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シナリオ詳細

陽光垣間見ゆ

完了

参加者 : 14 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●呪いの夜は終わり
 カムイグラの命運を左右する戦いが終わったのは、もう随分と前のことのように思える。
 イレギュラーズは全霊を以てかの国を救い、ひとまずは大難が去ったことになる。
 ……その裏で、国家の建て直しに奔走することになった1人の青年の人生も岐路を迎えようとしていた。
「藤色の髪の女……というのも他人行儀だな。『然ノ片(さのかた)』というのだ、あの娘は。彼女が目を覚ました」
 何の因果なのだろうな、と忽那 沙峨はやや影のある表情を目許に浮かべ、つぶやいた。
 『藤色の髪の女』こと然ノ片は、アーリア・スピリッツ(p3p004400)と瓜二つだと常々、アーリアと親しい者達には伝えられていた女である。なんでも、『冥』が暴動に現れた鬼人種を手に掛けようとした際、瀕死の重傷を負うも辛くも生き延び、それ以来意識を失っていたとのことだ。
「なんで起きたかまでは俺も知らん。もしかしたら、お前達の活躍でこの国から暗雲が晴れたことに由来するのかもしれんな。……未だ、ベッドから起き上がるのがやっとだ。車椅子といったか? 黄泉津から伝来したあの押し車なしでは外も出歩けん」
 だが、やはりずっと引きこもらせておくのは具合がわるい。
 そして、起きたのだから誰か、自分のような無愛想な粗忽者ではなく、人として交流に長けたイレギュラーズを頼るのが筋ではないか――と。どこまで冗談なのか定かではないが、彼はそう口にした。
「それに、起きてから随分とあの娘には……この国のこと、そしてお前達の話しをしたものだ。『実物』が訪れれば多少は話に花も咲く。頼まれてもらえるか」
 彼にしては随分素直な申し出だ。迂遠な物言いではなく、直接的な頼み事。それは翻って、彼が然ノ片をどれだけ気にかけているかの証左でもあろう。
「そう多くをもてなせる場ではないがな。賑やかしがいたほうが何かといい」
 検討しておいてくれ、と彼は告げると、イレギュラーズの前から一瞬にして姿を消した。
 ……正式に招待が届いたのは、それから少し後のことである。


「そんな言い方をするものではないわ、沙峨」
「そうだろうか」
「そうだろうか、じゃないのよ。あなたは神使の方々にお世話になったのでしょう? 少しは殊勝に、ぐっと頭を下げるべきだったのよ」
 然ノ片は、沙峨にそういうと困ったように首を振った。
 この男が少々……否、だいぶデリカシーに欠けているのは今に始まった話ではないが、それにしたってもう少し誘い方があったのではないかと彼女は思う。さりとて、この体で高天京に足を伸ばすこともかなわない。
 もう少し彼が柔らかくなれば、少しは友人と呼べる相手も増えるだろうに。そのあたりも含めて、神使達と話すべきではないだろうか?
 そんなことを考えているとはつゆ知らず、イレギュラーズ達は然ノ片の屋敷へと向かうこととなるのだった。

GMコメント

 そんなわけで少人数もなんだろう、でも無制限って規模ではないよな? そんなイベントシナリオとなりました。

●達成条件
 特に無し。
 強いていえば「然ノ片と沙峨の相手をしてほしい」ぐらい。

●然ノ片
 『<神逐>想いは藤色』を始めとして何度か言及されていた神人の女。
 意識不明の状態が続いていたが、この度目を覚ました。
 柔らかい雰囲気と性格だが、結構ずけずけ物を言うところがある。
 外に出るには車椅子が必要。

●忽那 沙峨
 アーリアさんの関係者。
 肉腫にされそうになったのが2度、ガチで死にそうになったのが同数くらい。3シナリオの登場間にどれだけ窮地に立っているんだろう。適当にあしらってください。

●然ノ片の屋敷
 山奥にある屋敷です。面積はやや広め。
 食事等は予め用意されています。誰が作ったんだろうね。
 その他、特にあれこれ気をかけることはあんまりないです。迷惑をかけない程度に自由に過ごして下さい。

  • 陽光垣間見ゆ完了
  • GM名ふみの
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年12月26日 22時05分
  • 参加人数14/50人
  • 相談5日
  • 参加費50RC

参加者 : 14 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(14人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
浜地・庸介(p3p008438)
凡骨にして凡庸
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)
破戒僧

リプレイ

●縁は作るもの
「いやはや、沙峨殿で遊び……と、話したいと思っていたがよもやこの様な宴になるとは……」
「いいんじゃねぇか、誘ってくれたんだからご相伴に預かったって。お互い、カムイグラでは十分働いたんだし」
 鬼灯が屋敷の様子に呆れたようにそう呟くと、義弘が軽い調子で返す。
 然ノ片の屋敷は、つい最近まで主が昏睡状態だったとは思えぬほどに小綺麗で、人を受け入れる準備が整っている。恐らく沙峨の尽力なのだろう。
「お祭りなのだわ! 沙峨さんと然ノ片さんとお話するのだわ!」
「そうだね、章殿が話しかければ応えてくれるだろう」
「俺も挨拶に行かねえとな。招かれた手前、やくざもんとして礼儀知らずとは思われたくねえ」
 章姫が嬉しそうに提案すると、鬼灯と義弘も同意を返す。それなり戦闘を通じ心を通わせた彼女らもだが、義弘は己の礼儀として、仁義を通さずにはいられない。
「誘いに乗ってくれただけでも、非礼ではないと思うがね?」
「おっと、いきなりだな……ご相伴に預かってるぜ。よろしく頼む」
 鬼灯たちのやり取りを何時から聞いていたのか、沙峨はするりと2人の傍らに現れると、義弘に手を差し出す。義弘はその手を握り、両者は静かに頷きあった。
「沙峨。そこは『来てくださり有難うございます』でいいじゃない。本当に貴方という人は――」
「あのねあのね、然ノ片さんはお紅茶はお好きかしら!」
 やや慌てて沙峨のもとに現れた女性――然ノ片は、早々に彼に小言を口にしようとし、しかし咄嗟に挟まれた章姫の言葉に「ええ、元の世界でも嗜んでいたわ」と返す。ファインプレイだ。
「…………その、鬼灯殿。彼女は」
「本物だぞ、多分。しかし、貴殿は短期間のうちに危険な目に逢いすぎではないか? 暦に除霊できる者がいるが紹介してやろうか、お祓いならしてくれるぞ」
 苦い顔で然ノ片と章姫のやり取りを横目にした沙峨に、鬼灯は当然のようにそう返す。目薬をついでに差し出した彼に、沙峨の眉根の溝が深まった。
「一緒に妖を対峙した仲だけど、こんなに素直じゃない……っていうか尻に敷かれてるとは想ってなかったわ」
「……素直じゃない? うーん、素直……素直ねぇ……素直とはなんだろうな、沙峨」
「俺に聞かないでほしい。2人とも壮健なようで何より」
 一連の様子を見ていたルナールとルーキスは、苦笑交じりに沙峨に話しかけた。彼は、バツが悪そうに目をそらす。
「俺の場合は苦手と言うより勘が良い奥さんが居るからな……言う必要がない場合が多い」
「まあ私の場合、勘が良すぎるだけともいうけどね。ルナール先生も口に出すのが苦手だからなあ」
 肘で小突きながら同意を求めるルーキスに、ルナールは困り顔で考え込む。言う必要がないなら言わなくてもいいのでは? それは沙峨も同感だが、相手の反応を見る限り違うらしい。だが、ルナールはちゃんと好意を伝えている分沙峨よりは朴念仁ではあるまい。
「そういえば忽那くんだっけ、色々巻き込まれてるらしいけど大丈夫?」
「ああ、うむ。お前達に助けてもらった一件もあるが、肉腫といったか、カラカサのような……アレ絡みで少しな」
「死なない程度に巻き込まれた方が良いぞ?」
 命あってのなんとやら、と忠告しようとしたルーキスの言葉に混じったルナールの言葉に、沙峨もおもわず表情を緩めた。
「最悪、手助け程度なら俺ら夫婦でも手伝えるし。というわけでこれな」
「……許可証? 助けてくれると?」
 ルナールに唐突に首にかけられた許可証を見て、沙峨は困惑気味に彼を見た。妻を信頼するあまり謎のドヤ顔を見せた相手に、彼もやれやれと息を吐いた。

「……私は、決戦に際し、少しばかり手助けした身ゆえ、あまり多くを語ることはできませぬ。
 カムイグラの戦いが終わるころに、こちらに来た故、どのような情勢かもわからぬ次第・
 もしよければ、カムイグラについて、ご教授願いたく仕り候」
「この国は、我々『獄人』と呼ばれた者達と『八百万』、つまりお前達のいう精霊種とで成り立つ国だ。多数なれど排斥された獄人達は多くを失ってきたが、八百万とてこの国の平定の為に敢えて我等を下げて同族の汎ゆる不満の溜飲を下げた面はあるのだろう。……その垣根が壊れ、直ぐにすべてよくなるわけではない」
 庸介は真摯に、一連の仲間達との会話をひとしきりきいてから、正座し、瞑目したまま口を開く。そして、知らぬことを知ろうとする姿勢を崩さなかった。沙峨はその姿勢を心地良いと感じた。
「これからこの国は変わる。人の心を善きに変えるべく尽力する傍ら、歪みが表出するだろう。お前のような若い神使の新たな力に、これからも期待する。……恥ずかしながらな」

「沙峨様、然ノ片嬢におかれましてはお初にお目にかかるであります。自分、エッダ・フロールリジ。海向こう、ゼシュテル鉄帝国の騎士(メイド)であります」
「ご丁寧に有難う。然ノ片よ。こちらの仏頂面が沙峨。私達は初対面だけど、その顔だと聞いているのかしらね?」
 エッダの挨拶に応じた然ノ片に抗議の声をあげようとした沙峨はしかし、次の瞬間に唐突に現れたもうひとりの紫髪――アーリアが然ノ片の手を撮ってずいと近づくのを見て、声をかける機会を失った。
「はじめまして、然ノ片ちゃん。話はよぉーく、沙峨くんから聞いてるわよぉ……って、ほんとそっくりねぇ!」
「確かに似ているでありますな。……アーリアの方がよく飲む分こう、少しぽよっと」
「ちょっとエッダちゃあん? 後でちょっとお話しましょうかぁ?」
「オッやるでありますか。豊穣の酒に免じてパンドラだけは残してやるでありますよ」
「ちょっと、私をさしおいて喧嘩しないで頂戴。……でも、エッダさんは優しいのね」
 アーリアさんもね、とエッダの本心を見抜いて微笑みかけた然ノ片に、エッダは暫し硬直した。この感情は恐らく、カムイグラの酒からくる感覚に違いない。
「話、ッスか? うーん、僕、あの戦いでは、ひとりも犠牲を出さないこととか、遮那さんの力になりたいとか、そういうことに夢中で、言ってしまえば至極個人的な理由で動いていたので……こう、特に武勇伝みたいなものはないッスねぇ」
「……もう最っ高、お姉ちゃん好き好き大好き! 格好いい!」
「妖討伐の折に顔を見て以来だったが、そうか。天香のも、善き縁を繋いだのだな。同じ血を分けた者にそうも好かれているのだ、人柄もわかろうというものだ」
 鹿ノ子からさきの動乱の折の話を聞きながら、沙峨はしみじみと彼女の表情とそこから除く感情の動きを観察する。遮那の名前を出したときに覗く大きな感情のゆらぎは、未だその感情を持つことに自身が持てていない様子にもとれた。
「そういえばお姉ちゃん、遮那っちの事どう想ってるの? 好きなのは知ってるけどホラ、あれから色々あったからねー」
「そうッスね、守りたいって気持ちと……守られたいって気持ちも、いまはちょっとだけあるッス」
 カナメは鹿ノ子に向け、唐突な問いを投げかけた。鹿ノ子は驚くでもなくしみじみとそう返し、遠くを見るような目になった。弱いところを曝したい。大事な人になら、それが出来る。彼女の目はそう言っていた。
「カナはお姉ちゃんを応援したいんだよ。推しが笑顔で幸せになるのを、ファンとして見届けたいんだ。カナの事はその後でもいいし……」
 カナメはちらりと妖刀に目をやってから、首を振る。気を取り直して食事を、と勢いよく食べ始めた2人を見て、沙峨はなんともいえない心持ちになった。


「おう、どうだ忽那の! 食ってくかい? 色々用意してるぜ!」
「ゴリョウか。……こうして会うのも久しいきがするな。相変わらずで何よりだ」
 沙峨は、新たな友人と姦しくたのしむ然ノ片を置いてふらりと歩みを進めた先で今まさに団子を量産していたゴリョウと鉢合わせた。用意されているものは、カムイグラでも馴染みのあるものばかり。すっかり風土に溶け込んだその姿に、沙峨もおもわずため息にも似た笑みをこぼした。
「それにしてもあのときは世話んなったな! あの後は大丈夫だったか?」
「神使達のお陰でな。お陰で霞帝も戻られ、国の形を取り戻した。ここから立て直すのも俺達の役割だ」
 ゴリョウの問いかけに、沙峨はしっかりした視線を前に向ける。あの日、神逐が成されたことでこの国は再生への道を歩き出した。諸問題はすておけぬが、それでもだいぶマシだ。
「ふむ、天香の家や獄人の騒動でなんぞ大変だったようじゃな。わしは当時からふらふらしてただけじゃからよくは知らんが話位は知っておる」
「俺はお前の顔くらいは覚えている。妖退治に出張る程度にはこの国を憂いていたのだろう、お前も。俺のことは置いておいても、それは感謝しきれん」
 そんな話を聞きつつずいと顔を覗かせたのは瑞鬼。両者は全くの初対面ではないが、深い印象を持たぬ者同士である。
「……今回の件より前のことよ。彼の娘は共に生きるべく目を覚ましたんじゃろう。大事なものはせいぜい手の届くところに置いておくことじゃな」
「……善処しよう」
 断片的にしか知らぬ話でも、伝えられることはある。瑞鬼の言葉は殊の外的を射ており、瞑目した沙峨の心にもしっかりと染み渡った。
「辛気臭い話はナシじゃ。ゴリョウ、なんぞ肴になる団子はないか?」
「酒のつまみにするんなら糯米蒸肉圓ってのもある。合うと思うぜ」
「では、こちらの空いた器は片付けておきます。沙峨様も皆様も、腰を落ち着けごゆるりと」
 瑞鬼の問いに、ゴリョウは間髪入れずもち米の肉団子を差し出す。入れ替わりに差し出された空器は、さらりと黒子が手にして片付けるべく歩いていく。その自然さに、3名ともに驚きと感心の視線を向けた。
「……もう半年ですか」
 黒子は片付けをひとしきり終わらせると、縁側に座ってほうと息を吐く。軽く引っ掛けた酒気は年越しを前にした冷気に溶けて消えていく。酔いの高揚から解かれた身に残るのは僅かな郷愁。
 この地に領主として根を下ろす以上は居住まいを正さねばならぬが、こういった折に思い出さねば、とも思う。
「あーはっはっは、良いぞ。この身は仮にも僧侶だから、話をするのは得意ぞ。ギャンブルと酒と煙草の話が特に得意だがな!」
「……破戒僧殿、もう暫し気品を隠す努力をされよ」
「沙峨、あなたまた――」
 遠くでは義実が悪びれた体験談を語ろうとして、沙峨にちくりと毒を刺されて怯んでいる。それを口酸っぱく咎める然ノ片の姿を含め、カムイグラの年の瀬、なんでも無い一日が過ぎていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 時限クエストを加味すると意外と沙峨君と面識ある人率が高かった。
 白紙以外全員描写しました。漏れあればお伝えくださりますと助かります。

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