グノーシスよりもっと暗かったらしい。
崩壊と言われても自分にはよくわからないが、元の世界には人間はほとんどいなかったと思う。いたとしても魔女か自分と同じ魔法人形ぐらいなものだ。
君は?と男に問われれば、自分も魔法人形だ、と答える。作成者の魔女曰く、『拾ってきた少年の死体』を素体として使ったらしい。
「ところで何て呼んだらいい?」
名前がないのも聞いていたし、本人に何か希望はないだろうか。そう思って聞いてみたはいいが、男は首を横に振るばかりだった。
「……んー、とりあえずぐっさんって呼ぶ!」
ぐっさん?確かに首を傾げたくもなるがどうやら『グノーシス』から取った名前らしい。
「とりあえず、お近づきの印に紅茶飲む?」
成否
成功
第1章 第6節
滅びを迎えた世界。ここがどういう世界なのか、興味の尽きない『狐です』長月・イナリ(p3p008096)。ジョン=ドゥ以外の動植物や、この世界の歴史を観測出来れば、稲荷神様もきっと大いに喜んでくれる事だろう。
「もちろん貴方(ジョン=ドゥ)も観測対象よ?」
男が語らずとも自分がこの世界を調べ上げ、1片の残滓すら残さず観測し、記録させてもらう!と意気込むイナリ。そんなイナリに男が若干引き気味であるのはやむなしであろう。
そんな男は置いとくとしてまずは衣食住をなんとかせねばなるまい。この男に死なれても困るからだ。
雨風防ぐだけならその辺の廃墟を使えばなんとでもなる。が、野生動物がいる以上はどこでもいいという訳にもいかないだろう。
服に関しては使えそうなものや防寒着を持ち込めばいい。
食料は自分のギフトでそれこそどうにでもなる。
「動く穀物庫(自称)である、私が居れば食糧事情なんで万事解決なんだから!」
なぜそこまでしようとするのか。そう言いかけて男は口をつぐんだ。理由はさっき聞いたばかりだ。
男の事を含め、この世界をよく知りたいのだ、と。世界や自分についてここまで興味を持たれるとは思っていなかった男は何か思案しているようで――?
成否
成功
第1章 第7節
崩壊した世界のたった一人の生存者かもしれない男。自分がやりたい事といえば男――ジョンさんを元気づける事。
「こんにちはジョンさん、私はフォルトゥナリア・ヴェルーリア。気軽にヴェルって呼んで!」
そう気さくに挨拶する『新たな可能性』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)。まずはジョンの来歴を知りたいのだとヴェルーリアは言うが。顔を一瞬顔をしかめたが多くの人を助ける仕事をしていた、とだけ教えてくれた。ただ、それ以上は教えるつもりがないようで黙り込んでしまう。
他にも知りたい事はあるが、今はこれ以上はどうしようもないだろう。
この世界には謎だらけである。それはおいおいわかるとしてもジョンさんにしたい事はないかと尋ねるヴェルーリア。無論それを手伝うつもりでいたが、今はないと断られてしまった。
が、そのうち手伝ってもらうかもしれない。そう一言添える男であった。
成否
成功
第1章 第8節
重く張り詰めた空気。まさに一触即発。
何事かと問われれば。『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)がグノーシスについて情報を無理矢理聞き出そうとしているのだ。
本来であればなぜ滅んだのかなど興味はない。だがそれを秘密にされると気になる。
だから何が何でも聞き出すつもりだ。この男のご機嫌取って心を開くまで待つなどと、そんな生ぬるいやり方はしない。
手っ取り早く痛めつけて吐かせればいいのだ。
それは相手がただただ弱ければそれも容易であったろう。
たった一人しかいないような世界で生き続けた男が果たして弱いだろうか。
命の危険に晒されながらも、なおも生き続けたこの男が果たして弱いだろうか。
威嚇術。殺しはしない。
それを躱し、投擲されるナイフ。
そのナイフを弾こうとするが
「!?」
そのナイフから突如噴き出す煙。煙幕だ。
軽く舌打ちするメリー。だがこれで終わらすつもりなどない。すぐにまた見つけ出してやる。
成否
成功
第1章 第9節
滅びた世界。それはまるで未知なる遺跡を探検しているようで冒険者としてわくわくする。『蒼銀一閃』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)は目を輝かせつつも男ーージョン=ドゥの元へ来ていた。
「ねぇ、ジョンさん…で良いの?」
この世界の事、気にならないわけがない。色々と聞いてみたい事はある。が、無理に聞き出すつもりはない。それに自分はここに来たばかりというのもあって冒険がしたい。
「私冒険者なんだ!あ、冒険者ってわかる?」
ーーそれはさすがに知っている。
それと。滅びた世界とは言うが、ここにはきっとこうなるまでの物語があったはず。そして今も、この世界も、貴方もこうしてここにある。ここにいる。なら、ここからまた始まるものもあるのではないだろうか。そう、私は思う。それにここに来た私の胸の中にも、思い出として残るのだ、と続けるシャルレィス。
「……なんてね」
少し照れたように頬をかく。そして誤魔化すかのように
「さて、あの建物にはどんな物語があったのかな?探検探検れっつごー♪」
探検へと向かったのであった。
成否
成功
第1章 第10節
ジョン=ドゥ。少し前に情報を聞き出そうとして逃げられてしまった。『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は痛めつけるのを諦め、別の方法でそれを得る事にした。
つまり、リーディングであの男の心を読み取るのだ。リーディングを使えば心を読み取ろうとした事がバレるがそれはそれで好都合。人間は『考えてはいけない』と思えば思うほどそれを考えてしまうものだ。
問題があるとすれば、そのスキルに対抗する為の方法がないわけではない。それを本人が持っているかどうかは疑問ではあるが、それはいずれ分かるだろう。
それにしても相手を逃さないよう、他にも手段を講じて来たのに男が見つからない。ここを離れ、遠くへ行ってしまったか。近くにまだいると踏んでいたが。
ここは廃墟とはいえ大都市。おまけに地の利はあちらにある為、探すにしても限界がある。おまけにあの男も警戒しているだろう。見つけ出すのは容易ではない。ーー手強い。
成否
成功
第1章 第11節
ジョンさんは人を助ける仕事をしていたのか。そして今のところ手伝って欲しい事もないと。『新たな可能性』フォルトゥナリア・ヴェルーリアは、ならば病人を助ける医者だったのだろうかと思案する。
ならば病院を探して探索をしてみよう。
「ジョンさん、この街の病院の場所を教えてもらうことはできるかな? ちょっと探検したいんだ」
ならば、とジョンはいくつか場所をピックアップしてメモに記してくれた。
そして病院。ここならカルテや病気に関する資料が色々と揃っている。ならば何か見つかるかもしれない。
とはいえ、病院一つ調べるにしても勝手がわからなすぎる。そもそも病院の場所が分かったところで、どこに何があるのかわからないのだ。これは虱潰しに当たるしかないが……。
ただその探索の中で見つけた資料。一つ気になったのが『動植物化症候群』。中は何が書いてあるのかさっぱりわからない。だが嫌な予感はする。あの男が何か知っているといいが、それは機会があればその時に。
成否
成功
第1章 第12節
『動植物化症候群』。『新たな可能性』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は嫌な予感がしていた。字面からすると何かが動物や植物と化すものだろう。察するに、その『何か』とは人間だ。
この病気が一体なんなのか。あの男が知らないとは思えない。だからこそ医療知識を身につけてきた。必要ないのかもしれないが、より詳しくこの病気について知りたいのだ。
「『動植物化症候群』っていうんだけど何か知ってる? 良ければ教えて欲しいな」
ーー知らない。
にべもなく答える男だが、それが嘘だと分かってしまう。
きっとこの男は諦めてない。たった一人になってそれでも生き続けて。滅んだ世界を救う手段を何かしら持っているのではないだろうか。
だとしたら。自分は、私はそれを手伝いたい。勇者ってそういうものだと思うから。
そう心に強く決めたヴェルーリアだった。
成否
成功
第1章 第13節
「それで?彼らとの交流はどうだった?」
悪くはなかった。ただ、物騒な奴もいたけどね。
それを聞いて苦笑するミヤコ。把握はしている、対応策を考えてみよう。
名前。
「うん?」
名前、聞いただろう。自分の名は海(カイ)。漢字の海と書いてカイ。
「そうか。それでは私もカイと呼ぼう」
それで、これからもこの廃墟に?と尋ねれば。
いいや、この都市を離れようと思う。
「なぜ?」
……何かをもう一度しようかと。それがなんなのかまだわからない。ただ、ここを離れる時は君達にもう一度来て欲しい。頼めるか?
「もちろんだ」
快く承諾するミヤコ。彼らもまた快く引き受けてくれるだろう。きっと。
これからもちょくちょく様子を見にくるから、と言葉を残しこの世界を去るミヤコであった。
NMコメント
●『頽廃世界グノーシス』
『現実世界』の近未来。ポストアポカリプス。文明が滅び、人工物が動植物や水、雪といった自然に侵食されています。
そのおかげで幻想的で美しい風景が広がっておりますが……。
●男について
このシリーズにおけるキーパーソン。
名前はありません。NO NAME。
暫定的にジョン・ドゥという名前でシナリオを進めますが
皆様が名前を付けていただいても構いません。
その中から男が特に気に入ったものを名乗ります。
※ジョン=ドゥ→名無しの権兵衛
●場所とできる事
皆様は今、ある大都市の廃墟にいます。
都市にありそうなものならなんでもあります。倉庫なんかにある食料は……あてにしない方がいいでしょう。
散策するもよし。狩りをするもよし。魚だっています。場所によっては泳げます。水はきれいです。普通に飲めるぐらいに。美味しい水です。
もちろんジョン=ドゥと何かをするもよし。
●補足
人を昔のように溢れ返させる、というような事は
流石に無理ですが
しかして皆様は特異運命座標。
可能性を紡ぐ者。
皆様の行動次第では小さな変化が起こる可能性があります。
世界のどこかに他に人間がいるかもしれない。いないのかもしれない。
ジョン=ドゥと関わる事で男の心情になんらかの変化があるかもしれない。ないのかもしれない。
ただ、この世界が崩壊した理由を尋ねると男は口を閉ざします。少なくとも今は。
ただ単に思い返したくないのかもしれません。あるいはその理由に自分が関わっているのかもしれません。
ジョン=ドゥと何かやりたい事があれば遠慮なくどうぞ。
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