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シナリオ詳細

<マジ卍体育祭2020>お弁当泥棒マジ許すまじです

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「はい、どーも。綾敷さんだよ」
 綾敷・なじみは無ヶ丘(なしがおか)高校に通う一年生。……のはずだが、今日は希望ヶ浜学園にいる。
 体操服を着て、希望ヶ浜学園の生徒にまぎれるなじみ。
「綾敷さん、なじんでるでしょ~。え? 余計目立つ? そんなことないよ。これだけ人がいれば誰も私のことは気にしないって」
 今日は1年に1度の体育祭。
 台風で延期になった祭りも、……ようやく本日の開催となった。大玉転がしやクラス対抗リレーなど、あちこち賑やかな一日だ。
 やれ赤勝てだの、白負けるなだと、熱気にあふれている。
「でも、こんな日だからこそ気をつけなきゃだめだよね。綾敷さん、詳しいんだから。ほら、教室のほう、なにか騒がしいみたいだよ」

●弁当消失事件
「犯人はこの中にいるです!」
 教室に入るなり、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)にびしっと指を突きつけられたイレギュラーズたち。
 ユーリカはパタパタと羽を震わせ、教卓のあたりを往復している。
 一体何の犯人なのか。
 問えば、ユーリカは拳を振り上げる。
「お弁当です! 体育祭に持ってきたボクのお弁当がないですよ! 豪華二段のやつなのです!」
 楽しみに持ってきたお弁当がなくなっている、というのである。
「一段目には卵焼きが入っていましたし、二段目のごはんはふっくらなのです! のりたまなのです! それがお弁当箱ごと、どこかへ行ってしまったですよ!
 犯人はまだ遠くへは行っていない……そ、こ、で! 現場を発見したユーリカは、なじみ刑事に封鎖を頼んだです!」
 もしもその段階で荷物を確かめたならば、イレギュラーズたちのお弁当もなくなっていることがわかるだろう。
「まあ、立ってただけだけどねえ……?」
 と、首をかしげるなじみ。
「でもまあ、こういうのはヨルって相場が決まってるんじゃないかなぁ」
「ああーーーー!」
 教室の後ろ、透明な”何か”が弁当をつかんでいる……。
「あれですー!!! とっつかまえてやるです!」

GMコメント

●目標
・ヨル<インビジブルズ>からお弁当を取り戻す
・お弁当を食べる

●状況
今日は待ちに待ったマジ卍体育祭。
ユーリカとみなさんはヨルにお弁当をとられました。
早めに取り戻せばまだ無事なはず!
追いかけて取り戻してください。

●登場
ヨル<インビジブルズ>×8体程度(盗られたお弁当の数だけ)
 ほとんど透明なヨルです。姿は小柄なサルに似ているようです。
 よく見ると光が微妙に屈折してうっすらわかるかもしれません。目がいい人や、その他の感覚が優れている人はすぐにわかるでしょう。
 透明ですが、実体はあります。
 生徒の荷物をあさり、お弁当を奪い取って学校中を逃げ回っているようです。
 探し出したり足止めするのに工夫をしてもいいですね。
 強くはありませんが、すばしっこく回避が高いので、多少攻撃を当てづらいです。

●場所
 希望ヶ浜学園 校舎~校庭まで。

●お弁当
 お弁当タイムに備えて、お弁当の中身を決めておくとより楽しめるでしょう。
 料理の心得のある人は作ってあげるとよいですね!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態はお弁当の中身が寄ることだけです。

  • <マジ卍体育祭2020>お弁当泥棒マジ許すまじです完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き

リプレイ

●食べ物の恨みは恐ろしい
「おっひるー! おっひるー! 美味しいおべんとー♪
……が、なあああああああい!!!」
『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)はがっくりと膝をついた。MEGA-Pyon-TAが心配そうにそっと主人をみあげている。
「くっそー夜妖のヤツ、皆の笑顔と元気の源を奪うなんて許せねぇ!
いつも元気なコータ君でも、そればっかりはマジ許すまじだぞ!
ぜってー捕まえてお尻ペンペンの刑にしてやるからなー!!」

 同時刻。
 夜妖の被害はあちこちで起こっていた。

「ない、ない、ないですーーーー!」
『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)は悲鳴を上げた。
楽しみに大切にしまっておいたお弁当が、消えている!
「メイが楽しみにしていたお弁当……スペシャルビックレッドチリバーガーを盗むなんて許さないのですよ!
食べ物の恨みの恐ろしさを思い知るのですよ!!」

「ま、待って! 返して~~~!!」
 ぱたぱたと夜妖を追い掛けるが、追い付けずに転けて涙ぐむ珠緒。かなりの不幸体質である彼女のお弁当が無事であろうはずがなく、真っ先に狙われることとなった。
『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)がそれをほほえましく見守っていたところ、自分の包みも見当たらない。
「まさか、俺の昼飯まで盗まれるとは思わなかったぜ……」
「幻介様のお弁当まで……何でした?」
「酒とつまみだな」
「……幻介様、それは晩酌セットではありませんか」
「いや、晩酌じゃなくて俺にとっては昼飯なんだって!
パンだって元を辿れば麦だし、ビールだって材料は麦だ。
なら、結局腹に収まっちまえば同じだって……」
 珠緒のジト目がこちらを見ている。
「だめ? 許されない? ……まぁまぁ、細けえ事は気にすんなって!」
「うう……食生活が心配です……こんなことだろうと思っていましたけれど……」
「んな事より、とっとと捕まえて折檻してやろうぜ。なっ?」
(ちゃんとしたお弁当を取り戻して食べていただかないと!)

「あ、俺の唐揚げ弁当が!?」
『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)の髪がふぁさあと逆立つ。
 変化がとけかけるほどに、カイトは怒っている。……共食いではない。海のお魚さんだってお魚を食べるし、猛禽は鳥を食らうものなのだ。
「いい度胸だ、猛禽から獲物を奪うというのがどういうことか、叩き込んでやろうじゃねーか」

「くそっ! せっかく人が早起きして作ったサンドイッチをよくも!」
『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の横で、みぎゃー、と声をあげる『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)。
「しにゃの具材盛り盛りサンドイッチがー!!」
(いつもは奪う側のしにゃがまさか奪われる側になるとは……ですが気持ちはわかりますよ。隣のお弁当は青く見えるってやつですね!)
「料理は基本的にできない私だがサンドイッチくらいは作れるのだぞ!!!」
 昼がなければ午後の戦いに全力を出せない。ブレンダは拳を握りしめた。
「ここは全力で取り返しに行かなければ!」

「……」
『章姫と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)はロッカーの前で黒いオーラを漂わせながら沈黙していた。
(俺は母上の弁当が好きだ。とくに卵焼きが好きだ。
体育祭の準備に教師として追われ、漸く、漸く弁当にありつけると思ったら盗まれていた時の絶望)
 ことの重大さを分かっていないヨルは、コミカルに弁当を抱え、すっと消えていった。
「貴殿にわかるか……? わからんだろうな」
「あら、鬼灯くん怒っているの?」
「章殿……」
 それはもう、とても怒っているさ。はい先生怒りましたーくらいなものだ。
「……さぁ、舞台の幕を上げようか」

 ピンポンパンポン、とアナウンスが入る。

「えー、マイクテス、マイクテス」
『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)の声だ。
「あ、あれ……散々様じゃない?」
「うそっ」
 慌てていた一般生徒たちも、その声を聞いて立ち止まる。
 演劇部である未散の声はよく通る。
「校内にヨル発生、繰り返す、ヨル発生。
 お弁当を盗み逃走している模様。特待生が追走中につき、落ち着いて窓際に居る生徒は即座に窓を閉めて下さいまし」
 手元のaPhoneは、すでに同様の被害に遭った特待生たちと通話を始めている。
「なに、ちょっとしたプログラムの一環で御座いますよ。
 美味しくお弁当を食べる為の準備運動がてら――
 良いですか、皆さん。
 重罪人の頸を縊ってやれ!」
「はい!」
「応」
「おー!」
「おーです!」
 未散のはからいにより、運動会ではおなじみ、天国と地獄と校歌のマッシュアップが流れ出す。
「打倒、ヨルですよっ!」
 ……さあ、お弁当戦争の開戦だ。

●お弁当奪還・序
「むむっ、こっちですね!」
 メイの鋭い嗅覚は、確実にスパイスの匂いを捕らえていた。
 それにこっちは……。ハンバーグのにおいだ!
 廊下を曲がればすぐにひとつお弁当を見つけた。
「みつけたです!」
 ロケッ都会羊に点火、ブルーコメットが恐ろしい早さでぶつかっていく。もちろん弁当には被害が行かないようにしなくてはいけない。
「食べ物の恨み、思い知るがいいです!」
 ヨルのみをはね飛ばしてぐるぐると回って加速を殺す。最後にはぽてっと落ちてくるお弁当を慌てて受け止める。
 すたっと着地。
『1つ確保ですね。素晴らしいです。っと、A班、南2F廊下で遭遇です』
「りょうかいですよ!」
 ここからなら飛んだ方がはやいだろうか。
「……フフフ……
食べ物の恨み確実に思い知ってもらうのですよ……
絶対に逃がさないのですよ!!」

「待てー!! 食べ物の恨みは恐ろしいんだからなあ〜!!!」
 がっしゃんがっしゃんMEGA-Pyon-TAと山田さんを引き連れてヨルを追いかける洸汰と、必死で逃げるヨル。
 そんなさなか、顔見知りを見つけた。
「あっユータじゃん! そんな息切らしてどーしたの?」
「……多分、同じ目的じゃないか?」
「えっ、そっちもお昼取られちゃったんだー! じゃーちょーどいいや! ちょっとオレ達の事手伝って!」
「おい」
「オレ達はとにかく夜妖を追い掛けて走るから、ユータは夜妖がどっちに行ったか見てるのと、お弁当の確保を頼むな!」
「まっ……」
 言う前に走り去ってしまった。

「追い詰めたです!」
「やりい! ありがと!」
 メイの斬神空波が、ヨルにぶつかる。
「「ごめんなさい」は!? 「ごめんなさい」はぁ〜!?」
「ピィピィ!」
 元気チャージでペチペチと叩かれるヨル。
 当たり前のように二人の弁当を持たされる湧汰。あまりにも自然に渡されるのでつい受け取ってしまった。
 山田さんと目が合う。

●お弁当奪還・破
「へへん、こいつでどうだ!」
 カイトが見えるように設置したロープは囮。
 カイトは黒板消しトラップをしかけていた。
「しかし、空きっ腹に運動はキくなぁ……腹に何か収めてえ所だな」
 待ち構える幻介は考える。
 酒とか。つまみとか。
 物質透過で消えていったカイトは、今度はパンをくわえてもどってきた。
「おっ?」
「へへん。買ってきたぜ。これで購買でも負け知らず! 食べるか?」
 コロッケパンとカレーパンをくわえて張り込む二人。
 幻介はイヤホンで仲間の様子を探っている。
「いたっ!」
 天井から顔を出していたカイトが叫び、するりと消えていった。こちらに追い込むということだろう。
「来たか」
 教室の扉は二枚。
 想定されるべきルートもいくつかある。
 だが、幻介にとってそれは迷う理由とはならない。
 幾多もの鉄火場をくぐり抜けてきた剣士としての経験が告げている。こちらだ、と。
 敵は、2体。
 片方は黒板消しをまともに浴びている。
「俺の唐揚げ、返せええええええぇ!!!!!!」
 カイトが変化を解き、両翼を広げる。
 爆翼。
 大きな緋色の翼が、ばさりと広がる。
 相手が消えた、と思ったのはヨルのほうだ。
  天高く舞いあがった幻介は、虚空を足場に、頭上から一刀を切り払っていた。
「にしても、俺らの飯をパクるなんて……運が無え奴だな?
それか、余程の命知らずか……どちらにせよ、命運は終わっちまってるとしか言い様が無えぜ
ていうか、学校で酒とか呑んでんじゃねえよ!」
 盛大なブーメランだが、自分の事は棚に上げる。
 珠緒は疑わしい目でじっとこちらを見ていた。 
「あー、ほら、無事だぞ、弁当は」
「もうっ!」
「獲物を逃がすか!!!!!」
 ヨルに、緋刃六羽が突き刺さる。
 執念深く、どこまでもどこまでも追いかけてゆく。
「俺の弁当ーーーー!」
『追加で2体、殲滅。よいペースです。お弁当は無事ですか?』
「無事だぜ!」
「……」
 カイトの基準は食べられるかどうかだ。
 まあ、落としたわけでないし。やり遂げた顔をしている。
「すぐに連絡できるって便利だよなコレ。鳥の手だと触りにくいけど、人の手なら余裕だな!」
 人型をとらないと、一気にタッチが反応してしまって誤変換が多くなるし。

 鬼灯のエプロンのポケットのaPhoneが震えた。
 ふむ、うまくいっているらしい。
 仲間たちがヨルを追いかけ回している間に、鬼灯もまた罠の準備をしていた。
 塗料を塗った弁当箱を校舎のあちこちに仕掛けていた。
(実体がある以上、逃れられまい)
 事務員の格好をした『暦』の弥生がそれを手伝っていた。
「不発のものはいかがいたしますか?」
「無論、回収だ」
「奥方のご命令ならばこの弥生、身命賭して任務を遂行致します」
(凄まじく残念そうな顔をしてるが俺が怒られるんだ、許せよ弥生)
「ところでこれ給料でます?」
「……来たぞ」
 ヨルが見えるようになれば、迷うことはない。
 いくら姿を隠しても無駄だ。
 忍形劇『長月』。
 手裏剣が深々と突き刺さり、黄緑の光があふれ出す。怒りに暴れようとしても、その毒は身体の自由を奪っていく。
「騙されて悔しいか? ねぇねぇ今どんな気持ち?」
 ぷるぷると震えるヨル。
「鬼灯くん、あんまりいじめちゃ可哀想よ?」
「いいんだよ、章殿。悪い子にお仕置きするのも教師の役目だからな」
「鬼灯くんったら」
「大人げない? 食べ物の恨みは怖いんだぞ。母上の弁当、返してもらおうか」
「奥様のお弁当を奪った罪、万死に値します」

●お弁当奪還・急
「第二の弁当召喚!
しにゃ結構食べる派なんで2個弁当あったんですよ!」
 ばばんと二つ目の包みを取り出すしにゃこ。
 隙あらば他人の弁当をちょっぴり味見できたらいいなと思っているしにゃこ。ほかの人間が同じようなことを考えないとも限らない。
 そのための保険だ。
「やるな……」
 ブレンダはそれを感心したように見ている。
「この匂いに釣られて顔出す可能性もありますしね! と言うわけでいっちょ飛んできますよ! とうっ!」
「唐揚げ!」
 別のお仕事中の鳥さん(カイト)が釣れたのはさておき。
「ふんふふん」
 飛行しつつ、しにゃこは高いところで見渡していた。
 ふわふわと弁当を……弁当を引きずっていくヨルが見つかった。あれは蛍光塗料だ。それにあの赤いナプキンは、ブレンダのものだ。
「発見! ブラフと赤い包み! そして、スープジャーです!」
 報告されていたお弁当は全てそこにある。
 そろそろこの局面もラスト、だ。
「皆様、今何処ですか!
 ――OK、合流致します!」
 未散は背負ったジェットパックで、ヨルのもとへと駆けつける。慌てて逃げ出そうとするヨルは、しにゃこに。そしてブレンダに阻まれる。
「すばしっこいですね……けれど、それは理由になりませんよ」
 ソリッド・シナジーが経路を最適化する。未散はきわどいカーブを繰り返し、どんどんと距離を縮めていく。
 そして正面からは……。
「貴様らぁ! 私の弁当を返せ!!!」
 ブレンダが勇ましく名乗り向上をあげた。
「人の物を盗るような輩にはお説教だ。私の説教は痛いぞ?」
 すなわち、肉体言語である。
 流れていたBGMが勇ましく転調した。
「ぼくのエビフライと暖かスープを返せェェェッ!!
あんまりシャカシャカしたら具が潰れるでしょう阿呆んだら!!
楽しみにして居たんですよ!
皆で机をくっつけて、きゃっきゃと交換したり!
制汗剤、何使ってる? 良い香り! だなんて男子が少し照れる様な話題に耽ってみたりする!
ジュブナイルな感じ!!」
「おおおう」
(そうだ……生徒たちも、楽しみにしていたはずだ)
 ブレンダがふるうは、閃光娘の追走曲。
 前へ進むモノを推し進める先陣の刃。何体いようとも……まとめて狩りとってみせる。
 弁当が一つ落ちる。
「普段ぼっち系のぼくでも混ざれるのをシミュレーションを重ねて
朝から楽しみにしてたんだぞ!!」
 未散はずざあっとスライディングして、弁当を必死に受け止める。
(戦っているところを生徒に見られては困るのでな。速攻で片を付ける
なにより暴れられては弁当の中身が心配だ!!!)
「すばしっこさが売りらしいですけど、しにゃの魅力の前には無力!」
 しにゃこラブリービームを浴びたヨルは、ふらふらとしにゃこに寄ってくる。
「逃がしちゃいけません!」
「しめた!」
 ブレンダの修羅媛の狂詩曲。戦うモノを縫い止める一射。生徒たちの弁当を思い、守らんとして放たれたそれは、ヨルの二体のみをおもいきり貫いた。
「残さず狩り尽くしてやります!」
「さあ、存分に……!」
 未散の嘩乱緋唱。未散がその場にいるだけで、仲間たちの動きは研ぎ澄まされていく。
 フェアリーズゲイム。
 多数の妖精たちが弁当めがけて群がった。
 みなぎる力を。心を一つにして。
「いきますよ!」
「せーのっ」
 苛烈な攻撃がヨルのみを欠片もなく消し飛ばした。
 その日、ヨルは思い知っただろう。
 特待生たちの弁当に手を出すのがいかに愚かなことか……。

●お弁当タイムだ!
「ユーリカ殿、取り返してきたぞ。昼がない、というのはキツいからな」
「ありがとうです! 窓から見てたです。かっこよかったですよ!」
「さて……私はサンドイッチだからそこまで被害はないと思うが……」
 ブレンダはそっとバスケットを開いた。
 多少ずれているくらいで、なんとか無事だ。
「ふむふむ、しにゃこもギリギリ崩れてないようで何より! ぎっちり詰めといて良かったですね!!」
(よかった)
 スープだから、未散のお弁当は無事だ。
「無事にみなさんもお弁当をとりもどせたようでなによりですよ。では、ぼくはこれで」
 去っていこうとする未散を、皆が何か言いたげな目で見ている。
「……」
「あのさー、さっきの? って未散?」
 首をかしげる洸汰。
「な、何かの気のせいでは?」
「どうだったかな、弥生」
「命じられるままにお答えしましょう」
 鬼灯が尋ねれば、弥生はかしこまって答えた。
 言い逃れはできないらしい。
(確かにぼくの聲だった、成る程)
 ふ、と笑う。
「……――其の。机をくっつけて。
お弁当を囲むのを、お許し頂けますでしょうか」
「ふっふん、しにゃこ、見ちゃいましたよ。美味しそうなお弁当じゃないですか! 逃さないですよ!」
「メイのスペシャルビックレッドチリバーガーを食らうがいいです!」

 というわけで、みんなでお弁当タイムとなった。
(エビフライ……食べるんだ……!)
 高嶺の花にして孤高の未散がかなりかわいらしい一面を持つことに生徒たちはざわついていた。
「aPhoneいいよなー」
「なかなか便利だな」
「見てくださいよコレ最新モデルなんですよー!」
 しにゃこがキラッと取り出したのは最新のaPhone……10!
「10! 並んだです!? シティーガールとしては見逃せないですよ!」
「もー、ちょっとだけですよ?」
 微笑ましく、ちょっとずつ弁当を交換したりなんかして。
「やっぱり人のお弁当は美味しいですね!」
「飾り切り……というのもあるのだな。器用だな」
 ブレンダのサンドイッチは色とりどりでボリューミー。分厚いハムに、しゃきしゃきのレタスとトマトがアクセントだ。
 しにゃこのサンドイッチは小さく切られて可愛いピックで留められている。
「一個上げるのでそれください!」
「ふふ、いいぞ。だがそちらももらおうか」
 しにゃこは小さいのを1個とカウントし、高レートでの交換をせしめていた。
「カイト殿のはむしろ増えているような……?」
「へっへー! 焼きそばパン!」
「戦いのさなか、購買で買い足していたからな」
 弁当が寄っていようがお構いなく、喰えれば満足な鳥さんだった。
「やっほーい!」
 メイは取り返したスペシャルビックレッドチリバーガーに、口を目いっぱい開けて元気よくかぶりつく。
「みぎゃ! 辛そうですよ!」
「刺激的な辛さがジューシーなお肉に絡まって、絶品なのですよ!」
「一口交換しましょう!」
 メイの口の周りはソースだらけになってるが、気付かず、モグモグと幸せそうに頬張っている。
「むむ、其方はデザートに秋のフルーツ盛り合わせですか!」

「お気に入りの紅茶と大好きな薔薇に囲まれてご満悦な章殿は今日も愛らしい」
「♪」
 鬼灯は、愛しの人形のお茶会を満喫していた。
 ドールサイズの鞄は机の上に広げられ、ミニチュアの楽園を描き出す。薔薇の庭園と優雅なBGM。きつね色に焼けたお菓子と紅茶……。
 すべてが完璧に整っている。
 幸せをかみしめ、うきうきと弁当にとりかかったが、弁当を開けた鬼灯は固まる。
(……ブロッコリーは抜いてくれと言っただろ母上……)
 ちらりと章姫を見る。情けないだろうか。目が合うと小首をかしげてほほ笑んだ。

「うっ……」
 洸汰は弁当の蓋をできる限りそーっと開けた。
 寄っている。
 ケチャップたっぷり、ボリュームずっしりのハンバーグ弁当……のはずだった。
「せっかくおばちゃんが作ってくれたのに……」
 今日は体育祭があるんだと食堂のおばちゃんに話したら、「じゃあたくさん食べなきゃね!」と用意してくれたものだったのだ。
(そんな大切なお弁当が……ぐちゃぐちゃに……寄ってる……)
「おっ、うまそうだな!」
 カイトがにっこりと笑う。
「いらないならください!」
 と、しにゃこ。
 改めて眺める。ご飯は日の丸だし、ブロッコリーとミニトマトもいっぱいつまっている。
(おばちゃんが愛情込めて作ってくれたって事には違いないもんな)
 誰よりもすぐ快活さを取り戻すのが洸汰だ。
「ありがとな! ちょっと食べる?」
「おっ、食べるぜ! 交換な!」
「因みにユータのお弁当はどんなの?」
「弁当ってほど大層なものじゃねぇよ」
「……紙パックの牛乳とバナナ?」
 洸汰は紙袋をひっくり返す。
「これだけ?」
「それだけ」
「……えー、少なくない? オレのハンバーグ食う?」
「いらねぇよ」
 それでもハンバーグを分けて乗せられる。食べ盛りの少年に見える彼は……いや……。そんなはずはない。
「ふふ、分かりますよ。大切な人には美味しくって栄養のあるものを食べてほしいですもの!」 
 そっと目をそらす幻介。
「幻介様! ちゃんとしたお弁当も食べてくださいね!」
 幻介と鬼灯はなんともなし、世話焼きが周りにいると大変だなあ、という視線をかわす。湧汰はふいっと目をそらした。
「午後の競技もまた頑張るとしよう」
「おー! ファイヤーですよ!」
「しにゃこは負けないですよ!」
「……そういや体育祭だったなぁ。また走り回るか!」
 彼らの体育祭は続いてゆく……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

食べ物の恨みは恐ろしい!
おなかいっぱいになれたでしょうか。ごちそうさまでした。

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