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シナリオ詳細

<神逐>血が騒ぎし百鬼の大行列

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 絶望の青を越えた先にある黄泉津と呼ばれる島。
 そこにある国家、神威神楽はゼノポルタ(鬼人種)とヤオヨロズ(精霊種)が暮らす穏やかな地であったのだが……。
 ただ、獄人差別、獄人による八百万暴行事件。二種族の怨み嫉みは『けがれ』を生み、さらにそれを媒介にして行われた『大呪』が黄泉津の守り神である黄泉津瑞神の在り方を歪めてしまった。
 黄泉津瑞神は犬の姿で顕現し、時の権力者へと予言と加護を与えるという。
 今、高天御所の天守閣にはまさに黄泉津瑞神が顕現したが、悍ましく魔性の月の加護を得た守り神の叫びは黄泉津の地をけがれの焦土へと変えてしまうことだろう……。

 夜――。
 月夜は高天京一帯を明るく照らす。
 けがれ、大呪は妖達を高揚させ、高天御所へと集った妖達が百鬼夜行となって歩き回る。
「ガハハ! 実に心地よい夜だ!!」
「ああ、これほどまでに血が騒ぐ……。暴れずにはおれんわ!!」
 彼らは基本的に敵視する者はなく、我が物顔で暴れるのみだが、明確な意図をもってその百鬼夜行を誘導して者達がいた。
「ここまで来たな」
「ああ、あとは思い思いに高天京を破壊しつくせばいい」
 赤と青の肌を持つ男達。彼らは鬼と呼ばれる妖だ。
 鬼人種も屈強な身体を持つが、2mを優に超えるこの鬼どもは鋼の如き肉体を持ち、手にする金棒を振り回して敵対する者達を剛腕で叩き潰す。
 それだけでどうにかならない相手には、炎や吹雪を吐き掛けてくる。神秘の力を持つオーガ達である。
 また、誘導役は他にも2体いて。
「実によい風だ。さらなる暴風を巻き起こしてやろうぞ」
「ヒョー。ならば、俺はこの一帯に荒れ狂う雷を落としてやろう」
 1体は鼻の長い山伏風の衣装を纏った妖。彼の名は天狗と呼ばれる。荒れ狂う風を武器とする山の神とも呼ばれる存在だ。
 もう1体は、猿の顔、狸の胴体、虎の手足と蛇の尾を持つ鵺だ。雷獣とも呼ばれることもあり、その名に恥じず雷を行使することができるという。
「では、そろそろゆこうぞ」
「まあ、焦るな。夜は長い」
「ああ、我等の地の沸き立つままに」
「神威神楽を破壊しつくそうではないか……」
 4体の妖達は後方で楽し気に暴れる妖どもを誘導しつつ、高天京の街を目指そうとするのである……。


 此岸の辺は、豊穣における『空中庭園』の代わり。
 他の地域から豊穣へとイレギュラーズ達がやってくる上で、ほとんどの者達がこの場所を経由する。
「けがれと大呪によって、豊穣の守り神……黄泉津瑞神が暴走しかけてしまっています」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は、集まるイレギュラーズ達へと真剣な表情で告げる。
 巫女姫や天香・長胤がこれまで画策してきた事件は、豊穣の地に多くのけがれや呪詛を豊穣に蔓延させた。
 結果、高天御所の天守閣へと具現化した黄泉津瑞神は暴走しかけ、悍ましき魔性の月の加護を得てこだます叫びは豊穣をけがれの焦土へと変えてしまいかねない。
「このままでは、高天京に住む多くの人々が犠牲になってしまいます」
 取り急ぎ、この地の荒魂たる『黄泉津瑞神』を沈めねばならない。豊穣の人々は『神の使い』と信じるイレギュラーズに状況の打開を願ったのだ。

 この状況で、妖達も活発に活動を始めている。
 大呪の影響を受けた妖は百鬼夜行となり、高天御所へと集ってきているようなのだ。
 これは、アカツキ・アマギ(p3p008034)が事前に懸念していた事態でもある。
「彼らは誰かの指示を受け、高天京の地を荒そうとしています」
 多少纏めて叩いても、百鬼の群れは次から次に集まってくる。
 この群れを鎮圧する為には、先導する4体の妖を討伐する必要があるとアクアベルは語る。
「その先頭に、赤鬼、青鬼、天狗、鵺という妖がいて、それらが百鬼の群れを自分達の都合がいいように誘導しているようです」
 百鬼の群れは高天京の街へと向かい、破壊の限りを尽くそうとするようだ。
 群れを散らす為には、先導するそれらの妖を討伐する必要がある。
 周囲の百鬼達が戦いの邪魔をしてくる上、いずれも強敵ではあるが、放置していれば街は壊滅しかねない。
 それらの群れが御所にいる間になんとか霧散させたい。
「暴れる多数の妖の中、ピンポイントで先導する妖の討伐は大変だと思いますが……、どうかよろしくお願いいたします」
 そう説明を締めくくり、アクアベルはイレギュラーズ達へと百鬼夜行の鎮圧を願うのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 神逐のシナリオをお届けいたします。こちらは、アカツキ・アマギ(p3p008034)さんのアフターアクションによって発生したシナリオです。

●目的
 百鬼夜行を先導する大呪達の討伐。

●敵
◎大呪の獣達
 相当数の数の妖が大呪の影響を受けて暴れております。
 その種類は様々ですが、大半はイレギュラーズを敵視するわけではなく、興奮して勢いに任せて暴れている状況です。
 暴れる妖の群れを鎮圧するには、強い力をもつ妖4体を倒す必要があります。

○赤鬼
 身長2.5mほどある人型の妖です。
 元々妖だったのか、鬼人種が妖となった存在なのかは不明です。
 壁となって立ちはだかりながら金棒を叩きつけ、地獄の炎を浴びせかけてきます。

○青鬼
 こちらも身長2.5mほどある人型の妖です。
 同じく金棒を所持しており、そちらを使いながら吹雪を浴びせかけて来ます。
 なお、別に触れられてもゲームオーバーにはなりません。

○天狗
 風を行使する飛行種を思わせる妖です。
 百鬼夜行の中でも数少ない、翼で飛び回ってピンポイントでイレギュラーズを狙って来ます。

○鵺
 猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇を持つキメラの如き妖です。
 直接飛びかかり、食らいついてくる他、雷を叩き落としてくることもあります。

◎妖……50体程
 様々な妖が先導の4体に連れられ、楽しそうに暴れております。
 敢えてイレギュラーズ達を敵視しているわけではありませんが、我が物顔で暴れる彼らの行動によって、イレギュラーズは基本的に毎ターンダメージを負います。
 彼らを攻撃してもキリなく新しい妖が現れますので、基本的には量で圧倒する彼らの攻撃に耐えつつ、先導する者だけ叩く形となります。
 先導4体を叩けば、彼らは蜘蛛の子を散らすように何処かへといなくなってしまいます。

●状況
 高天御所の中庭内、場所は平地から湖のほとりでの交戦です。
 この状況を利用して楽しそうに暴れ回る百鬼夜行の群れを何とかやり過ごしながら、先導する敵4体を叩いてくださいませ。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします!

  • <神逐>血が騒ぎし百鬼の大行列完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月18日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
サメちゃんの好物
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
シラス(p3p004421)
超える者
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)
復讐の焔緋
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ


 空に浮かぶ魔性の月。
 それは、妖どもをこれ以上なく気分を高揚させるらしい。
 ――ガハハハハハ!
 ――うおおおおおおお!!
 笑い、叫ぶ妖の群れは徐々に大きくなっていた。
「なんだあ、このお祭り騒ぎはぁ。コレも黄龍のツレの影響ってか~」
 多少軟派な偉丈夫、『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)はその群れに驚きを隠せない。
「多分、我々今超急ぐんですけど大丈夫?」
 一行は神威神楽を滅ぼさんとする者達との最終決戦の場へ、いち早く駆けつけたいところなのだ。夏子が心配顔なのも無理はない。
「これが百鬼夜行」
「百鬼夜行……本当に百体居るわけでは無さそうだけど、それでも結構な数の妖ね」
 天義の騎士『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)、ふわふわした雰囲気の『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)がそれらの群れを眺めて。
 全ての妖が悪い存在ではないのだろうが、大きくなる群れが好き勝手暴れてはただで済むはずがない。
「……これも大呪のせいか……」
 存在感の薄い眼鏡少女、『白い死神』白夜 希(p3p009099)は人と虫以外は好きらしく、人に迷惑さえかけなければすごく楽しそうと妖達に共感さえするのだが……。
 ともあれ、この百鬼の群れはここで止めねばならない。
(……緊張してきた)
 普段は淡々とした態度の『復讐の焔緋』ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)だが、本格的な戦いを前に震えを止める。
 ――せめて、みんなの足は引っ張らないように。
 まだイレギュラーズとしてルツは経験が浅く、不安で胸がいっぱいになっていたのだ。
「……いっか 寧ろラッキーだ。行きがけの駄賃みたいなモンでしょ」
 あっさりとこの状況を割り切った夏子はしっかり懸念材料を処理して大局に臨もうと、仲間達に促す。
「決戦の刻、来たれり!」
 炎の魔女を自称する『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)は闘志を滾らせる。
「混乱に乗じて街を破壊し、暴虐の限りを尽くそうなど不届千万というやつじゃ」
 暁が言っているのは、妖達がただ暴れているだけではなく、それを先導する強かな大呪の獣達のこと。
「百鬼じゃろうが、千鬼じゃろうが、びしっと撃退して見せようぞ」
「此処でパレードはお開きにしましょうか」
「些かなずとも無粋なハロウィンパレードは、早々に解散頂くと致しましょうか」
 それに、エンヴィや悦楽種とも称される種族の旅人である『悦楽種』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)が頷く。
「ここで私達が止める! いこうみんな!」
 サクラが促すと、こちらへと向かってくる集団へと仲間達が向かう。
「そんなの、絶対に嫌だよね、やりきれないよね……わかるよ」
 自分の技量でちゃんと役目を果たせるのかと思い悩んでいたルツ。
 ここは踏ん張るべきところ。でないと、犠牲となった人達が報われないとルツは拳に力を入れるのである。


 妖の数は徐々に増え、現在50体ほど。
 それを先導している個体を、アカツキは注視して。
「赤鬼、青鬼、天狗に鵺か……なぬ、地獄の炎を操るのが赤鬼じゃと?」
 事前資料を再確認したアカツキはいても立ってもいられなかったようだ。
「というわけで、先導役の妖を殲滅してやりましょう」
 先導役さえ叩けば、この群れは霧散する。メルトアイが仲間達へと呼び掛けるやいなや、無造作な髪型をしたシラス(p3p004421)が高い反応力を活かして素早く動く。
 自己暗示によって極限の集中状態へと至ったシラスは敵陣を見据えて。
「必殺技ってやつは始めから使うもんだぜ。――貫け」
 群れを先導する前方の敵へと魔力の槍を四方から飛ばし、妖ごと指揮する大呪の獣を貫く。
「何か来たな」
「大方、神使とやらだろうよ!」
 赤鬼、青鬼が傷付きながらも、敵襲に警戒する。妖達は傷ついてなお楽しそうに暴れている。
 機先を制した一行。直後、その鬼どもへ、サクラとアカツキが攻め入った。
「天義の聖騎士、サクラ。参る!」
 サクラは青鬼へと一気に距離を詰めて聖刀で切りかかると、青鬼も金棒を振り回して応戦してきた。
「炎と聞いては黙っておれん、このアカツキ・アマギが相手をするのじゃ!!」
 アカツキは赤鬼目がけて破壊的な魔力を直接撃ち込むと、こちらも金棒を振るってくる。
「炎での戦いを所望か」
 赤鬼は牙を突き出す口を歪め、炎を噴射する。
 両翼にも強い力を持つ妖がおり、片方にいたキメラの如き妖、鵺の元へと空を縫う飛燕の如く夏子が飛来して。
「ほう……」
「今夜ココでは何もなかった。何時も通り、平穏な夜が過ぎた。……って寸法……だろ?」
 名乗りを上げる夏子が鵺を引き付けると、敵は稲光を光らせて雷を叩き落とす。
「俺の防具はレザー製 鉄製じゃねえんだ 雷なんざ……! ぎひっ! 別に効くね!?」
「チッ……」
 鵺は舌打ちし、夏子へと飛び掛かっていった。
 
 他のメンバー達はもう片翼、空を舞う妖に視線を向ける。
「我物顔で飛び回られるのは流石に厄介ね……」
 鼻の長い山伏風の男、天狗。攻撃集中するエンヴィは軽量弓ロビン・フッド呪われた魔弾を叩き込んでいく。
「早い段階で、サッと落としてしまいましょう」
 エンヴィへと頷くメルトアイは背中や腰部から伸ばす触手から魔弾を放出する。
 地面に落ちさえすれば、他の敵と合わせて魔砲をとメルトアイは最適な位置へと立ち回るが、近くにいる支援役の希からは離れすぎぬよう気がけていた。
「確実に撃ち落とす」
 ルツも天狗を狙うが、まずは自らの体内に熱い血潮を駆け巡らせて強化を行い、ビーム銃DXを抜いて構える。
「荒ぶるか、ならば勢いのままに」
 天狗は手にする扇を使って巻き起こす暴風をイレギュラーズへと浴びせかけてきた。
「来いよ、ちょろちょろ飛び回るんじゃねえ」
 それを堪えたシラスは天狗へと電撃を放つ。
「俺が相手だ、このデカっ鼻野郎!」
「愚弄するか、人間が……!」
 翼を羽ばたかせ降下してくる天狗。
 徐々に混戦状態となる中、仲間達の支援を行う希は近場にいる仲間と合わせ、戦いを最適化する為の強化を施して。
「凶兆に照らされた敵は震え、思い通りに体が動かずミスをする。みんな呪われるよ……」
 例えば、財布を落としたり、何もないとこでこけたり……。
「ダークムーン。怖かったら下がってなさい……」
 希が敵陣の頭上へと生み出した闇の月は真下にいた妖や獣達を暗い光で照らし、その運気を下降させてしまうのである。


 月夜で気分が高揚した妖の群れ、百鬼夜行。
 それを先導する大呪の獣の討伐に当たるイレギュラーズ達だが、多くが天狗の討伐を優先する中、個別に獣どもの抑えに当たる者達もいて。
「鬼さんコチラ! 音なる方へ~!」
 雷を落としてくる鵺を夏子はさらに煽り、仲間を巻き込まぬよう位置取る。
 鵺はすぐ我を取り戻せば、夏子が正々堂々と背後から審判の一撃を叩き込む。
「好きでヤッてんだろ? ヤラれる事もあらぁな!」
「そんなに俺と遊びたいのか、なら望み通りにしてやるぜ!」
 いきり立つ鵺は猿の瞳をギラつかせ、夏子の体へと食らいつく。
 こちらは力任せに金棒を振るう青鬼。
「おおおおおっ!!」
 打撃の合間に吹雪を吐き掛ける敵の猛撃を、サクラが堪える。
 その一撃一撃は非常に強力であり、彼女はみるみるうちに体力が削られてしまうのだが……。
「確かに貴方は強いよ。でも……」
 サクラがそこで思い出したのは、ベアトリーチェ、アルバニア、リヴァイアサンと言った強敵達。
 そして、誰よりも死牡丹・梅泉を思い出す……!
「私はもっと強い相手と戦ってきた! 貴方に負ける訳にはいかない!」
 抑えに徹する気は無く、一度納刀したサクラは撃破を狙って狂い咲く桜の如く居合で切りかかると、青鬼の身体から鮮血が迸った。
 赤鬼を抑えるアカツキも負けてはいない。
 吐き掛けてくる敵の炎に笑みすら浮かべる彼女は、素早かく詠唱して具現化した黒いキューブへと敵を包み込む。
 赤鬼の体を悉く異常に満たし、アカツキは自らの炎を叩き込むチャンスを待つ。
 その間に、天狗を攻めるメンバー達。
(多少無理をしてでも、この一匹目を早めに仕留めたいんだ)
 シラスがそう考えるのは、妖の群れが仲間達を巻き込むように暴れ、体力を削っているからだ。
 至近でシラスは格闘魔術を使い、天狗の風に立ち向かう。
(零域で守りを維持できれば……)
 ここは体の張り所と身構えるシラスへ、相手は扇を使って直接烈風を叩き込んでくる。至近での交戦とはいえ、侮れぬ相手だ。
「ちょっと陣形が難しい……天狗が倒れるまで我慢……」
 希は少し布陣に苦しみながらも多くの仲間へと支援を維持させるように位置取る。
「死神の唄はギフトの力で聞こえづらく忘れやすい。都合がいい……」
 その上で、シラスが少しでも傷付けば死神の唄を口ずさむが、彼女のギフトの効果もあって、シラスは気づけば傷が塞がっている状況だったことも多々あったようだ。
 シラスへと気を取られる天狗へ、イレギュラーズは攻勢を強めて。
「このまま、切り崩させていただきますわ!」
 他人数で攻め立てれば、大呪の獣とて攻め落とすのは容易いと考えたメルトアイは、妖の群れに囲まれぬよう周りこみ、天狗へと攻撃を仕掛ける。
 触手と魔法を合わせたメルトアイの乱舞を天狗は風で受け流そうとするが、数も多く苦しんでいたようだ。
「触手を操る女子とは、何と面妖な……!」
 メルトアイの攻撃に顔を顰める天狗は、魔横からルツの魔弾に撃ち抜かれて。
 戦闘前から不安を抱いていたルツだったが、確かな手応えを感じていた。
 幾度か攻防を繰り返すうち、多数を相手取っていた天狗は防御の為に展開していた風をシラスの格闘魔術によって剥がされ、劣勢に追い込まれていく。
「神使、これほどとは……!」
 天狗はその身を風で包み込むように翼を羽ばたかせるが、少し距離を詰めたエンヴィが魔銃フォトン・イレイサーへと武器を持ち換え、ピンポイントで翼を撃ち抜く。
「うおおっ!」
「……近づかせはしないわ」
 八重歯を見せつつ語るエンヴィに続き、シラスもまた翼を使わせまいと指先へと魔力を込めて。
「逃がさねえ、ここで仕留める」
 彼は風切り刃を散らすかの如く、その指先で翼を引き抜いてしまった。
「か、風が……!」
 風を制御できなくなった天狗は地面へと落ち、早くも爆ぜ飛ぶようにしてその姿を消してしまった。
 その場へと蹴り込むように夏子が鵺の巨体を蹴り込んで。
「お待た。待ってない? そりゃ失敬」
 音と光で敵を引き寄せていた夏子は一時集中攻撃を受けて防御にも当たっていたのだが、名乗りを止めて敵の注意が分散したのを見た彼は仲間達が布陣を崩さず相手取ることができるよう、そちらへと鵺を運んだのだ。
 そのまま、夏子やシラスが前線で攻め立てる中、ルツは距離をとって蛇となった鵺の尾をビーム銃で撃ち抜く。
 仲間達が抑えてくれていることもあり、ルツは余裕をもって鵺を狙い、今度は敵の左目を潰してみせた。
「グオオオオッ!!」
 暴れようとすれば、今度はエンヴィが魔銃で鵺を狙う。
 相手は機動力も高い相手だが、仲間が上手く視界を塞いだ状況ならばとエンヴィは引き金を引く。
 直後、虎の四肢となった鵺の右前脚を弾丸で貫通し、動きを制限した。
「今よ」
「纏めて花火としてくれましょう!」
 エンヴィの呼びかけを受け、近場で戦う鬼2体を纏めて捉えたメルトアイは一気に6本の触手と魔弾を合わせて一気に連撃を食らわせていく。
 鬼どもは金棒で防御態勢も取ってダメージを最小限に食い止めていたが、前のめりに攻撃していた鵺はそうもいかない。
「グ、グオオオォォ……」
 白目を向いた鵺はよろけて横倒しとなり、完全に動きを止めてしまったのだった。


 大呪の獣達と交戦するイレギュラーズの周囲では、妖が暴れ続けている。
 彼らは序盤こそ楽しげにその身を躍らせていたが、心なしかそのテンションが下降しているようにも思えた。
「我々の計画がこうもあっさりと……」
「斯くなる上は、我等だけでも……!」
 残る2体の鬼どもがまさに鬼の形相で睨みつけてくるが、夏子は平然と彼らへとこう言い放つ。
「誰かの指示受けてんだっけ?」
「ぬうっ……」
 言葉に詰まる鬼達。それが誰かまで彼らは名言しなかったが、大方巫女姫か、天香・長胤の息がかかった者によるのは間違いないだろう。
「まだ解んない? お前らは売られたんだよ!」
「おのれ、神使ども……!」
「このままで済むと思うな!」
 金棒を振り上げる鬼どもはそれぞれ業火と吹雪をイレギュラーズ達へと吐き掛ける。
 周囲の妖ども……百鬼達の乱舞も相まって、メンバー達は少なからずダメージを追うことになるが、希がすぐさま傷付く仲間達へと死神の唄を響かせる。
 それだけでなく、希は気力の尽きた仲間へと手招きし、至近距離に入ったのを確認してから効率的に戦う為の支援の力を振りまく。
 おかげで、メルトアイも想定より多く触手と魔法の乱撃を目の前の赤鬼へと叩き込むことができた。
「おのれえええぃ!!」
 赤鬼が金棒を振り上げたところでルツがビーム銃を発射すれば、敵は思わず金棒を落としてしまう。
「我の攻撃が金棒だけだと思うな!」
 大きく息を吸い込んだ赤鬼は、イレギュラーズ達へと業火を浴びせかけてくる。
 燃え広がる炎にも、アカツキだけは笑い声を上げて。
「わははは! ご自慢の炎とやら、中々熱いが妾のもちょっとしたモノじゃぞ!!」
 少し燃えるくらいであれば、ご褒美とさえ感じるアカツキ。
 じりじりと彼女の身体に引火した炎がその体を焦がしてはいたが、彼女は構うことなく両手から業火を放つ。
 連続して放射される炎はアカツキのクラス煉獄と呼ぶにふさわしき魔術。
「わ、我が炎で力負けする……だとおおおおぉぉ!?」
 信じられぬといった表情で炎に飲み込まれた赤鬼。
 しばらく敵はその炎に悶えていたが、やがて抵抗しなくなり、炎上したまま地面へと伏してしまった。

 こうなれば、残る青鬼は一挙にイレギュラーズを相手取ることとなり、苦しい展開を強いられることになる。
 長期戦は不利と相手取っていたサクラだったが、思った以上に屈強な青鬼はそのタフネスを見せつけていた。
「かあああああっ!!」
 虚を突いて吹雪を吐き掛け、さらに力任せに金棒を叩きつけるが、ここに来て多少の攻撃ではメンバー達も崩れない。
 シラスが格闘魔術を叩き込んで相手の態勢を崩せば、距離をとったエンヴィが顕現させた邪悪な怨霊どもをけしかけ、青鬼を執拗に襲わせていく。
 傷付く青鬼も意地を見せ、抑えを続けていたサクラの身体を叩き潰そうとするが、それを夏子が庇いに当たって。
「まぁま頼ってよ。何て事ぁない、役割さ」
 平然とした表情の夏子に苛立つ青鬼へ、零域の効果時間を考えながら、シラスがギリギリのタイミングを計算し、必殺の一撃を繰り出す。
「終わりだ」
 必殺の一撃をと、胸部の連打から顎へと強烈なアッパーを叩き込んだシラス。
 それでも、青鬼はしっかりと大地を踏みしめて。
「残念だったな。我は倒れぬ……!」
 幾度となく浴びせかけてくる吹雪。
 サクラはそれに対抗し、自らの名でもある桜の花びらを散らす。
「元より、私の得意は電撃戦……!」
 傷ついて血を流そうとも、吹雪で体の一部を凍らされようとも、サクラは怯むことなく手数を活かした連続攻撃で敵を圧倒していく。
 逃げず、下がらず、ただ眼前の敵へとサクラは刃を振るって。
「これが、私の剣だ!」
 一気呵成に刃を刻み込み、目の前の敵を切り倒す。
「こんな、馬鹿、な……!!」
 自らの敗北が認められぬまま、青鬼は仰向けに倒れていき、瞳を開いたまま絶命してしまったのだった。


 天狗、鵺、赤鬼、青鬼。
 4体の大呪の獣を全て討伐したイレギュラーズ達は態勢を整え直して。
「4匹の妖は滅びた! まだやろうと言うなら、かかってきなさい! 一人残らず倒して上げるよ!」
 高らかにサクラが勝利宣言し、百鬼夜行を追い散らそうとする。
 すると、妖どももようやく冷静になり、現状を把握したようで。
「「ひ、ひいいいいっ!!」」
「おたすけええええっ」
 テンション高く暴れていたのがウソのように怯え、蜘蛛の子を散らすようにこの場から逃げていく。
「逃がせば禍根となるやもしれんからのう」
 アカツキは後顧の憂いを建つべく、うねる雷撃を浴びせかけていけば、シラスも素早さを活かして逃げ遅れた妖へと拳を叩き込んでノックアウトしていく。
 とはいえ、メンバー達も全員が相当に乗り気だったわけではなく、希などは戦意のない妖へ手を払いのけていた。
 妖達の逃げ足は速く、そのほとんどはあっという間にこの場からいなくなってしまった。
「かなりの数の妖が居たけど……強い力を持った先導者が居ないだけで、皆慌てて逃げてしまうのね」
 まるで、恐ろしい化け物にでも遭ったように。
 そう考えたエンヴィは複雑な表情をしてしまっていた。
「……うん、大呪が終わったら、今度は暴れずに遊びにおいで」
 手を払っていた希だったが、逃げ帰った妖達へと笑顔でそう呼び掛けた。

 一戦終えたイレギュラーズ達ではあったが、まだ倒すべき敵は残っている。
 メンバー達は休む間もなく、決戦の舞台へと向かっていくのである。

成否

成功

MVP

シラス(p3p004421)
超える者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開中です。
 MVPは先手から全力で必殺技を使って相手を圧倒した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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