シナリオ詳細
ジュラシック・ハザード
オープニング
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鉄帝には古代文明が眠っているという話をご存知だろうか。
例えば少し前にあったギア・バシリカ事件の時の『歯車大聖堂』などがそうだ。確かに存在してはいるが、如何なる製法によって作られたのか全く不明な――いわゆるロスト・テクノロジーがあちらこちらに存在していると言っていい。
鉄帝国は時折発見した古代文明技術を軍事力に取り入れ、或いは保有しているらしいが……さて。
今回見つかった『コレ』も大枠では古代の遺産と言っていいのだろうか――
「フフフやりましたな! 遂に……遂に古代生物の復活に成功したのです!」
「ハハハまさか太古にはこのような生物がいたとは驚きだなぁ博士!」
ある研究施設。そこで高笑いをする二人の男がいた。
眼前にあるのは――巨大な檻。
人を遥かに超えるサイズの檻が幾つもあったのだ、その中にいたのは一言で言うならば。
『恐竜』
「フフフ鉄帝の古代遺跡から発掘された化石を元に、我が練達の技術と組み合わせ……肉付けした結果、太古の生物たちが今まさに現代に蘇ったのです! いやこれもルモンドさんの資金提供があってこそ出来たもの! 感謝申し上げます!」
「ハハハなんのなんの。ワシだけでは発見こそすれ肉付けの技術などなかったからな!
持ちつ持たれつという奴よ! がははははは!」
事の始まりは周辺地域一帯を有しているルモンド氏の領地地下から恐竜たちの化石が発見された事である。古代生物の骨見つかる――その事態に胸躍りながら、同時にこれは金儲けの種になると悪知恵をルモンド氏は働かせた。
端的に言うと……太古生物に肉を付けて、さも生きているように見せれば物珍しさに見物客を大勢呼び込める、と。
決めたからには即日即断。こういうのは練達の連中が得意だろうと金にモノを言わせて一人の科学者と契約。その後しばらくの研究期間を経て再現されたのが数々の恐竜たちであった――人程度の小さいサイズから、人を大きく超える個体までより取り見取り。
近くで見れば迫力満点の獰猛さを感じる事も出来て。
「ハハハ、それで博士。これは安全なのだろうな?」
「フフフ勿論ですとも。再現した脳髄の中に安全装置を仕込んでおりましてな、決して人を襲ったりすることが無いようにしております。万が一故障しても張り巡らせたこの檻を破る事は出来ません! 安心安全です!」
「ハハハそれなら良いのだ! かつての狩猟本能を宿した古代生物でなくてよい! 客が『古代生物』だと思って楽しんで金を落としてくれればそれでよいのだからな!」
再び発生する高笑い。
最早二人の思考にはどうやってこれを公開するかと言う事ばかり。
「ハハハ! そうだな、手始めにイレギュラーズでも呼び寄せてみるか!」
「フフフ、イレギュラーズですと?」
「ハハハ! 彼らの名声は素晴らしいものがあるからな! まずは一般公開前に彼らに視察してもらって、建設予定のパークの煌びやかさも後に宣伝してもらえれば一石二鳥よ!」
「フフフ成程! それは実に良さそうですな!」
彼らは気付かない。喧しい笑い声が響き渡る度に、周囲の恐竜たちが苛立っている事に。
安全装置でも抑えきれぬ程の――殺意がその身に蓄えられている事に。
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そして後日。
ルモンド氏によって招待されたイレギュラーズ達は公開予定の『パーク』へと訪れたのだが――案の定と言うべきか恐竜たちが暴走を始めた。檻を粉砕し、パーク内へと殺到する恐竜……いやもう魔物と言ってもいいのかもしれない彼らには食欲しかなくて。
「は、博士! 安全装置はどうなって……うわあああああッ!!」
「そ、そんな馬鹿な! これほどまでの力が出せる様には造っていない筈なのに……まさか、何らかの計算外の要素でも働いて……ぐあああああ――ッ!」
一際巨大な――なんでも『T-レックス』なる個体に丸のみにされるルモンド氏。
次いで創造主たる博士は小型の恐竜達にいつの間にか囲まれていた。レックス程の腕力はなくとも、鋭い牙を携えた彼らに囲まれてしまえば逃れるは困難。群がる様に博士にのしかかって……
「駄目だ逃げろ! そこの部屋に入るんだ!!」
あまりに多い数の襲撃に一度退避するイレギュラーズ達――扉を閉めて固定すれば、外では恐竜たちの獰猛な鳴き声が聞こえている。が、イレギュラーズ達を見失ったのか声は遠のいて行って……
「ふぅ……なんとか難は逃れたが、さてさてどうしたものかな……」
外にはまだ多くの恐竜たちが残っている事だろう。彼らを突破し、外へと脱出するか。
或いはこの建物に立て籠もり助けを待つべきだろうか? 己らが街に帰らなければ不審がった者が様子を見に来るだろう。巨大な恐竜たちは建物の中には入りにくいようだし、立て籠もりを続けるのも手ではある。
「全く。弱肉強食の世界まで復活するのは――勘弁してほしいものだな」
- ジュラシック・ハザード完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年11月28日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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まさか――『絶対に安全です!』と宣言した専門家が食べられるなんて。
そんな、そんな恐ろしい事があるのか――ッ!
「……でも、そんななかでも、わたしは…かならず、戻らなくてはなりませんの
だって、わたしには……帰りを待ってくださるかたが、いるのですから……!
ふふっ……! パインサラダを作って、待ってると、言ってくれてましたの……!」
「待て待て待て待て、ノリアそれはフラグだ! やめておけ!!」
それでもと必ず生きて帰れる未来に想いを馳せる『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)が盛大な死亡フラグをぶち上げ続ければ『聖断刃』ハロルド(p3p004465)も思わず言わずにはいれないものだ。その発言は死ぬぞむしろ!!
「ええい、とにかく脱出を目指すぞ!!
救助隊なんて待ってても、今度はそいつらが喰われるのがオチだ!」
「おおよ、ちくしょう! オレらは絶対『お約束』なんかに負けねえからな! 全員、無事に生還だ!! お前ら、恐竜達の数次第じゃ長丁場になるかもしれないからトイレは済ませておけよ!」
ともあれハロルドが叫んだように、とにかく脱出を試みるのだと皆も思考を纏めれば――なんとなーくこうなるんじゃないかと嫌な予感を抱いていた『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)も半ばヤケクソ気味に恐竜達に抗する事を決めるものだ。
いやね? だってね? あんまりにも運営者達が自信満々だったからね?
でも本当に現実になる事はねぇだろうがああああ! 叫びながら整える脱出準備。
「『太古の生物が現代技術で蘇る!』て凄いなーって思ったんだけど。まさかわたしたちが『お約束』に嵌るなんて思わなかった……はっ! とにかく脱出するなら急がないとね! お約束通り進むなら、きっとここにもその内恐竜たちが……!」
「でもそれはそれとして偉大なる太古の捕食者が今まさに間近にいるなんて――これはテンションが上がるけどね。ああ恐竜! 逞しい肉体と重厚なる存在感……なんとも特別な神秘をかんじるものさ! 一度食べてみたいと思ってたしね」
「えっ?」
同時。『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)と『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)も準備を進める。恐竜たちが暴れ始めたのは残念だが――しかし二人は確かに高揚していた。『恐竜』なる存在が目の前に在る事に。
人の記憶が紡がれてもいない頃に存在していた者達。かつて地上の支配者であった者が彼らだ――それはあくまで異世界における所謂『イメージ』であり、この混沌でも同じであったかは分からない。それでも踏まえた上で心躍る面があったのだ――まぁマルベートに関してはどっちかというと食欲的な意味でだが。
「まさか、ええ。混沌にも恐竜がいたとは……骨からの復元である為同一とは限らないでしょうが、しかしそれをここまで復元された方もいらっしゃるとは……いえ、もう『いらっしゃった』ですかね、食べられましたし。一瞬アトラクションかと思いましたが」
そしてそれは『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)にとっても同様だ。
恐竜。彼らの魅力は語るに尽きない。圧倒的な生命力と、それでも絶滅してしまったという一抹の儚さがより彼らの魅力を挙げている――ああ正に太古の神秘にして遺伝子に刻まれた畏敬が奥底より湧き出てこよう。
時間があれば存分に語り合いたい所なのだが、残念ながらそれ所ではない。
今さっき元気よく食べられたのが復元者とスポンサーとは。おおなんたる無常か。
「安全装置とやらは……どうなったんだろうね……まぁなんとか生きて帰ろう……恐竜なんて存在が混沌にもいたなんてちょっとびっくりしたよ。でもまぁ虎の方が強いけどね!」
「あーもう!! こうなるなんてちょっぴり分かってたのに、どうして依頼を受けちゃったのかしら!! 鉄帝と練達なんて組み合わせ、どうせロクな事にならないって事はね……! くっ! 私は絶対生きて帰るわよ、やってやろうじゃないの!!」
ともあれ彼らに次いで自ら達も犠牲になる訳にはいかないと『白虎護』マリア・レイシス(p3p006685)は目元を抑えながら吐息を零して『焔獣』メルーナ(p3p008534)は半ばキレながら闘志を漲らせる。竜種だろうが恐竜だろうが知ったこっちゃないが狩れると思わないでよね!
運営拠点の中にあった地図を頭の中に叩き込み、万が一に備えて水と食料を風牙が詰め込み。周囲に恐竜たちがいないと判明すれば――動き出す。
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遠くから聞こえてくる幾つもの鳴き声。獰猛な色を垂れ流す正にここは弱肉強食の世界。
目的地の出入り口ゲートまで最短ルートを通ればそこまで長時間はかからない――が。
「かといって自然が多い茂ってる場所とか水場の近くを通るのはやべーよな……連中が集まりそうな上に既に潜んでる可能性も捨てきれねーし」
「ああ。水場はそれ自体が盛大な『フラグ』というやつだ。絶対に近寄らん方が良い」
ただ闇雲に突き進めばどれ程の恐竜達と遭遇してしまう事か。なるべく奴らと出会わぬ様にと風牙とハロルドは周囲を警戒しながら慎重に歩を進めて。
「そこかしこで気配がしてるからね……! 今の所は多分見つかってないでしょうけれど、一度見つかって戦闘が始まったらそれに皮切りに他の奴も気付くかもしれないし……」
「ううん。確かに、音に敏感かもしれないしね……しっかり恐竜達を探しておかないと……! 気付いたら後ろにいた、なんて事は無いようにね!」
周囲。己らに殺意を向けてくる対象がいないかメルーナは常に感知を巡らせつつ、ルアナは恐竜達そのものを捜索する事で事前発見、迂回を容易にせんとする。
ある意味では冒険の真っ最中と言えるのかもしれない。パーク、多くの恐竜が闊歩し正にジャングルかダンジョンの中を駆け巡っているかのような感覚だ――ならば冒険のイロハが役にも立とう。注意すべき点が見えて、己を導く。
「そうだ。金網を見かけたら要警戒だ。恐らく『鳥籠』だろう。翼竜の襲撃に遭うかもしれん――金網が破られていなければ良いが、この惨状だと恐らく網も駄目だろうな」
「待って――それにこっちに近付いてきてる恐竜がいるよ。これは……回避出来ないかな」
そしてハロルドとマリアはファミリアーの鳥を用いて天より探索を。
ハロルドは特に翼竜――名の通り空を飛ぶ恐竜達を警戒し、マリアは地上の方を主とする。捜索域を被らせないようにしながら多くの方面をカバーして……しかしやはり恐竜達の数故にか回避にも限度があった。
この先でぶつかる――ならば。
「できることを、やっていきましょう、ですの。わたしが、エサの役目を、しますの……!」
先手必勝だ。その一手を担うのがノリアである。
前に出て、全力で隙だらけの姿勢を捕食者達に見せる彼女――目の前に斯様にエサらしきモノが現れれば視線はそちらに向いてしまうものである。
鋭き牙を光らせて彼女の肉を貪らんと……しかし。
「さぁ……わたしを食べたければ、こちらですの!
そんな程度では、わたしの命を、とるなんて、できませんの……!」
彼女は先に犠牲となった博士たちとは異なり、簡単に食い散らかされる事などない。
圧倒的な生命力。
太古から蘇ったばかりの者達が今を謳歌するノリアに通じようか。
「幸い集まったのは小型のタイプですか。あれらなら……倒すのもそう難儀はしなさそうですね」
「ふふっ。私としては大型の方がちょっと楽しみがあったんだけど――まぁお楽しみは後に取っておくものかな」
その隙だらけの背後を突く様に瑠璃とマルベートが動いた。
幸いと言うべきか大型はいない――ならば迅速をもって、だ。瑠璃の放つ亡者の群れがまるで縋りつく様に小型共に纏わりつけば、マルベートの双槍が彼らの身を目まぐるしい勢いで切りつける。
瑠璃の知識は恐竜達のモノも含まれ、弱点を的確に穿ち……
飛び散る血肉。
小型であるが故に大きな塊ではないが、空を舞うその一片をマルベートは咀嚼すれ、ば。
「うーん肉の味は中々……ワニの肉に近いかな? ああでもこれは筋が多いなぁ。
場所が悪かったのかもしれない。或いは大型ならもっと噛み応えが――あるのかもね」
甘く見て60点、と言った所か。やはり狙うなら小型より大型かと思考して。
それだけには終わらない。メルーナの地を這う雷撃が集まる小型共を撃ち抜いて、ルアナの斬撃も加われば彼らは敗走するものだ。
「よし。返り血を浴びた奴はいるか? 念のため取り払いの為の処置をするぞ。匂いの痕跡が残っているとすぐに来そうだからな……こういうのが後々終盤辺りのフラグになるんだ……」
さすればハロルドが他の恐竜にバレぬ為の隠蔽工作を施す。どうしてそんなにお約束に詳しいのだハロルド。ていうかさっきからやたらと早口なのはどうしてなんだハロルド。貴様さては元の元の世界でこういう映画を沢山……と、その時。
「待って――何か来るわ!」
メルーナが感知した。こちらに敵意を向ける存在を。
先程の小型共ではない。なぜならば、足元に『地鳴り』を感じているから。
――これは大型だ。正しく、恐竜が『恐れられる』存在である具現共――ッ!!
咆哮一閃。
「近い……いやまさか、この声は……!?」
不謹慎と思いながらも、瑠璃は遂に高揚が抑えきれないのか口端に笑みを見せていた。
重厚なる鳴き声――ああこの鳴き声は、間違いない。
T-レックス。
或いは『ティラノサウルス』
このパークの目玉たる王者が――近くへと迫っていたのだ。
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「よし、皆こっちだよ――囮を放ったから時間を稼げるはず!!」
イレギュラーズ達は駆けていた。その先頭を走るのは、マリアだ。
どうしても避けれない恐竜がいたのを感知すれば物陰に隠れて『博士の幻影』を創り出す――蘇った恐竜達に幻影の知識などあるまい。誘き寄せられている間に、皆で通り抜けるのだ!
「はははッ、こう後ろから追われ始めると本当に映画の世界に入っちゃったみたいだね……!」
「あーくっそ! あっちにはトリケラトプスにブロントサウルスいるじゃねーか! く、くそ! 見に行きたい! 草食系なら触っても多分大丈夫だろ!? 駄目か!? そんな暇ないか!?」
くっそ――ッ! と風牙は視界の端に見えた存在に歓喜しながらも涙を呑んで走り抜けざるを得なかった。触ってみたい。出来るならの、乗ってみたりなんかしてみたい……多分だけれども彼らなら大人しい筈だ。もっとナマで近くで触れ合ってみたいのに――!
後ろからの追跡者がそれを許さない。
ティラノサウルスだ。しかも多分、二か三体追いかけてきていて……! 彼らはどういう訳か幻影に手繰り寄せられる事すらないのだ――嗅覚か何かで判別しているのか?
「あああ――!! 駄目だ! 多分このままだと追いつかれるよ、仕方ないから迎え撃とう!」
「ははは……ティラノサウルスは近年の研究では走れないという説もあるそうですが、ここの彼らは走れるようえすね。うーん素晴らしい。やっぱりティラノサウルスと言ったらこうですよ」
ともあれルアナはこれ以上の逃走は無理だと判断――反転し、戦闘の態勢を整えれば瑠璃もまた同様に。見据えれば強靭な体と逞しい存在感が近くに来ていた――ああティラノサウルス、やはり良い……
「ははははっ! そうか! こいつがTレックスか! 良いねぇ! 相手に不足なしだ!
ゲートまであと少しと言う所でやってくるラスボス……『お約束』も悪くねぇ!!」
「ええ! だって、やっと出口と思ったら最後に本命が飛び出してくるのって――"お約束"なんでしょ? もうそろそろ私にだって分かって来たわよ! なら、今こそやってやろうじゃない!」
そして立ち止まるTレックス――迸る殺意に抗する闘志――
ハロルドもメルーナもまたここに至ればもはや避けるよりも迎え撃つ気持ちが強かった。
こんな事もあろうかと気力を残していたメルーナは闘うに十分であり、ハロルドは物理を弾く魔力の加護を見に宿し――さぁ!
いざや戦わん太古の王者よ!
「まだまだ、ですの、さぁ! Tレックスさん、こちらですの!
おさかなの味に、興味がないとは、いわせませんの……!」
直後、動いたのはノリアである。
つるんとしたゼラチン質のしっぽを振ってTレックスの一体を誘き寄せんとするのだ――奴らの力がどれほどのものか分からないが、数を減らして損など一切ないのは確実である。引き寄せ、恐竜を壁際にぶつけてやる――ッ!
『――――ッ!』
だがTレックスはそのまま壁をぶち破って突進を続けている――ノリア自身は壁を透過する術によって難を逃れているが、ここまでの膂力があるとは……
しかし今の薄い壁だったからこそ出来た事。
「しばらく、お任せください、ですの。あとで、また、合流しますの!」
「頼んだよ――ああ、こちらの二体は私達の方でなんとかするとしよう」
大きな壁にぶつけてやり時間を稼いで戻ってきますとノリアは紡ぎ、ならばとマルベートは己が全力をただ前にだけぶつける。
Tレックス程の存在に手など抜けまい。そして何より『パークを楽しむ』事の頂点がこれだ。
狩りを楽しみ、時に恐竜から逃げ隠れる事を楽しみ、恐竜の匂いを音を空気を味を世界を感じ――全てを楽しむ。
そして最後には恐竜に立ち向かおう。彼らの後に生きる者として、時代を受け継いだ者として。
――ぶつかる。剣が、槍が、魔力が古代の強さと雌雄を決すのだ。
「ハッ! 流石にデカイってのはそれだけで強いって訳だよな……! だけどよ、こちとら大人しく喰われてやるつもりはねぇぞ! 第一――お前らが暴れなきゃ俺はアイツらをもっと見れた筈なんだああ!」
Tレックスの巨大さたるや動くだけで脅威。
尻尾の一振りが人を薙ぎ、あの牙に噛まれれば流血は避けられまい。
それでも風牙は逃げまい。トリケラトプスの角より痛恨たる一撃を――
「お見舞いしてやるぜ――ッ!」
刺突一閃。遠間から一瞬で間合いを詰めた、その超速から生み出させる全てを破壊の一閃に。
外皮が硬かろうと――その内から壊してみせよう!
「残念だけど、私達は博士たちと違ってただ逃げ回るだけのキャストじゃないわ。
アンタ達みたいなモンスター返り討ちにしてやるんだから!
さぁ、出口までの最後の一狩り――行くわよアンタ達!」
そこへ続くのがメルーナの魔力だ。全てを貫く魔砲の一撃がTレックスの身すら貫いて。
強いのは此方だ――狩るのは此方なのだとパークに響かせる!
『ゴ、ガァ、アアアア――!!』
「彼らもちょっとかわいそうだよね。
骨を好き勝手されて甦らされて……いい気分はしないよね」
Tレックスの咆哮。それでも暴れ、イレギュラーズ達の身に傷を与える闘志を見て――ルアナはふと、呟いた。
彼らは一度死した者達。化石などは……展示するにとどめておいた方が良かったのかもしれない。
「恐竜さん、ごめんね」
それでも食べられる訳にもいかない。ここから脱出して必ず――ッ!
「おじさまの所に帰るんだから――ッ!」
「ええ、ここでまたフラグを立てるのかい!?」
違うよフラグじゃないよ!! 剣檄を放つルアナに言葉を紡いだのはマリアだ。
だが冗談はともあれ勝手に甦らされた被害者であるという側面はマリアも感じていた。
許しておくれ。でも私にも待っている子がいる。
君達とは相容れない――ならば!
「トカゲの親戚と虎の雌雄を決するとしよう! まぁ……虎に勝てるなどとは思わない事だね!」
前へ往く。狙うはTレックスの足元。危険地帯にして、しかし奴らの弱点。
あの体重を二本の足で支えるなど相当な負荷がかかっている筈だ。
ならば穿てる。どれだけの巨体を誇ろうと! どれだけのタフネスを持とうと!
「私の雷撃の前に意味はないッ!」
彼女から紅雷が出力される。その軌跡に沿って蒼雷へと至る昇華の輝き。
――最早Tレックスにその輝きを追えようものか。
膨大な疑似電気・磁力の果てが彼女の至高だ。Tレックスの脚部関節を狙い穿ち、その五指に込められし力が奴らの機動力を削ぐ。
一、二、三の剛閃が――足を叩き折るのだ。
Tレックスの再度の咆哮。闘志の意味ではない……それは痛みによる絶叫だ。
動きが止まればそこに――首元に、マルベートの斬撃が加えられて。
「――うん。なるほど、やっぱり大型の方が噛み応えがあるね」
「よし、奴らの動きが鈍っている! 他の恐竜共が音につられてくる前に、逃げるぞ!」
口元を拭うマルベート。さすればハロルドの声は、周囲から寄って来る気配を感じてのモノ。恐竜達を全滅させるのが目的ではない。故に――Tレックスたちを留めたのなら、ゲートを潜るのが優先!
「……もう少しじっくりと見ておきたかったですが、仕方ないですね」
名残惜しい。
瑠璃はそう感じながらも、確かに肌に感じた太古の空気を味わい――撤退する。
ああ恐竜よ、かつての者達よ。きっとこの後君達は危険生物として殲滅されるだろうが。
「もし次があるのなら、より深く」
その身を魅させてほしい。
願う気持ちを置いて――外へと駆けた。
己らが本来いる世界へ。
太古ではなく『今』の――世界へと。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
恐竜達はこの後どうなったか……きっと後に、事態把握の為に調査に来た一団が彼らを見つけて、なんか、こう、そう。お約束的な展開になったのかもしれません……!
ともあれありがとうございました!!
GMコメント
これってつまりジュラッシク・ワー……
と言う訳でご縁があればよろしくお願いします!!
●依頼達成条件
1:パークからの脱出
2:救援が来るまで耐える事。
どちらかを達成してください。
●フィールド『パーク』
ルモンド氏が建設した『パーク』と称される――まぁ動物園の様な構造です。
元々は再現した恐竜たちを見世物にする予定だったのですが……恐竜たちの暴走によって檻は完全に破られ、パーク内のあちこちには恐竜たちが闊歩しています。幸いにして外周、並びに出入口ゲートは破られていないようで恐竜たちは外には出ていません。
皆さんはシナリオ開始時、運営建物内に立て籠もっています。
建物自体はあまり広くないですが、だからこそ後述するT-レックスなど巨大な恐竜は建物内に入り辛いようです。その為、移動しなければ即座に危険はないでしょう……が、時間が進むと人の匂いを嗅ぎ付けて侵入してこないとも限りません。ちなみに皆さん以外に人はもういませんのでご安心ください。
脱出を目指すなら恐竜たちとの戦闘や、身を隠す非戦が役に立つでしょう。
立て籠もりを続けるなら、罠を設置する技能や陣地構築など防御を固める技能が役に立つでしょう。
何とかして生き延びてください!
●恐竜達
太古に存在していた生物達が復元されたもの……と思われますが、化石(骨)だけを元に博士によっていろいろ弄られた結果なので、今実際に動いている様な彼らがこの周辺に本当に存在していたのかは不明です。異世界『地球』という場所における『恐竜』に酷似しています。
大きく分けて二種類いる様です。
・T-レックス他巨大生物
非常に巨体。強靭な肉体や大きな牙を持つ個体達です。
攻撃力や耐久、防御力に優れ中々の強さがあるでしょう。薄い壁であればぶち破る様な膂力を持ってもいます。
反面、後述する小型生物と比べるとそこまで数は多くないようです。
・小型生物
おおよそ犬~人程度のサイズに収まる小型の恐竜達です。
命中やEXAに優れ、すばしっこい事が特徴です。数も多いので囲まれると些か面倒な事態になるかもしれません。ただ巨大生物達と比べれば耐久力や一撃自体はそこまででもないので、少数ならばそれほど苦労はしないでしょう。
●ルモンド氏
恐竜たちの骨を見つけた資産家。
色々金儲けをしようと企んでいましたが食べられました。
●博士
練達より招待された科学者。
ルモンド氏が見つけた骨に色々技術をつぎ込んで肉付け、更に個体として動けるようにしていましたが食べられました。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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