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シナリオ詳細

涙真珠の乙女

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋王国、パトマの町には『涙真珠の乙女』という精霊の不思議な伝承がある。
 精霊と人魚の、すこし悲しいお話だ。

 昔々、海洋王国が今よりずっと小さかった頃の事。海洋の人々は、ここに島を発見した。
 潮の流れは急で、岩礁も多く、危険な場所だった。
 それでも新天地に移り住んだ人々は小さな村を作り、精霊『海の乙女』に助力を願ったのだ。

 そして真珠の乙女は、調停の巫女を務めたディープシーの少女と互いに恋に落ちた。
 海の乙女は村との契約に快く応じて、水の力で海の流れを変えたのだ。
 精霊と少女は仲良く暮らし、村は徐々に大きくなり、やがてパトマの町と呼ばれるようになる。

 しかし物語はまだ終わらない。
 時は流れ、やがて巫女だった少女は、年老いて亡くなった。
 それ以来というもの、海の乙女は涙が止まらなくなってしまったのだ。
 精霊の力は乱れ、再び海は荒れ狂ってしまった。
 町の人も、海の乙女も、荒れ狂う海を止めようとしたが、力が及ばなかった。
 その時に町と海の乙女は新しい約束したのだ。年に一度、水の力を宿した特別な真珠を捧げるようにと。
 そうすれば海の乙女は力を補い、再び海を穏やかにする力を振るうことが出来るのだと。

 それからというもの海の乙女は『涙真珠の乙女』と呼ばれるようになったとさ――。

 ――薄暗い室内に、遠くから波の音が聞こえる。
 洞窟に停泊している船の中だ。今は帆も旗も降ろされているが、開けばドクロが描かれている。
 ぎししと笑った男は、親指と人差し指に挟んだ大粒の真珠を眺めていた。
「伝説だかなんだかしらねーけど、これは高く売れるよな!」
 卵のように先が少しだけとんがった、涙型の珍しい真珠だ。
「おやびん、さすがにやべーんじゃねえですかい。呪われたらどうすんでさ」
「うるせー! おとぎ話にびびってんじゃねえ! こいつをうっぱらえば酒も女もやりたい放題よ!」
「さっすが! そうですね! おやびん!」

 海賊の男達は昨晩、祭りの喧噪に紛れて涙真珠を盗んでしまったのだ。
 海はしかし、何も起こらなかった。いつものように穏やかなままだ。
「だから単なるおとぎ話だっつうの! ガハハ! イイ年越しになりそうだぜ!」


「大変な事件」
 『真心の花』ハルジオン(p3n000173)がローレットに集まったイレギュラーズに依頼書を差し出した。

 海洋王国の小さな島に、パトマという町がある。
 町では毎年冬に『涙真珠』という特別な真珠を、地域を守る精霊に捧げて海を守るお祭りがあるらしい。
 しかし海賊が涙真珠を盗み出してしまったのだ。
 町の衛兵達は海賊のアジトを突き止めたが、そうこうしているうちに一週間ほどがすぎ、段々海が荒れてきてしまった。
 海が荒れた原因を、町の人達は涙真珠が盗まれたからだと言っている。
「だから涙真珠を取り返してほしい」

 海賊団のアジトは掴んでいるが、問題は海が荒れていること。
 それから海賊達から涙真珠を取り返した後、荒れた海の祭壇に戻さないといけないのだ。
「海賊とは戦闘になると思うから、頑張って倒して」
 ハルジオンから地図や注意書きを貰ったイレギュラーズは、海洋王国へと向かった。


 ――おねがい。あの力がないと、海がおさえられないの。
   だから、どうか。あの子の愛したこの町を、想い出を、壊したくないから――

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 海賊をやっつけて、大切な真珠を取り返してあげましょう。

■依頼達成条件
 海賊を倒して、涙真珠を奪い返す。
 涙真珠を海の祭壇に戻す。

 倒した海賊は、依頼が成功すれば、引っ捕らえた事になります。
 死んじゃっても大丈夫です。

■フィールド1
 海賊のアジトです。
 洞窟に停泊した海賊船の甲板です。かなり揺れます。

 海賊達がいっぱい出てきますので、倒してください。
 倒したら奪い返せます。

■フィールド2
 船を使って指定地点に行って、涙真珠を海中の祭壇に納めます。
 場所は分かっていますが、すごく荒れています。
 『荒れた海を上手く移動する』『荒れた海の中を上手く移動する』の二つが必要です。
 工夫したり、小型船や操作スキル、海中で上手く行動するアイテムやスキルがあると有利になります。
 小型船はなければ、町が貸し出ししてくれます。
 役割は分担しても協力しても大丈夫です。

■敵
 宝石を盗んだ海賊達。
 海が荒れているせいで、なかなか盗品を売りに行けなくて困っていますが自業自得。

・海賊船長
 剣や銃で攻撃してきます。結構つよいです。
 遠近いけます。ブレイク、出血、範囲攻撃があります。

・海賊(曲刀) 六人
 甲板に六人です。剣で攻撃してきます。

・海賊(銃) 六人
 マストに二人、甲板に四人です。銃で攻撃してきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 涙真珠の乙女完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

リプレイ


 轟々と荒れ狂う波と風音が聞こえてくる。
 それはまるで悲痛に叫ぶ女の泣き声のようであった。
 薄暗い海を眺めながら『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は溜息を吐く。
「荒れ狂う波の音は女の泣き声、海の水は人魚の涙が集まったもの……なんてのは、飲み仲間の船乗り連中からよく聞いた話だ」
 縁は小料理屋を営んでいる。其処に来る船乗りも多い。彼等がいうには偉大なる海は気性が激しいということだ。普段は穏やかでも、少しでも機嫌を損ねると、途端に手が付けられなくなる。
「なんにせよ、ずっと聞いていたいモンじゃねぇな」
 雨に濡れた髪の毛を掻き上げて、進行方向――海賊のアジトを見つめる縁。
「大冒険……とは、ちょっと趣が違うか。
 まぁでも、こーゆー取り返す英雄のお話も結構あるよな! 確か!」
 マストの見張り台に上った『兄貴分』サンディ・カルタ(p3p000438)が、目に雨が入らないように手で遮りながらじっと海賊のアジトを観察する。
「この大雨の中だ。流石に見張りとかは居ないみたいだな!」
「本当に海賊どもは、阿呆だな。海の男が海を舐め腐るからこういう目に合うんだ」
 眉を山型にして怒りを露わにする『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)。
 比較的信心深いカイトは今回の事件に対して、腹立たしく思っていた。
「まあ水神さま(竜種)に会ってるし、こういう力ある何かというのは得てして海の中にあるものだ」
 ザパザパと強い風に荒れる海を見つめるカイト。
 しかし、何と言う荒れようか。それだけ悲しみにくれているのだろう。
「幼い頃によくおじい様に聞かせて貰った御伽噺……その涙真珠を奪い……海を荒れさせた馬鹿者達」
 口に手を当てて『戦場のヴァイオリニスト』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)は考えている。
 パトマの町に伝わる『涙真珠の乙女』の物語。
 精霊『海の乙女』と調停の巫女を務めたディープシーの少女の恋は実ったけれど。
 切ない別れと共に悲しみが溢れ。その精霊を鎮める為に涙真珠を捧げるお話。
 寝物語かと思っていたけれど、この海の荒れようを見ればきっとそのお話は本当なのだろう。
「大事な物を返してもらうまでが制裁だろう……? しっかりと祭壇まで届けねばな」
 顔に打ち付ける雨を其の儘に、ヨタカは決意を胸にする。

「わわっ揺れる!」
 船が大きく揺れてマストへとしがみ付いた『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は甲板の上を転がっていく木のバケツをキャッチして、船内へと投げ込んだ。
 上へ下へ波を受けて船が大きく揺れる。けれど。
「でもあの絶望の青よりはましだね! さて、酔っちゃう前に対処しないとね!」
 新天地カムイグラへ至る前、廃滅竜リヴァイアサンと冠位アルバニアを相手取った時に比べれば、こんな時化なぞ造作も無い。あの戦いはもっと激しく、何隻もの船が海に沈んだのだから。
「ああ、そうだ。リヴァイアサンと戦った時に比べればミジンコ程の脅威だな!」
 カラカラと『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が大声で笑う。
「恋人の思い出が残る場所を相手が亡くなってからもずっと守ってきたのか」
『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)はこの海を荒れさせている精霊を思った。
 たった一人で、大切な人が、大切だと思う場所を守って来た。
 相手が居なくなってもずっと。それがどれだけ大変で苦しいか想像も付かない。
「……乙女さんは凄いな。その愛がこれからも続くよう俺達も頑張らなきゃな!」
 トウカは胸に闘志を燃やし、事前の準備をしていく。
 町の人から借りてきた重い錨を二つ用意したのだ。
「一つでも重いけど、二つならもっと重い! この亀甲縛り向けロープで二つの錨をがっしりとくっつけるように縛り付ける」
「すごい。見事な亀甲縛りだ」
 トウカの意外な技に『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)が感心する。
 どこでその巧みな技を覚えてきたのか気になる所だが。さておき。
 海賊どものアジトへと船を進めるイレギュラーズ。


「何だァ! てめえら!!!!」
 イレギュラーズの強襲に海賊達は度肝を抜いて剣を構えた。
「おうおう、弱っちい海賊どもだなぁ! 俺様は海洋の軍人だぜ? お縄につけってなぁ!」
「ああ!? 何だとこの野郎!」
 エイヴァンの挑発に海賊達は怒りを露わにする。
 剣を振りかざし、襲い来る敵の攻撃を受け止めてはじき返すエイヴァン。
「がはは! そんな生っちょろい剣で俺が倒せるとでも思ってるのか? 掛かって来いよド三流!」
「舐めんな、ゴラァ!!!!」
「やってやる!!!!」
「まぁ、殺すつもりはないが。多少は痛い目を見てもらうぞ?」
 エイヴァンはカイトへとアイコンタクトを送る。
「ほーん、それが伝説の真珠か。確かにきれーだが、お前みたいなガサツでゴワゴワしてそうなやつには似合わねーな!」
 カイトはエイヴァンが雑魚を引きつけてくれている間にボスの元へ走り込んだ。
「『風読禽』、聞いたことはねーか? 捕まえようにも捕まえられない。空を緋色に染めて、視界を緋色に染めて、風にのって獲物をどこまでも追いかけてくる……へへっ」
「何を言ってんだてめぇ!」
 カイトはボスと剣を交しながら、悪そうに笑う。
「今日の獲物は、どんな味がするんだろうな?」
「た、食べるのか!? ああ!? 俺達を食べるのか!?」
「さあ、どうかなぁ?」
 カイトはボスの恐怖を煽るように、攻撃を苛烈に繰り出していった。

「一応聞くが……大人しくそいつ(涙真珠)を返す気はねぇかい? 素直に渡してくれりゃぁ話が早くて助かるんだがねぇ」
 縁が海賊どもに問いかける。
「……ま、これで返すなら最初から海賊なんてやってねぇだろうが」
「誰がてめえらなんかに渡すものか! 俺達のお宝を奪おうってんなら容赦しねえぞ!」
 海賊どもの言葉に、はぁと溜息を吐いた縁。
 やれやれと肩を竦めて、一瞬の隙を突いて海賊の至近距離に移動し、爆裂する一撃を放つ。
「うわぁ!? 熱い! 助けてくれ!」
 縁の右手から放たれた炎は海賊を覆い尽くした。
「俺としちゃぁこのままこの荒れ狂う海に放り出してやってもいいんだが……できるだけ殺しちまわねぇよう手加減してやるとしようかね」
「抜かせ!」
 襲い来る敵の剣をひらひらと踊るように交す縁。柳を相手取るような感覚に海賊の怒りが溜っていく。
「くそお! 何だこのやろう! ぶっ殺してやる!」
 勢い良く飛び込んできた海賊をゆらりと交した縁は、欄干から落ちそうになる男の首根っこを掴んで甲板に投げた。
「妙な気は起こしなさんなよ。ここで海の藻屑になりたかねぇだろ?」
 この激流の海の中に落ちてしまえば、泳ぎが得意なディープシーといえど溺れてしまうかもしれない。

「涙真珠の話を、単なる御伽噺だと思っていて? 海が荒れているのは偶然かしら?」
 ルチアは海賊共に言葉を投げかける。
「知らねえよ! 時化てるだけだろ! 偶然だろ!?」
「違うわよ。いいこと、こういう話はだいたい実際にあった出来事を脚色してできたものが多いの。だから、これは貴方達が起こした罪なのよ」
 ルチアの声に、海賊達の間に動揺が走った。
 盗んだ罪を物ともしない根性の曲がった奴らにも、多少の信仰心があったのかもしれない。
 海賊として海に生かされている自分たちが犯した罪は、もしかしたら大変なものなのではないか。
 そんな小さな不安がルチアの声で海賊達の間に吹いたのだ。
「分かったら今すぐ涙真珠を返しなさいな。捧げに向かうから」
「でも……」
「なあ、どうするよ」
「何を敵の言葉に惑わされてんだ! そんなもん御伽噺に決まってるだろ! 現実を見ろ! この嵐は冬だからだよ! この季節は時化が多いんだ!」
 迷っていた海賊達にボスの怒号が飛ぶ。
「例え御伽噺だとしても……」
 ヨタカは船長に向けて悪夢に叩き落す呪われた魔弾を放つ。
「うわあぁあ!」
「彼女が愛し……」
 船長は打ち抜かれた腹を抑え、冷や汗をかきながら剣を振り回した。
「そして今なお愛する者が居るあの場所を奪おうとするお前達に。……未来など……ない」
 的確に放たれるヨタカの攻撃は船長の体力を削っていく。

「精霊族の力を借りて、少年が海賊船長と海上の一騎討ち!
 いいねぇ。どっかで聞いた気がするぜ」
 仲間が雑魚を引きつけてくれている間に、サンディは船長の前に躍り出てニヤリと笑った。
 風の加護を受けた剣を取りだし、切り裂いていく。
「へへ、どうだ? 俺の攻撃は。見えねーだろ? でもなちゃんと切れてるんだぜ?」
 サンディの言葉にボスが自分の腕をみれば、確かに攻撃を受けていない場所に切り傷が見えた。
「てめぇ! どんな手品を使ったんだ!」
「不思議だろ? ま、教えてやらねーけどな。おおっと、真珠のことを忘れちゃいけねーや。
 どこに隠し持ってんだ? おっちゃん?」
 サンディが楽しそうに笑ったあと、風の刃が彼の背後から現れる。
 カイトとトウカの合わせ技だ。
「こっちががら空きだぜ?」
「まだまだ行かせてもらうぞ。早く返してやらねばならないからな」
 カイトが右側から、トウカが左側から攻撃を仕掛ける。
「チィ!」
 一度は交わせても二度目は皮膚を抉っていく。
 なら、三度目はどうだ。
「俺の事も忘れるなよ!」
 サンディが二人の影から現れ、ボスの背を斬った。

「民謡、伝承歌、お伽噺……。伝説の中にも真実の欠片があるんだよ。ほら、この荒れた海。何か繋がるものがあるでしょ?」
 アリアの奏でるような美しい声が聞こえてくる。
「歌も、昔話も後世に伝えたいメッセージがあるという点では一緒。それを軽んじた人には歌が、音楽の精霊たる私から罰を与えないとね!」
 グリムアザースは自然の象徴たる精霊そのもの。
 この海が荒れる原因である、涙真珠の乙女の声だって旋律として聞こえてくるのだ。
 ――おねがい。あの力がないと、海がおさえられないの。
   だから、どうか。あの子の愛したこの町を、想い出を、壊したくないから――
 悲しい。切なる願いを叶えてやらねばならない。
 アリアは涙真珠の乙女の気持ちと共にボスへ想いを叩きつける。
 そのアリアが乗せた涙真珠の乙女の声にボスの目から涙が零れ落ちた。
 剣を捨てて、ガクリと膝をつく海賊達。
「くそ! 俺達が間違っていた……! これを……すまない」
 ボスが懐から差し出した涙真珠は悲しげな光を放っている。
「大丈夫! 私達が今から返しに行くから。貴方達も申し訳ないと思うのなら手伝ってくれない?」
「俺達でいいのか?」
 アリアの提案に驚く海賊達。自分たちの仕出かした事を考えれば、今すぐにでも掴まっている所だと思うのだが。
「少しでも悪さすれば、俺達が後ろから叩いてやるよ!」
「そう……未来が欲しいなら、手伝うことだね……」
 サンディとヨタカが海賊たちの腕を掴んで立ち上がらせる。


「よし、行くぜ。いよいよ海がやべえ事になってきやがった」
 カイトの『紅鷹丸』に乗り込んだ一行は祭壇へと船を進める。
「この辺は海の流れがきつい。右回りの方が最終的には早く着くぜ」
「本当だろうな? 嘘吐いてないか?」
 ボスの案内にカイトは疑いの目を向けた。
「海のうねりがどんどん増して来るなら、時間をかけない方がいい。
 そいつらの言うことも一理あるだろうぜ。ここはいっちょ信じて見るか。なあに、もし時間が掛かるっていうなら俺のブリンクスターを使って一気に潜ってきてやるからよ」
 エイヴァンは胸を叩いて任せろと声を張り上げる。
「そうだな。俺は先に海に潜って祭壇を確認してくる」
 変化を説いて元の姿に戻った縁は激流の海の中へ飛び込んだ。
 程なくして、縁が戻ってくるとボスの言葉通り行けそうだと頷く。

「荒れた海は怖いのは海洋生まれの俺はよく知っている……慎重に」
 ヨタカはトウカが祭壇に涙真珠を納めに行く間、海の中に漂う漂流物を別の場所に追いやった。
「正直あんま出来ることはないからな。船の上じゃ……」
 マストに上ったサンディは周囲の警戒をしている。
「モノを返しに行くだけなんだし、カミサマに怯えることなんざねーのさ。
 海賊どもも大人しいし。問題ねーだろ」

 えいこら えいこら
 もひとつ えいこら
 それ曳け舟を
 それ巻け綱を

 カイトが激励を飛ばすように、船を操縦しながら歌う。

 ――――
 ――

「海の祭壇かあ。興味はあるけど、荒れた海を泳ぐほど泳ぎに自信ないなあ」
 落ちないように船体と体をロープで結ぶアリア。
「ねえ、少し辛いかもだけど……話してほしいな、その女の子の事」
 アリアはこの近くに居るであろう精霊へと言葉を投げかける。
「――――」
 彼女の歌声に反応して涙真珠の精霊が答えた。
 それは、少女との楽しい思い出。大切で掛け替えの無い時間。
 アリアはその思い出を真珠に添えて歌にして、返す。
「姿はなくても、歌はある。辛かったら、歌って思い出してあげて」
 祈りと共に捧げるアリアの歌。それに重ねられるのはヨタカのバイオリンの音色。
 愛するこの海に。御伽噺の二人に。自分の事も重ねてどこか胸が熱くなるけれど。
 優しい旋律は、トウカを導くように降り注ぐ。

 トウカは皆のサポートを得て海の中に潜っていく。
 涙真珠を無くさないよう懐にしまい。
 流されないように錨を抱きしめて。
 暗い海はルチアの光が照らしてくれる。
 祭壇までの道のりは精霊の激情そのものだった。
 流木や岩がトウカを襲い、血が海に流れていく。
 しかし、トウカは痛みに耐え突き進んだ。

 そして――

 祭壇に涙真珠を納めた瞬間。
 海の流れは穏やかなものに変わり、空は晴れ渡ったのだ。

「よかった」
 嬉しげな表情を浮かべるルチアは穏やかになった海を見つめて安堵した。



成否

成功

MVP

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 無事に少女を救うことができました。
 MVPは精霊の心を引いた方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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