PandoraPartyProject

シナリオ詳細

人は何故冬にミニスカサンタになるのか~その謎を追う為我々はアマゾンの奥地へと向かった

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●なんで?
 冬は寒い。誰にでも分かるこの世の理屈である。
 動物達は時として眠り、時として冬の毛を纏いてこの時期に備える。
 ――だというのにある種族はなぜか積極的に薄着になるのだという。
 それは人間。
 その者は紅き衣を纏いて、しかし肌を晒して冬の舞台を駆け抜ける――
「なぜだ――生物の性質に反しているとは思わないかね?」
「いや只の欲望の権化故にじゃないですかね司教様。
 そうでないにせよ別に種族単位レベルの話じゃないと思うんですけれど」
 幻想南部の一角に広く広がる森林――通称『アマゾン』と言われる地がある。
 そこに訪れているのはミニスカサンタ衣装と言う概念に疑問を呈する司教が一人と、完全にやるき無さげにツッコミを入れる部下が一人だ。いや、ミニスカサンタ衣装に疑問を呈そうがなんだっていいですよ? でもなんでこんな森の中にまで来る訳?
「ふむ、まずはその辺りから説明が必要かね。いいだろう! 実はこの付近にある街には昔から言い伝えがあってな。男性にしろ女性にしろみだりに肌を晒すな……でなければ服がミニスカサンタになってしまうのだと」
「なんて?」
「正確には魔物だか精霊だかよく分からんのだが、衣装を強制的にミニスカサンタにする奴がいるそうでな。しかもそいつ、倒されても来年には復活しているらしい――幾ら滅ぼしてもミニスカサンタにし続けるその執念から恐れられているんだそうだ」
「なんて?」
 意味不明。部下の頭の上には疑問符が絶えないが、それでも司教は思考していた。
 この世にミニスカサンタという概念を生み出したのは奴なのではないかと。
 先述の通り本来冬に薄着をするなど理論的には破綻している――しかし『強制的』にそれをする輩がいたとするなら話は別だ。奴がミニスカサンタ衣装を生み出し、そしてそれを目撃した者が各地にミニスカサンタという概念を広めていったのでは……?
 つまり我々は今からミニスカサンタの概念起源に会いに行くのだ!
「そして奴に問う! なぜ――ミニスカサンタを生み出したのかと!」
「いやその謎の奴はともかくとしても、その推察はほとんど貴方の妄想ですよね? ていうかそんな目的の為に私を巻き込まないでもらっていいですか。ただでさえ給料安いのに、このクソ馬鹿下等下劣司教がよぉ」
「君! 君! そんなに責めるな、泣くぞッ!!
 いいか、大の大人が泣いていいのかぁ~!?」
 帰ろうかな。そう部下は思いつつ――しかしその時。
 気配を感じた。
 森の奥。何かがいる。
 姿は見えないが、しかし確実にこちらを捉えている者が……!

 ――ho、ho、ho――

「ッ!? な、なんだ今の声は……!?」
 梟の鳴き声? 足元で泣きべそっている司教の声?
 いや、違う。木々の中を高速で移動する影があるッ! これは――『奴』の声だ!
「き、来た! 『奴』はこういう特徴的な声を醸し出すんだそうだ!! 奴を捕らえるんだ! 奴には話を聞く必要があるから……あ、だが捕まるなよ! 捕まるとその瞬間から何故かどうしてか服装が一瞬でミニスカサンタになるそうで――」

●ねぇなんで?
「……というような事が先日ありまして」
 額を抱えているのは『遊楽伯爵』ガブリエル・ロウ・バルツァーレク(p3n000077)であった。アマゾンという森は幻想に昔からあるんだそうだが、そこに先日踏み込んだ司教達が魔物――? 精霊――? に襲われ、身ぐるみを全てミニスカサンタ衣装に変えられたんだとか。
「はっ? え、で、それで?」
「まぁ本来であれば不用意に森に侵入した者の責任……となる所ですが、些か厄介な事態に陥りまして。事の能力を持つ『奴』が刺激されてが故か――麓の街の方で何度か目撃されているのです」
「ええ……?」
 ガブリエルの話を引き続き聞いてみると、まだ被害は少ないのだそうが街では突如ミニスカサンタになってしまう男や女やらで時々混乱が起こっているらしい。シャイネンナハトも目前であるとはいえ、強制的にミニスカサンタにされてしまうなど……
「流石に放ってはおけませんので、どうか皆さんに『奴』を退治してほしいのです」
「も、森の中にいる奴を?」
「ええ。なんでも倒しても来年には復活している……或いは別固体なのかもしれませんが……とにかく蘇るには蘇るそうなんですが、逆に言うと倒してしまえばそのシーズン中は出てこないらしいのです」
 非常に素早い速度で動く個体らしいので気を付けてくださいね、との事だ。
 ……森の中は奴のフィールド。しかし数をもって攻めれば必ず倒せるはずだ。
 幸いにして奴は衣装をミニスカサンタにしてくる以外特に攻撃はしてこないらしい――いやなんかそれだけで絶大な気はするけれど、まぁ、でもそれだけなら最悪着替えを用意しておけば……
「……まぁ依頼なら何とか頑張ってみるかぁ」
 外は冬の風が吹いていた。
 この中で薄い衣装に成ったら――ううっ、想像するだけでも寒気がするものである。

GMコメント

 ミニスカサンタ……その概念は一体どこから……
 以下詳細です!

●依頼達成条件
 『奴』の撃破

●フィールド
 幻想南部に存在する『アマゾン』……という森林の一角です。
 地球とかいう星の世界にもなんだか同名の地があるそうですが特に関係はありません。ないったらない。そこそこ以上に広い森だそうですが、特に危険な魔物などは『奴』を除いていいないらしいので、歩いていても余計な危険はないでしょう。
 木々がどこまでも広がっており、各地には川や池もあるなど湿度も多めです。
 また、この森は結構広いので未だ開拓されていない未知の領域があるとされています。
 ……でもミニスカサンタの秘密なんてないやろ多分!

●『奴』
 まるでサンt……赤い衣装に身を包んだ謎の存在です。
 森の中を高速で動き回ります。あまりにも身軽。なんでも空も飛べるんだとか。
 非常に優れた反応と回避とEXAを誇ります。でも攻撃力は(物理的な意味では)皆無です。
 ただし精神的には……どうなんだろう……精神的パンドラ……うん……がんばってください!

 触れた相手の衣装を『ミニスカサンタ』にする能力を持ちます。男だろうが女だろうが関係ありません。奴は皆さんをミニスカサンタにするのです。ho-ho-ho-! あ、比較的厚着な人を先に狙いやすい傾向があるみたいです。あくまで傾向ですが。
 最初からミニスカサンタの人物や全員がミニスカサンタになった後はどうなるかって?
 写真を取られます。超速度の身軽な状態から全角度から写真を……その写真機は一体どこから持ってきたんだ……練達か?
 満足すると逃げられてしまうのでその前にぶちのめしてやりましょう。

 ……ちなみに着替えを持ってきていても奴は何らかの探知によって即座に着替えを潰しにかかってきます。OPでは用意しておけばいいと言ったな? あれは嘘だ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●でんじゃー
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない『心』の死亡判定が有り得ます。
 ミニスカサンタ~~~♪

  • 人は何故冬にミニスカサンタになるのか~その謎を追う為我々はアマゾンの奥地へと向かった完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月30日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
アルヤン 不連続面(p3p009220)
未来を結ぶ

リプレイ


 こんな依頼をお願いするのは心苦しいのですが――

 そんな事を遊楽伯は初めに言っていたのに『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は『はい! 大丈夫です、お任せください!』と内容聞かずに即答してしまったのがいけなかった。だって今日はクオリアの調子も良かったんだもの! ついあの方の声に聞き入ってしまうのも仕方ないでしょ!!
「焔ぁああああ!! よくも、よくも嵌めてくれたなぁあああ!!」
「えええええ!? 違うよ、今回はボクのせいじゃないよリアちゃん!! 何か変な依頼があるとだいたいボクのせいにされてるけど今回は本当に関わってないからね! リアちゃんの自爆だよ!!」
 依頼開始即座に『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)との仲間割れが始まったが、いつもの事なので良しとしよう。でも今回は本当に焔ちゃんの所為じゃないよ。優先が付いてたのが誰の所為なのかも知らんけど。
「うっ、うっ、コワイ。ヴァルツァーレク領コワイ。どうしてこんなセイブツがいるんだ……いや百歩ユズっているのはいいよ。でもヨリにもヨって祝いの季節になんでこんなヘンタイの居る森にやって来なくちゃならないんだよ!!」
「奇怪な生物? もここに極まりと言う感じね……一体どういう生態でミニスカサンタなんて原理を……まぁなるべく被害に遭わないように立ち回りましょ。結局触れられなければいいんでしょ――えっ? 私が囮?」
 同時。『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)はこんな冬のめでたい日にどうしてこんな依頼を受けないといけないんだとガチ目に涙が出そうであった。しかもミニスカサンタにされる危険があるなど……ガチ目に怖いんですけど。
 だが私が囮? 嘘でしょ? と作戦を何度も確認する『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)に比べればまだマシか――? 彼女はファーコートに加えマフラーも付けて重装備(厚着)をしている。
 これだけ着ていれば如何に『奴』と言えどそう簡単には……

 Ho-ho-ho――

 その時だった。森の奥から特徴的な声が聞こえてきて。
 これが――目標の『奴』か――!!
「なんだかよくわからんが『奴』をぶっ飛ばせばいいのだろう? ははは、簡単な事じゃないか。竜を相手取る訳でも無し、余裕であろう余裕」
「あらあらー世の中、俗にそれをフラグというのではー」
 どこからでも掛かってこいと『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は闘志漲りフラグ漲りの状態だ。『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は近くに『奴』の気配を感じながら、しかし焦ってはいない。
 まぁ嫌がる人に無理やりはともかく、ミニスカサンタであれば子供達――そして大人達にも夢と希望を配達できるではないか。特になんの問題も見受けられな……え、そういう問題ではない?
「寒いですものねーうんうん、それは私にも分かりますわー」
「いやどっちかというと尊厳の問題と言うか……
 まぁ自分はちょっとどうなるのか興味があるんですけどねー」
 と、穏やかなユゥリアリアに次いで語るのは『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)である……いやアルヤンはどうなるのだ? というかそもそも彼は服を着ている判定なのか? ある意味これ常に全裸なのでは? ミニスカサンタになったらむしろ肌面積が減っちゃうのでは? 肌ってどこだ?
「扇風機だって色んな服着たいんすよー。なんでこの世界は扇風機用の服売ってないんすかねー。でも今回はサンタさんの格好にして貰えるんすよねー。楽しみっすー」
 ともあれわくわくしているアルヤン。衣服が着れるなど滅多にない経験だからと。
 『奴』を待ち構える。
 どこだ――気配はあるのに姿は見えぬ――どこだ――どこからくる――ッ!
「――んっ?」
 その時、アンナは気付いた。
 背後に何かがいる。
 そして背後に居る者が――己が肩に触れていて――

 気付けば己の衣装が非常に丈の短いミニスカ衣装になっていた。

「キィサァマアアアア!!!!」
 瞬間。『たんぱく質の塊』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)は怒った。かつて冷蔵庫のプリンを勝手に食べられた時の絶望と憤怒が如く怒りに怒った!
 彼はプリンとマッチョをこよなく愛し崇める者。
 故にマッチョシャツを着て頭をプリンプリンした(現在進行形)。
 そんな彼がミニス化攻撃を受ければ――大事なマッチョ☆シャツが失われるのである。そう、今しがた速攻で厚着したコートとかをミニスカサンタに変えられたアンナの様に!
「サセン!! ソンナコト、サセンゾォォォォオ!!」
 だから殴りかかる。誰よりも早く、誰よりも素早く『奴』へと――ッ!!

 Ho-ho-ho――

 しかし『奴』はまるで余裕であるかのように、跳躍。
 プリンの頭上を跨ぎながら――彼の背後に着地した。


 ある意味阿鼻叫喚の事態が始まった。
 『奴』は凄まじい速度でイレギュラーズ達の間を駆けまわり、ミニスカサンタを量産せんとしているのだ――! その超速度たるやアンナの反応が遅れてミニスカサンタにされてしまうぐらいである。やったぜ。
「くっ――!! でもね、これぐらいの事態、予測していたわよ!!
 さぁ、ミニスカサンタとやらにできるものならしてみなさい――!」
 されどアンナは動じない。英霊の魂をその身に宿らせ臨戦態勢と共に。
 ミニスカ衣装の上から新たなコートを羽織るのだ。
 それは囮様に用意していた別のロングコート。袋に詰めて持参して、変えられても即座に着るのである――ところでロングコートの下がミニスカ衣装とかなんかへっちな気がする。え、やかましい?
 ともあれ『奴』はやばい。
 残像を残す程のスピードを維持しながら飛翔もするのだ、どういう原理だ。
 それでも仲間に触れさせるわけにはいかない――いやぶっちゃけこの敵から狙われ……辱めを受け……のはアレだが、依頼成否の天秤にはかけられないのだ。英霊の魂たちも応援してくれている、もっと薄着になれと――いやこの英霊たちなんか碌でもないな?

 Ho-ho-ho――

「ヌゥゥゥゥゥウウ!! チョコマカト、ワズラワシイゾ!!」
 同時。そんな感じで『奴』を一定のイレギュラーズの近くへと誘き寄せんとするが――『奴』はプリンの一撃やイグナートの掌打すら紙一重で回避していた。なんちゅう奴だ。
 ――いや違う。プリンの一撃は躱したように見えて当たっている。
 それは必ず当てるとするプリンの執念が結ぶ必中の一撃。
 黄金色に輝くプリンの魔光が『奴』を捉えるのだッ――!!
「クソ――!! 高度なヘンタイめ! 聞いてみるけれどイッタイ何がモクテキでこんなことをしてるんだ!? イヤ、どうせモクテキなんて無いんだろう!? そうなんだろう!?」
 叫ぶはイグナート。敵からの返答は常に『Ho-ho-ho-』のみで意思の疎通が取れるかは怪しい。
 だが、なんとなくイグナートは感じ取っていた。
 ――これ多分『奴』の趣味なだけだと!!
「ああああああこっち来たぁああああ!!」
 そんなこんなしてたら『奴』がリアへとターゲットを移し始めた。
 アンナの下に引きよせられていたが――ドラム缶の如く何十にも厚着していたリアもまた狙われるのは道理であったからだ。しかも厚着していた所為か若干動きが鈍い気がする。や、やばい! まずい、とにかく今のリアにミニスカサンタはまずい――!! また修道院の子供達の性癖が破壊される――!!
「そうはさせるか、百歩譲ってミニスカサンタになろうとも逃がさず始末してしまえばこっちのもんよッ――!!」
 およそシスターらしからぬ発言をしながら、リアは相打ち覚悟で攻勢一転。
 振るう刃が魔力を宿し、風の精霊が力を纏わす。
 己が敵たる存在を切り裂く一撃を――『奴』の身へ!

 Ho-ho-ho――

 であれば奴も流石に躱せるとは言い難い。速度に優れようと攻撃と回避を一度に成せるものか――まぁリアさんは無事にミニスカサンタに変えられましたけどね。やったぜ!!
「ああッ! よくもリアちゃんとアンナちゃんを!!
 これ以上君の好きになんてさせるか、次はボクが相手うわぁやられた――!!」
 炎を纏わせ焔は一閃。『奴』へと注意を引きつけながら撃を叩き込むも、代わりに触れられる。即落ち二コマかと言うぐらい完璧な流れ、焔ちゃん分かってるぜ……!
「あらあらーこれはとても酷いですわねー予想より三倍ぐらいひどいですー」
「おのれなんと不埒な! ええい、だがこの程度でイレギュラーズが屈するとでも思ったか……! 動けなくさえしてしまえば、如何に速度に優れようと関係あるまいッ――!!」
 更にユゥリアリアもミニスカ衣装にされるが、彼女はやはりあまり悪い印象は持っていないのか『あらあら』で流している。一応『奴』を退治しなければならない為、味方の動きを支援するための祝い歌をその口から紡ぐのは忘れない。
 さすればブレンダは敵の残像――の中に混じる真の姿を捉えるのだ。
 穿つ。ただ一点、本物のみを。
 その命を頂戴する――ミニスカサンタになる前に、うわだめだ触れられた――!!
「ええい! だが、このブレンダ・スカーレット・アレクサンデル……自らの身体に恥ずべきところなどはない! どんどん撮るがいい!」
「そっすねーまぁ自分の場合はとっても扇風機の姿だけなんで『奴』にとって面白いか分からないすけどー。ともあれ『奴』が木々の間に隠れたっすねー自分に任せるっすー。はいどーん」
 直後。丈がこれまたやけに短いミニスカサンタになろうとも屈さないブレンダに続いて、アルヤンの砲撃が放たれた。
 それは魔砲の一撃。木々諸共吹き飛ばし『奴』が隠れようとも逃さぬのである――

 Ho-ho-ho――

 同時。聞こえた声はアルヤンの頭上より。
 奴だ。魔砲の一撃を喰らいながらも、上に飛んだのか。
 そのままアルヤンの近くに着地し、触れれば――
「…………あれ? 帽子だけっすか? 衣装は? 衣装はつかないんすか? なんすかこの布」
 なんとアルヤンの帽子がサンタ帽子に変わっていた。あと台座の所に赤い布が添えられていた。
 ……あれ、ミニスカは? ミニスカサンタ衣装は? これが扇風機ミニスカサンタ衣装になるの? しかしそれでもいいのか『奴』はアルヤンに向けて写真連発。えぇ~!?
「どうなってんのよコイツの嗜好は!? サンタ衣装の一部でもあればいいわけ!?
 ちょ……どこを撮っているの変態生物!! やめなさい、こらッ!!」
「アアアア――!! もうなんなんだよコイツはぁ――!!」
 それだけではない。ついにロングコートも尽きたアンナを下から写真を撮ろうとし踏まれ、イグナートの拳による打撃を受けながらも彼のミニスカサンタ衣装を撮る執念を見せているのだ――なんだここは地獄か!?
 もはやマトモな衣装をしているイレギュラーズは残っていない。
 右を見てもミニスカ。左を見てもサンタ。
「てめぇ!! 絶対にここから逃がさないからね!!
 ここで血の池に沈んで滅びろや――!! そしてその写真機もぶっ壊すッ!!」
 故に生かしては返せないとリアが鬼の形相である。その姿はミニスカサンタだけれども。
 ――かくして後はサンタが満足して逃げるのが先か、ぶちのめすが先か。
 今(色んな意味で)尊厳を賭けた最後の攻勢が始まろうとしていた――!!


 プリンは吼えた。ついに、ついに己までもがミニスカサンタになってしまったのだから。
「ヨクモ……ッ! ヨォクゥモオレノマッチョヲォオオオ!!
 ユルサナイ!! ゼッタイニ、ゼッタイニユルサナイゾオオオオ!!」
 マッチョのないマッチョ☆プリンなど、もはやマッチョ☆プリンではない。
 これではただのプ☆リンだ。プリン自体のアイデンティティに関わる……!!
 故に彼は憤怒を纏いて直進。『奴』を狙ってプリン・ボールを投げていた。
 如何に回避に優れようと幾度も攻撃を重ねられれば躱し続けられはすまい。
 殺す。必ず殺す。
 最後の手段である着ぐるみセットにより己が理性と存在理由を極限で保ちながら――プリンは殺意を纏っていたのだ。こわいよぉこのプリン。甘くないよぉ。
「わーい。ほらほら写真を撮って欲しいっす。ポージングはこんな感じすかねー?」
「ふっ、さぁ撮るがいい! 存分にな――ただしお代としてタダでは撮らせないが!」
 直後。『奴』を誘き寄せる為にアルヤンが首を振って送風開始。ブレンダもまたいざや来い! と威風堂々『奴』の撮影を待ち構えて――来たら一撃ぶち込んでやった。
 共に狙うは撮影機だ。アルヤンに至っては折角なので写真は撮って欲しいぐらいであるのだが……写真として残される事に抵抗のある者もいるだろうとブレンダは思考し、やむなく破壊を試みる。最低でも牽制にはなるだろうとして。
「写真を撮り始めたら流石に隙が出始めたね! よし、この機を逃さずに攻めて……ちょっとリアちゃん! なんでボクを盾にしようとしてるの!? ひどくない!? 死ぬ時は一緒だって言ったじゃないか!!」
「そんな約束はしてね――!! ははは、だけどすまんな焔!
 私は絶対に、絶対にこの姿を晒される訳にはいかないのよ!!」
 アルヤンたちの攻勢にたまらず別方向へ往く『奴』――に対抗するは焔とリアだ。炎の壁を作って妨害せんとする焔……だが、リアががっしり焔を掴んで写真へのガードとする。このシスター、友達を売りやがった!
 しかしそんな様子に注意を引かれているのか『奴』はリアと焔の写真を激写連発。
 その間に重ねられる攻撃は確かに『奴』の身を削っていて――
「あらあらあら自分の危険よりも衣装を撮る事の方が重要なんでしょうかねー凄い勢いですわー」
「あーもう!! イツまで写真撮ってるつもりだ!
 どれだけ撮ってもムダだよ!! コナゴナにしてやるからな!!」
「殺す。もとい、生かして帰すわけにはいかない。そのカメラが存在している限り、私に安寧の時は訪れない……! ちょっと!! また、こら! よりもよって下に回り込んで撮ってこようとするの止めなさいよッ――!!」
 であればとユゥリアリアは近付いてきた『奴』がシャッターを切ろうとした寸前――光り輝く聖夜ボンバーを一撃。光を発し、撮影の妨害を行うと共に、カウンター気味な形で破壊の魔閃を奴へと一撃。
 乗じてイグナートの全力が奴の腹へ。
 いい加減怒り心頭であるソレは絶大な威力を伴っていた。それでも『奴』は懲りぬのか、アンナの足元へと寄って行き――しかしアンナは激怒しながら渾身の力を持って殺しに掛かるのであった。剣に纏う全霊と共に、死ねッ――!!

 Ho-ho-ho――!

 殴打。斬撃。魔力。灼熱。プリン。
 様々な攻撃が奴へと乱れ打ち。しかし回避することすらせず写真にだけ集中している。
 ああ――ミニスカサンタ衣装を堪能出来ればそれでよい――この命などくれてやろう――と、最後の力を振り絞った『奴』が最後のシャッターチャンスをある人物へと向ければ。
「無駄ダ」
 その人物は、言った。
 無駄? 何がだろうか、如何に嫌がっても写真には撮れるのだと!
 そう想い、ボタンを押して――しかし。
 撮れない。
 いや撮れてはいるが映らない……これはまさか、スペクターか!!
 あらゆる記録媒体に映されない力。それを行使したのは――プリンで!

「見タカ! コレガ魂! コレガプリンノ力!
 プリントマッチョハ、何者ニモ汚スコトはデキナイノダ!!
 ソシテ、コレガオレノ……オレノ!! プリン☆ストライクダッ――!」

 直後。
 渾身。全霊。
 プリンの総てを込めた一撃が――奴の写真機を粉砕し、そのまま顔面へと炸裂した。


 好き勝手していた『奴』に最後の最後に意趣返しに成功した。
 勝利の雄叫びを挙げるプリンは実に雄々しかった……衣装はミニスカだけど。
「このミニスカサンタの服って持って帰っていいんすかねー欲しいっすねーえ、でも奴の魔力か神秘によるものだから冬を超えて持続されるとは限らないって? そんなー」
「はぁ……ここまで虚しい勝利の味は初めてだわ……心に何も残らない……不毛……寒い……」
 首振るアルヤンはサンタ衣装(布?)をいたく気に入ったようだが、元々正規の服かも分からないこれがいつまで維持される事か……一方で写真機を完全粉砕したアンナだが、その顔には虚無の色だけが漂っていた。ぬいぐるみに変形させておいた兎さんフード付きパジャマを早速着てもう帰ろ……あれ? あれあれ? なんでこれまでミニスカサンタ衣装になってるの? ちょっと――!?
「くっ、生け捕りにデキていれば『フコウな事故』があったかもしれないのに……! まぁミンナ全力を出してたしシカタないのかな。一歩間違えればガブリエルのミニスカサンタ衣装もあったかも……」
 なんてことを考えていたんだイグナート。でもそんな未来はなかったんだ。だからこの話はここでお仕舞いなんだ。お仕舞いなんだ……タブンネ。
「さて。まぁ――とりあえずこんな衣装で外に長居する訳にも行くまい。なんでも迎えの馬車が来ているらしいからそれに乗って……で、なんで貴公がここにいるのだ!」
「ハハハ、ブレンダ。伯爵から頼まれたから仕方ないじゃないか。それにしても――うん、よく似合ってると思うよ」
 ともあれブレンダの言う通りもはやこの森に用はない。帰ろう……としたら、どうやら迎えの者はブレンダの知り合いのシルト・ライヒハートなる人物だったようだ。
 流石に知り合いが迎えに来るとは思ってなかったのか『いうな! 見るな!』としながら剣を振るって、しかし軽快に避けつつ――穏やかな言葉を交わしていた。
「うぅ……なんなんだよこの依頼、地獄かよ……早く着替えないと」
「うんうんそうだね――でも着替える前にまずは報告が先じゃないかな? まだ依頼中だよね?」
 はっ? やめろやめろやめろ!!
 ミニスカサンタから着替えたいリア。そんなリアを引っ張ってでも伯爵の所へと行かせたい焔。早く戻れば少しくらい――そうでなくてもお話出来る時間が出来るだろうという善意(多分)と、こんな姿は晒せないとするリアの羞恥。た、助けてガブリエル様――!! あ、駄目、やっぱり今は助けないでください――!!

「違うんです伯爵――!! これは、これは全部炎堂焔って奴が悪いんです――!!」

 街へと向かう馬車の中。
 逃れようとするリアの絶叫が木霊していたとか――なんとか。

成否

成功

MVP

マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば

状態異常

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)[重傷]
無限円舞
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)[重傷]
願いの先

あとがき

 ミニスカサンタ衣装は素晴らしい文化(確信)

 それでは、ありがとうございました!!

PAGETOPPAGEBOTTOM