PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新年限定! 幽霊屋敷でクソザコ幽霊をガッってするだけで寿司が奢ってもらえる依頼!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●新年あけましておめでとうございます
「うわあああああああああああメイドさんと新年会したいようわああああああああ!!!」
 ローレットのテーブルの上で、なんか『井』の形をした生き物が、手足っぽい線をじたばたじたばたさせていた。
 彼の名前は『井』。見ての通り、よくいる旅人(ウォーカー)であり、紳士である。
「新年早々うるさいですね」
 と、ローレットの片隅でアライグマがバシャバシャとパンツを洗いながら言った。
「だって、だって……メイドさんと新年会したい、メイドさんと新年会したくない?」
 テーブルの上に立ち上がり、可愛らしく、その小首? 線? なんかをかしげる『井』。
「気持ちはわかる」
「分かってくれるか!」
 ぴょん、と『井』は飛び降り、アライグマがパンツを洗う桶の中に飛び込んだ。ばしゃり、と水とあわが飛び散る。『井』は桶の中のぱんつを手にして被ると、阪神を水の中に沈めながら、こういった。
「そこでまた、ローレットにフェイク依頼を出しました」
「またか」
 アライグマはもう一枚のぱんつを取り出すと、バシャバシャと洗い始めた。

●幻想の幽霊屋敷へ
「好みの墓があるなら死ぬ前に言ってくれ」
 ごり、と『井』の頭……? まぁとにかく線の部分をぎりぎり握りながら、グリム・クロウ・ルインズ (p3p008578)が言う。その格好は、メイド服だった。シンプルながら、それ故に色気を感じるヴィクトリアンメイド服である。
 『井』によってローレットに張り出された依頼――それは『幽霊屋敷でクソザコ幽霊をガッってするだけで寿司が奢ってもらえる依頼』であった。その甘美なすしの誘惑についついつられてやってきてしまったイレギュラーズ達を待ち受けていたのは、幻想のとある街にある、大きな廃屋敷。
 『井』に案内されるがままに廃屋敷に足を踏み入れたイレギュラーズ達は、突如屋敷内に閉じ込められてしまう――それどころか、突如着ていた服がメイド服になってしまったのだ!!!!
 ここまでくれば、どれほど鈍い人間でも、騙されたことに気づいただろう。という訳で、幽霊の代わりに『井』をこれからガッってしようかな、と思っていた所である。
「ふははは! ようこそ! 我が屋敷へ!」
 と、突然やたらテンションの高い笑い声が響いた。
「……何者だ」
 グリムがじろり、と虚空をにらみつける。笑い声は、そこから聞こえてきたのだ――突然、その空間に、やたら恰幅のいい、半透明の身体をした男が現れた! ゴーストだ!
「私はメイドフク・スキー男爵……現世に残るメイド服の伝道師――」
「メイドフク・スキー男爵!」
 『井』が感激したように声をあげる――メイドフク・スキー男爵はほう、と声をあげると、
「井君、君か。となれば、彼らは」
「獲物です」
 あっさりと言い放ったので、グリムはぎり、と『井』の頭をぐりってした。
「どういうことだ」
「順を追ってはなそう」
 フム、とメイドフク・スキー男爵が唸った。
「ここは呪われし屋敷である。入った者は皆メイド服を着せられ、メイドとして一仕事を終えるまで帰る事は出来ない――そのような呪いがかけられているのだ」
「何故そんな妙な呪いが?」
「趣味で私がかけた」
 メイドフク・スキー男爵はこともなげに言った。
「メイドさんが! 働いている姿が! 好きだから!」
 いっそすがすがしいほどに、趣味全開でそう言った。
「メイドさんだったら男でも女でも構わない! 私はそう言う趣味をしている! よって! 館に入った者にはみんなメイド服姿になってもらっている! あ、井君は別だがね……彼はほら、同志だから」
「メイドフク・スキー男爵……!」
 『井』は感極まった様子で呟くと、グリムの手からぴょい、って飛んで逃れた。
「という訳で! 皆にはここでメイドさんとして新年会を開いてもらうのでそのつもりで!」
 なんかやたらイキイキと告げる『井』に、一同はげんなりした。しかし、井とメイドフク・スキー男爵は、空中で土下座すると、
『お願いします、なんでもしますから!』
 と叫ぶのであった。果たして、寿司に釣られて『井』に騙されてしまったイレギュラーズ達の運命や如何に――あれ、今なんでもするって言った?

GMコメント

 あけましておめでとうございます騙されたなイレギュラーズ!
 キミ達には新年早々メイドになってもらう!!!!!!

●成功条件
 メイドになって新年会をする

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 『クソザコ幽霊をガッてしたらお寿司を奢ってもらえる』と言う依頼に参加した皆さん。
 しかし、それは『井』によるフェイク依頼。到着したのは、幽霊『メイドフク・スキー男爵』が住み着く幽霊屋敷でした。
 中に入ってしまったイレギュラーズ達は、強制的にメイド服に着替えさせられ、新年会の準備に駆り出されてしまいます……。
 今すぐ逃げ出そうにも、新年会を成功させないことには屋敷から出ることもできません。……まぁ、失敗しても、メイド服のまま外に放り出されることになるでしょうが、それはそれで勘弁願いたい所です。
 よって、皆さんは新年会を成功させるため、ひと働きしていただきます。

●やるべきこと
 例として、やれること、やるべきことを三つほど提示します。以下の三点を抑えておけば、とりあえず失敗することは無いでしょう。たぶん。

1.お料理の準備
 新年会用のお料理の準備です。メイドらしく、可憐に、清楚に、美しく準備しましょう。メイドっぽくメイドっぽい料理を用意できた方が、『井』と『メイドフク・スキー男爵』の満足度は上がります。

2.お料理の給仕と接待
 『井』と『メイドフク・スキー男爵』の新年会へ、お料理を給仕しつつ接待して気分を良くしてあげてください。一番過酷かも知れませんが、ここで満足させておけば、依頼が成功する可能性も上がるでしょう。

3.メイド式かくし芸大会
 新年会を盛り上げるため、かくし芸大会を開いて、『井』と『メイドフク・スキー男爵』を満足させてあげましょう。メイドらしく、可憐に清楚に、美しい芸であれば、より二人は満足するはずです。ここまで書いておいてなんですが、メイドらしさとはいったい何なのでしょうか。僕にはよくわからない。

 以上を押さえておけば、とりあえず大丈夫です。分担して事に当たると良いと思います。もちろん、上記以外の『井とメイドフク・スキー男爵の満足度が上がりそうなこと』をしてもらっても全然かまいません。嫌な顔しながらパンツみせたりしても良いですし、二人をガッてしても良いです。メイドにガッって責められるのご褒美です。

●その他
 二人は「何でもする」と言っているので、要求してみるのもいいかもしれません。とはいえ、通常成功報酬以上の保証は致しません。

 以上、メイドをよろしくお願いいたします!

  • 新年限定! 幽霊屋敷でクソザコ幽霊をガッってするだけで寿司が奢ってもらえる依頼!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
※参加確定済み※
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

リプレイ

●みんなメイドになれ
「普通に幽霊退治の依頼だから来たんだ……。
 寿司というモノも、食べたことが無いから楽しみにしてたんだ……」
 ぎりぎりと両手を握りしめつつ、悲しげにうめくヴィクトリアンメイド――『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)。グリムの身を包むのは、前述したとおりのクラシカルなヴィクトリアンメイド。清楚な故の優しい色気を醸し出すメイド服である。グリムの長い黒髪が、よくマッチしている。静と動で言うならば、静の魅力。静かにたたずむ黒髪のメイドと言うのは良い。新しいBUを頼むなら今だ。
 さて、グリムをはじめとするイレギュラーズ達は、各々メイド服を――それは本人の趣味だったりメイドフク・スキー男爵の趣味だったりしたが――着せられて、今館のホールで待機している。
 井がローレットへ出した依頼。それは『幽霊退治したら寿司を食える』と言うモノであったが、実はそれが真っ赤なフェイク。井の目的は、メイドフク・スキー男爵という幽霊が潜む廃墟へイレギュラーズ達を連れ出し、メイド服を着せ、新年会をしてもらうという計画であったのだ。何でもしますのでよろしくお願いします。
「お寿司は……?
 簡単なお仕事でお寿司おごっていただけるというお話は嘘だったのですか……?
 しかもメイドとして働かないと外に出れないですって?
 絶対許しません……!!」
 ぎりぎりと歯ぎしりをする『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)の表情は、羞恥に赤く染まっている。綾姫の着ているメイド服は、『フレンチうさみみメイド服(コルセット付)』である。もはやスカートとしての体をなしていないのでは? と言うほどのミニスカに、強調された胸元。エロい。はっきり言ってエロいのである。そんなエロい格好をした黒髪のはかなげな女性が、悔し気に頬を紅潮させながらこちらをにらみつけているのとか、正直ご飯たくさん食べられるね。ねぇ、ピンナップ作らない? いけない、井の性癖が出ちゃった。


「何でこんなことになってるのよ……。
 私はお寿司が食べたかったのに!!!」
 がくり、とうなだれる『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。小柄なオデットがメイド服を着ているというのも、なんだか実に良い。しかもそれが、猫耳と猫尻尾を装着しているとなれば、それはもう多大な需要が発生するのだ。もちろん井は美味しく食べられるので好きです。頭なでなでしてあげたい。
「はい? メイド? お寿司は?
 えっ……あ、そういう……ふふ、フェイク依頼?
 おかしな事を言いますねガッとするクソザコ幽霊ならすぐそこにいるじゃないですかさあ皆さんとっとと片付けて帰りましょう出口を開けて下さい開けろよ開けろォ!!」
 ガタガタとホールの扉を揺らす『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)の服装は、大正浪漫メイド服である。洋装と和装の融合、そしてハンスは少年のような外見をしているわけで、これはショタ大正浪漫メイドである。良いじゃないか。所でイラスト欄にショタ大正浪漫メイド服のイラストがないようだが、これは大問題ではないかね? 解決しなければならないのでは?
「まぁ、受けてしまった以上仕方ない。事件の解決には全力を尽くさなければならないのがルールだからな……」
 『Stella Cadente』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が言う。モカの服装は、オーソドックスなヴィクトリアンメイドだ。ギフトにより適度な大きさの美しいバストに変化しており、清楚な外見の中に目を見張るようなアピールポイントが見て取れる。と言うか、褐色巨乳ヴィクトリアンメイド? 前世でどんな善行を積んだら、そんなメイドと新年会できるの?
「経緯はともかく、モカさんの言う通りだね……じゃないと出られないし」
 苦笑しつつ、自分の格好をもじもじと確認するのは『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)だ。再現性東京のメイド喫茶では定番の、ミニスカメイド服。とはいえ、同店ではなかなかお目にかかれないような露出度を誇っていて、背中が大きく開き、セリカの健康そうな背中が丸見えである。まるで天使の羽根のように見える肩甲骨が見どころ。ああ、可愛い。人は可愛い存在を見ると、ああ、可愛いとしか言えなくなるのだ。
「うんうん、みんなかわいい! ふりふりひらひらくるくるぱっ!」
 ほとんどの仲間たちが怒りや困惑を見せる中、結構ノリノリなのが『ヘビー級ハニートラップ』金枝 繁茂(p3p008917)である。クラシカルなメイド服をチョイスしているが、男性ながらにして着こなしはバッチリである。男性が雑に女装したような醜さを感じさせず、「似合っている」と思わせるのは流石繁茂と言った所か――これはありである。百点です。
「そうだな……騙されたことは悲しいが、ゴーストもきっと、寂しかったのだろう」
 ふむ、とゆっくりと頷くのは、『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)だ。淑女らしいヴィクトリアンメイド服が、自身の持つ穏やかな雰囲気によくマッチしていた。似合う。不思議と似合う。そしてそれが当然であるかのようにしっくりくるのだ――。
「俺も、召喚されて豊穣から大陸に来たときは、見知らぬ場所に広地で寂しかったのを覚えている。出来れば、その寂しさを解消してやりたい……」
 しんみりとした様子で、ママはそう言う。ママ……メイドママ……おぎゃりたい……。
「準備はできたかね、メイド諸君!」
 と、現れたのは井とメイドフク・スキー男爵である。二人は一同を見るなり、目を輝かせた。よっしゃ、メイドだ! それも全員が極上のメイドだ!
「じゃあ早速料理からお願いするよ! 私達は食堂の方で待っているから!」
「わーい、メイドさんと新年会だ!」
 ワクワクを隠す様子もなく、うきうきとした様子で二人が食堂へと消えていく。イレギュラーズ達はため息など付きつつ、とりあえず調理場へと向かうのであった。

●メイドさんのお料理
「やぁやぁ、メイドらしくお料理しているかね!?」
「見物……いや、監督に来ました!」
 と、調理場へとやってきた男爵と井の二人。調理場では、メイドたちがせわしなく駆けまわっていて、多くの料理を作りだしている。
「は、はーい、一生懸命作ってるよ♪」
 ひきつった笑みを浮かべるセリカ。メイドらしく料理する、っていったいどういう事なのだろうか。よくわからないが、とりあえず各々可愛らしいしぐさを振りまきつつ料理を作っているのである。
 セリカが作っているのは、デザートのガレット・デ・ロワだ。中にフェーヴと言う陶器製の人形が入っていて、それを手に入れたものがその日の王様となる……子供向けの遊びだが、多分男爵と井はメイドに王様って呼ばれたら喜ぶタイプだと思う。
「す、すぐできますからねー……お待ちくださいねー……」
 綾姫は羞恥に頬を染めつつ、しかし手元は鮮やかだ。フレンチのコース料理を、二人分とは言えよどみなく作り上げていく。料理が趣味というだけのことはある。
「ほほー、綾姫は流石メイドであるな! 手元が鮮やかである!」
 メイドではない、と反論しかけたが、やめた。もう何を言っても無駄であろう。
「しかし……一味たりませんね!」
「一味……? いえ、味付けは完璧で……」
 井の言葉に、綾姫は声をあげる――しかし、井は上の線二つをぷるぷる振ると、こういった。
「萌え萌え、が足りませんね」
「もえ……は?」
 あっけにとられる綾姫――しかし男爵と井はうんうん、と頷いて、
「やはり、完成のスパイスにはそれがありませんと」
「さぁ、やってみましょう、綾姫さん!」
 ぐるぐる、と。
 綾姫の脳裏に何かが渦巻く。
「死にたいんですか??」
 思わず真顔で尋ねる綾姫に、井と男爵は口を尖らせた。
「えー。やってくれなきゃ外に出さなーい」
「ぐっ……!」
 綾姫は顔を赤らめて、唇をかみしめた。ああ、なんてことだ。くそう、これは仕事。これは仕事だ。そう自身に言い聞かせ、ひきつった笑みを浮かべながら。
「お、おいしくなーれ、萌え萌え☆」
 と、両手でハートを作りながら。
 精一杯の(ひきつった)笑顔で。
「うーん、少し物足りませんが、良いでしょう」
 井が、なんか偉そうに言った。
「いや、これで何十倍も美味しくなりますな!」
 がはは、と男爵が笑った。
 二人は意気揚々と立ち去っていく――ひきつった笑顔で固まった、綾姫を残したまま。
「綾姫さん……大丈夫……?」
 おずおずと、セリカが尋ねる――綾姫の顔を覗き込む。はっ、とセリカは目を見開いた。
 口から血を吐いて、白目をむいて、固まっている綾姫の姿が、そこにあった。
「し……死んでる……!」
 綾姫大往生。

●幕間:嫌な顔しながらパンツを見せてください!
「ほんとに俺の下着が見たいのか? ……土下座までするか」
 人気のない、屋敷の廊下――。そこでは、グリムの前に、二人の男が土下座していた。二人の男とは、言うまでもなく、男爵と井である。
 嫌な顔しながらパンツみせてください……そう言った二人の必死の様子に、グリムは折れた。折れてしまった、やむなくこうして、人気のない所までやってきたのだ。
「……はあ、ほんとに嫌だがそこまでするなら見せてやる。
 ……まず仰向けになれ、そして目を瞑れ、それから十秒数えろ」
 その言葉に、井と男爵はずざぁぁ、みたいな音立てながらすごい勢いで並んであおむけになった。そして目をつむり、ゆっくり十秒、数える。
 その間に、グリムはゆっくりと、井と男爵の顔の位置に、立った。
「いいぞ、目を開けろ」
 ゆっくりと、スカートをたくし上げた。嫌悪感と羞恥で、顔が赤く染まるのを自覚する。見られている。見られていると思うたびに、吐き気のようなものが胸にこみあげてきた。
「……表情が見れないとか言うな。
 酒で誤魔化してるが本気で嫌なんだぞこれ」
 照れ隠しのようなものではない。本気の嫌悪である。だが、それすらも、男爵と井にとっては酒のつまみのようなもの。目の前に広がる。ローライズのボクサーパンツを凝視しながら、井と男爵はめっちゃにやにやした。

●メイドさんのお給仕とかくし芸
 さて、食堂には、メイドさんたちの作った多くの料理が並んでいる。例えば繁茂の作った井の形にご飯を模ったカレーや、「だんな様大好き」とケチャップで描かれたオムライスなど。どれも好評で、井と男爵は大喜びである。
「ご主人様、お食事をお持ちしましたにゃん」
 にゃん、とかわいらしい語尾と、きゅっ、と曲げた手首。オデットは料理を給仕しつつ、可愛らしいポーズを決めて見せた。これが大好評である。可愛い。何せとにかくかわいい。
「いやぁ、いいねぇ、オデットちゃん! かわいいねー!」
 でれっでれの男爵。男ってのは悲しい生き物なのだ。
「そ、それじゃあ、おまじないしますね! オデットさん、せーの!」
『もえもえ☆』
 ぴっ、とかわいらしく、セリカとオデット、二人の手を合わせてハートの形を作り、ウインク一つ。可愛さの二乗がさく裂する。これには井も、その可愛さに語彙を失いのけぞってしまった。
「かわいい……」
 もはやそれ以外の言葉が見つからない。
 一方、しずしずと、しかし完璧な作法で給仕を続けるのは、モカとハンスである。モカは、客商売に関しては本職であるし、ハンスは『やるなら完璧にやる(中途半端が一番醜くて恥ずかしいので)』と言う信念の下、完璧なメイドを演じ続けていた。その完璧さたるや、ルージュを始めて推した化粧も完ぺきであった。もうとっくに覚悟完了しているのである。スターテクノクラートに装備作成を依頼したらパンツが届いたあの日から。
「……ほら、ご主人さま。僕の本気のご奉仕、どうですか。それとも……こういうんじゃなくて、かわいくやらなきゃ、だめですか……?」
「いやー、グレーテルくんちゃん、かわいいね! いいよいいよー!」
「くんちゃん?」
 ひき、と一瞬、ハンスの口元がひきつる――ちなみにグレーテルとは、ハンスのせめてもの抵抗か、偽名である――が、しかし次の瞬間には何事もなかったように、口元を結んだ。
「見たいなぁ、パンツ、見たいなぁ! 嫌な顔で! パンツみせてもらいたいなぁ!」
 井が酒に酔った様子で言い放つ。立派なセクハラであるので、良い子の皆は真似してこんな大人になっちゃだめだぞ!
「ホントふざけんなよ」
 にこり、と微笑みながら、ハンスが言う。思わず素が出てしまった。流石に気を悪くしたか……と心配になったが、
「いい……罵倒するショタメイドいい……」
「大正浪漫罵倒ショタメイド……」
 なんかうっとりしていたので、ハンスは胸中で思いっきりため息をついた。こいつら極まって過ぎる。
「さぁさぁ、舞台の時間だよ!」
 パンパン、と繁茂が手を叩く。敷設された特別ステージの上では、繁茂をはじめとするメイドたちが、きらびやかな音楽と舞台照明に照らされて、可愛らしいダンスを踊っている。
 メイド服のスカートをひらりと翻し、まるで花が咲くように演出してみせた。
 そんな可愛らしい舞台が展開される一方、剣舞や武術を披露するメイドもいる。
 例えばモカなどは、体術をメインとした、スマートな武の舞を披露した。モカが足技を繰りだすたびに、井と男爵から声が上がる。
(……感心してるんじゃなくて、スカートから下着が覗けないか、一喜一憂している声だな? あれは)
 胸中でモカがぼやいたが、大当たりである。
 剣舞を披露したのは、トウカである。ドリームシアターで生み出したのは、雪のように舞う、白い桜吹雪の幻影。それを舞台の上に舞わせながら。可憐に。しかして清楚に。ヴィクトリアンメイドは舞台の上を舞った。
 おお、と感嘆の声が上がる。今度こそは、本当に、その剣舞に感心してのものだったに違いない。しばし舞ってから、トウカは、ゆっくりと刀を収めると、静かに、しずしずと、男爵の前へと歩み寄った。
 そのまま、優しく、男爵を抱きとめる。
「ご主人様……俺はご主人様の同士様のように一緒の趣味を楽しむ事はできませんが、独り住む貴方様の孤独を紛らわせることはできます」
 優しく――その頭を撫でた。それは、母の愛だった。
「ひとりぼっちで寂しいからといって……騙したり、館の呪いでメイド服にしなくても。
俺は、ローレットの皆は依頼を遂行します。膝枕しながら耳かきだってしてあげますからね」
 おお、と男爵は唸った。その頬から、涙が流れ落ちてしとどに濡れる。男泣きであった。
「ママ……ママぁ……」
 メイド――いな、もはやそれは母だった――の愛。それを一身に受けて、男爵の身体が光り出す。聖なる母の愛に包まれ、男爵は今、昇天しようとしていた。愛の奇跡だった。
「……いや、ちょっと待って」
 ぐい、と、モカが、空に昇ろうとしていた男爵の襟首をつかんだ。ぐい、と現世に引き戻される男爵に、モカは今日一番の笑顔を見せた。
「さっき何でもするって言ったよね?」
 確かにそう言いました。

●新年会の終わり
「ご主人様は大変悪い猫だったにゃん? 嘘はダメにゃん、ご主人様♪」
 ぎりぎりと、全体重を乗せて、オデットが男爵を踏みしめる。
「ホントふざけんなよ! 全部忘れる迄蹴り飛ばさせてもらうからな!」
 割と本気の蹴りを、井へと叩き込むのはハンスである。
『ありがとうございます! ありがとうございます! 我々の業界ではご褒美です!』
 一方、そんな折檻も喜んで受け入れる井と男爵であった。恐ろしい。
「もえ……もえ……」
 一方、重傷を負った綾姫は、虚ろな目をしながら食堂の片隅でののじを書いている。
「ああ、なんだか大惨事に……!」
 セリカは思わず頭を抱えた。
「さておき」
 井の懐? をまさぐりつつ、モカが言う。
「何でもするって言ったのはあなただからな? 私達はこれから、報酬代わりに酒と寿司を出前で注文する。もちろん、あなたのお金でだ。文句はないな?」
「ううむ、何でもするといったのは僕ですので! 仕方ないですね!」
 きり、と言い放つ井の下の棒辺りを、ハンスが蹴った。ありがとうございます!
「ああ、良かった!」
 繁茂はにっこりと笑って、男爵と井を助け起こした。そのまま、二人をぎゅう、と抱きしめる。
「旦那様方、こんな素敵な機会を頂きありがとうございます♡
 でも騙すのは良くありません♡ お 仕 置 き で す ♡」
「えっ」
 男爵が思わず声をあげる。よく見れば、繁茂の手にはラブポーションが握られていた。もちろんエッチな奴である!
「他の方のご迷惑にならない所でいーっぱい話し合いましょうね♡
 ゴーストや井にも穴はあるんですよ♡」
 ぐっ、と力を込めて、ずるずると二人を別室へと引きずり込んでいく繁茂!
「あっ、ちょ、ちょっと待って、あーっ! アーーーーーッ!!!」
 悲鳴を上げながら、引きずり込まれる二人。その悲鳴をバッグに、ばたん、とドアが閉まった。
「……なんだったんだ、この依頼……」
 グリムは思わずぼやいた。
 この依頼が何だったのか分からなかったが、取り合えずイレギュラーズ達はお腹一杯お酒と高級なお寿司を井のお金で堪能したし、繁茂はつやつやした表情で部屋から出てきた。

成否

成功

MVP

グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨

状態異常

蓮杖 綾姫(p3p008658)[重傷]
悲嘆の呪いを知りし者

あとがき

 ご参加ありがとうございました!
 来年もよろしくお願いします!

PAGETOPPAGEBOTTOM