シナリオ詳細
シャイネンナハト商戦! ミニスカサンタis正義!
オープニング
●
シャイネンナハト前の、大売り出しが始まった。
人々は本格的な冬に備え、諸々の買い出しを始めている。
薪にカボチャや芋類、干し肉に柑橘類、酒や茶等の飲食物。
外套を新調し、あるいは繕い。寝具の調達や、果ては雨戸の修繕まで。
シュトレンというパン菓子を少しずつ切り分けながら、その日を待つのだ。
当日には簡素なプレゼントを贈り合うのも、昨今の習わしになっていたりするとか。
そうとくれば、商店街の側も大忙しである。
今年も市場では店々同士の苛烈な競争が始まるのだ。
高まる需要に対して供給するため、あるいは在庫を一斉処分するため――
「ブラックフライデーだよー! やすいよー!」
「いらっしゃーい! アドベントの特売だよー!」
ここ幻想王都メフ・メフィートに店を構えるローク商店でも同様。
広告目的を兼ねて、店の若い女達に特注の衣装を着せて接客や客引きを行っている。
サンタクロースと呼ばれる異世界の風習にあやかり、裾を短くミニスカートとして、胸元を開け、赤いとんがり帽子だけではあまりに寒々しいけれど。
「いらっしゃいませー! 特売だよー! 安いよー!」
瑞々しいエネルギーに溢れた店番達は、寒さを物ともせず懸命な客引きを続けていた。
「おっと悪ーな、お嬢ちゃん! 足がすべっちまってよ」
いかめしい男と肩がぶつかり、少女の一人が石畳に転んだ。捻った足首が腫れ上がってきている。
「おいおい、あんた。チラシ配るのはいいが、避けたら靴が汚れちまった。どうしてくれるんだ、ええ?」
ガラの悪い男達が次々に現れ、店番達の邪魔を始めたではないか。
「ローク商店さんよ、あんたんとこでコート買ったんだが、見ろやボロッボロじゃねえか! おい!」
「おっと、悪い悪い! 売りモンの布団にタピオカミルクティーこぼしちまった! すまんかったな!」
「ねえねえ、きみ可愛いね、年いくつ? どこ住み? もしかして緊張してる? てか文通やってる?」
店番へのいやがらせだけではない。
店の中でも男達は暴れ、商品を毀損し、あらぬケチまでつけ始める始末である。
コートなど、購入してからハサミで切られたに違いない。
「……っきしょう。ドブロー商会の手のモンだな」
店長はすぐに衛兵を呼んだが、男達はいつの間にか姿を消してしまっている。
けれどその筋のプロ程ではない、きっとチンピラだろう。
商売敵――ドブロー商会に雇われ、この店に嫌がらせをしているに違いない。
「仕方がねえ。ここは――ローレットに頼むしかねえか!」
●
「っていうわけだから」
パチパチと燃える暖炉の前で、『真心の花』ハルジオン(p3n000173)がスっと依頼書を差し出した。
ローク商店の守りを固めればいいのだろうか。
それともドブロー商会に乗り込めばいいのだろうか。
「店長さんは、あくまで商売で相手を倒すつもり」
つまり?
「みんなは店員になって、無頼漢を撃退しながら接客して」
なるほど?
要するに、ローレットのイレギュラーズはサンタクロース風の衣装を着て、接客させられるらしい。
女性の場合は――つまりミニスカサンタ。ちょっときわどいが、結構可愛い衣装だ。
嬉しい者も、そうでない者も居るだろうが、オーダーなので仕方が無い。
そんな衣装を着て楽しげにチラシを配ったり、呼び込みをしたり、店内で商品を陳列をしたり、倉庫から品だしをしたり、商品を売ったり、時々休憩したりする。
無頼漢はビシバシと捻り倒して良いそうだ。
だが街中でのこと、出来れば素手で、魔術等も使わずにボコりたい所だろう。
とはいえステゴロでもチンピラ風情に後れを取るイレギュラーズではない。
なんとかなるよね。きっと。めいびー。
「それじゃあ、がんばって」
差し出された衣装を受け取り、一行はギルド・ローレットを後にした。
- シャイネンナハト商戦! ミニスカサンタis正義!完了
- GM名桜田ポーチュラカ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月18日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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王都城下はまさにシャイネンナハトに向けて、商戦の真っ最中だった。
みんな張り切り大忙しだが、中には悪いやつも居る。
強引なやり口で知られる商売敵ドブロー商会は、この店にチンピラをけしかけ客足を遠ざけようと狙う。
そこでイレギュラーズが立ち上がった。
店番をしながらチンピラを退け、商品を売り抜くのだ。ミニスカサンタの衣装で!
「普段からお店を開いている私としては、従業員として働くのはなんだか新鮮な気持ちですね!
って、この衣装で働くのですか!?」
『優愛の吸血種』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)19歳が手にしたのはミニスカサンタの衣装。
「い、依頼ですしね。うー……なんだか肌を露出しているところが多いような」
ミニスカサンタ。胸元が穴あきのセクシーなデザイン。
超正統派美少女。ただでさえパーフェクトだが、夜はダークサイド版もよろしくね!
その隣『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)14歳が嬉々としてミニスカサンタに着替えていく。
「ミニスカサンタ!もちろん着ますよ! 可愛いですよね! でもこのスカート丈はこの季節に着るものじゃないですよね。タイツとは言いません、せめてニーソックス履かせてください!」
絶対領域。スカートとニーソの間の魅惑の空間は誰しもを魅了するだろう。
「ついでに胸元も開けちゃいましょう! 風通り良くなって寒いですけど! しにゃは見られたい!」
ロリ(+おっきな胸!)の危険な魅力をアピールだ!
ニーソ良いですね、ガーター付けて履きましょう。白良いです、白。
「接客の仕事って一回やってみたかったんだよね。神社とかやってるけれどあれは接客とはちょっと違うよね支給の制服がちょっときわどいとかいう話だけれど……」
手にしたミニスカサンタをマジマジ見つめる『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)。
丈がものすごく短い。大丈夫なのかこれ。という言葉を飲み込んで。
「まま、可愛いしオッケーっしょ! 普段の服とあんまり変わらないよね!
着てみると足回りがチョットばかり寒いけれど、そこらへんは気合でカバーだよ!
可愛いは気合って言うし、働いているうちに慣れてくるよね!」
年齢不明の褐色猫神少女(めっちゃちちもある)バスティスがポジティブに声を上げる。
『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)は大人の魅力を醸し出す。
「少々肌寒くは感じますが、お客様が多く来てくださるのしっかりとお務めは果たさせて頂きますね。
元より客商売は営んでおりますのでお任せくださいね?」
上衣は長袖。下衣はミニスカサンタ。喫茶店兼居酒屋でウェイトレス兼仮マスターとして勤しむテルル。
可愛くてスタイルのよいゆるふわお姉さんの魅力。上衣を押し上げる胸。意外とある!
「飽く迄己の土俵にて勝敗を付けるという覚悟。お見事」
店長の心意気に感銘を受けた『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)はこの場に立った。
「なればこの私も依頼を受けたからには全力を持ってお力となれる様励みましょう。
……それにしてもこの着物の意匠は、季節との調和が取れて居ない気がします。
これも商店と言う戦場での戦略であると言うのならば、従いますが……」
ミニスカサンタを身に纏った無量。すらりとした生足が眩い。良い。
「歳甲斐も無く気恥ずかしい事に変わりはありませんね」
そう、店は己の土俵で戦おうとしているのだ! 多少の恥ずかしさは捨て置く。捨て置く!
「商戦! さぁ頑張りましょう!
シャイネンナハトは楽しいものですが、商売を続けてくれる方が支えてるのですから!
ドブロー商会さんも必死なのでしょうけどこういうのはいけませんよ!」
意気込む『Raven Destroy』ヨハン=レーム(p3p001117)の前に置かれたミニスカサンタ。
「え、僕これ着るんです??」
「男の娘はイイぞ」と店長。
「違いますし」
されど問答無用。
「いやー……アルムさんが着るよりは多少ましとは自分でも思ってますけど。
うう……メイド服はまだしも、ミニスカまでは穿いた事ないですよ!
スースーする! すっごいスースーする!」
18歳男子のミニスカサンタ。愛らしい見た目も相まって様になっている。
頬を染めるヨハンの隣には微笑みを浮かべる『ひねくれ神官』カイロ・コールド(p3p008306)が居た。
「仕事なら着ますよ。羞恥心は私にありませんし」
ウソ……、カイロさんそういう趣味が? 良イ……。
「当然ながら進んでミニスカ衣装を着たい訳ではないです。良い結果に繋がるなら仕方のない事なのです」
クールにミニスカサンタを着こなす20歳男子カイロ・コールド。
生足が魅惑的である。
そこに迷い込むは『両手にふわもこ』アルム・カンフローレル(p3p007874)だ!
「ふふ、クリスマス商戦かぁ。すごい賑わいだねぇ。俺もなにか買おうかなぁ。このコートなんかお洒落だなぁ。似合うかな」
「お、君もローレットから来たんだね。あー……男、か? いや行ける! 行けるぞ!」
「へ? あ、あの。店員の手伝い? 俺も? え、依頼?」
店長がアルムに差し出したのはミニスカサンタ。
「……え、客引き? 俺が、ミニスカサンタ衣装を?」
恐る恐る店長を見上げるアルム。満面の笑みで親指を立てている。歯もキラリンしていた。
「れ、冷静になったほうが良いんじゃないかなぁ……明らかに、ほら、肩幅とか……さ」
有無を言わせぬ店長の圧。すごい。
観念したアルムはミニスカサンタに袖を通す。
何故だろう。サイズがぴったりなのは何故だろう。女性用より幅広の胴回りとか。
見えそうで見えないスカートの長さとか!
良い仕事をしたという店長の煌めく瞳。
25歳男子アルム・カンフローレル。生足を外気に晒しいざ戦場へ。
想像して。尊! これは全身かピンが必要ですね?
「それはそうと、お仕事頑張らないとですね! 私は客引きをしてきます!」
看板を持ったユーリエは店の外へ――商戦の火蓋が切って落とされた!
●
「いらっしゃいませー!」
「シャイネンナハトの為のお買い物はいかがですか?」
しにゃことバスティスの声が店先から聞こえてくる。
「あ、お兄さんコチラの商品、気になるんですか!? お一ついかがですか!? お安いですよ!」
しにゃことバスティスのミニスカサンタに引き寄せられやってきた客にウィンクだ。
きっと彼等はしりふとももをチラチラ見て居るのだろう。
見てしまった時点で策略に嵌っているのだとしにゃこは内心ほくそ笑む。
「シャイネンナハトに向けて何かお探しですか? 当店では食料品から衣類に各種雑貨品を取り揃えていますよ!」
ユーリエに近づいてきた男が衣装をじっと見つめる。
「えっと……? この衣装は期間限定で、私の趣味じゃなくて!
……あ、あの。いかがわしいお店では決して!」
「そうなの? じゃあ『萌え萌えきゅん』ってしてみせてよ。それなら買うよ!」
「えっ……なるほど」
ユーリエは看板を置いて挑戦してみる。
頬を染め上目遣いで、胸元にハートを作り。
「萌え萌えきゅんっ……!」
ユーリエの周りにハートのエフェクトが飛び散る!
ついでに男の目にもハートが浮かんだ。
「かー! 最高! 買います! ここからここまで全部!」
――効果はバツグンだ!
最前線で戦うのが鉄帝人としての誉れ。
ヨハンの上目遣いが男性客に突き刺さる! 何かいやですけど!!! くっ……。
「お兄さん……ローク商店に来てくださいにゃん……」
きゅるるんと可愛い猫ポーズでメロメロにした客をお店の中に連れ込むヨハンきゅん。
恥と誉れなど更衣室に捨てた。
ヨハンの耳に美しい音色が聞こえてくる。
無量がクリスマスソングを和楽器で演奏しているのだろう。
三味線の音とクリスマスソング。幻想では聞き慣れない楽器を奏で興味を引く作戦だ。
それにもう一つ。他の店員に危害を加えさせない目的もあった。
無量の三味線の音に引かれて客足がどんどん向いてくる。良い感じ!
――――
――
店内の案内はテルルが担当していた。店先で呼び込まれた客に試食を振る舞う。
「寒い外を歩いていたのです、舌を火傷しない程度に温かい物は美味に感じるかと」
ミニスカサンタのテルルに手渡された温かなお茶が身に染みる。
温かさとカフェインで意気を高揚させるのにも一役買っていた。
「このお茶のフレーバーは、この時期にぴったりの香りで、ミルクティにも合うんですよ」
試飲で使用したお茶のアピールも忘れずに。テルルは持ち前の手際の良さで商品を次々売りさばく。流石、飲食経験者。鮮やかな手並みだ。
「元は商家の生まれですからね。『接客』はお手の物です」
カイロは売り物の肉を試食にする形で客を呼び込む。
「美味しい美味しい名産牛の試食品ですよ~、おひとつどうですか」
「ああ、一番高い肉が……っ!」
「当然お客様が増えるなら必要経費だと思いますが。いかがでしょう」
多少のリスクを背負うのも商売を成功させる為の秘訣。
カイロの意気込みに負けた店長はGOサインを出す。
バックヤードからアルムが品出し商品を抱えてきた。
「人手が足りないだろうし。体力も腕力もあんまりないけど、成人男性の俺は品出しとか力仕事を中心に手伝おうかな」
他の皆よりは背が高いからと、踏み台の上に乗って最上段に予備の商品を並べていくアルム。
もちろん、ミニスカサンタ。
際どい。生足のその先に。視線が――!
●
「ふう。そろそろいいかな。お店に戻っておまじないとかしてみよう」
客引きから店内に戻ってきたユーリエは、アイテム販売士としての知識を活かした接客で商品を買わせていた。
「お疲れ様です。お茶どうぞ」
「ありがとうございます!」
微笑み合うテルルとユーリエ。
その隣にはバスティスが何やらバスケットを抱えていた。
中にはケーキとチキン。それに猫のぬいぐるみが入っていた。
「お仕事お疲れ様。頑張る君にプレゼントだよ」
バスティスは『真心の花』ハルジオン(p3n000173)にプレゼントを手渡す。
「わわ。ありがとう。バスティスさん」
嬉しそうに満面の笑みを零すハルジオン。
何やら店先から、柄の悪い声が聞こえて来た。
「さてと、行きますか」
ユーリエとバスティスは頷きあい、店先に向かう事を決意する。寒いだろうが仕方ない。
「ああ、二人とも待ってください。外は寒いでしょうから」
カイロがユーリエとバスティスに冷気無効を施すと、ふたりはホっと一息吐いた。
優しいカイロに礼を言って店の外へ出て行く二人。
「いらっしゃいませ」
「おうおう。姉ちゃんかわいいねえ、結構着痩せするタイプなんじゃない?」
テルルの胸をガン見したチンピラは、ニヤニヤと声を掛ける。
「ふふ、試食ですか? こちらをどうぞ」
「いや俺は」
「それで、この商品に何かおありでしょうか?」
次々と手渡されて行く商品に、チンピラもたじたじで。何だかんだ納得してしまう。
戦わず勝つのは兵法の基本なのだ。
「お嬢ちゃん、その格好たまんないね。仕事終わったらおじさんと楽しい所いかない?」
ユーリエの胸元を見ながらすり寄ってくる男。
「いえ結構です」
軽くあしらおうと視線を逸らすユーリエに男は食ってかかる。
「あ? 断るってどういうことだよ!」
こいつらこそドブロー商会の手の者だ。暴れて店の商品を掴んだ手をユーリエの神秘攻撃が制す。
「お店で暴れることは許しません!」
一方、バスティスの元にもチンピラがやってきていた。
「お嬢ちゃん、猫ちゃんみたいなのに寒くない? おじさんが暖めてあげようか」
「遠慮するよ」
「んだとこら!?」
バスティスはチンピラの拳を軽くいなし、バックヤードへ連行だ。
破損した商品をメモした紙も忘れずに。
ユーリエやバスティスの対応に一切の瑕疵はない。因縁をつけるのはチンピラの典型的な手口である。
『次はお客様としてご来店してくださいね』と書いた紙をチンピラ達のポケットに入れて裏口からたたき出すのだ。
「さてさて! これだけならば町の女性だけでも何とかなりますよね」
ヨハンは意気揚々と客引きに専念していた。
だが。
「ねえねえ、きみ可愛いね、年いくつ? どこ住み? もしかして緊張してる? てか文通やってる?」
ヨハンの可愛いお尻をさわさわするおっさん。いとも容易く行われるえげつない確定ロール。
「ははぁ、さては僕を女の子だと勘違いしていますね?」
「おじさんはね、きみみたいな綺麗できゃわゆい男の娘がだぁいす――」
ベチン。小気味よいビンタの音が店先に響く。
こいつ女の子じゃないのを分かってて言い寄ってきやがった。
「もともとそんなに戦うの得意じゃないんですけど……おうふくびんたしましょう」
ベチベチベチベチベチベチベチベチと。もう喋る隙を与えないくらいベチベチとヨハンはチンピラを叩く。「お買い物、来てくださいね??」
チンピラを引き込んで無理やり肉だの魚だのなんかお菓子入ってるサンタの靴だのを買わせるヨハン。
流石、『統率』によるチームワーク! これぞレイザータクト、これぞ我がクェーサードクトリン!!
「おじょうちゃん」
チンピラぽい見た目の男がしにゃこに近寄ってくる。
「貴方もしにゃが可愛くて声かけちゃった系ですか!?」
「ちょっといいかな。一番弱そうだし」
力づくで強引に手を引こうとするチンピラにしにゃこはクソでか溜息を吐いた。
「その発言、今からでも撤回してくれたら優しくするんですけどねー……。
広場のクリスマスツリーの飾りになるか、来年まで雪の下で冬眠か好きな方を選んでいいですよ!」
一本背負いで雪の中にチンピラを叩きつけるしにゃこ。
続けざまに頭以外を雪で埋める。
「そこでしばらく頭冷やしてくださいね! 一番冷えてるのは胴体ですけど」
――――
――
「寒いのは、お好きですか?」
他の店員に絡んでいるチンピラに声を掛ける無量。
第三の目を駆使して、相手の衣類の斬るべき線を見る。
衣類であれば刃物など無用。手にした撥で一瞬の内にチンピラの服を裂いた。
「ひぃ!?」
「もしお好きでなければどうぞ、店内には暖かい衣類も取り揃えております故に」
残った布をかき集め、店内へ入っていくチンピラ。
「そうそう、そちらのお仲間に『破損』させられた品物がありまして。こちらも購入していただきたいのですが」
「何で俺が……」
「もっとお召し物を細かく致しましょうか?」
「ひぃ!」
「暖かい恰好で帰って頂かなければ寒い季節、体調を崩してしまうかも知れませんからね」
撥をひらひらとさせながらチンピラの前に仁王立ちする無量。
店の中にはアルムが接客を続けていた。
「クリスマスツリーの飾りってどこにありますか? あとお兄さんの連絡先おしえてください!」
アルムの生足を凝視している女性客が絡んでくる。
「えっと……あちらの七番と書かれた棚のカドを右に曲がって頂くと、そこにございますよ」
「一緒にきてぇ」
お客様のお願いだ。案内をしないわけには行かないだろう。仕方なくついていくアルム。
「わぁ、これかわいい」
女性客が商品に気を取られている隙にアルムは持ち場に戻る。
今のは普通の客だったが、チンピラが来たら排除するのも仕事だ。
「湿気た店だなあオイ」
「何をするんだ」
チンピラが蹴り上げた缶が柱に当たり、商品の棚が倒れてくる。
風が吹けば桶屋が儲かるならぬ、なんとかスイッチのように、そこらの家具やら何やらが次々に連鎖してチンピラをホームでアローン(通じろよ!)した。ちなタライはちゃんと売り物じゃない。天才かな。
「何だなんだ?」
一際厳ついチンピラ・ドブロー商会のボスが店内に入って来る。
そこに迎え撃つはカイロだ。
「お兄さん達……随分ひ弱そうに見えますねぇ? この私、カイロ・コールドに傷一つ付ける事も出来なさそうです。悪い事は言いませんから帰った方が身の為ですよ?」
明らかな挑発にボスが怒気を放った。
「んだ兄ちゃん、男でもかまやしねえんだぞ」
カイロの胸ぐらを掴んだボスの目の前に『アルパレストの紹介状』を突きつける。
「貴方も商人なら分かりますよね。最後までやります?」
「な、何だそれ」
分からないが、何か凄そうなのでボスはカイロの服を離した。
そこに即座にローキックを叩き込むカイロ。容赦無い。
テルルも喧嘩に紛れて閃光を放つ。
「……おや? あの光は今日という日では戦ってはいけないという警告なのでしょうか?」
「ぐふ……せめて、タッチだけでも、温もりだけでも」
倒れ掛けのボスがテルルの胸に手を伸ばす。息も絶え絶えに相当に気持ち悪い。
「おさわりは厳禁でございます」
再度放たれた光に、ボスの意識は完全に沈んだ。
「お、覚えてろよおー!」
お決まりのセリフと共にボスを抱え逃げ帰っていくチンピラ達。
ほっと一息ついて、ここからが商売の本番。本当の戦いだ。
「嗚呼、それにしても足が寒い」
無量は素足を外気に晒して震えていた。
「タイツなるものがある? 成程……これは……良いものですね。露出もなく大変好ましい」
黒いタイツを履いた無量は満足したように店番に戻る。
なんでこんな後まで気付かないことになったか?
そりゃ生足が拝み――ちゃうねん。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
楽しんで頂けたら幸いです。
MVPはGMの独断と偏見と好みでお送りします。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
桜田ポーチュラカです。
クリスマス商戦だ!
可愛い衣装で接客しながら、チンピラを撃退しちゃいましょう!
■依頼達成条件
頑張ってお店で働く。
チンピラを追い払う。
■衣装
ミニスカサンタです!
ミニスカサンタ率が高いほど売り上げアップだ!
いかつい成人男性など、ヤバくなる人は普通のサンタ衣装にしましょう。
でないと、あの! 客足が……!
不明とか男性とかは見た目で決めましょう。
たとえば可愛い男性はミニスカでもセーフです。セーフったらセーフ!
■フィールド
幻想王都の市場にある、そこそこ大きなお店です。
食料品から衣類に各種雑貨、薪やらなにやら、色々売ってます。
品だしとか、店番とか、陳列とか、客引きとかチラシ配りとか休憩とか。
その他思いついたことを、やりたいように出来ます。
たまにチンピラが来ますので、かっこよく撃破してお帰り願いましょう。
気を失ってしまっても、衛兵さん達が連れてってくれるはずです。
■敵
チンピラ。雑魚ですが、とにかくいっぱい来ます。
街中なので出来れば素手で、可及的速やかに撃退したいですね。
装備を外したりするのは面倒だと思いますので、やばそうなものは、こちらのアドリブで『ないもの』と扱います。
別に不利にしたりとかはありません。
派手な魔法なんかもやめたほうがいいですが、地味なスキルや暗器等は大丈夫です。
そこまでやるほどの相手でもないですが、スキルとか装備で格好つけてもいいです!
ゆるくて大丈夫!
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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