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シナリオ詳細

ごはんたべると眠くなる事象の犯人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねむい」
 ある幻想種は瞼を半分にしながら呟いた。
 時刻はお昼を少し過ぎたぐらいだ――目の奥が暖かく、脳髄が蕩けそうな感覚。
 つまり、眠い。マジで眠い。お布団に行ってしまいそうだ。
「おかしい、ご飯を食べたら眠くなるのはよくあるけれど……それにしても妙に……」
 ねむい。
 おかしい、いや今日一日だけの事であれば左程気にする事もないのだが……ここ一週間ほどずっとこうだ。ご飯を食べた後からどうしても眠く、作業が手に着かない。どうしてこんなに眠いのだ……いくら何……でも……
 あ、あぁ~だ、駄目だ~

「ちょっと、ちょっとだけ横になろう……ぐぅ」

 遂に誘惑に抗いきれずお布団タイム。
 ご飯を食べた後すぐに寝ると深緑ミルク工房の牛になる――つまり太るとはよく言われるが、眠いんだから仕方ない。大丈夫、一時間だけ、一時間だけさぁ……ぐぅ。
 あっという間に深い眠りに誘われる幻想種。
 だからこそ気付かない。そんな様子を窓から覗いていた存在がいた事に。
「…………」
 その存在は窓を開けてゆっくりと中に入って来る。
 足音も立てずにゆっくり、ゆっくりと。そして眠る幻想種の――傍に寄って――


「これはイレギュラーズの皆さんようこそ! さぁお入り下さい!」
 深緑。その首都ファルカウの一角に招待されたイレギュラーズは歓待を受けていた。
 目の前に並べられているのは食事だ――遠い所からよくぞお越しくださいましたと丁寧なあいさつを受けて、ひとまずは旅の疲れも癒すべく好意に甘んじようと口を付ける。
 食事も半分程進んだ頃だろうか、誰かが切り出した――依頼とは? と。
「ええ、その依頼なんですが……まずはこちらをご覧ください」
 言って、示すは空中だ。
 幻想種が魔法陣を紡いだかと思えばノイズが走りながらも映像が出てきた。これは――?
「これは先日の私の部屋の様子です。ちょっとありまして、ええ。部屋の中に記録魔法を巡らせていたんですが……あ、出てきました見てくださいここ! ここ!!」
 指を指し示す。さすれば眠っている彼女に窓から近付く不審な影が一つあった。
 あれは――人影――?
 いや違う。
 なんだ? 人ではない。なにか、こう犬ぐらいのサイズの……
「これはですね、バクっていう妖精です。人の夢を食べて生きるって言う……ご存知ですか?」
 聞いた事があるような無いような。よくよく見ると姿はオオアリクイにも似ているか。
 ともあれバクは窓から侵入してきて、幻想種に近寄り――

 頭をぺしぺし叩いている。
 そんでもって起きないことを確認したら頭にしがみついてぺしぺし叩いている。
 その後ろから更に数匹のバクたちが窓から侵入してきて彼女に纏わりついたかと思えば。
「……一緒に寝てる?」
「そう! そうなんですよ! 彼らはああやって対象に近付いて夢を食べる妖精なんです! ついでに睡眠の力を司ってもいまして……ここ数日お昼ご飯食べた後に眠くなるのは彼らが原因なんです!!」
 いやまさかそんなバカな。考え過ぎでは――
 そう思った瞬間、イレギュラーズ達の瞼が重くなり始める。えっ?
「ああこれは彼らが近いですね。彼らの睡眠魔法というかなんというか、無意識的に発動してる能力らしいです……と言う訳でですね皆さんにお願いしたいのはバクさん達を捕まえて、お昼ごはんの後に来るのはやめて欲しいなって、ちょっと怒って欲しいんです。ええ。これじゃあ私の仕事が進まないんですよ!」
「き、貴様嵌めたな! その為に食事を予め用意して……!!」
 うう眠い。滅茶滅茶眠い! 確かにこれは異様な眠気だ。
 なんでも彼女が言うにはこの所為で生活リズムも崩れて困っているんだそうだ。バク達自身は悪意のある妖精ではないらしく、ちょっと怒れば聞いて止めてくれるか夜にでも出現するようになってくれるだろうが……眠っていてはそれも出来ない。
 なのでイレギュラーズの諸君にお願いしたい。眠気に抗って! 頑張って!!
「彼らは眠い人だらけの空間でないと出てこないので……後は宜しくお願いしますね!
 私は冬の祭典に向けての『仕事』で忙しいんです!! ええッ!!」
 なんだ冬の祭典って! しかし眠気が酷くなれば身体も動きにくい。
 ああ床と友達になってしまう~お、おのれ~!! ともあれこの眠気をどうにかせねば……!
「こ、こんなに眠いのに寝れないなんて――ある意味地獄だな!」

GMコメント

 ごん、お前だったのか。ご飯を食べた後に眠くなってたのは……
 以下詳細です!!

●依頼達成条件
 バク達を全て捕まえて昼には出てくるなと説得する事。

●フィールド
 とある幻想種の自宅です。居間で歓待されていたのですが罠でした!
 ご飯を食べた後はものすっっっっっごく眠くなります。
 マジでやばめのレベルで眠くなります。でも眠っちゃ駄目です。

 暫くするとバク達が部屋に入って来るのでなんとかその後彼らを逃げられないように捕まえてください。

●バク×4匹
 いたずら好きの妖精です。すごい大雑把に外見を説明するとオオアリクイに似てます。
 ご飯を食べた後に眠くなるのはコイツらの仕業です。
 まず皆さんが眠くならないと出てこないので、眠くなってください。
 でも眠っちゃ駄目です。(重要なので二回目)
 皆さんそれぞれの工夫によって眠らないように頑張ってください。痛みによって眠気を妨げたり、手のツボを突くとか……なんらかのアイテムを使用してみるなど、色々方法はあると思います。

 バク達は眠ってる人に近付いて頭をぺしぺししてきます。(ダメージはありません)
 眠ってると確信するとすり寄ってきて一緒に眠ろうとしてきます。
 抱いてると滅茶苦茶心地よい暖かさがあるので(眠気的に)危険です。
 捕まえようとするとビックリして部屋の中を逃げ回りますが、足が小さいのであんまり早くはありませんし、時々転びます。

●睡眠
 HP、AP、FBを除く全てのステータスが滅茶苦茶減少する上に動きが緩慢になります。
 睡眠不要を活性化しているとその効果を大きく減少させる事が出来ます。が、この依頼難易度はイージーですので無ければいけないというモノではありません。他なんらかの工夫によって減少させる事も可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ごはんたべると眠くなる事象の犯人完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年11月30日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
クロバ・フユツキ(p3p000145)
背負う者
ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
アルヤン 不連続面(p3p009220)
未来を結ぶ

リプレイ


 めっちゃねむい~~くそぉ~~~
「羊が一匹……羊が二匹……あ、ギルオスがぱんつを一枚くわえ―――ハッ!
 くそ、だめだ。以上に眠い……だが寝たら、寝たらギルオスの変な夢が……」
 ある意味かつてない程の戦いだと『終翼幻想』クロバ・フユツキ(p3p000145)は思考していた。このまま寝たらまたギルオスの変な夢を見てしまうかもしれない……いやもしかたら次はリリファのおむねが少しずつ大きくなるとか言うあり得ない夢かもしれないけど……ムキャ?
 ともあれなんとか寝ないように頑張るしかない、でも。
「うう……食後の昼寝は、俺にとってはとても大事なものだ……だって、紫月とゆっくりできる最高の時間だよ? それなのに寝ちゃダメなんて……うぅ地獄だ……ちょっと、ほんのちょっとだけでいいから眠っちゃ……」
「んー……お昼寝、本当に楽しんじゃだめ? だめかぁ……怠惰なのも悪くないよ……? ほら、小鳥も眠そうだし……やっぱりだめ? そっかァ……」
 『戦場のヴァイオリニスト』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)と『闇之雲』武器商人(p3p001107)も既に敗北寸前であった。正直このまま全力に怠惰で過ごしたい所なのだが……そうもいかない。
 やむなし。眠気覚ましと言えばこれであろう。そう――コーヒー!
 正確にはそのカフェインであるが、脳を無理やり覚醒させるのだ。う~んいい香り。
「んー、コーヒー美味しい……ああ、でも駄目だね……これだけじゃ足りない……」
 うららかな昼下がり、ミルクと砂糖を適量落としたコーヒーを口に運ぶのは『砂漠に燈る智恵』ロゼット=テイ(p3p004150)だ。窓の外の深緑ならではの緑豊かな景色や鳥の声も相まって、中々幸福感のある時間――だからこそ。
「眠くなるねぇ……うん……」
 日向ぼっこに最適な時間だ。良い景色、気候も良く、冬だが今日は比較的暖かい。
 瞼を閉じれば緩やかな風を頬に感じて――ダメダメダメ寝てしまうこれホントやばい。
「あーご飯美味しかったっすねー。でもあれがやばかっ……ん?ㅤはい、食べたっすよー。美味しかったっすー。え、どうやって食べたか? いやだから普通に」
 普通に……? 『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)の一体どの辺りに口があるのか非常に興味深い事象であるが、しかしアルヤンもまた眠気には抗えぬ様であった。故にロゼットと同様に珈琲を呑んで眠気飛ばしを――
 待て! コーヒーがいきなり消えてるぞ!! えっ、なにそれどうやって飲んでるの!? ファンカバーの辺りで消えてるんだけど、接種出来てるの!?
「消えてないっすよー、飲んだんっすよー……ふぁあ……」
「んんん……ニルは、もともとねなくても大丈夫なのですけ、ど……んんんん……まぶたが、重たいよう、な? とっても、ふしぎなのです……んん……」
 実に摩訶不思議だが珈琲の味をちゃんと感じているようなので実際に飲めているんだろう……更に『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)も普段は感じぬ眠気を確かに脳髄に感じており――不思議な感覚に包まれていた。
 ねむい、とはこういう事なのだろうか。
 瞼を閉じてゆっくりとしたくなる感覚……うっかりと動作も停止してしまいそうだ。しかし今は依頼の最中、そういう訳にもいかずニルもまた珈琲とやらを口に運んでみる。
「お砂糖? いれるのですか? え、ミルクも人によっては……?
 いろんな飲み方があるのですね。混ぜて飲むものなのでしょうか……」
 とりあえずはそのままブラックで飲んでみたが――実際の所味がおいしいかどうかはよく分からない。判別がつかないのではなく単純に『分からない』のだ。ニルにとっては味覚が常のモノではないから。
 ――さておきこのようにして各々に眠気への対策を講じていた。
 一番多かったのは珈琲だろうか。やはりカフェインと眠気飛ばしとしていの一番に思いつく手段であり。
「はははぁ……全く、美味しい食事を頂いたと思ったら罠(?)だったとはねぇ……でも件のバクさん達はお昼ご飯を食べないと来ないみたいだし…………ふわぁぁ……結構つらい依頼だよねぇ……んぐぅ……」
 そして『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)もまたカフェイン――と言っても珈琲ではなく深緑茶であったが――を取っていた。
 いつもより少し濃いめに。茶の味とカフェインが出る様に。
「うぅ……コーヒーは、ちょっと、その、苦手だから……お茶を……貰ってもいいかな……?」
「あぁ……もちろんだよ……うん、どうぞぉ……いい味が出てるよぉ……」
 次いで『不退転』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は津々流より深緑茶をおすそ分けしてもらい、一口ごくりと飲んでみる。いつもより濃く入れているからかこれも苦く感じるが――しかし珈琲よりはマシだ。うう、くそぅ依頼主め~!
「こんな騙す様な事しなくても、依頼したいならちゃんと話してくれたら良かったのに……そうしたらもっと、こう……心構えと言うか……対策と言うか……あ、だめだ眠い、余計に眠く感じるホントねむい」
 お茶を飲んでも抗えぬ眠気。知ってても同じだっただろうとは思うのだが、そういう事じゃないんだ気持ちの問題なんだ! それは! 違うんだ!
 く、くそう。とにかく眠気があるという事はバクも近い証。
 彼らを捕まえてちょっと怒って早く……眠りたいものである……ぐぅ。


 カフェイン君が大忙しであるが、しかし飲み物だけでは限度があった。
 珈琲の類は有効であるが、しかし結局嗜好品の類だ。明確に医薬品的要素がある訳ではなく……だから――うん。
 純粋な『痛み』というのもいいだろう。つまりは脳に刺激があればいい訳だ。
「だからと思って持ってきたけど……ははは、間違えてカニのハサミを持ってきてしまったみたい。元々はサボテンを持ってくるつもりだったんだけどなぁ……かにかに~。かにかにに~」
 さては津々流、相当眠いな!?
 指先をハサミの間に入れてちょっと力を籠めれば痛みが走る。勿論誤って怪我のレベルには達しないように手加減しながら、だ。何度かタイミングを変えて指を挟んで、イテテテッ。
「うう……サボテンならここに……ここにあるよ……いったいッ!
 あ、しまった、頭から突っ込んじゃった、いた、いたたたたッ!」
 悶えているのはシャルティエだ。
 滅茶苦茶眠くて、目の前に置いていたサボテン――に、うっかり額から突っ込んでしまったらしい。強烈な痛みが一瞬脳を覚醒させて、しかしやがて暫くするとまた脳を温めるかのような穏やかな熱が彼を包む。
 早く、早くバク達よ来てくれ~早く眠らせてくれ~!
「ふふふ、しかし痛みとは良いアイディアだね……うん……この者もちょっとやってみようかな」
 同時。欠伸を噛み殺しつつ荷物を漁っていたロゼットが取り出したのは――大きめのクリップだ。
 元々はおせんたくもの用に買ったやつである。確か安売りしてた日だったようなそうで無いような……とにかくバネがしっかりしていて、これが在れば風が強い日でも安心の一品だ。
 これをだね、そうだよ? そんな風にも耐えうる一品をだよ?
 尻尾に挟んだらどうなるのかな?
 ――悪魔的発想だ。そんな事を試してはなりませんと己が天使が囁いている。
 でも『一回ぐらいなら大丈夫だよ』と悪魔が天使をシャイニングウィザード。そのままバックドロップでKOしている光景が瞼の裏に広がっていて――やっぱり眠いなロゼット?
「ちがうよ、これは依頼失敗はよろしくないから……そう、これは仕方のない事だから……」
 尻尾をがっと掴み先っちょにクリップを寄せて――バチンと――

「ミ””ッ」

 凄い音がした瞬間凄い声が発せられた。想像の三倍ぐらいやばかった。
 手が所在なさげににぎにぎされて――ハッ! あれは伝説のエアにぎにぎ!
「ミ””……ミ””ッ……!」
「めっちゃ変なポーズで痙攣してるけど大丈夫なのかよマジで。
 まぁ俺はもう少し珈琲で粘らせてもらうが……」
 言うはクロバだ。珈琲をまた一口運びつつ、彼の対策は――また別の方面。
「はははしかしこの珈琲上手いな。いやぁ彼女の好みがコーヒーらしくてね。紅茶もいけるんだけど最近これに合わせた菓子を用意するようになってさぁ。マドレーヌとか丁度の味わいでいいんだよ。あ、それから微糖ならがっつり甘くして砂糖たっぷりなら少し甘さ控えめにしたりねぇ~~! 色々工夫のし甲斐があってさ~~! 最近めっちゃ淹れ方にも凝る様に~~!」
 とにかく喋り続ける事である――意味のあるなしは関係ない!
 口が動き歯が不規則に接触する事により脳への刺激となるのだ。そして喋り続けている間は意識が保たれているという事の証左でもある!
 ……それでもいよいよやばくなったなら仕方ない。コイツの出番か。
「……このアヒージョ、だな」
 ご覧ください目の前に用意したのは熱盛アヒージョ。
 これを食べ――いや指を突っ込むだけでも良い。赤唐辛子が強烈な刺激となるだろうし、なんなら被ってしまえばパンドラ消費の代わりにきっと睡魔をぶち殺して……クロバ! 発想がやばいぞ、寝ろ! いや駄目だ寝るな!!
「紫月……まだ起きてる……? あっ、紫月……寝ちゃダメだよ、っ……」
「んん……? 何を言ってるんだい小鳥……小鳥の方こそ寝ちゃってるんじゃないかなァ……? ほら、今にも瞼が閉じそうじゃないか……」
 一方でヨタカと武器商人は互いにカバーし合いながら抗っていた。
 ヨタカは珈琲――は、砂糖とクリームをたっぷりと入れる派なので、今回は濃いめの紅茶にしている。砂糖を入れてしまうと血糖値の問題でまた眠くなってしまうからだ……と、加えてメントール入りのリップを鼻の下に塗ってみよう。
 なんでも練達の女子高生の間ではこういう眠気覚ましの方法があるらしい。いわゆるミントガムのスーッとする感覚が味わえるのだ。武器商人が眠そうであればと肩を揺すって起こそうとすれば、武器商人は武器商人でまだ起きてるらしい。
「やぁ。これでどうかな……小鳥、起きよ?」
 冷えた濡れ手ぬぐいで顔を拭ってくる。冷たい感覚が肌より伝わり、やんわりとした覚醒が齎されて――
「よっしゃ~皆さん、眠くなるのは二酸化炭素が原因ですよ~窓を開けて換気して、ついでに涼しい風を起こして頑張りましょうね~まぁ寒いかもしれないっすけど、そこはご愛敬って事で」
 直後。アルヤンの冷気テロが勃発した。アルヤン、貴様――!!
 発生する風――穏やかな気候とはいえ、流石に冬に風が生じれば体感では寒さを感じるものである――やばい、めっちゃ寒い。死んでしまいますやめてください!
「大丈夫っす、頑張ればなんとかなるっす」
「だめ、だめですよ、みなさん……もうちょっと、もうちょっと頑張りましょう~」
 更にニルも眠たげな者達の頬を引っ張り、時にこしょこしょ、時にぺちぺちと叩いて起こす。そろそろバク達が来るはずだ……もうちょっとの辛抱だからと――
「――あっ」
 その時ニルは見た。
 窓の外に――こちらを覗くかのようにバク達が集まっていたことを。


 え、寝てる? 起きてる?
 寝てるんじゃない? どうする、行く?
 バク達の間で交わされる秘密会議――ひそひそ話す様子はあら可愛い。
 意を決して窓を開けて入って来るバク達。その瞬間だけ寝たふりをするイレギュラーズ達――そして。彼らのぽてぽてとした足音が全て部屋の中に入れ、ば。
「うぉー今っす捕まえるっす~この機を逃せば我々は寝てしまうだけっす~」
 アルヤンのコードが彼らに襲い掛かった。
 彼は10m程己がコードを伸ばす事が出来るのだ――ッ! 眠いからかあんまり速度は速くないが、確かにバク達の方へと向かうコードは彼らの逃げ道を塞いで。
「つ、捕まえた~! あ、くそう、なんだこれ暖かい。めっちゃあったかい。
 嘘でしょこれ、なにこれ天国……?」
 わー! と逃げ出すバク達。その一匹をシャルティエが捕まえるのだが――指先から伝わって来るだけのもふもふ感覚でもうアウトになりそうだった。ぎゅっとしたら即死しそうだったので慎重に捕まる形を取ったのだが、なにこれやばい。
「ふー、ふーっ! 君達とっ捕まえないとクリップ外せないんだよねえ……!?
 分かるよねぇ……! この痛み、この苦痛、この、えーと、とにかくあれそれ……!」
 更に回り込むはロゼットである。痛み(*原因自分)によって大分悪くなった人相はバク達を怯えさせている。きゃー! という感じで互いに抱き合うバク達。八つ当たり気味のロゼット。というか流石に一瞬で眠くなる事はないだろうし、外してもいいのでは……!?
 直後、ロゼットダッシュ。
 四つ足ムーブで体からバクに突っ込んでいく――猫だこれ! バク達は必死に逃げる動きを見せて。
「に、逃がすかぁ。魅せてやるぜ俺の熱盛バーニング! 震えるぞハートッ、これが俺のイレギュラーズ魂――あ”あ”あ”あ”あ”ッ――!!」
 更にクロバが瞬時の覚醒。熱には熱を。熱盛をもってしてバクを制す! ついに手を出した熱盛アヒージョの効果がクロバに眠気の熱とは別のやべー熱を灯してバク達を追いかけさせる! このリアクションが続く限り、彼は無敵なんだよぉおお!
「バクさん~バクさん~……こっちだよおいでおいで~」
 ぴええと鳴き始めるバク達。そんな彼らを優しく迎え入れる(捕まえる)のは津々流だ。
 ぎゅっと抱きしめる感覚……眠気に誘われて抱っこしようとする……ふりを……うわあすごくねむい……あ、いかん今本当に落ちそうだった。
「あっ……ハッ。えっとね、言葉は分かる、よね……?
 あのね。眠いのは夜だけにしてほしいんだ……人間は昼に起きている生物だから……」
 何度も船を漕ぎながらゆったりとした口調で語る津々流。
 悪意が無いのは分かっている――だから夜に来て欲しい、と。
「バク様、大丈夫ですか? 汚してないですか?
 ああ駄目です、逃げずにちょっとお話を聞いてください……」
 同時。ニルも一匹捕まえた。言葉を掛けながらたっくるし、ぎゅっと捕まえ抗いながら。
「あのね、バク様。ニルたちはお話がしたいんです。痛いこととか悪いことをしたいわけじゃないんです。夢を食べちゃだめとかじゃないんです。でも、ちょっとだけ困ってる人がいるんです。だから逃げないで、お話しましょう?」
 首をかしげるバク達。そう、彼らは分かっていないのだ。
 昼に来てはだめな理由を。分かればきっと――夜にだけ来てくれるだろう。
 ……そして理解が出来たなら教えて欲しい事が一つある。
「夢って『おいしい』ですか?」
 夢ってどうやったら食べられるんですか?
 ――ニルは分からない。分からないから知りたい。出来るなら自らも食べてみたい。
 バク様たちが好んでいる甘美を――知りたい。
 ……だが夢を食べるという行為はバク達にとっては呼吸に等しい。『出来て当たり前』であり、教える事が出来る様な事ではないのだ。だから――
「……無理ですか? 残念です……」
 ちょっとだけ。悲しそうな表情をニルは見せるのだった。
「わわ……えっ、もうバク捕まえた……?
 あっ、ほら起きて紫月……捕まえたまま寝ちゃだめだよ……ねっ?
 ほら……むにゃむにゃ……」
「ん……ああ、おはよう小鳥……
 ふふ、お昼寝におはようのキスをしてくれるのは豪華だね……?」
 そしてヨタカと武器商人――影が重なるを意味するは何か。
 公衆の面前ながら眠すぎて色々判断が虚ろに成っていたのだろう――さてはて後にこのことを小鳥は覚えているのか覚えていないのか、確認してみるのも面白そうだと武器商人は思考しながら。
「人間たちはねぇ、決まった時間に眠らないと身体を悪くしちゃう不便な身体なんだよぉ……だからここには夜においで。そうすれば歓迎されるから」
 優しく諭す。皆から説得されてバク達も分かったのか小さく首を縦に振る。
 ――これでいいだろうか。うん、きっと大丈夫だとそう信じて。
「よーし今度は夜に来るっすよー。そしたら自分も扇風機としてご一緒するっすー。え、何が出来るかって? そりゃ扇風機っすよ? だって自分扇風機っすし?」
「全く……次に昼来たら、全員熱湯風呂に沈めるからな。熱いぞ、ガチで」
 アルヤンが首振り機能を使いながらバク達を外へと連れだしていく。さすれば別れる前にクロバは脅す様に冗談めかしながら――熱盛アヒージョの熱さを思い返していた。
 バク達は去った。見えなくなる前に皆に手を振りながら、森の奥へと消えていく。
 彼らは精霊だ――またどこかで会う機会もあるかもしれないと思いながら。
「わぁ、やってくれたんですね皆さん! 流石はイレギュラーズの皆さんです!」
「ははそれほどでも――で、進捗どうですか依頼人」
 代わる様な形で現れた依頼人。
 バク達が夜にしか現れなくなっただろうという報告に喜びながら。
 クロバが意味深な事を聞いた直後――依頼人はなぜか顔を逸らしたとか。進捗……

成否

成功

MVP

ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 ご飯を食べると眠くなりますよね……ぐぅ。ありがとうございました!

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