シナリオ詳細
<アアルの野>地平線のよすがに
オープニング
●
『願いを叶える秘宝』――『色宝』
小さな願いをかなえるそれが眠る遺跡群『ファルベライズ』の探索。
そこへ介入してきたコルボ率いる『大鴉盗賊団』との戦いが激化を辿る中、イレギュラーズはついに遺跡の中枢――絢爛なる『クリスタル遺跡』へと到達した。
美しきクリスタル遺跡にて登場した死者を模す土塊――『ホルスの子供達』の動向も気になるところだった。
「藤野蛍さんと、桜咲珠緒さんですね。
ささ、おかけください。依頼したいことがありますので」
指し示された机に着座した藤野 蛍(p3p003861)は、同じように不思議そうな顔をする桜咲 珠緒(p3p004426)と視線を合わせて、ひとまず用意された椅子に着いた。
「軽くでも大丈夫ですが、ファルベライズ遺跡での攻防戦のことはご存じでしょうか?」
案内した女性――アナイス(p3n000154)は二人が座ったのを確かめてから問いかけてきた。
「ええ、色宝の眠っている遺跡でしょ?」
「はい、ある程度は……」
「その想定で行かせていただきますね。
ともあれ、イレギュラーズとパサジール・ルメスはファルベライズ遺跡の中枢――クリスタル遺跡に到着しました。
ただその……やはり敵、大鴉盗賊団ももちろん、クリスタル遺跡への潜入を試みております。
これを食い止めるというのが、皆様にお願いしたい内容なのですが……
今回、お二方を含む8人のイレギュラーズには大鴉盗賊団と……ついでに出てきたモンスターの類の討伐に向かっていただきたいのです」
「それはいいけど……なんでボクと珠緒さんだけ先に?」
「それについては、あちらの傭兵からの要望です」
そう言ってアナイスが手を向けた方向、そこにいたのは1人の傭兵だった。
「おう、嬢ちゃんたち。嬢ちゃんたちは覚えてねえかもしれねぇが……以前は世話になったな」
強面のリカオン顔をくしゃくしゃにして笑った大男は、2人と反対側に椅子を持ってきて座り込んだ。
「まぁ、今回は嬢ちゃんたちにお願いがあってよ。大鴉だっけか?
俺達オーフェルヴェーク傭兵団としても、あいつらに一泡吹かせてやりてぇ。
だからまぁ……ちょいとした嫌がらせがてら、大鴉がちょいと多めに集まった集団をぶん殴るのを手伝ってほしいんだわ」
にやりと笑った大男――シドニウス・オーフェルヴェークは蛍と珠緒をきょろきょろと見て。
「嬢ちゃんたちは多分あれだろ? 1人1人より互いがいた方が力がどんって出るタイプだろ?
だから、2人一緒に指名したんだわ」
顔をギュッとして小さくしたように笑って、いきなりスン、と真顔になる。
「相手の大鴉盗賊団はざっと10。
ついでにアンフィスバエナとかいうらしい蜥蜴と蛇を足して2で割って、ついでに鳥の羽を生やしたみてぇなやつらが3。
人の顔とライオンの身体、蝙蝠の翼とサソリの尻尾を持つマンティコアが3。
こいつら相手にあんたらイレギュラーズ8人と俺を含めたうちの傭兵8人で殴りあうって感じだ」
「……そうは言うけど、そんなに都合よく行くとは思えないわね」
「蛍さんのおっしゃる通りです。そんなモンスターと傭兵がいる場所に敵が来るとは思えないですね」
「なぁに、あそこはクリスタル遺跡のある一部屋。うちの傭兵が事前に突っ込んで色宝があるのは確認済みだ。
ぜってぇくるだろうよ。戦場はそうさな……馬鹿でけえ砂漠さ。
ちょうど、アンタたち2人に俺らがぶん殴られたあそこみてえによ。
違いがあるとしたら……そこが『遺跡の中の部屋』であることと満天の星空であることぐれぇだな」
そう言ってリカオンはまたもくしゃりと笑って見せる。
「色宝を砕くなり持ち帰るなりするまでは空間が普通の部屋に戻るこたぁねえみてぇだ。
つまり、やることやった後、ちっとばかし砂漠の夜空を眺めるのもいいんじゃねえか?」
そこまで言うと、シドニウスは席を立って別の誰かを探しに行くように歩いていった。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/37149/635d6ac5890c766cfddd67b3e0bafab2.png)
- <アアルの野>地平線のよすがに完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年01月28日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「よう、最近景気の方はどうだ?」
ライフルを担いだまま、依頼人でもある傭兵――シドニウス=オーフェルヴェークに問いかけたのは『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)だ。
「おう、おかげさまで悪かねえなぁ……まぁ、うちの景気が良いこたぁ必ずしもよろしかねぇだろうけどよ」
そう言って豪快に笑い飛ばされた。
ラダ自身が正面切って戦った相手ではないが、彼の傭兵団とイレギュラーズが邂逅した依頼で相手取った傭兵団だ。
「傭兵団の皆さんもお元気そうで何より。
共闘相手となった今は、その豪快さが頼もしい限りね」
その様子を見ていた『桜花絢爛』藤野 蛍(p3p003861)は他の傭兵達も健勝な様子に頷いて見せる。
「頼りにしています、どうぞよろしく」
「おうよ、嬢ちゃんもよろしく頼む」
差し出した手を、シドニウスが握り返す。
「協働、よろしくお願いします。指名のご期待に沿えるよう、努めますね」
気のせいか、少しばかり言葉に昂りを乗せる『桜花爛漫』桜咲 珠緒(p3p004426)も、静かに礼をする。
「ははっ、そう格式張られても困らぁ!
ま、でも、気持ち乗ってくれてんなら誘った買いもあるってもんだ!」
また大笑したシドニウスがちらりと視線を部下の傭兵達に向けた。
「うちのもイレギュラーズと共闘できるってんで、テンション上がってからよ」
そのままにやりと笑うのだった。
●
傭兵団の先導を受けたイレギュラーズは、真っすぐに目的地へと到着していた。
「ちょうどうまく後背を取れたようですね
態勢を立て直される前に敵陣に楔を打ってしまいましょう」
部屋の中に入った『転輪禊祓』水瀬 冬佳(p3p006383)は、眼前で魔獣と接敵を始めている盗賊たちに目を向け、首をかしげる。
(……しかしこの部隊……何でしょう。
まるで盗賊団に似つかわしくない雰囲気の人員が何人も……)
その考えを纏めながら、冬佳はそっと氷蓮華を抜いた。
「……にしても、何度見ても色宝は不思議ねぇ。それぞれ少しづつ起こす事象も異なるし……
まぁ、その感傷は後のお楽しみにしておきましょう」
油断せぬようゆるりと気合を入れる『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)はその華奢な身体を砂漠に踊らせる。
「まぁ、なにはともあれ、丁寧にやる事をやっていきゃあいい。気張るとしようぜ」
ストレッチをした『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)が視線を敵に向ける。
「あぁ、こういう機を逃す手はねえ。きっちりお灸を据えさせて貰うぜ」
黒犬を抜き、『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)も走り出す。
「ふむ、盗賊団とモンスター。同時に相手どる必要があるとはな。骨が折れる」
戦場を見据え、『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)が呟くその腕に抱かれた章姫は空を見上げて手を伸ばしている。
「お星様綺麗なのだわ! キラキラなのだわ!」
あり得ざる空に目を輝かせる少女のような章姫に鬼灯が頬を綻ばせながらその一方でぽう、と紋章を浮かび上がらせた。
珠緒はファミリアーの小鳥を空へと飛ばすと同時、戦場に足を踏み入れた。
桜色の魔力が全身をはためかせ、渦を巻く。
細く、確かに巡らされた魔力が鮮やかな光となって、空へ舞い上がり、敵陣の後方――イレギュラーズに最も近い位置にいる女性へと撃ち込まれる。
頭上より降りた桜花の輝きが女性――ナディアの周囲を渦を巻き、その光で焼き付ける。
悲鳴が戦場に響き、盗賊たちの視線がナディアを経て、イレギュラーズに向いた。
珠緒はその視線が自分に向くのを見ながら、藤の花の輝きが自分の身体を包み込むのを感じていた。
蛍は珠緒に加護を降ろすと同時、司桜を起動させる。
美しき純白の手甲へと変じたその姿に加えるように、本の中から引き抜くようにして手にした桜色の剣を握り締め、視線を傭兵達に向けた。
「サポートするわ」
「おう、うまく使えよ、嬢ちゃんたち――」
魔力の高まりが背後から感じ取れる。
ルカは既に走り抜けていた。
至近――同時、黒犬(偽&誤)に籠めた魔力が黒い顎を形作る。
振り返りざま、ナディアが目を見開いた。
斬り上げるように振り抜いた黒い顎が、女の身体へ、斜めにくらいつき、切り裂いた。
凄絶な威力となった黒き王の牙は女の身体に確かな傷を刻み付ける。
「すまねぇとは思うが、この機会を逃す手はねぇからよ」
続けるように女の前へ躍り出た義弘は、拳を握りしめ、鳩尾目掛けて強打を叩き込んだ。
文字通り突き刺さるように放たれた拳が女の身体にめり込む。
拳の一撃は深く、強く、鈍く――何より重く彼女の身体に響き続ける。
鬼灯はそれに続けるようにして女の真後ろに移動していた。
隠密より回り込んだその場で、女の背中辺りに手甲越しの手を押し付ける。
掌より生じた漆黒の月が女をまばゆく照らし出す。
破滅を齎す闇の月の輝きは、ナディアの身体に拭えぬ不運をもたらす。
冬佳は氷蓮華に魔力を籠め、五芒を描く。
星がスパークを立てて光を放ち、やがてその形を変質させていく。
収束し、成形されたるは一条の雷光――破魔を為す雷霆の矢。
氷蓮華を弓のように見立てて、引き絞るようにして構えを取る。
耳元で激しく音を立てる雷鳴を引き付け――放つ。
神速の閃光が真っすぐにナディアの肩に炸裂し、その肉体を焼くように迸る。
ヴァイスもほとんど倒れそうなナディアの下へたどり着くと、己が身体より生み出した茨をけしかけた。
それそのものが意思を持ったように蠢きながら走った複数の茨がナディアの身体にまとわりついた。
捕縛した茨はやがて締めを強め、ぎりぎりと締めあげていく。
棘が彼女の身体に突き立ち、冷気と麻痺性を帯びた毒を押し付ける。
ラダは一連の猛攻をスコープ越しに見据え、引き金に指を添えた。
静かに押された引き金より放たれたのは、漆黒の弾丸。
真っすぐに戦場を突っ切り、ナディアの頭部をソレが撃ち抜いた。
ぐらりと傾いだ身体が、倒れていく。
炸裂したゴム弾がころころと砂漠に落ちていった。
集中して放たれた連続攻撃でナディアが沈むころ、敵の動きもあった。
3人の軽戦士風の男――ジャミール、ジャワード、ターミルが亜竜にも似た怪物、アンフィスバエナに1人ずつはりつき。
両手に槍を持った男――ナジェド、巨大な穂先の槍を持った男――ハーリス、大薙刀を持った男――マアルーフの3人がそれぞれ人面の獅子、マンティコアを抑え。
踊り子風の女――ライラを中心に、杖を握る少女――アミラと、たった今倒れたナディアが後衛から魔術で押しつぶす。
そんな戦術を狙っていそうな布陣だったが、イレギュラーズの介入に気づいた瞬間、目ざとく振り向いた男――『逃げ足』シェハーブが指示を発した。
「女ども――魔獣は後だ! 先に後ろの奴らを落とせ! ライラぁ! てめえが前に出ろ!」
「――ごめんなさい」
片手剣にスパークを起こしたライラが、最前衛にいたヴァイスに剣を振るう。
不可視の斬撃がヴァイスの身体に傷を付けた。
●
とはいいつつも、イレギュラーズの動きは既に決まりつつあった。
魔術師の少女を守りに迎える人間がいなかったのが盗賊団側の最大の不利だったといえる。
詠唱の終わり、極大の炎が撃ち込まれたものの、流石に一撃ではイレギュラーズを仕留めきれなかった。
反撃となった8人による集中攻撃がアミラを落とし、ついでとばかりにライラを落とせば、数で優位に立ったイレギュラーズの動きは止まらない。
魔獣を無視するわけにもいかぬ盗賊団の下へ、傭兵団と蛍、珠緒の10人が到達するのは当然の帰結だった。
3体のアンフィスバエナを抑え込まんとしていた3人の男達のど真ん中に割り込んだ蛍は、桜花の剣を静かに構えていた。
収束する魔力が桜色の渦を為し、光の柱となって剣身に纏われていく。
熱量を帯びた剣を、そのまま振り抜けば、炎熱の桜吹雪がターミルの身体を焼く。
その剣閃はしかれども痛みを伴わず――ただその身を焼く刃。
美しき桜吹雪はターミルと――彼を着け狙っていたアンフィスバエナをも巻き込み、その熱の内側にて落とし込む。
これは二人目だ。既に1人目のジャワ―ドは倒れ、傭兵達によって縛り上げられて戦場の後方に送り込まれている。
咆哮。邪悪を煮詰めたような声を鳴らした怪物が、注意を向けていたターミルから後退し、その目をイレギュラーズに向けた。
「来るぜ、嬢ちゃん――どうする」
「まとめて叩き潰すわよ!
貴方達(傭兵団)そういうの得意でしょ!」
「はっ――そう来なくちゃねえ!」
にやりと笑ったシドニウスが、闘志を露わに眼前の魔物を上段から斬り下ろす。
「皆さん、先程までと変わらず、前衛の方で敵を抑えて、銃兵と団長さんで打ち込みます」
統率の取れた指示を出しながら戦場全体を見通す珠緒の活躍は大きい。
『怯え』を感知した蛍は、その視線を未だにアンフィスバエナを抑えようとしていた少年に向ける。
それとほぼ同時――少年が声を上げた。
「こ、降参します! なので、少しだけお手伝いを――お願いします!」
それはある意味賢い選択だ。
蛍はその声を聞いた瞬間、一気に走り抜けてジャミールの前に出た。
ジャミールに食らいつかんとしたその頭部を、己が身で受け止める。
珠緒はそれを見た瞬間、血脈を励起させた。
粟たち、騒ぐような熱を帯びた血が、桜花となって蛍の身体に降り注ぐ。
温かな光は真新しい蛍の傷を瞬く間に癒していく。
一方、魔物と盗賊の殆どを傭兵団と2人に任せた6人はシェハーブと相対していた。
「へへ、しくじったなぁ! 逃げようにもこれじゃあ逃げられねえや!」
そう言う表情と手には迷いや怯えの類は感じ取れない。
「端から逃がしゃしねえ」
ルカは真っすぐに敵と相対しながら、静かに魔力を籠め上げていく。
集中するにつれて膨張する魔力が漆黒の顎を形作り、獲物を喰らおうと涎を垂らす。
もう一歩の前へ踏み込むと同時、身体の捩じりを利用して、真っ二つに断ち割らんばかりの横なぎを叩き込む。
跳躍して躱そうとしたシェハーブの身体を、捉えた黒き魔力が喰らいつく。
「ぎっ!?」
相手が目を見開くその顔へ、次の一手が伸びていた。
限界まで引き絞って重心を乗せた乗せられたそれは、ルカとほとんど同時に動き出していた義弘の拳。
凄まじい速度で放たれた腕が、横なぎとは反対側から迫り、真っすぐにそのの顎を捉える。
引きちぎれそうなほどの速度で反対に跳ねたシェハーブの顎。
撃ち抜いた拳は芯まで届き、鈍く響いて脳震盪を引き起こす。
冬佳はシェハーブの姿を真中に捕らえ、五芒星を切る。
鮮烈的な光を放ちながら引かれた線より導かれるは、祓魔の光陣。
シェハーブの身体を飲み込むサイズの光陣がその四方と上空に描き出され――強烈な光を放つ。
鮮烈な輝きに焼かれるシェハーブがふらふらとバランスを崩していた。
「私は手加減が得意ではないの。全力でやらざるを得ない以上、駄目だった時はごめんなさいね?」
可能性の片鱗を纏ったヴァイスはシェハーブの背後から茨を放つ。
まるで網のように広がった無数の茨が再びシェハーブの身体をぎりぎりと締めあげていく。
白んだ視界から帰ってきたらしい敵が、悲鳴を上げる。
二度に渡って締め上げられた身体が、砂に降りる頃には、その身体の凍結は進んでいた。
「悪く思うなよ、色宝を渡す訳にはいかないのだ」
「ごめんなさいね! 代わりにお紅茶はいかが?」
構えた掌に形成される闇色の月。
異様に引き付けられるような、それでいてどこまでも寒気がするような。
異質な月が膨張し、シェハーブの身体を闇色に染め上げる。
もはや倒れる寸前の気配を見せるシェハーブの心臓を見据え、ラダは最後の弾丸を放つ。
ゴム製の弾丸はまるで吸い込まれるかの如くシェハーブの心臓付近へと走り抜ける。
敵の身体が不運にもバランスを崩し――打撃音にも似た着弾の音が響いて、その身体が後ろに倒れこんだ。
●
シェハーブの捕縛と一部の降伏により、形勢が確定した後、魔物の討伐に殆ど時間はかからなかった。傭兵団に傷を負った者もいるが、それぐらいだ。
「もし、傭兵団に余裕があるなら……あの盗賊達が改心した後、面倒を見てあげて」
戦いを終え、捕縛した盗賊たちから視線を外した蛍は、シドニアスへと声をかけた。
「あぁん? んー……」
「流石に、虫が良過ぎるわよね……」
「いいや。虫の良し悪しじゃあねぇ。嬢ちゃん、俺達の戦い方見ただろ?」
オーフェルヴェーク傭兵団はかなりの攻撃偏重型だった。
持ち前の超反射神経で奇襲を受けないことを利用して、徹底的に前に突き進むタイプの戦い方だった。
よく言えば勇猛果敢ではあるが、受ける――与える印象のほとんどは猪突猛進というべきだ。
「俺達のやり方が成り立つのは獣種だけで構成してっからだ。
まぁ、嬢ちゃんたちイレギュラーズはともかくな。
だからまぁ、獣種以外を入れんのはそいつらに都合が悪いって話だ」
毛並みをガシガシやったあと、少しばかりバツの悪そうな顔を浮かべた。
「そう……それじゃあ仕方ない……わね」
「盗賊とて人だ。時に事情もあるだろう。
折角だ、後でゆっくり聞かせてくれよ。
なれる分だけ、力になるさ」
そう言ったラダに、マアルーフとナディアが釈放を願う。
聞けば、各々、妻と夫が捕まっているのだという。
冬佳はその話を聞きながら、彼らに声をかけた。
「大鴉盗賊団は討伐される流れです。
ご家族を救出するなら、急いで方法を考えねばなりませんね」
目を見開いたのはマアルーフとナディア、それにライラの3人。
「まぁ、嘘かどうか知らねえが、
そいつらを捕縛して人質を殺されたんじゃあ目覚めが悪いわな。
俺としては見逃してやってもいいと思うぜ?」
「あぁ……まぁ、たしかにそれもそうか……。
まっ、いいんじゃねえか?」
ルカが続ければ、シドニウスも少しばかりうつむき、何やら考えを纏める。
そのまま、ちらりと視線を後ろにいた部下にやり、マアルーフとナディアの縄を断ち切らせる。
「さっさと逃げな。あんまし時間かけるとこっちに寝返ったと思われるかもしれねえぞ」
そのまましっしっと2人に手で払えば、彼らはそのままどこかへ走り去っていった。
「俺は父さんと母さんを養わねえといけねえ……
そりゃあ、盗賊団なんて駄目だってのは分かってる。
でもよ……じゃあ、どうすればいいんだよ!」
そう言ったジャミールの前にかがんだルカは、真っすぐに視線を合わせた。
「……おまえがやる気なら、うちに来るか?
そっちの団長は受け取れねぇんだろ?」
動揺しつつも、視線を合わせるジャミールに、言いつつ、視線をシドニウスに向ければこくりと頷かれた。
その視線を少女に向ければ、気づいた少女が驚いた様子を見せる。
「そっちのも、アミラだったか? アンタがいいならうちに来るか?」
驚いた様子を見せた少女がこくりと頷くのを見て、ルカは立ち上がり、シドニウスに視線を向ける。
シドニウスが視線を部下の方に向ければ、縄が解かれた。
同じように、盗賊団からの離脱を条件に、ライラも縄を解かれた。
「他の奴らはこっちで連れて帰るとするぜ。ひとまずはお疲れさん。
また機会があったらやろうぜ、イレギュラーズ」
部下に視線をやって引き立たせながら、シドニウスがその場を後にしていく。
一方、鬼灯は砂漠に腰を掛け、満天の星空を見上げていた。
懐に抱く章姫が、満天の星空に手を伸ばす。
あり得ざる砂漠の空を、無邪気に笑みを浮かべて手を伸ばす愛しの嫁の姿を見ながら、鬼灯は顔布の下に笑みを刻んでいた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
『逃げ足』の異名のわりに回避が高いわけではなかったのが運のつきでしょうか。
上手く作戦がハマっていたと思います。
MVPは蛍さんへ。
ヘイトコントロールができてなければここまでスムーズな勝利には至りませんでした。
お疲れさまでしたイレギュラーズ。
お見事です。
GMコメント
さてそんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
藤野蛍さんのアフターアクションより。
ありがとうございました。
それでは、3つ巴を始めましょうか。
●オーダー
【1】大鴉盗賊団並びにモンスターの撃退
【2】色宝を大鴉盗賊団に盗ませない
【3】色宝の回収
複数あるように見えますが、【3】が達成する状況は【1】と【2】も達成されていることでしょう。
●フィールド
満天の星空の下に広がる巨大な砂漠。
気温は意外と過ごしやすく、一見すると外に出たかと思わせますが、あくまでクリスタル遺跡内部の一室です。
遮蔽物はなく、地平線が広がっています。質感はありますが、砂はつかないので寝転ぶと視界に砂漠の夜景で覆われるでしょう。
身も蓋もない言い方をするとプラネタリウムっぽい感じになっています。
地平線を感じますが、実際はせいぜいが200m四方程度です。
戦闘終了後は夜空を見てもよろしいかと思われます。
●戦闘開始時状況
皆さんはフィールドに入った盗賊を魔獣と挟み撃ちにするようにして背後に到着します。
●エネミーデータ
・『逃げ足』シェハーブ
今回の大鴉盗賊団達の指揮を務める人間種。
二つ名の通り、逃げ足が速く、状況判断能力はかなりの物。
元はどこぞの傭兵団に所属していた模様であり、剣の腕もあります。
武器は片手剣。高い反応値とCTに連、追撃にでやられるより前にやる手数型の軽戦士です。
通常攻撃としての剣での近接戦闘以外に以下のスキルを持ちます。
<スキル>
毒剣:剣に浸した毒で対象を斬りつけます。
物至単 威力中 【猛毒】【呪縛】
乱れ斬り:対象を連続して切り刻み、傷を与えます。
物至単 威力中 【連】【追撃:小】
逃げの一手:三十六計逃げるに如かず、です。
物至単 威力小【自カ至】【ブレイク】【攻勢回復:小】【泥沼】
・ジャミール、ジャワード、ターミル
大鴉盗賊団の構成員。
ジャミールは10代の少年、ジャワ―ドは20代の少年、ターミルは30代後半の男性。
ジャミールは父母を養うため、ジャワ―ドは腕試し、ターミルは地元を守るために参加している模様です。
全員が片手剣の軽戦士型。
物攻、回避、抵抗、反応が高めで防技が低め。
<スキル>
全霊突:自分の身体ごと、対象を突き飛ばすような突進と突きを放ちます。
物中単 威力中 【氷結】【崩れ】【恍惚】【飛】
・ナジェド
20代の少年。両手に槍を1本ずつ持っています。
元はどこぞの傭兵であったようですが、
些細な行き違いから同僚を殺し、その同僚の槍を強奪して流れてきたようです。
通常攻撃が至~中距離、【反】をもち、防技とHPが高めの防御型です。
<スキル>
薙ぎ穿ち:片手で薙ぎ、片手で刺突を放ちます。
物近列 威力中 【ブレイク】【スプラッシュ2】
・ハーリス
地元に伝わる宝に目がくらんで盗み、そのまま盗賊となりました。
巨大な穂先をした槍を持っています。
タンク寄りの万能型、通常攻撃が中距離。
<スキル>
薙ぎ払い:前方の敵を薙ぎ払います。
物中扇 威力中 【崩れ】【恍惚】
・マアルーフ
流れの傭兵です。妻が盗賊団にさらわれたようです。
幅広な刃の大薙刀を持つ男性です。
物攻、防技が高め、HPは並み程度のバランス型。
通常攻撃中距離。
<スキル>
呪性斬:刃に呪いを帯びさせて振り下ろします。
物中貫 威力中 【呪縛】【致命】
・アミラ
宝杖を握る魔術士の少女。
故郷の村長の娘でしたが、冒険者に憧れて旅に出た所、
いつの間にか騙されて盗賊団に加わっていた模様です。
神攻、反応、命中が高め。HP、防技、回避などの防御面は貧弱です。
通常攻撃が遠距離以上。
<スキル>
業炎弾:巨大な炎の弾丸を対象1人を中心とする範囲に打ち込みます。溜めを必要とする分、威力はかなり高め。
神超域 威力大 【万能】【溜1】【業炎】【炎獄】
・ナディア
水晶を持つ占い師風の女性です。
夫が盗賊団に捕らえられ、奴隷にされそうだった所を偶然持っていた魔術センスを利用されています。
神攻、命中、回避が高め。通常攻撃が遠距離以上。
<スキル>
多重魔法弾:多様な魔術を雨あられとぶちまけます。威力は高め。
神超扇 威力大 【万能】【溜2】【業炎】【氷結】【崩れ】【呪縛】【スプラッシュ3】
・ライラ
片手剣を握る踊り子風の女性。
流れの旅芸人でしたが、夫が騙されて盗賊団に加入、行方をくらましたために探しているようです。
神攻、命中、回避が高め。
通常攻撃が物+神、中距離、初見奇襲。
<スキル>
翔雷斬:スパークを放つ斬撃を撃ち込みます。
神遠単 威力中 【万能】【感電】【麻痺】【停滞】
・アンフィスバエナ×3
全長4~5m。蜥蜴と蛇を足して2で割って、ついでに鳥の羽を生やしたような怪物。
鳥の羽の前に進みそうな方向に蜥蜴の顔、反対側に蛇の顔がついています。
反応、回避が高め。
常時低空飛行しています。初見だと亜竜っぽく見えますが、亜竜ではないので見た目ほど強くないです。
<スキル>
放射:口から大気を燃やし尽くす高温の炎を放ちます。
神中貫 威力中 【業炎】【苦鳴】
双毒牙:強靭な蜥蜴の牙で喰らいつき、蛇の口で毒を注入します。
物中単 威力中 【猛毒】【致命】【スプラッシュ2】
・マンティコア×3
全長2m程度。人の顔とライオンの身体、蝙蝠の翼とサソリの尻尾を持つ怪物。
HPが豊富、物攻、神攻、反応が高め。
<スキル>
毒尾:サソリの尾で対象に毒をもたらします。
物中単 威力中 【猛毒】【致死毒】【痺れ】【麻痺】
魔獣の魔眼:対象1人に石化を付与する魔眼です。
神遠単 威力中 【万能】【恍惚】【石化】【魅了】
●味方データ
『砂漠の涙、不毛な戦』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4121)に登場した傭兵団。
獣種オンリーで構成され、過剰に火力偏重の傾向があります。味方戦力として充分に期待できます。
・『オーフェルヴェーク傭兵団長』シドニウス・オーフェルヴェーク
大柄の壮年男性。豪快で堂々たる人物。長大剣を握る身体に傷跡の目立つリカオンの獣種。
戦闘スタイルも豪快な物攻型パワーファイターです。
黒顎魔王にも似た闘気を収束させて放つ超高火力の斬撃が一番の大技。
皆様と同等からやや格上です。
<スキル>
奮迅烈斬:闘気を収束させて放つ超高火力の斬撃です。
物至単 威力特大 【溜1】【麻痺】【必殺】【邪道小】【反動中】
・オーフェルヴェーク傭兵団×7
文字通りオーフェルヴェーク傭兵団の団員達です。
全員が獣種、物攻系アタッカー。2人が槍兵、2人が銃兵、3人が剣兵です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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