シナリオ詳細
流星神社の初詣
完了
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オープニング
●新年の挨拶を
雅楽がスピーカーから流れる境内を沢山の参拝客が歩いている。少し雪が積もりひんやりとした空気は人混みで火照った身体を程よく冷ましてくれた。
此処は流星神社。日本、と呼ばれる世界にある星の神である天津甕星を奉る神社である。
一月一日。所謂正月と言われる新年の始まりには多くの人々が神社へと足を運び、八百万の神々に新年の挨拶、並びに良き一年になりますようにと願いを込めて本坪鈴、地域によってはガラガラとも呼ばれるソレを鳴らすのだ。
社務所では御守りや札を買い求める者に御朱印帳を差し出す者。そして御神籤を引いて一喜一憂する者など活気に溢れ、対応する巫女達がテキパキと参拝客捌いていた。
境内には沢山の出店が並び、食べ物はもちろん籤引きや射的など一通りは揃っている様だ。出店の前でアレをやりたい、コレを食べたいと駄々を捏ねる幼子を母親が宥めている姿なども見受けられる。
「さて、何をしようかなあ」
人混みの中、あなたは境内へと足を踏み入れた。
●初詣
「あけましておめでとうございますってな。お前さん達初詣には行ったのかい」
境界案内人、朧はいつも通りあなた方に声を掛けた。その手には大吉の赤い文字が踊る星の形の御神籤が握られていた。
「ま、行ってても行ってなくてもいいんだがよ。今回は神社行って初詣をしてきてもらうぜ。御神籤目当てや屋台目当てでもかまわねぇよ」
神社には縁日の屋台に社務所、参拝所など沢山ある様でゆったりと過ごす事ができるとのことである。
「どんな一年にしたいか神さんに誓うもよし。屋台で飯を食うもよし、遊ぶもよし。ああ、御神籤の結果を見せ合いっこするのも楽しいかもしれねぇなぁ」
神社は星の形を象った御守りも有名らしく、それを買い求める人も居るそうだ。
「ま、気楽に遊びに行ってきなね。今年もよろしくな」
今年もどうか良き一年になりますように。
ひらひらと手を振って朧はあなた方を送り出した。
- 流星神社の初詣完了
- NM名白
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年01月14日 20時35分
- 章数1章
- 総採用数16人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
「初詣といえば、やはり参拝でしょう!」
『旦那様と巡りあえますように』
今年こそはこの夢を叶えたい。
新年早々、澄恋は気合を入れていた。
その瞳にはメラメラと炎が燃え上がり、彼女の本気を物語っている。
「愛とは信ずること、そして愛とは力。つまり、お百度参りこそ最適解!」
神様に私の本気を見て頂かなくてはと、澄恋は体力の続く限り参拝を繰り返す。お百度参り(一日版)である。
「旦那様と巡りあう旦那様と巡りあう旦那様と——」
もはや早口言葉の様に繰り返される願いと賽銭箱に金を投げ入れては列の後ろまで並び直しを繰り返す澄恋に、他の参拝客は「え……何この人怖……」という様な視線を投げかけられ、不審者扱いされているのだが澄恋は気にしない。
もう酒の席で引かれてフられたくないし、特別扱いして欲しいと泣かれたく無いし、君だけだよなんて囁かれて全財産持ってかれたくなんかない。
「これも全て今年をスーパーウルトラハッピー♡な一年にするためです。全財産を賽銭箱にブチ込んで本気(マジ)で真剣(ガチ)の参拝をしてやります!」
式場は既に押さえてある。
婚姻情報誌もバッチリチェックした。
婚姻届もハネムーンの計画だって準備万端。
後は! 素敵な旦那様の誓いのキスだけ!!
またも早口言葉の様に旦那様と繰り返し、強く祈る澄恋。
果たして本気(マジ)で真剣(ガチ)の彼女の願いは神へ届くのだろうか――。
成否
成功
第1章 第2節
「一年の始まりを祝うことのなんと素晴らしい事か、在りようからして神の存在から外れている泥人形であるが大した問題ではない。境界ゆえ作法が違うかもしれんが些細なことだろう。二拍二礼一拍。」
パンパンと手を叩きマッダラー=マッド=マッダラーは参拝を終えた。
せっかくだからと運試しに御神籤を買い、紙を開く。
「……泥?」
見間違いだろうか、マッダラーは目を擦ってもう一度御神籤を見てみた。泥だった。
「いやいや、『凶』とか『吉』じゃないのか、なんだこの神社。これもまた詩に出来るやもしれないな、うむ……なんだこの神社」
一度ポジティブに捉えてみたがやっぱり意味がわからない、泥ってなんだ。泥って。
ちなみに今年はよく雷に打たれます的な事が書いてあった。
御神籤が駄目なら御守りだとマッダラーは社務所へ足を運ぶ。パンフレットにはカラフルな御守りの写真が載ってあり、なかなか悩ましい。実際の色を見て決めようとパンフレットから顔を上げて見えたのは泥色の御守り。いやなんで?
「ほんとなんだこの神社」
まさか一日三回もなんだこの神社と言うことになるとは数十分前の自分は想像もしていないだろう。
やはり、泥人形たる自分は神とは相性が悪いというのだろうか。どっと疲れが出たマッダラーは境内の片隅に設置されたベンチに腰掛けた。
流れる雅楽の旋律に聞き入る様に目を閉じる。
神に嫌われたとて音楽は自分を受け入れてくれるのだから。
成否
成功
第1章 第3節
「年が明けましたね。あけましておめでとうございます。ということで、早速初詣に行かなくては」
深々と挨拶をしてエーミール・アーベントロートは流星神社へと向かった。
異世界から来た彼だが様々な風習に触れるうちに初詣の知識も身に付けていた。だが実際に参拝するのは初めてなので他の参拝客に習って、みよう見真似で二礼二拍一礼をしてみる。
「兄さんに会えますように」
兄を探して迷い込んだのは何時位の事だっただろうか。新しき世界を謳歌しようとも、兄に会いたいという気持ちに変わりはない。叶うのであれば彼も無事に新年を迎えていて欲しいと思う。
参拝を済ませたら次は御神籤である。
「神社によって変わるそうですが……」
ドキドキしながら受け取った紙を開いてみる。
――微凶。
「えっ」
何度見返しても文字が変わることはない。
「何この……何……??」
内容を要約すると、そんなに大したことはないが地味に痛い思いをする日々がそこそこある。との事だった。
「うーん……一応、凶だし結んだ方がいいのかなあ」
御神籤をきゅっと御神籤結び所の紐に結び付けてなんとも言えない結果に首を傾げていると、エーミールの鼻腔をソースの香ばしい香りが擽った。
「運勢はよくわからなかったけど、とりあえずたこ焼きでも食べようかな。すいません、マヨなしで一つください」
いつか兄さんとも一緒に食べたい。たこ焼きを一つ頬張りながら、エーミールは帰路に着いた。
成否
成功
第1章 第4節
流れ星が綺麗な夏祭りの日に白鷺 奏は流星神社を一度訪れた事があった。再現性日本で育った彼女にとって初詣とは正月の恒例行事として馴染みが深く、せっかくならば夏にお世話になった神社へと足を運んだのが今回彼女が流星神社を訪れた理由である。
賽銭箱に小銭を投げ入れ、手慣れた様子で二礼二拍手一礼。ガラガラと鈴を鳴らし目を閉じて静かに今年の安寧を願う。
神様への挨拶が済んだのであれば、次は御神籤を引かねばなるまいと葵は社務所へと向かった。ふと葵の目に淡い桃色の御神籤が目に留まった。傭兵、とは言うものの葵とて年頃の女性である。可愛いらしいものには惹かれる性質で、予感めいた物に従いそれが何を占うかもわからずに購入し、開いてみた。紙には『恋愛運』の文字が踊っており、鍛錬ばかりで今まで一度も恋をした事などない葵にとってその文字はあまりにも刺激が強かった。わたわたと御神籤を落としそうになりながらも、取り直して一つ唾を飲み込み、そっと文面をなぞってみる。
運勢としては大吉で、その下の文章には新たな出会いあり、との記述があるではないか。
かあっと頬が熱くなりドキドキと心臓の鼓動が高鳴る。
(私にも、そういう人ができるのだろうか。)
キョロキョロと周りを見渡した後、葵は御神籤を枝には結ばずそっと懐に仕舞った。そんな自分がなんだか恥ずかしくて、葵はご飯を沢山食べて吹っ切れようと足早に屋台へと向かったのであった。
成否
成功
第1章 第5節
「流星神社か……良い名の神社だ」
常連客から流星守りという御守りが綺麗だと聞いたモカ・ビアンキーニは流星神社を訪れた。
境内は大勢の参拝客で賑わっている様で、楽しそうな声が彼方此方から聞こえて来る。その声に目を細めつつモカが社務所へと向かうと、鮮やかな色彩の布で作られた星の形の御守りが綺麗に並べられていた。
「ほほう……綺麗で洒落た御守りだ。持ち物に付けるとなかなか映えそうだ。五色すべて頂こうか」
巫女が流星守りを一つずつ手に取る間にモカは御朱印帳の存在に気づいた。深い藍色の表紙には天の川をイメージした銀糸の刺繍が施されている。
決して派手ではなく、だが星の華やかさと煌めきを感じさせる表紙がモカは大層気に入った。
「御朱印帳もあるのか。これも表紙の絵柄が気に入った。豊穣の神社を巡り、御朱印集めを始めようと考えていたところだ。御朱印帳も頂けるだろうか」
「承知致しました」
「もし良ければそのまま御朱印も頂きたいのだが」
モカの申し出に巫女は静かに頷き、サラサラと筆を走らせ朱印を押す。
差し出された御朱印帳を受け取り、モカは他の参拝客の邪魔にならぬ様に境内の隅へと移動した。
御朱印帳の一頁目には『流星神社』の文字と日付が記された。
「次はどこの神社へ行こうか」
この御朱印帳が埋まるのはいつになるだろうか。
モカは期待で胸を膨らませ、今度は参拝をすべく賽銭箱から伸びる列へと並んだのであった。
成否
成功
第1章 第6節
「いぇーい初詣!! 盛り上がって参りマショウ!!」
びしっと指を天に突き出しテンションが最高潮のわんこ。勿論参拝するのだろうと思いきや、ふうと一つ溜息を着いた。
「折角の神社来訪デスガ、参拝は無しデス。
わんこが色々願った所で、その辺神様に受け入れて貰えるのかは分かりマセンカラ……一応わんこ機械なんでね。杞憂かもしれないデスガ、戸惑わせるのも申し訳ないってもんデス!!」
そういう気遣いができる時点で神はわんこを気にいると思うのだが、元は愛玩用として作られたアンドロイド。人の為に働く喜びは本能として備わっているのだから仕方がない。
「という訳で、わんこはお土産に何か買って行くとしましょうカネ」
流星守りは五種類の色があり、そのどれもが司る運勢が違うらしい。
赤の勝負運か、緑の健康運か、桃の恋愛運か、黄色の金運か、青の仕事運か……。
フムとわんこは流星守りを全部見てこう伝えた。
「よーしそんじゃ一個ずつ全部クダサイ!!」
どれか一つなんて選べやしないのだから全部買えばいいのだとわんこはそれぞれの色を一つずつ買った。
「全部身につけて完璧な運勢を身に付けるも良し、幾つかあげて運勢を分かち合うも良し。そうでなくても綺麗でアクセサリーに良し! コイツは良い買い物シマシタネ、キャヒヒヒ!!」
エキセントリックな笑い声とは裏腹に、神への気遣いを忘れなかったわんこには今年何か良い事が起こる……かもしれない。
成否
成功
第1章 第7節
「今から俺がやって見せるから。真似してごらん?」
「はいっ! 頑張りますお兄ちゃん!」
そんなに気負わなくてもいいのになあと三國・誠司は真剣に自分を見つめるアイシャに微笑んだ。
どんなことでも懸命で真面目な彼女は食い入るように誠司を見ている。
これは間違ったことはできないと、誠司は背筋をしゃんと伸ばしてアイシャに見本を見せてやった。
「神社だと二礼、二拍手、一礼がお作法」
「にれい、にはくしゅ、いちれい、ですね!」
「そうそう、こうやって」
深く頭を二回下げて、手を叩く。そして本坪鈴を鳴らして祈る。
(アイシャが今年一年も楽しく笑っていられますように)
昨年は涙を見せる事も多かったけれど、最近の彼女は笑顔でいることの方が多い。
今年も、沢山笑って楽しいことを沢山経験してほしいのだ。
祈りを捧げたら最後にもう一度頭を下げる。
「じゃ、やってごらん?」
「はいっ」
誠司の参拝をじっと見つめていたアイシャは緊張しつつも頭の中でお手本を再生する。
まずは頭を二回下げて、手を二回叩いて鈴を鳴らして……。
少し不安になり誠司を見ると大きく頷いたので、ほっと胸を撫でおろした。
「次は心の中でお願い事をするんですね」
手を合わせ、目を静かに閉じる。
(大切な人達が幸せでいられますように)
それから。
(お兄ちゃんの幸せが見つかりますように)
最後に一礼してはっと気がついた。
「お兄ちゃん……」
「ん? どうした?」
「あの……お願い事が二つでも大丈夫でしょうか?」
あまりにも真剣な顔で可愛らしいことを言うので誠司は吹き出しそうになるのを堪えつつ、大丈夫だよと頭を撫でてやった。
「さてと、お参りが済んだら次は御神籤を引こうか」
「御神籤……ですか?」
「そっか、アイシャは知らないよね」
頷いたアイシャの手を引き誠司は巫女から二つ御神籤を受け取った。
「ここでなんとなく今年の運勢を占うんだ。さてと俺は……大凶か」
「大凶?」
「一番悪い運勢だよ。でも意外とそうでもないんだ」
一番悪いと聞いて青ざめたアイシャに純真だなあと兄バカを発揮しつつ誠司は説明を始めた。
「ここに書いてあることを構えていれば避けられるかもしれない。それに……こいつを結ぶ場所があってお祓いして貰えるんだ。そうすれば来るはずだった悪いことも避けられる、そう思うと、割と儲けものかもしれないってこと。まぁ、気の持ちようってやつだね」
誠司と御神籤を交互に見ていたアイシャの頬が今度は紅潮していく。
「お兄ちゃんはとても物知りですね。それにとても前向きで頼もしいです……!」
「ありがとう。アイシャはどんな結果だった?」
ドキドキしながらアイシャは初御籤を開く。
結果は大凶。
誠司と顔を合わせて思わず笑い合ってしまう。
「お揃いですね、お兄ちゃん♪」
仲良く二つの大凶の御神籤を隣同士に結び付けお祓いを。
二つならんだ兄弟御籤は大凶だけれど二人の思い出の一つとなった。
成否
成功
第1章 第8節
「いや、うん。死神も神っちゃ神なんだけどさ。
神が神頼みするのも変なのはわかってんだけどさ。一応元人間だし、日本にいたこともあるからセーフだろ」
誰に言う訳でもない言い訳をしながら、天之空・ミーナは異世界の神社を訪れた。石畳の上を歩きながら視線を境内の彼方此方に遣れば嘗て居た日本の世界によく似ており、振袖を着ている女性や、母親に抱かれくうくう寝ている赤子などが見受けられる。それを暫く見つめた後にミーナは本坪鈴を鳴らした。手を叩いて瞳を閉じ思いを馳せる。
(去年は色々ありすぎた。今年もきっと色々あるのだろう)
嬉しい事も、悲しい事も。
――屹度目を背けたくなる様な辛い事も。
(せめて、私の愛する者達が無事生きて、幸せになれるように)
脳裏を過るのは懸命に手を伸ばしたが掴み取れなかった命達。
最期まで輝きを喪わず散っていった命達。
まだ、まだその時ではなかったのに。
あの時程、己の力不足を嘆いた日は無かった。
今年こそはどうかと強く祈る。
なにせ私は死神だから。
生を司り、祝福する存在とは正反対だから。
「誰かを幸せにする、なんてできない神だから」
寂しがりやの死神は一人静かに呟き、最後に頭を下げてその場を去った。
彼女の存在が、笑顔で幸せになる人がいることにミーナは気がついているのだろうか。
彼女の存在で試みたされる愛を感じている、金糸の髪に赤と青の二つの色をその瞳に宿す彼女の存在に――。
成否
成功
第1章 第9節
「新年を祝うというのは、私にとって初めてのこと。ならばいつも以上に気を付けなければ。確かニ礼ニ拍手一礼。そしてその後は何かを念じる、でしたか?」
「えっと、なんだっけ?ㅤ礼して拍手するんだっけ? まぁなんでもいいや!」
「では行きましょう。初詣、全霊で遂行します」
「よし参拝しよう!ㅤ参拝!」
羽衣教会の名を背負いボディ・ダクレと楊枝 茄子子は流星神社を訪れた。
しゃんと襟ならぬ首元のコードを正したボディと参拝する前から作法があやふやな茄子子。
ちなみに、念の為報告しておくと茄子子が教祖である。そこはお間違えなく。
賽銭箱の前に二人並んで立ち、予め予習してきていた完璧なニ礼ニ拍手一礼を披露するボディに対し、茄子子は――。
「つまり平謝りしてスタンディングオベーションでしょ!ㅤへへ……よろしくお願いします神様……」
なんかいろいろ違うし、若干ごますりの構えが見えたような気がしないが屹度大目に見てくれるだろう。多分。
続けて賽銭箱に投げ入れるお金を出そうとして財布の中が寂しいことに茄子子は気が付いた。スゥ……と息を大きく吸い込んで深呼吸。
「いやこういうのは気持ちが大事だから!ㅤ大丈夫大丈夫!」
気持ちを込めれば屹度大目に見てくれるだろう。多分
そしてボディはというと少し困っていた。
作法は予習してきていたものの、願いであったり、抱負であったりという物を思考してきていなかったのだ。あまり此処で考え込んでいては後ろの参拝客の迷惑になるだろう。少しだけ考えて。
「......えぇ、ではコレにしましょう」
頭部のディスプレイに瞳を閉じた表情が表示され、ボディは手を合わせる。
(これから先の未来が、満足いく結果でなくとも、後悔無きものになりますように)
多くは望まない。報われなくてもいい、ただどんな選択をしても後悔の無いように生きたい。
只、静かに涙を流したあの少年の顔が浮かんで消えていった。
「ソレが私の願いであり、目標です」
祈りを終え、ディスプレイの表示が通常の表情へと切り替わる。
と、同時に。
「祈ること……やっぱり我が羽衣教会の更なる繁栄でしょ!ㅤ目指せ混沌三大宗教!」
ぐっとガッツポーズを作り、 茄子子は信者の増員。そして自身の教会の繁栄を強く願った。
そしてふっと気が付いた。
(あれ、神様に他の宗教の願い事をするのってありなのかな……?)
三秒思い巡らせて。
(まぁいいでしょ別に!ㅤ羽衣教会も宗教の掛け持ちおーけーだし!ㅤ会長は許すからそっちも譲歩してください!ㅤよろしく!!)
開き直った。こういうのは言ったもんがちなのである。言霊ってあるし。
「楊枝様。折角の初詣、楽しまなければ損というもの。籤を引いてみませんか」
「そうだね! よっしゃ大吉だっけ? あれ引くよ! 行こうボディくん!」
二人は並んで社務所へと向かい籤を引いた。
その結果は――神のみぞ知るところである。
成否
成功
第1章 第10節
ひんやりとした空気が心地よい境内を歩く一人の少女と一羽の鶏。
その姿に通行人がちらちらと彼女達を見遣る。
その視線に気づいているのかいないのか。少女の頭の上の鶏がこけー! と高く鳴いた、というか喋った。
「参拝にいくわー!」
「礼儀はあまり問われないと聞いているけれど、人の頭の上はないんじゃない……?」
「大丈夫!高い方がきっと神様に声が届きやすいわー!」
「いえ、まあ……あなたが良いなら良いけど。でも暴れないで欲しい」
自身の頭の上でばっさばっさと翼をはためかせ、盛大に羽毛を散らすトリーネ=セイントバードにアンナ・シャルロット・ミルフィールは溜息を着いた。頭上へと注がれる視線を無視しながら二人は賽銭箱の前へと立つ。
「やり方は任せるわ! だって私できないし! 鶏用の参拝方法も開発してほしいわね! むしろ私が作るべきかしら!?」
「神社に参拝する鶏なんてそうそういないと思うけど」
「あら! わからないわよ、少なくとも私は参拝しているわ!」
「そうね……」
ふんすふんすと鼻息を荒くするトリーネに相槌を打ってやりながらアンナは器用に胸元から小銭入れを取り出す。硬貨を投げ入れ、本坪鈴へ手を伸ばしガラガラと音を鳴らす。
(大切な友人達が、今年も健やかでありますように……)
二礼をし手を合わせ、安寧を願う。願わくば誰も傷つかず無事に一年を過ごせますように。
今後の鶏用の参拝方法の参考にするべくトリーネは真剣にアンナの参拝を見つめていた。
「ふんふん、お辞儀をして……お、落ちる!落ちちゃう!」
がしっと、翼で懸命にアンナにしがみつきほっと一息。
「で、お願いね! 今年は羽毛がもっとふかふかになりますよーに!」
翼をばさっと左右に大きく広げ一声鳴いてみた。なぜだが後光が射しているような気さえする。
「これで良い感じの毛並み間違いなしね! こけー! あ、またお辞儀なんて聞いてな……」
「あ、落ちた」
そう、お祈りをした後にもう一礼するのが一般的な参拝作法だ。
アンナもそれに倣ったのだが鶏であるトリーネは知る由もなくバランスを崩し、まあるい身体がころころとアンナの頭の上から転がり落ちてしまった。昔話にでてくる擬音のすってんころりんとはこういうことを言うのかもしれない。
「くっ、リベンジよアンナちゃん!もう一回!」
「……そう何度もやるものじゃないから。また来年頑張って頂戴」
「こけー!」
冷静に断られたトリーネは再び一鳴き。
でも来年なら鶏用の参拝方法もできているわね! と、とてもポジティブに捉えた。
「早速考えなくっちゃ! アンナちゃん、この後お茶でもしながら一緒に考えましょ!」
ぽてぽてと自身の前を歩いていくトリーネの後を着いていきながらアンナは一人憂う。
「神聖な儀式のはずだけど、こんなので良いのかしら……」
随分と騒々しくコミカルになってしまった初詣だが、真摯な祈りは屹度神へと届くであろう。多分。
成否
成功
第1章 第11節
清廉な白の布地に散らした色彩豊かな菊や牡丹。爽やかで想い人の髪の色を思わせる翠の松。
紫色のグラデーションの布地に同系色の桜の花に白い花弁を散らし、アクセントに水色の帯留め。
リア・クォーツとシキ・ナイトアッシュは華やかなそれぞれの振袖に身を包み流星神社を訪れた。
振袖に合わせ髪は結い上げ簪で留めて、目元には紅を差しみれば異国の正装という感じがして背筋がすっと伸びる。
境内に行き交う人々や縁日の賑わいに興味津々といった様子でシキはリアに話しかけた。
「私、初詣?っての初めてなんだけど、どうすればいいのかなぁ。リア知ってる?」
「ミサとかだったら慣れているんだけど、こういう形式のはあたしもさっぱり」
国も違えば宗教や文化もまた違う。少なくともクォーツ修道院で行われるミサとは大きく様相が異なっており、リアはシキの質問に首を横に振った。
「……とりあえず、周りの人の真似しながらいきましょうか」
「そうだね」
参拝客の様子を見てみると人により若干異なるものの、礼をして鈴を鳴らし手を叩いていることは共通している様であった。賽銭箱へと続く行列に並んで順番を待ちながらシキはふと浮かんだ疑問をリアに投げかけてみた。
「神様、ってどんな姿してるんだろう。豊穣の神様みたいな感じかな? ふふ、ちょっと興味あるね」
シキの問いにリアはふむと考えこむ。リア自身祈りを捧げることには慣れてはいるが、何事も自力で叶えたリアにとって神様にお願いごとをするということは初めてであったのだ。数十秒の沈黙の後に、リアは口を開いた。
「そうね……豊穣には黄龍とか居たし、実際神様ってのも居るのかもね。だったらいざという時の為、神様とのコネクションを繋いでおくのも重要かしら」
「そうだねぇ、いざっていうときに頼りになる相手は多いに越したことはないさ」
そんな会話をしているうちに、とうとうリア達へと順番が回ってきた。
わからないなりに周囲の参拝客の作法を真似てみる。
「周りの人たちがやっていたように、お辞儀して手を叩いて……」
「えぇと、鈴を鳴らしてお辞儀して、お願いするんだよね」
手を合わせ、瞳を閉じて星の神へと希う。
(今年も大切な友達と一緒にいれますように)
いつもと変わらぬ日常も、ちょっと特別な日も共に過ごせますように。
意外だったかなあ、と思いつつシキはアクアマリンの瞳を無邪気にリアへと向けた。
「ね、リアは何願ったの? 恋愛のこととか?」
「ん? あたしの願い? ふふ、内緒よ」
「って、教えてくれないのかい?」
「あたしと神様だけの秘密だからね。神様が嫉妬して願い事聞いてくれないかもしれないじゃない」
「ふふ、まぁ神様との秘密っていうのもロマンがあるよね」
シキのささやかな願いとリアの密かな願いを受け取った神は何時か彼女達の力になるのかもしれない。
縁はそう、此処に確かに結ばれたのだから。
成否
成功
第1章 第12節
「あけましておめでとうございます! ええと初詣。年の初めに神様にご挨拶するんだっけ? 不思議な習慣があるんだなぁ……じゃあわたしもそれに倣って神様のところに行ってみよう」
境界の門を潜りルアナ・テルフォードは流星神社の石畳を踏んだ。
事前に朧から教わっていた参拝方法を復唱しつつ、周囲の人々にも倣ってお参りを。
「お願いごとかぁ……。ええと」
少し悩んでから願い事を心の中で唱える。
(わたしの記憶が戻りますように)
空中神殿へ召喚された際に名前以外の記憶を全て失った。
そればかりか心も体も十歳の頃まで逆戻りしてしまい、辛うじて自分が勇者であったこと。本当は大人なんだということは判ったがあちこち靄がかかったようではっきりとしない。
今だって十分楽しいが、叶う事ならば嘗ての記憶が戻って自分は何者だったのかをしっかりと受け止めたいのだ。
参拝を済ませた彼女は帰りにお守りを買うことにした。
星の形のお守りは可愛らしくお洒落で、つい目移りしてしまう。
「おじさまにはどれがいいかなー。恋愛運かな? わたしとの!」
るんるんと桃色のお守りを手に取ってご機嫌なルアナ。煙草の煙を常に纏わせる彼がこれを身に着けるところを想像しくすくすと笑い、そしてふと思った。
「わたしはおじさま好きだけど、恋とかよく分かんない」
分かる時が来ればいいな。
そう思うのは、思えるのは彼女が記憶を失っているからなのだろうか――。
成否
成功
NMコメント
あけましておめでとうございます!
今年もどうぞ宜しくお願い致します。白です。
今回は皆様に初詣に行って頂こうと思います。
参拝するも良し、御守りやお札を買うも良し。
御神籤を引くも良し、屋台を巡るも良しです
やりたいことが分散すると描写が薄くなったりします御容赦ください……。
このラリーは一章完結予定ですが何度参加して頂いても大丈夫です。お気軽にお越しくださいませ。
複数人の参加の方は同行者様のお名前かタグをお願い致します。
●やれる事
参拝する。
本坪鈴を鳴らして神様に参拝します。
ちょっとくらい作法が間違っていても大丈夫。
神様にお願いするも良し、一年の抱負を語るも良しです。
御神籤を引く
社務所にて御神籤を買うことができます。
プレイングには結果とどんなことが書いてあるのか、ソレに対するリアクションをお書きください。
御守りを買う
流星守りという星の形の御守りを買うことができます。
赤色:勝負運
緑色:健康運
桃色:恋愛運
黄色:金運
青色:仕事運
が、あります。お土産に複数買っても構いません。
屋台
縁日の屋台がズラリと並んでいます。
食べ物の美味しい匂いは勿論射的や籤引きなどの遊ぶ系もありますよ。
●舞台
流星神社という星の神、天津甕星を奉る神社です。現代日本と思っていただいて構いません。
拙作『流星神社』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3605)にて登場致しましたが前作に参加していただいてない方でも問題ありません。
お気軽にお越しくださいませ。
素敵な思い出の一助となれれば幸いです。
それでは行ってらっしゃい!
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