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シナリオ詳細

<マナガルム戦記>光輝の森

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 綿ぼうしみたいにふわふわ飛んで行けたらいいのに。
 そうしたら、悩みも無く生きて行けるでしょう。

 少女はふんわりとした世界に生きていた。
 優しい両親に温かい料理、友達と学校に行って夕方になれば明かりのついた家に帰ってくる。
 何でも無い何処にでもいるような町娘。
 周りの人と違っているとすれば、この街では余り見かけない長い耳があること。
 王都には沢山の種族が集まって旅人なんかはヘンテコな見た目の人が居るらしいけれど、ここ天義国との国境付近にあるドゥネーヴ領には人間種が多く住んでいるのだ。

「今日は何をして遊ぼうかな?」
 学校が休みの休日に、行ってきますと家を飛び出した少女。
「あれ?」
 そこに現れた一匹の黒猫。金色の目に吸い込まれるみたいに目が離せなくなった。
 すくりと立ち上がった黒猫は少女の手から逃げるように歩いて行く。
「ねえ、待って。黒猫さん。どこいくの?」
 通りを渡って、どんどん森の方へ。少女は黒猫を追いかけて森の中へ足を踏み入れた。

 森の中は木々が鬱蒼としていて何処か怖くなる。
「きゃ!」
 少女は木の根につまずいて、ゴロゴロとその先の坂を転がっていく。
 目を回しながら、頭についた葉っぱを取れば、目の前に広がる光の渦。
 一つ一つが小さな光輝が寄り集まって出来た美しい場所だ。
「わぁ、綺麗」
 黒猫が少女の身体にすり寄って来た。まるで、光に誘うみたいにぐいぐいと押してくる。
 少女は立ち上がり、光の渦に手を伸ばした。
 途端に光は少女を包み込む。眩しさに少女はぎゅっと目を瞑った。

 目を開けた少女は森の中ではない不思議な場所に出てくる。
 ふわふわして温かい。揺り籠のような空間。
 その中に、美しい精霊が佇んでいた。
 ビロードのドレスを身に纏い、シルクのヴェールを被った精霊だ。
「いらっしゃい。よく来てくれましたね。実はお願い事があってこの子を使って貴方を呼び寄せたのです」
 精霊は困っているのだという。
 森の中に現れる邪悪な怪物が精霊の子供を食べてしまうらしい。
「え!? 子供が食べられるの? それは、大変だよぉ」
 気弱そうに眉を下げた少女は精霊の話にオロオロとするばかり。
「でも、貴方には精霊を操る素質があります。その証拠にさっきの黒猫が見えていたでしょう? あれは、素質を持っている者にしか見えません。だからお願いです。私たちの子供を助けてください」
 厳かに頭を下げた精霊に少女は決意を固めて頷いた。
「分かったよ。私が出来る所まで頑張ってみるね!」
「ありがとうございます」
 精霊は安堵したようにほほえみを浮かべる。


「お寛ぎの所、失礼します。領主代行にお願いしたい事があるという者が来ているのですが……」
 ドゥネーブ領執政官ソフィア=ガーデンライトが申し訳なさそうに応接室へと入ってくる。
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)は姿勢を正し、ソフィアに向き合った。
 優秀な執政官であるソフィアが、来客中にわざわざ割り込んできたのだ。
 それは『急ぎの案件』ということなのだろう。
「すまない。三人とも」
「俺は構わねえよ。急ぎなんだろ?」
 ルカ・ガンビーノ (p3p007268)が問題無いと応えれば、伏見 行人 (p3p000858)とリア・クォーツ (p3p004937)も頷く。
 彼等はイレギュラーズだ。問題が起こった時に解決するのが世界から配された役目。

「失礼します」
 おずおずと入って来たのは領民の夫婦だった。
「一昨日から娘の行方が分からなくなっていて、街の連中でも捜索したのですが見つからず。
 それで、領主代行様にご相談に上がりました」
「成程。事情は分かった。俺達も探しに出よう」
「……っ! 領主代行様自らですか!? そんな……」
 慌てる両親の肩にそっと手を置くベネディクト。
「この領地を預かる身として、領民の娘を探すのは当然の義務だ。今すぐ支度しよう」
「ありがとうございます! ベネディクト様!」

 ――――
 ――

「調査した所によりますと、どうやら少女はカシェルの森に入ったようです。この所カシェルの森には凶悪な魔物の目撃情報があり、警戒をしていました」
「しかし、あの森には守護精霊が居るのだろう?」
 ドゥネーブ領を引き継ぐ時に渡された資料に、そのような事が書かれてあったとベネディクトは記憶している。守護精霊は森を育み、悪しき者を寄せ付けない役割を担っているはず。
「つまり、何らかの理由で守る事が出来ない状況に置かれているということね?」
 リアは修道服の裾を正しソフィアを見つめた。
「はい、恐らくは」
「その森に行ってみないと分からないということか」
 行人は窓の外に見える森を眺める。
「森に入るには『精霊の導き』が必要ですのでご注意ください」
 精霊の声に耳を傾けて行けば森の結界の中に入れるらしい。精霊疎通が役に立つだろう。
「俺達四人だけじゃ、心許ないかもしれねえ。ローレットに連絡して応援を呼んだ方が良い」
「ああ、そうだな。急ぎ伝書鳩を送ろう」
 ルカの提案にベネディクトは立ち上がった。
 少女を救うために急ぐのだ。


「えーん! こんなの勝てないよお!」
 大きな魔獣から逃げ回っている少女と精霊は息も絶え絶えに叫ぶ。
 魔獣に見つからないように木の洞に隠れたが、相手は鼻が利くのだ。
 涙目になりながら、複数の足音が近づいて来るのを長い耳が捉える。
 おそらく街の人達が助けに来てくれたのだろう。
「うえーん! 助けてぇ!」
 その声に反応して、魔獣が少女へと走り出した――

GMコメント



 桜田ポーチュラカです。よろしくお願いします。

■依頼達成条件
・魔獣の討伐
・子供を救出する

■フィールド
 幻想国ドゥネーブ領カシェルの森。
 昼の森の中。戦闘中の視界は特に問題は在りません。

■探索パート
 黒猫を追いかけて。精霊の加護を受けた不思議な森を探索します。
 この黒猫は精霊です。精霊疎通を活性化していると見えます。
 精霊疎通で黒猫や周りの精霊の声を聞いて行けば、魔獣の元へたどり着きます。
 急いで少女の元へ行きましょう。

■戦闘パート

『魔獣バジデル』
 精霊の魔力を好物とする獣型の魔獣です。
 凶悪なモンスターで人を襲う事もあります。
・爪痕:物至列の攻撃【出血】
・噛みつき:物至単の攻撃【猛毒】
・デストロイクラッシュ:物遠貫の攻撃【移】【弱点】

『凶暴化した精霊』×10体
 魔獣の瘴気に晒されて凶暴化した精霊です。
 最初は怒りに我を忘れています。
 体力が半減すると精霊疎通や精霊操作を持っていれば鎮めることが出来ます。
・叫び:神遠扇の攻撃【苦鳴】

■NPC
 戦場には領民の少女と森の守護精霊が居ます。
 魔獣や凶暴化した精霊に怯えています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <マナガルム戦記>光輝の森完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月10日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
※参加確定済み※
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
※参加確定済み※
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
※参加確定済み※
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
※参加確定済み※
ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)
星飾り

リプレイ


 冷たい風が通りを吹き抜けていく。
 幻想国ドゥネーヴ領のカシェルの森は精霊が守護する場所だ。
 光輝が至る所に溢れ、仄かに木々を照らしている。

「二日も行方知れずじゃ、双方さぞ不安だろうなあ。でも領主に報告は大正解だ」
 うんうんと頷いた『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は隣の『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に顔を向けた。
「そうだな。そのお陰で俺達がすぐに動ける」
「それにしても抜けてんな精霊達。その女の子に才能あってもいきなり活躍は厳しいと思うぜ。
 まあ精霊意外の事よく知らんのだろうけど……」
 森を守護する事は出来ても、ハーモニアの子供に魔物退治という大役を任せようと思うのは、人間についての知識が不足しているからだと夏子が肩を竦める。
「コレ終わったら精霊ベテランマンと領主交えて情報交換して欲しいトコだ」
 夏子の声に『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は「まぁ」と言葉を濁した。
「こうなる事は偶にあるんだ。強い感情をどうしていいか解らないからこうなって……まぁ、子供みたいに、ね。それだけに、加減を知らないから気をつけてくれよ」
 精霊も他者の瘴気に当てられ狂うことがあるのだと行人は語る。
「そうか。……精霊については俺は解らない事が多い、済まないが任せる」
 行人や他の仲間にベネディクトは「頼りにしている」と言葉を投げた。
「貴方に頼られるのは悪い気はしませんね、領主代行様?」
 その言葉を受けて『壊れる器』リア・クォーツ(p3p004937)が悪戯な笑みを浮かべる。
「居合わせたのもなにかの縁だし。後味悪いことになるのも嫌だしね。子供と精霊と、ちゃんと助けて帰ろうか」
『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)も優しい眼差しで微笑んだ。
「子供が危ないってんなら急がないと! ほら! 早く助けに行きますよ!」
 精霊の森の案内役である黒猫を見つけたリアが仲間へと手招きをする。
「そうだな。娘っこの身が心配だ。急いで行くとしようぜ」
 走り出した『アートルムバリスタ』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)に続いて、ベネディクト達も駆けて行く。

「おーい!」
 森の中に入る寸前、ベネディクト達を引き留める声が聞こえた。
「急ぎの仕事と聞いてアカツキ・アマギ参上したのじゃ」
『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)と『星飾り』ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)が息を切らせながら走ってくる。
 このカシェルの森に入るには精霊が見える素質が必要である。
 案内人の黒猫が見えるのは行人、リア、セリアの三人だ。
「精霊疎通がないと黒猫が認識出来ない、との事だから……そうだな」
 行人の目にははっきりと黒猫が見える。大丈夫だとベネディクト達に頷いた。
「ふむ、精霊の助けが必要と。うーん、植物相手なら自信あるのじゃが精霊はちょっと管轄外じゃの」
 アカツキが残念そうに首を捻る。
「そこは得意な人に任せるとしよう……猫好きじゃからちょっと見てみたかったがのう。
 人助けセンサーで探索のお手伝いをしながら進むぞー!!」
 元気よくアカツキは拳を上げた。
「おー! んじゃ、頼むぜ行人、セリア、リア」
「ああ、任せろ」
 ルカは行人の背をバシっと叩いて激励をする。

「この先に結界があるわ」
 森の中を先行するのはリアとセリアだ。
 カシェルの森の結界は光輝として彼女達の目の前にある。
「精霊の音色がたくさん聴こえる……皆、怯えてる」
 リアの耳には精霊達のか細い声が旋律として入って来た。
 どれも子供の様に怯えて怖がっている。
 彼等にとって、温かい揺り籠の中に悪しき魔物が居るということは異常事態なのだろう。
 リアはセリアと目を合わせる。
 このままでは恐怖が森中に広まってしまうかもしれない。
「大丈夫。私達は悪い奴らをやっつけに来たの」
「そうよ。だから安心してちょうだい」
 リアとセリアの声に恐怖一色だった精霊達の心が少しだけ和らぐのが分かった。
 それは夏子やベネディクト達にも伝わる。
 アカツキは木々が安堵を示しているのをつかみ取った。
「悪い奴らの居場所が分かったら教えてほしいんだ」
 行人の声かけに、風の精霊が「あっち」と指を差す。

「やべーですなんかあの3人ずんずん進んで行きますよ見えない物を見ようとしておかしくなっちゃったのかもしれませんヒューッ!」
 ラグラは光速を超えると言われた合いの手スラップをまずは夏子のほっぺで実演する。
「あウサギいましたよ今」
「うさぎ?」
 ラグラの指さした方向に夏子が振り向いた。ラグラは足下にある小さな足跡を見つけて座り込む。
「探索はヤバい物が見えている方たちに任せるとしてなんでしたっけ、なんかいるんですよね。
 このちっこい足跡がそうですかね、いやほら私ちゃん目がとってもいいので。これはきっとUMAの物に違いありません。保護法に基づき土をかけて消しておこう」
「あ、うさぎ?」
「何ですか? 何もありませんでしたよ?」
 土をえいえいと踏みつけるラグラ。
「え?」
 夏子は首を傾げた。ラグラは仲間とはぐれないように、先行するリアたちを追いかける。
「ほら、夏子行くぞ」
「あ、僕悪く無いよ」
 最後尾を警戒しながら行動する行人に連れられ、夏子はラグラについて考えていた。

「俺は精霊の姿が見えねえからな。助かるぜ」
「ああ、俺だけでは子供も、精霊も助ける事が出来なかったかも知れんな。つくづく、俺は恵まれた男だ」
 マントをはためかせながら、ルカの言葉にベネディクトは同意する。
 心強い仲間が居ればどんな困難だって乗り越えていけるだろう。


「精霊のざわめきが強くなってる! 気を付けて」
 リアは仲間へ注意を促した。
「ああ、俺達の耳にも魔物の声が聞こえて来やがる」
 狼の遠吠えがルカ達、精霊が見えない仲間にも聞こえてくる。
 戦場が違いのだろう。

「行くぞ!」
「「おお!」」

 ベネディクトのかけ声と共にイレギュラーズは魔獣の前に走り込んだ。
「──間に合った様だな、ルカ、行人、夏子、アカツキ。何時も通りだ、魔獣は今回は俺が抑える……ブルーデンは上手く合わせてくれ、問題無いだろう?」
「おっ。そのパターンね、了解だベネベネ」
 ベネディクトは蒼銀の腕と蒼銀月を構えて魔獣と狂暴化した精霊に向き直る。
 何度も肩を並べて戦った戦友に詳細な作戦指示は必要無い。
「つっかま~えた 鬼ごっこ楽しめた?」
 夏子が叩き込んだ槍の破砕音が膨大な音となって魔獣と凶暴化した精霊の注意を引く。
「まっ、獣には大きな音と大きな身体で威嚇するのが、手っ取り早いんでね」
 夏子のギフトによって膨れ上がった音に気を取られた敵の隙を付きベネディクトが一足前へ飛び出した。
 蒼銀月を全力で振り抜き、魔獣と精霊を吹き飛ばす。
「グギャア!」
 うなり声を上げて地面を転がる魔獣。
「待たせたな。俺たちは通りすがりのヒーローだ」
 ベネディクトの隣に手を広げたルカが立ちはだかる。
 少女は目を見開き、突然現れたイレギュラーズと魔獣を交互に見つめた。
「乱暴で悪いな嬢ちゃん。リア、その子を頼むぜ!」
 ルカは戦場に座り込んだままの少女をリアの所へ投げ込む。
「きゃ!?」
 宙を舞う少女をしっかりと受け止めたリア。
「もう大丈夫よ、安心して」
「大丈夫 こんな綺麗な女性が悪い人なワケないだろ?」
 夏子の言葉にリアの服をぎゅっと握りしめた少女はボロボロと涙を零した。
「絶対あたしの傍から離れないように。分かった?」
「う、うん」
 少女を魔物の視線から遠ざけるようにリアは背に隠す。
「負担をかけると思うが、精霊の事と少女は宜しく頼む。クォーツ、ファンベル」
 少女がリアの元へ渡った事を確認したベネディクトは改めて敵に向き直った。
「しっかり支えますので、カッコいい所見せてくださいね、ベネディクトさん?」
「善処する」
 リアの返答にベネディクトは小さく笑う。

「いつも通り、ね……なら、精霊は俺だな。癇癪をあやすのは慣れているからさ」
 精霊に相対するのは行人だ。
 凶暴化した精霊全体に『落ち着きなよ』と精霊疎通を試みながら肉薄する。
「怒りに満ちているからこそ――誰かに干渉されると意識を引ける」
 行人が言ったとおり、凶暴化した精霊は彼の言葉に敵意を向けた。
「苦しい! つらい! もう嫌だ!」
「うんうん。辛いだろうね。でも、もう大丈夫さ。俺達がついてる」
 行人は仲間の攻撃が当たらないよう戦場を動き回りながら精霊に話しかけ続ける。
 精霊は繊細な生き物だと行人は知っていた。
 だから、行人は自分から攻撃するようなことはしない。
「大丈夫」
 ただそれだけを言い聞かせながら、仲間達が魔物を倒すのを待つのだ。
 自分は攻撃を受けることを厭わず。

「まずは、ベネふんふ君が相手してる魔獣の方に封印!」
 ラグラの手から離れた宝石は宙を舞い敵を穿つ。厄介な攻撃を持つ魔物に封印術式を叩き込むのだ。
 キラキラとラグラの周りに散らばる宝石は魔物の喉に突き刺さり、くぐもった声が戦場に響く。
「パーになった精霊の方は……あ、殺したらダメなんでしたっけ、そっか」
 ならばと次の手を打つラグラ。
 ラグラの範囲攻撃は味方を巻き込むものだ。
「他の人に当てないようにしたいけど最悪前衛の中だと夏子君と行人君には当てても大丈夫そうかな。
 ……ルカ君は頑張れ! いくよー!」
 ラグラのかけ声と共に瞬き放たれるジルコン。青色の弾ける光。幻惑の輝き。
 幾重にも弾け飛ぶ光は戦場を駆け巡り、精霊を恍惚の海に投げ込んだ。

「っらあ! 正気に戻りやがれ!」
 乱暴に魔剣を振りかざすルカにリアは声を上げる。
「ルカさん! ご自慢の馬鹿力も程々にしてくださいよ!」
「大丈夫だって!」
 セリアは出来るだけ多くの敵を巻き込む形で神の光を解き放つ。
「大丈夫。正気に戻って」
「そうよ。あなた達はこの森に住んでいる精霊よね? 自分の住処を荒らしてもいいの?」
「あ……自分の住処」
 セリアとリアの呼びかけに精霊達は次々と目を覚ます。
「ほら、あいつらの所に行ってろよ。戦いに巻き込まれたくなかったらな」
 ルカは落ち着きを取り戻した精霊達にリアの元へ向かうように促した。
「ラッキーだね君達。敬虔そうな女性が保護って。僕がされたいわ」
 精霊をリアの元へ誘導しながら夏子がごちる。
「そこの精霊さんは話が通じる感じになったぞ、後よろしくなのじゃ!!」
 正気に戻った精霊を自分達の後ろに移動させるアカツキ。
「危ない戦場じゃからの。下がっておるのじゃ」
「ありがとう」
 アカツキのかけ声に精霊が微笑んだ。

 ――――
 ――

「悪いが暫くは俺に付き合って貰う──そう易々とは喰われてはやれんがな」
 魔獣の相手をしていたベネディクトは逃げようとする敵を追い詰めていた。
「ありがとよベネディクト。
 精霊は全て正気を取り戻し、残るは魔獣のみ。
 ルカは耐え忍んだ戦友に礼を言う。
「お前も結構強かったが……相手が悪かったなぁ!」
 魔剣から繰り出される直死の一撃。膨張した黒の大顎は魔獣を捉えた。
「妾の炎で焼き尽くしてやるのじゃ!!」
 戦場がアカツキの炎で包まれる。メラメラと地面の枯れ木が焼けていった。

「行くぞ皆!」
「ああ、一気にキメるぜ!」
「やはりベー君の掛け声があると気が引き締まるのう……さっと燃やして少女を助けるとしようぞ」
 ベネディクトの声と共にイレギュラーズは魔獣を打ち倒したのだ。


 静かになった森の中でルカは少女の頭をわしゃわしゃと強めに撫でた。
「精霊を助けようと思った優しさと勇気は立派なもんだ。でも今回の事で一人じゃ難しい事もわかったな?
 後は力を借りる事を覚えな」
「はい」
 一人で勝手に森の中へ入ったのは手放しに褒められる事では無い。
 しかし、誰かを助けようとした事は褒めてやりたいのだとルカは思うのだ。
「ま、帰ったらおふくろさんのゲンコツは覚悟するんだな!」
「ゲンコツ……」
 頭を抑えてぷるぷると震える少女に行人は微笑む。
「――頑張ったね。もう大丈夫だよ」
「皆さん、助けてくれてありがとうございます」
 ぺこりとお辞儀をした少女に行人もほっと一息を吐いた。
「ご両親が心配していた──もう、この様な無茶はせぬようにな」
 ベネディクトは少女の頭をなでて、無事で良かったと笑って見せる。

「結局ここの精霊のパゥワーはこいつ(魔獣)のせいで乱れたんでごぜーますかね?」
 ラグラの疑問に少女を喚んだ森の守護精霊が頷いた。
 守護精霊は特別な力が無くとも見えるらしい。
「そうです。何処からかやってきた魔獣の発する瘴気で結界が揺らいでしまったみたいです」
「成程。そうですか。……ねねねアカツキちゃんお腹すいた。こいつ焼いて食べられるようにしてくだせー
 え食べるのこれ嘘でしょ……」
 ラグラの一人押し問答に首を振るアカツキ。
「お主どうしたのじゃ。それにしても、精霊の住まう森、守護精霊以外の姿が見えぬのが惜しいのう。
 見えればいい土産話になったのじゃが……」
「守護精霊よ。可能ならば今後は俺の方にコンタクトを取って貰えると有難い。領内の事については俺も知っておきたいからな」
 精霊の前に立ったベネディクトは手を差し出す。
「貴方は……領主代行ですね。分かりました。今後はそのようにしましょう」
「ああ、よろしく頼む」

 セリアは荒れた場所を片付けて振り向いた。
「あ、あれ。誰も居ない!? ……ごめん、帰り道わかんないんだけどどうしよう」
「あっちですよ」
 守護精霊に連れられてイレギュラーズは帰路につく。
「いい事? 次は絶対一人で危ない事はしないように。もし、困った事があったら、あそこの王子様みたいな領主代行様を頼るのよ?」
 リアは少女と手を繋ぎながら、ベネディクトを指し示した。
「王子様……」
 少女の目はキラキラと輝き。満面の笑みでこくこくと頷く。
 森の精霊に手を振って。少女とイレギュラーズは光輝の森から無事に帰ってきたのだ。

成否

成功

MVP

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPは上手く立ち回った方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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