PandoraPartyProject

シナリオ詳細

花精の願い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「花束をみつくろって下さる?」
「はーい、ただいま。あっ、ご予算はいかほどでしょうか?」

 カトレアは幻想王都にほど近い町で、花屋を営んでいる。
 暮らしぶりは決して豊かではなかったけれど、このところ妙に売れ行きがいい。
 裏庭で丹精こめて育てた花を喜んでもらえるのは嬉しいことで、カトレアは楽しそうに過ごしている。
 けれど事件は起こった。

「貴様、花で呪っているな」
 踏み込んできた衛兵は、開口一番にそう言った。
 蒼白な表情で花を取り落としたカトレアには、何のことか分からない。
「貴様の店で花を買った者達が、高熱にうなされているのは知れている!」
 まさかそんなことが、あるわけがない。
 カトレアは呪いはおろか、魔術など生まれてこの方一度も使ったことなんてなかった。
「そんな、待って下さい。わたしはただ、花を」
 だが衛兵は有無を言わさず、カトレアの両腕を縛り上げて連行したのだった。
「ええい黙れ! 話は後でじっくり聞かせてもらおうか!」


「はじめましてー、ですかねー? セスカって言いますー、って、あわ」
 ぺこりと頭を下げた少女『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3n000197)は、落ちそうになった大きな魔女帽子を慌てて抑える。
 なんでもお金に困っているとかで、情報屋兼、イレギュラーズとしてたまに働くことにしたらしい。

「先輩方に手伝ってもらって、頑張って調べたんですけどー」
 セスカが言うには、幻想王都に近い町ウィルバーグで、謎めいた事件が発生したらしい。
 とある花屋で花を購入した客が、数日以内に謎の高熱にうなされるというものだ。
 地元の衛兵は花屋を営むカトレアという女性を拘束したが、あろうことか町の人が次々と倒れてしまったというのだった。
「それで調べたのですがー、どうも魔物の仕業みたいなんですよー」
 花屋の庭は花園になっており、そこに住まう花霊が悪さをしたというのだ。
 いったいどうしてと問うイレギュラーズに、セスカが答える。
「お花屋さんは豊かではなかったそうで、もっと売ってあげたかったみたいです」
 花霊が集客した結果として、暴走した魔力が悪影響を与えてしまった。
 誰かの為にやったことが、別の誰かを傷つけるとは、皮肉な話だ。

「それじゃあ、行きましょうかー、よろしくおねがいしますー、あ、わたしも戦いますのでー」
 イレギュラーズはセスカと共に、現場へと向かうのだった。


 あの子を、とりもどさなきゃ。
 あの子のために、売ったんだから。
 にんげんって、ひどいな。
 でも、熱が出たんでしょう?
 しかたないじゃないか、耐えられないんだから。にんげんがわるいよ。
 でも、でも――

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 よかれと思ったことだったのに。

■依頼達成条件
 花霊を鎮める。

■フィールド
 幻想の町ウィルバーグの花園です。
 時間は昼です。お花が一杯咲いてます。

■敵
 花霊×14
 半透明の妖精みたいなモンスターです。倒せば鎮められます。
 カトレアさんの花屋を繁盛させたくて、町の人々を魅了しました。
 自分達がしでかしたことに戸惑っていますが、まだ受け入れられずにいます。
 言葉などをかけることで、攻撃の手が緩むかもしれません。

 花びらや蔦で近~遠を攻撃してきます。
 蔦は物理攻撃で出血のBSがあり、花びらは神秘の範囲識別攻撃です。
 あとは敵が誰か分からなくなる幻覚を見せてくるのが一体だけ居ます。具体的にはBS魅了です。

■カトレアさん
 花屋さんを営んでいます。
 重要参考人として衛兵に拘束され、ローレットの手引きによって今は保護に変わりました。
 依頼成功で無事に解放されます。
 真相を話すかどうか、どのように伝えるか等は、みなさんにお任せします。

■同行NPC
『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3n000197)
 世界中を旅して占いなどをしている魔法使いの女の子。
 旅の路銀も少ないため、もっとギルドに顔を出そうと決意した。
 魔法を使って攻撃や回復を行います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 花精の願い完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
ルリ・メイフィールド(p3p007928)
特異運命座標
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
アシリ レラ カムイ(p3p009091)
菜園の女神
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
ユリウス=フォン=モルゲンレーテ(p3p009228)
貴族の儀礼
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

サポートNPC一覧(1人)

セスカ・セレスタリカ(p3n000197)
旅の占い魔女

リプレイ


 幻想の町ヴィルバーグに太陽の光が差し込む。
 カトレアが営む花屋の裏側には、色とりどりの花が風に揺れていた。
『特異運命座標』ルリ・メイフィールド(p3p007928)は目の前に広がる花畑を見つめて少しだけ寂しそうに呟く。
「うーん、善意が結果的に悲劇を生むってことほど悲しいことねえですからね……なんとか解決してあげたいところなのです」
 ルリが見つめる先には花霊達が漂っていた。
 様子を伺うようにルリ達を見つめる花霊たち。
『あの子をとりもどさなきゃ』
『だれ? にんげん?』
『怖いかな? にんげんひどいことする?』
『ここは守らないと。あの子がたいせつにしてるから』
 花霊達が口々に話し出す。ルリは隣に居た『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)へと頷いた。
「カトレアちゃん、花霊達に好かれてるねー……」
『あの子の名前よんだ? だれ?』
 この花園に居る花霊達は純粋な好意でカトレアを手伝ったつもりなのだろう。
「とは言え、事件になっちゃったんじゃー仕方ないよネ」
 クルルはこの話を持ってきた『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3n000197)に首を傾げる。
「ええ。実際に困っている方が居ますし、放置すれば大変な事になるかもしれませんしねー」
「うんうん。八方丸く収められる様に、がんばろーっ!」
「おー!」
 クルルとセスカの声が花園に響き渡った。

「まったく……荒事に首を突っ込む気は無かったんじゃがの。話を聞いておったら、どうにも捨ておけんかったわ」
「へへー、優しいんですね。アシリさん」
 セスカは溜息を吐く『菜園の女神』アシリ レラ カムイ(p3p009091)に笑顔を向ける。
「元来精霊とかいうモノは自由気ままで、そこまで人間に入れ込む事なんて無いんじゃ。
 少なくとも、我の世界ではそうであった」
 コロボックルと呼ばれる風の精霊であるアシリは故郷に想いを馳せた。
 花霊がどれ程カトレアの事を好きか、どうすれば彼女の為になるかを一生懸命考えたのだ。
「であれば、その花霊とやらの――心中察して余りあるのでな……」
 移ろいやすい精霊がそれ程までに愛を注いでいるのは、カトレアが花を愛しているから。
「もし、ぼくが花霊だったら、同じ事を、していたでしょう」
 長い睫毛を伏せた『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)は花霊達の気持ちに寄り添う。
 同じ事をする理由は、あの人の笑顔が好きだとか、笑って居て欲しいだとか。
 未散が心に描くおもいは花霊たちと同じ気持ちだから。
 花園で笑って居てくれるカトレアが何よりも好きだから。
 その為なら。
「――魂すらも、売れるのでしょう」

『貴族の儀礼』ユリウス=フォン=モルゲンレーテ(p3p009228)は花園を見渡す。
「このようなことになってしまってはいるが、まだ十分に和解出来る範疇だろう」
 花霊たちに悪意は無くカトレアの事を想って行ったことなのだから。
 出来れば話し合いで解決出来ればとユリウスは考えるが。怯え苛立ちを露わにする花霊たちを鎮めるには戦うしかないのだろう。
「今は脅威ではあるが、良き隣人となってくれるかもしれない存在なのだから、あまり手酷く扱わぬようにしたいな」
 可能性を潰したりしないように細心の注意を払うのだ。
「多分、今回の味方はみんな優しいから……花屋は繁盛していたのは確かなのだから、カトレアが戻ってこなくて、案外狼狽えてるかもね……」
 ユリウスの後ろから『白い悪魔』白夜 希(p3p009099)が歩いて来る。
 花霊からすれば突然現れた様に感じたかもしれない。
 しかも、怒気を纏わせた希に花霊たちは震え、後退った。
「この花屋で花を買った人が病に伏せてる……。真犯人はなるほど、お前らか……。
 どういうつもりでやったのか……吐いてからあの世へ行け」
 演技ではあるが、怒っている人が近くに居るということは、人間であったとしてもストレスを感じるものなのだ。ましてや感受性の強い精霊たちは怒りや悲しみに敏感である。
 ある精霊は花の影に隠れ、ある精霊は希の怒りに対抗するように敵意をむき出しにする。
 これは希の作戦である。希が怖い役を演じて他の仲間が優しい言葉を掛ければ少しは耳を傾けるだろう。
「……やっぱりモンスターだから、あたし達とは考え方が違うのかな。
 悪気はなかったみたいだし、話して分かってくれると、いいんだけど」
 様子を伺うようにこちらを見てくる花霊達を『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)が注視する。
「こんにちは、町の人たちが熱出したの、あなたたちがやったんだよね」
 コゼットの声にビクリと肩を振るわせる花霊達。
「熱出しただけだから、まだよかったけど、もし死んじゃう人がいたら。
 カトレアさん、死刑になっちゃってたかも知れないよ……」
『しけい? 何?』
『カトレアが殺される?』
『やだ、やだ』
「悪いことしたつもりじゃなかったんだろうけど、無理矢理に花を買わせると。
 花の事嫌いになっちゃうかもだよ」
 カトレアが育てる花は、花霊が魅了しなくても綺麗なのだから。
「むりやり買わせるんじゃなくて、ほんとうに花が好きな人に買ってもらおうよ。
 その方が、みんな幸せだよ」
 コゼットの説得にプルプルと震え出す花霊たち。頭では理解しようとしているのだろう。
 しかし、感情の落とし所が掴めないのかも知れない。
「勘違いから生まれた悲劇ってーところか。ったく、俺らも暇じゃねぇんだけどな……」
 大きく溜息を吐いた『太陽の勇者』アラン・アークライト(p3p000365)はにっと笑顔を見せる。
「しゃーねぇ、めんどくせぇが仕事は仕事だ。人肌脱いでやらァ」
『あの子のためにしたのに』
 よかれと思ってやったことに対して叱られるのは、酷く傷付くのかもしれない。
 アランは戦闘を回避する事は出来ないだろうと踏んでいた。
 振り上げた拳の落とし所を用意してやるのも、自分達の務めなのだろう。
「お前らが善意でやったこたぁ責めやしねぇ。自分のやったことを反省して町の人たちの謝れば何とかしてやる。でも、しっかり『ごめんなさい』出来ねぇ奴には、お仕置きしねぇとな?」
『痛いことする?』
「ああ、今からうんと痛い事する」
 アランの言葉にルリも頷く。
「怒られるのは怖いかもしれません。でも、悪い事したら怒られるものなのです。
 大丈夫。ボク達は死んだりしないのです。だから、思う存分暴れてもいいですよ」
『うう~~~~!!!』
 きっと、こうしなければ花霊たちは不完全燃焼で燻ってしまうから。
 時には暴れる事だって必要なのだ。
 一斉に飛び出してきた花霊達をイレギュラーズが迎え撃つ。


「あなたさま方は、今とても困っておいでですよね。まあ、先ずは自分の感情に、蹴りをつけませんか」
 未散は真っ先に光を解き放つ。その中で花霊へと語りかける言葉。
「何、何、難しい事ではないのです。やっぱり人間に腹が立つ、でも、御免なさいってしたいでも
 些細な事でも、ぼく達に話してはくれませんか?」
 振り上げた拳の落とし所。怒りや恐怖に囚われてしまった子供をなだめるような、優しい未散の言葉。
「思考を整理する間の、サンドバッグ位にはなりましょう」
 花霊の攻撃が未散の肌を掠める。
「こう見えて、ちょっとだけ、打たれ強いんですよ。だから、一緒に考えましょう?
 ……そうさせて下さい、ね?」
 花園を舞う小鳥のように。未散は花霊たちの間を縫って語りかける。
『わたしたち、わるくない。あの子によろこんでほしいだけ』
「ええ、分ります」
『でも、にんげん弱い。にんげんがわるい』
「そうでしょうか。カトレアさんはとても強い方ですか? 魔物がやってきてカトレアさんに怪我を負わせたとして、それはカトレアさんが弱いからわるいことですか?」
 未散の声に戸惑う花霊たちの周りをコゼットは飛び回り自分に注意を引きつけた。
 花が潰れないように細心の注意を払って飛び回る。
「ほら、こっちにおいでよ。そうじゃないと花が潰れちゃうよ。大事な花なんでしょ?」
『だめ! 花が。カトレアのたいせつな花が!』
 花霊達はカトレアが大切にしている花を守る為にコゼットについていく。
 ちくちくと花霊たちの攻撃がコゼットに傷を増やした。
 戦場の後方、花を潰さぬように少し浮かび上がったルリはコゼットの傷を根気よく治し続ける。
「ルリさん大丈夫ですか? きついなら言ってくださいねー。こう見えて私も回復つかえるので」
 身を削るような献身的なルリの回復にセスカが助け船を出した。
「はい。ありがとうなのです。でも、ボクにできるのはこれぐらいなのです」
「分りました。じゃあ、私がルリさんをお守りしますよー!」
 回復をしているルリ目がけて花霊が飛んでくる。
 それをセスカが身を挺して庇った。
「悪いがちーっと本気で懲らしめるぞ」
 アランはセスカに攻撃を繰り返す花霊に、古き月輪による擬似聖剣を向ける。
 繰り出される連撃は紅と蒼の光の奔流。息をつかせる間もなく重なり、花霊は悲鳴を上げた。
 よろよろと後退った花霊は逃げるように花畑の隅に蹲る。

「聞こえておるか、花霊とやら。
 お主達の優しい気持ちは分からんでもないが、やり方を間違えるでないぞ」
 赤い旋律を奏でながらアシリは花霊たちに語りかけた。
「お主達にはお主達の主張があると思うが、結果として起きてしまったことを受け入れよ!」
『だって! わるくないもん!』
 子供が駄々を捏ねるように花霊たちは暴れ回る。
「まぁ向こうも意地になっておるのじゃろうし、言の葉のみで解決するというのは少々虫が良すぎるか。
 仕方ない――皆の者、頼んだぞ」
 旋律は鳴り響き仲間を鼓舞する音が戦場を包み込んだ。
「これ以上は止めておけ! カトレアは花を愛する優しい娘なのであろう!?
 お主達『花』が事の原因であると知ったら、そのカトレアがどれほど心を痛めるか、分からんのか!」
 アシリの大声に花霊達がぶるると震える。
「カトレアさんは魅了をしてまで花を売りたいわけでは無いのです」
 ルリはセスカの背後から花霊たちに語りかけた。
「どうすればカトレアさんが喜ぶか一緒に考えましょう。あなたたちの能力をどう活かせるか話し合いましょう。そうすれば道はきっと開けるのですから」
 ルリの言葉に花霊達が動揺を見せる。

「彼女のため、とお前たちは言うが、私はそうは思わない」
 ユリウスの声が戦場に響き渡った。花霊達は一斉にそちらへ意識を向ける。
「お前たちがやったのは、所詮『お前たちが彼女にしてやりたいこと』だ。
『彼女がして欲しかった』ことではない」
 自分勝手な振る舞いだとユリウスは厳しい口調で責め立てた。
「人間が悪いというのも筋が違う。そもそもお前たちが何もしなければ、こうして彼女が被害を被ることもなかったのだから」
 カトレアが捕まってしまったのも花霊たちのせいだと糾弾する。
 人間の事情を理解しろとは言わないけれど。カトレアと話をさせる以上、反省をして貰わねば話が煤か無いのだから。
 ユリウスの声に花霊達は彼に攻撃の手を向けた。
 後衛のクルルも間違いを犯した花霊達に語りかける。
「一歩間違えればカトレアちゃんも熱出してたかもしれないし、あの子が処罰されてたかもしれないよって
何事もやりすぎ注意! だよ!」
『でもでも……』
 クルルの声に戸惑いを強くする花霊たち。そろそろ気づき始めているのかもしれない。
 自分達が悪い事をしたのではないかと。
 けれど、引けない理由があるのだろう。
 この事件の元凶とも呼べる、強力な花霊。魅了を操る個体を、希が見上げる。

 戦闘しないのが一番ではあったがと希は戦場を見渡した。
 コゼットやユリウスが数体の花霊を集めて、それをアランやクルルが攻撃している。
 花霊の数が多いのはそれだけこの花園を大切にしているからだ。
「だったら、あの強力な花霊を鎮めれば解決するよね」
「はい。みんなで力を合わせてあの強力な花霊を鎮めましょう!」
 希の呟きにセスカが応える。

「ええ、ええ。では参りましょう」
 一番に飛び出した未散の閃光が瞬き。
「もう、いいだろうが。存分に暴れただろ!?」
 アランの連撃が繰り出される。
 ルリの手から連なる雷の轟音が鳴り響けば、希とクルルの閃光が花園を覆った。
 アシリの威嚇術から繋がるコゼットとユリウスの一撃は魅了をまき散らす花霊を吹き飛ばす。

 そして、蹲った花霊たちにイレギュラーズは手を差し伸べ。
「ほら、一緒にごめんなさいしにいこう」
 差し出された手を花霊達は握ったのだ。


 イレギュラーズは花霊を連れてカトレアの前にやってくる。
 コゼットと希は彼等が暴れてもいいようにカトレアを庇う位置についた。
「どうか彼等を怒らないであげて欲しい」
 未散はカトレアの前に立ち語りかける。
「空に色がある様に。鳥には翼があって。花は何時だって甘くて、優しいと、思うのです」
 花霊達によりそうように。警戒を悟られぬように。
「カトレアよ。全ては、お主の為にと花精が願っての事じゃ……
 じゃが、こやつらはヒトの世の理を知らなんだ……許してやっては――いや。
 どうか、花を嫌いにならんでやってくれぬか」
 アシリは精霊としての心が分かる。花霊達の心が分かる。だから。許して欲しいと伝える。
「カトレアちゃんの生活が大変そうだからもっとお花が売れる様にしてあげたかったみたい。種族も違うからその辺の感覚がズレてるのはしょーがないよー」
「多分花霊なりの恩返しだったんだと思うけどね……。人の心を惑わす魔法を使うものは魔女だけど……そうじゃないでしょ?」
 クルルと希も花霊達の心を思い弁解をカトレアに告げる。
「あなたの事が好きだからやったことで悪気はなかったこと、抵抗があるかもしれないが、歩み寄りに協力してほしい」
 ユリウスの言葉にカトレアは花霊達を見つめた。
「そう、だったのね」
『カトレア、ごめんね』
『ごめんね』
 カトレアを捕えた憲兵達もその様子を見て、安心したように胸を撫下ろす。
 アランは憲兵達にたたみかけるように肩を叩いた。
「カトレアも花達も悪意があってやったわけじゃねぇんだ。
 許せってわけじゃねぇが挽回のチャンスくらい与えてもいいんじゃねぇか?」
「誰かの笑顔が見たくて人間が花を買う様に。花は誰かを癒す為に咲くのです。
 其れに水を遣る人の思いも同じ。子供の失敗を許せなくては机上の彩りは得られないのですよ」
 未散もアランに習って憲兵達に向き直る。
 悪気は無かったのだから一度ぐらいは許してやってほしいとクルルが説けば憲兵も分かったと頷いた。
「事情は分かった。これ以上、被害が出ないのなら彼女を解放しよう」
「だが、次は許されない。俺達はこの街を守る事が仕事なのだから」
 固い口調で言い放つ憲兵にお辞儀をして、カトレアとイレギュラーズは花屋へと戻ってくる。

「ん? 戦闘したのに庭が傷ついてない? 保護結界を貼ってたのさ
 だって勿体ないし、私が買う分がなくなっちゃうでしょ?
 帰り際に一つ買っていこう、おすすめの花束、よろしく」
 希がにんまりと笑い。カトレアが感謝を述べる。
 包む花束は何がいいだろうか。

 今日もカトレアと花霊たちは花を育てる。
 誰かが想いを寄せる誰かの笑顔を思って――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 無事に花霊を鎮めることができました。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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