PandoraPartyProject

シナリオ詳細

布地多めの格好でいくと失敗する依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●なんて深遠で意義深い仕事なんだ(ぼうよみ)
「リカ、私は『アクエリア諸島の開拓に邪魔になりそうな狂王種を倒す意義深い仕事』と聞いていたのですが?」
「何も間違ってないでしょ。さ、クーア、そして皆も。この格好に着替えて」
「何一つあってる気がしないのです……?!」
 クーア・ミューゼル (p3p003529)(夢魔のすがた)は雨宮 利香 (p3p001254)(サキュバスのすがたなので以後カタカナ表記)に、仲間ともどもド際どい水着を今や遅しと押し付けられている最中だった。
 広がる砂浜、照りつける太陽、まあ比較的温暖な気候。水着になるには丁度いい環境だが動機が不明だ。そして二人のやり取り的に、明らかに場違いである――ということはわかる。
 なんでこんな状況になっているかを説明する前に、現在彼女らのいる場所について説明しよう。

 海洋王国とカムイグラの中間に、『静寂の青』が横たわっていることは、ローレット・イレギュラーズにとっては周知の事実だ。そして、その最果てとされるのが『アクエリア諸島』。周辺の『フェデリア海域』とセットで未だ多くの狂王種や幽霊船が跋扈していることから、定期的に掃海依頼や開拓依頼が海洋から持ち込まれることがある。
 まあ、つまるところが『既に海洋で高い地位と名声を得たローレットのさらなる飛躍』のために必要不可欠な、とても大事な依頼群であるということ。
 ローレットの中でもそれなり以上の実力と名声を持つ彼女らが任務として向かうのは当然といえば当然と言え、浜辺に現れる狂王種は最優先でブッ叩いておかねば今後の開拓に差し障りがあるのだ。
「それで、今回水着になる理由はなんなのです?」
「それがねぇ、狂王種のウミウシなのよ今回の相手。あの粘性のアレ」
 クーアはリカの言葉に色々な状況を考えた。殲滅のナントカとか対なんとかとか。
 だが、そういうのとは一線を画す厄介さを備えているのだとリカはいう。ただ衣服を溶かすというわけではない、らしい。
「既に海洋王国の重装兵がウミウシの撃破に動いたって聞いたわ。でも全滅したんだって。なのに装備が傷一つないの。武器はボロボロだったけどね……なんでだと思う?」
「防具をすり抜けて体だけ溶かす消化液……なのですか?」
「半分正解。クーアはいい子ね」
 リカは首をかしげるクーアの頭を撫でると、「本体が傷つくのは本当よ」と続ける。
「当事者の傷やそこから採取された消化液が、『衣類にふれると着用者を溶かす』タイプのものだと分かったの。つまり、布面積が広かったり重武装だと肉体に入るダメージが大きいってワケ」
「……リカにとって鬼門の相手じゃないです?」
「あくまで『布面積』だから私の相手じゃないわよ」
 そういうわけだから水着を着て、と迫るリカ。夢魔姿だから体型はセーフだが色々拒否したいクーア。
 そしてその両者のやり取りをなんとも言えない表情で眺める残り6人。
 多分、ロクな結果になりそうにない。

●うみうしさん
 ときに、イレギュラーズが対処すべきウミウシだが、実は結構穏やかな気性である。
 されど攻撃されればソレに応じて凶暴化し、どんどん攻撃的になっていく……という特性があった。
 だがイレギュラーズはそれを知らない。そして厚着である物を優先的に襲う習性がある。
 つまり――消化液以上に薄着である妥当性が存在するのである――!!

GMコメント

 EXリクエストのご指名有難うございます。
 水着である必要性を考え抜きましたがこういう感じになりました。ゆるして。

●成功条件
 うみうしさんの掃討

●うみうしさん×3
 狂王種のウミウシ。本来はそこまで気性は荒くないが、消化液も凶悪だし結局の所生きるために色々荒らし回るのでやっぱり世界にとって害悪。
 特性として「厚着であればあるほど吐く消化液のダメージ量が増える」(プレイングによる服装であり装備欄とは異なる)。
 HP・命中がかなり高く回避が低い。攻撃力は並だが、呪殺によるダメージがかなり厄介。
・消化液(散弾)(物超範・猛毒・窒息)
・消化液(収束)(物超貫通・万能・流血・麻痺・呪殺)
・消化液(積層)(物中単・スプラッシュ(中)・呪殺)
・押しつぶし(物至単・泥沼)

●癒やしのうみうしさん
 ひたすら癒やしてくるうみうし。神攻が高く回復スキルのみを使う。攻撃はしない代わりに前に出てこない。回避がこいつだけ高め。

●戦場
 砂浜。
 結構広いので戦闘に支障はない。足場もそこまでじゃまにならない、はず。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 布地多めの格好でいくと失敗する依頼完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
※参加確定済み※
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
※参加確定済み※
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女

リプレイ

●8人はなんの集まりなんだっけ?
「全く服だけを溶かすなんてえっちなモンスターめ! この清楚なアタシが成敗してくれるっ!」
「服を着込んでいたらその下を傷つけるモンスターっきゅ。ミルヴィさんの発想は清楚じゃないっきゅ」
「なんで?!」
 『暁の剣姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は初っ端から酷い勘違いをしていた。『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)にツッコミを入れられなければきっと勘違いしたまんまだっただろう。多分、他の面子はそんな事してる余裕すらない。
「古来より服を着る理由はいくつもあるのう。保温、保護、羞恥、お洒落……儂らイレギュラーズじゃと、防御だけでなく補助とかもあるわけじゃな。儂の魔女盛装じゃと魔力増幅とお洒落なのじゃ」
 『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)は指折り数え、服とはなんぞや、その重要性とはなんぞやと言葉を重ねる。こうして言葉を重ねるということは、まあそれが蔑ろにされてるということだ。嘆かわしいことに。
「じゃというのにじゃ。なんでこやつらは積極的にはだ……高露出度を強要してくるんじゃおんどりゃあ!」
「あー怖いわねー怖すぎて今すぐ帰りたいわー」
 クラウジアの心からの叫びに白々しい棒読みを吐き出したのは『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)である。そもそも彼女が『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)を夢魔として、あと海洋でその名を轟かせんと根回しをした結果降って湧いた依頼なわけだが、なんでこんな展開になったのか。
「狂王種が出たなら討伐の為に頑張るつもりではあるし、まあ大きいウミウシ位なら何とかなるでしょ位に思っているけれど……服だけ溶かすどころか服だけ貫通するとか何事って思うよね」
「狂王種が居るのはホントだからなんとかしないとだけども。冬に水着で戦えと。布地少なければもっと良いと……」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)と『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)はリカ(青いのでカタカナ表記)から聞いた内容に改めて首をひねった。正常な判断だぞ。
「いや、他に6人居なければ普通に着たのですよ? あるいはここがウチの地下だったら着たのですよ?」
 クーア、ここにきて士道不覚悟みたいなことを言い出した。だがこの子を誰が責められようか。なりたて夢魔に対してどういうアレでソレなのかと。薄着であればあるほどいい依頼。
「着たら溶かされるならば、着なければいいんだ」
 溶かされねえって。『あなたの世界』八田 悠(p3p000687)まで勘違いベースで話を進めているが今回の敵はウミウシだ。どこぞのえっちっちではない。そしてここは海洋と豊穣の事実上の国境付近ともいえる海域である。
「アホじゃろ、駆除依頼がなんで最大全裸で魔物とバトルになるんじゃ!? アホじゃろ!? 練達のエロゲーかの!? バカじゃろ!? 死ぬの!?」
「『冬の寒空の下で水着』という大問題が発生してることに誰かツッコミを入れるのです!?」
「大丈夫よぉ」
「この辺りの海域は暖流がキてるからそこそこ温かいっきゅ。水着でもギリ安心っきゅ」
 クラウジアとクーアが発狂した所にリカとレーゲンがフォローになってないフォローを入れた。火に油じゃん?
「去年着た超際どい大人な水着っ! ちょっと食い込みヤバかったり、胸元が心もとなくてもなんとかやれるっ!」
 明らかに「清楚」という自称から遠く離れ完全に狙ってるとしか思えない姿のミルヴィ。
「正直ね、去年の夏に買った水着を取りに戻りたいよ。でも際どい奴の方がうみうしさん戦は有利なんでしょ?」
 そこそこ清楚というか胸元のフリルが悪くない、まあいいデザインの水着があるにも関わらず覚悟をキメた感じの羽衣に袖を通したティスル。
「布地の少ない水着ってことで一昨年のを持ってきたけど……人の肌が出てるのってあんまり落ち着かないのよね」
 ビキニタイプなので大胆に思えるが、露出度と外見的セーフ度が半々くらいでまとまっているイリス。
「儂はこの黒のマイクロビキニじゃな。まあマシな方じゃろ」
 比較対象が軒並みおかしいだけでふつうに戦場的な格好であることに気付いていない喰らうじあ。目のやり場に困る。
「グリュックが合法全裸は気持ち的に無理っきゅ。ビキニパンツで赴いてもしものときはレーさんが隠すっきゅ」
 レーゲン本体はともかくグリュックが全裸は倫理的ににアウトなのでそこはうまく隠していくレーゲン。
「リカちゃんのスリングショット、みたけりゃ幾らでも見ていいわよ? 無差別に晒したいわけじゃないケド」
 別に無闇に見せて回るわけではなく、求められることで己から発露する(でも着てるモンが着てるモン)なリカ。
「リカの用意してきた水着……えっと、これ水着……? 水着というか、紐というか……」
「あらクーア、一応見せて大丈夫なギリギリだから問題ないわ、というか向こうに裸族いるし」
 殆どヒモな水着に袖を通した(袖もないが)クーアはリカに抗議の視線を送るが、さりとてリカは全く木にしていない。なぜなら。
「ちょ、お主繊維に頼るつもりがないって、いや、ストリーキングはだめじゃろ!?」
「水着という体裁が必要なのは理解している。去年の夏のように、そういう仕立てでいかせて貰おう」
「うえええええええ!? ダメじゃコヤツ結果的に謎の光とかで隠れてるだけで本当に繊維に頼ってないのじゃー!?」
 そして、割とガチで水の反射と謎の光で大体の問題をクリアしリバ倫ギリギリアウト気味の内角攻めでクラウジアを混乱の坩堝に叩き落とす悠。これ今回クラウジアがツッコミで過労死しやしないだろうか。
「ちょ、みな、じちょう、じちょうー!!! ……したらやられるんじゃよなあ!! もうヤケじゃあ!!」
 落ち着けクラウジア。少なくともレーゲン(というかグリュック)はマシな方だと思うぞ?

●うみうし達が可哀想な件
「あれがうみうしさん達だね、癒やしのうみうしさんは……うわ、すぐわかるくらい色違いだけど凄く遠くにいる?!」
 ティスルは、というか癒やしのうみうし狙いの面々は遠距離からの攻撃を交えた移動によって一気に間合いを詰め、いきおい猛攻を仕掛けるつもりで動いていた。悠が先んじて発動させた英雄叙事詩と魔神黙示録の2つの詩は確実に一同を賦活し、前に出てきたうみうしを止めつつ背後に回ろう――と、想定していた。だが相手も狂王種だけに知恵が回るのか、仲間達より大きく下がることで敵前衛の突出に対策を打っている。
 已む無く歩を進めて間合いを詰めたティスルは、短剣を介した瞬間移動で相手の下へと間合いを詰める。短剣の傷はうみうしの回避により浅いものだったが、却ってその狙いの曖昧さが奏功した。
 そのまま垂直跳躍したティスルは『彗星』に雷を纏わせ振り下ろすと、2度めの斬撃を叩き込み残心した。
「あまり長引かせたくないのです……何より、ずっとこんな格好で走り回っていたらどうなるか……!」
 クーアはティスルと前後してうみうしを射程圏ギリギリに収めると、夢魔の力を付与した焔を叩き込む。ティスルの連撃で逃げ場を失っていた相手にとって、その精度の焔は避けられない。
 うみうしは己の動きが鈍ったと理解する間を与えられず、ミルヴィの生み出した幻影に切り刻まれた。……それでも肉体の傷がさしたるものとは思えぬのは、頑健さを証明する格好となっただろうか。
「結構入れたのに効いてなくない!?」
「そうでもないじゃろ。効いとるし鈍っとる。そう見えんのはでかすぎるのと治癒の力かの」
 かなりの集中攻撃を受けつつもピンピンしていたうみうしはしかし、のそりと動いて自らの身に光を灯す……治癒術式だ。思わず呻いたミルヴィをよそに、クラウジアは『貴石の妄執』の爆風の影、確かに残された刃傷を見た。
「そのねばねば、私にか・け・て♪ ……いひひっ、こっちは任されたわよイリスちゃん♪」
「ありがとう、こっちは私がなんとかするね」
 後衛、戦闘の要石を割られんとして、前衛のうみうし達が黙っているはずがない。本来なら、彼らは素早く後退するなりして接近した者達に消化液を叩き込んでいただろう。だが、2体はイリスに移動前に間合いを潰され、もう1体もリカの誘惑により彼女を敵として照準した。イリスの側の個体は攻撃班を射抜けなくもないが、目の前の相手を無視してまで行う話でもない。……無論、眼前の相手に収束型消化液を撃てぬとは言わぬが。
「直ぐに治すっきゅ! 大丈夫っきゅ?」
「大丈夫だよ、レーゲンさん……でも、当たるものなんだね」
 腹部を鋭く掠めた消化液の痕跡を指でなぞり、イリスは嘆息する。レーゲンの治癒や不調緩和の術式あらばこそ無視できるが、彼女の回避能力ですら避け得ず掠るというのは割合「とんでもない」話なのだ。
「治療役から離れて、僕の能力は敵味方を区別できないから!」
「うわわっ、怖い怖いっ!!」
「できれば当たりたくないもんね……!」
 悠の行使する『強制調律』は威力こそ突出したものでは無いが、それが齎す副次的影響が厄介な代物だ。特に、感情を揺さぶり、且つ対象の攻撃耐性に致命的な隙を生み出すそれはできれば受けたくないものだ。だからこそ、攻め手を敢えて遅らせてからの一撃が特に『効く』。
 正常な判断を阻害され、目の前の相手だけを圧し潰そうとするうみうしに最早癒し手としての役割は見込めない……そういうことだ。
 癒やしのうみうしは即座に悠を敵とみなし、その鎌首を彼女へともたげた。いきおい、重さに任せたプレスで相手を排除せんと意気込んだのは分かる。……だが何分、タイミングが悪すぎた。中空に振りまかれたクーアの霊薬が、連鎖的に反応を起こしたのだ。
(夢魔じゃない私ならこんな格好はとてもできないのです。でも、この姿を維持できてるってことは……つまり……)
 燃え上がり、辛うじて息を残すうみうしを見ながらクーアは僅かに渋い顔。
 それもそうだろう、本来のクーアはとても肌、特に腹部を露出する人物ではなかった。夢魔となったことで見せることに目覚めたが、そもそも感情が高揚していなければ夢魔の姿はとれない……「そういうこと」なのである。
「いひひっ、クーアもいい感じに目覚めてきたわね♪ あの子を見ていたいから、乗っかってくるのは駄目よ?」
 リカはそんなクーアの様子に満足気に口の端を歪めた。伸し掛るうみうしの重圧をものともせず、それどころか攻勢に出るうみうし側が瘴気によって体力を削られつつあるザマだ。彼女自身は次手に繋ぐため、魔力の蓄積に注力しつつクーアを見た。際どい水着のせいで、相手の重みなどあってないが如しである。
「あなた達もここから通さないから、覚悟してよね……!」
 イリスは押し留めた2体のうみうし、その片割れに体当たりを仕掛け自らを的にかけた。
 多様な消化液による攻撃は至近距離にあっても驚異である。当たるを幸いと撒き散らされた液体は彼女をしとどに濡らしたが、布地の少なさと「服を溶かさない」特性のおかげで倫理的に致命傷で済んでいる。
 これがもう少し布地の少ない面々だったらと思うとぞっとする。
「基本おとなしいなら生かして還してあげられないかな……?」
「気持ちは尊重したいけど依頼内容は『掃討』だしね。兵士の人達が犠牲になってるから無理だよ」
「儂等だって自分の布地との戦いで必至で手加減どころの話じゃないのじゃ。手加減して消化液で水着も体も偉いことになったら困るじゃろう?」
 クーアの焔で動きがあからさまに鈍ったうみうしを見ながら、憐れむようにミルヴィが提案する。だが、依頼内容の兼ね合いという面ではティスルの言が正しい。クラウジアもだが、そもそも悠が不思議な光とか謎の霧現象の限界に挑戦している時点でかなり余裕というものが存在しないのだ。
「レーさんもさっき消化液を受けたっきゅ。あれを相手に吐き出すなら凄く危ないっきゅ……」
「そっか……」
 ミルヴィは仲間達から確定的な現実を突きつけられつつあった。……だからといって「自分が手を下す」という選択肢は彼女にはない。全力で相手と対峙し、勝利をおさめることはする。だが、トドメを刺すのが自分である必要は断じてない。癒やしのうみうしに振り下ろされたティスルの剣、そしてクラウジアの魔術を見ることなく、彼女は残るうみうしへと駆ける。
「……ところで、裸身の乙女が海で演奏と共に舞うとか、なんか芸術作品や物語の一幕でありそうだよね」
「薄着で戦うことを強要されてる場面で全裸になる状況じゃなければ尤もな台詞なんじゃがなあ……」
 悠が再び仲間達の実力を引き出すために演奏を始めたのを見て、クラウジアはげんなりとした表情で相手を見た。いや、言ってることはわかるんだ。神話の時代であればそのような――演奏で高次存在の心を揺さぶり例外を認めさせた事例はごまんとある。異世界なら特に。
 だが、服飾文化があってなきが如しなその頃と明確に発展している今とではその。なんていうかあるじゃん色々と。
「あー、そういえばこれ戦う想定してないのよねえ、きっと都合のいい魔法的サムシングでズレはしないけど千切れたら裸ねえ、大変ねえ」
「普段からダンサーしてるし見られるのには慣れてるしこんくらい慣れっこってゆーか……でも見せたくて見せるワケじゃないから、そこはリカに譲るからっ!」
「私だって別に無闇には見せないわよぉ、でも千切れたら仕方ないものねえ」
 なお、現時点でリカはいつの間にかイリスの持ち回り分すら引きつけて全てのうみうしから波状攻撃を貰っていた。だが消化液はかかってない……んだけどこう、なんか振動とか戦闘の余波とか瘴気の影響的なサムシングで微妙にズレつつあるように見える。
「さっさと倒れて! お願いだから!!」
 ティスルは仲間達の状況もさることながら、自身に消化液がかかったら……と考えると気が気ではない。いや、ほらイリスは無事だよ? 無事だけど貫通消化液なら水着も千切れちゃうじゃん? 何で無事なの? え、謎の光? そんなあ。
「グリュックが露出する時間を少しでも減らす為に殲滅するっきゅ! 下手したら本当に露出が不味いっきゅ!」
 レーゲンは神気閃光をばらまきつつリカの体調を確認し、うみうし達を早急に倒すべく立ち回る。グリュックの肉体的な性別はともかく、だからといって露出していいってワケでもない。
 多少離れていても声を張ることで仲間の連携を有機的に誘導できるのは、この広い砂浜ではたしかに便利である。
「真の清楚は他人の清楚だって守ってみせる!」
 ミルヴィは敵を無闇に殺すことは滅多にしない。だが、それは戦闘で手抜きする、決着に於いて失速することとイコールではない。リカの水着が(本人大歓迎のもと)ズレ始めていたとしたらそれは清楚の名に賭けて回避させねばならない。ゆえに、間合いに飛び込み扇情的なダンスをみせつけ戦うことも、その結果自分のポロ率がヤバくなることも顧みない。何故なら、多少見えた所で清楚だと言い張れば清楚だからだ。
 定義がおかしい。
 おかしいのだが、彼女含む攻め手の布陣があまりに鉄板だったことから、ひとまず戦闘中は誰もリバ倫にふれることはなかった。
 ……そう、『戦闘中は』。

●顛末
「り、リカ、早くヒモを縛り直すのです! 私の分も!」
「大丈夫よぉ、ここには女性しかいないでしょう?」
「……レーさん達は厳密にメスとか男とか言えないっきゅ……」
「見えないように隠して裸で吟遊詩人よろしく詩を紡ぐのも面白そうだ。そう思わないかい?」
「わかったからおぬしは服を着んかッ!」
「人肌晒すのが違和感あるからもとの姿で泳いでくるね……?」
「……やだぁ……ベトベト……」
「ミルヴィさんは洗い流さないとちょっと清楚じゃないですね……私も……ちょっと」

 ということだった。はー、眼福。

成否

成功

MVP

八田 悠(p3p000687)
あなたの世界

状態異常

なし

あとがき

 誰もそこまでしろとは言ってねえんだよなあ(尊いものを見ました、ありがとうございますの意)

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