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シナリオ詳細

亜犬の遠吠え

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 マルク・シリング(p3p001309)はある人物に招待されていた。
「どうぞ、おかけになってください、マルクさん」
 柔らかく笑ってマルクを促したのは、招待した相手――『蒼の貴族令嬢』テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)である。
 使用人から紅茶を差し出され、お礼を言ったマルクとテレーゼは、向かい合うようにそっと座った。
「……お養父様はお元気ですか? ……と聞いても良いのか分かりませんが。
 彼には無事でいてほしいと思っています。お世話になりましたから」
 そう言って紅茶に舌鼓をうったテレーゼに、マルクは不思議そうに視線を向けている。
 向けられたことに気づいたテレーゼがふと首を傾げ、ハッとした様子を見せた。
「あぁ、ごめんなさい。お呼びしたのは世間話のためではありませんでしたね。
 お話はお聞きしたいですが、置いておくとして」
 そっとテレーゼが差し出してきたのは一枚の羊皮紙だった。
「イレギュラーズの皆様に、お願いしたい依頼があるのです。
 まぁ、単純な魔獣退治ですけど……」
「……これって、もしかして、僕が前に言った?」
 羊皮紙を見て内容を確認し、顔を上げたマルクに、テレーゼは静かにうなずいた。
「最近、村近くに出没するようになりました。
 今のところ、村にいる衛兵のような方々で退けられる程度の物ですが……」
 ティーカップを置いたテレーゼは、眼を閉じて一つ深呼吸をする。
「……問題は魔獣を退ける為に使用していた法螺貝が通用しないこと――というよりも。
 『法螺貝を吹いたものを優先的に狙うようになったこと』です。
 原理は不明ですが、つまり、この魔獣たちは『それを吹いた者は獲物だ』と認識するようになったのです」
「獣除けの笛が逆に獣を寄せ付けるようになってしまったということですか?」
 こくりと頷いたテレーゼが真剣そのものの眼をマルクに向けた。
「この手の事が起きる理由はいくつか想像はつきます。
 あくまで普通の動物の話ですけれど、人を食べた熊は熊よけの鈴を印に近寄るといいます。
 なのでもしかするとこの獣たちは――人を食べたことがあるのかもしれません。
 偶発的になのか、誰かが食わせたのかは不明ですが……」
「どちらにしろ、このままだと拙い……人命にかかわる可能性がある……」
「はい……それに、今回の依頼、マルクさんを優先的にお呼びした理由がいくつかあります。
 1つは先ほどの通り、この可能性を提示してくださったから。……そしてもう一つは」
 そこまで言うと、テレーゼが少しだけ緊張した様子で口ごもる。
「この村の近隣で、シリング家が取引をしている村があると人づてにお聞きしました。
 今のところ、ご家族や商会の方が犠牲にあったような被害の話は届いていませんが、
 今ないだけでしょう。早期に討伐を、と」
 そう言って、テレーゼは真っすぐにマルクを見据えて言い切った。


 魔獣を見かけるという近隣の村に訪れて数日をたったある日――
 警戒に務めるマルクの下へ、衛兵の一人が走ってきた。
「し、シリング殿! 来ました! 魔獣です!」
「分かりました。貴方は他のみんなも呼んできてください」
 そう言いながら、マルクは衛兵が言っていた入り口の方へと走り出した。
『クォォォォォン』
『グルゥゥゥ』
 丸太を連ねた柵上の壁の向こう、城門を割らんとたむろするのは、双頭の犬――オルトロスと呼ばれる獣であった。
 とはいえ普通のオルトロスではなさそうだ。
 独特の輝きを放つ双眸が、柵の向こうから誰かを見据え――直後、そこにいた衛兵がぱきぱきと石へと変じていく。
「これは普通の魔獣じゃなさそうだ……」
 衛兵の石化を解きながら思考を整理する後ろ、仲間たちの声がした。

GMコメント

 さて、そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 マルク・シリング(p3p001309)さんのアフターアクションとなります。
 そう言えば、このイラストでのテレーゼは初登場の気がしますね。
 一応、20歳以降の大人バージョンなテレーゼちゃんでした。

 まぁ、そんなことはさておき、さっそく詳細をば。

●オーダー
・亜種オルトロス×16匹の撃破【1】
・亜種オルトロスの侵入阻止【2】

【1】は絶対条件、【2】はあくまで努力条件とします。

●フィールド
 周囲は何の変哲もない平野部。
 一応は街道とそうじゃない部分がありますが、殆ど何も変わりません。
 背後には村と門があります。

・スタート時状況

 皆さんは戦闘開始時、村の周囲を囲う柵の外になんやかんやで出ています。
 もしも門が破られれば、村の中へオルトロスは侵入するでしょう。
 そうなれば言葉にするまでもない惨状が広がります。
 後味で考えれば侵入を許さない方がよろしいかと思われます。

●エネミーデータ
・亜種オルトロス×16
 言わずと知れた双頭の犬。身長は2m~3m程度あります。
 獰猛で攻撃的、どうやら遠吠えによる意思疎通も行っているようです。
 恐らくは群れのボスのような個体がいると思われますが、どれかは不明です。
 弱そうな相手や鈍そうな相手から優先的に狙っていくようです。
 なお、怒り付与にあまり反応を示さないのと同時に、
 法螺貝による音で怒り付与と同等の効果が期待できます。

 高い反応、回避、神攻、物攻を有します。
 HP、抵抗は並み、CTや防技は低め。

 通常攻撃に相当する噛み付き、突進などに加え以下の攻撃を行ないます。

 双顎:2つの口で同時に対象に食らいつきます。
 物至単 威力中 【スプラッシュ2】【弱点】【猛毒】

 疾走:急加速により対象に接近し、後方へ吹っ飛ばします。
 物遠単 威力中 【万能】【移】【飛】【崩れ】【ブレイク】

 咆哮対話:遠吠えを用いて意思疎通を行ない、状況を整理しているようです。
 神自域 威力無 【BS回復】【反応:小アップ】【回避:小アップ】

 石化の魔眼:対象を石化させる魔眼を秘めています。
 神遠単 威力小 【万能】【鬼道:小】【石化】

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 亜犬の遠吠え完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月27日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
ヨハン=レーム(p3p001117)
帝国軽騎兵隊客員軍医将校
マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使
シラス(p3p004421)
竜剣
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー
ゼファー(p3p007625)
魔女
ロロン・ラプス(p3p007992)
頂点捕食者
孫・白虎(p3p008179)
特異運命座標

リプレイ


「油断のできない強敵……そしてロケーションに難ありと。
 戦うことだけが取り柄なので負けませんがね!!」
 駆け抜けたオルトロスたちの数匹が殺到し、双頭で食らいつくのを見とめ、『男の娘の魅力』ヨハン=レーム(p3p001117)は聞いていた話を反芻する。
(所謂、慣れというやつです?
 何かしら対策はアップデートし続けなければいけないというお話でしょうか)
 法螺貝をくるりと回して口元へ。
「まぁ、今回は逆手に取らせて頂きますけど。
 さぁ状況を始めよう! 二足の草鞋を履く鉄帝国がレイザータクト、ヨハンの戦術を見せてやる!」
 大きく息を吸って、ほら貝を鳴らす。
 独特な音が響き渡れば、周囲にいた6匹ほどの頭が起き上がり、ヨハンを見た。
『ォォォン』
 遠吠え――犬たちが動き出す。
「さぁ、音は慣れたと自信を持って来るがいい! その心を今一度、折る!!」
 青色の双眸と啖呵の先で、先頭を走る獣が雄叫びを上げ、その双頭でヨハンに食らいつく。
 小さな隙を微かにつく獣牙は、しかしヨハンの堅牢さを前にほとんど意味をなさない。
 続けるように、ある個体がその眼に胡乱な輝きを帯びてヨハンを睨み、ある個体が雄叫びを上げる。
 波のように撃ち込まれた獣の猛攻を受け止め、ヨハンは静かに閉ざした扇を開く。
 落ち着いて意識を整え、集中する。
 大気を扇いで微弱な電流を走らせ、電流を端末にして世界に接続する。
 放出された電気が、神聖なる輝きを帯びて迸り、受けた傷を急速に癒していく。
(ふむ……マルクの関係する村なのね。同僚の為にも頑張るとするかしらね)
 法螺貝を握る『トリックコントローラー』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)はそっと近くの3匹に聞こえる程度に吹いた。
 機敏に反応した六対の頭部がチェルシーを見て、唸り声をあげる。
「私が村を守る……! 主にお金の為に……!」
 今まで頭で考えていたことと一見全然違うことを口にして。
 不意に、魔犬の双眸が妖しい輝きを放つ。
 それに気づいたかのように、もう一匹、違う個体がチェルシーを認めて疾走、跳躍。
 背中ごと体当たりをかましてくる。
 身体が後ろに飛び、着地と共に前を向けば、獣がにやついたように見えた。
「ハァハァ……意外と勢い良いじゃない」
 起き上がった身体に続けるように一匹が双頭で食らいつく。
 体をねじり、放つ片翼の魔剣が、迫り来た一匹目掛けて殺到する。
 食らいつく身体に連続して突き立った剣は獣の動きをがんじがらめに留め、直後――紫の閃光が放たれた。
 鮮烈な輝きは目の前のオルトロスの身体を強烈に焼き付け、その身を灰に作り替えていく。
 引き付けに応じなかった獣たちの集団を見据え、シラス(p3p004421)は駆け抜けた。
 まるでそうなるのが決まっていたが如き魔力の爆発と共に、その視線に一匹を押さえ――一気に走り抜ける。
 至近――その寸前に強く地面を蹴り付け、軸足を中心に運動エネルギーと捩じりを加える。
 それは魔獣の爪の如き鋭さを帯びて、オルトロスへと伸びた。
 動作のほんの一瞬の隙、その合間へ入り込んだ蹴撃がオルトロスの胴と首の付け根付近を強かに打ち据える。
 殺されなかった勢いのままに、軸足を跳ね上げ跳躍、オルトロスの片方の頭目掛けて踵落としを叩き込む。
 がくんと、その頭部が落ちた頃、もう一方の頭部目掛けて横薙ぎに蹴り払い、止まる。
 ぶるぶると顔を揺らしたオルトロスが双頭で食らいつかんと迫るのを、まるで見えていたかのように紙一重で躱せば、敵がガチリと噛み付いた。
「へっ、そんなんじゃ当たらないぜ」
『グルゥ』
(ほら貝に反応する魔獣…? 
 なんか以前さびれた鉄鉱石の炭鉱を探索した際に聞いた気がする……)
 少し前に会った事件を思い出しながら、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は自分を振るう。
 この町に来てから襲撃に会うまでにとりあえずと作った釘やら鉄板やらを使って門の補強はしてある。
 それでもこの数のオルトロス相手が一気に突撃すれば門が吹き飛ぶのも時間の問題だ。
「まあ、門まで行かせなければいいか!」
『用途不明のユニットが接続されました、直ちに使用を中止してください』
 聞き慣れたエラーメッセージを無視して、魔力を籠めれば、砲口に収束する魔力が血色を滲ませていく。
(一手でどれだけ魔砲で巻き込めるか……)
 射線――4体ほどくし刺しにできる位置を見据え、サイズは一気に魔力を放射する。
 一直線上を真紅に塗り替えながら駆け抜けた血色の閃光が、オルトロスたちを巻き込み、貫いて走り抜ける。
 とん、とん、と足で勢いをつけた『特異運命座標』孫・白虎(p3p008179)が爆ぜるように駆け抜ける。
 真っすぐに駆けた白虎は、そのまま一番近くにいたオルトロス目掛けて至近すると、拳を叩きつけた。
 放たれた掌底が、オルトロスの腹部を真横に食い込み、獣が痛みに唸り声をあげる。
「お貴族様勅命のお仕事とあっちゃ、手は抜けないわねえ。
 ダンナのお客さんなら尚更ね?」
 ちらりとマルクを茶化しつつ、『never miss you』ゼファー(p3p007625)はくるりと槍を回して構える。
「なんて。さて、きっちりやりましょうか?」
 目指す先は集中する敵の動きのど真ん中。
 走り抜けると同時に跳躍する。
「さあて、今日も私の槍が冴えますわ!」
 緩やかに放たれた槍の薙ぎ払いが、刺突が、オルトロスに叩きつけられていく。
 注意を引かれ、がら空きの獣に打ち据えるのに何ら問題はあろうものか。
 6匹のオルトロス全てを薙ぎ払うが如き槍捌きを以って打ち据えれば、オルトロスに少なくない傷が刻み付けられる。。
(テレーゼ様が僕たちを呼んでくれなかったら、今頃被害はもっと拡大していたかもしれない。
 シリング商会だけじゃない。これ以上被害者を出さないように、今は村を守らなきゃ……!)
 杖を握り締めるマルク・シリング(p3p001309)の眼には決意に満ちていた。
 握りしめた杖で魔力を媒介し、収束させながら、法螺貝に釣られるオルトロスの方へ視線をやる。
 詠唱と共に地上に浮かび上がった魔方陣が輝きを放ち、天より悪を捌き、悪を焼く神聖の光が柱のように突き立った。
 範囲内にいる獣たちが雄叫びを上げ、その罪状に身を焦がす。
(んー、見た目として弱そうかなとは思うけれど、得体が知れないと思わせればボクが狙われることはあまりなさそうかな。
 足も反応も遅いけれどその分確実に行動するのがボクの強みだから、多少強引にでも削っていこう)
 プルプルと震える『ひとかけらの海』ロロン・ラプス(p3p007992)そのまま走り出すと、まとまって襲い掛かる10匹めがけて手を薙いだ。
 肉体より散った残滓が瞬く間に凍結し生みだされた槍が、隙間なく一直線にオルトロスたちの横腹を貫いた。
 槍は溶けだしてスライムに戻ると共に、ロロンの身体へ合流、収束する。


「何度やったって、私には効かないわよ……!
 今日はそのお口を針と糸で縫ってあげましょうね」
 怪しげな輝きを放つ魔眼を視線が合う。
 ペキペキと硬くなりつつあった石の身体は瞬く間にぼろぼろと剥がれて落ちる。
「残念だわ! 石化した後にペロペロ好き放題されるのはまた今度にしておくとしましょうね」
 指の間に挟んだ杭にも等しい造形をした黒い針を一匹のオルトロス目掛けて投擲する。
 それ自体は強靭な身のこなしで躱されるものの、既にチェルシーの動きは次にあった。
 燃え盛る炎をブースト噴射した超加速で近づき、衝突する寸前に地面を蹴り上げて跳躍する。
 片翼の剣が射出し、くるりと中空に回転すれば、そのまま魔力動力線が鮮やかな紫色を放ちながらしなり、捉えきれぬ軌道がオルトロスの身体を刺し穿つ。
 ゼファーは先頭に向かってきたオルトロスの動きを引きつけながらゆるりと躱し、そのまま返すように槍を構えた。
「良い子なワンちゃんなら幾らでも歓迎なんですけれど、ねえ。
 躾けのなってない子には、たっぷりお仕置きが必要ね?」
 まるで力を入れていないかのように放たれた一撃の刺突。
 美しき軌道を描きながら撃ち込まれた一撃を、後退するようにして躱そうとしたオルトロスは――まるで狙っていたかのように追いついた穂先に撃ち抜かれた。
 脚部関節へ突き立った槍はその衝撃を芯にまで伝え、同時に獣の動きを封じ込める。
 そのまま視線をちらりと後ろに向ければ、ヨハンが魔眼で身動きを封じられつつあった。
 それを見届けると同時、ゼファーは法螺貝を吹いた。
 瞬間、オルトロスたちの視線がゼファーにも向けられる。
 サイズは一気に自らに魔力を籠め、血色に変ずると、視線を隙だらけのオルトロスに向けた。
 身体をねじり、遠心力を利用して斜めに斬り上げるように叩き込む。
 血色の魔力が爆ぜ、オルトロスの鮮血が飛沫を上げて舞い上がる。
 断末魔の遠吠えが響き渡り――大きく傾いたまま、大地へと落ちていく。
 「ロロン、行けるかい!」
 魔眼がヨハンの身体の一部を石に変えたのを見たマルクは、直ぐに魔術を放つ。
 放たれた魔術は正確にヨハンの身体に纏わりつく石化の呪いをはぎ取っていく。
「はいはい、回復がご入用かな――っと」
 続けるようにロロンが放ったスライムが波状攻撃を受けるヨハンの頭上で炸裂。
 調和の恵みとなって降り注ぎ、その肉体の傷を急速に癒していく。
 そのころには、オルトロスたちの視線はヨハンから外れていた。
『ワゥゥゥゥン』
 遠吠え一つ。その直後、オルトロスたちの動きが変質する。
「……遠吠えで意思疎通するのでしたね?
 恐らく、バレるのはここです。僕に集まっていた攻撃がバラける瞬間!」
 自らの身体に電流を放ち、振り下ろした天使の福音が自らの傷を癒していく。
 もう一度法螺貝を吹いてみても、反応はない。
 その思考がまとまる頃、もう一つ、ほら貝の音が鳴る。
(なにはともあれ……)
「ここからが本当の勝負……総力戦だ!!」
 放電と共に、大気へ爆ぜた魔力を端子に空気中へ接続しながら、
 ヨハンは宣戦の声を上げた。
 白虎はその声を聞きながら、眼前のオルトロス目掛けて視線を集中させ、真っすぐに蹴りを放つ。
 横に薙ぎ、上へ打ち上げるような蹴撃にオルトロスがひるんだ様に声を上げた。
『ウォオォォン』
 遠吠えが響き渡る。
 シラスはたった今蹴り落としたオルトロスから視線を外し、周囲を見渡した。
 その視線の先、ほら貝の効果が失せたオルトロスが2匹。
 門目掛けて走り抜けていた。
「させるか――」
 全集中――その視界にあらゆるものが失せ、ただ獣と自分だけが残される。
 白色の空間より見据えた獣へ、シラスは魔力を行使した。
 刹那、炸裂した深紅の光芒が走るオルトロスの身体を焼きつける。
 深紅の輝きは獣の身体を幾度となく、あちこちから焼き付け――走る勢いが消え、身体が崩れ、最後には滑りながら燃えて終わりを迎えた。


 魔犬たちの数は順調に減りつつあった。
 圧倒的な敵の数ではあったものの、その連携は抜群だった。
 大局的に周囲を見るマルク、ヨハンの二人に加え、主力の攻撃手たちによる猛攻は順調にオルトロスの数を半分以下にまで抑えつつある。
「……この状況で、未だに後ろで立っている個体……あれがボスか」
 8匹のうち、最高峰、目立った外傷のないその個体を見据え、マルクは杖に魔力を収束させていく。
 球体状に収束する魔力は、やがて音を立てながら膨張する。
 放たれた球体がオルトロスへと炸裂し――その身体を切り刻んだ。
 攻撃にひるんだ様子を見せたその個体が、しびれる体で遠吠えを上げる。
 この戦場で幾度も聞いたその遠吠えを受けた瞬間、オルトロスたちのうち、数匹の動きが変わる。
 ぴたり、1匹を護るように殿を組んだ2匹のオルトロス――計3匹が、くるりと踵を返し、その場から退却していく。
 追うよりも前、残された獣たちが雄叫びを上げる。
「ボクが言えた義理ではないけれど、逃がすわけにはいかなそうだ」
 ロロンはそれを見るや、雪月花を抜いた。
 ロロンの肉体を構成するスライムが、剣身に纏われ、魔力体となって収束していく。
「凍剣抜刀――」
 掲げ、収束した魔力体が水面に反射する光の燐光を魅せ――
「――狂小路」
 ――真っすぐに振り下ろす。
 射程上を断ち割る剣閃はいつか見た記憶。
 先頭で逃げるオルトロスへと到達するはずの斬撃は、庇うように跳躍した一匹を両断する。
 鮮やかな光が収束するころには、逃げを打ったオルトロスは射程内にはなかった。
 残された4匹のうちの1匹が村目掛けて突っ込むのを見て、ヨハンはその眼前に踊りこんだ。
「絶対に抜かせない」
 反射的に食らいついてきた獣を振り払い、立ちふさがる。その目が自棄のように見えたのは気のせいか――
 その隣を疾走した個体が、不意に深紅の輝きを纏い、その動きを止める。
 全集中による遠距離魔術――行使したシラスはクリアに戻る視界に一息ついて、横殴りに叩き込まれたオルトロスの突撃の勢いに後退する。
 反撃――よりも前、オルトロスの背後にてカルマブラッドを振り上げるサイズの姿を見た。
 サイズは駄目押しとばかりに残る魔力を籠め上げると、そのまま一気に振り下ろした。
 弧を描く切っ先は鎌本来の使い方を見せるように、双頭を刈り落した。
 大きく動きを鈍らせ、隙を見せるオルトロス目掛け、ゼファーも前へ。
 がら空きの正中線を真っ二つに切り裂くように打ちんだ刺突が、肉を裂き、心臓を捉え、穿つ。
 その肉体を貫通するころには、息の根は止まっていた。


(この短期間での変化、自然にこうなったとは考えがたいけど……
 それまでの個体と別種のような動きを見せるようになる……しかも高い知性を持って。
 ……もしかすると、このオルトロス達も怪王種なのかな?)
 マルクはオルトロスの死体を見下ろしながら思考を纏めていた。
 ごろりと転がる遺体を調べてみる限り、人工的な細工の類は見当たらなかった。
 そういえば、そんなことが起きるこれまでの魔獣とは違う存在が定義されたことにふと思いを馳せる。
 サイズは空に浮かんでいた。
 周囲を見渡しても、魔獣を指揮していたような人影は見当たらない。
 とはいえ、ひとばずは敵が逃げた方角だけでも何となくの見当がつく。
「こっちは……南か」
 検討漬けを終わらせたあたりで、サイズは門の修繕に向かうのだった。
「その機転と賢さ、ボクの糧になっておくれ」
 倒れた複数のオルトロスの一匹を見下ろしたロロンは、身体を丸形に戻すと、押しつぶすようにして取り込み、吸収する。
「ちょうど食慾の限界だったんだ……ご馳走様」
 吸収し終えたロロンがけふ、と微かに跳ねる。


成否

成功

MVP

ロロン・ラプス(p3p007992)
頂点捕食者

状態異常

孫・白虎(p3p008179)[重傷]
特異運命座標

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
何匹か逃げてしまいましたが、それはそれとしてお見事な戦果でした。

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