PandoraPartyProject

シナリオ詳細

偉大なるパンジャン。或いは、勇壮なる新兵器開発秘話…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●自走するタイヤ型爆弾
 空気を震わす轟音に、撒き散らされる熱波と爆炎。
 ところは鉄帝国のとある廃墟。かつては砦であった兵器実験場である。
「あー……火力、こんなもんでいいか? いや? もっといるか? 自走するだけじゃ物足りねぇよな? 飛ばすか?」
 爆炎を眺め、そう呟いたのはツナギ姿の男性だった。
 総髪を背中で括ったその男、名を“パンジャン”という。
 男の背後に並んだそれは、大小様々な“タイヤ”であった。
 正確にいうのなら、タイヤ型の爆弾だ。
 タイヤの外周に添うように設置されたロケットを推進力とし、敵陣目掛けて転がっていく。
 それは、そう言う性質の兵器であった。
 中には風船の付いた爆弾もある。それはきっと飛ぶのだろう。
 普通の大砲ではだめなのか?
 どうして、わざわざロケットを推進力として転がっていく必要があるのか。
「あー、何でだっけかぁ? 転がった方が、かっけぇからか?」
 なんて、ゴーグルを押し上げながらパンジャンはそう呟いた。

 求めるものは、最大級の大爆発。
 そして速度。
 命中精度も必要だろうか。
「だが、まだまだ改良の余地がある。実戦で使ってみねぇと、分かんねぇもんだよなぁ」
 パンジャンの背後に山と並んだ爆弾は、すべて彼の作った試作品だ。
 彼は何度も、軍上層部に掛け合った。
 自分の作った爆弾を、実戦で使わせてほしいと。
 しかし上層部は彼の提案を却下した。
 それは、彼の作った爆弾に重大な欠点があったからだ。
「路面がガタガタだと、変な方向に転がっていくんだよなぁ。しかも時々誤爆するしさ」
 もっと精度をあげねぇとなぁ、と。
 そんなことを呟いて、パンジャンは遥か遠くを見やる。
 爆弾によって崩壊した砦の壁。
 立ち昇る爆炎。
 威力だけは申し分ないが、改良するにはデータが足りない。
「っし、誰か雇って手伝ってもらうか」
 
●実戦実験
「まぁ、要するにだ……パンジャンが作った100発の爆弾の性能テストってことだな」
 そう言って『黒猫の』ショウ(p3n000005)はため息を零す。
 場所は鉄帝国。
 兵器実験場とされている古い砦である。
 砦からおよそ100メートルほど離れた位置にパンジャン、及び爆弾は用意されている。
「次々に爆弾を撃ち込むから、砦を守ってみせろとさ……爆弾の種類は大まかに4つ」
 1つは速度に特化した爆弾。
 1つは火力を重視した爆弾。
 1つは飛行機能を備えた爆弾。
 1つは軌道が不安定な爆弾。
 各爆弾の個数は伝えられていないため、より正しく対応するためには自走するそれらの特徴を速やかに理解する必要があるだろう。
 例えば、速度特化の爆弾には推進力たるロケットが多く取り付けられている。
 火力重視の爆弾はサイズが大きく、火薬庫部分が大きく造られている。
 飛行能力を備えている爆弾であれば、風船が付随しているはずだ。
「起動が不安定ってのはよくわからないが……失敗作なんじゃないかと俺は思うが」
 それらの爆弾が次々と撃ち込まれてくるため、イレギュラーズは各々の方法でもってそれを妨害。
 砦を可能な限り破壊させずに、100発を使い切らせることが目的だ。
 そのデータを持って、パンジャンは爆弾を改良するつもりらしい。
「爆弾には【業炎】や【ブレイク】【飛】といった効果がある」
 砦内部には瓦礫などが転がっている。
 一部には舗装された道路。
 その左右は荒地となっている。
 舗装された道路であれば、爆弾は割合まっすぐ進むだろうが、荒地であれば飛び跳ねる。
「まぁ、依頼は依頼だ。手伝ってやってくれ」
 と、そう言って。
 ショウは肩をすくめるのだった。

GMコメント

●ミッション
パンジャンの作った爆弾の実戦試験を成功させる。
※30発の爆弾が砦に到達するとミッションは失敗となる。

●ターゲット
・パンジャン
ツナギを着た総髪の男。
自走するタイヤ型爆弾に魅入られた兵器開発者。
彼の作った爆弾はタイヤのような形状をしている。
タイヤの外周にそって設置されたミサイルを推進力として自走する。
爆弾は全部で100発。

速度特化型:物至単に大ダメージ、業炎、飛
 無数のミサイルが取り付けられたタイヤ型爆弾。

火力重視型:物中範に大ダメージ、業炎、飛、ブレイク
 大型のタイヤ型爆弾。

飛行型:物近単に中ダメージ、業炎、ブレイク
 風船が付いた空飛ぶタイヤ型爆弾。

特殊型:神近範に中ダメージ、業炎、飛
 軌道が不安定。球体状だったり、楕円形だったりする爆弾。爆薬の量もマチマチ。


●フィールド
鉄帝国にある古い砦。
兵器実験場。
砦からまっすぐ伸びる舗装された道路。100メートルほど離れた位置にパンジャンは立っている。
道路の幅は30メートルほど。
道路の左右には荒地が広がっている。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 
 

  • 偉大なるパンジャン。或いは、勇壮なる新兵器開発秘話…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
フランドール=ジェーン=ドゥ(p3p006597)
パッチワーカー
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
久泉 清鷹(p3p008726)
新たな可能性
黄野(p3p009183)
ダメキリン
白萩(p3p009280)
虚構現実

リプレイ

●偉大なる新兵器じゃん
 空気を震わす爆音に、濛々と昇る黒煙と、地面に散らばる鉄片と、その真ん中で煙を吐いて倒れる少女の死体。
 血色の失せた肌の色。全身に走る無数の縫い跡。
 否、それは死体ではない。死体ではないわけではないが、生きているのだ。
 『パッチワーカー』フランドール=ジェーン=ドゥ(p3p006597)は別世界から来た歩く死体なのである。
「あ~う~……」
 どうして彼女が煙を吐いて倒れているのか。
 時間はしばらく巻き戻る。
 
 シュパパパパパパ、と小気味よく鳴る炸裂音。
 火炎を噴射し、転がるそれはタイヤのような形状をした爆弾だった。
「実用には大分難のある兵器な気がしますが、発想を形にして残すのは良いことですね……100個も作る必要があったかは分かりませんが」
 無骨な剣を正眼に構え『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)はそう呟いた。
 路面に撒かれた瓦礫に乗り上げ、タイヤ爆弾は右に左に大きく弾む。
 オリーブの背後には崩れかけた砦があった。
 タイヤ型爆弾を砦に到達させないこと。それが、今回イレギュラーズに課せられた任務……新兵器の実践試験の内容である。

 砦から100メートルほど離れた位置に立っているのは、ツナギ姿の男であった。
『兄ちゃん、そうは言うけどよぉ、俺からしてみりゃ、100でも足りねぇぐらいなんだよなぁ』
 手にしたハンドスピーカーに向け、男……タイヤ爆弾の開発者であるパンジャンは、そんな言葉を告げるのだった。
 そして彼は手にした機械を操作して、さらに数機のタイヤ爆弾に着火した。
 タイヤの外周に取り付けられたロケットが、その瞬間に火を噴いた。
 ゆっくりと回転しながら舗装された道路を進む。
 タイヤの中に詰まった火薬。
 それは、小型ロケットの推進力にて自走するのだ。
「パンジャンじゃんこれ! パンジャンさんが作ったからパンジャンとかの前にこれそもそもパンジャンじゃん!! でも、まあいいじゃん! ジャンジャンパンジャンを防いでぶっ飛ばしてやるじゃん!」
 半透明の下半身。
 音もなく宙を駆ける彼女の名前は『爆音クイックシルバー』ハッピー・クラッカー(p3p006706)という。
 タイヤ型の爆弾に思うところがあるのだろうか。それとも日頃から、そうなのか。
 彼女のテンションは高かった。
 マイクを通したハッピーの声が、荒野の砦に木霊する。

 パンジャンの放ったタイヤ爆弾の第一陣は、砦の手前で瓦礫に躓き横転していた。
 その場でくるくると回転した後、ドカンと火炎を噴き上げ爆ぜる。
 立ち込める黒煙を払いながら『正直な旅人』黄野(p3p009183)は思わず目を丸くした。
「げほごほ! 火薬の匂いがすごいぞ。なんじゃこりゃ! これほんとうに戦で使いたいとか申すのか? マ?」
「途中で倒れてりゃ世話ぁねぇな。このまま全部、瓦礫でこけてその場でボン! してくれりゃアそれ以上楽な事もねェんだが」
「少なくとも、瓦礫を撒いたのは無意味ではなかったな。上手くいったおかげで、大分処理に余裕が出たぞ」
 鉄線片手に呵々と笑う「『虚構現実』白萩(p3p009280)と、刀を構えた『新たな可能性』久泉 清鷹(p3p008726)は言葉を交わす。
 事前の準備として、タイヤ爆弾が通るルートに瓦礫をばら撒いたのは彼らであった。
 タイヤ爆弾が瓦礫に躓き、明後日の方向へ逸れる……或いは、その場で横転することを狙っての試みだったが、どうやらうまくいったらしい。
 瓦礫に躓き倒れる時点で、タイヤ爆弾の性能がいかにお粗末なものであるかが窺えるのだが……。
『やぁっぱ、おせぇと瓦礫を超えらんねぇなぁ。んじゃ、お次はこれだぜぇ』
 その程度の欠点など、パンジャンとてとうに理解していたらしい。
 彼が次に射出したのは、先ほどのものより幾分小型のタイヤ爆弾。
 ロケットの噴射を推進力に、猛スピードでそれは道路を疾駆する。
 加速が乗っているせいか、転がる瓦礫に乗った瞬間、それは高く宙へと跳んだ。
「お、おぉ!?  一生懸命走ってるのが少し可愛く見えて来た矢先にこれですかっ!!」
 爆弾が跳んだ先に居たのは【飛行】スキルで空を泳ぐ『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)。
 迫り来る爆弾を迎え撃つか、それとも避けるか……ほんの一瞬迷った末に、彼女はさらに高度を上げた。
 どうやら回避を選択したのだ。
「とんだ特攻兵器だな。しかし、玉砕覚悟の相手であればそれが人であれ、血の通わぬ兵器であれ、対処方法は幾らでもあると言うもの」
 宙を舞うその爆弾目掛け『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)は長銃の銃口を向けた。
 ロケットによる軌道のぶれこそあるものの、爆弾は重力に引かれ弧を描くよう宙を舞う。
 否、それはまさしく落下であった。
 で、あるならば……それに狙いを定めることなど、コウにとっては造作もない。
 引き金を引き、射出された弾丸が空へと疾駆する。
 弾丸に真芯を撃ち抜かれたその爆弾は、火炎と木っ端を周囲にばら撒き、空に紅蓮の花を咲かせた。
 
●じゃんじゃんやるじゃん
 濛々と立ち込める黒煙を見やり、パンジャンはくっくと肩を揺らしてほくそ笑む。
「威力は上々。生憎と迎撃されちまったが、まぁ予想済みだぁ」
 やっぱ数も必要だよな、と。
 そんなことを呟いて、パンジャンは都合10の爆弾を同時に解き放つ。
 うち3基は風船に運ばれ高度を上げた。
 うち3基はゆっくりと、どこか不安定な軌道で進む大型のもの。
 うち3基は高速で道路を疾走していく。
 そして残る1基に関しては、ぼよんぼよんと右に左に飛び跳ねながら、縦横無尽に荒地を駆けた。
「直線的な動きは横から多少力を加えるだけで進行方向がぶれるものだし~。数も多いし、同士討ちを狙うべきじゃん~?」
 んぁ~、と間延びした声で、フランドールはゆっくり左右に身体を揺らす。
 彼女の助言を受けたオリーブが剣を構えて駆けだした。
「自分は非行型には手を出せませんので……非効率的ではありますが、前に出て大型を攻撃しますよ」
 駆けるオリーブの左右を抜けて、速度型が砦に迫る。
 それを迎え撃つのは黄野と、そして清鷹だ。
「では、速度型は任せてもらおう。大型と速度型は優先対応じゃ。前衛組のふぉーめーしょんを崩されるとまずい故な!」
「狙うのならは片側のロケット部分だ。推進力が傾けば軌道も反らせるはずだからな」
 道路の左右に分かれた2人は、それぞれの武器を構えて爆弾の到達を待った。
「平和を望んどるおれが兵器開発に携わっとるの、自分でもなんで?って感じなんじゃが!」
 キリリ、と弦の張る音がした。
 矢を番えた和弓を黄野は引き絞り、片目を閉じて迫る爆弾に狙いを定める。
 瓦礫を踏んで弾む爆弾を正しく射貫くのは至難の業だ。
 速度に加え、辺りに漂う黒煙と、不規則な軌道の相乗効果。これほどに狙い辛い的もそうないだろう。
 けれど、しかし……。
「ふぁんぶる振ったらすまんの!」
 ひゅおん、と羽が風を切る音。
 疾駆した矢は、爆弾の上部……ロケットの1つを射ち抜いた。衝撃にぶれる軌道。その場で横転した爆弾は、瞬間、激しく爆炎を散らす。
 木っ端微塵に飛び散る破片の間を、清鷹は一気に駆け抜けていく。破片がその身に傷を刻むが、彼が見据えるは未だ走行を続ける2つの爆弾のみ。
 破片によって頬が抉られ、その顔を朱に濡らす。
 しかし……。
「予測不能な軌道なんぞ一々読んでいる暇などないのでな!」
 傷を負いながらも、清鷹は爆弾へと接近。
 腰の位置に構えた太刀の切っ先を、爆弾下部へと突き出した。
 目にも止まらぬ鋭い刺突がロケットごと、タイヤの一部を突き砕く。軌道が乱れた爆弾は、隣を走るもう1基へと衝突し……。
「ぬ……おわぁっ!?」
 2基とも纏めて、盛大な爆炎をあげるのだった。

 姿勢を低くし駆けるオリーブは、剣の切っ先を地面に向けた。
 背後で起きた大爆発を一瞥し、煤に塗れた清鷹の姿を視界に納める。幸い、意識はあるようだが、なかなかどうして負った傷は深そうだ。
「やはり爆発させて止めるのは悪手……明後日の方向に行って貰う感じでやりたいですね」
 そう呟いたオリーブは、爆弾の下部に剣先を素早く突き入れる。
 一閃。
 最小限の動きで、ロケットの1つを破壊して、ついでとばかりに軽く進路を右へと逸らした。
 ゴロゴロと道路を逸れて、爆弾は荒野へと向かう。
 狙いが砦から外れたことを確認し、オリーブは次の爆弾を追って駆けだした。
 と、その時だ……。
『だぁれも、10基ずつしか転がさねぇとは言ってないぜぇ』
 なんて、パンジャンの宣言と同時に射出された高速型が、オリーブの背後を駆け抜けていった。

 火力型、高速型、飛行型、特殊型。
 今回用意された爆弾は、大まかに以上の4つに分類される。
 次々と射出されるそれの対処にイレギュラーズは奔走するが、些か手数が不足気味だ。
「遅い! 遅いですね、こんな速さでは撃ち落としてくれとでも云わん許り!」
 そんな中、飛行型の対応を一手に引き受けている未散は着実に撃墜スコアを稼いでいた。
 というのも、この飛行型の爆弾はどうにも速度が遅すぎる。ロケットこそ取り付けられてはいるが、その進路はまさに風任せ。 
 ふわりふわりと風に運ばれ、右へ左へ漂うそれに彼女は次々と閃光を浴びせかけていく。
 数個の爆弾が一斉に爆ぜ、爆風と黒煙が荒れ狂う。
 暴風に煽られた未散は、大きく空で姿勢を崩すが……。
「偉大なる兵器をゴールにシュート!」
 爆風に激しく身体を揺さぶられながらも、手近な爆弾に渾身の蹴りを叩き込む。

 世界が終わるその瞬間は、きっとこういう光景だろう。
 降り注ぐ無数の砲弾と、それに撃たれて爆ぜる爆弾。
 黒煙が溢れ、金属片が四散する。
 業火に焼かれた道路はすでに黒焦げで、舗装の一部は砕けて散った。
 黒と赤に彩られた世界のただ中に、長銃を背負い立つ女が1人。
「何基か砦に到達させたが……何、残りを破壊すればいい。全てを潰さねばならん殲滅戦よりは随分楽な条件だ」
 コウの出身は争い絶えない小国だ。
 爆音、粉塵、火薬の臭いに迫る熱波。そのどれもが、慣れ親しんだものである。
 堂々たる立ち姿には微塵の恐怖も同様もなく……。
 ゆえに……。
「ん……?」
 砲撃の余波にあてられ落下して来た爆弾が、頭上で爆ぜたその瞬間も、慌てることなく彼女は爆炎に飲み込まれた。

 振り抜かれるは鋼の扇。
「そォら、お仲間はあっちだぜ!」
 ドゴン、とそれは大型爆弾の側面を打ち、それを宙へと弾き上げた。
 パパパパ、とロケットが火を噴く音がする。
 くるりくるりと回転しながら、跳んだそれは左右へ跳ねる特殊型の群れの最中へ落下する。
 複数の爆弾を巻き込んだ大爆発が、地面を激しく上下に揺らした。
 白萩は、その両脚で地面を踏みしめ姿勢をまっすぐに維持してみせる。
「っし、ナイスイン。ハッハー、こりゃ爆弾破壊グランプリも夢じゃねェな!」
 呵々と豪快な笑い声をあげ、白萩は次の獲物に狙いを定める。
「おぅ、アレがよさそうか?」
 彼の視線の向いた先にあったのは、鉄の棒により爆弾3つが連結された実に奇妙な物体だった。
 火力と直進性は増しているが、しかし速度が遅すぎる。
 一体それにどんな意味があるのか。
 開発者にしかわかるまい。

 大爆発に巻き込まれ、地面に伏したフランドール。
 煙を吐いて、彼女はゆっくりと立ち上がる。
「あ~、万全で挑まないと意味ないとはいえ、テストでここまでやる~?」
 砦に迫る高速型を、その身を盾に食い止めたのだ。
 黒焦げた肌は名誉の負傷。
 死体でなければ死んでるところだ、とそんな風に思いつつ、彼女はゆっくりと前に出る。
「あっはー、どんどん来るね! これは狙いを定めている余裕なんてないねっ! よっしゃ、これはもうガンガン体でブロックしていこ!」
「お~け~」
 ふわり、と音もなく隣に並んだハッピーと、フランドールは視線を交わす。
 仲間たちの築いた防衛ラインを突破して、数基の爆弾が砦に迫る。
 現在、砦に到達された爆弾の数はおよそ20と言ったところか。
「あっちが特攻してくるなら~……やってやろうじゃん。私自身が兵器になることだ! 作戦~!」
「いぇー! 身体のどこかに当たってくれー!!」
 パチン、と軽く手を打ち合わせ、フランドールとハッピーは爆弾目掛けて駆けだした。
 火炎と爆音に飲み込まれ、テンションがハイに振り切れているのかもしれない。
 目には目を、歯には歯を、そして自爆特攻には自爆特攻を。
 実のところ、衝撃を与えれば爆発する爆弾を、その身を盾に受け止めるという戦法自体は悪くないのだ。
 問題があるとすれば、ただ1点……。
「偉大なるパンジャンに爆破して頂ける喜びあ゛ー!!!!」
 確実に爆弾を食い止められる代償として、大きなダメージを負うことだろう。
 大爆音に紛れて響く、最高にハイなハッピーの叫びが仲間たちの耳に届いた。

●欠陥だらけじゃん
 砦を包む火炎と黒煙。
 100メートルほど距離を隔てて、それを眺めるパンジャンは果たして何を思うのか。
『お~お~、やるじゃんよぉ。まさか全部、使い切ることになるとは思ってなかったぜぇ』
 淡々と。
 実験結果を手元の用紙に記録しながら、眼前に広がる大惨事を睥睨。
 そうして彼は最後に残った大型を、名残惜し気に発進させた。

 【パンドラ】を消費し、立ち上がったフランドールとハッピーが砦の前に立ちはだかった。
 そんな彼女たちの様子を、頭上から見下ろす未散の表情はどこか不安げ。
 弓を構えた黄野と、銃を手にしたコウの視線が交差する。
「まどろっこしいな。あれで最後だってんなら、さっさと壊して終いにしようや!」
 そんな中、真っ先に駆けだしたのは白萩で……そんな彼をカバーするべく、清鷹とオリーブは武器を手にして、後を追う。
 直後……。
「……あ」
 と、誰かの呟く声。
 突如吹いた突風により、爆弾はその場で横転した。
『あ~……こうなっちまったら、駄目だな。うん』
 なんて、スピーカー越しに聞こえるパンジャンの声。
 地面を揺らし、火炎を噴き上げ、最後の爆弾は砦から遠く離れた位置で爆発。
 こうしてパンジャンの“偉大なる新兵器稼働実験”は無事に終了と相成った。

 黒煙と火炎。
 火薬の臭い。
 散らばる鉄片と、焼け焦げた瓦礫の山。
「嗚呼、狂気は果てしなく爆発はなんて切ない!」
 それらを睥睨した未散は、そんな風に宣った。
「なぁ、あの子、どうしちまったんだ?」
「気にするな。それよりまずこの兵器の致命的な欠点に関してだが……」
 未散を放置し、コウはパンジャンとの会話に戻る。
 結果を予測し、観測し、そして整理することで兵器はより一層、完成に近づくことだろう。
「ところでパンジャン殿、あの兵器に名はあるのか? 少々呼びづらいのだが……」
 と、そう問うたのは清鷹だ。
「パンジャンが作った爆弾っつー事で、そのまま“パンジャン”でいいんじゃねぇか?」
「そもそも改良したところで使えるのかの?」
 白萩と黄野の会話を聞いて、パンジャンは手元のメモに視線を落とした。
 びっしりと文字が書き込まれているところを見るに、改良点は山のようにあるのだろう。
「しかし、威力はなかなかのものでした。火薬の量を積めるのはいいですね」
 パンジャンに対するフォローのつもりか、チラと背後に視線を向けてオリーブはそう言葉を零す。
 オリーブの視線の先では【パンドラ】を消費するまでダメージを受けたフランドールとハッピーが、楽し気に笑い合っている。
「も~、名前はパンジャンでいいじゃん~? ていうか~、パンジャンじゃん~?」
「パンジャンがぶっ飛んだらフライパンジャンじゃん! フライパンじゃん! それもう、パンジャンじゃないじゃん!?」
「……あの2人は何を言っているのかの?」
 と、首を傾げる黄野の疑問も至極当然。
「いぇーい!!」「いぇ~い」
 仲間たちの疑問を他所の置いておいて。
 パチン、と笑顔でハイタッチを交わす2人の笑顔は妙に晴れやかだったという。

成否

成功

MVP

ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
爆弾に戸惑う者、立ち向かう者、楽しむ者、信仰する者と多様なプレイングをありがとうございます。
新兵器の稼働実験は無事に終了いたしました。
依頼は成功となります。

この度はご参加ありがとうございました。
また縁があれば別の依頼でお会いしましょう。

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