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シナリオ詳細

<Common Raven>呪いの乙女

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 さらりさら――砂塵が舞っている。
 風が強くなるかもしれない。砂嵐の前触れだ。
 今日は近くの村で休むのがいいと、隊を率いているラーヒブが言った。
 ちょうど小さなオアシスの村にさしかかった所だった。水や酒もありそうだ。
「しらねえ村だが、まあ金を嫌がるもんはおるまいてなあ。
 そのあたりは俺がどうにかするから、今日のところはイレギュラーズさんはゆっくり休んでくれい」

 イレギュラーズはラサの遺跡群『ファルベライズ』から発見された『色宝(ファルグメント)』という宝を、首都ネフェルストへ移送する依頼を受けていた。
 ラサには様々な遺跡が眠っており、ファルベライズもその一つである。
 色宝というのは『願いを叶える宝』と呼ばれており、秘宝はネフェルストで管理する事となった。
 傭兵と商人の連合体であるラサでは『互いに互いを見張り合う』と事が可能であり悪用されることはないだろう判断であった。

 秘宝確保の仕事は世界各地でめざましい活躍を上げるローレットに出されており、この依頼もその一つだ。 だが秘宝を狙うのはラサ商会連合だけではなかった。
 大鴉盗賊団もまた動き出したのである。
 だから首都までの道のりで、普通の村で寝泊まり出来るというのは、ありがたい話だった。
「しかし願いを叶えるったって、さてねえ。俺なら女侍らせて酒飲みてえぐれえしかねえな! ガハハ!」
「っかー。男ってのは馬鹿だねえ。減るもんばっかしで。宝石や豪邸に決まってんでしょうが」
「じゃあじゃあ、俺はその全部!」
「調子こきやがって」
「いってー! なにすんでさ、アニキ」
 いよいよ宴もたけなわといった所であった。
 隊の一同はイレギュラーズも交えて和やかな雰囲気で談笑している。
 ラーヒブは気前よく支払いを済ませたようで、一行の前には沢山の食べ物や酒が並んでいた。

「そうしますと、皆様は願いを叶える宝石を夢の都へお運びの最中なのですな」
「そうですなあ! ガハハ!」
「そちらのイレギュラーズさん方も、どんどん飲んでくだされ。さぞお疲れでしょうから」
 一行を歓待する村の長老――グワギ・ロンゴが、ラーヒブの杯へ酒を注いだ。
「オレに冒険の話を聞かせてくれよ!」
「あたいは料理が美味いって言われんだ。ぴっちぴちの乙女は嫁にいらんかい!?」
 好奇心旺盛な村の若者達もまた、宴の輪に入ってきた。
 ずいぶん盛大な歓待である。

 村の名前はカジャドというらしい。
 少しの雑穀がとれ、狩人や戦士が少しだけ居る普通の村。取り立てて珍しいものはない。
 けれど村長のグワギは『白骨のキジーツ』なる道具を操る呪術師という話だ。
 近隣の村に出向いては傷や病を癒やすから重宝されていて、不在がちらしい。
 何週間も留守にすることが多く、戻ってくる時にはお宝をたんまりと持ち帰る。
 今日はたまたま、お宝を持ち帰った日だったのだ。
「あんたらラッキーだぜ。村長さんがいなけりゃ豚を潰せなかったからな!」
「おうおう。ご相伴に預かってよかったぜ。あんたらもたーんと食ってくれ!」
 白骨のキジーツなるものを見たものは居ないが、門外不出とのことだ。
「もう終わりかよラーヒブさんよ!」
 飲み潰れた隊長が仰向けのまま大の字に寝転んでいた。
 幸せそうな顔をしていて――


「……ヒヒ、ヒヒヒヒ」
 小屋を出た村長が、荷物へ視線を送った。
 ファルグメントというお宝は、あの積み荷の中にあるのだろう。
 何を隠そう。呪術師グワギ・ロンゴとは、大鴉盗賊団に所属していた。
 盛大な歓待も、全ては酔い潰すためだったのだ。
 支払いは相場ではあるが、あれっぽっちの金で、ここまでやるものか。
 万が一、気付かれでもしても、たらふく飲ませたのだから、どうにかなるだろう。
 グワギは上機嫌で自宅へと戻っていく。
 グワギには白骨のキジーツがある。これさえあれば、グワギは無敵だと信じているのだ。
「のうジュリア、いや我が白骨のキジーツよ!」
 返事はない。村長の家には虚ろな瞳を伏せた少女がいた。
 薄絹一枚を纏った真っ白な少女。長い髪を伸ばし放題にして、ガーネットのような瞳が美しい。
 一休みしたら部下達に連絡をとり、いよいよ襲撃だ。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 宴会ですね! 何も起きないはずはなく……

■依頼達成条件
 大鴉盗賊団からファルグメントを守る。
 敵の撃退。

■フィールド
 真夜中です。
 皆さんは、宴会に参加しています。
 途中から別のことをしていてもいいです。
 なんかこの村っていうか村長、怪しいですし!

 ファルグメントは建物の外に、ラクダとかと一緒にあります。不用心だ!
 味方のキャラバンの人が見張っていますが、お肉や酒を飲み食いしていて眠そうです。
 宴が終わる頃には寝ちゃいます……。
 代わりに見張ってもいいです。

■宴会パート
 お肉やお魚を焼いたものや、お酒なんかが沢山あります。
 豚の丸焼きが香ばしくてジューシー。
 毒なんかは入っていません。
 普通の歓待です。

■襲撃パート
 宴会が終わって皆眠る頃に、突然村長が襲ってきます。
 皆さんは華麗に気付いたり、事前に怪しさを調査出来ていてもいいです。
 また酔っていてもいいですが、ステータスが下がったりとかはしません。
  ※未成年はジュースです!

 味方のキャラバンの人達は寝ています。

■敵
 襲撃パートで襲ってきます。
 なんとグワギ達は、襲撃を誤魔化そうとしません。
 イレギュラーズもまとめて葬り去ろうとしているのです。

『呪術師』グワギ・ロンゴ
 この村を支配する実力者。
 近隣の村に行くなんていっていながら、実は盗賊をしてました。
 能力は不明ですが、白骨のキジーツを使って呪術を使うと思われます。

『白骨のキジーツ』ジュリア
 儚げで綺麗な少女に見えます。全身を覆う黒いローブを着ています。
 戦闘能力は不明です。
 戦闘中はずっとグワギの側にいます。

『大鴉盗賊団』×12
 村長グワギの部下達です。
 曲刀やナイフ等で武装しています。

■他
『村人』×そこそこ
 善良な村人達です。酔い潰れています。

『キャラバン隊』×そこそこ
 皆さんの味方です。酔い潰れています……。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <Common Raven>呪いの乙女完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月23日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る想いは
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
テオドルト・ヴァスキー(p3p008336)
蜘蛛男
ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)
ゴーレムの母

リプレイ


 さらさらと風が砂を運んでいく音がする。夜は更けて月が空に昇っていた。
 沢山の人が集まった宴会場は活気づいている。

「村長さんのおかげで宴会ですって! 疲れた体には御馳走と休息が一番。運が良かったね!」
「……まだ仕事は終わっていないのだが。とはいえ、完全に断るのも難しいか」
『揺蕩』タイム(p3p007854)のはしゃぐ声に『黒狼領主』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が村長の好意とあれば仕方ないなと頷く。
「警備に回る人多いみたいだけどこっちに参加しててもいいかな……」
「良いのではないか」
「いい? やったー!」
 タイムの喜ぶ声が通路に響いた。

「砂漠では、食料も水も貴重なものの筈」
 宴会へと招かれたイレギュラーズの最後方で村の様子を観察するのは『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)だった。
 随分豪華な歓待のように思う。お金を積まれたところで急な物資の大量消費など普通の村ならできないはずなのだ。特にこの砂漠という過酷な環境であれば。
 アリシスは真剣な表情で村長を見つめた。
「お宝ですか……」
 宴会場の中に入れば活気に圧倒される。

「豚! はーい食べます食べまーす! 取って貰ってもいいですか? あ、お酌ならしますよ~」
 タイムの声は宴会場の中で弾んだ。
「ふむ、参ったね。私はお喋りが好きでね。特に私の冒険の話をしてほしいなんて言われたら断れないな」
 人差し指を立てた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が片目を瞑り話し出す。
「では、色宝を巡る冒険で訪れた遺跡の話をしよう。古代のゴーレムが徘徊する迷宮を潜り抜けた話だ」
 数々のトラップをくぐり抜け、仲間と協力して辿り着いた先にあったお宝。
 ゼフィラは気分よく冒険譚を語り、勧められた酒を遠慮なく頂く。
 そのお話をタイムは長い耳を傾けながら聞き入る。
「こっちにきてからまだ日が浅いから何を聞いても面白いしもっと知りたい。ふふ、おかわり要ります?」
「ありがとう。それじゃあお宝の前に仕掛けられてたトラップの話でも」
 ゼフィラは冒険譚の続きを披露する。そして、次に村人へと向き直った。
「呪術師だという村長はどんな人なんだい?」
「素晴らしい人だよ。白骨のキジーツで病気を治しちまうんだ」
 個人的に土着の伝承や信仰、それに結び付くものを調べたいとゼフィラは身を乗り出す。
 一先ず失礼にならないようにアリシスは宴会に付合うことにした。
 酒で酔えないというのもたまには役に立つのだとコップの中を見ながら思う。
 何かあるとしたら夜だろう。色宝は自分達で守らねばならないとアリシスは固く決意した。
「あんたもどうじゃ? ほれ酒は」
 村人は『運命へ手を伸ばす影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)に酒を勧める。
「ワタクシ、こう見えても未成年なんです」
「何とまぁ。それは失礼した」
 ヴァイオレットは何とも太っ腹な歓待だと宴会場を見渡した。
 しかし、ここに来る前に占いで出た運命は良からぬものだ。用心に越したことは無い。
「この世界はお酒は20歳からですって? それならこっちじゃ私飲めないわね……」
 仕方ないと溜息をついた『紅蓮の魔女』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)はその辺りにある料理とジュースを僅かに摘まんだ。
「なんでぇ。食べねえのか。アンタ」
「もう。女の子にお肉を勧めないで。あんまり食べ過ぎると、太っちゃうわ」
 善良であろう村人からの勧めを断るには少し大げさなぐらいの方が納得してくれやすい。
「ちょっと暑くなっちゃった。夜風にでも当たっておくわね。私の代わりに楽しんで頂戴?」
「へいへい。あんまり身体を冷やさねえようにな」
「ふふ、お気遣いありがとう」
 ジュリエットは宴会場から荷物が置いてある場所へと歩いて行く。

「早く仕事を終わらせたいのですが……砂嵐ならば仕方がありません。
 タダで食事が出来るなら良しとしましょう」
『黄金を求める』カイロ・コールド(p3p008306)は色宝を見張るために宴会場の料理を皿にのせていく。
 取ってきた料理を手に荷物の置いてある場所へとやってきたカイロは美味しそうな肉を一口食べた。
「……うん、良いお肉です。特に盛られている訳でもありませんね。まあ、仮に盛られても私には効かないんですが」
 咀嚼しながらカイロは先ほど感じた『嫌な感情』を思い返す。気のせいか。それとも……。

「美味しいものは好きだけど、騒がしいのはそんなに得意じゃないんだ」
『蜘蛛男』テオドルト・ヴァスキー(p3p008336)はしょんぼりした顔で宴会場を覗き込む。
 料理を手に早々に宴会場から抜け出すテオドルト。カイロの隣に座り一緒に肉を頬張った。
「僕ら一応護衛だし、このままじゃ流石に不用心だし、本物はカイロに隠し持ってもらうのがいいかもね」
「そう言えば、今回の色宝の形状はどんな感じなのでしょう。
 色宝自体に興味はありませんが、形だけは色々あるので気になるんですよね~」
 少し見てみようと腰を上げるカイロ。テオドルトは心配そうに見つめている。
 荷物の中に厳重に入れられた宝が入った箱は、開かないように雁字搦めにされていて簡単に開きそうになかった。
「ふむ。残念ですね。見てみたかったのですが。とりあえず念のために持っておきましょうか」
 不用心に荷物の中に置いておくより手元に持っていた方が安全だろう。
「そうだね。でも、元の場所に何も置かないってわけにもいかないし……」
 テオドルトはカイロと顔を付け合わせ考えた。
「そうだ、悪戯でも仕掛けちゃおうか」
「悪戯ですか?」
「うん。『罠設置』で他のお宝を色宝っぽくして、偽物の色宝を仕立て上げようか。
 ふふ、いつ気付くかな?楽しくなってきちゃった」
 そこへベネディクトとヴァイオレット、ジュリエットがやってくる。
 ベネディクトは見張りをするため暗視とファミリアー、ハイセンスを駆使して周囲を警戒した。
 事前に色宝を積んでいる荷物の近くに蛇の使い魔を仕込んでおいたのだ。
「……というか、あまりにも不用心なキャラバンの隊に呆れもします。
 まあ、料理が美味しかったので是非もないのでしょうかねえ……」
 ヴァイオレットは溜息を吐いて辺りを警戒する。彼女の目は暗がりでも昼間の明るさのようにハッキリと映像を映し出していた。


「……ヒヒ、ヒヒヒヒ」
 ファルグメントが入っている積み荷を前に『呪術師』グワギ・ロンゴはニタニタと笑っていた。
「これが色宝か?」
 如何にもな宝箱を手に取るグワギ。
 しかし、手に取った瞬間、むんずと手が伸びて来てグワギの腕を掴んだ。
「うわぁああ!?」
「わあ、びっくりした」
 荷物の影から出てきたテオドルトが全く驚いた様子も無く月明かりの下に出てくる。
「貴様ぁ! キャラバン隊の奴らか!」
「やたら親しげだと思ったらこれだもんなあ、怖いなあ」
 やれやれといった表情で手を上げるテオドルト。
「ぐぬぬ。おのれ、お前達出てこい!」
「うおおおおおおお!」
 曲刀やナイフで武装した男達がイレギュラーズの前に現れた。
「なんとも太っ腹な歓待……と思えば、ヒッヒッヒ。最初からそれが狙いでしたか
 ま、もとより『色宝』の護送が我々の依頼。魅力的な酒宴ほど警戒するのは当然というもの……」
 ヴァイオレットは心底嬉しそうな顔で嗤った。だって、悪者ならば容赦する事は無い。
「さて……占術と呪術はワタクシの得意とするところ。
 アナタがたのはらむ『呪い』がどれほどのものか、精々愉しませて頂くとしましょうか」
 ヴァイオレットの隣に出てくるのはジュリエットだ。
「『色宝』ねぇ、その話が本当なら私もひとつくらい頂戴したいところね?」
 なんて言ったら怒られるだろうか。
「冗談よ。ま、ご自慢の呪具とやらにも興味があるわ。寝込みを襲ったのは白骨のキジーツとやらの力を見せてくれたらチャラにしてあげるから覚悟なさい」
 ジュリエットが作り上げたゴーレムが盗賊団に体当たりしていく。
「あぁ、それとまさかとは思うけれど、力はその女の子頼りだなんてガッカリな事は言うんじゃないわよ」
 ドシャンと派手な音が戦場に轟いた。

「わーなになに! 村長さんが? どうして!? ちょ、ちょっと待ってお腹がいっぱいで……」
 トタトタとスカートを持って走ってくるタイム。
「ってそんなこといってられないわね……! みんなが備えててくれてほんとよかったぁ。
 わたしにもクェーサーアナライズ一応くださぁい! ええっとゴーグル……あった、よしっ!」
 暗視ゴーグルをつけたタイムは準備万端だと構えた。
「お宝、つまり財宝を持ち帰ってくるとも聞いてもしやと思いました。予想は当たりだったようですね」
 タイムと共に宴会場から出てきたアリシスはクレスケンスを身体の周りに浮遊させる。
「本当は略奪に行っていた、という訳ですか。色宝を狙ってきたのならば、貴方方は大鴉盗賊団ですか」
「くははは! ご名答ぉ! 俺達は泣く子も黙る大鴉盗賊団よ!」
 豪語したグワギは戦闘態勢に入る。傍らの全身を覆う黒いローブを着た『白骨のキジーツ』ジュリアが手を上げれば戦場を突き抜ける光が放たれた。
 ヴァイオレットはそれを観察しながら大変な事になったと考え込む。
 仲間は敵の呪術の媒介となっている少女に手を差し伸べる模様。盗賊団も殺さず生け捕りとは。
「やれやれ、大変な事を申して下さいます。
 が、確かな矜持をもとに殺生を諌める信念は嫌いではありません。ワタクシもなるべくはその意を汲むように動くとしましょうか」
 ベネディクトは蒼銀月を構えグワギへと走り込んだ。
「妙だとは思って居たが……こうなったか。こちらも仕事だ、はい、そうですかとはいかんぞ」
 槍がグワギの攻撃を弾き、接敵する。
「ワケ有りそうなジュリアを確保したいと言うのもあるが、敵となる大鴉盗賊団の情報源が欲しいからね」
 仲間を援護するためにゼフィラは戦場の真ん中に立つ。
「さて、呪術師とやらの業を見せてくれたまえよ。是非とも記録に残しておきたい」
 ゼフィラが叫び、カイロが溜息を吐いた。
「嗚呼、やはりこうなるんですね……色宝を放置する訳には行きませんか」
 グワギの持っている色宝は偽物だ。
 本物はカイロが持っている。そのことをグワギはまだ気付いて居ない。
 タイムはアイコンタクトでカイロに頷く。
(良かった、助かります!)
「あ、そういえば偽物……や、仮にも狙ってるんだし、気付かないなんてことはないよね?」
 テオドルトはじっとグワギを観察した。
 偽物を大事そうに懐に抱えている所を見ると気付いて居ないのかもしれない。
「んー。奇妙な白い子もいるし……そっちを狙うのは他の子に任せて、僕は雑魚掃討にまわるとも。
 どんな気持ちでそこにいるのかは気になるけどね」
 戦いなら、まあ、仕事の範囲内だとテオドルトは走り出す。
 盗賊を追いかけ回し奇襲を仕掛ける段で、多足の姿に戻った。
「ひ、ひぃ!?」
「モンスターか!?」
「まさか、八本足を見るのは初めてかい?」
 八本の足で敵を雁字搦めにしていくテオドルト。
「ぎぃええ!?」
「やっぱ足は八本あった方が組みつきやすいね」
 テオドルトが足で締め上げれば盗賊団の男はぐったりと戦意を喪失した。

「さあ酔いどれ共よ、早う目覚めて、英雄達の勇姿を、見届けよ」
 英雄を讃えるその詩は魔力さえ帯びて味方を奮い立たせる。過去の英雄ではなく今を生きる英雄の為に。
 仲間の為にカイロは歌を歌う。カイロの声はイレギュラーズだけでなく、眠っているキャラバンの人々の耳にも届いた。
 寝ぼけ眼で目を擦ったキャラバンの男達は戦場の只中という事を知り震え上がる。
「ひぇええ!」
「荷物の影に隠れていなさい!」
 その辺に寝そべっていられるより自分の意思で荷物の影に隠れて貰った方が安全なのだとカイロは叫ぶ。
「村長を牽制して白骨のキジーツっていう女の子と離せないかしら。
 だって見た感じまだ子供でしょう? 好き好んで盗賊やってるなんて思いたくないもの」
 タイムはジュリアを見て思いを募らせる。
「村の人達はみんなこのことを知ってるの?知らせていないなら酷い裏切りよ。もうっ、こんな子供まで使って!」
 アリシスはグワギに問いを投げた。
「キジーツというのは、確か……一種の呪術における呪具の事――もしや、この少女は白子ですか」
 アリシスの言葉にグワギの眉が上がる。
「私の知るキジーツを用いる地域では、白子は呪術的に意味を持つとされていた筈。
 此処でも同じなら……」
 その身は呪術に用いられているに違いない。生き血か爪か。或いは。
「だから何だと言うのだ。お前達には関係無いだろう! これは俺のものだ!」
 グワギは唾をまき散らしながら叫んだ。大きな隙だろう。
 その隙をベネディクトは逃さなかった。
「俺もただ守るだけとは限らんぞ、耐えて見せろ!」
 ベネディクトが槍を振るいグワギに痛打を与える――

 蹌踉けたグワギをジュリアが支えた。
「ぐぬぬ~! まあ良い、色宝は手に入ったのだ!
 イレギュラーズを倒してあわよくばキャラバンの荷物を横取りしようとしたグワギだったが、それも敵わないと判断したのだろう。一番の目的である色宝は手に入れたのだ。目的は果たした。
「お前達ずらかるぞ!」
「あいあいさー!」
「おぼえとれよー!!」

 大騒動に村人達も起きてくる。
 村長が逃げて行くのを目の当たりにした村人達は申し訳なさそうにイレギュラーズに頭を下げた。
「我々の村長が大変ご迷惑を……、大切な荷物を奪われてしまったのでしょう」
「いや。色宝は無事です。グワギが持って行ったのは偽物なのです」
 カイロの懐から出てきた色宝の箱を見つめ、村人達は安堵した。
 イレギュラーズは色宝を護り、敵を撃退した。――つまり、勝利したのだ。

成否

成功

MVP

アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPはボスに有効な言葉を投げかけ隙を作った方へ。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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