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シナリオ詳細

フィジカルブースト。或いは、迷宮砕破の金の獅子…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●万年紅葉
 深緑には枯れない紅葉があるという。
 その葉は年中、鮮やかな紅色に染まっているのだ。
 けれど、そんな紅葉が最近元気を失った。
 原因は、もみじの真下……地面の下にあるという迷宮遺跡にあるという。
 偶然にも深緑を訪れていた女騎士“リーオ=ワイルド=サバンナハート”は、原因を突き止めるべく迷宮遺跡に潜ったのだが……。

「駄目だな。地図などあるはずもなし……分かれ道も多数。おまけに天井が崩れていたり、土砂が流れ込んだりで道も一部塞がっているじゃないか」
 癖の強い金の髪をかき上げて、リーオは一つ溜め息を零した。
 長身に纏う白金色の鎧。
 背に負った巨大な十字の盾。
 生来の不幸体質のせいか、生まれてこの方幾多の苦難に道を阻まれ続け、しかしそれらを愛用のメイスでもって粉砕してきた放浪の騎士だ。
 この世のあまねく不幸をこの手で打ち砕く。
 目の前に困っている者がいれば、それを救わずにいられない。
 正義の心……或いは、不屈の闘志をその身に宿した女丈夫である彼女も迷宮探索ばかりは不得手。
 で、あるならば……。
「まっすぐ行けば良いか」
 と、そう呟いて。
 リーオはメイスを振り上げた。
 闘気を武器に纏わせて、渾身の力を持って眼前の壁に打ち付けた。
 ドゴン、と地面が激しく揺れて。
 迷宮の壁に亀裂が入った。
「……おぉ? 硬いな」
 なかなか時間がかかりそうだ、と。
 そんなことを呟いて、リーオは再度メイスを振るう。

 朝から晩までメイスを振るい、幾つもの壁を打ち壊し、けれど未だに迷宮の果てには辿り着かない。
 さらには、壁に潜む“何か”によってリーオは全身に無数の傷を負っていた。
 壁を打ち付ける度、それはリーオに襲い掛かった。
傷を負ったまま、休むことなく。
 当然、そんな真似をしていては効率も下がる。時間に比して、壊せた壁の数はあまりに少ない。
「鋭い爪……というよりも、硬い木の根のようだったが」
 切り裂かれた頬に触れ、リーオはそう言葉を零す。
 傷自体はそう深いものではないが、身を裂かれる度に気力が失われる感覚がしていた。
 何度も受けているうちに、体力までも失った。
 平気そうな顔をしているが、実のところリーオの意識は途切れる寸前なのである。
 その攻撃には【苦鳴】や【喪失】【ショック】といった状態異常が付与されていたのだろう。
 鎧に付いた血を拭い、リーオは迷宮を後にした。
「いかんな。私1人では火力が足りない。このまま時間をかけ過ぎれば、紅葉もいずれ枯れててしまうし……申し訳ないが、また彼らの力を借りるか」
 
●迷宮砕破
「リーオさんからの支援要請……ですか。なるほど、目的は迷宮の踏破……いえ、砕破?」
 おや? と首を傾げる花榮・しきみ(p3p008719)。
 その手にはリーオから届いた手紙が握られている。
「迷宮の壁を撃ち砕く手伝いをしてほしい? 迷宮を攻略するのではなく、打ち砕く?」
 確かに、ゴールにまで辿り着くことを目的とするのならまっすぐに道を作るのが何より早いだろう。
 無論、大昔に迷宮を造った誰かもそれをそう言った者が現れることを想定していた。
 ゆえに、壁を壊そうとしたリーオは“何か”に襲われたのだろうから。
「とはいえ、土砂や崩落で道が塞がっているのなら仕方ありませんね」
 手紙に記されている情報によれば、現在リーオは迷宮の2割ほどの位置にまで進行しているらしい。
 残る8割を撃ち砕くのを手伝ってくれ、と依頼の内容を纏めるのならそういうことだ。
「壁に攻撃を加えると、木の根のようなものが襲って来る……と。気力や体力を奪われる感覚がしたというのも気にかかりますが」
 問題はその攻撃範囲。
 リーオが迷宮を脱出するまでの間、木の根は至るところから断続的に彼女を襲い続けたという。
 その攻撃頻度は、迷宮を進めば進むほどに増加した。
 迷宮の奥に潜むであろう“何か”の本体は、よほどに侵入者がお気に召さないらしい。
「以前は本領を発揮しきれませんでしたが……今度こそ」
 ぐ、と拳をきつく握りしきみはそう呟いた。
 リーオの助けとなるために。
 万年紅葉を救うために。
 そして、迷宮に潜む“何か”を討伐するために。
 彼女は行動を開始した。

GMコメント

こちらのシナリオは「フィジカルバスター。或いは、命の天秤と守護するアムムト…。」のアフターアクションシナリオとなります。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4353#replay

●ミッション
地下迷宮の最奥へ辿り着き、万年紅葉を弱らせている原因を排除する。

●ターゲット
・地下迷宮
正確には地下迷宮に救う“何か”
迷宮の壁を攻撃する。迷宮を奥へと進むことで、それは侵入者に襲いかかって来る模様。
リーオによってもたらされた情報によれば、それは硬い木の根のようだったとのこと。
リーオの鎧を傷つけ、皮膚を深く傷つけるほどに硬く鋭い。
迷宮の壁内に潜んでいる模様。

根の鞭:神中範に中ダメージ、ショック、喪失
 複数展開される木の根による殴打。

根の杭:神中単に大ダメージ、苦鳴、喪失
 対象目掛け繰り出される木の根による刺突。



・リーオ=ワイルド=サバンナハート
白金色の鎧を纏った放浪の騎士。
メイスと十字架型の盾を武器とする。
生来運が悪く、行く先々で散々な目に逢ってきた。
そんな運命を回避することは不可能だ、と判断した彼女はそうした不運を打ち壊しつつ前へ進むことに決めた。
今回は万年紅葉を救うため、地下迷宮へと足を運んだ。

フィジカルバースト:物至単に大ダメージ、飛
十字架型の盾、あるいはメイスによる渾身の一撃。


・万年紅葉
深緑にある枯れない紅葉。
樹齢は1000を超えるだろうか。
太い幹に、燃えるように鮮やかな赤の葉。
現在は、何かに栄養を吸われ枯れかけている。
恐らく“何か”は紅葉の地下にある迷宮に巣食っているようだ。

●フィールド
深緑。
万年紅葉の地下に埋もれていた迷宮。
現在、2割ほどの位置まで進行完了している。
崩落や土砂の流入によって道の多くは塞がれている模様。
無事な通路を進行したり、壁を壊しながら最奥を目指すことになるだろう。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • フィジカルブースト。或いは、迷宮砕破の金の獅子…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月09日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
死の痛みを知る者
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
洗礼名『プィリアム』
グリーフ・ロス(p3p008615)
白き不撓
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
オライオン(p3p009186)
元神父

リプレイ

●枯れない紅葉
「万年紅葉、綺麗だな」
 太い幹に手を触れて『終翼幻想』クロバ・フユツキ(p3p000145)はそう呟いた。
 見上げる先では、燃えるような赤の葉が、ひらりはらりと風に舞う。
 ところは深緑。
 とある山中。枯れない紅葉と名高い名所……万年紅葉の根元に集う9人は、視線を交わして歩を地下へ。
 つい暫く前に発見された地下迷宮の入り口は、地に張る紅葉の根と根の間に存在していた。
「もみじさんが弱ってる原因を早く探って助けてあげないとね。美しい紅で僕らを癒してくれる同胞なんだから」
地下迷宮へ潜る寸前、ちらと背後を見やった『森の善き友』錫蘭 ルフナ(p3p004350)は、囁くようにそう告げる。

 万年紅葉が枯れかけている。
 迷宮に原因があるのだろうが、危険でとても調査できない。
 深緑に住まう民たちから、そんな依頼を受けたのはリーオ=ワイルド=サバンナハートという名の放浪の女騎士だった。
 彼女は1人、地下迷宮へと挑み……そして、大怪我を負って引き返す。自分1人では手に余ると判断し、以前より友誼を結んだイレギュラーズを頼ることに決めたのだった。
 そうして集まったメンバーの中には、ダンジョン探索の玄人である『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)も含まれる。
 リーオの先導で迷宮を進むゼフィラはしかし、どこか複雑な表情を浮かべているようだ。
「冒険家の端くれとして、迷宮探索は望む所なのだけれども……壊すのは正直遠慮してもらいたかったな。見なよ、この壁……文字が刻まれているようだけど、こうも粉々になっていては読めないじゃないか」
 はぁ、とため息を零し、リーオが壊した壁の欠片を手に取った。
 地下迷宮の壁の一部は、既にリーオが打ち壊してしまった後だ。万年紅葉が枯れる原因が迷宮深奥にあると睨んだリーオは、最短距離でそこに至るべく、邪魔な壁をメイスで殴り壊しながら進行していた。
「そうは言っても、通路は土砂で埋もれているわけだし……崩壊している迷宮の突破に、攻撃してくる奇妙な植物と……もたもたしている余裕は案外無いかもだよ」
 さて、一体最奥に何がいるのやら。
 なんて言って『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は武器であり、自身の本体でもある大鎌を肩に担いだ。
 サイズの見据えるその先には、土に塗れた岩の壁。
 メイスに打たれ、一部が欠けた壁を覆うように黒い木の根が蔓延っている。
「リーオの話では迷宮全体に何かが潜んでいるとの事だけど……」
「地下迷宮の何か、か。かの神話の怪物ミノタウロスを彷彿とさせるね」
 周囲の様子を観察しつつ『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)と『貴方の為の王子様』ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)は言葉を交わす。
 そんな2人の間を抜けて、金の髪をした女騎士リーオ=ワイルド=サバンナハートが、メイスを担いで前に出た。
「相手が何者であろうと構うものか。戦力は十分。回復役もいる。迷宮探索の専門家もいる。そして私の闘志も十全に満ちた。ならば何を恐れることがあるだろう」
 と、そう告げてリーオは高くメイスを掲げる。
 その腕には隙間なく包帯が巻かれていた。闘志が満ちたとは言うものの、先の探索で負った傷は、まだ癒えきってはいないのだ。
「道を阻む壁ならば、殴って壊して進めばよいのだ!」
 リーオは吠える。
 地下迷宮に響く彼女の大音声に、思わず『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)は耳を塞いで眉をしかめた。
 そうしてリーオが、力任せにメイスを振るい、分厚い壁を打ち据える。
 衝撃。轟音。砕けた岩の破片を手で払いつつ、グリーフはリーオの前に駆けだす。
 リーオが壁を殴った瞬間、それを覆っていた根の一部が脈動し、彼女目掛けて襲い掛かった。グリーフはその身を盾に根の攻撃を受け止めて……。
「っ……なるほど。気力を奪われた感覚……樹を弱らせるとも聞いていますし、もしやこれはヤドリギのような寄生植物の類、でしょうか」
 グリーフの白い肌に浮かび上がった殴打の痕跡。
 じわりと滲んだ血は僅か。けれど、根によって与えられた衝撃は、見かけ以上に大きなダメージをグリーフに与えていた。
「進める道はそのまま進み、行き止まりの時等その時の状況により壁を破壊しながら進行……という方針が良いのではないか?」
と、そう告げながら『元神父』オライオン(p3p009186)はグリーフへと回復術を行使する。
 降り注ぐ淡い燐光が、グリーフの腕に集約すると、肌に滲んだ殴打の痕と血の雫を、あっという間に癒して消した。
 その様子を見て、リーオは満足そうに笑った。
 それから彼女は、再度メイスを振り上げて、腰を低く沈めて構える。
「おぉ、助かったぞ、グリーフ! よし、その調子で私を守ってほしい。その間に私は、壁を撃ち砕いてしまうからな!」
「ちょっ、ま、待って待って! 頼むから余計な所まで壊さないでくれよ……? 遺跡の調査は慎重にやりたいというのに」
 再度の一撃を見舞おうとするリーオの前に、ゼフィラは慌てて割り込んだ。
 根の反撃を受けながら、壁を壊して進むにはまだまだ先が長すぎる。
 そして何より、「壁を打ち壊して進む」などという、歴史に対する冒涜みたいな攻略法を、ゼフィラは到底認められない。

●地下迷宮
 先頭に立ち迷路を進むゼフィラへ向けて、リーオは胡乱な視線を投げた。
 手元の紙に通ったルートを記載しながら迷宮を進むという行為は、どうにもリーオの性に合わないようである。
「本当にこれで最奥まで辿り着けるのか? これだけ頭数がいるのだ、総がかりで壁を壊した方が早いのではないか?」
「途中、道がふさがっている場合はそれも仕方ないが……まぁ、私に任せておいてくれ。迷宮攻略のスペシャリストとして、全力を尽くそうじゃないか!」
 壁に手を触れゼフィラは答える。
 差し掛かった分かれ道で、ほんの一時立ち止まり、彼女は足を左へ向ける。
 その後ろに続きながら、なおもリーオは首を傾げる。
「壁をどんどん破壊していきたいところだが“急がば回れ”っていうだろう? まっすぐ突き進むだけが必ず正しい道にたどり着くとも限らない」
 今はゼフィラに着いて行こうと、クロバはどうにかリーオをなだめた。
「可能な限り消耗は抑えるべきだし、いざとなれば壁を壊すのを俺も手伝うさ」
「既に壁2枚分は先へ進めたはずだからな。それに……ほら、出番だ、リーオ」
 通路の先を指さして、ゼフィラは苦笑を浮かべて告げた。
 ゼフィラの指さした先にあるのは、崩れた天井と壁の残骸。通路が塞がれている以上、正攻法ではここから先へは進めない。

 一閃。
 焔を纏った太刀を抜き、クロバは壁を斬り付ける。
 深い裂傷が壁に刻まれると同時、地面や天井、壁の内から黒い木の根が溢れだす。
「音か、振動か……どうやってこちらを認識しているのやら」
 腕に付けたガンブレードで根を斬りながら、クロバは数歩後ろへ下がる。そんな彼を追うように、地面を這って根が迫る。
「単身で此奴らを相手取るのは面倒だな。だが、支援は任せておけ、お前達の懸念は俺が潰す」
 そう告げたのはオライオンだ。
 掲げた杖に光が灯り、通路を白に染め上げる。囁くように彼が紡ぐは、英雄たちを讃える詩歌。 その声と、そして閃光によって仲間たちの体力が増す。
 おぉ、と感嘆の声をあげるリーオの背中をオライオンは軽く押し、壁へと向かって前進させた。
「存分に戦って来い」
「うん。ありがたいな!!」
 大上段にメイスを構え、リーオは木の根の間を縫って駆けだした。
 リーオの接近を察知したのか、木の根は一斉に彼女目掛けて襲い掛かるが……。
「おっと、そうはさせない。ほら、新鮮な養分が欲しいんだろ? それなら、ここに鮮やかな黄色の薔薇が咲いているぞ!」
 軽い足音。
 軽やかなステップ。
 木の根の前に飛び出したアントワーヌを包むように、黄色の薔薇の花弁が散った。ひらりはらりと舞う花弁に酔うように、木の根の狙いは定まらない。
 否、木の根の蠢くその中をアントワーヌが駆けているのだ。
 猛攻を仕掛ける根はしかし、アントワーヌに届かない。地面より伸びた茨の蔦に絡めとられ、根には無数の傷が刻み込まれていった。
「おぉ、やるな! ここまでお膳立てされて、成果を残せないようでは余りにも不甲斐ないというもの」
 決めてみせよう、と宣言し、リーオは地面を蹴って跳ぶ。
 体ごと投げ出すように跳ねた彼女は、加速を乗せたメイスの一撃を壁目掛けて叩き込む。
 地面が揺れるほどの轟音。
 その一撃を浴び、壁は脆くも砕け散る。

 先頭を進むゼフィラの肩に、ウィリアムはそっと手を乗せる。
「ん?」
「この先、罠があるみたいだけど……」
「あぁ、罠対処のスキルか……。帰路も考えると解除した方がいいのだけれど」
「稼働している罠を放置しておくのはまずいか。では、解除を試みよう」
 待っていてくれ、とそう告げてウィリアムは1人、通路を進む。
 ウィリアムが罠を解除する間、一行はその場で待機することになる。周囲の警戒を行いながら、ルフナはふとリーオを見上げて、問いかけた。
「そういえば、君は罠に嵌ったりはしなかったの?」
 小首を傾げ、疑問を口にするルフナ。
 リーオは僅かに思案した後、静かに首を横に振る。
「無かったな。あ、いや……矢が飛んでくることはあったが、あれは罠か?」
「……罠だと思うよ」
 ほら、とルフナが指さした先では、ウィリアムが地面にしゃがんで何かをしていた。
 見れば、地面に張られた極細の鉄線を慎重に切除しているようだ。
 【感覚過敏】によって強化されたルフナの視力は、薄暗い中でも鉄線の繋がる先をしっかりと視認出来ていた。
 伸びた鉄線は壁の上部に繋がっていた。
暗がりの中には、壁に埋め込まれた鋼の鏃が覗いている。
「気付かずに鉄線を踏めば、矢が射掛けられる仕組みみたいだね」
「なるほど……あれは罠だったのか。腕に矢が刺さる程度、よくあることなので気にも留めていなかった」
 気を付けねばな、と腕を組んでリーオは深く頷いた。
 フィジカルに優れた彼女のことだ。矢が数センチ刺さる程度は、かすり傷のようなものと、そう認識しているのだろう。
「……リーオの話を聞いていると、邪魔するものは全て薙ぎ払いながら進むってのも悪い手じゃないように思えてくるな」
 切除した鉄線を通路の端に放り投げ、ウィリアムはそう告げたのだった。

 迷宮を進み、時には壁を撃ち砕き、そうして一行が辿り着いた先にあるのは黒く分厚い壁だった。
 行き止まりを前にして、ゼフィラは唖然と立ち尽くす。
「おかしいな。方角や、深度から考えても、ここが迷宮の最奥に違いないはずなんだが」
 ちらと視線をルフナへ向ける。
 ルフナは無言で首を横に振っていた。ルフナの【感覚過敏】をもってしても、隠し通路の類は見つけられないようだ。
「ここが最奥だっていうなら、ちょっと俺に任せてもらっていいかな?」
 と、そう言って歩み出たサイズは、荷物の中から大ぶりのハンマーを取り出した。
「この壁の向こう側が妖しい気がしてるんだよね。修理スキルを使って直すべき所……逆に言うと壊れやすい所を見つけて、壊してみよう」
 ガツン、とハンマーを壁に打ち付けながらサイズは告げる。
 金属と岩がぶつかり合う硬質な音が、地下迷宮に響き渡った。
 やがて……。
 コォン、と。
 抜けるような音が響いた。どうやら壁の向こう側に空洞があるようだ。
「あぁ、そこを砕けばいいわけだな」
 メイスを掲げ、リーオが1歩前にでる。
 サイズは鎌を、クロバは太刀を手にするとリーオに並んで壁に向き合い……。
 その、瞬間。
「何か……地響き? いえ、これは……」
 地面が揺れる。
 その変化をいち早く察知したのは、ルフナとそしてグリーフだった。
「下がって!」
 と、ルフナが叫んだその瞬間、グリーフは壁に向けて駆けだした。
 砕けた壁の破片を散らし、現れたのは無数の木の根。
 がむしゃらに振り回される木の根によって、回避が遅れたクロバが地面に押し倒される。
 残る2人を庇うべく、両腕を広げ立ちはだかったグリーフの、腹部を木の根が刺し貫いた。
 
●命を吸う樹
 医療服に血が滲む。
 口の端から血を零し、グリーフは腹に刺さった木の根を掴んだ。
「生憎と……【必殺】でなければ、死ねませんので」
 強引に木の根を引き抜けば、夥しい量の血液が腹に空いた穴からごぼりと溢れ出す。
「……くっ。隠れていないで、出てきなさい!」
 血だまりの中、地面を踏みしめグリーフは力任せに木の根を引いた。
 グリーフに向け、ゼフィラは慌てて回復術を行使する。零れた燐光がグリーフの身体に降り注ぎ、流れ続ける血を止めた。
「く……抜かった」
 木の根に打たれた頭部を抑え、クロバはゆっくりと起き上がる。
 そんな彼の頭の上を、ウィリアムの放った紫電が駆けた。
 壁の向こうの暗闇の中、紫電に射貫かれ何かが蠢く。
 白に染まる視界の中に浮かび上がったシルエットは、例えるのなら巨大な球根といったものだ。 その先端からは、幽かな燐光が散っている。
「これが“何か”の正体か……」
 散った燐光は、おそらく吸い取った生命力だ。
 よくよく見れば、舞い散る燐光はまるで花のようだった。
「……こいつの正体も詳しく知りたいけれど、まずは遺跡を荒らした罰を受けてもらおうか」
 そう告げたゼフィラは、コートの内から拳銃を抜く。
 その指が引き金を絞り、撃ち出されたのは精神力によって形成された魔弾だ。
 弾丸が球根の中心部を撃ち抜いた瞬間、伸びた木の根が激しくのたうつ。木の根を掴んだグリーフと、前進していたリーオの2人が根に打ち据えられて地面に倒れた。
 がむしゃらに振り回される木の根によって、倒れた2人は何度も激しくその身を殴られ……しかし、2人は立ち上がる。
 よくよくと目を凝らして見れば、その身を淡い燐光が包んでいるのが確認できた。
「僕がいる限り皆を倒れさせることは無いよ。安心して」
 いつの間にそれは現れたのか。
 緑の木々と、風のさざめき。
 ルフナの故郷“澱の森”の顕現である。
「木の根を刻め。ダメージを受ければ、本体はそれを引き戻す」
 そう告げたのはオライオンだ。
 後衛から木の根の動きを観察していた彼は、木の根の行動パターンをおよそではあるが読んでいた。
 その指示に従い駆け出したのはアントワーヌだ。
 暗がりの中、走るアントワーヌの姿がぶれる。
 踊るように木の根に迫ったアントワーヌは、懐から1枚の符を取り出した。
「悪いけれど、君はここで枯れ果てる運命なのさ。それが望まれた結末(ハッピーエンド)なのだから!」 
 音もなく。
 式符を木の根に押し当てて、アントワーヌは素早くその射程の内から退避した。
 残された符より現れたのは、闇よりも濃い黒色をした蛇だった。鋭い牙を蛇は木の根に突き立てた。

 木の根が激しく地面を叩く。
 その後を追い、リーオとサイズ、クロバは駆けた。
 ダメージを受けたことにより、木の根は防御の体勢を取る。自身の身体に、木の根を巻き付けたその姿は、殻に籠った貝にも似ていた。
「ならばその殻、刻ませてもらう。悪いとは思うが、美しいと感じれるものを壊すのだけは見過ごしてはおけなくてな」
 姿勢を低くし、球根のもとへ近づくクロバ。
 一閃。
 刀が木の根を裂いた。
 二閃。
 刻まれた木の根が、地面に落ちる。
 体を回転させるようにし、クロバは敵に乱舞を見舞う。斬撃の嵐に飲み込まれ、木の根は次々地面に落ちた。
 無想刃・掠風花。
 ”剣鬼”クロバ・フユツキの編み出した剣技の名である。
 さらに……。
「万年紅葉を枯れさせるわけにはいかんのでなっ!! 貴様はここで駆除させてもらう!!」
 木の根の殻が薄くなったその場所へ、リーオはメイスを振り下ろす。
 いかに硬い木の根といえど、リーオの殴打を浴びてしまえばとても無事ではいられない。
 砕けた木っ端が辺りに散って……。
「これで目的達成だな!」
 振り下ろされたサイズの鎌が、球根に深く突き刺さる。

 戦闘の余波で崩れかかった最奥の部屋を、サイズは慌てて補修する。
 そんなサイズを一瞥し、ゼフィラは視線を頭上へ向けた。
 そこにあるのは、天井を覆う太い木の根。どうやらそこは、万年紅葉の直下のようだ。
「なるほど。万年紅葉に行くはずの養分を、こいつが横取りしていたのか」
 と、そう呟いて。
 活動を止めた球根の欠片を、ゼフィラは拾い上げたのだった。

成否

成功

MVP

黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風

状態異常

グリーフ・ロス(p3p008615)[重傷]
白き不撓

あとがき

お疲れさまでした。
無事に迷宮は攻略され、万年紅葉を枯らす元凶を排除しました。
依頼は成功となります。

この度はご参加ありがとうございました。
此度の依頼、お楽しみいただけましたでしょうか。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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