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シナリオ詳細

<Raven Battlecry>音もなく、現実があるのみ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 大鴉盗賊団の遺跡への襲撃、攻勢は過激化の一途をたどり、それに伴う戦闘の激化はイレギュラーズに、そして『赤犬』達に少なからぬ負担をかけていた。彼等の活動の活発化は、翻って何れなんらかの形で大規模な動きを見せる前兆とも取れる。
 フィオナ・イル・パレストは度重なる強襲のなか、情報網を駆使し大鴉盗賊団の『情報』を得ていた。
 曰く、「ネフェルストの倉庫に色宝が集められている。其処を襲えば一気に色宝を手に入れることが出来るだろう」、と。
 ネフェルストの襲撃を試みるというのなら、防備を固めればいい。実に簡単な話である。
 ――本当に簡単すぎて、それが却って疑念を生む。
 そこまで簡単に情報が露見するのか? ネフェルストの防備だけで、果たして十分なのだろうか?
 情報がある以上は守らねばならない。だがそれが、そもそも罠である可能性はないのか?
 答えは、更に発覚した情報で明らかとなった。

「今回の大鴉盗賊団側の襲撃作戦は、どうやら主要な幹部やコルボ達首脳陣が陣頭に立っていません。つまり、これは誘導だと考えられます」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は一同にそう言い切ると、手許の資料をめくり、壁にファルベライズの配置図を投影する。外郭と内郭の2層構造であることは以前より知られていたのだが、どうやらその間に『中核』と呼べる区画が存在する……のだという。
「レーヴェン・ルメス氏が攫われたことを加味すると、恐らく彼女を利用して中核に向かおうとしていることは明らかです。ネフェルストの迎撃体制を整えた現状、皆さんには中核部に向かう盗賊団本隊への奇襲をお願いすることになります」
 奇襲、つまりは先手を打って攻勢に出られ、かつ有利な状態で戦えるということか。
 状況はとても芳しいとは言い難いが、さりとて相手の動きを事前に察知できたのは僥倖だ。進撃する盗賊団の戦力をどこまで削げるかがこの戦いの焦点となる。問題は、倒すべき敵だ。
「皆さんに受け持って頂く区画には、『無音瞬速のリッド』なる盗賊が部下を伴って現れる様です。彼は『ギャザリング・キャッスル』の皆さんが遺跡に向かった際に鉢合わせているので私よりは当人達の方が詳しいかと思いますが、速力と機動力を併せ持ち、その上で『相手の速力をそのまま自分の攻撃の威力に加算する』カウンター技を持ち合わせているようです」
 現に、ハンス・キングスレー(p3p008418)を含め、速力に優れた者達は大なり小なり彼に痛い目に遭わされている。……尤も、部下たちを失ったリッドからすれば『痛み分け』と呼ぶには理不尽な結果だったわけだが。
「先手を打てる以上は上手く利用し、ここで叩いておきたい相手です。皆さんの奮戦に期待します」


 『無音瞬速』という名は別に、自分から名乗り始めた訳ではない。
 暗殺術を究める為に音を殺すことを学んだ。拙速は巧遅に勝るとおぼえてから、速力を磨いた。結果としてその名を得てから、大地を駆ける瞬速の獣のようにはなれぬと気付いた。気付いてしまった。
 ……ゆえに彼は、速さのみを極めようとする者を如何に効率よく現実という刃で突き殺すかを突き詰めた。
 暗殺に武器は悪手だ。種が割れ、身元が割れる。なにより上手くやるなら素手がよい。
 彼は『圧倒的』であることは捨てた。が、その代わり確実に、丁寧に、相手の実力と心を折ることだけを考えてきた。
 そんな彼が今、再び折られようとしている。我慢ならぬ現実がのしかかろうとしている。
 我慢ならない。
 リッドは拳に殺意を滾らせ、遺跡の奥へと歩いていく。現れるであろうイレギュラーズへ、それを叩きつけるために。

GMコメント

 再登場早かったな。

●達成条件
・『無音瞬速』リッドの撃破(生存が望ましいが基本生死不問)
・配下の8割以上の撃破
・(オプション)グレイブキーパーの破壊

●『無音瞬速』リッド
 初出は『<Common Raven>ダンジョンの基礎を学ぼう(With盗賊団』。
 反応速度は相当に高い。それと別に、「攻撃相手の反応値・機動値を参照にダメージを与えるカウンター技』を有する模様。
 それ以外でも、幻惑系、精神干渉系のスキルが多め。本来は奇襲や不意打ちが得意だが今回は奇襲される側。

●部下×10
 リッドに忠実な部下。
 それなり整った能力で纏まっており、連携も十分取れる。甘く見ると結構苦戦する。
 Mアタック系の攻撃などが多い。

●グレイブキーパー
 リッド達と交戦するフィールドに現れる、等身大のチェスのナイトのような姿の番人。
 石の剣による攻撃で、流血や麻痺、必殺を伴う攻撃をしてくる。
 防無・追撃60程度の強力な攻撃も使用する。
 敵味方の概念はない。攻撃選択基準は「動きが遅い>防技が高い>その他諸要素」。

●戦場
 ファルベライズ外郭・中核へ続く大回廊。
 幅は10mほど、奥行きは相当なもの(戦闘に影響するほど短くはない)。
 高さは十分に確保されているため立体的な戦闘も可能といえば可能。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Raven Battlecry>音もなく、現実があるのみ完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ロスヴァイセ(p3p004262)
麗金のエンフォーサー
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の巫女見習い
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
騎士の矜持
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
笹木 花丸(p3p008689)
なじみさんの友達

リプレイ


「妙だな」
 中核へと進む一本道を突き進みながら、リッドは周囲を見回した。
 この道自体は、なんてことない回廊構造。誰かが隠れるような場所はない。そもそも、彼等のこの突入自体が奇襲の要素をもって行われているのだ。仮にイレギュラーズが真意に気づいたとしても、自分と、その仲間達の速力にそうついてこれるものではあるまい。
「なにかしましたかい、アニキ。この先に番人がいるからサクっとやっちまって前に進むだけですぜ?」
「分かっている。『何もない』のがおかしいと思わないか?」
「……? 万々歳じゃあねえですかい」
 部下は腕は立つが今ひとつ頭が足りない。頭数と忠実さを求めるなら楽なのだが、そうは言っても打てど響かず。もう少し理解してくれる奴ならよかったのだろうが……。
「いい、行くぞ」
 なにかあるとすれば、とチリチリと脳裏を焦がすあの影がある。飛行種の、いかにも若く才に溢れた鼻持ちならぬあの青年。渾身の一撃を受けて立ったのは、運命の力のみではあるまい。

「……何だか、無性に彼が気に食わない」
「あれだけ手玉に取られればそうもなるだろうよ。ワレはお前をやわに育てた覚えはなかったが、鼠と謂えどよく跳ねる」
 『強者食い』ハンス・キングスレー(p3p008418)は回廊の奥で密かにで動き始めたグレイブキーパーを一瞥しつつ、不機嫌そうに顔をしかめた。『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)は師としてハンスのことを気にかけてはいるものの、先日戦った際はそう強敵とも思わなかったが故に、そこまで脅威としてみてはいない。ただ、弟子が土をつけられた事実だけは我慢ならぬが。
「いよぉーしっ!準備はおっけぇーいっ! かっこよくアンブッシュしてやるもんねっ! 私ちゃんの活躍、ちゃんと撮影しておいてよー? ……ってカメラマンいないか!」
「騒ぎすぎてヤツが動き出せばことだ。撮影者がおらずとも、勇名は響くだろうさ」
 冗談めかしてそんなことを口にした『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)に、『黒狼領主』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はからかうでもなく、素直な感想を口にした。
 グレイブキーパーが姿を見せつつも態度を保留しているのは、恐らくイレギュラーズに先に進む意志が希薄だからだ。明白な意志を以てリッド達が現れれば、一同は諸共に標的となるであろう。
「襲う側であるならきっと襲われている覚悟もできているでしょうから、きちんと報いを受けさせてあげないといけないわね」
「うんうん、人々を困らせる悪い盗賊団はボクがやっつけちゃうのだ!」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)の言葉の裏には、本当は無闇に戦いをしたくはない、という意志がある。されど、相手にやる気があるなら話は別だ。『魔法騎士』セララ(p3p000273)は悪党をやっつける、という意志に真っ直ぐに正直に、剣と盾とを構えて盗賊団を待ち構える。
「花丸ちゃんも自分の役目がなかったら彼の相手をしてみたかったんだけど、状況的にそれも難しそうかな?」
「因縁というものがあるならば、それを為せる者が為すべきだ。魅せてやれ、キングスレー」
 『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は興味深げに入口側に奥に視線をやり、敵の出方を確認せんとする。強者と渡り合うことは、力を持つ者が欲する当然の欲だ。だが、状況と縁の繋がりが赦さぬなら、より適したものへ譲る分別はある。ベネディクトもはなまるの言葉を継いで、ハンスに短い声援を送った。
(神秘を内包した宝というものは、ただ保管されているだけならいいんだけどね……)
 『麗金のエンフォーサー』ロスヴァイセ(p3p004262)は中核の奥、内郭の存在についてもしかしたら、と推察する。首都に保管され、侵入を防いでいる理由はひとえに「悪用を防ぐため」。だが、それが表向きの理由で、「色宝に暴走の危険性がある」としたら、と。
「敢えて言う必要もないだろうが」
 頼々はちらりとハンスに視線を向ける。前置きする程度には「どうでもいい」ことなのだが、それでもやはり、師として言っておきたかったのだろう。
「鼠めは難敵だが、ヤツを倒すことだけに囚われるな。そうでなければ虚刃は振るえぬ」
 その言葉の意味を理解できぬハンスではない。
 師の言葉の意味を胸に留め、彼はマナガルムに視線を送る。
 ――不意の先手は『瞬速』よりもなお速く。
「さて、俺は初めましてだが……言葉は要らんか。挨拶は我が槍にて」
「ほら、授業の続きをしてくれませんか先生?」
「……先刻の小僧か。足蹴にされたのが堪らぬか?」
 波濤が渦を巻き、誠心の名乗りが室内を震わせる。
 戦場の口火は、因縁の睨み合いをその端緒とした。


「愛と正義の使者、魔法騎士セララ参上! ――セララストラッシュ!!」
「刮目して視るがいい! 我は戦神! 叛逆の聖剣なりってね!」
「喰らえ、花丸ちゃんの渾身の拳!」
 名乗りもそこそこに必殺剣を放つセララ、格好良く名乗りつつ仲間と呼吸を合わせて渾身の一撃を放つ秋奈、そして己の鍛え上げた拳にて一気に数名を巻き込んだ花丸。女性三者三様の先制攻撃は、マナガルムに意識が集まった状況では堪ったものではない。
「弱った状態で茨に飲まれたら、あなたはあの番人の餌食になるのかしら」
「どうあれ、敵が減るのはいいことだわ」
 ヴァイスは敵陣に切り込む形で動きの鈍い1人へと一撃を叩き込み、素早く退く。速度以前の問題として、その男は殆ど戦える状態ではなかったが……それでも最後に意地を見せた。
 ロスヴァイセの放った魔砲の射線に自ら躍り出、両腕で以てその一射を受け止めたのだ。炭化した腕ごと命を燃やした男は、いきおい頼々目掛け文字通り「牙を剥いた」。
「命を捨てるほどの相手か? 彼奴は」
「意味を持つなら捨てていい程度さ、命ってヤツぁな」
 頼々の抜刀をその身で受けた盗賊は、当然のように命を散らした。その一瞬、次の一手で彼が同じ技を用いれば無駄になるであろう献身は、それでも奇襲を奇襲たらしめるタイミングを奪っただけで――己で無価値と断じた命を賭けただけの甲斐はある。
「うちのクズ共をゴミみたいに扱うのは構わねえ。正真正銘のクズだからな。……だが、手前ェ等が同じ扱いを受けるのも承知でやってんだろうな?」
「俺は自分が上等だと思った覚えはない。お互いに、相手が邪魔だというのは確かな様だが」
 ハンスと共に先手を打ったベネディクトは、翻って守りに徹することを強いられる。彼の身捌き、守りの技術があればそう軽々に遅れは取るまいが、数で押し込まれれば『当たりはする』。更に言えば、盗賊達はそれなりに足が速く――マナガルムは必然、グレイブキーパーの不意の一撃をモロに受ける格好となった。奇襲に全霊を振った一同の判断が否とはいうまい。だが、その動きを抑えるには一手落ちる。
「マナガルム卿!」
「この程度、傷のうちにも入らんさ。それよりもリッドを仕留めろ」
 ハンスの呼びかけに、マナガルムは平気だと手を振って制する。すかさず両者の間に割って入った花丸が腕を掲げてグレイブキーパーの追撃を抑えると、両者は鍔迫り合いの様相を呈した。
「――無愛想な番人さん、君の相手は花丸ちゃんだよ。さっ、やろっか? 」
「…………」
 剣と拳が弾き合い間合いが生まれても、花丸は番人へ肉薄し離れない。この戦いにとっての異物をできるだけ足止めする、それが彼女の役目なのだから。
「盗賊団、なにも知らずに秘宝を得る蛮族ね」
「そういうイレギュラーズ共も、今になって色宝を躍起になって集めるアイツ等の真意を気付いちゃいねえだろうが。訳知り顔で自分だけが世界の真実知ってますって顔、滑稽だぜ?」
 ロスヴァイセの魔弾がリッドに食らいつき、嘲罵と共に爆ぜる。リッドは表情を変えずにマナガルムに視線と殺意を注ぎ込んでいるが、部下は相手の鼻持ちならない態度に苛立ちを隠せない。……イレギュラーズは依頼で、盗賊達は欲求でこの戦いに臨んでいる。真偽相半ばする思想のゆらぎは、盗賊とて直感で理解できるのだ。
「行くよっ、セララスペシャルっ!」
「ぐ……っ!」
 セララは(ドーナツを咥えながらであるが)鋭い連撃で盗賊に斬りかかり、空中で叩き落とす。衝撃に息をつまらせたそれは、ヴァイスの茨に締め上げられて声を失った。遠巻きには、生きているかどうかは不明だ。
「哀れだな鼠。マナガルム殿に翻弄され、振り切れもせず、ワレとハンスに足止めを食らって碌な動きもとれぬとは」
「何時ぞやの狂犬が、随分と吠えるモンだな。鬼だなんだと騒いでいたのは擬態か?」
 頼々はリッドを間合いに収め、相手の出方を見つつ牽制する。マナガルムの口上に意識をいっとき囚われたのは事実だ。そして、行動の選択肢が制限されていることもまた事実。虚刃の一撃を腕を掲げて受け止め、返す一撃で頼々を跳ね上げた動きはなるほど、熟練のそれだ。
「クハッ、やはり貴様の一撃は軽い!」
「スキあり! これでもくらえー!」
 打ち上げられつつ、余裕を見せた頼々に追撃をかけようと踏み込んだリッドの足元に、秋奈の放った得物が突き立つ。2度の攻撃は直撃こそ避けたものの、彼の足をその場に縫い付けることに成功した。
 ……頼々は、以前ハンスとリッドの戦いを目の当たりにしている。多数の打ち合いを経て弟子を打ち崩せなかったこの男は、おそらく一撃がそう重くはないのだと直感していた。だからこそ、多少の無理を押してでも前に出る価値がある。
(盗賊達に狙いを定めれば少しは楽なんだけどっ、そう何事もうまくはいかないよね……?)
 花丸は次々と振るわれる番人の石剣をその両手で払い、避け、弾く。目まぐるしい攻防のなか、彼女が無傷なのは卓越した「いなし」の技倆ゆえである。化身の狙いは、未だマナガルムから離れていないように思える……成程、リッドの部下達は曲がりなりにも盗賊として「それなり」の反応速度を以て戦場に立っているということか。なら、それでいい。この番人をここに縫い付けることで浮かぶ瀬もあらば、役目を果たすだけだ。
「速さに自信があるようね。だけど速さだけではどうにもならないのが世界よね?」
「そういう貴様は、先程から言葉遊びに自信があるようだ。それで? 俺達の足を止められるだけの理屈は見つかったか? 速さだけでどうにもならん、そんな『俺が何時気付いたも分からん道理』で上に立ったつもりか? 薄っぺらいな、小娘。……だがまあ、さっきの推論は興味深い」
 ロスヴァイセの言葉に、リッドは怒るでも無く淡々と応じた。『色宝を護るのが濫用のためではなく制御のため』という推論は成程、盗賊の彼をしても興味を唆る。だが、反応速度の争いから『降りた』男にかけるにしては、挑発と呼ぶには拙すぎる。焦りとともに放たれた魔弾は、やんわりと掌の返しのみで流された。
「片手を使ったね? ボク剣、片手で止められると思わないでよ……ギガセララブレイクッ!」
 ロスヴァイセのソウルストライクを『避け』はせず『いなした』。畢竟、彼の指先から全身に痺れが走り、セララの一撃を無防備な状態で受け止める格好となる。……威力を倍に比すための、『敢えて捨てる』連携がここで奏功した格好となる。
「チッ――!」
「リッド、お前の部下達はよく戦った。……随分と保った。驚く程にな。だが、ここまでの犠牲を出してまだお前は本気を出さんつもりか?」
「戯言を吐かすな、騎士風情が。こいつらがお前にかかずらうだけでむざむざ負けた訳がないだろうが……なあ、ハンス」
 マナガルムはすでに、盗賊達を引きつけ、或いはその多くを仲間と共に打倒した。頼々や、他の前衛連中と丁々発止の打ち合いを繰り広げるリッドの動きが鈍いとは思わぬが、しかし悠長に思えたのは否定できない。だが、彼が引きつけたのが盗賊の全てではないのも確か。最初の名乗り口上を逃れた盗賊達は、それなりの働きをしてから死んでいる。
 それでも、リッドがこの戦局を覆すのは難しかろう。だからこそ、彼の名を呼んだのか。
「カウンターに心血を注いで、速度の道から降りたお前は致命的に“遅い”。でも、最後に一度だけ相手をしてあげる」
「――来い。その翼なしでもトばしてやる」
 イレギュラーズの戦力は未だ7割は健在といったところか。対して、リッドは1人。
 だからこれは、互いのわがままだ。
「『今日という日の花を摘め』。ハンス・キングスレー」
「『無音瞬速』、なんて長ェ名前じゃねえんだ俺は。『絶音』リッド、それが最初の名前だ」
 互いの名乗り上げの後、一方は空を踏み消え、一方は微動だにせず身構えた。

 空気が爆ぜる。衝撃に蹈鞴を踏んだリッドの正面で、ハンスの身が宙でぐるぐると後転する。
 何度目の回転の後だったか。一瞬の後、彼は再び空を踏んだ。
「さあ受け取れよ。これが、僕の抱く空想だ――ッ!!」

「花丸ちゃん、大丈夫? ここからは私ちゃん達がバトンタッチだよ!」
「まだまだいけるよ、だから……心置きなくぶっ飛ばす!」
 仲間達が盗賊団を押さえつける傍ら、秋奈は花丸とともに番人の撃破に回る。未だ余力のあるヴァイス、ロスヴァイセ、頼々らが加勢するかたちで番人との交戦に入る……が。
「む? 貴様その兜……さてはその装飾、角隠しか。つまり貴様は鬼だな? 殺す」
(その気にさせたほうが楽だから言わないけど、絶対違うと思うわ……)
 頼々が勝手に暴走したのを、ヴァイスが温かい目で見守ることになり、彼が無理を押して戦ったのも既定路線である。
「グレイブキーパーもあの調子なら問題ないだろう。俺達は……彼等を捕らえて引き渡そうか」
「きちんと連れ帰って、お仕置きタイムなんだから!」
 マナガルムとセララは、捕らえた盗賊達を引いて入り口へとあるき出す。番人との戦いは、恐らくそう時間もかからず終わるだろう。
「……リッドは、僕に預けてもらえませんか」
 やや逡巡した後、ハンスは2人にそう打診する。曲がりなりにも今般の混乱の敵対者、しかも幹部級だ。決して即断とはいくまい。……だが、少なくとも功労者の言葉を無碍には、決してすまい。

成否

成功

MVP

ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手

状態異常

なし

あとがき

 盗賊達はざっくり倒されたように見えて、以外とあちこちに被害を生んでいたのでした。
 それはそれとして演出的な面もありますが、ハンス君パンドラ復活ギリ手前でした。蓄積ダメージもあったから仕方ないね。

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