シナリオ詳細
赤の盗賊団
オープニング
●襲撃
山の中にある細道を商人が馬車を引きながら移動している。
地面は舗装されておらず、時折大きな石を踏んでは馬車が跳ねる。
「はやくこんな道は抜けたいぜ」
商人はやれやれとため息をついた。
次の町に着いたら一休みするか、などと考えていたら進路の先に赤いバンダナをつけた集団が見えた。
馬車の行く先を塞ぐように横並びに立っている。
「邪魔だなあ……」
集団と馬車の距離が近づく。道を開けろと何度も商人が叫ぶが、一向に動く気配が無い。
やがて馬車は集団の目の前で止まった。止まらざるを得なかった。
「おい! どういうつもりだ!」
商人は怒りをぶちまける。すると集団の1人が隠していたダガーを取り出すと馬の足を切りつけた。
馬は痛みから逃れるように暴れまわる。苦痛を訴える馬の悲鳴が響く。
商人は馬を宥めようとするが、言うことをきかない。さらに切りつける赤い集団。
馬が大きく体を捩ると馬車がバランスを保てなくなり横転した。
「うわっ!!」
馬車から放り出される商人。そして荷台に積んだ商品がこぼれた。馬はなお痛みに震え横たわった。
商人は地面に打ったところを擦りながらゆっくりと顔をあげる。
そこに見えたのは、全員の構えたダガーが商人に向けられる光景だった。
「……ひっ!!」
商人はすくみあがった。
「ここを通るには通行料がいるんだぜ?」
「荷台に載ってるもん全部で手を打ってやるよ」
集団は好き勝手なことを行って、商人が運んできた荷物に手をつける。
商人は恐怖を覚えつつも、取られてたまるかと荷物を奪い返そうとする。
すると、バンダナの男はその腕をためらいなく切りつけた。
「ああああ!!」
血が腕を伝い地面に滴る。どくどくと命の断片が零れていく。
「おとなしくしてろ。そうすりゃ命だけは助けてやるよ。ははっ!」
商人は成す術なく、ただただ奪われる。
集団が去った後に残ったのは空になった荷台と、動かなくなった馬だけだった。
●盗賊退治
「南のほうで盗賊団が現れたみたいなのです!」
ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が持ってきた依頼書。そこには盗賊退治に関する内容が記されていた。
詳細はこうだ。
山の中に岩肌に挟まれるように細い道が通っていて、交易路として機能している。
幅は1頭で引く馬車がようやくすれ違うことができる程度。
ところがそこに盗賊たちが現れ、通行料と称して金品を奪っているというのだ。
それだけならまだしも、抵抗した商人がケガを負う事件も起こっていて、放置すれば悪化は必至。
「人数は少なくとも8人。多くて10人ほどとのことです!」
目撃証言から割り出された数字は盗賊団の戦力を表している。
武器はダガーで、全員所持していると思われる。
特徴として全員赤いバンダナを頭に巻いており、リーダーと思われる男は赤い派手な帽子をかぶっている。
「なるべく早く解決してほしいそうです!」
- 赤の盗賊団完了
- GM名星織遥(休止中)
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年05月18日 21時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●馬車に隠れて
商人が馬車を引いて、ある山へと向かっていた。しかしこれは商品を運ぶ馬車ではない。盗賊退治のために用意された馬車だ。それを引くのはコリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)。自前の馬車に幌を付けることで、あたかも商人が運搬に使っている馬車だと思い込ませる。また御者が座る席の後ろに自分の武器を隠す空間を作った。さらに荷車の前側に樽を2個載せ、多くの商品を載せているかのように見せている。仲間が身を隠す為の障害物としても使えるだろう。
「待ち伏せて強奪かー。定番っちゃ定番だね。まるっと退治する所も含めて、うん」
コリーヌは納得したように頷いた。なお荷車を引く馬は、コリーヌの軍馬に替わっている。
「戦い慣れた軍馬なら、驚いて暴れる事も無いだろうしねー」
情報では荷台を引く馬が切りつけられて暴れた結果、横転したという事例もあった。そういった事態に対する対策である。そして荷車のなかでは他の面々が隠れている。
「僕は王様ですからね、円滑な行商のお手伝いもまた王様のお仕事です」
『おうさま』Λουκᾶς(p3p004591)は今回の依頼に積極的な姿勢を見せる。
「他のルートだってあるんでしょうけど……逃がしたりすれば、他のルートだって狙われるかもしれない。ここで退治しておかないと、後々危ないわね」
「罪のない人達を狙うだなんて許せないわ。地の利が相手にあるのは明白……だけど、正義がこっちにあるのも自明のことよ」
荷台の中で『ちょーハンパない』アクア・サンシャイン(p3p000041)と『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)の会話が聞こえる。
「ティピカルな盗賊団の退治依頼だねー。ボクも何度も振ったことあるー」
その会話に『Esper Gift』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)も加わる。
「襲った相手の命は見逃して、それによって情報拡散させちゃうとかそれ程悪質でも狡猾でもない感じだなー。でも、時期が悪いー。今は、幻想は火薬庫状態なんでー、さっさと対処して裏を取っとかないとー」
その会話の横で石動 グヴァラ 凱(p3p001051)は襤褸切れをかぶり、邪魔にならぬ様に膝を抱えて小さくなっている。
(野盗、退治。日銭を、稼ぐには、丁度よい……か)
他のメンバーとカモフラージュの荷物で馬車のなかは広いとは言いがたい。だが『ガド・グヴァラ・ギグ』で墨色の焔が絡む半壊した機械鎧をまとっている。『聖剣使い』ハロルド(p3p004465) は『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)に金具付きロープを渡しておく。盗賊団が出現した場所は岩壁に挟まれた狭い山道。この岩壁は上に乗れるらしく、もし敵がそこに居た場合にはこれで登って対処する計画だ。
そうこうしているうちに馬車は山へと入っていき、例の細道にさしかかった。御者役のコリ-ヌ以外は警戒を強めて息を潜める。エスラは『ファミリアー』と『ウィッチクラフト』でそれぞれカラスを召喚し、視覚を共有する。そして岩の上に敵がいるかどうかの確認を優先しつつ、敵の陣容を調べる。ラノールも感覚を研ぎ澄ませて敵の位置や陣形をできる限り把握しようと努める。また目、耳、鼻を使い隠れて不意を打とうとしている敵がいないかどうかも気をつける。
エスラはカラスの視覚から得た情報を全体に共有する。盗賊団は情報どおり、この道の先で待機している。このペースで馬車が進めば、もうじき接触するだろう。陣容は前衛が5人、後衛が3人。この2グループはやや離れているが、連携が取れない距離ではない。そして両側の岩壁の上にそれぞれ1人ずつ盗賊団員が隠れている。道の上からでは見えない位置にいるので、この2人はおそらく奇襲要員だろう。またリーダーと思われる赤い帽子をかぶった盗賊は後衛に含まれている。
それに加えてラノールが感じ取った情報も全体に伝える。こちらの不意を突こうとしている敵はおらず、警戒するのはその10人だけで問題ないこと。敵の陣形などはエスラのものと照らし合わせて、違いがないことを確認した。これによって敵の人数は確定した。それぞれ情報の共有と確認を済ませると、戦闘に出られる準備を整える。
●盗賊団との接触
馬車は何も知らないように装いながら進み続ける。そしてついに赤いバンダナを巻いた一団が見えてきた。彼らは横一列に並んで、馬車の行く手を阻んでいる。
「すいません、どいて下さーい」
馬車の速度を緩めながらコリーヌが呼びかける。しかし彼らは列を崩すつもりはないようだ。そして馬車は列から少し離れたところで止まった。クロジンデは幌に覗き穴を開けて、外の様子を見る。そして『超視力』と『瞬間記憶』で盗賊の位置を、『Gifts Sorting Clerk』で彼らのギフト情報を把握した。それらの情報を馬車内で共有する。その間にも数人のバンダナがにやにやとした顔で近づきながらコリーヌに話しかける。
「お前見ねえ顔だな。じゃあ教えてやるよ。ここを通るにはな、通行料がいるんだぜ」
「その格好、商人だろ? ずいぶん重そうな荷物じゃねえか。俺たちがもらってやるよ」
男たちは終始にやつきながら好き勝手に言い放つ。もうそれらが自分たちのものになると思っているのだろう。
「むー、通行料が欲しいの? 仕方ないなー」
コリーヌは傍らに置いた袋の中を漁る。男たちの表情に期待の色が濃く表れる。
「はい、通行料♪」
袋から取り出したのは『SADボマー』。コリーヌはそれをいきなり投げつけた。それを見た男たちの表情がみるみるうちに困惑と焦りに変わった。
●開戦
爆弾の音が周囲に響いた。この合図を聞いた一同が、一斉に戦闘態勢へと移行する。盗賊たちがどよめくなかに、ルカがすっと身を乗り出した。
「通行料の徴収にきました。返していただければ、身の安全は保障しますよ」
盗賊たちはふざけるなと言わんばかりにダガーを構える。ルカは盗賊の口上に合わせるように『王の一声』を掛けると、後衛へ抜かれないように注意を払う。怒りに任せてルカに切りかかろうとする盗賊たち。そこへクロジンデは飛び込み『ロベリアの花』を打ち込んだ。最大限に巻き込む位置に陣取って放った一撃は確実に盗賊たちに効いた。男たちは痛みと苦しみにうめき声をあげる。
「まずは通行料を先払いー遠慮しないで貰っていってねー」
そしてクロジンデが一歩引いたところでコリーヌが隠していたガドリングを発射する。この流れでは避けきることが出来ず、否応無く被弾する。そこを好機とみたアクアが前衛の後ろから飛び込んで『ヴェノムクラウド』を炸裂させる。
「はははっ! やっと出番か! 待ちくたびれたぜ!」
さらに追い討ちを掛けるようにハロルドが踏み込む。盗賊相手に遠慮は不要と言わんばかりに敵に向かっていき『加護』と『血意変換』で積極的に攻撃を仕掛ける。そして後衛のエスラはその後押しをするように『マギシュート』を放つ。
「残念ね。通行料になるようものなんてないわ。観念してお縄につきなさい!」
開戦の合図から息をつく暇もなく場は動き続ける。気づけば敵の前衛は5人から2人に減っていた。
「武器を捨てて、投降して!」
アクアが盗賊たちにそう呼びかけた。
(別に私は殺し合いに来たわけじゃないもの。生きてるに越したことはないわ)
しかしその呼びかけに彼らが応じることはなかった。
●岩壁上で起こる攻防
開戦の合図が響いた直後、ラノールはハロルドから借りた金具付きロープを使って右側の岩壁に登った。共有した情報どおり、赤いバンダナをした盗賊が1人立っていた。彼は爆発音につられて下の様子を伺っていたが、ラノールの存在に気づくと鋭い視線をラノールに移してダガーを構えた。
ラノールは命中を重視した一撃を主体にマトックを『コンビネーション』で打撃を展開する。相手は反撃の機会を狙っているようだが、攻撃をよけるのに手一杯という印象を受けた。ラノールは盗賊の回避能力が脅威でないと判断し、攻撃を威力重視に切り替える。そのとき一瞬だけ隙が生まれた。好機とばかりに仕掛けてくる盗賊。しかし踏み込みが浅い。反対にラノールがその隙を突いて一気に深く踏み込む。盗賊がしまった、という表情を浮かべた次の瞬間には『一刀両断』で切り伏せられた。
一方、石動は視線が通らない箇所で荷台から抜け出し、左側の岩壁を登っていた。そして盗賊が1人いることを確認した。敵を視認すると石動は『死骸盾』で機械鎧の隙間を何だか分からない硬質な肉で埋めた。盗賊は石動の存在に気づくとダガーを構える。ただ盗賊の目には驚きや怯えはなく、どこか余裕さえ感じられる。特徴を観察すると、背が高く筋肉質な様子が服越しでも窺える。おそらくそれらに裏打ちされた自信からくる余裕だ。だが石動が足場の悪さをもろともせず突き進むと、盗賊はその挙動を予測できなかったのか、動きが鈍る。そのまま距離は狭まり石動が盗賊の眼前に迫った。必死にダガーを振り下ろしたが、掠ることなく空を切った。そしてがら空きになった体に石動の重い一撃が入る。筋肉の壁は意味をなさず、そのまま動かなくなった。
●赤い帽子の男
「お前たちっ! いちど引けっ!」
盗賊の後衛側から腹に響く低音が聞こえた。声の主は赤い帽子の男。前衛の男たちはその言葉に素直に従い、こちらを警戒しながら移動する。赤帽子が小さく手を動かすと男たちがすぐに陣形を再構成する。赤帽子を中心に残った4人が扇状に広がった。赤帽子を守りつつ、攻撃に移りやすい布陣だ。こちらも盗賊たちを囲うように並んで武器を構える。
「降参するなら今の内だと思うよ? 命あっての物種って言うしー」
コリーヌの発言に対して、赤帽子は笑止千万と言い放った。ここから誰が仕掛けるか。どう仕掛けようか。そんな間を感じた直後、石動が壁面を駆け抜けながら『シールドバッシュ』で赤帽子を殴りにかかる。しかし一番端に居たバンダナが盾になり、それを防いだ。だがその衝撃に耐えることができず、体が少し地面から浮いた。そのまま仰向けに地面へ落下すると動かなくなった。
陣形を立て直した敵が見せた一瞬の隙。ここを逃す手はない。すかさずラノールやハロルドたちが踏み込み、後衛のエスラたちが援護する。
「随分と悪さをしたようだ。君たちも通行料を払う時が来た。……最も、君たちが払うのは三途の船渡しにだがね」
ラノールの言葉に苦々しい表情を浮かべる赤帽子。どうにか指示を飛ばしつつ防衛体勢を維持している。しかし攻撃に転じる隙を見出すことができず、消耗する一方だった。やがてその限界に達した盗賊がまた1人倒れた。こうして残ったのは赤帽子とバンダナが2人。だが彼らの切り替えは早かった。防戦することを早々にあきらめ、すぐさま後方の道へ逃走を図る。しかしそれをルカと石動が先回りして退路を絶つ。
「『ここを通るには通行料がいる』……でしたっけ? ここから先は通行止めです。回れ右でお引き取り下さい」
ルカはそう言うと、3人はその場に立ちすくむ。逃げようとした先には2人が待ち構えている。しかし引き返せば負けしか見えない消耗戦を強いられる。赤帽子は本当に悔しそうに表情を浮かべながら降伏を宣言した。
●戦闘終了
一同は生き残った3人をアクアが持ってきたロープで縛り上げると所持品を確認する。本人たちの持ち物だけでなく、盗品と思われるものもいくつかある。石動がへし折らんばかりに盗賊の首を締め上げてアジトと他に仲間が居ないか問いかける。それに便乗するようにクロジンデは背後関係を尋問する。盗賊は苦しそうに息を漏らしながら1つずつ情報を吐き出す。
アジトは戦闘した場所からやや離れたところにある洞穴だった。出入りする部分は足跡を消すなどの工作が行われていた。これなら洞穴が誰かに見つかっても気に留めることはない。中に入ると、無造作に積まれた木箱や雑多に置かれた麻袋の山があった。間違いなくあの細道で奪ったものだろう。
この盗賊団はどこかにバックボーンがあるわけではなく、協力関係にある組織もない。人員も戦った10人で全員だという。細道の特性を利用して商人たちから金品を巻き上げることを思いつき、ここを根城にしていたようだ。
盗賊たちは無力化したし、これ以上聞きだせる情報も無さそうだ。赤帽子を含む盗賊団員をギルドに引き渡したら、この件は解決である。盗品を元の持ち主に返すなどの事後処理はギルドに任せることになるだろう。
「悪いことしてるといつか罰が当たるの。今回の一件で、少しは盗賊になろうなんて輩が減ってくれるといいんだけど」
エスラは憂いながら呟いた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
討伐依頼お疲れ様でした。
今回の依頼は成功です。
盗賊団に対して商人のふりをして奇襲を仕掛けるのは良い作戦だと思いました。
GMコメント
星織遥と申します。
よろしくお願いします。
●成功・失敗条件
成功条件:盗賊団を全滅させること。対象の生死は問いません。
失敗条件:全滅させることができずに帰還すること(返り討ちにあう)
●現場の状況
岩肌に挟まれた道は狭く、1頭で引く馬車がすれ違う程度。
人の大きさで考えると、4~5人が横に並ぶと道を塞ぐくらいの幅です。
岩の壁は3m~4m。その上は荒いですが、乗れないことはないです。
地の利は盗賊団にあります。
●敵の情報
盗賊団員。8~10人。
リーダー格の男(赤い帽子)が居る限り陣形の建て直しが容易。
見つかれば即座に戦闘に入ります。
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