シナリオ詳細
<Raven Battlecry>それいけパンピースクワッド
オープニング
●一般人を舐めんなよ
フゥンというかけ声と共に石瓦を拳でたたき割るカイゼル髭の男。
隆々の筋肉をみなぎらせ半袖シャツを内側から引き裂くと、肉体を見せつけるようにポージングした。
「ラサの男を舐めるなよ。コソドロどもめ、ぶちのめしてやる!」
「さすがアイアコッカさん! 大工はボディが資本!」
「大工ばっかに良い格好はさせねえ」
一方でガチムチ体型の男が同じようにシャツを内側から引き裂き、灰色のトロフィーを掲げた。
「あれは消防団のエドセルさん! 火事から100人救ったっていう伝説のトロフィーだぜ!」
「ホホホ、若もんが調子にのりおって……」
消え去った頭髪と対照的に胸まで伸びる白髭をたくわえた腰の丸い老人が両目をカッと見開くと、杖からバチバチと雷の魔法を放った。
「フォードのジジイ! 古書店の頑固フォードは魔法使いってのはマジだったのか!」
ヒュー、こいつは勝利が見えてきたぜ! と若い男達が拳を掲げる中、希代の大商人ファレン・アル・パレストは頼もしげに彼らのたわむれを見つめていた。
ラサ商人にこのひとありといわれ、ラサの経済基盤をひいては国家基盤を支える大人物だ。
そんな彼が集めたのは、大鴉盗賊団迎撃のために展開された大手傭兵団たち……ではなく、街でも腕っ節自慢の男達であった。
腕組みをして振り返るファレン。
「随分凸凹した軍隊ですが……士気は充分。装備さえ調えれば、おそらくは使い物になるでしょう」
ファレンは自分の胸をトンと叩き――。
「装備は私が。そして士気は、あなたが整えてください」
あなたへと、ファレンは指をさして笑った。
●市民部隊(パンピースクワッド)
ラサ砂漠地帯にて発見されたファルベライズ遺跡群とその中にあった色宝たち。これを巡って大鴉盗賊団とローレットが激しい争奪戦を繰り広げていたのはこれまでの話。
「この宝の価値はせいぜいが傷薬程度と思われていましたが、どうやらそれ以上の価値を彼らは知っているようです。
であれば、我々はなおのこと彼らに色宝を奪わせるわけにはいきません。
折しも大鴉盗賊団はその軍勢をここ首都フェルネストへと差し向けていますが、それを押し返すために『赤犬の群れ』『凶』『レナヴィスカ』の三大傭兵団が出動し、この勢いに引っ張られる形で大小様々な傭兵団が大鴉盗賊団迎撃に動いてくれました。
おかげで、フェルネスト郊外で奴らを食い止める作戦をとることができる」
できるが、しかし。
とファレンは言葉をつなげた。
「急速に人数を増やした大鴉盗賊団は一攫千金を狙うコソドロ程度の連中を大量にまとめ上げ、『捨駒部隊』を作り上げたようです。
個々人の戦闘力は低いながらも、偽ザントマン事件のあおりで追放された者たちや砂蠍残党が加わり数は膨大。こうした戦力に精鋭部隊である傭兵団をぶつけるのは非常にコストがわるい……」
あるいは、そうした『傭兵団の無駄撃ち』を狙った人員配置なのかもしれない。
たとえ一騎当千の猛者でも、余事に費やされては真価を損なうというものだ。
で、あるからして。
「数には数。非戦闘員ながらもそれなりの戦闘力をもつ即席の『市民部隊』で迎撃することとしました」
大工や消防士、古書店のジジイからカフェのマスターやクラブのホストに至るまでにやや型落ちした装備を行き渡らせ、混成部隊としたのがこの市民部隊(パンピースクワッド)である。
本来ならこんな荒技はとれないが、それができてしまうのがファレンの人脈であり財力なのだろう。
「彼らはやる気こそ充分にありますが統率はとれていません。戦闘慣れもあまりしていない。
ですので、ローレット・イレギュラーズ……あなたがた一人一人が小隊長となり、彼らを率いて大鴉盗賊団の捨駒部隊と戦ってください」
戦術に優れている必要も、指揮官経験が豊富である必要もない。
いまあなたに求められているのは、先頭にたって敵に向かっていく勇気であり、それを見せつける背中である。
「ザントマンを払ったローレットは、今や市民達の希望です。その希望を、いま剣にかえてください」
- <Raven Battlecry>それいけパンピースクワッド完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月20日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「チーム商店街、けっ、せい!」
しゃきーんとしたポーズをとって犬耳パンを天高く掲げる『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)。
その左右ではパン屋や八百屋や床屋といったおっさんたちがかため、なんだか統一感のある集合ポーズをとっている。
「一般市民のド根性、見せてやるー、ですよっ!」
通称パンピースクワッド。それはネフェルストにすまう一般市民たちで構成された戦闘集団である。
日頃傭兵をやとうことで武力を補ってきた彼らにとってこうしたガチガチの大規模戦闘は不慣れ極まるが、それなりの装備とパン屋さんの割に大規模戦闘慣れしてるミミのような指揮官をつけることで立派な戦力として機能するのだ。
だがそれは一見すると大鴉盗賊団の『捨て駒部隊』のように、ちょっと戦える程度のゴロツキを大量に集めて武装を強化しただけの部隊と似ている。
決定的な違いはそう。
「希望を、剣に……ですか」
ある意味で聞き慣れた、ある意味で遠のいた、『この世界』に来てから得た新しい期待と力。
『健気な覚悟』伊達 柚子(p3p009211)は死神という新たなアバターと古いライフルににたシルエットのアサルトボウガンを手に、男達を率いて立っていた。
「私はこちらに来たばかりですし、戦闘経験も浅い人間です。
けれど、イレギュラーズになったのであれば。先輩方の努力の結晶、それに泥を塗るような事を出来ません」
頑張らなきゃ。そう拳を握って決意を新たにする柚子。そんな彼女の肩を、大柄な男がポンと叩いた。
「そう固くなるなお嬢ちゃん。たとえアンタが俺の娘より弱くても、俺はアンタについていくぜ。アンタが見ず知らずの俺たちのために命張ってるのが、わかるからな」
ついでにこれが俺の娘だといって五歳児の写真を見せつけてくる男。
低いハードルもあったものである。
だが……。
「任されたなら、力になりたいわよね!」
『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)が柚子たちにウィンクをして、腕をぽんと叩いて見せた。
「今回は魔法少女じゃなくて、リズ・リィリーとして戦うわ!
確かにイレギュラーズとして召喚されたけど、『一般市民』であること自体は変わってないはずだもの!」
不思議な感覚、なのかもしれない。
彼女たちは特別でありながら凡庸なままでいられた。大きな領地を持つ貴族や異世界の魔王や凄腕の傭兵がいる一方で、パン屋やアイドルやP-Tuberが同じ列に並ぶのがローレット・イレギュラーズである。
さながら、この戦いに参戦したコックや郵便配達員やホストたちと同じように。
「……」
『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は士気の高い仲間達の様子を確認すると、ラサでも猟を生業とする男達で構成された銃砲隊へと振り返った。
ファレンから上等な装備を支給されるにも関わらず、使い慣れた猟銃をあえて選択した彼らは、黒子にとって信用するに値するプロフェッショナルである。
広く渇いた砂漠を移動し続ける体力。一発の銃弾にすべてを込め一撃必殺を旨とする手際。戦争に際しても猟師はスナイパーとして重宝されるものである。
その一方。
「きゃわーん! カルタのぉ、初依頼がこんなに素敵なマイメン達とだなんてぇ、嬉しいですぅ!」
『花合わせ』暒夜 カルタ(p3p009345)はテンションMAXでぴょんぴょん飛び跳ね、『俺らもサイコー!』といってテンポ良くはやし立てるネフェルストホストクラブチームと共にきゃっきゃしていた。
ホストといっても若いにーちゃんだけではない。金持ちの多く集うこのラサ首都ネフェルストには広い需要が求められ、見た目ショタのベテランホストやジムで見せ筋を鍛え続ける褐色のサーファー風、知的なモノクルと白手袋で執事風にキメた老紳士や、長い金髪をきらきらさせる王子様風のイケメンまで勢揃いであった。
ここだけちょっと乙女ゲーぽかった。
「バランスさいこーですぅ! きゃわーん!」
属性(?)でバランスをとったら結果戦闘バランスもとれたという、混沌あるあるである。
「楽しそうでなによりだ。これだから集団戦はやめられないね」
『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)はバイクや翼で高い機動力をもった運び屋たちを終結させ、電動車椅子を砂のうえで止めた。
翼を畳んで着地するゴーグルの男たちと、バイクをスライドさせてとめる男達。
「リーダー、敵軍の配置はマッピングできた。奴ら陣形ってもんを知らないらしい」
「統率力もないらしいな。街に入れれば金一封とでも言われたのかな?」
「結構……」
渡されたシートをぱらぱらとめくり、シャルロッてはぱちんと手をうった。
彼女の戦闘スタイルは首尾一貫。座って、考えて、語る。それのみである。
「じゃあやろうか。守ろうという意思さえあれば、既に立派な兵士である事を見せつけてやれ」
神輿があった。
忍者神輿だった。
『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)をてっぺんに据えた、半裸の男達であった。
彼らは『砂嵐隊』と書かれたハチマキをしめ、誰もが鋭く遠くを見つめている。
「何の因果か解らぬが人を率いて戦う事になろうとは。とはいえ町を自らの手で守るという意気や良し!」
神輿の上で立ち上がると、咲耶は絡繰手甲・妙法鴉羽『宿儺』を装備した両手をガツンとぶつけ合わせ、その一瞬で両手を手裏剣発射形態へと変形させた。
「ゆくぞ、拙者達の明日をこの手に掴む為に!」
「「応ッ!!」」
「おー、気が合いそうな人が出てきたッスねー」
『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)はぴょんぴょんと飛び跳ねて身体をほぐすと、全身に走ったエネルギーの光をヴォンと強めた。
「他人任せにせず、自分たちで街を守ろうと……その意志こそまさにヒトらしいものッス!!
イルミナは……イルミナは感激しましたよ!! さぁ皆さん、イルミナと力を合わせて頑張りましょうね!」
「「応ッ!!」」
縦やマジックライフルを構えて叫ぶ男達。
出自は違えど今は仲間。
黄金の矢となった彼らの鏃は、他ならぬあなた。
かつて遠くにあった敵軍の列は、いまやそれぞれの顔が見えるほどに近い。
都市という形のない人格を攻撃するつもりだった即席の盗賊団が、こちらの顔を見て躊躇の色を見せる。
「人目を盗んで人の物を盗んでいたコソ泥が、やっと人の目をみて命を奪う強盗になる……ッスか」
「その境は薄いようでひどく厚い。躊躇は隙となり、隙は弱さとなる」
同じだけ戸惑ったなら、団結したほうが勝つ。それは咲耶が幼い頃からたたき込まれた戦術のひとつだ。
イルミナは、決意の瞳で敵を指さした。
「全軍……突撃ッス!!」
●
グレネードランチャーを構えたチーム商店街、もとい『ミミ隊』がろくに狙いもせずに打ちまくる。
まっすぐ走ればいいと教えられた人間にとって、どこで爆発するかわからない攻撃というのはひどく嫌なものだ。
「悪・漢・撃・滅! くたばるですよ、ちんぴら!」
ミミは籠から取り出した犬ミミ爆弾を袋に入れると、持ち手の紐を握って頭上でぐるぐる回し始めた。
「敵軍射程圏内! ミミちゃん下がって!」
ライオットシールドを背負っていた男達が集まり、巨大な壁のごとく縦を連ねて構えていく。
敵軍が乱れ打ちする銃弾が盾の表面を泡立つように跳ねていくのを聞きながら、ミミはてやーといいながら犬ミミ爆弾を放り投げた。
爆発。
と同時に巨大な犬の式神が突撃していく。
「カルタは神使として新人ですので、パンピーの皆さんに毛が生えた程度かもしれません。
あいつに任せてれば大丈夫って思われるような頼れる将じゃないからこそ、一緒に戦うんだって士気を高く持ってもらえれば嬉しいですぅ!」
ゴーゴー! といって呼び出したちっちゃい犬の式神を次々に解き放つカルタ。
カルタハーレムもといカルタ隊はそんな彼女をフォローするように飽和攻撃を仕掛けていった。ダメージをごりごりしていくカルタのスタイルには、敵の処理能力を減衰させるフォローが似合っている。
そうして先制をとった所に、シャルロッテ隊が爆撃をしかけていく。
上空から機動力と反応速度を生かした一撃離脱の爆撃を散発的にしかけていく作戦である。
これ単体では徹底した対空射撃や飛行による追尾に弱く崩れやすいが、守りを固めながら突き進む部隊をメインに据えた場合敵を著しく錯乱させる効果を持つ。
攻撃目標が分散し殲滅能力を損なう。そこへ畳みかけるのだ。
更に言えば、目に見えた成果は味方の士気を高め敵の足を恐怖で止める。
「なら次だ、我々は強い。自覚出来たら、次は盗賊共にも分からせてやれ!!」
先陣をきって飛び込むイルミナと咲耶。
「ここで崩されては元も子もありませんからね、気合い入れましょう!」
「今こそお主達の団結力を盗賊共に見せてくれようぞ!」
咲耶は手甲から理力手裏剣を連射しながら走り、距離をつめきったところで手甲をナックルブレードへ変形。コマのように回転して盗賊達を切り払っていく。 イルミナもまた手刀に青白いエネルギーを纏わせることで電熱カッターのごとく盗賊たちの腕や首を切り落として進んでいった。
武装はもとより戦闘レベルに大きな差があるようだ。そういうとき、つい『密集すれば勝てる』と思い込んでしまうのが素人の悪癖である。
剣や斧をもった盗賊達が一斉に飛びかかったところで、イルミナと咲耶は大きく飛び退いた。
そこへ一斉に打ち込まれるグレネードランチャーによる砲撃。
幾度もの爆発が盗賊達を吹き上がる砂と炎で包み焼きにしていく。
「格上退治になれていないと見える」
「けど、この手が通じるのは序盤だけッス」
「使えるうちに稼ぐまででござろう」
こうして吹き上がった砂煙に混じるように、黒子の部隊が接近。さらなる『奪希』術を用いて盗賊達の目をくらませると、部下達による射撃が盗賊達にとどめを刺していった。
戦いながら敵軍の様子をうかがう黒子。
『捨て駒部隊』には指揮官かそれに準じた人間がいるものかと観察していたが、どうやら彼らに上下関係があるようには見えなかった。
むしろ、個人個人が戦績のマウントをとりあってたがいの足を引っ張り合っているようにも見えた。
とはいえこちらの戦力が圧倒的に高いというわけでもない。ぶつかっていればこちら側の損耗も進んでいくものだ。
敵が全滅するのに、同列の自分たちだけが無傷などというチートはこの状況では発生しない。野球で言えば0-10のコールドゲームだ。今回それができるほど、自分たちはスペシャルではなかった。
(この状況で味方に死者を出さずに戦うのは、思うほど容易なことではなさそうですね……)
休息に引いていく黒子隊と入れ替わるように、柚子隊による一斉射撃が盗賊達へと浴びせられた。
走りながらアサルトボウガンを発射する柚子。肩に命中しのけぞった敵へ接近し、無理矢理反転させ襟首を掴んで縦にしつつ更に奥の敵へと拳銃による射撃を浴びせていった。
頭の中に響く誰かの声に首を振って、柚子はうめく盗賊の膝を更に撃った。
落ちたライフルを蹴って遠くへ飛ばす。
「殺しはしません。生き残って治療を受けてください。投降すれば、ファレンさんはそう悪くはしないでしょう」
「下がって、代わるわ!」
リズが赤い魔術弾を乱射しながら横へとつく。
短剣についた赤い宝石を二本指で撫で、仕込まれた魔術を起動した。新たにリズの周りに赤い魔術弾が無数に生まれ、剣を振る動作に合わせて飛んでいく。
「もうひと波くるわよ。リズ隊!」
リズの指揮する魔術部隊がマジックエンハンサーを起動させ増強障壁を展開。
敵からの銃撃を防御しながらリズのエーテルガトリングを中心とした戦車のような突進を見せ始める。
「数で押す事が大事よ! 無理はせず、倒れない事も重要だからね!」
それに、とリズは頬を親指で撫でる。障壁をぬけ頬をかすめた銃弾が、彼女の頬に一筋の傷をつくっていたようだ。思ったよりも多くの血が流れている。傷口を開き続ける流血術式が弾頭に籠もっているのだろう。
「敵の装備が、さっきより一段階強くなってる気がするわ。皆気をつけて!」
●
「こちらの部隊ははじめの衝突で消耗しています。危ない兵は撤退させましたが……大規模戦闘慣れをしていないせいでしょう、残った兵も緊張から疲労が加速しているようです」
「問題ないよ。それでいい」
シャルロッテは車椅子の手すりを指でトントンと叩いた。
「殺意というのは長続きしないものだ。夢物語を聞かされて、それを信じ切れないまま一攫千金を求めてゴールドラッシュに群がるのもまた同じ。熱しやすい代わりに冷めやすい。例の『捨て駒部隊』も、士気が大きく下がる頃だ」
「消耗具合は同じ、と」
話がはやいねとシャルロッテは頷き、伝令係へメモを書く。
「こういう時、『踏ん張れる』方が勝つ。でもって、人生の落伍者たちとラサの波乱な日常を踏み越えてきた市民達ではどちらが強いか……」
「ひっさつ!」
ミミは籠から取り出した絆創膏を両手に握って腕ごとクロスすると大きく振りかぶった姿勢から大胆なフォームで投球もとい投パッチした。
放たれたパッチは戦う仲間達の傷口にぺたぺたと張り付き、謎のほわーんとしたエネルギーによって血行促進肩こり軽減、ついでに止血と皮膚同化式の肉体修復がなされていく。
「救急レスキューパッチDX、なのです!」
しゃきーんと目をひからせもっかいパッチをクロスさせるミミ。
「よっしゃ、撃ちまくれお嬢ちゃん!」
掘削魔術の籠もったフレシェットをパスされ、柚子はそれをアサルトボウガンへとセット。
レバーを回して素早く発射状態にもっていくと、牽制射撃によって必要以上に密集した敵たちめがけて矢を放った。
装備の充実した盗賊は鋼の盾をかざして防御したが、盾を貫通した矢が盗賊の肉体をも貫通し、そのまま後方の敵数人をまとめて貫通していった。
「次です!」
柚子は今度はトリモチを仕込んだ矢を備え、仲間たちへと合図を出した。
射撃の後を狙って仕掛けるリズ隊。
「出し惜しみは無し!
味方を巻き込まない様に魔法を撃ち込みまくりなさい!
弾幕で威圧するのよ!」
マジックトミーガンを乱射する仲間たちに牽制を任せ、リズは短剣を天にかざした。
と同時に砂粒が石のように集まって固まり、巨人の腕となって握りこぶしを天にかざした。
振り下ろす動作はそのまま巨人の鉄槌となり、敵の主力となる攻撃部隊を直撃。カルタ隊がさらなる食い破りにかかる。
――とみせかけて、カルタは犬の式神を大量に呼び出して味方を取り囲んだ。
でもって子犬のふかふかした毛皮とぺろぺろによって傷と心を癒やしていく。
「相手は烏合の衆、十把一絡げの暴徒と同じですぅ。
でもってカルタは強い子、カルタは可愛い。この後はプルケで優勝ですぅ!」
「「優勝ー!」」
わんこヒールでスッキリした仲間達を再度隊に加え、戦力をしっかり回復した上で敵陣へと食い込んでいく。
シャルロッテと黒子のとった作戦は主に敵陣中央突破。
左右に分断させ、統率力や伝達の下手さをついた各個撃破を狙う作戦である。
敵の装備が強まったとはいえ頭数が減りなおかつ統率がとれていないのは事実。
未だに手柄のとりあいで味方への回復をサボる彼らに対し、ミミやカルタ、それに黒子の『奪苦』術を利用した戦線維持によって鋭く穿つのだ。
「そして、片一方を徹底的に叩く。連帯感のない彼らは同じ目にあいたくないとばかりに戦場を放棄するでしょう。守るものなど、ないでしょうからね」
「しかしラサの者達は力強い。盗賊の集団と戦っているというのに皆生きる希望を失っておらぬ。
この国の民は皆勇士の魂を持って居るのでござるな。これは拙者も忍術の奮い甲斐があるというもの」
守るものがあるラサの民は、戦場を投げ出さない。
それは敵軍との決定的な違いだった。
咲耶は手甲をガツンと打ち合わせ、鋼を右手側へと集中させた。
黒く美しい刀身をもった刀へと変形。
それをしっかりと手で握り込むと――。
「紅牙の忍びの真骨頂、ここで魅せるのも一興か」
敵陣めがけて走り出した。
部下の『砂嵐隊』が道を作るためにグレネードランチャーを乱射。
爆発によって砂煙が上がる中を、咲耶は素早く駆け抜けた。
否、駆け抜けながら幾度もの黒い閃きを残し、そのひとつひとつが盗賊達の首を切り落としていく。
更にイルミナ隊の一斉射撃が盗賊達を撃ち殺し、残る数人めがけてイルミナが稲妻のごとくジグザグに駆け抜けていった。
ばたばたと倒れていく盗賊達。
シャルロッテや黒子たちの狙いどおり、残った敵は戦場を放棄して逃げ出した。
去る敵立ちの背を見て、ラサの男達はかちどきの声を上げる。
イルミナもまた……。
「ラサの勝利ッス!」
握った拳を、天へと突き上げた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――捨て駒部隊を倒し、ネフェルストへの侵入を阻みました。
――我々の処理です。
GMコメント
■オーダー
市民部隊を率い、大鴉盗賊団と戦います。
PCひとりひとりが小隊長クラスになるため、大規模な戦いになるでしょう。
■小隊編成
あなたには5~10人程度の部下がつき、あなたを隊長とした小隊が編成されます。
デフォルトで『[PC名]隊』といった呼び名がつきますが、お好みであればオリジナルの小隊名をつけることもできます。
そしてメンバーはある程度自由に選んでください。
特化ビルドや特定の強力なスキルをもったメンバーばっかりにするのは(市民部隊という側面からしても)かなり難しいですが、HP高めで揃えたりバランス重視で揃えたりといったことができます。
困ったら「バランス重視」と書いておけばハズレがありません。その上で自分の趣味を書いちゃいましょう。
ホストで揃えたいとか筋肉自慢出てこいとかおじーちゃん大好きとか言っておけば大体揃います。
とはいえあんまり細かく決めてもよくないので、100字前後に収めておくのが妥当でしょう。
■小隊戦闘
あなたを中心とした小隊で、大鴉盗賊団の捨駒部隊と戦います。
PCは部下に指示や方針を与えながら戦闘を行うことになりますが、全員の使用スキルをPC口調で宣言していったら必ずパンクするので、大雑把な指事をプレイングに書いておくにとどめましょう。(これを汲んで、実際には細かく指事を出したり号令を行ったりします)
急に部下を与えられてもよくわからないという方は、ひとまず『自分の強みを引き出すには味方がどう動いてくれたら理想的か』を基準に動かすとハマると思います。
■戦闘力
・市民部隊
ファレンのコネと財力によってかき集められた腕自慢の男達です。ファレンからそれなりの武装を配布されています。
もとは非戦闘員なのでそこまでつよつよではありませんが、一揆を起こした農民の例があるようにやる気になればかなり使える筈です。
彼らは戦闘不能になる直前くらいに味方の補助をうけながら撤退する約束になっています。
なので部隊が壊滅しても死ぬことはありませんが、PCだけが最後に残るパターンになりがちです。
部下を上手につかって戦うとよいでしょう。
・捨駒部隊
大鴉盗賊団の中でも新参かつ低レベルな連中が集められた数だけは多い部隊です。
こんな連中でも街に入られればコトですし、大規模な傭兵団をぶつけるにはコストが釣り合わなさすぎます。
武装はそれなり、戦闘力もそれなり。
統率力はあまりありません。中心となっている小隊があるような気もしますが、今のところは分かりません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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