シナリオ詳細
厭世の果てで穢れた少女
オープニング
●
かつて、アドラステイアにはクロエという聖銃士がいたが、いまはもういない。
彼女には大いなる野心があった。少女ながらも新世界の幹部を目指し、いずれはネメシスの中央に乗り込んで政に参画するという大層な野心だ。それには彼女の生い立ちが関係している。
「急いで出世したい!」
そのためには手段は選べなかった。複数の友人を魔女裁判の餌食にして下位ながら聖銃士の地位を若干十三歳で得た。
「みんなありがとう。ごめんね」
厭世の渓に堕とした友人たちへの感謝は忘れなかった。わたしには大事な目的がある。だから許してほしいと。……許してもらえるわけないのはわかっていた。
次のステップに進みたい――。そう考えたクロエは旅人をアドラステイアにおびき寄せ、抹殺する作戦を新世界の幹部に提案し、そしてそれは受け入れられた。
ローレットはクロエの策に乗り要人救出を目的とした工作員をアドラステイアに送り込むこととなった。
よかったのはそこまでだ。
ローレットの作戦が開始されると、旅人達を呼び込むための餌にしていた親友を簡単に奪還されてしまう。町中に新世界の兵士を配置したがローレットの戦士を発見することは出来なかった。地下道には聖獣まで用意して待ち構えていたのにそれも上手くかわされてしまった。ローレットの力を完全に見誤ったクロエの失策だった。
もうここ<新世界>にはいられない。クロエはアドラステイアを逃げ出したがすぐに捕獲された。作戦失敗の罰として体に寄生性の聖獣を埋め込まれ野に放たれた。
今はアドラステイアの外れにある見捨てられた墓地で静かに獲物を待っている。
「ローレットも……新世界も許さない。こんな触手だらけの体にされて……」誰かわたしを助けて……。
●
「よく集まってくれた。ネメシスからの依頼がある」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はイレギュラーズ達に依頼の説明を始めた。
「場所は、ネメシスというよりはアドラステイアに近いな……」
ふむ、とショウは僅かに首を傾げる。依頼内容に漠然とした違和感を感じたようだ。
「……」その説明にはセリア=ファンベル(p3p004040)も参加していた。
ショウの話を聞いているうちに、セリアはかつて参加したアドラステイアのミッションで行方不明となった少女がいたことを思い出した。
部屋の後方では白銀の剣を携えた長身の青年も説明に耳を傾けている。
「アドラステイアの外れの見捨てられた墓地だ。そこに盗賊が巣くっているらしい」
盗賊討伐が依頼の趣旨とのことだが……。本当に盗賊のせいで近隣の住民が困っている可能性は確かにある。
「皆も知っているとおり、アドラステイアの情勢は安定しているとは言い難い」
並の討伐依頼とは考えず、十分注意して欲しい。アドラステイアでは聖獣と呼ばれる魔種の眷属が使役されていると聞く。地理的にもそいつらに出くわす可能性はゼロではないだろうから気を付けてくれ。
ショウは依頼の説明を終えた。
- 厭世の果てで穢れた少女Lv:10以上完了
- GM名日高ロマン
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年11月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●忘れられし墓場
アドラステイアの外れ、ひっそりと佇む墓地の名は誰も知らない。だが、そこに佇む少女を知っているものはいるかもしれない。
少女の名はクロエといった。燃えるような赤毛は三つ編みにまとめ、顔にはまだそばかすが残っている。見る部分を限定すれば、まだまだあどけない少女と呼ばれる時分だ。
実際は落ちくぼんだ眼窩、病的なまでにこけた頬、全身を覆うローブから覗く両腕は枝のように細い。場所が場所だけに服を着た幽鬼にしか見えなかった。
不意にクロエを黒ずくめの男達が囲む。
男達は皆黒いローブで全身を隠し、素性は計り知れない。ローブの男達はクロエの耳元でゆっくりと言い聞かせるように囁いた。
「クロエ、お前の最後の仕事だ。間もなくローレットの連中がここに来るから、全員殺せ。終わったら楽にしてやる」
「……」
クロエは宙を見つめたままで何も答えない。代わりに彼女のローブの『中身』がぐにゃりと不規則に動いた。それを見た男達は慌てて間合いを取る。
「お前ごときに制御できるとは思えんが……せいせい上手く操ってくれ」
ローブをまとった四人の男達はクロエを敢えて目立つところに立たせる。墓地の中央にある納骨堂の廃墟だった。入り口にクロエを、男達は納骨堂の中に隠れ様子をうかがう。
●イレギュラーズ登場
「それでは始めるとしようか」
――精霊たちよ。『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は墓場の主たちに語りかける。
暫し間を置き、ポテトは宙に向かって小さく頷いた。「素性までは分からなかったけど数名が、少し前にここを通過したようだ」
ポテトは精霊たちから得た情報を皆に共有した。精霊疎通の力を持たないものには不思議な光景に映っただろう。
「了解。恐らく、クロエはここに来ているようだね」
でも、少し先のようだ。この辺りからは彼女の気配は感じられない。白銀の剣を携えた青年はそう呟き、墓地の奥にある霊廟を見つめた。彼は『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。クロエを知るものだ。
「そうだな。この辺りに伏兵はいない。進んでよさそーだぜ」
索敵を終えた『須臾を盗む者』サンディ・カルタ(p3p000438)は先陣を切り、悠々と奥へと向かう。
「しかし、クロエってレディだけどよ。新世界を抜けようとして失敗したって噂は聞いたぜ」道すがら、サンディは不意に漏らした。
「私もリゲルから聞いているが、そうみたいだな」とポテト。
それを皮切りに、アドラステイアで暗躍する新世界を始め、地下道の聖獣や魔女裁判の話等々。聞いた話や実際に見た話を皆が口にし始める。
「クロエ、か。初耳だぜ」ショウの野郎、なんか怪しかったんだ。『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は憤慨し怒鳴り散らそうと思ったが、まずは堪えた。既に警戒態勢に入っているからだ。
だが小娘一人に何を警戒する必要がある……となるとショウの野郎、まだ何か隠してやがるな。グドルフの眼光が鋭さを増す。微かな疑念がグドルフの警戒レベルを一段引き上げた。
――不思議なことですね。
『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は歩を進めながら思案する。彼女もかつての事件でクロエと接触したことがある。
アドラステイアの近くで盗賊被害自体は有り得るとしても、それがどういう経由でローレットに流れてきたのか。不思議な話です――。
アリシスもこの依頼はアドラステイア側の、恐らくは新世界の罠であることを予想していた。だからこそ柔軟に対応する備えがある。
「あれは霊廟……納骨堂でしょうか。なかなか広い墓地でしたね」とアリシス。
一同は目的地に到着した。暴かれた墓、朽ちた墓石、散乱した人骨。無数の酒瓶。この墓地は死者達に安息を与える代りに、生者への嫉妬をたっぷりと煽りたいようだ。
納骨堂の前に誰かいる。レディか? サンディはいち早く人影を確認した。赤髪の女性のようだが全身はローブに覆われておりシルエットは曖昧だ。
「クロエに間違いない」リゲルはそう確信する。彼女の持ち物に付着していた特有の香りを彼はまだ覚えていた。
「なるほど。あれか」
『Unbreakable』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)も遠目に目標を発見したが、不用意に進まず念入りに周囲を警戒する。彼の戦略眼が光る。
他にも敵は存在すると仮定すべきだ……恐らくはあの納骨堂の中。朽ちかけた平屋に隠れることが出来る人数は多くはないはず。
そして戦闘は建物周辺。ここなら地形に有利不利はないだろう。よし、ここまではいいだろう。フレイは素早く的確に戦場を分析した。
「クロエ!」
『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は目標を見つけると直ぐに駆け寄った。
「……」
こうなっては仕方がないと『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)もセリアの後を追う。
あれが話に聞くクロエ。アドラステイアで親友すら蹴落として組織で名をあげようとしたもの。それが本当のことであればクーアは彼女を擁護するつもりなんて毛頭ない。
だが……因果応報ではあろうが、助けられる可能性がある者を見捨てるわけにはいかない。クーアはそう決意していた。
「あなた、クロエでしょ。ねぇ、聞こえているんでしょ?」
セリアはクロエの肩に触れるほど近づいたところで、クーアがセリアを制した。
クロエは虚ろな表情でクーアを暫く見つめていた。クーアのダイクロイックアイの輝きに魅入られて時が止まったかのようだ。「……?」クーアは面識がないはずだが。
「下がった方がいーぜ!」サンディが駆け寄る。
「クロエの背後の建物に伏兵がいるはずだ」とフレイ。
一同は一旦、クロエから離れ布陣する。すると朽ちた納骨堂からゆらりと影が流れてきた。黒いローブを纏った四人組であった。
「クロエと戦わせて消耗するのを待つつもりであったが、流石はローレットの刺客だ」
四人の男達は長剣を抜く。「ローレットの犬どもよ。貴様らに名乗る名はない。『新世界』とだけ言っておこう。その名だけを胸に逝け」
いけ、クロエ。一矢報いよ。黒いローブを纏った男がクロエに指示を出すと同時に、四人の男達は全身を無数の鉄さび色の槍で射抜かれて絶命した。
鉄さび色の槍――そう見えた物はクロエの体から放射状に突き出た無数の触手であった。
想像どおり。簡単な謎解きでしたね。アリシスは名乗ることもなく死んでいった者達を静かに見下ろした。
●戦闘I
クロエはゆっくりとローブを脱ぎ捨てた。何か言う訳でもなく彼女はただ伏し目がちに立ち尽くす。
クロエの肉体の大部分は木乃伊の様に干からびており、酷くやつれている顔がましに見えた。だが、干上がった肉体の中でも心臓の辺りだけ不自然に筋肉が発達していた。
「わたしはセリア。アドラステイアで少しだけ会ったけど覚えてる?」
変わり果てたクロエを見てもまだ人として接するつもりだった。セリアだけではないイレギュラーズの皆がそうだ。一同が一歩踏み出すと、クロエの心臓の辺りから触手が出現し獲物を狙う針の様に硬直した。それ以上近づくなと威嚇しているようだ。
「こんな体になっちゃって、もう元に戻れるはずないよ……」
クロエは自嘲気味に漏らした。「体の中にだって触手が……意志を持った怪物だらけなんだ。多分、百本以上ある」
――こうなったのも全部お前たちのせいだ!
クロエの体から無数の触手が突如飛び出した。彼女の感情の高ぶりに呼応したかのようだ。
心臓の辺りから出ている触手は最も太く禍々しい。それ以外の触手は肥えた蚯蚓程度の太さだ。だが、
「おっとあぶねえ」
グドルフは向かってきた触手をすんでのところで回避する。避けた触手はそのまま突き進み墓石を貫通した。弾丸程度の威力があるようだ。
「レディを救ってやろーぜ!」
サンディは触手だけに絞って攻撃を始める。
――お前は俺なんだよ。何とかしてやるぜ。絶対に、死んでもな。サンディは触手を身に受けてもひるむない。掠る程度じゃやられねーぜ! 洗練された防御技術が決して直撃を許さない。
こうしてクロエの嘆きと共に静かに戦闘が開始された。
「おい、俺を攻撃しろ。俺は絶対に手を出さない」
フレイは盾を買って出る。彼の慈愛の精神によるところもあるが、他者には真似できない彼だけの秘策がある。
「リゲル、何か分かるか?」とポテト。
ああ。彼女は助けを求めている。彼女の苦しみと悲しみと、後悔を。ひしひしと感じるよ。
「やっぱり。だったら助けないとな!」ポテトは他者を攻撃する術を敢えて用意していない。
矛を持たずに戦場に立つ意味。歴戦の兵であればあるほど、それがどれだけ恐ろしいことか理解できるはずだ。ポテトの仲間達への信頼の大きさは計り知れない。
盾になったフレイを無数の触手が襲う。フレイは致命傷こそ避け続けているが、無数の触手を幾度も身に受けており楽観視できる状態ではない。出血量も多い。
フレイが倒れない理由。ポテトが治癒に専念していることや、フレイが百戦錬磨の戦士であることも理由ではある。だが彼には――。
――悲嘆の魔眼よ。未来を照らせ。
よし……酷い傷だが『あれでは絶対に死なない』。それが視えている。フレイだけのとっておきの能力。この力が彼を不死者たらしめている。
「私も力を尽くすのです!」
クーアは猫のような俊敏さで動き、触手の有効範囲を即座に見破った。それ以降は自分の間合いを維持し、触手からの有効打を受けることはない。間合いを制止した者が触手を制する。
更には、彼女の攻撃は圧倒的な命中精度を誇りまさに必中であった。炎と雷の奔流が一度に複数の触手を焼き切った。
「ちっ、ただの賊退治だと思ったら、こんなのが居やがるとはよ!」
ショウの野郎! グドルフは怒りながら触手をぶった斬る。そして襲い来る触手をひらりとかわし、またぶった斬る。
「おい、おめえ」
グドルフは触手をかいくぐりクロエに接近する。「……さんぞくが、何」クロエは虚ろな表情でグドフルを見た。
「おめえ、色んなヤツを出し抜いて、蹴落として来たんだろ? 助けて欲しいんだろうが、おめえが地獄に蹴落としてきた全員がそう思ってたはずだ」
ガキだからって被害者ヅラばかりしてんじゃねえ! グドフルは怒声と共に放った一撃で無数の触手をぶった斬る。
図星だったのかクロエの顔が赤くなる。まだ人間の感情が残っているようだ。
星の様に輝く美しき剣を手に。リゲルの剣技は風を巻き起こして無数の触手を切り払う。
百本あると言われた触手もこの調子であれば、根こそぎ切り払うことも可能ではないか。そう思えるほど状況は安定しつつあった。
クロエの意思に反して触手達は自身への攻撃者に反撃を試みるが大部分はフレイが肩代わりしてくれる。
フレイの受けた傷はポテトが即座に癒し、形勢不利な場合はアリシスもフレイのフォローに入る。
アリシスは冷静に戦況を読み、勝利をこちらに手繰り寄せるべく粘り強い働きを見せる。
「頑張れクロエ、諦めるなペリエも無事だよ。今度は君が救われる番だ!」
彼女の瞳孔が僅かに開く。リゲルの言葉でクロエの動きが不意に止まった。
聖獣の核はやはり心臓の近くか。悍ましい臭気が漂っている。リゲルは眉間に皺を寄せる。だが、ここが正念場とばかりに畳みかける。
「魔女裁判の無い世界へ行こう!」とリゲル。「ああ、まだやり直せるはずだ」ポテトも続く。
「さっきはああいったがよ。おれらと一緒にあのクソみてえな街をブチ壊そうぜ。それなら手ェ貸してやる」グドルフは微かに口角を上げた。
動きが止まっている。チャンスだぜ――サンディは聖獣の核と思しき部位に一撃を加える。続けざまにアリシスも触手に閃光を重ねる。
どうだ? クロエ本体にダメージはないか。サンディは注意深くクロエを見やる。
クロエは口から血を流した。やはり少女の肉体にもダメージがあるようだ。
「痛いの?」セリアの問いにクロエは頷いた。「我慢しなさいよ。友達何回も裏切ってきてるんだし」セリアは核と思しき触手を素手で掴み、渾身の力で引き抜こうとした。
「痛い、やめて!」
クロエが叫ぶと至近距離にいたセリアの体を無数の触手が貫いた。クロエの防衛本能なのか、触手の判断なのかは分からない。
●戦闘II
「アドラスティアの話を情報屋に売れば当面の生活費にはなるだろうし……」
セリアは触手に射抜かれたままで踏みとどまり、核を引きちぎろうと奮闘している。
「あなた達……なぜあたしなんかのために。もういいよ、助からないから」
クロエはセリアを突き飛ばそうとするが、少しも動じない。
「仕事とか住む場所もわたしが探すの手伝ってあげるからがんばりなさいよ!」
セリアはゼロ距離で核に神秘の力を撃ち込んで見せる。
「今さらあんな街に戻ったって居場所もないでしょ?」
分かったら何か考えなさいよ。核はどうやって剥がすのよ? セリアが渾身の力で核を引っ張るとクロエは再び口から血を流した。
隙を見てクーアが必中の一撃で触手を破壊してセリアを救出する。セリアの傷は深く早々に本格的な治療が必要な状態であった。
「ちっ、やるしかねーか……死んでも救うって言ったよな?」
サンディは自らの可能性の全てをこの場に投じようと意を決した。だが、この場には治癒を得意とするものが複数人いる。命を賭けた大博打の前にもう一つだけ策があった。それでだめなら、やってやる!
「辛かったよな。憎かったよな」
フレイはクロエの苛烈な攻撃にも一歩も引かずに立ち塞がる。
「痛かったら言ってくれ! すぐに癒してあげるから、最後まで諦めずにがんばれ!」ポテトも粘り強く立ち回る。稀に襲い来る触手は盾で打ち落とす。身を守る術は心得ているのだ。実態は身を守る術どころか難攻不落の堅牢さを誇るのだが……。
「――アドラステイアの事も新世界の事も忘れて、違う場所で新しい生き方をできるとしたら。貴女はそれを望みますか」アリシスが問う。
「……元の人間に戻れるなら……やりなおせるなら」
であればお助けしましょう――アリシスは微笑を浮かべ触手だけを狙って術式を撃ち込んだ。サンディも後に続き、必殺の一撃を核に刻み込む。仕上げとばかりに崩れかけた核をセリアが最後の力で引きちぎった。
「これで終わりだ!」
リゲルはクロエから分離した核に対して魔性の一撃を放つ。黒き大顎の前では瀕死の聖獣が哀れに見えた。黒き濁流に飲み込まれ聖獣は僅かな肉片すら残さずに消滅した。
「どうだ?」
グドルフは倒れた二人を覗き込む。彼には治療が不要だといっても過言ではないコンディションであった。戦場では鋼のような肉体が物を言うが時として俊敏さの方が頼りになることもある。この日、彼は一度の直撃も許さなかった。
フレイは重症を負ったがあれだけ被弾して怪我で済むのが不思議なほどであった。秘密はやはりあの力であろう。
犯してしまった罪は罪。でも償うことはできるから。アリシスは静かに見守る。
こちらに戻ってこい。ポテトは全力で体を抉られたクロエの治療に専念するも彼女は目を覚まさない。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。ポテトは全ての精神力を注ぎ込み献身的な治療を続けるもクロエの意識は戻らない。
一方で、核が死ぬと触手達は宿主から離れていった。
一本一本の触手はそれでもまだ生きていた。その姿は陸で跳ねる魚にも似ている。そんなものをクーアが見逃すはずがない。ぴちぴち跳ねる触手達は一本残さずクーアに遊ばれながら駆逐された。
●エピローグ
――そもそもあんな街で偉くなってなにがしたかったのよ。
――偉くなって何がしたかった?
クロエはアドラステイアの小さな孤児院で生まれ育った。多くの妹弟に囲まれて貧しい中にも幸せを見出していた。
何年か前に、流行り病のせいで悲劇が訪れた。貧しい孤児院には医者にかかる金なんてあるはずがない。病気になったら死ぬだけだった。多くの妹弟を失い、自分と同じ年に生まれて家族同様に育てられた瞳の美しい猫も死んだ。
自分だけが生き残ってしまった。これから誰を呪えばいい? 行き場のない怒りを内に溜め続け、心が壊れるほんの手前で新世界という組織の存在を知る。孤児院ごと組織の傘下に入ったという噂も聞いた。
クロエは新世界への接触を図り、早々に支部長との面会が叶った。そこからはとんとん拍子で出世し、反作用するかのように道徳心は堕ちていった。
家族を守るために他者を犠牲にする。そんな考えに正義はない。クロエが断罪されるのは至極当然の結果であり、死が訪れるなら受け入れなければならない。今、死ぬ運命なのであれば。
この墓地は後に誰も寄り付かなくなり完全に忘れられることになる。
墓場の精霊たちが最後に人を見たのは九人が揃って墓場を出るところであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
冒険お疲れさまでした。
行方不明の少女も無事生還できました!
最初から最後までヒーラーに徹し、クロエ本人の傷を癒してくださったポテト様をMVPとさせていただきました。
これからも新世界の活躍にご期待ください!
■重傷者
・セリア様
・フレイ様
GMコメント
日高ロマンと申します。
アドラステイアの要人救出シナリオのアフターアクションとなります。
■元シナリオ
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4304
●依頼達成条件
墓地の治安回復(方法は不問)
●敵対勢力
???:つよい(物至単)
???の触手:とてもつよい(物至単、物遠単、物至扇)
●シナリオ補足
・重症以上の判定が発生する可能性があります
・敵対勢力の殲滅は依頼成功条件に必須ではありません
・シナリオは墓地の近くに到着したところからスタートします
・シナリオ時間帯は選択可能です
・墓地には敵対勢力とイレギュラーズしかいません
・墓地には背の高い見捨てられたお墓が沢山残っています
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
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