PandoraPartyProject

シナリオ詳細

プリンとゲーミングの夢~ギルオス・ホリスの憂鬱

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――ギルオス・ホリス(p3n000016)は夢を見る。
 ローレットで情報屋としての仕事を終え、自宅に帰ってベッドに潜り。
 夢を見る。
 一日の疲れを取るかのように熟睡を。深く、深く潜りて――

「……あれ? なんだここは?」

 その時。ギルオスがいたのは――まるで宇宙空間の様な場所だった。
 実際に宇宙にいる訳ではない。これは、夢だ。
 覚えている。ベッドに潜った事。眠りに落ちた事……
 しかし夢の中にしては随分と意識がハッキリしている。『これは夢だ』と自覚出来る程に。
 足元には光り輝く――星の道と言うべきモノが己の足を支えていて。
 どうやら歩くに支障は無いようだ。
 不思議な夢だと周囲を散策してみれば、光り輝く建物の様なモノも見えてきた……うすらぼんやりとした造形で、あくまで『建物の様に見える』だけだが、ふむ。どうやらこれは自身の記憶から形作られた道なのかもしれない。
 落ち着いて周りを見てみれば情報屋として巡った地――が元になっている様な気がする。
 ……何度なく『様な気が』という表現ばかりだが、不思議な空間なのだから仕方がない。
 確証の類は一切ないのだ。まぁ夢から覚めるまでの一時、暫く楽しんでみようかと――思えば。
「んっ?」
 何か物音がした。
 ここに至るまで己以外の気配は感じなかったのだが――まさか、何かいるのか?
 伺う様に建物の角から物音の方を覗いてみれ、ば。
「やぁ」
 そこには、いた。
 ギルオスと同じ声、ギルオスと同じ髪型、ギルオスと同じ服装をした。
 手にプリンを持つ、己の鏡であるかのような――存在が。
「いや待て! 違う違う違う!! なんだ今の表現は!!
 よく見ろ、顔がプリンじゃん!! 全然違うじゃん、僕じゃないじゃん!!」
「ふっ――認める事が出来ないとは器が小さい男だね、自分ながら」
「君はどう見ても僕じゃないだろうが――ッ!!」
 ギルオスは叫ぶ。目の前にいる珍妙な『プリンの顔』をした存在に。
 確かに声は一緒だ。髪も服装も一緒だ。でも違う。顔が違う!
 ――奴の名は『プリルス・パンス』
 この夢の中にいる時のギルオスは、あまりの事態に頭パニックで思い出せない情報であったが、奴は混沌各地で時折目撃されているプリン生物であった。ある時はプリンを出すカフェの冷蔵庫に現れ、ある時は各人のクローゼットの中にそっと望みしパンツを置いていく者……
 それが遂に夢の中にまで現れる様になったのか。いやなんでやねん!!
「ま、まさか君がこの夢を創り出したのか……? 目的はなんだ!」
「ふっ――そんなの決まっているだろう。シャイネンナハトも近いからね、ノリさ」
「ノリ!?!?」
 嘘だろこの珍生物。ガチで言ってんの?
 本当なのか嘘なのか、いやしかしいずれにせよこんな夢を見せられるなど迷惑だ……!
 早めにご退場願うとしよう。そう思って一歩近付いた――その時。

「――見つけたぞ、ギルオス・ホリス」

 次は上の方から声が降り注いだ。
 馬鹿な――プリルス以外にも何かいたのか――?
 咄嗟に振り向けば、そこには空を舞う存在が。
 そこには、いた。
 ギルオスと同じ声、ギルオスと同じ髪型、ギルオスと同じ服装をした。
 七色に光り輝く――カカポの様な存在が!!
「此処であったが百年目。その命、頂戴する!!」
「あああああああああ――ッ!!!!?!?!??!」
 天からの急降下による突進。それは、痛みを伴ったものであった。
 馬鹿な。なんだ、奴は。なんだ、あのカカポは!
 強烈なゲーミング光を瞬かせながら殺意は本物。
 嘴、爪、真空刃による斬撃。瞬く間にギルオスを追い詰め、その命を取らんとする――!!

「な、なに!? 一体何がどうなって……誰か助けて――!!」

 なんじゃこの悪夢はッ――!!


「と言う訳で助けて欲しい」
「どういう訳?」
 いやだからね? 夢の中に妙な連中が現れるんだよ。待って帰らないで。
 あの悪夢を見てから後日――ギルオスはローレットのイレギュラーズに相談を持ち掛けていた。連日プリンのギルオスとカカポのギルオスが、ギルオスの夢の中に現れるらしい。待って席を立たないで本当の事だから。
「いやガチ目に寝不足でね……プリンの方は何もしないんだけど、カカポの方がマジで襲ってきてさ……夢から覚めると別に傷も何もないんだけど、夢の中では痛くてすーぐ起きちゃうんだよね」
「その話が本当だったとしても、夢の中なんて対処しようがなくない?」
「ああ、いや――数日試してみたんだけどね。どうやら僕が寝た時、周囲にあるものも纏めて夢の中に引き込まれるみたいなんだ」
 一度鉄パイプを持っていたら、その鉄パイプも夢の中へと持ち込まれていた。
 それでなんとかカカポを迎撃しようとしたらしいが――カカポの奴、なんかやたら強くて逆にボコボコにされてしまったらしい。夢の中での話なので実際の戦闘力がどうとかは分からないが……とにかく夢の中では強敵の様だ。
 が、事態の解決だけでいえばカカポはまぁいい。あの夢を創り出しているのはプリンの様なので、ギルオスが痛みによって起きないようにしつつプリンを探し出し撃破すれば――多分きっとこの珍妙な夢の出来事は解決される筈だ。だから協力して!
「ほんとぉ? ただ疲れてるだけなんじゃないの?」
「そんな別方向での心配はいらないから! 頼むよ、信じてくれ――夢の中にプリンとカカポが現れるんだよ! 信じて――!!」
 まぁ依頼だというのなら、構わないと言えば構わないが……
 やれやれ。奇妙な夢もあったものである。

GMコメント

 ホントなんだよ。しんじてー!

●依頼達成条件
 夢から覚める前に、プリルス・パンスの撃破。

●フィールド?
 夢の中です。周囲の光景は、まるで宇宙空間の様な不思議な場所です。
 足元は光り輝く星の道の様なものがあります。
 ……が、実は念じれば飛行能力が無くても飛ぶことは可能です。夢の中なので。(ただし飛行や簡易飛行などに類するスキル、アクセサリーなどを所持している場合より上手く飛ぶことが出来ます)
 本依頼ではどれだけ高く飛んでも飛行によるデメリットは一切ないものとします。

 暫く進んでいると光り輝く建物群が見えてきます。
 このどこかにプリルスはいます――奴を見つけ出し、とりあえずぶん殴ってください!

●ギリアム・モーリス(敵?)
 ギルオスと同じ声音、同じ髪型、同じ口調を持つ謎の個体……
 くっ、どっちが本物なんだ……!
 カカポの様な姿をしている『獣種』です。その為本来飛べない筈なのですが……夢の中だからかなんか好き放題してます。また、本人が持てるはずの無いゲーミング技能(と光り輝くゲーミング発光技能)を持っていますので、その辺りが見分けるラインとなるでしょう……!

 夢の中でギルオスに遭遇するとギルオスを滅茶苦茶襲ってきます。
 なぜだかよく分かりませんが彼を亡き者にしようと憎悪に燃えている様です。
 またイレギュラーズに対してもなぜか憎悪を抱いていますが、ギルオス個人程のレベルではなく可能なら(ギルオス以外)被害がないことを望む位性質を携えている様です。

●プリルス・パンス(敵?)
 ギルオスと同じ声音、同じ髪型、同じ口調を持つ謎の個体……
 馬鹿な。全く見分けがつかないぞ……?
 顔がプリンである事以外、全く違いがない……!

 なんか不思議な力でこの夢の空間を作り出している主犯です。何が目的なんだマジで。
 夢の世界のどこかにはいます。探し出して撃破……いや夢の中だから(現実での撃破的な意味で)撃破出来るか分かりませんが……とにかくぶん殴ってみてください。
 戦闘能力の類は不明です。
 が、周囲にはプリンとパンツが舞っており、これを投げてくる攻撃をしてくるかも……?

●ギルオス・ホリス(味方だよ!)
 本物だよ。見分けがつくよね? ねっ?
 シナリオ開始時、彼も夢の中にいます。
 ギルオスのHPが0になると夢が終了します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はYUMEです。
 何が起こるか分かったもんじゃありません。グッドラック!!

  • プリンとゲーミングの夢~ギルオス・ホリスの憂鬱完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年12月31日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一
サジタリウス・パール・カッパー(p3p008636)
外界の来訪者
リズ・リィリー(p3p009216)
アンラッキーハッピーガール

リプレイ


「ギルオスのやつ。パンツだけに飽き足らず、遂にプリンにまで……留まるという事を知らぬ男だな。常に上を目指して精進し続けるとは、流石と言うべきかなんというか」
 待ちたまえ。別に僕はパンツもプリンも目指したりなんてしていない――そんなギルオスの言葉を『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は意図的かそうでないか分からないが無視しながら周囲を見据える。
 ――ここが夢の空間。プリルスによって作り出された謎空間。
「あぁギルオスくん、ココナッツの怪電波を浴びておかしく……流石に私もちょっと反省するわ……ねぇ、ココナッツジュースいる?」
「やめろ! ココナッツのトラウマを思い出すじゃないかアーリア!!」
 同時。言いながらもぶっちゃけ若干以上面白がっているのは『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)だ。ココナッツとは以前ギルオスも同行した(させられた)依頼で……まぁその時の事はともかくとして、しかし流石にうなされているのは可哀そうだとアーリアは一念発起。まぁちょーと面白、じゃなかったかわいいと思わないでもないんだけれどぉ。
「寝酒に呑んだ『M』の果実酒、夢の中でも続いてるみたいだし、ふふふ――あっ。持ってたらまたもう一杯飲めるじゃないの、もう一杯いっときましょう。( ・◡・*)ふふっ」
 やめてその顔文字こわい!
「しかし人の夢の中に入る事が出来るとはな……俺も長く生きてきたつもりだが、他人の夢に入るのは初めてだな。まぁ勿論、やる事に変わりは無い訳だが」
「あっはっは! おかしな所ね、夢空間! ほら見て見て、やろうと思えば飛べるわ!」
 ともあれ件の元凶であるプリルスを探しに行くかと『探究の冒険者』サジタリウス・パール・カッパー(p3p008636)は顎をさすりながら思考し『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)は浮遊する感覚を謳歌しながら少しずつ前進していた。
 目指すはプリルス。聞くからに楽しい存在である――が。
「ウオオオオッ! 無事カギルオオオオス!?
 コンナ、コンナ事態ニナッテシマウトハアアアアア!!」
 プリルスをよく知る――『たんぱく質の塊』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)はプリン色の涙で号泣しながらギルオスを力の限り抱擁していた。あぎゃあああああ身体が骨折するうううッッッ!
 ――そう。プリンは焦っていた。大いに焦っていた!
 いつぞや追跡し切れずに逃してしまったあのマッチョではないプリン。
 それがギルオスを苦しめているという――
「絶対ニ守護ル……! 大マッチョニナッタツモリデイルノダ――!」
「止めろ――! 離せ、その前に夢の中で死ぬ――!!」
「おおもうなんとカオスな事か……はぁ、拙者、何でこの依頼を受けてしまったので御座るかなぁ?」
 吐息一つ。『血道は決意とありて』咲々宮 幻介(p3p001387)はギルオスの事は気の毒だと思うのだが――ぶっちゃけ痛いだけで無害では御座らんかと思っているのである。え、何? 痛いのは確かな被害であって無害じゃない?
「……そこはほら、精神修行の一つだと思って……だめ?」
 駄目らしいので止む無し。プリンのギルオスを斬るとしよう。
 ……うっかり間違えて斬らないようにせねばと思考しながら一向は進む。
 やがて街らしき影が見えてくれば――
「感じる……プリン戦士の波動を……夢を渡るとは何と強力なプリンよ……」
 プリンの波動なる電波、もとい気配を『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は確かに感じていた。ホントぉ? どこかにカカポもいるという話だが、その姿はまだ見えない。
「だが別の強者の気配を確かに感じる――気を付けろ。いつどこからカカポのカカポによるカカポの為の襲撃が行われても不思議ではないぞ!」
「ウィリアム、どうしたんだい? いつもと雰囲気が違くない!?」
「違う! プィリアム……カスタードプリンの戦士、マジック☆プリンなり……!」
 マジでどうしたの!? ギルオスが語り掛けるが、ウィリアムもといプィリアムのテンションは絶好調だ。プリン!! さてはウィリアムに何か変なプリンでも食べさせたな!?
 くっ、プィリアムはもう駄目だ……しかしカカポにも気を付けないといけないのは確かである。奴はプリルスと異なり、明確な闘志――いや殺意と言っていい感情をギルオスに抱いているのだから。
「おお、ギルオスよカカポにやられてしまうとは情けない、だが我らが来たからには安心しろ、ここに並ぶはローレットでも指折りの頭の可笑しい連中ばかりだ、夢の中での活躍間違いなし、この泥の詩人がお墨付きを付けよう」
 だからカカポは任せたまえと『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)は紡ぐのだが、ぶっちゃけ色んな意味で心配しかないのが現状である。プィリアムはあの惨状だしプリンは煩いしアーリアは何故か夢の中でもお酒飲んでるし……
「何。大海に出でれば時として荒波に揉まれる事もあろう。このような事は些事と言えよう」
 マッダラーは思考する。夢の中に入る経験は俺に新しい詩を与えてくれるだろう、と。
 さてさて不思議な空間における不思議な戦い……いざや何が訪れる事かと、皆が歩を進めた。


 アーリアは空を飛行していた。ふらふらと飛行しているが、あれもしかしてお酒で酔って……
「違うわよぉ? ちょーとあっちこっち探してるだけなんだからぁ。
 まずはカカポを見つけないと、夢が終わっちゃったら残念だものねぇ」
 あっ、それはそうとと一度地上へ。
 カカポがギルオスをギルオスと認識し襲ってくるのであれば。
「まずは変装しておかないとねぇ。ほーら、このぱんつを被って被ってぇ? 大丈夫よ――未使用だから。セーフよぉ、うふふふふ」
「ウォォォォォ!! マテ!! ソレナラコレモ被ルノダギルオス!!
 イイゾ、トテモ良ク、似合ッテイルゾ――!!」
「やめないか君達――!!」
 アーリアはプリンバケツの所のお気に入りのパンツをギルオスの頭から被せるが、何がセーフなんだ! み……君に知られたら大変だよ、誤解だけど!!
 更にプリンもまた己が最高傑作であるマッチョプリン☆バケツを強引に被せて変装だ! ――とてもよく似合っている。実にプリンだ……おお、こんなに騒いで喜ぶなんてプリン冥利に尽きるというものである。
「しかしプリルス……ふふ、一体どのようなプリンなのだろうか。おっと涎が」
 ぢゅるり。プリンの方を見据えながら未来のプリルス(の味)に期待を寄せる汰磨羈の口からは欲望が溢れていた。彼女のハイセンスな感覚は周囲に目標のプリンが無いかを探知し続けている……同時に。リズも自らのアホ毛を動かし面白い事が無いかと探し続けて。
「はぁ、プリン、プリン……! 私は今、めっ……ちゃプリン食べたい! 身体が糖分を求めてるのよ! あ、それと後パンツも欲しいなぁ――今パンツ履いてないから!」
 なんで!? 完全にハイテンションなリズ、スカートだったら危ない所だった。謎の光が入る所だった……なんでも夢に入る前に脱いでおいたそうなんだ。なんで!!? スースーして落ち着かないのでパンツを持っているであろうプリルスに会えればと一直線。
 奴はプリンもパンツも持っているという……一石二鳥だ。
 しかしプリンと言えば甘味。
 伴う甘い香りが無いかと汰磨羈が探れば――腹が空いてくるな。ぢゅるり。
 もはや戦士としての顔ではなく、完全に三時のおやつを狙う猫の顔になっている……とはいえ汰磨羈の嗅覚は己ら以外から漂う甘い香りを確かにキャッチしていた。どうやらおやつ……じゃなくてプリルスはそう遠くないようだが――

「見つけたぞ――またも来たな、ギルオス・ホリス!
 見事な変装だが、その薄汚い魂だけは取り繕う事もできないわ――ッ!」

 その時。飛行するアーリアよりも更に上の方から聞こえてきたのは、カカポだ!!
 ギリアム・モーリス。天から虹色に光り輝く悪鬼が襲来する――!
「現れたかカポギル君。だがギルオス(本物)をやらせる訳にはいかないのだ」
 であればと跳躍しギルオスとカカポの間に割り込むのはマッダラーだ。
 決死の盾となり得る彼の動きがカカポの嘴をギルオスへと到達させることは無い――ただの攻撃でこの泥の身体を崩せると思うてか。それに、夢の中であるからか普段とは異なる動きをしてもそれに身体が付いてくる。
「ふふっ、成程やはり面白いな。夢の中では空も飛べる……そう、これぞ空中でのギター演奏。ホントのエアギターと言う事だな!」
 何言ってんのマッダラー!? なんか下の方のギルオスから言葉が飛んでくるが、カカポを捌くのに忙しい。何度も飛翔し急降下してくるのだから――!
「やれやれあっちもギルオスこっちもギルオス、面妖な奴だな……俺には全く見分けがつかないぞ……」
「嘘でしょ、あんなにカカポなのに!?」
 うっかり接近されればどっちを攻撃すればいいか悩みそうだとサジタリウスは頭を振って、しかし辛うじてギルオス(本物)ではないであろうカカポの方に狙いを定める。
 夢の中にも至るバイク。吹かせればその車輪は天を向いて――駆けあがる。
 成程夢とは便利な言葉である。バイクで滑空するなど中々ない経験だが、自在に往ける!
「クッ、邪魔をするのか! どけ! 僕はそこのギルオスを殺したいだけだ!」
「そうはいかない……プリンに忠誠を誓った戦士として、プリンの盟友ギルオスをやらせる訳にはいかないんだ! 全ての夢は善きプリンと安息に包まれていなければならぬ……彼の邪魔をするというのであれば、このプィリアム容赦せんッ!!」
 さっきよりも益々プリン概念に魂が染まっているプィリアムはサジタリウスに追い立てられるカカポへと対空砲火を開始。雷で構成された投槍を放ち――いやなんか気持ちちょっといつもよりプリン色に近い気がするが――とにかくぶち込んだ。
 夢の中で行われる空中戦。空舞う光景はなんと称したものか……
 しかしカカポを倒しても終わりではない。
「そう――全てはプリルスを倒さなければ終わらない訳で御座るからな」
 幻介もまたカカポに対する斬撃を放ちつつ思考する。
 全てはプリルスだプリルス。そう遠くない所にいるであろう奴を倒さねば終わらない。まぁなんていうかそもそもこの事態が訳が分からないのではあるが。ギルオス殿がギルオス殿を襲ってギルオス殿がギルオス殿の夢に侵入してギルオス殿が困ってギルオス殿がギルオス殿を倒す事を依頼してきた……?
「だめだ、もう何が何だか訳が分からなくなってきたで御座る……! この空間は危険で御座る!」
 と、頭を振ってなんとか正気を取り戻そうとした――その時。
 視界の隅に『何か』が見えた。
 目を凝らしてみれば――なにやら椅子の様なモノに座って机の上にプリンを置いている――そう。

 優雅に紅茶を楽しんでいるプリン頭のギルオスがそこにいたのだ。


「ミツケタゾォオオオオオオオオ!!」
 プリン、突進。あっマッチョ ☆ プリンの事ですよ?
 リズのアホ毛が差し示している先にプリルスがいたのだ――ッ!
「ココデ会ッタガ、賞味期限百年メ……! カラメルサイドニ沈メッ!!」
 投じるは白銀に輝くプリンの野球ボール。ボールったらボールだもん。
 剛速球たる一撃が直進する。必ず当てる。呪いが如きプリンの執念は必中の一閃となりてプリルスを強襲し――

 が。プリルスはそのボールを指先だけで受け止めた。

「ヌゥ!?」
 そして人差し指を揺らして『甘いね』と。
 ――それがプリンの逆鱗に触れた。
 許すまじ。大宇宙のプリンに誓ってでも、奴は討滅しなければならぬと今悟ったのだ――! いや大宇宙のプリンってなんなんだ?
「見つけたぞプリン! じゃなかったギルオス、じゃない! プリルス・パンス!
 一体全体どーしてこんな面白夢空間を作ったんだ! あととりあえずパンツ頂戴!」
 同時。捲し立てながら接近するリズがプリルスへと一撃。
 地より出でし土塊の拳が――あれ、ここに地面なんてあるのか――いや細かい事はいい! 信じればそこに地面があるのだ! 私が立つ、ここがアースだ――!!
「さて、まずは一口分をカットして味見といこうか?
 ……いやここは夢の中なのだ。ちょっとぐらい欲張っても問題ないよな?」
 ぢゅるり(PART3)の汰磨羈はもう完全に食う気満々である。こいつ、依頼タイムじゃなくてスーパーおやつタイムの時間だと思ってやがる! ちゅーるじゃありませんよ!
 リズ達によって回避方向が限定されたプリルスを挟撃。狙うは頭。往くは口……じゃないじゃない。まずは抵抗を削がないといけないから霊刃をもって切りつけるのだ。食事タイムはその後だよ。ぢゅるり。
「ギルオスがカカポの手でゲーミングENDを迎える前に、早急にエブリバーデープッチーンさせて貰う! ひゃっはー! 皿はどこだ――!!」
 さぁカラメルを失う恐怖に震えるがいいと、プリルスを一気に追い詰めていく。さすればプリルスは周囲に浮かぶプリンとパンツを汰磨羈らに投擲――抵抗とするが、あんまりダメージはないようだ。だってプリンとパンツだもの。
「やだぁギルオスくんってば上見ないでよぉ? み……くんに言いつけるわよぉ! ギルオス君と寝た(語弊)事も一緒に……って、あらやだぁ! ここにもギルオスくんがいるじゃないの! なにしてるの、全裸じゃない! いくら謎の光纏ってるからって服着て! 放送禁止よぉ!!」
「アーリア君やっぱり酔ってるだろ――!!」
 一方でカカポの方の戦況も進んでいた。誰がどう見ても酔っぱらってるアーリアはカカポの全裸(?)に目を覆いつつ、しかしその飛翔を撃ち落とさんとすべく指の隙間から奴を目視。夢の囁きを齎してその翼を穿たん。
 ギルオスに対しては特攻性能を持つカカポも、複数のイレギュラーズに攻め立てられては厳しいのか、徐々にその速度に陰りが出始めて。
「おのれ――僕はギルオスを殺したいだけなのに――!!」
「ふむ……その殺意。つまりギルオスがギルオスにギルオスした為ギルオスるギルオスがギルオスにギルオスらなければギルオスというギルオスがギルオスった訳か。なるほどな」
「分かってくれたかい?」
「いや全然」
 ノリ100%なだけであると、サジタリウスはカカポへバイク突撃。
 着弾。炸裂。バイクが大破。
 うわあああとカカポが彼方へ吹き飛ばされ、サジタリウスは爆発から逃走し、無事着地。もののついでにカカポが消えた方角へと追い打つようにプィリアムの雷撃が叩き込まれて――よし、後はプリルスだけだ! だから!

「プリィィィィィン、来ォォォォォい!!」
「『Form Shift ――【pudding Blade】!』」

 幻介は往くのだ。この異常空間に理性がやられたのか、プリンに叫びながら。
 行うは己がギフト。刀と認識したモノを刀として握る――必殺剣!
「そうこれぞ、プリン・ブレード!!


 コイツを受けて、無事でいられたら大したもので御座る……!」
 如何なる名刀もプリンには及ばず。
 ――このマッチョ☆プリンこそが最高の刀なり。
 マッチョに有らず、ノリで事を為すと嘯く爾に。
 この友情と信念の一撃、耐えられるか否か、今ッ!

「往くぞ、必殺――バーニング・プリン・ブレェェェェェド!!」
「カラメェ――ルッッッッッ!!」

 夢のツープラトンアタック。
 黄金色(プリン)に輝く勝利の光が――夢の中に満ちる――!!
「――ふっ。成程、ここは僕の分が悪いようだね。
 でもこれで終わりじゃない……いずれ第二・第三のプリルスが現れる・さ☆」
 直後、着弾と同時にプリルスが大爆発。
 なんだこれ――なんだこれ――ギルオス(本物)の目が虚ろになるが、大丈夫だと囁くのはマッダラーで。
「いいか、この夢の世界は君の世界だ、難しい事なんか考えなくていい、夢で君は何でもできる。悪夢の元凶への道を切り開くのは他でもない君自身だよギルオス。さあ、想像しながら瞼を閉じてみよう、夢の中の君は英雄だ、なんでもできる。悪いプリルス・パンスをやっつけるところを想像しよう。ゆっくりと、意識を緩やかにして、自分自身の存在を夢の中に浸透させるように……」
 おやすみギルオス、そして目覚めの時だ。
「悪夢を断ち切る英雄よ、ルバイヤートがその手を取ろう。道はいつでも君の目の前にある」
 寝かしつけるかのように子守唄を謳うのだ。
 プリルスが消え、カカポも戻ってこない上後はギルオスが起きれば全て終わる。
 ああ終わるのだ――この珍妙な夢は、きっと明日見る事は無い。それでも。

「――汝の夢に善きプリンがあらん事を」

 十字を切る様な形ならぬ、台形切りでプィリアムはプリンの形を指し示す。
 プリンよ。永久に栄光あれ――
 此度はプリン頭のギルオスと戦えど、プリンそのものに――罪は無いのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ……? ??? ?????

 プリンは美味しいですよね!(確信) ありがとうございました!!

PAGETOPPAGEBOTTOM