シナリオ詳細
Alice in ...
オープニング
●狂った世界
ああ、ここは、どこだっけ。
わからない。わからない。ただ、ずっと、化け物の巣窟にいることはわかっている。
ああ、どうして、こうなったんだっけ。
わからない。わからない。ただ、ずっと、あの子のことを案じている。
まるでアリスのように、不思議な――けれど悪夢のような――世界に迷い込んでいる。
「ひっ」
結月 文は小さく息を呑んだ。現れたのは自分よりも背丈のあるドロドロとした怪物。形容しがたいそれは何かの鳴き声を発している。
「◎△$♪×○▽¥●&%#?」
「こ、来ないで……」
後ずされば怪物は同じだけの距離を詰める。1歩。また1歩。背中がとん、と壁に当たる。息が上がる。心臓が跳ねる。生を叫ぶように――撃つ。
断末魔に他の怪物たちも気づいたらしい。ワラワラと集まってくる怪物たちを視認するや否や撃ち抜き殺す。中には文を脅威と判断したか逃げを取るモノもいたようだが、ここで逃したら捌き切れないほどの怪物たちを連れてまたやってくるかもしれない。
死にたくない。
生きていたい。
そのためにころせ、ころせ、殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!!!!!!!!
文はその一心で撃ち続ける。本来ならばリロードの必要な武器であろうが、そこから放たれる球は通常のそれではない。文の力を凝縮するがため疲労は感じるが、それも最初に比べたらずっと軽いもの。だんだん手に馴染んでくるように、自然と効率の良い撃ち方を覚えたのだろう。
「最後……!」
生き残っている怪物へ銃を向ける文。少しだけ小柄なそれは少しだけ後ずさりをしたように見えたけれど。
――殺せ!!!!
Giaaaaaaaaa!!!!
聞くも悍ましい断末魔。耳をふさぐこともなくそれを聞き、地面へ崩れるその体を瞬きをせず凝視し。文は構えた銃をゆっくり下げた。まだだ、まだ安心できない。怪物はどこにだっているのだから。小さく息をつきながら文は頬に飛んだ怪物の体液を拭おうとして「あれ?」と小さく声を上げた。
「ハンカチ……落としちゃった? やだな……どこに、いっちゃったの……」
持っていたはずの、忍ばせていたはずのハンカチがない。道中に落としてしまったのだろうか。道を振り返る彼女であったが、そちらへ戻る勇気はない。どこに落としたのかも分からないのに探しになんていけない。
それでも、この狂った世界に残った数少ない持ち物ではあったのだけれど。
「……進もう」
迷った挙句、彼女の足は前へ進むことを選択した。進んでも戻っても化け物が湧き出て来るのは同じ。ならば何らかの変化があるかもしれない先へと進みたかった。
(ねえ、どこ?)
ひどく頭が痛む。
(あの子は、無事でいる?)
ひどく頭が痛む。
(会いたいな)
ひどくひどく、頭が痛むけれど――進まなくちゃ。
●Denger!!
「……あ、ねえそこのアンタたち。空いてる? 急ぎの案件なんだけど」
そうイレギュラーズを手招いたのは1人の旅人、『Blue Rose』シャルル(p3n000032)だった。微かに強張らせた表情で彼らを招き寄せたシャルルは1枚の羊皮紙をテーブルの上へ広げる。
「オーダーは『敵性存在の撃退』。幻想の村がいくつもやられていて、次の場所まで近づいてきているんだって」
広げた羊皮紙――地図の何ヵ所かを指し示しながら告げるシャルル。近い場所を示すそれは明らかに同じ個体の仕業だと分かるが、それにしては進路があいまいだ。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。まるで何処へ向かうかも分からないというように。以前から出没してはいたのだが、如何せんその足取りが掴めないから追いかけることもままならないという有様であった。それがどうして今回分かったのかと言えば、不幸中の幸いという言葉がぴったりだろう。
「偶然にも猟師たちが会ったんだって。1人を除いて皆殺されたけど」
その1人は奇跡的に村へと逃げ延び、その存在を村人たちへ伝えたのだそうだ。そこへ大急ぎでローレットへ早馬を走らせ――今に至る。
「多分、避難は間に合わないと思う。それくらい近い場所で遭遇しているんだ」
村がこの辺り、遭遇地点は恐らくこの辺り、とシャルルの指が地図の上を滑る。今見せられている地図に載るほどの規模ではないから場所は大体だが、そこまで的外れではないのだろう。その距離を見れば至急の行動が求められることは明らかだ。
「敵の正体は? どんなヤツなんだ」
イレギュラーズがシャルルへ問う。彼女は顔を上げてその相手を見ると、視線を巡らせて別の羊皮紙へ手を伸ばした。それから、その傍に置かれていた布切れも。
「かなり正確、とはいかないらしいけど……こんな感じ。これは『その人』が落としていった物らしい」
羊皮紙にはそれが人の姿をしている事、少女らしい年頃である事、そしてイレギュラーズであろうことなどが記されている。それらを読み進める内に1人の雰囲気が変わったようにも感じられたが――シャルルは一瞬だけそちらを見て、それから布切れへ視線を向けた。
大切に使っていたものなのだろう。新しいとは言い難いが、落ちていた際の土汚れ程度で洗えばまだ使える範疇だ。裏には大人に書いて貰ったものだろうか――名前も記されている。
『ゆづき あや』と。
- Alice in ...Lv:20以上完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年12月20日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●歪んだ世界
この世界は狂っている。
この世界は歪んでいる。
植物は不気味に笑い、魑魅魍魎が跋扈する。
ねえ、どうしてこんな世界にいるんだっけ?
ねえ、どうしてこの場所をさ迷っているんだっけ?
ねえ――出口は、どこ?
●揺れる菫
そのハンカチは見覚えがあった。
結月 文が――『文ちゃん』が持っていたのを、見たことがあったから。
あれから、今まで。彼女はずっとこれを持っていたのか。
「嗚呼……なんという、事……」
「ヴァイオレットさん……」
『木漏れ日の先』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)に気遣わしげな様子を見せる『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)。普段と異なる様子から今回の対象が彼女にとって特別な相手であることは確かだろう。
「ワケありって感じだな」
「縁ある人らしいでありますから」
仕方なかろう、と『深き緑の刺客』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)に返した『号令者』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)は、しかしと正面へ視線を向けて目を細めた。
鉄帝軍人であるハイデマリーにとって、この先にいる幻想の民は守るべきものではない。護る道理もない。それでもハイデマリーが向かうのは――イレギュラーズだから。
「しかし縁があると言っても、無為な殺人は行ってはいけない凶行であります」
「ああ。何年もこんなことを続けてるなんて……頭が痛くなるな」
シラス(p3p004421)が頭を振りながらそう告げて、ヴァイオレットが小さくそれに反応した。睫毛を震わせて、けれど何も言えずにフェイスヴェールの下で唇を噛み締めて。それでも、心の中は。
(違う……違う、文ちゃんが悪いんじゃない。私が、私が……!)
伝えたい想いが声を上げて、けれども言葉として出てこない。そんな彼女にシラスは声をかけた。
「ヴァイオレット。俺たちは手を抜かないぜ。『俺たちが決めた落とし所』に持っていきたいからな」
「……ええ。心得ておりますとも」
束の間瞑目したヴァイオレットがゆっくりと瞼を上げる。オーダーを鑑みれば、特に殺してしまったから失敗というわけでもないのだろう。けれどもヴァイオレットの希望と、それからオーダーを考慮した落とし所。これへ持っていくことこそが最善の策となる。
「守りたいのなら……手を、差し伸べたいのなら。掴み取って下さい、ヴァイオレットさん」
「そうでありますな。貴女が諦めないのであれば、手伝ってあげてもいいでありますよ?」
『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)とハイデマリーの言葉に『青樹護』フリークライ(p3p008595)が頷き、その拍子に表面装甲に植わった菫が同じように揺れる。ヴァイオレットをイメージした花だろう。
(今は何もかも、変わってしまったけれど)
どうか気づいてくれますように――そう願う彼女の耳に『Blue Rose』シャルル(p3n000032)の「もうすぐだよ」という声が響く。次いで森が開け、少し先に村のようなものが見えた。ハイデマリーが鷹を飛ばし、行ける範囲で先行させる。
「すでに何人かは……まだ生きている村人たちは農具で威嚇しているようでありますな」
「いけませんね」
ハンスは目元に険を滲ませ、速度を上げる。誰よりも速く、誰よりも遠く。村へ乗り込んで――。
「そこまでですよ」
手元に生じた火扇で薙ぎ払うハンス。小さな悲鳴が届くと共に発砲音と痛みがハンスを貫いた。しかし間髪入れずシラスの熱狂一閃が文を襲う。
「いや、こないで、化け物……!」
恐怖に占められた声。不憫な娘なのだろうが、しかしてその実力は無視できない。召喚依頼絶え間なく『これ』を続けていることが本当だとしたら、その練度はこの中の誰をも抜くかもしれない。
(だから俺は魔種だと思って戦うよ)
先ほども宣言した通り、彼女相手に手を抜くことはない。例えそこにヴァイオレットが立ちはだかろうとも。
「頼むぜ、武器商人」
呼ばれた傍らの人―― 『闇之雲』武器商人(p3p001107)はシラスの言葉ににぃと笑みを浮かべる。その眼前をプラチナムインベルタによる雨の弾が落ちた。背後で村人たちの悲鳴が上がり、次いで困惑した雰囲気で包まれる。雨のように降ってきた弾が、まるで自身らを避けるようであったと。
「闇雲に弾が飛んでると思ったらお門違いであります」
告げたのは低空飛行で武器を構えるハイデマリーだ。彼女へと意識が逸れたその隙にフラーゴラの馬車が村人たちの近くにつけられる。
「こっちに乗って……はやく!」
フラーゴラの言葉に――そしてその雰囲気に突如現れた彼らが敵ではないと、自分たちの呼んだイレギュラーズであると認識したらしい。揃って動き始めた村人たちに文の銃口が向けられるが、その前へ躊躇なくヴァイオレットが飛び込んだ。
「だめ、文ちゃん……!」
魔力弾を受け流して軌道を逸らし、ヴァイオレットは文を真っ向から見つめる。その瞳にこびりついているのは恐怖だ。突然現れたイレギュラーズという『敵』に瞳が揺れる。
「なに、どうしてこんなに……」
「文ちゃん、」
「近寄らないで、化け物!」
言葉が刺さる。ぐっと詰まらせたヴァイオレットは、それでも視線を逸らすわけにはいかない。彼女を支援するフリークライは同時にその巨体で文の視界から村人を隠すように陣取った。
「怖イ ナラ 狙エバイイ」
回復手として、本来ならば狙われるようなことはしない方が良い。より長く戦うための術だ。けれども今は話が別、彼女から何が何でも村人へ危害を出させないようにしなくてはならない。
フリークライの死角に入ったミヅハはシャルルへ視線を向ける。彼女にはこちらを手伝ってもらうのだ。
「何をすればいい」
「俺と一緒に誘導だ。少しずつ物陰へ移動させるよ」
頷いたシャルルと共にミヅハは村人たちを少しずつ、文から見えない位置へと誘導していく。なるべく風下へ位置取り、彼女の目に留まらぬよう動きは最小限に。
(あの錯乱具合だと何とも言えないが……無意識の優先順位はあるはずなんだ)
ミヅハは自らの影に村人を隠しながら誘導しつつ、イレギュラーズと応戦する文を横目で見る。彼女の口ぶりからしてこちらの事が化け物に見えているようだが、それでも優先するなら身近に迫ってくる危険のようだ。最も、どういう動きが彼女の気に障るのか完全にわかったわけではないが。
(あとはどれだけ早く文を撤退させられるかにかかってる。頼んだよ、みんな……!)
急がねば。ミヅハは身を翻し、先ず物陰へ連れて行くという作業はシャルルへ任せて避難できる場所へと村人を誘導し始めた。
一方のフラーゴラは1台の馬車へ村人たちを詰め込んでいた。20人に届かないまでも少なくはなく、かなり密集した状態だ。
「なあ、あんた。そっちの馬車はどうするんだ?」
「しっ……これは、ワタシが。そっちの馬車は、誰か操れない……?」
フラーゴラは人差し指を唇に当て、小さく馬車の中へ問う。村であれば徒歩だけでどうにかできるはずもなく、多少はこのような物の操縦に慣れた者がいるはずだ。
「お、俺できるよ」
「おねがい。あっちの方向に避難して……」
あんたは、と視線がフラーゴラへ問いかける。フラーゴラはもう1台の馬車へ乗り込むと、中を少しばかり見せた。
「囮……大丈夫。ここでは倒れないから……」
フラーゴラが行ってと視線で促すと、先ほど名乗り上げた青年が馬車を操って動かし始める。文の意識が向いたことを感じたが、フラーゴラは同時に囮馬車を走らせ始めた。あちらが遠ざかるならフラーゴラはもう少し文寄りに。文が向こうの馬車よりこちらの馬車へ注意を向かせるように。
「まとめて倒れて……!」
文の銃口がフラーゴラの馬車へ向けられる。その魔力弾を回避しようとしたが――文の命中精度に対して、馬車の小回りはききにくい。
「っ!」
車輪が破壊され、バランスを崩すフラーゴラ。彼女をフリークライが背に隠して天使の歌を響かせる。同じように翼を大きく広げたハンスには、長引く戦いに文の焦りが感じられた。
「お願いだから僕らを狙って貰えます? ……貴女の罪を自分の罪だと思ってやまない人がいるのですから」
「どうして……どうして倒れないの……!!」
声は届かない。ヴァイオレットが何かを投げ、それを視認する前に文が撃ち抜く。それは勢いを失くし、ぽとりと地面へ落ちた。
魔力弾を主に放つ相手はシラスで、けれどもヴァイオレットが近くで語り掛けると同時に彼の前には武器商人が立ちはだかることで死角になり傷つけられない。いや、通る攻撃もあるが軽い気持ちでは打てないらしい、というのが正確か。
(狂ったままでいるのと、状況を正しく認識するの、どちらが幸せなんだろうね)
攻撃遮断の結界にじわじわと体力を吸われながら武器商人は文の様子を観察する。哀れな娘はこれまで殺したモノの正体に気付いた時どう思うのだろうかと。
ハイデマリーの迷いなき狙撃に文が思わず銃を取り落とす。すかさずシラスが集中を高め放った拳は――吸い込まれるようにヴァイオレットへ入った。
「ぐ、っ……」
双方とも、何も言わない。同意のうえで起こったことに誰が避難できようか。ただ、ヴァイオレットの背後で茫然とした声が響いた。
「……どうして……?」
「文ちゃん、私だよ! しっかりして!」
自らへ回復を施しながらヴァイオレットはなおも語り掛ける。けれど文は取り落とした銃を素早く拾い上げ、その敵意と恐怖を未だ張り付かせ続けていた。
(貴女が映す世界の事も、詳しい事情も知りません)
ハンスはこれ以上なく青の翼を広げる。どれだけ歪に醜く見えていようと、彼女へその青が映るように。
「――『偽りの幸福』だけは、絶対に届けてみせる」
『彼女』が諦めていないから。ハンスの広げた青に、そしてフリークライの素で揺れるものに、文の意識が一瞬奪われる。その瞬間にフラーゴラのブルーコメットとハイデマリーのゴルトレーヴェ、そして今度こそシラスが仕留めんと拳を振りぬく。
「あ、」
「文ちゃんっ!」
立ちすくむ文へヴァイオレットが手を伸ばす。『護る』のだと。そして――。
●願いを込める
「逃げた、か」
文の姿が見えなくなって、一同はようやく胸を撫で下ろした。村人への被害も少なく――イレギュラーズたちはボロボロの有り様で、特にヴァイオレットは酷いものだったが――文の撤退も見届けたのだから、オーダークリアとしてよいだろう。
「村人たちを呼んでこよう」
「うん……馬車で逃げた人たちにも……もう大丈夫って教えてあげよう……」
ミヅハとフラーゴラが避難所へ向かった者たちのもとへ向かう。フリークライはそっとヴァイオレットの背中を見てから、辺りに転がった村人たちの遺体へ向いた。彼らがいつまでも放っておかれるのは可哀想だし――文を止めようとしていたヴァイオレットの姿を見た村人もいるだろう。彼らにヴァイオレットを気にさせてしまうのは、きっと双方にとって良くないことだから。
フリークライは恐る恐る戻ってきた村人たちに、遺体の埋葬を手伝うと申し出た。彼らも遺体を見て、それからフリークライを見て頷く。もうすぐ雨が降りだすだろう。土がぬかるんでしまう前に埋葬させてやりたい。
他のイレギュラーズたちも手伝って遺体を運んでいく。ヴァイオレットは1人残って――いいや、立ち尽くして。そのうち雨が降りだしても構わずに、文の消えていった方向を見つめていた。
「お願い……どうか……」
メッセージは託した。あとは――文が信じてくれるのを祈るしかない。
●願いを、
自分の鼓動が煩くて。
自分の息が上がっていて。
「……つか、れた……」
口に出してしまえばよりはっきりと疲労が襲ってきて、文はふらふらと2、3歩あるくとその場へ座り込んでしまった。周囲の森は不気味に笑い声をあげて、怪しげに枝を蠢かせているけれど、それでももう動けなくなってしまったのだ。
「だめ……死にたくない……だから、倒さなきゃ……」
無自覚に狂っていて、それでもなお彼女は”生”に貪欲で。前へ進もうとしてよぎるのは先程戦った複数の化け物。
強かった。ともすれば本当に死んでいたかもしれない。次こそは仕留めなければと決意させるほどに、あれらは強かった。
ただ1体だけ、誰より文に近くありながら全く攻撃をしてこない個体がいたけれど、まるで文を守るようだったけれど、あれはなんだったのだろう? 文はそれが最もよくわからなくて、大きな攻撃を庇われたその隙に逃げ出したのだ。
そう考えながら立ち上がった文は、ふとポケットからこぼれ落ちた物に目を見開いた。どうして。なくしていたはずなのに。
「汚れてる……もう、使えないかな……」
やはり1度は落としているのだろう、その際についた土ぼこりなどが付着している。何よりいつできたものなのか、見つかったハンカチは一部が破けていた。くしゃくしゃに丸まったそれを丁寧に伸ばしていると、中から何かが転げ落ちる。
「これは……、っ」
拾い上げた文は、そこへ記されていた内容に顔を強張らせた。
――逃げる者は違う。殺さないで。
――逃げて、戦うよりも生き延びて。
そんなメッセージとともに、文末に記されていたのは会いたいと願ってやまないあの子の名前で。
「どこにいるの……同じように、この世界に囚われているの……?」
この狂ったおかしな世界にいるのなら、会いたい。会って、一緒に逃げようよ――詩織ちゃん。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
彼女はまた、混沌を彷徨うのでしょう……。
またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●成功条件
結月 文の撤退
村人の半数以上の生存
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。不測の事態に気をつけてください。
●結月 文
皆様と同じイレギュラーズであり、ヴァイオレット・ホロウウォーカーさんと同じ世界の出身です。何年も混沌中を彷徨うように移動し、殺し、レベルを上げています。しかし無情なわけではなく、その瞳には恐怖がこびりついているようです。
元世界でのある事をキッカケに、それ以前の記憶は定かでなく、非常に精神的な面で危うくなっています。視界に映した何もかもを正常には認識できていません。言葉も届いているか定かではありません。皆様へも躊躇なく銃を向けるでしょう。
魔力銃を持ち、命中と特殊抵抗に優れています。また、通常攻撃に【防無】【流血】が付与されます。
●友軍
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
旅人の少女。神秘型アタッカーでそこそこ戦えます。皆様からの指示があれば可能な限りそれに従います。特になければ文へ攻撃を仕掛けます。
文には警戒するとともに、彼女から感じられる恐怖に興味を抱いています。
●フィールド
幻想にある3,40人程度の村です。雨でも降りそうなどんよりとした雲が空を埋め尽くしています。
まだ文が到着したばかりであり、生存する村人が沢山います。このままでは全員殺されてしまうでしょう。既に殺された者も数人いるため、パニックになっている村人もいます。
避難所には村長の家兼集会場として使われている場所がありますが、『動く』という行為に文は酷く反応します。
●ご挨拶
愁と申します。
どのようにして村人を救うか、どのようにして彼女を追い払うか。手法とバランスはよく考える必要があるでしょう。
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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