PandoraPartyProject

シナリオ詳細

嫉妬はねたみとそねみで出来ている

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「大変なのです!」
 開口一番、事態の緊急性を伝えるべくか、そう声をあげた『新米情報屋』のユリーカ・ユリカ(p3n000003)はバシバシと音をあげてテーブルを叩いた。
 叩いた衝撃でぐらぐらと空き瓶が揺れるもユリーカはお構いなしだ。早口で大変と宣う内容の説明に入っていく。
「お休み中に人がたっくさん来るお花見スポットがあるのです」
 冒険者たちが集う一角の丸テーブルを占領したユリーカは、付箋が貼られた地図をくるくると伸ばし、人差し指を立てればとある一点を勢いよく指差した。
 恐らく、指し示すそこが『お花見スポット』とやらなのだろう。
「そこが大変なのですよー!」
 これは一大事なのですよ! と白い翼をはたはたと動かして全身でアピールし始めた。

 さて、繰り返し大変大変とのたまう訳というのは、何やら怪しげな怪物が2匹住みついてしまったということらしい。
「全力でお花見を楽しんでる人を見ると羨ましくなっちゃうみたいなのです」
 どうにも心から楽しんでいる人たちを見つけると、のっそりとどこからともなく現れて襲ってしまうのだという。
 これが勤務先の何やらの付き合いでしぶしぶだとか、先輩の誘いで断り切れずにとっておきのゲームイベントを取りやめてまで食べ飲みに来ただとか、いやいやであれば現れないというから徹底している。
 俗にいう『リア充』とやらに狙いを絞って襲うからにはかなり慎重なのだろう。現れるまでにそれなりに時間を要する可能性は考えられる。
「皆さん、お花見は好きですか?」
 今回、敵の性質を考えれば、お花見を全力で楽しめる人でなければ辛い面もあるかもしれない。
 風流など分からない……という人はどうにかして『全力で楽しんでいる』という体裁をとることになるだろう。おびき寄せる方法はそれしかないようだ。
 また、今回怪物が住みついてしまったお花見スポットは今が稼ぎ時らしく、出店も多数あれば人も大勢いるようだ。
 場所的にはとても広く、一角を占領してしまってもまだまだ花見ができる場所も多い快適なお花見スポットではあるが、何分、花見の時期真っ盛りだ。
 早朝であれば人も捌けてはいるものの、日が昇るにつれ人が増え、夜もまた夜桜が綺麗だという理由でしばらく人でごった返しているのだという。
 時間帯やおびき寄せる場所も考える必要があるだろう。
「おびき寄せさえすればこちらのものなのです!」
 一度姿を現せば、たとえ楽しんでいたフリだったとしても逃げることなく襲い掛かってくるらしい。
 その理由というものの……
「怪物さんたちは嫉妬が原動力みたいなのです」
 『自分たちだけ楽しんでいて羨ましい!』という気持ちから始まり、もしそれが楽しんでいるフリだと分かれば、今度は『そんな風に騙されるなんて! その才能が妬ましい!』だとか、とにかくイチャモンをつけてくるようだ。
 また、戦っている最中も何かと嫉妬出来る部分を見つけては声をあげて詰ってくるから大変である。
「皆さん、共感して誰かに嫉妬しちゃだめですよ!」
 ユリーカが釘を刺すように言葉を付け足す。
 心を読まれるようなことはないが、態度や言葉で示してしまうと目ざとく見つけて『お前に何が分かるんだ!』などと八つ当たりしてくるらしい。めんどくさい怪物である。
 その分、めちゃくちゃに強い敵ではないようだ。きちんとやることをこなしていけば、いなせる敵ではなるだろう。

「それでは宜しくお願いするのです!」
 一通り説明したらしいと判断したユリーカは広げた地図を丁寧に丸めてぺこりとお辞儀した。
 ボクも行きたかったのですとぼやくユリーカはさておき、依頼はそんな感じらしい。
 小春日和を乱す怪物退治はこうして始まるのであった。

GMコメント

あたたかくなってきましたね。むしろ暑くなってきました。
少し遅めのお花見絡みのシナリオです。
花見フェーズが上手くいけば戦闘フェーズに移行します。
全力で楽しんでみてください! 全力で楽しむフリでもどうぞ!

●敵情報
妬み(ねたみ)
「あの人がいるから私が注目されないのよ! キィイ!!」
筋骨隆々の肉体に張りのある鳩胸、
黒髪ロングで化粧濃い目のややおブスな女の人型モンスター。
攻撃特化型で、誰かをねたむたびにパワーが増していくようだ。

嫉み(そねみ)
「どうせ俺なんて誰からも好かれてないんだ……引き籠ってやる……」
細っこいひょろひょろした体格、
ぼさぼさの整えられてない黒髪に隈つきの死んだ目をした男の人型モンスター。
防御特化型で、誰かをそねむたびに硬くなっていくようだ。

●場所
大勢の花見に適したかなり広い庭園。
出店が多数出ている区画と、花見用に開放されている区画とで分かれている。
花見用の区画はとても広く、人が混みあっている時間帯を除けば場所の確保には困らない程度。
全体的に桜のような、桃色の小さな花が咲き誇っている木々が乱立しています。

それでは、宜しくお願いします。

  • 嫉妬はねたみとそねみで出来ている完了
  • GM名祈雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月11日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
銀城 黒羽(p3p000505)
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
風巻・威降(p3p004719)
気は心、優しさは風

リプレイ


 目覚めを告げる鳥の声。
 人通りの少ないお花見通りは未だ静かで、ささやかな小鳥の声すらも聞こえてくるようだ。屋台が並ぶであろう広い道も、今はひっそりとした空気に包まれている。
 本日晴天なり。空を仰げば一面の青とぽつりぽつりと浮かぶ白い雲だけ。雨が降る気配は一切なく、予報通りで行けば夜まで快晴の一日となるだろう。
「ぶはは、まさに花見日和だなぁ」
 早朝に、と時間を決めた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)一行は庭園の入り口に集っていた。
 ほんのり肌を刺す冷たい空気も早朝ゆえの味わい深さだろうか。見上げれば花を付けた木々の葉にもつややかな粒が灯っており、朝ならではの光景を見ることが出来る。
 それぞれがそれぞれ、花見に相応しいと判断したものを持ち込んでいるらしく、ゴリョウはポルホガン料理なるものを持ち込んでいた。かつて味わった事のある料理を振る舞おうという魂胆らしい。
「良い場所があるといいな」
 一方、『GEED』佐山・勇司(p3p001514)も準備万端の持ち込み具合だ。レジャーシートも入った荷物を持って、今回の作戦に相応しい場所を探しに歩く。
 そうして見付けたのは中心部からやや離れた、他と比べて幹の太い一本桜が咲き誇るスペースだ。他に来るであろう花見客を考慮しての事で、花見客も場所取りぐらいで少なく、楽しんでいますという空気を出している訳でもないのだから、おびき寄せるには充分だろう。
「ここなら大丈夫そうだね。お花見の準備しようか、手伝うよ」
 『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)も最適な場所の発見に一役買い、ついでにシートを広げるのを手伝って花見の準備を始めていく。広げ終わらない内にはらはらと一本桜の花びらが舞い落ちて、シートを飾り立てていた。
 その横で『誓いは輝く剣に』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の髪が風にさらわれふわりとなびく。早朝にも関わらず寝癖ひとつない銀糸を耳にかけ、ひとつ、大きく伸びをした。
「うーん、綺麗ですねえ。妬み嫉みで終わってしまうなんて、寂しくはないんでしょうか」
 家族以外とのお花見が初めてなシフォリィは、折角だから楽しくいきたいと普通のお弁当の他になにやら色々持ち込んでいる様子。どんなものかはお花見が始まってからのお楽しみだ。
 『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)も佐山や風巻が選んだ場所にそびえ立つ桜の木を見上げながら、ゆるり唇に笑みを乗せる。持ち込んだお酒を傾けながら眺める花は、それはそれは美しいものだろう。
 生憎、今回の主目的は別なのが惜しい所。
「嫉妬、ねえ……。ともかく、住人に迷惑かけるのはいけないわ」
 誰しもが持っていると思われる妬み嫉みも、縁のない人間からしてみればいまいちピンと来ないもので。ほんの少し首をかしげてしまうのも仕方のないことだろう。
「ですです。がんばって退治しちゃいましょう!」
 その隣で『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317) はもふもふの狐尻尾を揺らしてぐっと拳を握る。手作りのお弁当とお菓子を持ち込んだルルリアは今か今かとお花見を楽しみにしているようだった。依頼通り、めいっぱい楽しむつもりだろう。
「まあ、まずは花見を楽しむとしようぜ」
 『任侠』亘理 義弘(p3p000398)は辺りを見回し、他にどのくらい人が来ているのかのチェックをしながら声を掛けた。時間帯のお陰で客足はほとんどないに等しい。巻き込む危険も少ないことを確認すれば、他に倣って桜を見上げる。
 目を細めて思うのは、自身のいた世界の似た花のことだろう。どこの世界でも、花の美しさというものは共通なのかもしれない。
「にしても、春には変なのが出るとは言うが、本当に出るとはなあ……」
 冷たい雪も解け、芽吹きの春といえば旅立ちやら門出やらいろいろ新しいものが始まる季節だろう。『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)はぽつりとそんなことをぼやいた。
 仲良く出来ればとは思うものの、前情報であるのはなんだかすごい体格の女性とひょろい男性型のモンスターということだけ。後は己らの手腕次第だろう。
 さあ、いよいよお花見だ。


「おにぎりと、後は定番そうなの詰めてきた」
「ルルもお弁当作ってきたのです」
「あ、飲み物揃った? じゃあ始めよう」
 各々持ってきたものをレジャーシートの上に広げれば、まずは乾杯の音頭を。
 かんぱーい! と、声をあげれば傾けられるのはジュースだったりお茶だったり、成人組はお酒だったりお酒(水)だったり。
「花を見ながら酒……といきてぇが……」
 依頼中だということを鑑みて水で我慢しようと決めた黒羽の横では、堂々と酒を傾ける胡蝶と義弘の姿が。端が重ねられる赤い盃も風情を醸し出して、黒羽はごくりと唾を呑み込む。いいやと首を横に振り、酒(水)を飲むのは責任感ゆえだろう。
 せめてと酒(水)の肴に話を聞く態勢に入った。味わい深い話が聞ければ、良い肴になるだろう。
 一方のお酒持ち込み組は、咲き誇る花を眺め、アルコールで喉を焼いた。飲む手は緩むことなく、美しい花の下で酒を味わう。この一時のなんと素晴らしきことか。
「しっかしなかなか綺麗じゃねえか。こちらの花見もいいもんだ」
「そうね。悪くないわ」
 おとなの楽しみ方とでも言えばよいだろうか、声をあげて騒ぐでもなく、花を人を眺めて盃を傾ける。これもまた、花見の楽しみ方のひとつと言って過言ではないだろう。
 はらりと落ちてきた花びらが一枚、赤が透ける盃に落ちれば風流だねえと声が返る。
 杯を乾かせば次に注がれるのは義弘が持ち込んだ桜の酒だ。桜相応に咲き誇る花の下で、桜酒を飲むのもまた贅沢な一時になるだろう。
「それに、楽しく騒ぐ仲間を見ながら飲むお酒も美味しいしね」
 そう語る胡蝶の視線の先には持ち込んだお弁当を交換するシフォリィ達の姿が。
「テリヤキチキンという鳥のお肉を持ってきました」
 シフォリィが焼いて持ち込んだ肉は、どうやら幻想東部に生息するという動物の肉らしい。折角なので皆さんに食べてもらいたいと、お弁当の他に用意したようだ。カリカリジューシーな味わいで、一度食べたら病みつきになってしまうかもしれない。
 それに対抗するという訳ではないが、ゴリョウもまた持ち込んだ土産を皆に振る舞う。
「ぶははっ、ちと味が濃いがコレがまたクセになるんだよなぁ」
 にんまりととっておきを差し出したゴリョウがまずは自分がとポルホガン料理を大口で齧る。強めの香辛料ががっと味覚を刺激するが、どうにもこれがクセになるらしい。
 大食漢の彼の口に易々と飲み込まれれば、威降が「まだまだたくさんあるよ」と買ってきたお弁当を勧めていく。
 行楽弁当として売られている弁当は花を象ったおかずであったり、大勢で摘まめるよう小分けしてあったり、様々だ。
 その傍らには売られているものとは一味違ったお弁当が並んでいる。からあげやら卵焼きやら、どうやら手作り弁当のようだ。
「作れる人はすごいなあ」
「必要だから身につけたモンだが、こういう時には悪くはねーわな」
 ジュース片手に作ったものが各々の口に放り込まれていく様を眺めた勇司はどこか満足げに頷いた。必要だから覚えた。ただそれだけの事だとしても、こうして役に立つとやはり少しは満たされるような気もする。
 負けじと自身の手作りお弁当を前に押し出したルルリアがふふふとなにやら企み顔で。
「ルルはお菓子も持ってきたのです」
 じゃんとお菓子を出せば、おおーと軽く歓声があがる。
 お弁当ばかりの空間にお菓子がそっと添えられた。もうお腹がいっぱいだという人にもこれは嬉しいオマケだろう。甘味は別腹ともいうのだから。
 わいわいと盛り上がる一角と、それを肴に酒を傾ける一角と。
 そして、それを眺めるふたつの人影が存在した。


『キィイイ~! こんな朝早くから8人も揃って!』
『そういう友人がいていいよね……俺なんて……はあ……』
 物陰から登場――などという、一見ありがちな登場の仕方ではなかった。ソレらはいつの間にかそこにいて、気が付いたら堂々と仁王立ちしていたのだ。ひとりはやや後ろに隠れているが。
「うわっ、出た」
 さてそんな言葉を誰が言ったか。あるいは誰かしらの心の声が漏れたのかもしれない。
 元々ソレらを引き付けるためのお花見だったがゆえに、冒険者たちの対応は迅速だった。
「黒羽さん、こっちです」
「折角の料理、ひっくり返されるのは勘弁してほしいからな」
 軽快な足取りで駆け出したルルリアと勇司はタンクを買って出た黒羽とゴリョウへ手を振る。他のメンバーも倣ってレジャーシートから離れ、声を掛けられたふたりはというと……。
「てめぇ鏡見たことあるか? その化粧、全然似合ってねぇよ」
 などと煽るのは黒羽だ。勿論、狙いはと言えば女性型をした『妬み』である。
『な、な、な……!』
 一瞬、時が止まったかのように動きを止めれば、すぐにドスドスと鈍い音を立てて地団太を踏み始めた。地面が揺れるような錯覚に襲われるが、あながちそれも間違いではないような程、『妬み』はパワーに溢れる女であった。
『なんですってえええええええ!!!』
 まるで茹蛸のように顔を赤らめれば更におブス度がアップする。化粧では隠せないものもあるのです。
 ちなみに暴れ出した『妬み』の流れ弾でひじ打ちを喰らった『嫉み』は「どうせ俺なんか……」と更に凹んでいた。
 占めたとばかりに仲間の元へ駆け出せば、追い打ちをかけるようにゴリョウが一歩前へ出る。
「くははっ、見よこのスタイル。これが新世代のオーク、ゴリョウ・クートン様よ!」
 名乗り口上をあげ、ふんっとギフトを発動すれば、驚くなかれ、みるみるうちに細身へと変身していくではないか! 先ほどまでの大喰らいオークが一変して細身のジェントルマンオークに変わる様はまるでマジックだ。
 これには目を白黒させた『妬み』は一瞬足を止め、続いた言葉にまた硬直する羽目となる。
「良いことを教えてやる。このスタイルは勝手に脂肪が燃えるのでダイエットなんぞ俺には不要なのだ!」
 その言葉がどれほどの女性を傷つける事になるのかを、彼はまだ知らない――。
 モンスターと言えども見た目は女性のそれである『妬み』もまた、例外ではなかった。
『キィイ!!! どれだけダイエットしても痩せないのに! 変なサプリ使ってるって言いふらしてやるんだから!』
 『妬み』の パワーは アップした!
 一方でどうやら『妬み』狙いだと解した『嫉み』は「どうせ俺なんか……」とデジャヴな台詞を吐いていた。さりげなく防御がアップしている。
 二人の誘導にまんまと引っかかった『妬み』は、折角の綺麗なロングヘア―を振り乱し、ゴリョウへと腕を振りかぶる。
 大振りのパンチは見た目相応の威力を持って振り下ろされるが、その単調さから先手を取られることになった。
「さあて、一発入れさせて貰うぜ?」
 攻撃パターンとしては『妬み』となんら変わりはない。違いがあるとすれば、視野の広さだ。
 前情報からして邂逅を密やかに楽しみにしていた義弘は、期待通りの筋肉をした『妬み』を見ればにやりと口の端を釣り上げる。それが見掛け倒しではない事を祈り、一歩を踏み込めば『妬み』の腕の下をかいくぐるようにして義弘が拳を振り上げた。タメの入った一撃は重く、たくましい『妬み』も一瞬怯まざるを得なかったようだ。
「折角の花見だ、邪魔されていい気分はしないもんだぜ」
 拳と共にかけた言葉に『妬み』の視線がぎょろりと義弘の方を向く。どうやら言葉は通じており、その意味も理解しているらしい。
『ふんっ、私だってねえ、あんたたちがいなけりゃこんなことにもならなかったのよ!』
 だが、怯んでもなお、『妬み』が繰り出した拳は止まらない!


「くはっ、結構キツいな!」
「大丈夫、癒します」
 攻撃は皆がいるからと、率先して回復に回るシフォリィが詠唱を唱え傷を癒す。戦いにおけるヒーラーとは重要で、これが無くては戦いにならないのだ。
 攻撃の隙を探りながら、シフォリィは首をかしげる。
 妬むこと。嫉むこと。折角のお花見の場で、そればかりを気にかけて襲う怪物たちは果たして寂しくはないのだろうか。本人たちに聞こうにも、じっくりと話をしている余裕はなさそうだ。
 シフォリィ達は、短期決戦を選んだ。徐々に強くなる敵に対して最も有効といえる戦法だろう。
 そして、それは正しい判断だったと言える。
 癒し手がいれば攻勢にも移りやすい。やられたらやり返せとばかりに前へ出たのは威降だ。素早い移動で瞬く間に『妬み』の懐まで入り込めば、手にした刀を滑らせる。
 一撃を既に貰った『妬み』の反応は素早い――が、その反応を邪魔する存在がそこにはあった。
「ルルにお任せを!」
 縦横無尽に張り巡らされた糸は『妬み』の動きを阻害し、仲間の攻撃の補佐としてしっかりと機能していた。
 穏やかな青年の唇に薄らと笑みが乗る。刀はぶれることなく、『妬み』の胴を斬り裂いた。芸術的とも呼べる太刀筋は、その柔和な立ち振る舞いからは想像できないものだっただろう。
『やるじゃない! ああん、もう、ねたましい!』
 もはや何がどうとか粘着を付けるどころか、とりあえず妬ましいという感情をぶつけ始めていた。煽られてタダでは済まさないという意思の表示か、狙いは黒羽やゴリョウばかりに定まっている。
 その分、フリーになる人間が多いのは利点だった。
「悪いが、ここで終わらせてもらう!」
 攻撃に集中すると決めたら全力を出すまでだ。高く舞い上がった勇司は華麗に一回転を決めると、自身の体重と重力が乗った蹴りを『妬み』へとお見舞いした。
 一見すれば隙の多い攻撃にも見えるだろう。しかし、その威力と実力は相応のもので、まさしくヒーローさながらだ。映画のワンシーンにも負けず劣らずの蹴りっぷりである。
 ふらついた『妬み』は首をぶんぶん横に振る。相当に消耗しているらしく、攻撃もどんどん単調になってきており躱しやすくなっていた。
『んもう! なんなのよあんたたち!!』
「何と言われても、ねえ。悪い子にはお仕置きよ」
 攻勢は止まらない。
 『妬み』へと素早く組みついた胡蝶は、その体格差を物ともせずに投げの体勢へと入った。古来から、力の流れをうまく利用すれば自身より大柄な人間にも負けぬ力を出すすべがある。
 胡蝶はそれを身につけていたのであった。ふわりと言うには重たい身体が宙を舞う。
 一本。
「反省なさい?」
 ドスンと重たい音を立て、『妬み』は綺麗な幕引きとなった。

『……あっ』
 一転、視線が集中した『嫉み』はあることに気付いた。
『もしかして、次、俺の番?』
 うじうじしていた彼が気を失う前に見た光景は、十人十色に肯定する姿だった。


「お、目を覚ましたか」
 あまり目立ってはいけないと、木の根元に転がされた怪物両名がむくりと身体を起こす。すっかり打ちのめされて意気消沈していた『嫉妬』に義弘が声をかけ、とりあえずと盃を押し付けた。
「これからお花見、一緒にいかが? ちゃあんと改心して、人を襲わない子になれるなら、だけどね」
「お二人だけが仲間はずれというのも嫌です!」
「妬みも嫉みも至極上等、逆に言えば、人の良い所を見つける天才ってヤツだしな!」
 口々に声を掛けられれば二人は顔を見合わせ、少し照れくさそうにうなずいた。どうやらもう反抗する気はないらしい。
 再度乾杯をするために、勇司やルルリアもジュースを注いで、シートに座り待機している。黒羽からは謝罪の言葉が二人にかけられた。
 押し付けられた盃に酒が注がれ、威降がにこやかに声をかける。
「少しは発散できたかな? それじゃあ、後は楽しもうか!」
 もう一度――乾杯!

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド

状態異常

なし

あとがき

プレイングお疲れさまでした!
お花見は楽しんでいただけたでしょうか。
どうやらこの妬みと嫉み、お花見客の感情から生まれたものでして、
つまり、どういうことかというと……。
来年が楽しみですね。

それでは、ありがとうございました。良い冒険を!

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