シナリオ詳細
始めは英雄の如く後はバニーの如し
オープニング
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幻想の一地域を統括するラングレー男爵には一つの噂があった。
なんでも――鉄帝側の貴族と秘密裏に繋がりを持っているらしいのだ。
……国を跨いだ交流程度ならば大なり小なりあるもの。例えば遊楽伯爵と呼ばれるバルツァーレク伯爵など、商人ギルドを通じてラサとのパイプを持っている。鉄帝とは幾度か戦争をしたこともあるが……だからといって断交している訳でもないのだ。それが個人的な交友だという程度なら問題視される訳ではない。
「だけれどもラングレー男爵は誰にもバレないようにしながら何度も密会を重ねているらしい」
馬車の中。言うはギルオス・ホリス(p3p000016)である。
ラングレーには怪しい所があるのだと。調査した所、ラングレー男爵の所有する私財が他国に流れているような形跡があった……それは彼に他国との繋がりがあるという噂が出始めた頃と一致しており、伴って領地の税も重くなっているらしい。
なんらかの賄賂か、取引か――国を売って私腹をこやしているのやもしれぬ。
だが証拠はない。
怪しい流れはあるのだが確たる事実は発見されておらず――故に。
「事実であれば捨て置けないという事で依頼が入ってね。今回の目的はつまり、ラングレー男爵の私邸に忍び込んで、彼が鉄帝とのなんらかの取引などを行っているという証拠を掴む所にある」
「成程、ね。自分の欲望の為に税を重くするなんて……汚い奴だわ」
「うん――絶対証拠を掴まないとね、リアちゃん!」
ギルオスの説明を聞いて言葉を紡ぐのはリア・クォーツ (p3p004937)と炎堂 焔 (p3p004727)である。この依頼、焔が最初に話を聞いて周囲の者達に声をかけたのが始まりであり、リアはその一人であった。
やはり幻想の貴族はまだまだ腐敗している。サーカス事件や砂蠍の蜂起解決からそれなりに経つが……このように自らの事しか考えない貴族はまだまだ蔓延っているようだと。
「でも……具体的にはどうするんです? 夜間にこっそり侵入とかを……?」
同時。アイラ・ディアグレイス (p3p006523)の疑問は尤もである。
噂程度しかない悪事の証拠――具体性に欠けるモノを探すというのは簡単な事ではない。捜索するにもそれなりの時間がかかる必要があるが……貴族の私邸となれば当然警備もいる事だろう。それらの目をどうやって誤魔化すものだろうか。
「ああ――いや。それに関しては既に考えがあるんだ。
実はラングレー伯爵が新年のパーティーを開く予定があってね。
多くの貴族が集まるらしいんだが……それで臨時の使用人を募集しているみたいなんだ」
故にギルオスは言う。偶然ではあるが、おあつらえ向きの出来事があるのだと。
臨時の使用人募集の情報を視たギルオスと焔は『これだ!』と即座に応募を。既に話は取り付けてあって、後は現地に向かうだけの段階なのだ。
使用人に化け、パーティーの隙間を縫って証拠を探す。
多くの者達が集まる場であればこそ少数の者が動いてもバレにくい筈だ。
「それでギルオスも来る訳?」
「ああ。今回は隠された情報を探す為の依頼だからね……情報屋である僕も同行した方がスムーズに行くかもしれない。書類か物品か、とにかく鉄帝貴族との繋がりを探し出す事が出来ればいいんだし」
「――と。着いたみたいですよ」
情報屋が付いてくるなど珍しいとリアが思ったその時――馬車の外を眺めたアイラの目に映ったのは、件のラングレー男爵のパーティー会場だ。
大きい。外からみると中々に立派な屋敷である。
だがここのどこかには証拠がある筈だ。
彼の私室か作業部屋か、あるいは地下か……とにかく一度入り込もうとして。
「おお! 君達が今夜のパーティーの臨時で来た者達かね! まっておったぞ!!」
瞬間。イレギュラーズ達の目の前に現れたのは――件のラングレー男爵だった。
恰幅の良い、にこやかな表情を携えた男である。
「さぁさぁこっちに来たまえ。まずは統一された服装に着替えてもらうおうか。
その後は先に入っている使用人に案内させるが故、パーティーの準備をしたまえ!」
「はい。本日はよろしくお願いします」
統一された服装――パーティーとなればそれもそうか。
給仕服か、スーツの様なものか……ともあれ早めに着替えてパーティーが始まる前に可能な限りこの屋敷の構造を把握しておきたいと、考え、て?
「――――あの。なんです、これ?」
アイラは見た。『それではこれを』と案内された先にあった服装を。
それは――なんというか――目の錯覚かとも思ったのだが――
「これ、完全に『バニーガール』の……」
「ふはははは! 素晴らしいだろう? 我が家の使用人達の基本衣装がそれなのだよ!」
「えええええ!?」
かなりきわどいバニーガール衣装しか並んでいなかった!
右を見ても左を見てもバニーガール。あらゆるサイズを取り揃えているが故に着られないなんて事はないと豪語するラングレーだが――もしかしてこの男、馬鹿なのでは?
「焔ァアア!! 謀ったな、焔ァァァ!!」
「ち、ちがうよリアちゃん!! ボクの所為じゃないよ!! ボクも気付いてなくて……あわわわわ!」
思わず焔の胸倉を掴みあげんとするリア。どーするんだよこれマジかよ!!
どれを見てもサイズの違いこそあれど滅茶苦茶きわどい事に変わりは無い。こ、これを来て人前に出ろというのか! しかもパーティーでしょ!? 色んな人が来るんでしょ!?
「はは……これは予想外だね。
だけれどもこれも依頼だ。なんとかここは耐えてもらって――」
しかし今更やっぱり帰る! などとも言えない。
一度依頼を受けた以上は依頼の達成に尽力するのがローレットのルールだと、ギルオスは諭し。
「んっ? いや、男もだが?」
直後に信じがたい言葉を聞いた。
はっ? 男が? なに? 着るの? このバニーガールを!!?
「えええ!? 嘘ぉ、何言ってるの、遠回しに言いますが――お頭がどうかされて!?」
「『一度依頼を受けた以上は依頼の達成に尽力するのがルール』って、言ったわよね?」
リアが怖い。絶対逃がさないとばかりに圧を掛けて。
「と言う訳で頼んだぞ諸君! あ、男は別の控室があるからそっちで着替えたまえよ。
なぁに安心したまえ! これはいずれもが一級品の素材ばかり!
誰が来ても絶対に似合うだろうからな――がはははははっ!」
こいつ絶対証拠を掴んで破滅させてやると、誰かが思考した。
- 始めは英雄の如く後はバニーの如し完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年01月28日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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「どこの世界にも物好きってのはいるんだね」
鏡。見据えているのは『揺蕩う器』ハリエット(p3p009025)である。
黒いバニースーツに着替えた自らの姿――なんとも懐かしい。
かつての世で着た事がある衣装だ。胸も尻も平たい頃に……『そういう趣味』の連中に着せられた事がある。あの時はどうやって逃げ出したんだったか。さて、もうとんと覚えていないが。
「……ま、覚える価値のある所でもなかったしね。それよりも――」
「くそ! 焔の誘いに乗ったらこうなるって分かってただろうに……許さねぇぞ焔ァ、ていうかなんでバニーなんだよ!! あたしは仮にも聖職者だぞ分かってんのか焔ァ!」
「ち、違うよ! 本当にここに来るまで知らなかったんだよ! 信じてよリアちゃん! ボクがそんなに嘘をつく様に見えるの!?」
ハリエットが見据える先。詰め寄っている『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)の先には『全ての黒幕焔ちゃん!』炎堂 焔(p3p004727)の姿があった。その称号で願っても無理があるぞ焔ァ!
いやさ世の中色んな依頼があるのは分かる――が。
「し、し、しかもこれ結構……その結構じゃねぇか!? 焔はまだいいかもしれないけど、あたしは零れる可能性が……くそ! 焔にギルオス、あんた達には全部終わった後でお話があるからね……!」
なにがいいって? なにが!? 焔の抗議は無視しつつギルオスも睨みつけるリア。
もう衣装がやばいのである。全部きわどい。色んなサイズが揃ってるのは確かだが、いやしかし……これ……うっかりとサイズが小さいのを選んでしまったら……
「さぁギルオス君――依頼が始まるわ。だからその前に、もう一度だけ確認しておくわね」
同時。沈痛な面持ちで『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は語る。
例の如く彼女もバニーである。紅き衣が妖艶なる雰囲気と共にその肌を煌めかせて……
彼女の前にあるのは――三種の神器。
黒×黒スト(付襟・袖付王道)
白×網タイツ(チュールスカート付・キュート)
赤×ニーハイガーター(エナメル・セクシー)
「いいギルオスくん? これは怪しまれない為の重要な合図よ! 各班が捜索から戻ってきたら『破れちゃった』って恥じらってお色直しに出るのよ! それを始まりとして私達は活動してくわ! いいわね! これが作戦の成否を決めるんだから!」
「アーリアァァ!!」
こ、こいつ! 絶対依頼の内容を勘違いしてやがるな!? この依頼はギルオスをどれだけ上手くバニーさせるかの依頼では……写真も取ろうとするのは止めろォ!
「いやーリアさんとかアーリアさんも間近で見ると迫力がスゲーっつーか……何詰まってんだろうな、アレ。どうなってんのローレット。もしやいかがわしい団体かローレット?」
悩み思う『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)である。うむ……尋常ならざる『戦力』だ……しかしほむちゃんよ、やっぱり衣装もやばいぞこの依頼。
「……衣装が白で黒ストじゃん。やたら目立つじゃん。一番そのぅ……ヤバいやつでは?」
私ちゃんJKやぞ? いいのんか!? 放送できるんかこれ!?
虚空へ文句を。ほ、焔ちゃんが黒幕なだけだから!
だがもはや腹を括るしかないのだ。見てくださいよ――ほら。そこにも……
「ふ~……ふ~~」
深いため息を二度。『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)は覚悟を決める為に呼吸を整えているのだから……! え、そういう訳ではない?
「わぁん! アイラさん~誰、誰この仕事持ってきたの! ねぇ~!? さっすがにこの真冬の中でこの衣装とか正気とは思えないんですけど~!?」
「タイムさん……ボクも着替えたいですよなんですかこの布面積頭おかしいでしょボクはともかく真冬なんだからみんな寒いと思いますよボクなんで寒いって感覚無いんだろう今だけすっごい憎いです」
泣いてる顔がかわいいねタイムちゃん。ハッ、本音が。
タイムが泣きついたのは『新たな可能性』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)である。バニー衣装ってデザインとか以前に圧倒的薄着である。冬よ? 今、冬。
胸元から上が出ているだけでもアレだし足も……
なんなら歩いているとお尻に食い込んでくるので調整しないといけないし……ううっ。
「……いえ。これは依頼。依頼なんだ。だからボクならやれ る はず ううううう」
自己暗示自己暗示~! タイムを抱擁するアイラの衣装は、ほんのり淡い蒼色のバニー衣装だった。なぜかストッキングなしの素足にバニーの耳付きである。どうして……
「タイムさん、こっち向いてください。大丈夫、似合ってますよ、可愛い」
更に半ば諦めているタイムに言葉を紡ぐのは『砂上に座す』一条 佐里(p3p007118)である。知り合いであるタイムから『仕事ですよ』とお手紙を貰ったのはいいのだが――まさかこんな――いや確かに仕事ですけれど……
くっ、仕方ない。この衣装色々大丈夫か心配になるが……鏡の前で衣装を眺めてゆっくりと一回転。うん……うん、胸を押さえてうっかりな事態が無い様に祈りながら。
「……とにかく行きましょうか。ええ――『お仕事』の時間です」
行かねば終わりもないのだと、タイムを宥めながら皆で控室から会場へと足を運んだ。
さぁ……お色気バニーのお時間ですよ! あ、違う、不正探しのお時間ですよ!
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「ラッシャッセー!! はいお酒ぇ! これかぁー? これがええのんかぁー?
おらぁ! もう一杯いけっるしょー! そら、イッキ! イッキ!」
開始直後。MIWAKUの美少女たる秋奈が目立つように給仕を。
人の目を集中させている間に探索班を往かせるのだ。抜け出ている者がいないと悟らせない為に他のメンバーは普通に給仕などを行っている。例えば。
「がははは! いやぁラングレー男爵の所には中々レベルの高い者がいますなぁ!」
「あはははは、どぉーもぉー……」
フツーに飲み物とか配ったりしているリアとかもそうである。
くそ、じろじろ見てくんなエロ親父共! だがここでブチ切れる訳にもいかない。多少の事は笑って過ごすとしよう……我慢……我慢よリア・クォーツ……尻に触れて来ようとした手を、握りつぶすかの如く手首抑えて防いだ以外はそそくさと。
ともあれ心を落ち着かせねば……そう例えばギルオスのバニー姿でも見て……あっ、ダメだ余計イラっとしてくる。後でぶん殴らないと。演奏……そうだヴァイオリンでもあるから演奏しよう……くっ! この演奏の腕は本来伯爵にお聞かせする為のものなんだけど!?
「……ギルオスさんって、気さくな雰囲気で結構好み~って思ってたのに……こんな格好もする人だったなんて……仕事は選んでくださいね? バニーガールですよ? はは、お揃い……」
タイムはギルオスに抱いていたイメージを急降下させながら引き笑い。ううっ、スタンダードな黒バニーにストッキングなんて……ジャケット羽織ってもいいかな? 駄目? そんなー
佐里達と比べて随分とお胸の部分に隙間がある……なんてこった。いや、これはサイズが合ってないだけだよね、気を付けよっと。くっ! お尻はぴッちぴちなのに……!
「ええととにかくなんだっけ? 不正の手がかり……まぁ細かい事はいっか! とにかく怪しいモノを見つければいいのよね。さっさと見つけて終わらせちゃいましょう!」
「地図も頂けたので、スムーズに屋敷の調査は出来そうですよね。いやぁやっぱりお屋敷の事をよぉく知らないとなぁって! 思って良かったなぁ!!」
肌への食い込みを人差し指でこっそり直しながらタイムはアイラとアーリアと共に往く。
幸いにしてアイラは男爵からは地図を入手できた。ギルオスが黒のバニーを着ている一番目の班は出撃! ちくしょう、なんて絵面だ。とにかく調べるは男爵の私室。警備兵達もやる気がないのか精神が死んでるのかあっさりと到達できるものである。
「で・も。こことは限らないのよねぇ……だから、ほーら行きましょうねー」
今からここを調べていくが目当ての場所とは限らない。
故にアーリアはファミリアーの猫を使役。書斎の方へと先行させて、使用人たちの目を盗めるルートを調べるのだ。や、全員目が死んでるしいざとなれば『似合ってるわよぉ』の一声で地獄に落とす事は出来るのだが、それはそれ。
鍵が掛かってようが薄い扉など物質を透過する術でなんなく通過――しかし、無い。此処にあるのは予備のバニー衣装ばかりである。なんでや。
「はっ、アイラ達が戻って来たわね……次はあたしたちの番か」
と、リアが気付く。ギルオスの衣装が白×網タイツになっていて、もののついでにその顔が死んでいる事に。つまりアレは第二班の出陣の合図である!
「ギルオスさん……災難でしたね……しかも男性は一人ですし……
社会的犠牲を無駄にしない為にも探していきましょうか……!」
「ウェーイ! ギルオスくん元気ないぞぉ~? ほらテンションあげあげでいこ!」
佐里は生暖かい目でギルオスを遠巻きに見守りつつ秋奈はドヒャッターに写真拡散希望の勢いで絡んでいく。白組出陣じゃあ! タイム達から私室の捜査状況を聞き――
「ドリンクは! いかが! ですかぁ! こちら、自慢のオレンジジュースと!! なって!! おりまーす!! いかか!! ですかぁああああ!!」
注意を引いた役目を今度はアイラが担う。大きく息を吸い注目を集めるのだ! あ、でも止めて見ないで! 恥ずかしくは……な、ないけれど! あ、ダメですって! わ、私のふとももは見世物では……! ぴゃあああ!
性的魅力なる誘惑はアイラの周囲に邪なる虫を。まずいー! 彼に後で『お話』されるー!
「これも重要な役目だからねぇ~あ、タイムちゃん。丁度いい所に壁……じゃなかった的が。ほら、そこに立ってよぉ。芸をするのよぉ」
「え、芸? と言っても芸なんて特に……ん? なんで頭の上にリンゴを置くんですか? 距離を取……手に持ってるダーツはなんですか? え、まさか。ちょ、アーリアさんさっきお酒飲んで……ない? ホントに!?」
「大丈夫よぉ~私の腕を信じて~? まぁタイムちゃんは二人いるみたいだし、片方に当たっても平気だわぁ~」
アーリアさん、それ酔ってますよね!? 信じてますよおおおおお!?
「うーん……成程。周囲の視線が全部先輩たちに向いている……
仕事が始まると流石だなぁ。いい勉強になるね」
タイムの慟哭が響く中、その様子を見据えるハリエット。
きっとあのダーツの流れも信頼の証故なのだろうと頷いていた――あ、当たった。
●
佐里達は書斎の方の探索に出向いていた。不正の証拠を隠しているならきっと隠し部屋でもあるだろうと――本棚の本を手前に倒したりすると入り口が、こう、ゴゴゴッって出てくるはずなのだが。
「うーんありませんね……貴族のお屋敷に隠し部屋ってありそうなものなのですが」
「ここかー!? へっちな本でもあるじゃろ、どこじゃー!?」
丁寧に探すのだが見つからない。秋奈の捜索も、見つかるのはバニー本だらけだ。なんで。
「……くっ、なんか、こんな姿で真面目に悪事の証拠探しとか、冷静になると駄目ね……色々と疑問ばかりが思い浮かんで……くそっくそっ!」
思わず本棚を殴るリア。その姿は依然バニー。
こんな衣装で悪事探しなど――本意ではないんです、ホントに!
「はぁ……さて、ここにはやっぱりなさそうですね。そろそろ戻りましょうか、怪しまれても困りますし……しかし話には聞いていましたが警備の方達もバニーなんですね……」
戻る際、視線を向ける佐里。招待客以外はバニーばかり……死にそうな顔というか辛そうな顔と言うか……いっその事転職したらいいんじゃないかな、とは思うものの続けているのには何か理由があるのだろう……お給料とか。
「……そろそろ順番かな。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね! ほら行くよギルオス君! なーに恥ずかしがってるの、早くこの赤いバニーに着替えてよ! 時間ないんだよ!?」
「焔、君はもしかして鬼かな?」
同時。秋奈達が戻ってきたようで――最後の組であるハリエットと焔、そしてギルオスの番だ。
(……着替える前に挨拶できれば良かったんだけど)
ハリエットが見据えるはギルオスだ。言葉を掛けたかったのだが、中々タイミングがつかめず。
――遠目から見るあの人は沢山の人に囲まれている。賑やかで、華やかな場所で。
路地裏で私に声をかけたのは、本当に偶然。
あの人にとってはなんてことない、只の気まぐれ――それは重々承知してるよ。
「……」
「んっ、どうしたんだいハリエット――さぁ早く行こう。もうここには居たくないから……」
「……ええと、ギルオスさん。情報屋は仕事の為なら苦労を厭わない。流石だね。情報収集のお手並み、拝見させてくれるかな」
あれ? なぜかちょっと固い顔をされた。なぜだろう……?
疑問符浮かべるハリエット。ともあれと、皆が調べてくれた以外の場所……
離れの間へと行ってみる。
後はここぐらいだ怪しい場所は――なんとか見つけてみようと。
忍び足で近付き、資料か何かが無いかと捜索する。焔が先行させた小動物もまた離れの前へと潜り込んで。
「うーん、特に怪しい所はなさそうな……あれ、待って?
あっ! 地下室があったんだ! これはきっと何かあるよね……!!」
瞬間。鼠型の小動物が指し示した先――よく見れば地下への入り口があった。
慎重に扉を開けてみれば確かに階段が。怪しい。
降りていく。一歩一歩……何があるのかと思案し――そして――
「……こ、これは!? き、きききき貴重なパルスちゃんグッズが――!! あっ、これこの前の限定販売パルスちゃんフィギュアじゃないか!! 宝物の山だよ!! わ――!!」
直後に焔の目にパルスちゃんが宿った。
灯りを翳してみればあるはあるはパルスちゃんの山が。人形・色紙・そのほか諸々……
でも待つんだ焔。探すべきはこれじゃない、不正の証拠!
「えっ、悪事の証拠? ……? あっ! そ、そうだね、忘れてないから大丈夫だよ!!
う、うーん、この中にあるのかな! 隅々まで探さないとね! はぁはぁ!」
涎を拭きなさい焔ちゃん。
ともあれギルオス達と暫く念入りに捜査すれば、何やらパルスちゃんとは関係なさそうな書類が……
「これが……重要証拠?」
見れば怪しき金額の羅列。これは……裏帳簿か!
パルスちゃんグッズを買いあさる為の――私欲を肥やす為の裏帳簿――!
「ぬぁ! き、君達何をしておるのかね……!」
その時だ。背後に現れたのはラングレー男爵。
離れの間に不審な気配でも感じて見に来たのか……しかしもう遅い。
不正の証拠は見つけられたのだ! 大量のパルスちゃんグッズと共に!
「こんな悪い事をして集めたお金でグッズを集めたってパルスちゃんは喜ばないよ! それに、ファンが悪い事をして捕まった何てパルスちゃんが知ったらきっと悲しむよ。今ならやり直せるよ、もう悪い事はやめよう?」
「ええい煩い! 秘蔵のパルスちゃんグッズを手に持ちながら何を言うか……!」
「――おらぁ! 証拠は挙がってんのよこのウサギ男爵!!
大人しく罪を認めてキリキリ吐けやぁあああ!」
警備兵――と声を出そうとした男爵を後ろから襲い掛かるのはリアだ!
ババァ直伝クォーツ式CQC! まさかシスター・アザレアもバニー姿のリアが腕ひしぎ十字固めするとは思うまい。ババァには内緒だよ!
「え、なんです? ついに見つかったんです不正の証拠! はい、という事はこのバニーガール屋敷依頼もおしまい! はい! 一件落着解散解散――!! ぴえーん、着替えたいよ――!」
「あらあらタイムちゃん、嫌な事があったら飲んで忘れるのが一番よぉ? ――という訳で男爵。バニーを着せられた衣装をパルスちゃんにばらまかれたくなかったら、一番高いお酒を持ってくるのよぉ!」
ボコボコにされる男爵。助けに入らない警備兵。
その様子にタイムは依頼の終わりが近い事に安堵して、額に刺さったダーツを抜きつつアーリア共にお酒の時間。アルコールは全てを救うのです……
「なんだかんだずっと着続けているとバニーにも慣れてくるものですね……いや、これで働き続けたいなんて思いませんが、え、男爵さんをバニーに? ――流石にドン引くでしょうね、パルスさんも。」
「ッハァー! おわり? たーのしかったぁー!
またバニー着るのもいいわー……ってそんなワケあるかーい! だはははは!」
胸の位置をまた調整しながら佐里は男爵の行く末にげんなりして。
自撮りしている秋奈ちゃん――と同時に。
「あ、ラングレーさん捕まりました? んっと、えっと。じゃあ――」
男爵へと近付く、やけにニッコリとしているアイラ。
その口の動きは――読唇すると――
『表出ろ』
――後日、色々とガチ目に酷い目にあったラングレー男爵は改心したとも、証拠を流されて憲兵に逮捕されたとも伝えられている。いずれにせよ当時の噂として周囲に伝わっている話はこうだ。
『ラングレー男爵はえっちなバニー達におしおきされた』
……らしい!
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
パーティ会場に現れるお仕置きバニーの一団は噂になっているとか……!
真偽はともあれ、ありがとうございました!
GMコメント
どうしてー!! どうしてこんな依頼がー!!
おのれ焔ちゃん、謀ったなッッッ! 以下詳細です!
●依頼達成条件
ラングレー男爵の悪事(?)の証拠を掴む。
●フィールド
ラングレー男爵の屋敷です。
時刻は夜ですが、あちこちに明かりがあるので基本的に視界に問題はないでしょう。ええ。バッチリ見えます。
大広間と続く中庭で新年のパーティーが開かれている様です。そこには多くの貴族やラングレー男爵の知り合いなどが集っています。皆さんはシナリオ開始時はここで使用人として(食事やお酒を運んだりなど)なにかしらの作業をしてください。
後は作戦次第ですがどうにかしてここを抜け出し、屋敷内の調査を始めましょう。
全員が同時にいなくなると使用人の少なさに不審がられるかもしれません。が、短時間でケリを付けられるなら不可能ではありませんので全員一気に行くのも手段の一つです。
屋敷内のおおまかな地図は把握しているものとしますので、迷う事はありません。
彼の私室、書斎、離れの間……どこかに彼の悪事の証拠がある筈です。
とはいえ流石に分かりやすい所に無いでしょう。もしかしたら隠し部屋があるかも……? それらを探す非戦スキルや相応のギフトなどがあればスムーズに探索できるかもしれません。
●ラングレー男爵の隠し部屋
中庭から少し離れた薄暗い所に『離れの間』があります。
小屋の様な建物で一見すると不審な所はありませんが……実はここには地下室があります。なんとか地下への入り口を見つけるとその下には……
なんと鉄帝のアイドル闘士、パルス・パッション(p3n000070)のグッズが沢山あります。
滅茶滅茶あります。実はなんとラングレー男爵はパルスちゃんのファンだったのです!! 私財と民からの血税を注ぎ込んでパルスちゃんグッズを買い集めるのに御執心なのです。限定品とか買い占める勢い。
その中を探しまくると――なんと隠された資金と裏帳簿らしき書類が出てきます。
そう、彼は脱税をしているのです。パルスちゃんグッズの為に。
これを手に入れれば証拠になるでしょう。
●ラングレー男爵
バニーガール衣装に強い執着を持つ幻想貴族。
パルスちゃんの事が好きすぎて私財の大半をつぎ込む所か、最近は領地の一角や住民を鉄帝の資産家に売却する計画も立てているとか……いつかパルスちゃんにバニーガール衣装を着せたいと思っている。その為に鉄帝の貴族とコンタクトをとってなんとか招致出来ないかと画策中。
●警備兵×??
屋敷のあちこちにいます。バニーガール衣装で。
一部は強制的に着せられている所為か死んだような目の人物も……それ故に彼らの目を盗んで行動するのは決して難しくないでしょう。というか警備のやる気があるのかもよく分かりません。
●味方NPC:ギルオス・ホリス(p3n000016)
巻き込まれた。なんで――!!
彼もバニーガール衣装です。うっ、どうしてこんな事に……
指示をすると彼も協力して行動します。使用人として行動させたり、どこかの部屋を調べる際の調査に同行したり出来ます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBunnyです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありません。全員バニーガールになってもらう。
男も!! 女も!! バニーガール!!
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