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シナリオ詳細

空の馬車が向かう先

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――もう、走れない。でも、逃げなくては。

 建物の影の向こうから、男たちの声が響く。その声に耳を傾けながら、幻想種の少女は物影に身を寄せ、息をひそめていた。
「ダメです……見つかりません」
 ヤギ髭の人相の悪い中年の男は、そう言った部下らしき男に向かって怒鳴り散らした。
「このマヌケ共!! このままじゃ俺の商売が潰れるかもしれないって時に――何ひとつ役に立たねえなあぁこの能無しがっ!!!!」
 ヤギ髭の商人は一頻り複数の部下に当たり散らした後、
「とにかく探せ!! 牢にぶち込まれたくなけりゃ、なんとかしろ!!」
 少女は男たちが立ち去るタイミングに合わせ、気配を忍ばせて遠ざかる。少女は必死にどこかを目指して走り続けた。たどり着いた先には、正義があることを信じて――。



「証人の護送――に見せかけた囮役を、君たちに引き受けてもらいたい」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は招集されたイレギュラーズに向けて、依頼の詳細を語る。
 奴隷商人の下から逃げ出してきた少女は、助けを求めてローレットに駆け込んだ。その幻想種の少女は深緑から連れ去られ、商品として売り飛ばされようとしていた。
 少女はどうにか非道な奴隷商人から逃げ出し、今に至る。奴隷商人に法の裁きを受けさせるためにも、少女は然るべき機関で証人として保護されることになったのだが――。
「――証人である少女を無事に護送するために、ローレットにお呼びがかかったという訳だ」
 奴隷商人はアンヘルという男――ショウはアンヘルやその部下たちに、ニセの情報を流しておいたと話す。
「君たちにはそのニセの情報通りの時刻に、囮の馬車と一緒に役所へ向かってもらいたい」
 少女はイレギュラーズの皆が出発した後、別の馬車でローレットを出発する手はずになっている。
 ショウは作戦内容を一通り説明する。
「アンヘルは少女を亡き者にしたいと考えている……そうすることで罪から逃れようという魂胆だろうな。そのために、馬車の出発に合わせて襲撃を仕掛ける可能性が高い――」
 イレギュラーズが囮の馬車を囲んで護送している様を見れば、アンヘルも少女を護送していると思い込みやすいはず。うまく誘き寄せたところを叩くという計算である。
 ローレットを出発する時刻は夜更けの時間帯――他者を戦闘に巻き込む心配を排除するため、ショウは比較的人通りの少ない通りを護送のルートとして示した。
 「アンヘルは獣種の傭兵を雇い入れたらしい」とショウは更に仕入れた情報について明かす。
「傭兵の2人組は、太刀打ちできないほどの強さと非情さを備えている――というのは、所詮アンヘルに手出しすることを恐れた御役人の所感さ。君たちイレギュラーズなら、充分に対処できる……それは確実だろう?」
 そう言って、ショウはどこか不敵に微笑んだ。

GMコメント

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。 想定外の事態は絶対に起こりません。


●成功条件
 奴隷商人、アンヘルの拘束、あるいは処刑。(生死問わず)


●地形
 夜更けの時間帯(大体22時頃)。
 役所方面に向かう川沿いの通り。人通りの少ないルート。

 空っぽの馬車を護送しながら、指定されたルートを進んでください。中に入ってみたりとか、馬車は好きなように利用して構いません。ちなみに、馬車は2人乗り用です。二頭で引くタイプの奴です。


●敵の情報まとめ
 敵はアンヘルを含め、計8人です。
 獣種の傭兵が2人、その他のモブ部下は5人です。(獣種の2人のイメージは、傭兵らしいガチムチです)
 傭兵とモブはアンヘルをかばう行動を取ります。アンヘルはマスケット銃(通常レンジ2)、傭兵はグレートソード、モブはショートソードを扱います。

 個性豊かな特異運命座標の皆さんの参加をお待ちしています。

  • 空の馬車が向かう先完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月08日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シラス(p3p004421)
竜剣
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
高貴な責務
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
アスル=トゥルエノ(p3p009254)
蒼雷玉

リプレイ

 イレギュラーズたちは、計画通りに馬車を伴って出発した。夜闇に包まれ静まり返った通りを過ぎ、川沿いの道を進む一行。
 御者台に『青樹護』フリークライ(p3p008595)を乗せた馬車を、2頭の馬は緩慢な歩調で引いていく。馬車は時折ギシギシときしむ音を立てたが、フリークライの巨体にも耐える程度には丈夫だった。
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は自らの能力で槍の先に火を灯した。焔の炎は周囲を照らす役割を果たし、不思議と槍自体を燃やすことはなかった。
『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は、馬車の進路を照らす焔と共に周囲を警戒する。夜目が利くハンナは、警備に集中しながら馬車を先導していく。
(ザントマンの事件が解決してからしばらくたつけど、まだこんなことをする人がいるんだね……)
 同じ考えを抱いていたのは焔だけではなかったようで、その横に並んで歩く『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)はおもむろにつぶやいた。
「ザントマンの後で手を出すバカがいるとは思わなかったわ」
 「こんな夜更けに、ご苦労なことよね……」と続けるルチアに対し、ハンナはどこか渋い表情を見せて言った。
「まだまだ無くならないものですね……。今回は売られる前に何とかなったようですが――」
 ハンナも幻想種であることから、奴隷商に関して思うところがあるようだった。
 ハンナの斜め後ろ、馬車の東側を中心に警護する『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は周囲の地形を観察し、拘束対象であるアンヘルの妨害に適した計略について考えを巡らせていた。だが、ハンナらの言葉に意識を向けた世界も反応する。
「商⼈たるもの、商品くらいキチンと扱えないと信⽤に響くってものだ――」
 ハンナは歩みを止めず、『商品』という言葉に反応したように振り返るが、「その程度の仕事振りが招いた結果だな」と世界は続けた。
「――知識によれば、ヒトとは売買するモノではない、と記憶しています」
 幌を張った馬車の上から聞こえてきたのは、『蒼雷玉』アスル=トゥルエノ(p3p009254)の声だった。幌馬車の屋根部分のフチに腰掛けながら、アスルは馬車の後方を見守っていた。
「なぜ、罪に問われる売買を行う必要があるのでしょう?」
 そうつぶやいたアスルは、ふとすぐ下を歩く不動 狂歌(p3p008820)と目が合った。狂歌は頭をかきながら言葉を探すと、
「まあ……何にせよだ。逃げ出して助けを求めてくるくらいだ、ろくでもない商売をする奴はとっ捕まえればいい」
 狂歌の言葉に呼応して、後方の守りを固めるシラス(p3p004421)は言った。
「ああ、生かして捕らえないとな」
 ――情報源の為にも生け捕りにしたいし、なるべく他の奴隷も助けてやりたいところだな。
 他の者もシラスと同様の思いを抱き、アンヘルを捕らえるための策を共有していた。
「――いつでも細工の準備はできてるぜ」
 中を隠すように布で仕切られた幌馬車を見つめながら、シラスはつぶやいた。
 各々の能力を駆使して神経を研ぎ澄ます8人は、馬車を囲むようにして進路を進む。

 指定されたルートの中間まで来た頃――常人の域を超えたハンナの視覚は、遠くに見える複数の人影を捉えた。ハンナが馬車の進路上に現れた人影を捉えるのと同時に、馬車の後方を警戒していたアスルも気配を察知する。熱源を感知することができる能力を生かし、アスルはその挙動や人数を正確に把握することができた。
 前後から距離を詰め始めた敵影に悟られないよう、迅速に状況を把握、情報を共有し合う。
 やがて馬車を護送する一行の前に、4人の男が立ち塞がる。馬車の後方にも現れた人影に向けて、狂歌はランプを掲げてその姿を確かめる。その4人の内、1人はヤギ髭の中年の男で、アンヘルの特徴と一致していた。
「……そこを、通していただけませんか?」
 ショウからの情報にあった、獣種の傭兵らしき2人を前に、ハンナは毅然とした態度で言い放つ。
 黒豹、狼の半人半獣――並外れた体格の傭兵2人は、大剣を担ぐ姿からも威圧感を感じさせる。
 馬車の真後ろについたアンヘルは、頻りに馬車の中を覗き込もうとしたが、
「馬鹿野郎、出てくるんじゃねえ!」
 シラスは幌馬車の中から一瞬顔を覗かせた少女を一喝した。すぐに奥へと引っ込んだ少女の姿を、アンヘルとその部下も確かに確認した。しかし、それはシラスが作り出した幻影に過ぎなかった。
「旦那。この馬車で間違いないか?」
 狼の傭兵――クヒトは悠然と構えながらアンヘルの指示を仰ぐ。
 「間違いねえ……」と言いつつ、アンヘルはマスケット銃の引き金に触れ、銃口を向けてシラスらを脅す。
「馬車の中身を置いていきな! 抵抗するなら容赦しねえぞ」
 ルチアはすでに戦闘態勢を整え、
「援護はしっかりさせて貰うわ。それじゃあ、頼んだわよ」
 聖なる力をその手に顕現させたルチアは、狂歌に向けてその加護の術をかけた。
 アンヘルの態度に対し、狂歌は言った。
「そのつもりなら、こちらも容赦はしない――」
 大太刀を構えた狂歌は、更に威勢良く言い放つ。
「ローレットの不動狂歌だ。やられたい奴からかかってこい、刀の錆にしてやるぞ」
 狂歌は相手の注意を引きつけると共に、一挙に敵陣へと切り込んだ。その混乱に乗じて、他の者も一斉に動き出す。
「ボク達が守るから、そのまま隠れてて!」
 焔は幻影として現れた少女を本物として扱い、馬車に向かって声をかけた。その直後、焔は道すがら集めておいた小石を周囲にばら撒き、一斉に火を灯して光源の代わりとした。中にはそれを爆弾と勘違いする者もいて、大慌てで距離を取る姿が見られた。
 一瞬の内に放たれる深紅の光芒が閃き、更にアンヘルの部下たちを追い込む。シラスは視線に込めた魔力で対象を焼き払おうと動いた。
 フリークライは傭兵らを蹴散らす勢いで馬車を急発進させ、道の端に馬車を止めた。馬車を避けた傭兵らは馬車に駆け寄ろうとしたが、フリークライは即座に馬車との間に立ち塞がる。フリークライは巨体を生かし、壁となって傭兵らを制止すると、
「ン。ヤラセナイ。全員マトメテ、捕縛スル」
 そのわずかな間にも、馬車の上から飛び降りたアスルは傭兵らに狙いを定めた。その小さな体とのギャップが強調される巨大な電磁砲を携え、アスルは馬車に接近している傭兵ら4人に銃撃を仕掛ける。大きく距離を保った状態でも、アスルの射撃は正確に対象を狙う。
 馬車に接近したものの、傭兵らはアスルの妨害を受けて散開する。黒豹の傭兵――ヒューゴはアスルの攻撃を止めようと踏み出したが、ほぼ同時にハンナも攻撃に出る。
 双剣を扱うハンナの剣は、銃身そのものの柄を備えていた。引き金を引くことでその刃は魔力を帯び、ハンナの太刀筋をより強靭なものへと昇華させる。その攻撃を大剣で受け止めたヒューゴは、衝撃によって押しやられる体を後方へ滑らせる。
「ほお、ローレットか――まあまあ腕は立つようだな」
 口元を歪ませたヒューゴは、牙をむき出して不敵な笑みを浮かべた。
「同胞に手出しすることは許しません、罪は償ってもらいます!」
 ヒューゴに向けて双剣を構えるハンナは、闘志をにじませていた。
 アンヘルの一味は、傭兵の2人を中心とした攻勢を展開する。クヒトとヒューゴは、イレギュラーズたちの勢いを挫こうと大剣を振りさばく。筋骨隆々の肉体から放たれる太刀筋は、石畳を砕くほどの力を見せた。
 イレギュラーズを追い詰めようと猛攻を繰り返す2人だったが――。
「大丈夫、すぐに癒すから」
 主よ、祝福をかの者に――。
 ルチアの清らかな歌声が響き渡る共に、傷ついた者に癒しの力をもたらしていく。
 世界もルチアと同じく支援役にまわり、
「さっさと裁きを受けてもらわないとな――」
 各々の傷の治癒を促進させるための力を注ぎ込む。
(少女、馬車イナイ。バレルト、厄介。ン。ドウニカ、切リ抜ケル)
 フリークライは馬車の真相が明らかになることを案じつつも、2人と共に支援に徹した。その鋼の体から鉄琴を弾くような音色を響かせる。澄んだ音色に乗せて紡がれる癒しの力が、戦線を維持する者らの活力となっていた。
 傭兵らと抗戦し、ハンナは戦力を削ることに集中する。その一方で、狂歌はアンヘルの部下たちの注意を引きつける。焔は炎を吹き出す札を操り、シラスはその瞳から魔力の光芒を放ち続け、複数の相手を巻き込んで押さえつける。
 部下たちの影に隠れながら、マスケット銃で応戦していたアンヘルだったが、
「そいつらに構うな! とにかく娘を連れ出せっ!」
 痺れを切らしたアンヘルは、部下たちに 指示を出す。
 言われた通りに部下の内の2人は馬車に接近しようとする。しかし、示し合わせたルチアと世界は、部下の2人に貼り付いて
接近を阻む。その間にも、狂歌が放った強烈な蹴りが1人のミゾオチを強打した。その1人が突き飛ばされて地面に転がったのを境に、もう2人もイレギュラーズの手によって次々と落ちる。
  シラスの手刀が3人目の首筋を鋭く捉えた直後、シラスを睨みつけるクヒトと視線が交わる。クヒトはその瞬間にシラスへと迫り、一気に距離を詰めた。瞬時に大剣の切っ先が突き出されたが、シラスはクヒトの動きを上回る速さで機敏に立ち回る。
 身をそらしたシラスはクヒトを抜き様に、馬車を狙う部下の1人に迫った。シラスを視界に捉える暇も相手に与えず、手刀一閃――首筋を強打したシラスの一撃で、相手の体は地面へと傾いた。
 シラスに続き、焔も最後の部下の動きを止めた。その直後、ヒューゴは焔を薙ぎ払おうと剣を振りかざす。
「退け、ガキ共!!」
 焔は咄嗟にヒューゴの間合いから身を引いたが、ヒューゴはその勢いのままに馬車を狙う。馬車ごと潰す勢いが窺えるヒューゴを前にして、ルチアは自らを盾として、ヒューゴの進路を阻もうと立ち向かう。
 ヒューゴのタックルを真正面から受け止めたルチアは、突き飛ばされた反動で背後の馬車に激突した。
 大剣を振り上げたヒューゴは馬車諸共ルチアを切り伏せようとしたが、ヒューゴへと斬りかかるハンナがその注意をそらす。
 ヒューゴは反射的に片腕でハンナの刃を受け止める。すると、ハンナは続け様に片方の剣で峰打ちを狙い、ヒューゴの腹部を強打した。一瞬表情を歪ませたヒューゴだったが、即座にハンナへと刃を向ける。
 ハンナは双剣を交差させ、ヒューゴの大剣を正面から受け止めた。
「言ったはずです――」
 イレギュラーズとしての気概を見せつけるハンナは言った。
「手出しはさせません。同胞を売り飛ばそうとした落とし前、つけさせて頂きます!」
 ハンナは渾身の力でヒューゴを押し返し、互角の剣戟を繰り広げる。
 自らの闘気を炎に変える焔もハンナに続き、炎をまとった槍を振りさばいてヒューゴを圧倒する。
「観念してもらうよ!」
 気炎をあげる焔は、棒高跳びの要領で槍を利用し、豪快に飛び上がった。その拍子に、焔の蹴りがヒューゴの顔を突き飛ばし、更に街路樹の幹に頭を強打した。ヒューゴは、脳震とうを起こしてその場にくずおれる。
 即座に焔に襲いかかろうとしたクヒトだったが、アスルの銃撃がクヒトをけん制する。その流れ弾に当たりそうになって喚き散らすアンヘルを一瞥しつつ、世界は空中に魔法陣を描く。白く浮かび上がった陣は、やがて1匹の白蛇へと変化する。現れた白蛇は宙から地面へと滑り出し、音もなくクヒトの下へ忍び寄る。世界が操る白蛇は、すばやくクヒトの足首に絡みつき、鋭い牙を突き立てた。しかし、クヒトが蛇に気づくことはない。蛇の特異な能力により、クヒトは無自覚なまま毒に蝕まれていく。
 クヒトへ激しく攻めかかる狂歌を筆頭に、イレギュラーズたちはクヒトを追い詰め始める。応戦するクヒトを尻目に、アンヘルは1人馬車へと駆け寄ろうとしたが、透かさずルチアとフリークライはその行く手を阻んだ。
「奴隷トサレタ者達、情報、吐イテモラウ。逃ガサナイ」
 フリークライはあえて捕縛する意向を強調し、アンヘルが命惜しさに逃走を図ることがないよう対処する。
 奮戦していたクヒトだったが、次第にその動きは鈍くなっていく。ひそかに蛇の毒を仕込んだ世界は、クヒトの様子を見てほくそ笑んだ。
 顕著になる体の異変――痺れや焼けつくような痛みに翻弄されるクヒトは、狂歌から浴びせられる一太刀を許してしまう。
「神妙にしろ!」
 瞬く雷撃を放つと共に、狂歌が振り抜いた一撃はクヒトの右肩を深くなぞった。
 クヒトは押し込まれてもなお引き下がる気配を見せず、傭兵の矜持にかけて、粘り強く対峙し続けた。
「あんたも、仕事相手は選ぶべきだったな――」
 疲弊しているクヒトの動きを見定めながらシラスはつぶやいた。そろそろ頃合いと判断したシラスは、クヒトを間合いへ捉えようと踏み出す構えを見せた。
 シラスは身構えた瞬間にクヒトの懐へと飛び込み、クヒトのミゾオチに強烈な一撃を喰らわせる。白目をむかんばかりの衝撃によって、クヒトは確実に意識を手放した。
 遂にアンヘル1人だけが残ることになり、アンヘルは馬車を見つめながらもじりじりと後ずさる。苦渋の表情を浮かべていたアンヘルだったが、イレギュラーズたちに背を向けて逃げ去る動きを見せた。しかし、走り出したアンヘルは間もなくして盛大に転ぶ。街路樹と街路樹の間、根元付近に張られた糸に足を取られたからだ。それは世界が、アンヘルが逃走を図ることを見越して仕掛けたものだった。
 アンヘルは足を引きずりながらも必死に逃げようとしたが、敢えなく取り押さえられる。
「おら、キリキリ歩け」
 狂歌はアンヘルをねじ伏せながら、他の者と協力して縛り上げる。
 気絶している部下や傭兵も同様に拘束し、全員を馬車につなぎ止める形で連行の準備を整える。
「命までは取りません――」
 ハンナはうなだれるアンヘルを見下ろしてつぶやいた。
 大きく頷いた焔も、ハンナの言葉を継いで言った。
「まだやらなきゃいけないことが残ってるからね」
 イレギュラーズたちは、アンヘルの商売の内情が詳らかにされることを望み、アンヘルの一味を役所へと連行した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 アンヘルを捕らえたことで、奴隷商の市場もより縮小していくことでしょう。

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