PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ロサ・フェティダの顎

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 黄金蜜の蕾は何時だって寂しそう。あんなにも馨しくその存在を教えてくれているのに。
 その大輪のつぼみはひとりぼっちで佇んでいる。
 黄金蜜の蕾はきっと美しい花になる。花翅の少女はそれが咲き綻ぶ時を待つ。

 屹度、聞いたことはあるでしょう?
 黄金蜜の花には触れてはいけないわ。
 其れは心地よい香りを放ち、心を慰めてからぱくりと食べてしまう危ない存在なの。

 その言葉を想い出せども少女は「こんなにも綺麗なのに!」と首を振る。
 淡い常春に花誘う風が吹いた。両腕一杯のパステルカラーをぎゅうぎゅうと抱き締めて黄金蜜にお友達はここに居るわ、と少女は笑う。

「ねえ、お花さん。どうか目を覚まして頂戴?」

 微笑む少女が指先でつん、と蕾に触れた時――その黄金蜜は綻んで『ぱくり』と。
 大口開けて飲み込んだ。

 ――それが、ボスケに伝わる御伽噺(フェアリーテイル)


「外はもうすぐ冬の跫音が聞こえるのに、妖精郷はあたたかいのですね」
『聖女の殻』エルピス (p3n000080)はどこか可笑しそうに小さく笑う。暖かな空気が頬を撫でる。鼻先擽る花々は静かに揺れ、季節外れの冬など知らぬ顔をした。
 ひとつの情愛に身を委ねた男がこの地で起こした戦乱は今は遠き季節のように。それでも、其の傷跡は少なからず存在するのか錬金モンスターや邪妖精の存在は未だ小さな精霊種を脅かす。
 花翅の少女達は非力で泣き虫。だからこそ、助けて欲しいとイレギュラーズの指先をちょん、と掴んでおねだりひとつ。
「今日は森林の村ボスケへと参ります。素敵な『おもてなし』を頂けるらしいのです」
 お手製の薔薇のジャムに『うんしょ』と作ったスコーン。ストロベリーバニラの紅茶の香りはほっと心を穏やかに。
 そんなおもてなしを楽しみにしていたエルピスにボスケの花翅の娘、ミスルトーは「おねがいがあるの」とそうと指先に触れた。
「邪妖精にロサ・フェティダという美しい黄金蜜の花がいるわ。
 彼はとっても、食いしん坊で普段はきのこを食べているけれど……邪妖精でもなんだってぺろりと食べてしまうのだけど、お腹を空かせてボスケに向かってくるみたい」
「みなさんが、ぺろりとされてしまいます」
「そうなの。だから、ロサ・フェティダに『だめだよ』って言って欲しいの。
 こっちに来ちゃ駄目だよって教えれば、こっちの村には近づかなくなるはずなの」
 勿論、不殺など使用せずに倒したって構わない。ロサ・フェティダは何だって『ぺろり』と食べてしまうから。今後の危険のために、というならばミスルトーは「それでもいいよ」と頷くだろう。
「ごめんね。とってもすてきなおもてなしをして待っているから!」
 ロサ・フェティダを倒したら改めて素敵なピクニックにお誘いしたいと小さな少女はそう言った。
 薔薇のジャムだけではなくてフルーツサンドウィッチも準備するからとお願いのポーズを取って。
 エルピスは「みなさま、どうか力を貸して下さいませんか?」と柔らかに問い掛けた。

GMコメント

 日下部あやめです。

●成功条件
 ロサ・フェティダの撃退

●現場情報
 妖精郷アルヴィオンに存在するみかがみの泉近辺の村、森林の村ボスケ。
 ちらりちらりと氷雫を連ならせる木々や、赤い果実を実らせる樹木、色とりどりの花が美しい場所です。
 腹を空かせた邪妖精『ロサ・フェティダ』はゆっくりと進んできているようです。
 花畑に一際大きく黄金蜜の蕾があれば、それがロサ・フェティダです。

●邪妖精『ロサ・フェティダ』
 黄金蜜の花に擬態することが出来る大きなとかげです。普段は黄金蜜の蕾に擬態し、心安らぐ香りを発して獲物を待っています。
 獲物が花弁に触れると一気に顔が飛び出し、腐敗臭を放ち獲物の意識を奪いながら捕食するそうです。

 蕾擬態時:神無状態。ダメージ蓄積で開花状態に移行します。
 開花状態:常時、中距離範囲に存在する対象にBS痺れを付与します。

●成功後
 妖精達が良ければボスケを観光やピクニックしてはどうかと提案してくれました。
 手製の薔薇のジャムとスコーン、フルーツサンドウィッチも入ったバスケットと、ストロベリーバニラの紅茶の水筒をプレゼントしてくれます。
 食べ物も持ち込んでも大丈夫。珍しければ妖精達が見に来るかもしれませんね。
 よろしければ寒くなってきましたが、いつでも常春の妖精郷でのんびりとした時間を過ごしませんか?
 こちらにはエルピスを呼んで頂くことも可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ロサ・フェティダの顎完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月19日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ルーキス・ファウン(p3p008870)
散華閃刀

リプレイ


 常春の気配に揺らぐ花弁は誘うように香りを漂わせる。恵みの草露がちょん、と爪先に挨拶一つ。イレギュラーズが辿り着いたのは妖精郷アルヴィオン、その中にひっそりと存在する森林の村ボスケ。
 氷雫を連ならせた木々はキャンディのように彩を返す。赤い果実は熟れて直ぐにでもお食べと囁くように。色とりどりの花の中を進む『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)は「ロサ・フェティダですか」と小さく呟いた。
「其れは一見すれば大きな花。馨しき、蕾だということですが……」
「それが花開けば何でも『ぺろり』か。それは怖いね。……でも、そう言う存在も自然には必要だよね」
 余りに生活圏に近すぎれば妖精達が『ぺろり』と食べられてしまう。其れを怖れるミスルトーの願いを思い出す『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)に『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は大きく頷いた。
「ああ。妖精を食べるから危険だが、妖精の敵も食う植物か……。
 めんどくさいな……倒すと邪妖精が増えて逆に大変になるか……なら、増えた分を刈り取れば良い、とも思うが……イレギュラーズに依頼が来た頃には――」
 それは後手に回っているという事だ。罪なき妖精達のいのちを護る為ならば、此処でロサ・フェティダの対処を行わねばならないだろう。
「討伐してしまった方が良いとは思いますが……人や妖精を怖がるようになれば、その必要もなさそうでしょうか? できる限り頑張ってみましょう」
 悩ましげに呟く『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)はうん、と唇尖らせた。鮮やかなる花であれば其れは見目麗しく目で楽しむ分には悪くはない。焼き払うのは容易であろうが、其れを行えば別のことが、と思えば酷く悩ましいのだ。
「土地に根差した御伽噺や伝承というのは興味深いですね。
 大蜥蜴に捕食される機会というのも中々無さそうなので、後学の為ここで経験しておくのも……」
 それは知的探究心に根付いたのだろう。『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)の呟きに、眼をまぁるくしたのはリュティス。は、と意識を戻して頭を振って「いや、やっぱりやめとこう……」と呟くルーキスは花咲く途をゆっくりを辿り往く。
「ただの御伽噺ではなく実在するとなると、それは伝承の類になるのでしょうかとミスルトーに問い掛けたのは『その色の矛先は』グリーフ・ロス(p3p008615)。
 御伽噺は何時だって教訓の側面を持っている。大切に、たいせつに。ちょっぴりスパイシーな響きを重ねた其れの『意味』を問い掛けるグリーフに「ロサ・フェティダはなんでも『ぺろり』なんですもの」と妖精は大きな眸を瞬かせた。
「つまり、他の生物の駆除も担っている、と言うことだよね。サイズさんやウィリアムさんが思ったように『邪妖精』でもなんだって『ぺろり』――うん、だから近づかないでと言うことでしょ?」
『森の善き友』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の問い掛けにミスルトーは「そうなのだわ」と手を合わせて咲み浮かべ、けれどロサ・フェティダが襲い来るなら討伐だってやむを得ないと提案したと付け加えた。
「いつでも、いつまでもイレギュラーズが対応できるわけではない。
 他の邪妖精のことを考えれば、それらを食べてくれるこの邪妖精との共生関係も、決して悪いものではないのではとも思います」
「うん。ミスルトーさんは駆除しても良いよ、というのは僕たちのことを考えてのことでしょう?
 なら、最初の願いの『追い払って欲しい、ボスケの方に来ちゃダメだよって伝えて欲しい』を尊重したい。そのやさしさに沿いたいと思うんだ」
 せめて誰も倒れないように支えるからと微笑んだルフナにミスルトーは「帰りを待っているわ」と『うんしょ』と大きなバスケットを抱えて揺らした。


 途往けば、鮮やかなる黄金蜜が咲いている。花畑に一際大きく咲いている。それはあからさまな程の大きさで――「あれが、ロサ・フェティダ」とグリーフが呟けば、周囲の花々よりも一際かぐわしい香りが花より立ち上る。
「つぼみになっているときは、神秘攻撃が効かぬとは厄介であるな……。とりあえずしばらくはこれに頼るしかないな」
 ぬ、と唇を尖らせて少しだけ悩ましげ。『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)の呟いた先に存在したのは黄金蜜の花――ロサ・フェティダ。
「僕らに気付いて擬態してる間は少なくとも動いたりしないよね」
 ルフナが確かめるように蕾をまじまじと見遣る。近寄らなければ此方に対して何らかのアクションは取らないようで。
「花々や草木の保護は完了しました。何時でも戦えますよ」
 グリーフはそう告げて、自身の身を包んだ加護に深く息を吐く。繰り返される離別と悲嘆を『見届ける』者として、毒食む苦しみが如き加護が自身を強くその場に引き立てる。
 開花後へのチャンスの為に、距離取った位置より見下ろすグリーフにルーキスも頷いた。
 銘の無き刀を二刀。そして、距離を確認するようにじりじりと脚をする。宵の蝶を指先より踊らせたリュティスは此の地が恐ろしい場所であることを教えればよいのでしょうと仲間を振り仰いだ。
「ええ。そして、妖精達に近づかぬようにする。それが共存の途でしょう」
 頷くグリーフへと「お任せを」とメイドはふわりとフリルとレースを揺らす。その身に纏った世界法則は計算尽くに乙女のからだを動かした。
 悍ましき詛いの箱を放つ刹那に、『囮』として近づくルフナは蕾の花が僅かに揺れたことに気付く。
 ウィリアムがアルキメデスレーザー放つ一撃は旭日の如くじわじわと華を蝕み続ける。
「強情な花だよね。僕のこと食べようと襲い掛かって凝れば良いのに」
 呟く、そして自身こそ聖域と侵されざる『治癒』の領分の中でぽつりと呟けば、かたわらに囁く故郷の守護が胸を熱く滾らせた。
「食べられることも吝かではないと?」
「遠慮したいかな」
 鈴、と。音鳴らし空を踊る雪之丞は「まるで食虫植物ですね」と硬い花へと柏手一つ。堂々と、『鬼は此方』と手招くように。
 その様子をまじまじ見詰め、剣と魔術を併せ持った独自の技でサイズは――『花の中』へと飛び込んだ。
「あ」
 ルーキスのぽつりと零した声に、グリーフは「食べられてしまいましたね」と瞬いた。ルフナは「生きてる?」と花――否、トカゲの体内へと飛び込んだ小さな鍛冶妖精を伺い。

 ――「さあ、何でも食う花よ……金属……妖精鎌を食らったことを後悔するといい!」

 消化液と疵だらけ。それでも、体内より無理矢理花開かすように飛び出したサイズが放った砲撃の光がその口からぐぱりと飛び出した。継続戦闘を行うためにぜいぜいと肩で息をするサイズを支えるようにルフナが回復を送る。
 腹の中は暗闇。何かを学ぶ機会では無かったかの様にべちゃりとした消化液を拭ったサイズは小さく息を吐く。
「悪食も悪いことだと学べただろう……?」
「腹の中から攻撃されたのは初めて、だろうね……」
 呆然としたように呟いたウィリアム。その傍らから、ルーチェが暗黒魔眼による一斉砲撃を重ねる――が、その尾っぽが『ぺちり』と音立て彼女を叩く。
 黄金蜜の花が蕩けるように咲き綻んだ刹那の動きにウィリアムはぱちりと瞬いた。ここからが本番であると顕現させるのは神威太刀。魂別ったかたわれの術式を参考に編み出した斬撃はロサ・フェティダの花弁を裂く。
「痛い思いをするのも、厭だろう?」
 声掛ければ、ロサ・フェティダは厭だというように大口開けて迫りくる。二度はないとサイズがひらりと避けたその場所へ、再度鈴鳴る柏手響く。
 雪之丞へ夢中となったロサ・フェティダ。黄金蜜の甘やかなかおりは消し飛び、鼻も曲がりそうな程の奇怪な香りが漂い始める。
「……直ぐに帰って貰おう」
 ルフナはギブアップを告げるようにう、と小さく呻いた。それ程までに奇っ怪な臭い。これは近くで共存するのは苦しいだろうとグリーフは先程言い淀んだミスルトーの言葉を思い出す。

 ――だって、とっても。

 その続きは「臭いんだもの」だろうか。近くで攻撃重ねるルーキスは気にとめぬようにと平静を保ち幾度も攻撃を重ねていた。
「……さて、ロサ・フェティダもそろそろ疲れてきただろう……こちらも、殺したくはないが……」
 逃げてくれれば、と願うのは皆同じ。ロサ・フェティダとの共存を夢見るならば『近づかないで』と教えるために――ルフナとリュティスの『恐怖戦法』はある意味で聞いていたのかも知れなかった。
 怒り乍ら大顎で雪之丞を狙う黄金蜜は其れでも怖れるように尾を丸める。グリーフは「村には近づいてはいけません。要請は食べ物では無いのだから」と淡々と言葉を重ね続ける。
 喪われないで済んだいのち。それは妖精も――そしてこのロサ・フェティダだってそうだ。
「分かりますか? ロサ・フェティダ」
 それでも腹が空いたと怒るように口を開いて怒り続けた黄金蜜。花翅の少女たちの安寧のためにここから先は『だめ』と幼子に教えるように言葉重ねれば。
「用意したよ」と妖精達の声がする。バスケットに一杯に詰め込んだのはカラフルなきのこ達。食べるのだってすこし戸惑ってしまいそうな其れを手に、ウィリアムはボスケとは逆方向に立ち、ロサ・フェティダと向き合った。
「ロサ・フェティダ。きのこだよ。お腹いっぱいになるまで食べて良いから」
 此方へおいで、と手招いて。妖精達に『おねがい』した茸に向かって黄金蜜の花が突進してゆく。
 ウィリアムは腹一杯になるかな、と小さな茸へと飛び付く蜥蜴の様子をまじまじと見詰めていた。
 食事を行えば、花弁が徐々に徐々に蕾へと戻ってゆく。花開けば萎れる訳でなく、美しき大輪へと戻ったロサ・フェティダはイレギュラーズに怯えるように森の奥深くへと逃げていく。
 此の儘居れば、いのちも脅かされる。腹の中にも傷が付いて驚いてしまったというようにロサ・フェティダは走り往く。
「……あの儘、逃しても?」
「良いだろう。……あっちは、邪妖精が多いから妖精も行かないと聞いた……」
 ルーキスは成程と呟いた。身を挺して『食べられた』サイズの負傷に様子を見ていた妖精達が「いたそう」「おふろにはいりましょう」と集う微笑ましい光景が平穏を取り戻した合図のように周囲には広がりだした。


「エルピス、よければ共にピクニックに出かけませんか? 皆、準備をしてきたのですよ。
 森の中の茶会と洒落込むには、良い天気です。折角、おめかししたのでしょう?」
 柔らかに微笑んだ雪之丞にスカートをそ、と握りしめてエルピスは僅かに照れた笑みを浮かべた。「似合っていますよ。可愛らしいです」と言葉を付け加える雪之丞に「それなら、よかったです」と睫震わせどこか緊張したように周囲を見回した。
「良ければ妖精達も行こう。タダで貰うのは忍びないから携帯食料の詰め合わせだけど……こう言うのって興味は?」
 自身の分は後で調達すれば良いからとミスルトーに提案すれば後ろから楽しげな妖精達がころころ笑う。
「他に何かあれば気軽に頼んでくれ。……まあ、なければ別に問題ないが……」
「みんなとピクニックに行ってくると良いわ! また、お願いしたいときはここへ来てってエルピスにおねだりして連れてきて貰うわ! ええと、サイズ?」
 ああ、とサイズは肯いた。エルピスは「ボスケの妖精さんはマイペースなのですよ」と小さく笑みを浮かべた。微笑む彼女に笑み零し、雪之丞は往きましょうかと手招いて。
「ぴくにっく……遠足のことですね!」
 異国の言葉には余り慣れていないとルーキスは付け加えた。神威神楽の絢爛なる風景とは又違う華やぐ景色を見て回れるのは嬉しくて。
「昨日の夜はワクワクしてあまり眠れませんでした。えっ、子供みたい? き、気のせいです多分!」
 くすくす、妖精の揶揄う声にルーキスは慌てたように首を振る。
「そのバスケットには沢山入っているんだよね? 甘い物はある?」
 眸をきらりと輝かせるルフナに共にと踊るように着いてきた妖精達は「もちろん」と声弾ませた。エルピスと一緒に準備したからと急かすように彼女にバスケットを開かせれば、甘いシフォンケーキがふわりと香りを漂わせる。
「マフィンやスコーンもありますよ」
「素敵ですね。こうして皆さんとご一緒できるのも良いものです。一人で何か、と言うのも味気ないですから……」
 ピクニックの準備はお任せあれとレジャーシートを敷き花々の中でののんびりとした茶会を楽しむために。リュティスが整えたシートの上に一番に着地した妖精が「はやく」と心躍らせる。
「そういえば、エルピスさんとお会いするのは神威神楽の呪詛騒動以来ですね。改めて宜しくお願いします」
 僅かな緊張。面と向かっての挨拶に、ぱちりと瞬くエルピスは「こちらこそ、仲良くして下さい」とたどたどしく頭を下げる。
「わたしも、まだ、あまり外に詳しくないので、いっしょにがんばりましょうね」
「はい。あ、練達風……というのでしょうか。その服もとてもお似合いです」
 嬉しいですと微笑むエルピスに良かったですねとリュティスは綻んだ。
 食事は特に必要ではないけれど、とグリーフは水筒から漂う紅茶の香りを楽しむことは嫌いではないと小さく息を吐く。
 赤と青のアネモネが広がる花畑には名も無き墓標をいくつか、『何者にもなれずなかった誰か』――アルベド達の存在を忘れないようにとグリーフが準備した自身の領地のことを思い返す。
「どんな紅茶の香りがおすき?」
 問い掛ける妖精に「そうですね……」と口を開く。出来る限り深緑に降り掛かった火の粉を受け止め燃えぬようにと尽力したいと願うグリーフのこころに触れるように妖精達は興味津々に集い出す。
「ああ、そうだ。今日は、俺が子供の時によく食べていた『琥珀糖』を作って持ってきました」
「琥珀糖? ……ふうん、何か、水晶みたいだね?」
 指先抓んで見詰めるルフナは甘い、とぱちりと瞬いた。ウィリアムは深緑ミルク工房謹製の黒テッドクリームを持ってきたと皆へと勧める。ねっとりしたクリームと妖精達のジャムをスコーンに添えれば味わいの均等も素晴らしい。
「良ければ妖精とエルピスもどうかな?」
「わ、いただきます」
 慌てたようにスコーンを手に取るエルピスに雪之丞は「こうやって食べるのですよ」と丁寧に教える。
「エルピス様はスコーンがお好きなのですか? 私も薔薇のジャムとスコーンの組み合わせが気に入りました。クロテッドクリームも試してみても?」
 どうぞ、と微笑んだウィリアムにリュティスはジャムもクリームも製法を学び『ご主人様』に持ち帰りたいと微笑んだ。
「のんびりと過ごす時間は、とても。楽しいものですね。エルピスは、いかがでしょうか?」
「たのしい、です」
 頷く。その言葉に雪之丞はよかったと笑みを深めた。ルーキスにとっては未だ知らぬ大陸の文化。こんなことなら記録を残す『遠足のしおり』を用意すれば、と悔やむ声に「また、わたしと参りましょう?」とエルピスは微笑んで。
「エルピス。貴方が良ければ、間もなく訪れる冬……シャイネンナハトも、どこかでご一緒できれば」
「雪之丞さまがよければ。ぜひ」
 そっと重ねた掌は、まだぬくもりへの戸惑いがあるけれど。
 鮮やかなぬくもりの中で小さなやくそくを重ねればしあわせが其処にある気がした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

サイズ(p3p000319)[重傷]
カースド妖精鎌
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)[重傷]
異世界転移魔王

あとがき

 この度はご参加有難う御座いました。
 美しい花にはなんとやら、と言った風情です。
 ピクニックも楽しんで頂けたのならば光栄です。

 また、ご縁が御座いましたら。

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