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シナリオ詳細

手を延べて 足を延して 誰ぞ攫う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神仙か、悪神か
「のう、足長の。土の感触はどうじゃ。今年の冬はァ、水を蓄えられる土か。根は雪を支えられるか」
「問題なかろうなァ、手長の。それより空はどうじゃ。空の湿りは如何様じゃ」
「一朝一夕じゃ分からんよォ。でもそうそう困る天気にはならんじゃろうて」
 神威神楽、高天京より遠く離れた浜辺のいち地方。そこには天を衝く手を持つ妖と、地に立てば空に届かんとする妖の兄弟が住んでいた。その姿通り『手長』『足長』と呼び習わされた兄弟は、しかし人を襲うこともないおとなしい気性で、むしろその体を活かすことで大地と空とを繋ぎ、天を読み地を均し来たるべき豊作や凶作、天災の類を読んで人々に伝えることで過ごしていた。
 無論、人々とて口を開けて恩恵を受け取るばかりではない。その昔、手長足長を祀る為に神が植えたとされる都万麻(ツママ=タブノキ)の実を集めて渡し、その樹皮や葉で染めた服を作って与えることで共存を図っていた。それだけでは足りないので、手長は時折地引網漁に出た船から魚を攫って(貰って)過ごしていた。それでも漁師たちにとっては空の湿気を読んでくれる手長は嵐を諭してくれる有用な神のように扱われ、重用されたのは確かである。
 ……そんな折だ。この地方を収める領主が手長足長を危険な妖であるから一度検める必要があると言って、手持ちの兵を集めて訪れたのは。手長足長は誤解を解くため、領民達はその無実を無条件に信じるがゆえに、その言葉に従った。

 だが、数日ほど経ってから、隣接する領地の主が手長足長らしきものに襲われ邸宅ごと踏み荒らされ、攫われ遂には食われたという報が領民達の耳を殴りつけた。
 あの優しい手長足長がそんな事をするはずがない。そう考えるのは当然で、何かの間違いではないかと騒ぎ立てる者が殆どであった。
 だから、彼等が領地へと舞い戻り……手長は血で象られた不定形の腕を、足長は重々しく不格好で、そして踏み潰すことに特化した足を得て現れたことに、そして噂通りに人を攫っては喰い、家々をその不格好な足で踏み鳴らすようになって人々はこの心優しき神のような妖がもう戻らぬところにいってしまったのだと理解した。だから、その妖はもう討伐するしかないのだと……遠く高天京では人と神の融和が図られた今、この地では人と妖が袂を分かとうとしていた。

●再びの融和か、永久の断絶か
「以上の話からご推察頂ける通り、手長足長は呪獣としてその姿を変質させています。欠損した部位を考えるに治療することはかなり困難で、彼等を討つしかないのでは、というのが依頼主の領民達の見立てです」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は依頼書の顛末を読み上げると、呪獣と化した手長足長の情報を壁に投影し説明を始める。
「手長足長は足長が手長を担ぎ上げる形で、2人一組で成立しています。足長の足の長さは10メートル、胴の長さ0.9メートルに及び、手長を地上から、至近戦で狙うことは実質不可能です。足長の足先は象のような形に変質していて、踏み出すと周囲5メートルを衝撃波が襲って立っているのが困難なほどだと言います。
 手長の両肘から先は不定形の腕になっており、振り下ろす、振り回すなどが可能で、長さは報告ごとに一定しませんが最大30メートルまで届くようです。肘から先を切り取られて、呪いで置換された格好ですね」
 つまりは、足長の長大な移動距離と手長の射程により、かなりの範囲を攻撃射程に収められるというわけか。イレギュラーズは余りに厄介なその能力に呻く。
「ですが吉報を、ふたつご用意しています。
 ひとつは、彼等を殺さず倒し、その上で皆さんの神秘で治療できれば欠損部位の復元が可能であるらしい、ということ。もう一つは、今彼等を倒すことで、これ以上の呪獣としての力の増幅を抑えることができる、という点です」
 今倒せばすべて丸く収まる。……たとえ殺したとて人と神に届く妖の断絶がひとつ増えるだけだ。
 イレギュラーズは一層渋い顔で三弦を見た。彼女の表情は、眼鏡に反射した光で定かではない。

GMコメント

 アフターアクションを大変おまたせして申し訳ありません。
 そんな感じで平和になったカムイグラでもまだ騒乱の種はあるのです。

●達成条件
・「手長」「足長」両方の撃破
・(オプション)双方の不殺フィニッシュ

●足長
 とても長い足を持った妖。穏やかな気性で人を襲わなかったが、領主に謀られ呪いの材料にされた。
 HP高め、防技・物攻高め。素の機動が6。
・踏み鳴らし(パッシブ):物特レ範(移動先を起点とする)、【スプラッシュ2】【ショック】【足止】
・蹴り飛ばす:物近単、【弱点】【HP吸収中】【ブレイク】

●手長
 とても長い手を持って『いた』妖。足長同様穏やかな気性であった。肘から先を奪われ、不定形の呪いで補っている。
 HP高め、抵抗高め。基本攻撃【レンジ3】【Mアタック中】【虚無】。
・叩きつけ:神中範、【Mアタック小】【喪失3】
・振り回し:神遠扇、【Mアタック大】【虚無】【窒息】
・天を掻く:神特特(自身から3レンジ全体、足長除く)、【スプラッシュ3】【感電】【喪失2】

●戦場
 カムイグラ湾岸地帯。
 本来なら木々が視界を遮り、地上から手長を狙いにくいシチュエーションでした。
 現在は足長が踏み荒らしたため広く見通しの良い地帯となっております。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 手を延べて 足を延して 誰ぞ攫う完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月18日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
相模 レツ(p3p008409)
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き

リプレイ

●何時からそうしていたんだろう? 分からなくなってしまった
「今回の仕事は、手長足長を倒し、元に戻す事だ」
 『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)は渡された資料を一瞥し、深くため息をつく。カムイグラに流布され、蔓延した『呪詛』の手引は、その根底にあった肉腫と魔種の野望潰えたとて有効であった。然るにそれは人々の情念が絡み合った賜物であるがゆえ、撲滅は極めて難しい。そして、その被害に遭った『呪獣』達もまた、消えることはない。仮に呪いが成就したとて、奪われた肉体への渇望と恨みつらみは消えはしない。
「ふーむ……なんぞあったらしいが人に害を成すなら大人しくしてもらうぞ。話はそれからじゃ」
「妖狩り……いや……これは……」
 敵に事情あったとて狩るべき、と意気込む『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)だったが、他方で相模 レツ(p3p008409)は己の佩く刀――己の分身も含む――に視線を向けて苦い顔をした。出来る限り斬らず、殺さずに終わらせるべき、なのだろう。
 人の都合で呪いの依代となり、人の都合で呪いを引き剥がし命すらも奪われていく。そして何もかもを質に入れても復讐したい相手が消えれば、恨みを生み出した人間は素知らぬ顔で日常へと戻っていくのだろう。冗談ではなかった。
「せっかく仲良くできていたのに……こんな事って無いのだわ」
「あれ程の事がありながらまだ呪詛を扱う輩がいるとは……人の怨みとは尽きぬものでござるな」
 『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が口惜しそうに歯噛みする傍ら、『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は半ば呆れたような調子で首を振る。中央で起きたことの大きさを性格に認識している者は多くはない。情報伝達の遅さこそが、否、知っていたとて呪詛で得られる利益が「遠くで起きた実害の恐怖」を上回れば、権力者は容易に禁忌に手を伸ばすことを決断できよう。
「話の流れを考えると、領主が隣接領主を襲わせるために呪獣にしたってところかね……」
「妖怪 呪詛 利用サレル 被害者。政治 陰謀 巻キ添エ」
 『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)が凡その流れを口にすると、『青樹護』フリークライ(p3p008595)も片言ながら同意を示した。
 すべて終わってしまった後の話だが、さりとて呪獣となった手長足長だけならまだ救う道はある。仮に、その道が峻厳なものだとしても。
「普段なら微笑ましい連中でしょうけど……ええ、敵に回られるとなんとも厄介なタイプね!」
 『never miss you』ゼファー(p3p007625)は徐々に迫る相手の存在を肌で感じつつ、しかし常と変わらぬ泰然とした佇まいで敵を迎え撃たんとする。遠くから響く足音、天を掻いて乱す天候。遠巻きに察知できるだけでも、それぞれが生み出す要素というのは面倒なことこの上ない。
「今回の戦いはお主らが要。さぁ、気張ってゆくぞ」
「ン。公的 支援 謝罪 必要 思ッテタ。手長・足長 当然 見過ゴセナイ……華蓮 一緒 頑張ル」
「ええ、絶対に絶対に……不幸になんて終わらないのだわよ!」
 瑞鬼の付与術式によって魔力の循環が効率化されたフリークライと華蓮は、互いに仲間達に視線を向けると拳を握り、迫りくる影を睥睨する。
 あれが、仲間を傷つける敵であり、救うべき友となるもの。隔絶を繋いで癒やすべき相手。
「長い間に人と育んだ絆が一つの恨みでそう簡単には崩れはすまい。彼等を蝕む呪詛を解除し、怨恨から解放してやれば話くらいは出来る筈」
「ああ、手強い奴を相手取るのは俺達の役目だ。……その後の説得は、どこまでやれるか」
 咲耶と義弘はこの戦いで主たる攻め手としての役割が大きい。『その後』の話に余力はのこしておけないだろう。なれば、そこから先は仲間の仕事だ。2人は今ここで、2体の呪獣を叩くのみ。
「さぁさ。其の無駄に長い手足。存分に使って私を捕まえて御覧なさい?」
「目障りな小蝿めが。貴様等もあ奴のように我等を、その同胞(はらから)を道具としか思っておらぬのだろう」
「ああ厄介な。手長の手に任せようか、儂の足ですり潰そうか」
 ゼファーの挑発を受けた手長足長は、それぞれが彼女への敵意、寧ろ殺意にほど近いものを滾らせ迫ってくる。手長の一撃はまだ、いい。足長の踏みつけはそれだけで周囲に衝撃を広げる関係上、近くにいれば巻き添えを喰らうもの。それは当然、攻めに回る者達にも例外ではない。無論、それは全員が認識している。足長の左側に回ったゼファーと呼応して、仲間達は右側へ。
「まずはその足での動きを制限させてもらうよ」
(神に等しい相手を『殺す』、か……)
 レツは相模『烈』と不知火を正確な狙いと確かな技の冴えで振るい、シガーは精霊刀を振るって足長へと一撃を叩き込む。両者ともに熟達した手、狙いを誤ってはいない。
 だが、それらの攻めがどれほど効いたものか。称えるべきは相手のが頑健さであろう。
「わしはおぬしらの事情はとんと分からん。じゃが、誰彼構わず当たり散らすのは子供じゃ。正当な怒りとは到底思えぬ」
 瑞鬼は己の技倆が及ぶギリギリまで踏み込むと、足長目掛け浄土落しを放つ。双つ世を跨ぎ迷わせるその一撃は、傷こそ浅いが足長の混迷を助長し、僅かな幸運すらむしり取っていく絶界の業。
「許せ、足長……拙者らはおぬしらを殺しはせぬ。せぬが――」
 妙法鴉羽『宿儺』を銃へと変えた咲耶は距離を取り、足長を背後から猛然と攻め立てる。無形の攻めは、その動きのトリッキーさか、はたまた背後からの急襲が奏功したか、足長の変容した足に明確な傷が入る。
「俺も、俺達も殺したくはねえ。でも、頑丈ならその分しっかり殴らなきゃあいけねえ……我慢しろよ」
「小癪な! 儂等をああも好き勝手使いよったのに、ここに来て更に――嗚呼、苛立たしや!」
「苛立つのも仕方ないと思うわ。起こりたいなら好きに怒っていいわ。でも、私達はあなた達がお互いに相手を理解することを諦めるのだけは、どうしても見てられない。放っておけないワケよ」
 run like a fool を担ぎ、愚直なほどに真っ直ぐに、ゼファーは槍を突き出した。足長につけられた僅かな傷を貫いたそれは、足長の喉から苦鳴をほとばしらせた。
 怒りと苛立ち、絶望と悲しみ。全てを拒絶するかのようなそれは長く尾をひき、しかし明確な意志とともに振り下ろされた足はたしかな精度でゼファーを――そして周囲の攻撃手達を傷つける。狙っているのはゼファーだが、されどその一投足は質量兵器として衝撃を無作為にうち放つ。攻撃行動ではなく、移動だけでその威力、その範囲。神の類縁とは言ったものだ。
「フリック 仲間 傷 我慢デキナイ」
「分かっているのだわ。……そしてやっぱり、あの人達の心の傷も、私は無視できないのだわ」
 フリークライと華蓮は仲間達に治癒を重ね、僅かな傷でも油断なく修復していく。侮れぬのは足長の踏み込み、ゼファーが受け止めてなんとかいなしている手長の拳。ただの一撃であろうにどうにもそれが響く。
 手長の攻勢を1人に集中させている分にはいいだろう。だが、それも常に成功するとは限らない。イレギュラーズ優位の戦いは然し、じっくりと、相手のペースへ引き込まれていく――。

●彼等には彼等しか
「死なない程度に、だが省みることが出来る程度には痛めつける。我慢して欲しい」
「仲間が作った隙を捨てる俺達じゃない。最後まで付き合ってもらうぞ」
 レツの 『存在しない刃』の一撃がようやっと傷を生み出せば、畳み掛けるようにシガーの邪道の一撃が吸い込まれるように傷口を狙う。
 刀を携えるものとして、両者はどちらがそうしたわけでもなく連携を深めていく。ややもすれば刀と鞘が噛み合い、居合を機になめらかに離れるように。するりするりと敵の守りを抜けるように。
「怒るのもわかるがほどほどにしておくのじゃぞ。やられたらやり返すのも大事じゃが相手を間違えてはいかん。なんにせよバカ者どもは今ここで止めてやろう」
「ようも吼えたな、小蝿めが。儂等を、ようも……?!」
 瑞鬼から放たれた陰気と敵意ある言葉。怒りの感情からいっとき解かれた手長は、彼女を見据えつつ『天を掻く』。雲を生み雷気を手繰り寄せ地を穿つ一撃は、成程強烈なものだろう。……だが、瑞鬼はもとより頑強な守りを旨とする。さして通じてはいないようだ。
「怒りに身を任せなければこれか。なんだ、手長。おまえさんは十分な力を持ってるんじゃないか」
「だから何だというのだ。……妬み嫉みのたぐいか?」
「馬鹿言え、おまえさんを認めるって言ってるんだよ」
 義弘は若干ながら弱ったように思える足長へ渾身の一撃を浴びせる。手長は彼の言葉に取り付く島もないようないらだち混じりの声を返す。強者を認め、力をぶつける。死せずとも、わかりあえる。拳で、だ。攻勢薬を嚥下した義弘は、不敵に笑みを深める。
「手長よ、足長よ、目を覚ませ。お主達と共に暮らした人々の事を忘れたか! お主達はまだ間に合う筈、恨みに呑まれて我を失ってはならぬでござる!」
「共に暮らした地の者が、その地に根付く新たな生命を求めて、成功を求めて我々の肉をえぐり呪いを生んだのだろう、あの不格好な『忌』とやらを!」
「だが、だがその怒りは決して共に笑い合った人々に向けるものではござらぬ! 領主と領民は違うのだぞ、足長!」
「本当、その辺面倒くさいわよね。この国も、わたしの国も同じよ、そういうとこ」
 ゼファーは咲耶に共感するように頷いた。領主の方針というのは大抵、自己顕示欲と自己の成功欲求で成り立っている。領民を正しく導くことができなければ、それは命令文と大差ない。自由からは程遠い。
「手長・足長 土 木 気遣ッテタ。実 食ベ 樹皮 葉 服 纏イ 生キテキタ。
 人々ダケジャナイ 自然 共存 共生。
 ン。木々 踏ミ荒ラシ 本意 違ウ ナラ 止メル。木々モ ソウ望ンデル」
「そうね、あなた達はもっと優しいはずなのよ。もっと、他人に優しく出来るはずなのだわ」
 フリークライの治癒と華蓮の言葉が重なり合い、奏でるような音を立てる。
 手長足長は人との共存共栄で成り立った妖である。その流れで、今まで彼等が共生し、人々を助けた植物も1つ2つの問題ではないはずだ。
 華蓮は他者へと治癒を満遍なく飛ばしつつ、短く息を吐いて、吸い込む。
 足長が徐々に態勢を崩している。手長単体になれば、被害はグッと減るだろう。
「大丈夫……大丈夫……その怒りも悲しみも、幾らでも受け止めるのだわ……だから、私は絶対に誰も傷つけさせない!」
 華蓮の決意の言葉と、咲耶の攻勢が足長の動きを止め得たのはまさに偶然だった。
  届き得ぬ位置から、逃れ得ぬ脅威を撒き散らす手長は、今や狙われるを待つ的と同義だ。それでも、固定砲台とみれば脅威なのは変わりはないが。
「さあて。悪い夢はそろそろ終いにしましょう?」
「人間を恨まないことは難しいかもしれないけれど、人に必要とされることの喜びもわかるつもりだよ。同じく人の近くにいた妖のよしみじゃないけどね」
 ゼファーの一撃が、手長の振るわれた手とかち合う。ぎしぎしと押し合う槍と手の脇を抜け、レツの一刀が閃いた。人とその生をともにした身として、彼は手長足長に近しい存在といえた。だからこそ、その姿を戻すべく必死だ。
「必ずやここで彼等を食い止めて、巡り巡る怨みの連鎖をここで断ち切ってくれようぞ!」
「当たり前だ。どっちに転んでも、これ以上罪を重ねさせるわけにはいかねえ……!」
 咲耶が、そして義弘が吼え、手長へと攻撃をしかけていく。頑強な身は足長譲りか、彼由来か。いずれにせよ、倒すには難だが――2人の癒し手の全力の前で、彼等が倒れる道理はない!

●千切れ結ぶ縁と怨
「儂の腕は……いいや、足長のあの足は、戻らぬのか。儂はいい、足長が運んでくれねば儂は用をなさぬ」
「何を謂うか、手長の。貴様が彼奴らとの橋渡しをせねば、儂では到底話がつかぬ。歩くだけの能無しを置いて話を進めんでくれ」
「……正直、ここまで素直になると拍子抜けねぇ」
 手長と足長が互いに相手を尊び、謙遜し合う様子を見たゼファーは、やや肩の力が抜けたかのように座り込む。体力は仲間達の尽力で全快に近いが、精神的負担が大きかったのだろう。
「どちらを優先するつもりもないのだわよ。私達は2人とも助けるつもりで来たのだわ」
 華蓮は足長の、失った足の断面に治癒術をかけ続ける。先程まで呪いで補っていたその部位は未だ痛々しい切断面をみせているが、徐々に傷は癒え、時間が巻き戻るかのように足が修復され始めた。
「ン。仕打チ 考慮 人々 呪ウ 理解可能。タダ 手長 足長 植物 恨ミナイハズ」
「……そのとおりだ」
 フリークライはといえば、治癒術を施しつつ手長達の思考を理解する。呪う気持ちも怒りもわかる。だが、植物は違うだろうと。手長は苦い顔で応じる。何をばいわんとしているのかは理解できるようだ。
「木々 悲シンデタ。 踏ミ荒ラサレ 痛イ アル。デモ ソレ以上ニ 優シイ 手長 足長 人々 呪ウ 悲シンデタ」
 フリークライは都万麻の実を手長の修復された手へと乗せる。手に乗った感触で何かは理解したのだろう、手長の渋面はより深く。
「で、どうする。手長、足長、おまえさん達は人間を信じて人間に裏切られた。おまえさん達がどういう結果を選んでも仕方ないことだ」
「領民との対話を望むなら拙者が仲介しよう。2人が人と歩みたいというのなら、ローレットは尽力するゆえに」
 義弘の問いかけは、両者の返答を詰まらせるに十分だった。騙したのは領主という個人であるが、さりとて人がやったことに変わりはない。領民達には随分と迷惑を駆けた。ともに歩もうと声をかけるのは、果たして自分達からでよいのだろうか? 懸念は尤もである。
「霞帝や中務卿には今回の件を報告させてもらう。正しい道を歩む限り、君達に累が及ぶことはないだろう。領主がどうなるかは正しい沙汰の結果、としかいえないが」
「領主に話を聞いておきたいところだけど……素直には話さないだろうね」
 直接領主とかけあう気でいたレツだが、シガーはもう少し直接的に、中央に話を通せばいいのでは、と考えていた。それぞれ一長一短だ。神逐を為した直後で未だ混乱が続く中央に辺境の諸問題を優先して処理できるのかという疑念、領主が今回の件を知ればローレットを脅威に感じ、意志を閉ざすのではないかという懸念。何れも正当である。領主を断罪できるならよし、だが力関係とその他諸要素で潰される可能性も否定できない。
「いずれにせよ、次からはバカの相手を真面目にするでないぞ? またこんなことがあったらわしらを頼るがいい。神使は何でも屋じゃからのう」
 瑞鬼はそんな悩みを抱える2人を脇目にあっさりと言ってのけた。良きにつけ悪しきにつけ、自分達が処理すると。勇ましい言葉である。そして、重い言葉でもある。
「神使とはいったものだな、手長の」
「儂等は神ではないがな、足長の。……では神使よ、儂等と人との導き手を頼めようか」
 ややあって手長と足長から漏れ出た提案に、一同は胸をなでおろす。
 恐らくは、そうすぐに関係が修復することはないだろう。
 されど、彼等が築いた絆は一朝一夕のそれではないのだと誰もが知っている。誰もが信じている。
 その絆を手繰り寄せれば、あるいは。

成否

成功

MVP

華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせいたしました。
 皆さんの情熱が通じ、手長足長は(すぐにとはいきませんが)領民と関係修復の一歩を踏み出しました。
 治療手のお二人は本当にお疲れ様でした。マジでやりやがった。

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