シナリオ詳細
コングと牛追い祭り(牛抜き)
オープニング
●ラド・バウA級闘士『野生解放』コンバルグ・コング
「ウホァッ!」
牙をむき出しに叫ぶ身長3mの鎧ゴリラ。その巨腕から繰り出されるラリアットをうけて、フリー闘士ヘプタは後方へ三度回転した。観客からは巨漢が風車のごとく回転したように見え、当人からは世界が縦向きに引き延ばされたように見えただろう。
ずんと音を立てて倒れた彼は、しかして起き上がることはない。白目を剥き、完全に気を失っていた。
『勝負あり!』の声と共に、係員が手にしていたストップウォッチが止められる。数字を見れば、なんと27秒08。更に述べるなら、このゴリラが起こしたアクションは先ほどのラリアットの『一発』のみである。
「勝者――コンバルグ・コング!」
観客達が立ち上がり、喝采の拍手を送った。
コングヘッドを摸したケースからポップコーンを握って頬張る者や、コングハンドを摸したグローブを高く掲げて叩く者。中にはコングのお面を被ってドラミングを真似る者もあった。
「「コ・ン・グ! コ・ン・グ!」」
彼こそはラド・バウA級闘士。コンバルグ・コング。
ビッツをボーダーとして皇帝やザーバ将軍というS級が殆ど試合を行わないこの国において、最も活躍し活躍し脚光を浴びるのはA級闘士。その中でもシンプルに強くシンプルに人気なのが、このコングであった。
そんなコングが鉄帝国内の様々なイベントに呼ばれるのは当然のなりゆきで、これまでは闘技以外に興味が無いとしてそれを断り続けていた彼だったが……。
「最近はあんたらの影響で露出やサービスが増えたみたいだ、ローレット」
DDと名乗る情報屋の男がラドバウチップスについているおまけのトレーディングカードを選別しながら語っていた。
傍らにはハンバーガーとポテト。ついでにオマケの『あるくコングちゃん』。
「コンバルグ・コングのことは知ってるか? 鉄帝でラドバウ通いをしてたら当たり前に目につくようなスターだが、軍事にも侵略にも興味がねーお人だから国外じゃあ知らねえ奴も多いかもな。ラドバウってのは極論すればスポーツだ。超メジャーなスポーツ選手だって、それ自体に興味がなければ名前も知らねえもんさ。
けど強さは本物。死ぬほど強えし、闘技場にしか興味がねえ。だから安全」
DDはレアなカードをめくって見せた。コングがドラミングをしているシーンを描いたものだ。
「カードももちろんプレミア」
ニッコリと笑う彼だが、カードをポケットに入れて椅子にもたれかかった。
「けど最近、闘技場以外のことに目を向け始めてるんだなあ。そう、ローレット。あんたらと出会ってからさ。
あの人は、ローレットの成長速度に目を見張ってる。いつか自分の高みまでやってきて、対等に戦ってくれるんじゃねえかってな。
闘技場だけで生きてきて、戦うことでしか会話してこなかった。ある意味孤独なのさ、あの人も」
だから今回の仕事はぜひ受けてくれよな、と。
DDはやや長い前置きを済ませて、本題に入ることにした。
「そんなわけで、ローレット。今回の依頼は『コング追い祭り』だ!」
●コング追い祭り
21世紀地球のどっかにゃ牛追い祭りというイカれたカーニバルがあるらしい。
街に暴れ牛を解き放ち、牛と共に街の決まったルートを走るというものだ。
首都から離れた街、鋼町にはそんな祭りが継承され、年に一度の楽しみとして親しまれてきた。
「けど最近はマンネリでな。ギアバジリカ事件もあって鉄帝じゃあ復興ムードが強い。そこで街の奴は考えた。牛より強えもんを走らせればいい……ってな」
そこで。
「ウホッホウッホ!」
ハンバーガーショップ『バーガーコング』の正面ガラスをローリングタックルで突き破り、コンバルグ・コングが店内にエントリーした。
「コングだ!」
「コング入店!」
「サインください!」
客や店員たちがきゃっきゃしながらかけより、流れるように弁償代を支払うコングと握手をしたり鉄板にサインを貰ったりしていた。
その様子を振り返り、『あるくコングちゃん』の人形を手に取ってからもう一度あなたを見るDD。
「コングさんに追わせる。あんたを」
ここでルールを説明しよう。
牛追い祭り改めコング追い祭りとは、鋼街の決まったルートを走る変則マラソンだ。
どう変則かというと、あなたの後ろをコングが猛烈な勢いで走り、追いつかれると『ボッ』て音をたてて吹っ飛ばされるという点である。
他のルールはこうだ
――コングの後ろを走ってはならない
――意図的なコースアウトをしてはならない
――コングを大きく引き離してははらない
つまりは常に真後ろから追われ続ける状況で走るというお祭りなのだ。
「街の連中も楽しんで参加するし、コングの旦那もきっちり殺さないように殴ってくれる。ああ見えて殺しが嫌いでね。
けど街の連中だけじゃあすぐに全滅しかねない。ってことで、腕利きって評判のローレットを走者に加えようって寸法さ」
マラソンのゴールは鋼町のシンボルともいえるローカル闘技場『甲子』。
このフィールド内に到着したら、今度はコングとのエキシビジョンマッチを楽しむことが出来る。
カードは『コングVS走りきれた全員』だ。
A級闘士とバチバチにぶつかれる数少ないチャンス。楽しまない手はないだろう。
「街の連中も楽しみにしてる。盛り上げてくれよ、ローレット!」
- コングと牛追い祭り(牛抜き)完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年11月30日 22時20分
- 参加人数6/6人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
●
「ハイッ、あるくコングちゃん!」
『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の手のひらに載せたコング人形がネジ巻き仕掛けでカタカタ歩く。
バーガーコングのモンキーセットについてくるおまけのオモチャである。
「そしてこっちが、箱買いしたラドバウチップス!」
背後を指さすフラン。そこには袋の後ろにくっついたカード袋だけをはぎとられた大量のポテトチップスがつみあげられていた。
「これだけ買ったのにレアカードが出ないの! 今日の報酬でもうひと箱買うよ! ね! レアカードの息子ォ!」
いつもと違う目でギャッて見られた『Raven Destroy』ヨハン=レーム(p3p001117)が若干の戸惑いと共に半歩ひいた。
「え、あ、はい……え? お父さんレアカードなんですか?」
「むしろなんでレアじゃないと思う?」
全盛期バージョンと毛玉バージョンで二種類あるよつってガイドブックを開いてみせるフラン。
「で、今日のお仕事は牛追い祭り……じゃなくてコング追い祭りに参加することだったわね」
『しあわせ紡ぎて』ニコル・スネグロッカ(p3p009311)は依頼書を一旦読み直してから傍らの長机へと置いた。
仕事で祭りに参加するってえのも変な話だが、危険なお祭りにセーフティ要員を手配すると考えるとそんなに不思議でもなくなってくるものである。
ふと周りを見てみれば、そんな危険さにも関わらず男達がプラスチック製のコングアーマーのオモチャを纏ってドラミングのまねごとをしたり、ゴム製のコングマスクを被って踊ったり、黒いビールをラッパ飲みして歌ったりしていた。
「みんな幸せそうで素敵。もっと楽しくなれるようにわたしも腕を振るわないといけないわね!」
「DESUWANE!」
黒ビール片手に歌っていた人……のなかにしれっと混じっていた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が口の端っこからビール漏らしながらキマッた笑顔で振り返った。
今日は一行目から飛ばしてるヴァレーリヤである。
「それに今日は秘策あり。フランさんのパン屋で手に入れたこの深緑バナナ!」
懐から取り出したバナナを天に掲げ、我に勝利あれとばかりにぺかーっと光らせた。
「商品の半数がバナナかプロテインっていうどうかしてるパン屋ですがバナナは逸品。そしてコングとて所詮はゴリラ。目の前にバナナを吊せばそれに興奮してキャッキャウホホして、私達を追うどころではなくなるに違いありませんわっ! 人間様の知恵の恐ろしさ、思い知らせて差し上げましょう!」
「「イエーア!」」
上半身裸で胸に『KONG』てペイントした男達が大はしゃぎでバナナを振り回している。
「なるほどこれが鉄帝……」
『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は腕組みをしてこくこくと頷いた。
「市民にはエンターテイメントが必要よね。私達も楽しんで、お客様達も盛り上げれば良いのよね。そういうの、大好きよ」
うふふと笑ってパイプ椅子の上で足を組む『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)。
「舞台映えするようにおめかししなくっちゃ」
音符のつくようなトーンで言うと、フルールは手足を炎へと変えた。
うむといってバナナの皮を剥くブレンダ。
「参加者たちよ。このイベント……見事走り抜けて魅せようではないか!」
「「イエーーーーア!!」」
拳を振り上げ気合いを入れる男達。
手を叩いて歓声を上げる観客達。
調子に乗ってジャズ演奏を始めるストリートミュージシャンたち。
イベント実行委員らしき男がKONGと書かれたサンバイザーを被ってマイクの前へ立つ。
「それでは皆さん準備はよろしいですか? コング追い祭りに参加する方はスタート地点へ。では位置についてヨーイ――」
ボッ!
という音と共に実行委員らしき男が背後の壁ごと吹っ飛んだ。
宙を舞うマイク。サンバイザー。笑顔のまま回転する男。
その中を猛烈な速度でつっぱしる、コンバルグ・コング。
「ホワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
●
気分はボーリングのピン。もしくはバッティングセンターのボール。
コングの近くに居たひとから順に右へ左へ撥ね飛んでいき、民家の壁やら窓やらを突き破っていく。
「うおおおおおお!?」
バナナをくわえて全力疾走するブレンダは、けっこうな機動力で全速力を出してる筈なのにみるみる縮まっていくコングとの距離に焦りと圧を感じていた。コングの姿が通常の二倍か三倍くらいに大きく見え、背後で聞こえる『ボッ!』という効果音が連続するたび胸を高鳴らせる。
なんか途中で『あっ私、生きてる』みたいな謎の実感が湧くほどであった。
そしてコングは当然の摂理みたいに追いついて、全力疾走するブレンダを巨大なビンタによって道の端へ吹っ飛ばしていく。
どういう物理法則なのかわからんがとにかく斜め上に吹っ飛んで民家の窓を突き破り他人のバスルームへ転がり出る。取り落としそうになったバナナを口に放り込むと、ブレンダは呆然とこっちを見る知らないおっさんにビッと二本指で挨拶してから別の窓を突き破りマラソンルートへダイナミック再エントリー。
「何度投げられようと私は諦めな――」
ボッ!
コング追い祭りは例年と異なるルールが設定されている。
走っている間、馬や馬車やバイクの使用は自由。追ってくるコングにいかなる妨害をしてもOK。ただし命の保証はしない。
バイクに乗ってきゃ安全だろとかタカをくくっていた男達がバイクごと天に垂直発射されていくさまを横目に見ながら、ニコルは民家の屋根から屋根へと飛び移っていた。
こうして見てみるとわかるのだが、もはやコングとはレベルからして大きく違うしなんなら行動回数もこちらの倍以上がデフォなように見える。
A級で戦うっていうのはそういうことなのだろうかと、頭の片隅で思うニコル。
「それにしてもコングさん、わかってはいたけどすごい運動能力!」
「ウホッホ……」
ちらりとこちらを見たコングが、地面を両手で叩きながらジャンプ。
それだけでニコルの走る屋根と同じ高さまで飛び上がり飛の航路するニコルを素早くキャッチした。
屋根に思い切り叩きつけられ、後方へと放り投げられる――が、民家から突き出た物干し竿を掴んで止まり、竿のしなりを利用してジャンプしマラソンコースへ復帰する。
「周りのみんなも楽しそうだし、わたしも盛り上げていかないといけないわ!」
「本当ね。何かあっても宜しくね。フィニクス、ジャバウォック」
前、というか集団の中程を走っていたフルールが、彼女に従属した精霊たちに呼びかけた。
彼女の両腕に宿っていた炎が翼のように吹き上がり、すぐ後ろまで接近してきたコングへと襲いかかる。
紅蓮の炎が巨大な手となり爪となりコングへ組み付き、牙となり顎となり食らいつく。
それらの攻撃を一切回避することなく、コングはまっすぐ突き抜けてきた。
「ウホ――」
「あらあら」
伸びた腕がフルールを掴み、振りかざされる。
「お前、面白いやつ。モット、強クナレ」
コングはフルールを地面に叩きつけた勢いで自らが跳躍し、向かい合わせに立ち並ぶ三階建てアパートメントの壁を右へ左へバウンドしながら先頭集団へと近づいた。
「来ましたわよフラン! バナナの準備を!」
「うん、ヴァレーリヤさん!」
ヴァレーリヤとフランはカカッと目線カットインを挟むと胸の谷間(谷間だよ)から何房もあるバナナを取り出した。
二人はセイッといって後方にバナナを投げ――たのをガン無視してコングが二人を追っかけてきた。
「あれぇ!? 効いてない!?」
「ひああああ、追って来てるううう!!」
いつのまにかっていうか実は最初っからバナナの着ぐるみをきていたヴァレーリヤが涙を浮かべながら加速。
「打たれ弱い私を肉盾にするのは、何か間違っていませんこと!? ええいおまちなさいコング! 取引しましょうコング! 見逃してくれたら高級バナナを差し上げま――ヒュッ!?」
がしりと身体をわしづかみにされるヴァレーリヤバナナ。
走馬灯が流れたところで、いっそ冒頭のヴァレーリヤを読み返してみよう。ああこの人バナナの着ぐるみであれやってたんだなって。
最後の抵抗として懐(?)から一本のバナナを取り出すヴァレーリヤ。
「ククク、早く食べなさいゴリ雪姫。それは七人の小人もドン引きする超強力下剤入りバナナ。食べれば最期、永遠にトイレでうめき続ける事にな――」
ヴァレーリヤは5~6回地面に叩きつけた後空に向かって放り投げられた。
「さよならヴァレーリヤさん! その犠牲は無駄にしない……!」
フランは『ウホッホ!』と叫ぶとゴリラの呼び声を解放。
森ゴリラモードにチェンジすると身体を丸めてボールのように坂道を転がっていった。
「ああっ!? なんですかそれずるい!」
先頭を走っていたヨハンが手を伸ばすもそんな彼のすぐ横にジャンプしたコングが着地してきた。
「あ……」
振り向いたコングと目が合ったヨハン。そっとポケットからバナナを取り出し、掲げてみた。
「これと交換で見逃すというのは……」
豪速で接近する平手打ちの風圧を感じながら、ヨハンは『ですよね』とニッコリ笑った。
その直後、坂道をローリングダッシュしたコングによってフランは『きゅっ☆』てされたという。
●
生き残り達のラストステージ。
そこは地元でも歴史の深いローカル闘技場『甲子』。
「いやあ、まさかこんな形でもう一度来ることになるとは」
ヨハンはこきりと首をならし、係員に運んで貰ったルーンブレードを投げて貰った。それをキャッチしながら思う。ここまで走ってきたルート、よく思い出してみればあのとき誘導したルートと同じだったような気がする。
「偶然ですかね」
「あらあら、思ったより沢山残っているのね?」
会場へ入ってきたフルールが、ぜえぜえと息を切らせて会場入りした他の参加者たちを見回している。
フルールたちローレット・イレギュラーズの六人以外にも何人か残っていたようで……。
「ハッ、あなたは『バイオレンス・ヤキニク・バー』の暗黒怪獣デスゴリラ店主!」
遺影みたいに飾られていた壁のペイント(?)からボッて飛び出してきたヴァレーリヤが知り合いに手を振った。
「えっなに知り合いなの。あのでっかいゴリラ」
空から振ってきたフランが地面に突き刺さった頭を抜いて首を振る。
「所見なら驚いたところだが、ついさっき実際のサイズ以上にビッグなゴリラにピンボールされたばかりだからな。もはや見ていて安心するほどだ」
剣を杖みたいについてふらふらしてるブレンダが新たなバナナを取り出して回復を試みる。
「ともあれ!」
最後に会場入りしたニコルが服のカラーにあった白と赤でペイントされた剣を抜いた。柄頭に飾られた赤いリボンと鈴が揺れる。
「最後まで頑張って幸せをお届けしましょう!
ええ、ええ、それこそがわたしの役目なのですから!」
抜いた剣は巨大な壁画へと向けられ、皆そちらの方向を向いて構えた。
ドン、と壁が向こう側から殴られる音がする。
背筋を伸ばし剣をクロスするブレンダ。
ほっぺを膨らませてファイティングポーズをとるフラン。
手足を炎に変えたまま、精霊の炎を六枚の翼のように広げるフルール。
観客席から投げられたメイスをキャッチし、聖句を唱えて炎のライオットシールドを形成するヴァレーリヤ。
ヨハンはルーンブレードを高く掲げ――。
「目標、ラド・バウA級闘士コンバルグ・コング……オールハンデッド!!」
叫ぶと同時に、壁が向こう側から破壊されてコンバルグ・コングが飛び出してきた。
かろうじて残っていた参加者(暗黒怪獣デスゴリラたち)が一斉にお空へボられていく中。
ヨハンを中心に青く輝く海のような渦が広がり、自らの炎に青いオーラを重ねたヴァレーリヤとフルールが同時に動き出した。
「あぁ、やっと逃げるだけじゃなくて戦えるのね♪
派手に舞台を盛り上げていきましょう。フィニクス、ジャバウォック、燃え盛りなさい。どうせ死なないのですから」
くるくると踊り、誘うようにコングへと手をかざすフルール。
飛び出した二つの精霊は紅蓮の炎の槍となり剣となりコングへと突き刺さっていく。
更に炎の足跡を刻みながら助走をつけたヴァレーリヤが跳躍。
「ええい、理不尽な扱いにこみ上げる、私の怒りを思い知りなさい!」
唱えた聖句と回転したメイスの刻句が炎の渦となって広がり、ドリルのように身体を包んだ炎と一体となったヴァレーリヤは自ら火の玉となってコングへ突撃した。
両腕を広げ胸で二人の攻撃を受けるコング。
コングの鎧は胸部分で砕け、ヴァレーリヤの踵が向きだしとなったコングの胸板に刺さっていた。さらにはフルールの放った炎の槍たちが腕を貫く。
が、しかし。
「ウホッホ!」
広げた両手で柏手を打つかのようにヴァレーリヤをサンド。
白目を剥いて転落するヴァレーリヤを放置し、コングは一瞬でフルールへ接近していた。
「あら気が早いのね。さあ遊びましょ遊びましょ♪ 命を半分捧げましょ♪ これは観客に奉じる宴なのよ♪」
自らの腕をコングに突き立てると、コングは振りかざした拳でフルールを立っていた地面ごと破壊した。
クレーターの中心で振り返るコング。
ニコルは剣をクルクルと回転させると、ヨハンに『支援求む』のハンドサインを出してから書けだした。
それに答えて可能な限りの付与効果を浴びせるヨハン。
彼の掲げた剣から月光がはしり、ニコルの身体を淡く発光させる。
跳躍からの縦回転で巨大な回転のこぎりと化したニコルがコングのかざした腕を切り裂いていく。
吹き上がる血と唸る剣。
コングの反対側へと着地したニコルはブレスレットを地面にこすりつけると水晶の表面を赤いオーラが回転して走り、コングの背に加速した拳が打ち込まれる。
「チャンスだ。コンボ技を決めるぞ、森ゴリラ!」
「森ゴリラ!?」
フランは突撃するブレンダを二度見すると、自分も一緒に走り出した。
「えーっとわかった! ギュッからの、ンヌッ!」
握りこぶしをブレンダの後頭部にぶっこむと、ブレンダが「ンヌッ!」と言って両目を激しく光らせた。
「我々のゴリラパワーではまだ貴方には届かないかもしれない……それでも!」
その勢いで突っ込んでくブレンダ。
何を思ったか剣を両方ぶん投げてコングの脇腹へ突き立てると、フランの加速を借りて強烈なダッシュパンチを繰り出した。
インパクトの瞬間、フランが大地を叩いて発動させた術式でコングの周囲に無数の花が開いていく。
コングは彼女たちのコンボアタックを受け、ぐらりと二歩後じさりしたかと思うと、そのまま仰向けに倒れた。
大の字に寝転ぶコングに、ブレンダが目を細める。
「……やったか?」
「ブレンダさんそれ言ったらだめなやつ」
ヨハンがかぶせるより早く、コングはガバッと上半身を起こして天が割れるほどに吼えた。
「ほらこうなる」
この後、イレギュラーズたちの目覚ましい強さに興奮してしまったコングは我を忘れて暴れ回り、しまいにゃ闘技場が食べかけのプリンみたいに崩壊したという。
それを見て市民達は……。
「「これぞ鉄帝!」」
「「イエーーーア!!」」
黒ビールをあけて大喜びしたという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お祭りは大盛り上がりの末に終了しました。
GMコメント
■オーダー
コング追い祭りに出よう!!
このシナリオは『追いパート』と『バトルパート』に分かれます。
追いパートではコングに存分に追われてください。
過去の豆撒きやエキシビジョンマッチの経験から考えるに、逃げ切るのは普通に無理な気がします。もっと言えば無効系バリアやEXF、超回避や限界防御といったあらゆるガードをフッツーに突破してくるので何人たりとも例外なくボッてされます。おそらくはそれがA級というものなのでしょう。
ひたすら吹っ飛ばされることに耐えたりいっそ楽しんだり、場合によっちゃ仲間を囮にして逃げ切ったりしましょう。
バトルパートでは、皆さんとコングとの対決になります。
これの成功条件は『ショーを成立させること』であります。勝敗は関係ありませんし、多分勝つのはめちゃ困難です。
ですがコングはこれがショーであることを彼なりに理解しているので、丁度良い具合にプロレスを演出してくれるでしょう。
メタなことを言うと、ハメ技や搦め手はまあ通用しない筈です。(そうでないとA級にまで上り詰められないので)
ですので自分の特技をぶつけてショーを盛り上げる方向で行くと良いでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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