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シナリオ詳細

狂った十字架

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「またいなくなったってよ。ほら、今度はパン屋のオババんとこだ」
「またか? 盗賊も出てないっていうのに、どうしてこう人が消えるかね」
 どうにも分からない、と言いたげに村人は首を傾げる。
 最近、この村では不思議なことが起きている。1週間に1人。決められた日時でもあるかのように、子供が行方不明になるのだ。
「お前も娘、いるだろ。ちゃんと見ておけよ?」
「分かってるさ、誰にもやるもんか。攫ってみろ、どんな手を使ってでも取り返してやる」
 村人たちはこの不思議な現象を食い止めようとはしているものの、実際には何もできずにいる。
 何故か?
 それは『何も怪しいものが無い』からだ。
 村人は、くるりと周囲を見渡した。

 畑を耕す者。
 食材を交換する者。
 商売をする者。
 立ち話をする者。
 遊ぶ子供たち。
 荷馬車が通り過ぎ、
 パンの焼ける匂いが鼻をくすぐる。

 子供たちが行方不明になりはじめる前と何も変わらない、いつもの光景。
「この村で、何が起こってるんだろうな」
 幾分、人数の減った子供たちを悲しげな目で見つめる。
 変わらず太陽は村を明るく活気づかせているのだけれど、それはどこか。黒い部分の裏返しのようにも思える。
 この日が沈むと、夜が来る。

 前に子供が消えてから、1週間目の夜だ。


●その祈りは誰が為に
 真夜中の教会。
 練達の技術で作られた色鮮やかなガラス窓から、静かな月の光が差し込み周囲を照らす。
 飾られた神の像、並べられた椅子。小さな机、食事、ただ一人ここにいる神父。
 それらを順番に照らすその光は、まるで全てを浄化するようで。
 神父はステンドグラスに描かれた神の御姿へと、自然に両手を合わせていた。
「おお、神よ。私が敬愛する唯一の創造主よ。我らに、その子たちに幸があらんことを」
 誰もいない教会の空気を、彼の声が緩やかに揺らす。
 まだほんの小さな頃から、彼は敬虔な信徒であった。
 一通りの祈りを捧げ終わると、ナイフとフォークを手に取り今日の食事へと手を伸ばす。

 ぐちゃり。
 ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。

 神父の口から床にぴちゃりと何かが垂れ、周囲へ散った。
 唯一の救いは、それを月が照らさなかったことか。
 彼は首から下げた十字架を強く、強く握り締める。

 神よ。
 何故、このような試練をお与えになったのですか。
 何故、このようなことをなさるのですか。
 私は疲れました。
 私はもう、疲れました。
 ────嗚呼、神よ。
 ────嗚呼、神よ。
 ────嗚呼、神よ。

 神父の手の中で。十字架に嵌め込まれた小さな宝石が、怪しげな光を放っていた。
 この夜を象徴するかのような、血色の光を。

GMコメント

 こんにちは、鉈(なた)と申します。
 今回はおふとぅんではありませんが、よろしくお願いします。

●成功条件
 村で子供が行方不明になる怪奇現象の原因を突き止め、これを滅すること。

●現場
 農家や商店街、教会などがあるごくごく普通の村です。
 ただ村にしては少し大きめでしょうか。

●村人たち
・パン屋のオババ
 一週間前に息子が行方不明になったパン屋のおばあちゃんです。
 村人たちに美味しいパンを安く売ることで知られています。

・鍛冶屋ギブル
 村にいくつかある農具を作る鍛冶師のギブルです。
 彼もまた、娘が行方不明になっています。

・神父モイル
 村にたったひとつの教会の、たった一人の神父。
 敬虔な信徒として、村人たちには慕われています。

・自称自警団の皆さん
 男性2人、女性2人の村人で構成された村の(自称)自警団。
 ただの村人です。

・村人(モブ)
 その他大勢の村人たちです。
 商売をしている者、畑を耕す者、鍛冶をする者などたくさんいます。

●注意事項
 アドリブNGとプレイングやステータスシートに記載が無い限り、原則アドリブ描写が入ります。NGの場合はしっかりと明記していただけるよう、お願い致します。

 それではよい冒険を。皆様のご参加をお待ちしています。

  • 狂った十字架完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月25日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アミ―リア(p3p001474)
「冒険者」
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
Svipul(p3p004738)
放亡
一条院・綺亜羅(p3p004797)
皇帝のバンギャ

リプレイ

●身寄りのない少女
 リーン、リーン ゴーン、ゴーン
 真上に上った太陽の下で、今日も村には昼時を告げる鐘が鳴り響く。
「こんなものかな」
 この村でただ一人の神父モイルは、額に浮かんだ汗を小さく拭った。毎日決まった時刻に鐘を鳴らし、村人たちに昼飯時を伝えるのも彼の大切な仕事の一つだ。そして、鐘を鳴らした後は主神への祈り。それから昼食へと続く。
「おお、主神よ。恵みを与えし我らが神よ────」
 陽が差し込み、厳かな雰囲気の礼拝堂。そこに神父の祈りの句が紡がれる……はずだったのだが。

 コンコン

 控えめに扉が叩かれる音。来客だ。
 モイルは祈りを中断し立ち上がると、扉へと歩を進める。しかし昼飯時に人が来るとは珍しい。皆、空腹で食事に夢中になっているのが常なのだが。
「さて、どちら様かな……おっと」
「うええええ><」
 扉を開けて出てきた神父に突然、悪質なタックルをかましたのは『名乗り口上委員会』一条院・綺亜羅(p3p004797)だ。
「泊めてくれる神を待っておるのじゃ。体で支払うのじゃ~」
「お、落ち着いて、まずは話を聞かせてくれないか? それとその言い方は、いろいろと……」
 いかに神父といえど、突然飛びつかれる訓練を積んでいるはずもない。若干慌て気味である。
「虐待じゃ、虐待なのじゃ~。今晩だけでも泊めて欲しいのじゃ。手伝いはするでのう」
「虐待……? そうか。それは大変だったね」
 彼女の言葉でやっと事情を理解したモイルは、少女を教会へと招き入れた。家で親と喧嘩をしたりした子供が教会へ来ることはよくあることだ。勿論、大抵は一晩程度で家に帰すのだけれど。
(しめしめ、上手くいったのじゃ! 探偵ごっこの始まりなのじゃ)
 奥へと食事を取りに行ったモイルは、自称家出少女が心の中で「にっしっし」と悪い笑みを浮かべていることに気づくことができなかった。彼女は教会が怪しいのではと目星をつけていたのだ。まずは教会に潜り込む作戦、成功である。
「スープとパンくらいしかないが、食べるといい」
「ありがとうなのじゃ。お腹が空いて死にそうでのう」
 あくまで家出少女を演じる綺亜羅は、簡素な食事を頬張りながらも神父を注意深く観察する。現時点で特に不審なところは見当たらない。
 それなら、まずは会話をしよう。ボロが出るかもしれない。食事がてら、聞きたいことを用意してきたのだし。
「もぐもぐ……神父殿の信じている神とはどんな存在なのじゃ?」
「おや、その年で興味があるのかい? 勉強熱心だね。そうだな、何から話せばいいかな」
 この後、普段は話し相手のいないモイルから、怒涛の流れで教義を聞かされることになるのだが……軽く聞いたことを綺亜羅が後悔するのは、少し先の話だ。

●何でも事件を解決してくれる貴族様
 村の一角。いつもは誰もが通り過ぎるその場所に、今日は珍しく大勢の人だかりができている。
「貴族様が解決して下さるのかい?」
「何だ、それは本当か!?」
「海洋の貴族、レイヴン・ミスト・ポルードイという。まぁ我々に任せてくれたまえ」
 『放浪カラス』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は、村人たちに向けて事件の解決を宣言していた。
(最近の蜂起...…とは無関係だよね、流石に。だが、子供が居なくなってるのは事実だし。早急に解決するとしよう)
 あまり深読みをしすぎるのもよろしくない。ひとまず事件解決に来たことを村人たちに伝えて安心させるのが狙いだった。レイヴンは集まった村人たちを睥睨する。子供から老人まで、様々な人間が集っているようだ。
「そういえば、キミ達の中に自警団があると聞いたんだけど……誰か知っているかい?」
「あ、えっと、知ってます! どうぞ、こちらへ」
 手を挙げたのは、まだ若い男性の村人だ。貴族への対応に慣れていないのか、かなり腰が引けてしまっている。
「ワタシにそこまで萎縮しなくてもいいよ。いつも通りで構わないですとも」
「お、お言葉は有難いですがとても……此処が自警団の仮の詰め所です」
「ん、どうした? ……と、これは貴族様」
 仮の詰め所から出てきたのは、男性2名、女性2名、合計4名の自警団の面々。彼らの話によると、ちょうどこれから村の見回りをするそうだ。
「暫く行動を共にしたいんだけど、構わないかな?」
「ええ、それは勿論。貴族様が協力して下さるなんて心強いです」
 自警団の面子は視線を合わせて頷いた。元々、人手が足りなくて困っていたのだ。貴族様が協力してくれるというのなら是非も無い。
「……キミ達にとっての違和感が無い事とは、ワタシにとって違和感かもしれない。とにかくなんでも言ってくれたまえ。行動、人となり、居なくなりそうな場所、時間。何でも良い」
「分かりました。ひとまず、巡回をしながらお伝えします」
 レイヴンの言葉に村人たちは頷くと、知り得る様々なことを彼に教えてくれるのだった。

●彼岸と此岸を繋ぐ者
 村人たちはいつもと変わらず畑を耕し、作物を育てている。綺麗に晴れて太陽が顔を出しているこんな日は、作業を終わらせる絶好のチャンスだ。そんな中『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)は、困り果てたようにため息を吐いた。
(まさカ、子供たちでさエ、何も知らないなんてナ)
 大地は村に着いてすぐ、村人への聞き込みを行ったのだ。
 パン屋のオババ、鍛冶屋のギブル、そして一緒に遊んでいたであろう子供たち。しかし、そのどれもが不発に終わっていた。
 子供たちが消えた後の村人の様子は、自警団が出来た以外は特に変わりなく。子供たちに至っては、皆一様に「あまり目立たない子だったから知らない」と口にする。目立たない、というのが共通点なのだとすれば……それ以上は考えても無駄だナ。
 彼はよいしょと腰を上げる。聞き込みは不発だったが……まだできることは、ある。
(さテ、犯人はちゃんとしたニンゲンなのカ、はたまた別の存在なのカ、興味は着きない所だガ……)
 ここまでてこずらせてくれるのである。ただの村人でないのはほぼ、間違い無いだろう。子供たちが心配だ。彼は、ちらりと周囲を見渡した。そこにあるのは、立ち並ぶ家々と畑。そこで働く村人たち。
 しかし、彼が見ているのはそんなものではない。霊魂……死者の魂を見ているのだ。そしてそれは、彼の周囲にいくつか存在していた。それらとの意思疎通を試みる。
 …………繋がったカ。
「お前達の声ハ、俺達ガ、しっかりと届けル……だから、なにか分かることがあるなら、教えて欲しいんだ」
 彼のクラスは、ネクロマンサー……彼岸と此岸を繋ぐ者。死者との会話など、お手の物だ。

●木を隠すなら森の中
(子供の失踪事件。外的要因か内的要因か、どっちだろうねえ)
 『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474) は、教会の扉を叩いていた。まずは村人に慕われているという神父に話を聞きに来たのだ。『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も一緒である。
「こんにちはー」
「はい、これは……冒険者の方かな?」
 神父モイルは二人の姿をみとめると、すぐに冒険者だと分かったようで、ひとつ頷いた。レイヴンの声明が既にここまで伝わってきているようだ。村人にとって、冒険者や貴族とはそれだけの影響力があるということだろう。
「いやー、同じ信仰者としてちょっと気になってね? ……今日は少し、事件について聞きに来ただけ」
「なるほど。仰ぐ神は違えど、同じ信仰に身を置く者。歓迎しよう」
 視線を合わせ握手を求めるアミーリアの手を快く握り返すモイル。その手と仕草だけで、アミーリアは神父がそれなりに敬虔な信徒であることが分かった。同じ聖職者故、だ。アミーリアとレイチェルは、モイルに気づかれないように彼の一挙手一投足を注視している。
(何か疚しい事がある奴は、些細な表情や仕草に出るもんだ)
 草臥れた白衣のポケットに手を突っ込み、教会の敷地にも関わらず煙管をふかしているレイチェルだが……頭の中は驚くほどに冷静だ。
「今回の現象が起こり始めたのはいつ頃? その近辺で変わった事なかった?」
「3週間前から、1週間ごとに既に2人が行方不明になっています。変わったことは、特には」
 神父は険しい表情で首を横に振る。余談だが、その奥。教会の中で綺亜羅がげんなりとした顔をしていたりする。彼女たちの訪問のおかげで、モイルの機関銃のごとく語りから解放されたのだ。
 レイチェルの目には、神父が嘘をついているようには見えなかった。アミーリアは写真を2枚取り出すと、神父へと見せる。
「あとこの2人以外に被害に遭った人たちって居る?」
「いえ、この2人だけ……もしかしたら、3人になるやもしれないが」
 ぴくりとも動じずに答えるモイル。アミーリアは情報をさらさらとメモすると、そっか、と一つ頷いた。
「うんうん、ありがと! この件が終わったらまた遊びに来るね、またねーモイルさん!」
 ぴらぴらと手を振って教会を後にするアミーリア。彼女はこの後、子供たちへ聞き込みをしに行くのだ。
「ええ、お待ちしていますよ……ところで、あなたは?」
「…………」
(ガキを拐う悪い狼の正体は何だろうなァ。人拐いなのか本当に怪奇現象なのか……)
 その場に残ったレイチェルは、煙管の煙を吐き出すと静かに口を開く。
「墓はあるか?」
 微かに違和感は感じたのだが。神父の言葉には、明確な誤魔化しや嘘は感じ取れなかったのだ。
 それならば。葉を隠すなら森の中、死体を隠すなら墓の中……なんてなァ。
「ええ、彼方に。案内したい……のは山々ですが。その、あなたは……」
「ああ……俺は吸血鬼だが信心深く無いンでね、十字架は平気だ」
「なるほど……では、行きましょう」
 神父に連れられて裏手の墓へと場所を移すレイチェル。取り残された綺亜羅はというと……せっせと掃除を始めていた。
(地下室、もしくは納骨堂なんかがあれば……子供を隠すには最適なのじゃ)
 掃除でカモフラージュした調査のようだ。それらしきものは今のところ、見つからないが……。
(絶対に何かあるはずなのじゃ。必ず見つけ出すでのう)

●気に入らない
 その頃、村の中で。
 『反骨の刃』シェンシー・ディファイス(p3p000556)は1人、村人へと聞き込みを開始していた。
「子供が消える前と消えた後。周りの村人は何をしていたか覚えているか?」
「俺も皆も、畑を耕していたよ。いつもと違うことは何もなかった」
「それで構わない、もう少し詳しく教えてくれ」
 違うことは何も無かった、と村人は言うが。これだけの事象が起きているのだ。むしろ怪しいものが無いことのほうが、おかしいのではないか? シェンシーはそう考えていた。
「子供たちはいつもの広場で遊んでいたよ」
「広場か。それはどこだ?」
「ここを真っすぐいった先の左だ。今も数人いるはずさ」
 恐らくではあるが。村人たちが当然のように受け入れているものの中に、怪しい材料があるはずなのだ。そうでなければ此処までてがかりが見つからないはずがない。彼らの当たり前を一つ一つ、客観的に捉え見つめなおしていく。
「子供から目を離さないように注意しろ。またいついなくなるか分からないからな」
「ああ、そうするよ。ありがとう、冒険者の方」
 話を聞く一人一人、こうして声をかけて危機感を煽っているのだ。全員が重大に事を捉えて当たれば、解決が短くなる可能性も上がるだろう。
 しかし、それにしても────気に入らない。
(別に子供の一人、どうなろうと興味はないけれど……獲物が欲しいなら、強いものを求めればいいものを)
 シェンシーは、弱い存在が嫌いだ。
 子供、
 老人、
 獣、
 虫。
 あげるだけでもたくさんある。
 弱いものは嫌いだ、だが……。
(その性根、気に食わない。ひとつ、横槍を入れてやる……)
 強きが弱きを虐げることに関しては、もっと大嫌いなのだ。だから彼女は、子供ばかりを狙う犯人に憤りを隠せないでいた。

●2人のカリスマ 1人目
 少し離れて村の中。こちらにも、村人に聞き込みを行っている者がいた。
「毎回、特定のものを購入していく。そんな者が居たりはせぬか?」
「今のところはいつも通りです。お力になれずすみません」
 一般雑貨を扱う商店で聞き込みをしているのは、『放亡』Svipul(p3p004738)だ。彼女は様々な場所に足を運び、聞き込みを繰り返していた。
「此処までおかしいところは無し。なかなか尻尾を見せてはくれぬな」
 子供一人、ないし二人を拘束していれば消耗品の消費も増えようというもの。特定のものを頻繁に買いに来るだとか、そういう情報があるやもしれぬと調査を行っているのだが……なかなかに尻尾を掴ませてはくれないようだ。しかし、これ以上、被害を出すわけにはいかない。
(善性寄りの我々が来たのだ。これ以上の手出しはさせぬよ……)
 彼女の持つ、強烈なカリスマ性。何もしていなくても溢れ出るそれが村人たちの居住まいを正させていることにSvipulは気づいていない。
 ……次は、あそこにいる商人のところにでも向かおうか。
「ん……? あれは……」
 よく見てみれば、商人には既に先客がいるようだ。『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)だ。
(同じ者に声をかけようとしたのも何かの縁か。行動を共にしよう哉)
 何やら真剣そうな顔で会話をしている。何か進展があったのやもしれぬと、Svipulはスティアと商人の元へ向かうのだった。

●2人のカリスマ 2人目
「商人さんは、最近この村に来たんだよね?」
「ええ、そうですとも」
「どのくらい前から来たの?」
 スティアは、ごく最近この村に現れたという商人に話を聞いていた。ギフトも何もかも全開である。もう、これで何人目の商人だろうか。アイテムに原因を絞って捜査をすると決めた時から覚悟はしていたけれど、思った以上の労力だ。
「ちょうど、3週間前でしたかな。この村に来たのは」
「3週間前……」
 奇しくもそれは、子供が最初にこの村から消えた日と一致する。
「商人さんはその時、誰に何を売ったか覚えてる?」
「勿論! 覚えていますとも。商人ですからな!」
 はっはっは! と商人は胸を張る。昔から堅実さをモットーに行商人を続けているのだ。誰に何を売ったかというのも、きちんと覚えている。
「そうですな。この村に来た日に売ったのは……」
 商人はすらすらと暗唱でもするように、売ったものを列挙していく。傘、櫛、遊び道具、アクセサリー、服、帽子
「そこな2人よ、少し待ってはくれぬか?」
「あれ、どうかしたんですか?」
 商人の言葉を遮ったのは、どこからともなく現れたSvipulだ。
「いや、なに。アクセサリーというのはどんなものかと思ってな」
「十字架ですな。確か、この村の神父殿に売ったはずです」
 スティアとSvipulはふと、顔を見合わせる。恐らく思っていることは同じだろうという確信を持って。村に入ってきた異変として時期が合うのは、この十字架しか存在しないのだ。アイテムが原因だと仮定するならば、だが。
「皆に伝えなきゃね」
 やっとの思いで聞き込みから有力に見える情報を得た二人のカリスマは、夕刻に差し掛かる時計を見ると集合場所の宿へと向かうのだった。
 そうであって欲しいという淡い期待と、それ以上の危機感を覚えながら。

●狂った十字架
 夜の教会。村がすっかり寝静まった時刻に、何かが這いずるような音が響いていた。
 ずり、ずり、ずり、ずり
 教会の床を這う人影。神父モイルである。
「嗚呼、神よ。何故このような試練をお与えになるのですか……!」
 半ば呻くような声で、崇めるべき主神へと怨嗟にも似た声をあげる。
 3週間前のことだ。
 食欲が、湧いたのだ。
 異常なほど強烈な食欲が。
 それも、ヒトに対して。
「神父よ。何をしているのかのう」
「!?」
 誰もいないはずの教会。床を這い苦しむ神父に声をかけたのは、綺亜羅。そういえば今日は人を泊めていたのだったか。
「墓地でな、こんなものを見つけたのじゃ」
「……っ、あぁ……」
 綺亜羅が神父に見せたのは、頭蓋骨。彼女とレイチェルが一日中かけて探し、ようやく墓地の隅から手に入れたものだ。
 そして、複数の足音と。開かれる扉。
「……神父さん」
 スティアがぽつりとそう呟いた。そこにいたのは、事件解決の為にこの村に来ていたイレギュラーズたち。
 床を這う神父と、頭蓋骨。それを見てしまえば、彼らの疑惑が確証に変わるのにそう時間はかからなかった。
 観念したように床へと突っ伏すモイルに近づいたスティアは、彼の修道服のポケットに刺さっていた十字架をそっと引き抜いた。
「っが…!」
 その瞬間。モイルは声にならない悲鳴を上げると、ガクリと床に倒れ伏した。気絶したのだ。
 十字架に嵌め込まれた血色の宝石が、怪しい光を放っている。
「間違いないかい?」
 覗き込んだレイヴンと他の面々に、スティアはこくりと頷いた。食人のアーティファクト。邪悪な十字架である。
「霊魂ガ、言っていル。神父モ、被害者だト」
 大地が呟いたその言葉は重い教会の空気へと吸い込まれ、消えた。
 善も悪も関係なく。その場にいた全員が、そっと死者の霊魂に手を合わせた。
 どうか、安らかに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 怪奇現象の解決、お疲れ様でした。
 皆様の積極的な行動がなければこの先も被害は拡大していたことでしょう。
 様々な角度からの聞き込み、村での探索・捜索、霊魂との会話。
 全員の行動がなければ、モイルは十字架と共に命を失っていたかもしれません。
 お見事でした。

 この後、神父がどうなったのかは皆さまのご想像にお任せします。
 またご縁がありましたらよろしくお願いします。

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